真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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294 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2023/05/01(月) 22:16:50.47 ID:qYo/1kB30
◆◆◆

やることがないです。
はい、二郎です。

目下、恋にズタズタにされた陣容を再建しようとしてたんですけど、恋ってば本当に身一つで潜入していたようで、軍的には特に損害なかったみたいなんですね。
ぬるっと、大軍の陣構えに潜入して将官だけ首狩りするってやべーですぞ。
いやマジで。

あれだね、今更ながらあの時に一番警戒してた恋単独での夜襲というのはある意味最適解だったね。
いや、それをさせないためにこちらも必死だったんだけどね、割と本気で。

などと虚空を見つめながら置物と化しております。
いや、護衛とついでに――からかうと面白いけど――華琳が戦闘不能になっている現在。
これは俺が無傷でいるのがちょっとだけ後ろめたい感じの思いだってあるという現象。
何もさせてもらえないけどね。
酒精なぞもってのほか。やるなら女を抱けとばかりにあてがわれてもね。流石にそれはない。

まあ、暇つぶしには命絶え絶えで弱っている華琳にご協力いただきました。

命に別状がないとしても、重症というか重傷は間違いなくあってね。
スペックが割と落ちているし、高熱にうかされてからどうせ忘れるだろうしあれこれ楽しく語ったものである。
まあ、いつもの傲然とした感じでない華琳が話しやすかったというのもある。

それとね、献身的に看病的な見舞いをしとけば華琳の部下もそこまで責めてこないんじゃないかなって思ったりもした。

ただ、そのような――。

◆◆◆

「おや、随分と元気そうなご様子。何よりです」

現れたのは稟ちゃんさん独りで、拍子抜けする。

「なんですかその顔は。私では不満ですか?」

なんでも、全員が押し寄せたら混乱するし話は進まないであろうということで稟ちゃんさんが代表で来たそうな。
つまりどういうことだってばよ。

「まあ、文醜殿は大いに異を唱えられてましたがね」

星が抑えてはいますが、とこともなげに言い捨てて此方を見据える。

「さて、今後のことをご相談せねばなりません」

「おう。基本追撃すべしと思うんだが。それにしたって白蓮や蒲公英の動向にもよるしな。
 いずれにしろ、あちらさんは一旦襄平に引っ込んで再編するってのが妥当じゃないの?」

そうなるとまた兵力が補充されて厄介極まりないんだがな。

「公孫賛殿、馬岱殿。共にご無事とのこと。公孫賛殿は馬超率いる騎馬兵を打ち破り、馬岱殿は張飛が護衛する補給部隊。その護衛を釣ったあげく物資にも損害を与えたとのこと。
なお、文醜殿、顔良殿は関羽率いる軍を封殺。
 有り体に言って、二郎様以外は大勝利です」

「なんと。
 なんとなんと」

これは誇らしいですねえ。ってそうじゃなくて。

「なら、蜀軍はやっぱり襄平に引っ込むだろ。まずくね?襄平に充ててた蓮華たちも挟み撃ちにされるし、さ」

一度こっちも体勢を整えないと。

「ああ、そのことでしたらご心配なく。
 襄平は孫家によって陥落させられたとの報せがありました」

なん、だと……。

◆◆◆

「交渉、ねぇ……」

襄平を囲む孫家からの使者が来たとの報に黄忠は首をかしげる。
今更何を交渉するというのか。
むしろ、あの程度の兵力で自分が守る襄平を落とせると思っているのか。だが。

「多少の時間稼ぎにはなるかしら……」

金城鉄壁を地で行く黄忠であるが、消耗が少ないにこしたことはない。物資は十分に蓄えているし、兵卒の充当も問題なく、士気も軒昂この上ない。

「まあ、会うだけ会ってみましょうか」

敵将の気性を知るのも貴重な機会だ。寄せ手である孫家の陣容、見極めてやろうと黄忠は決意する。
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