真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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284 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2023/04/20(木) 21:51:43.87 ID:2QSBg0pz0
「星、お前こそ天下無双の名にふさわしい英傑だ」

 その言葉はするっと出てきた。
 圧巻であった。
 まさか恋相手にあそこまで一方的に勝ちを決めるとは想定していなかった。
 ブッチャーばりの喉への手刀から、鼓膜破り、最後はスリーパーホールドからのトドメである。
 いや、あの恋を相手に、だよ。
 そりゃあもう天下無双と言っていいよ。俺が認める。征夷大将軍が認定しちゃうよ。
 そういや星は毎日の鍛錬も欠かさなかったものな。最近サボりがちな俺と違って。
 毎日誰や彼やと手合わせしてたもんなあ。

 などと感慨深いなあと思っていたのだが。

「主よ、そう評価されるのは嬉しいがちと早い」

などと言いよる。
つまりどういうことだってばよ。

「まだだ、まだということだよ。
 その評価は嬉しいがね、かの覇王は、項羽は戦況をその身で」

ふう、と一息。

「勝利を、軍に与えたからこその無双だろう?
 私はそういう意味ではまだ何もなしとげていない。
 まだ無念夢想でしかない」

指笛一つ。
愛馬烈風を呼び寄せ、去って行った。

なにそれ超かっこいいんだけど。

◆◆◆

 戦況は膠着している。
いや、やや優勢といったところかと程立は思いを馳せる。
ただ、決め手がない。
とは言え、歴戦の指し手である陳宮相手に保つこの優勢は重畳。
じわりとこの優勢を推し進めるのが最善であろうと程立は断じる。
そして。
ここに、この膠着にも近い状況を打開、あるいは一変させる存在が到着する。

◆◆◆

「風」

ゆらり、と現れた趙雲。
想定よりも早い。早すぎる。嫌な予感にさしもの程立も身を震わせる。

「せ、星ちゃん。どうしたのですか!」

纏う空気が違う。にや、と笑う表情は不敵で無敵な趙子龍のそれ。
だが纏うその空気に流石の程立が言葉を喪う。

「ま、まさか二郎さんが……?」

趙雲は苦笑する。
心配をかけたな、と僅かに内省しながら。

「大事ない。呂布も討ち取った」

この凄味。どうしたのだ。
程立は戸惑いを、違和感を。
そして至る。
あった事象に。

「星ちゃん。すぐにお馬さんを準備しますから、なんだか溜め込んだもの、ぶつけてきたらいいと思うのですよ」

その声に超雲は苦笑する。

「ああ、流石は風だ。そう、これは八つ当たりに過ぎんからな。そう、八つ当たりだ。
 だから馬はいらんよ。烈風は休ませてくれ。
 ちょっと敵陣を撹拌してくる」

「は?星ちゃん?星ちゃん?」

撹乱するならば連携を!と叫ぶ程立を背に。

――天下無双の名を背負う竜が顕現した瞬間であった。

宣言通りに、彼女は戦局を単騎で一変させたのである。
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