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真・恋姫夢想【凡将伝Re】5
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276 :
一ノ瀬
◆lAEnHrAlo.
[saga]:2023/04/17(月) 20:32:03.71 ID:I1dnye540
火をおこす。
手持ちの食材を漁る紀霊は哀しみにいた。
呂布に背を向ける、それはいい。どうせ相対しても稼げる時間は数秒程度だろうから。
諦観、それもある。
いざ呂布と向かい合うと、武力では勝てないという事実がのしかかる。持てる全てを尽くしても届かない。
それだけ隔絶している。実際に手合わせしたからこそ紀霊はそれを理解していた。
だがしかし、現実はいつだって非情で、近寄る呂布の足音に紀霊はなにもできない。
ここまでか、とため息一つ。
「大丈夫、二郎。痛くしないから」
「せめて俺の作る飯くらい食べてからにしてほしかったなあ」
「ごめんね、二郎」
ただ一つの活路、食への執着すら通じず。
「すまんな、詠ちゃんからも恋にはよろしくしてくれと頼まれていたんだが。
実際何もできてなかったな。
詠ちゃんに、何か伝言あれば承(うけたまわ)るよ」
その言葉に初めて呂布の足が止まる。
無言、無音、静謐。
数瞬、数秒、或いは数分。
その沈黙の後に呂布は口を開く。
「よく、わからない。
でも、ごめんね、二郎」
そして呂布は得物の方天画戟を振りかぶる。
そして赤い閃光が走った。
◆◆◆
飛ぶが如く。
駆ける、駆ける。全速力とはこのこととばかり。愛馬烈風もこの時が全てとばかりに疾走する。
間に合う、という不思議な確信がある。程立から託された言葉。
「風は最善を尽くしました。そして辿り着きました。後は星ちゃんのお仕事です。
こればっかりはお任せするしかないですからね〜」
脳裏に浮かんだ親友の声。
そして馬上に立ち、舞う。
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
趙雲を評した紀霊の言である。
「貫け、龍牙!」
投擲された愛槍は閃光となり呂布に向かう。
まさに必殺の一撃。
そう、必殺の一撃であったはずである。
標的が呂布でなかったならば。
◆◆◆
ギィン、と金属音が響く。
飛来した槍を呂布が弾いた音である。
それを理解した紀霊は手元の三尖刀を投げる。
無論、駆けつけた趙雲に。
それを華麗に受け取り一振り、二振り。そして得心したとばかりに笑み、構える。
万夫不当と一騎当千。
それがいよいよ相対するのだ。
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