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真・恋姫夢想【凡将伝Re】5
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167 :
一ノ瀬
◆lAEnHrAlo.
[saga]:2022/08/22(月) 21:28:23.72 ID:XnSWc36z0
「アニキー、燃えてきたー!」
「もう、文ちゃんってば……」
官渡に据えられる主戦場。そこに挑むのは袁家の武を背負う俺たちで。腕が鳴るというものである。のだが。
「ああ、紀家の当主が陣頭で特攻するとか今回に於いては封印してくださいね」
なん、だと……。
「え、でも総大将の陣頭突撃が紀家の伝統で、それにより士気が……」
「だまらっしゃい!」
ぴしりと稟ちゃんさんは柳眉を逆立てる。
「此度の決戦。蜀の勝利条件。その大きなところは貴方を討ち取ることなのです。それを分からぬわけがないでしょう!」
「そうは言うがな……」
最前線で命を張ってこそ、皆がついてきてくれる。そいつが紀家のやりかた。とーちゃんもそうした。だから俺もそうする。と、決めていたのだが。
「主(あるじ)よ。某(それがし)では足りないかな?」
くす、と笑いながら気炎万丈。
一騎当千趙子龍である。
「や、星が足りないなんてあるはずないし」
「では、任せてもらいたい。
きっと某(それがし)はそのために武を磨いてきたのだからして。
部下の晴れ舞台、邪魔はしないだろう?」
「おうよ。そこまで言われたならば、引っ込んどくよ。だからさ」
熱く燃える星を軽く抱きしめて、突端の囀りを愛してから、笑う。
にこやかに送り出す。死地へと。
「天下無双にしてやるって、約束したよな。だから、みっともなくとも、死ぬな。
生きてたら色々何とかなる。だから、死ぬなよ」
きゅ、と星が俺の耳をつまみ、握り、捻って――痛い!痛い!
「主よ。そうじゃない。そうではない。
命じればいいのだ。勇ましく、な。
――勝ってこい、とな」
にまり、と笑う星。それでも。
「知るかよ。星に勝てとか、蛇足にもほどがあるだろうが。
勝つのは俺たちは勝つさ。きっとね。
だから、死ぬな、と俺は言う。
頼むから、死んでくれるなよ。どんなにみっともなくてもいい」
ぼすり、と俺の下腹に拳をねじ込んで星がにまりと笑う。
「主よ、それでは足りんよ。某(それがし)はこの中華で最強を、至強の座を勝ち取ると誓ったであろう。
それに、そんなに張りつめているのは主らしくないぞ?
もっとゆるーく、無責任に振舞ったらいいのだ。
なに、下手の考え休むに似たりとはよく言ったもの。考えるのは稟と風に任せればよい」
そして、槍を振るうのは自分の仕事だ。
趙雲はにやり、と笑う。不敵で無敵。それを証明するのだ。
――そして、戦端は開かれる。
遭遇戦、である。
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