真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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408 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2023/10/16(月) 21:13:03.36 ID:Ev8kVMSl0
「きっとこれはいけないことなのでしょうね。漢朝のためを思えば、二郎さんを隠居させるなんて、ありえませんわ。
 でも、わたくしは。それでいいって、ほっとしていますの。
 もう、これ以上二郎さんが傷つかないって思うと、それだけで……」

ぐす、とぐずりながら麗羽様が再び、ちゅ、と口づけてくれる。
ぼろぼろに崩れた化粧、体裁。それでも。いや、それだからこそ、麗羽様が、この上なく愛しい。
「――愛してます。麗羽様。だから、やはり隠居します」

「馬鹿!お馬鹿さんですわ!わたくしは、漢朝の大将軍ですのよ!
 私が命じればいかなる栄耀栄華も思いのままなのに!思いのままなのに!
 ……分かっています。二郎さん。分かっています。
 ええ、分かっていますとも……。富貴、名誉、栄耀栄華。あらゆる欲と俗に囲まれてなお、それに心を動かさない。それがどんなにすごいことかって、分かっています。そうじゃない人をたくさん。そりゃあたくさん目の当たりにしてきましたから。だから、二郎さんがどれだけ恰好よくって、素敵だったか。
 そんな、二郎さんがいるから、その背中を見て頑張ってこれました。 
そして、お慕い申し上げていますわ。ずっと。ずっと……。
 麗羽は、二郎さんをお慕い申し上げておりますの……」

愛して、いますと耳元で囁いて、ころころと、笑い、泣く。

俺は麗羽様を抱きしめながら、思う。きっとこの人を幸せにしなくては、と。それがどういうものか分からないけれども。

そして、更に思うのだ。俺の知ってる三国志とはかなり違う着地点。
それで、俺の大切な人たちは、だ。多分――俺のいい加減な知識にある三国志よりも幸せになったんじゃないかな、と思う。

まあ、あれだ。

俺はこれで全力を尽くしたから、な。やりきった感はあるのだ。

でもきっと、これからも色々と厄介なことはあるんだろうと思う。
だけども、紡がれた物語はそのまま次世代へと受け継がれて、きっと俺の出番なんてなく。それでも絶えず紡がれていくだろう。

――蒼天は、死なず。

言ってみればそれだけのことだったのかもしれない。
逆に、その一言にどれだけの意味が含まれているのか。

まあ、そこいらへんは後世の歴史家が評価することだろうし、ましてや本来の歴史との比較なんて誰もできない。

――ちょっとぐだぐだと語り過ぎたかもしらん。

よし。俺が語る、俺の物語に一旦区切りを付けるとしよう。

これは、特に何の才能もない。名もない凡人が、それでも必死に足掻いた物語である。
それ以上でも、それ以下でもない。

――面白くなき世を面白く
     南皮のことも夢のまた夢――

真・恋姫無双【凡将伝】〜ハッピーエンド「袁家の種馬」〜

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