真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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370 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2023/08/21(月) 22:06:04.82 ID:oDFXJMpu0
真名。それはこの世界においてその人の存在を示すモノ。
真名。それはこの世界において許しなく口にすると問答無用で殺されても文句を言えないモノ。
真名。それを奪われるということは人としての尊厳、それを奪われると同じほどに重いモノ。

「全く……前代未聞ですよ」

「空前絶後でしょねー。真名を奪い、名を奪い、字をすら奪う。いっそ死を賜った方がましなんでしょうが……」

苛烈、と言っていいだろうと郭嘉は思う。法を司る曹操に諮ることもなく独断で下したその決定。
それは紀霊の、此度の蜀と名乗る不逞の賊軍に対する憤りを内包しているに違いない。

「にしても、姓名どころか真名まで奪うとは……。
そのような暴挙……!」

焚書、肉刑すら可愛く思えるほどのことであるのだ。

「州牧代理を自己都合で殺し、その罪を糾弾されると開きなおる。
 あげく、自らが皇帝を僭称する。いや、これは首謀者ではなくともその量刑、死ですら生ぬるいでしょう。
 二郎さんの裁定、考えてみればですが。
割と妥当じゃないかなと風は思うのですよ〜」

くふふ、と笑う程立に郭嘉は柳眉を逆立てる。

「にしても、あまりと言えばあまり。これから、かつて関羽と呼ばれていた存在――今は字伏と言ったのですか――は生涯その尊厳、誇り。それらを全否定されることになります。
いっそ死を賜る方が温情というものでしょう」

郭嘉はこれで名門の生まれである。その、実家の人脈(コネ)、しがらみが煩わしくて名を偽り放浪するくらいのお転婆――紀霊談――ではあったのだが。
いや、だからこそ紀霊の裁定には思うところは少なくない。
そのような無体、董卓にだってしたことはなかったのだ。

「――あ」

――すとん、と胸に落ちた。
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