真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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325 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2023/06/26(月) 21:47:35.36 ID:w7bT4XqC0
行けない。
この、中華から去ることはできない。

「ごめんな。でも。やっぱり、できないよ。あたしは……」

悄然と馬超は呟く。闊達な常とは違って、それでも、いやだとばかりにかぶりを振る。
そんな中、それでも。
くしゃり、と撫でられる感触に馬超は暫し耽溺してしまう。

「翠がそう決めたんだったら、仕方ないさ。寂しいけど、さ。
 でも、翠が言う、行く末ってやつ。きっと大変だと俺は思う。
 だからさ、だから、な。
いつでも歓迎するよ翠のこと。
逃げる、ってさ。そんなに悪いことじゃないと思うよ。
 生きていればこそ、だと俺は思うよ」

「一刀……!」

ごめん、と。否、やっぱり一緒に行く!と。様々な思いが駆け抜ける。
そこでの決め手は思いかけず。

「なんだ。翠はだらしないのだ。鈴々はお兄ちゃんと、もちろん、お姉ちゃんと愛紗。
みんなと一緒にいくのだ」

無垢なる言説。張飛の言葉に馬超は身を引き裂かれるような決断を下す。

「ごめん、一刀。あたしは、やっぱり。
一緒に、いけない」

「いいさ。翠の選択だもの。
誰も咎めはしないよ」

「あ、あ。
一刀……」

そのやり取りに諸葛亮は、ほう、と息を吐く。
これでいい、これでいいのだと。これが最善なのだと。

北郷一刀、そして劉備の両名さえ存命ならば、どうとでもなると。

そして再び書類の山と向かい合う。
如何に主たちを逃すか。そして逆襲するか。それらは諸葛亮の脳髄に既にある。

「足掻いて、みせます。いえ、そうじゃないです。
 ええ。やり遂げてみせませす」

北上して匈奴の支配域から東を目指すもよし、真っ直ぐに東進するもよし。
主導権はこちらにあるのだからして。

迫る袁家軍。その進軍速度すら諸葛亮にとっては手の内なのだ。このままでは追いつかれてしまうだろうが、進軍するその道いっぱいに民がいればどうか?
まさかに、民草を蹴散らしはしないだろう。そうなれば暴動だ。まともな進軍なぞできなくなる。

窮地に追い込まれて尚、諸葛亮は三日月模様に口元を歪める。
けして、自らの主には見せられない表情だなあという思いと、それを窘めてくれたであろう友人を思って。偲んで。
そして、彼女が自分を訪ねるのも想定内。どうやら今回は、とことんそりが合わなかったのだが、これまでその関係が破綻しなかったのは率いる主のおかげなのであろう。
そう思いながら喉に液体を流し込む。
揺蕩っていた思考を炎にまとめて、向き合う。

「すまんな、多忙という言葉では足りないくらいほどに忙しいことは理解しているのだが」

だったら来るな、とは思っても言えない。劉備の股肱にして親友。その存在を軽んじることは出来ない。ただ、今は時間が惜しい。そう思っていたのだが。

関羽からもたらされたのは思いもよらぬ提案。

「殿(しんがり)、私が受け持つ」

民草を守る。魔王紀霊の追撃から守る。
その言に諸葛亮はしばし…、目を細めて考え込むのであった。
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