真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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336 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2023/07/17(月) 20:02:05.40 ID:deQqUpEU0
◆◆◆

「征夷大将軍たる俺の決定だ。
異論は認めない。各員の奮闘に期待する」

ニヤリ、と笑い紀霊は指をぱちり、と打ち鳴らす。その合図に典韋は付き従う。見送るのは軍師二人。

「風!どうして貴女は二郎殿を止めなかったのですか!」

ふわりとした笑みを浮かべて程立は応える。

「これはしたり。ですねえ。当然のこと。二郎さんがそれを望んだから。
或いは望まなかったからですが〜」

くすくす、と程立は柔らかく笑う。

「やはり、分かっていたのですね」

「勿論です〜。風は二郎さんの軍師ですからして〜」

くふふと笑みを漏らす程立に郭嘉はぎろ、と視線を強める。

「分かっているでしょう。的を狙う英傑には関羽、張飛、馬超と一騎当千が揃っています」

「だからこそ、ですよ。二郎さんを後ろへ下げる。そこに集中的にそのお三方が殺到したらどうしようもないですよ」

ですから、と笑う。

「もっと言えばね、一番安全なのは星ちゃんの傍ですよ。
 保証します。既に階梯が違いますよ、今の星ちゃんはね……。
 まさに、絶対無敵、国士無双というやつなのですよ……」

わが身の智謀、搾りだした謀略なぞ児戯の如く薙ぎ払うであろう。
戦術なぞ、趙雲一人で事足りてしまうのだ。
目の前で見た程立はそう確信している。

「そのへんにしてもらいたいものだな。
 我が軍の誇る軍師たちが言い争うなぞ、ぞっとせんよ」

ゆら、と身を揺らして趙雲が笑う。

「今から、戦後について語るとは随分余裕だな?」

趙雲は手にした愛槍龍牙を軽く振るう。風を切り裂くその音響。そして音量、音色。
超一流の武人が奏でる、猛々しい舞曲。

「……これは星ちゃんに一本とられたのですよ〜。
……ですが、戦略戦術において如何に激論を交わし、譲らぬことがあっても、です。
 目指す方向は同じですし、別に友誼に影響があるわけでもありません。単に、目的地に赴く。その道程の違いだけなのですし。
 ね?稟ちゃん」

くふふ、とほくそ笑む程立。その様子に超雲はやれやれとばかりに。

「なんだ。風と稟がいつになく険悪だから、と思ったが余計なことだったか」

こういうのは、向いていないのかな、と首を傾げる趙雲に郭嘉は憮然とする。

「星にまでそのようなことを言われるとは心外の極みですね。一体私はどういう風に思われているのか一度聞いておきたいくらいに」

ニヤリ、と趙雲が応える。

「無論。鬼算の戦術家、神謀の戦略家だとも。だからこそ悔しいな。
風が言ったがな。如何に関羽、張飛、馬超がいようとも最早主に毛ほどの傷もつけさせんよ。
 そして、彼奴(きゃつ)ら……。
ズタズタにしてやるぞ……!」

刹那、獰猛な笑みを漏らす趙雲から吹き出す、圧倒的な覇気。殺意の波動とでも言うべき禍々しい奔流に郭嘉は言葉を失い、程立はくふふ、と笑う。

「どっちにしてもです。蜀軍がどこに逃亡するのか。それを見極めないといけません。
 どうせ稟ちゃんも星ちゃんも。
無論私もですが、此度の不首尾、責任を負うつもりなのでしょう?
 で、あれば功績を被せる方は近くにいた方がいいのではないですか?
流石にここから二郎さんを洛陽に帰参させた上で完勝して、それを二郎さんの手柄にするのは苦しいでしょうし」

くふふ、と程立は笑う。
まずは勝つ。それは三者の合意。
そしてその功績は主の物である。

くふふ、と。ニヤリ、と。そして無表情に。
三者三様に必勝を期す。今度は、今回こそは完膚なきまでに叩き潰す、と。
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