真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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126 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/17(金) 22:33:25.30 ID:5pQtDyk00
「ねえ、二郎さん?」

くすり、と笑って麗羽様が俺に問いかける。

「わたくし、二郎さんの主として相応しくあるかしら?」

その問い。
それに俺は暫し言葉を失う。

「何言ってるんですか。
麗羽様ほど光輝に満ちて、俺が全身全霊で仕えようとか。
他にはありえないほどのお方ですよ」

いやまあ、俺の勤務態度については弁解せんといかんと思うけどな!公務ぶん投げて放浪とかしてたしな!
いや、あれはあれでね、さすらって大正解だったと思うけど!思うけど!思うよね?
そんなアホなことを考えている俺をどう思ったのか。

「――本当ですの?」

いつになく、真剣なまなざしで麗羽様が俺に問うてくる。

「勿論ですよ。あの日、あの時に誓ったのは本心ですとも。
お疑いあるならば我が胸を麗羽様の剣で貫いてください」

恭しく跪いて懐にあった短剣をそ、と胸に当ててニヤリ、と笑う。

「もう。二郎さんってば。そういうことじゃないってお分かりでしょう?」

ツン、と口を尖らせた麗羽様。やっべ。めっちゃかわいい。

「いやいや、むしろ俺の方がですね。
お見限りにならないかって日夜ヒヤヒヤしてますってば」

自己PRしてくださいと言われたら言葉に詰まってしまう俺である。
兵を率いては星に及ばず、頭脳労働では言うに及ばない。
あれだ、家柄だ!あと財力か。金とコネが俺のアピールポイント……ってなんだこの漂う駄目駄目臭。
某スペースオペラが舞台ならF男爵ポジだな、と確信する。
うむ。いかんな。どうにも思考がマイナス方向に向かいまくっている。
と。

「ね、二郎さん?」

そ、と俺の側に腰掛けてこてん、と顔をもたれかけてくる。

「わたくし、これで、頑張ってきたのですわよ?」

囁くように俺に問うてくる。

「や、麗羽様はそりゃあ頑張っていましたとも」

田豊師匠の英才教育に泣き言一つ漏らさずに――多少は漏らしたかもしんない――立ち向かっていたし……うん。
なんか表現おかしいけど、立ち向かうというのが一番正しいと思う。
ねーちゃんからも可愛がられていたしな!体育会的な意味で!
うん、マジ麗羽様すげえわ。俺なら逃げ出すことうけあいである。

「……麗羽様の頑張り。多分俺が一番分かってると思います」

斗詩と猪々子よりも、だ。だって彼女らが御側役になるよりも早く俺は麗羽様にお仕えしていたんだもの。
うんうんと頷く俺をどこか可笑しげに麗羽様は笑う。くす、と。

「覚えていらっしゃるかしら。南皮の城壁の上で炊煙を一緒に見たことを。
 民の、竃(かまど)に立つ煙を。
 だから。二郎さんが何を悩んでらっしゃるかも、分かっているつもりですわ」

「――勝てばよかろう、と思っても。それができません。それが勝敗の最善手かもしれない。幽州の民を根絶やしにする。そうすれば勝てる。でも俺にはできません」

幽州には何度も足を運んだ。そこで、馬鹿をした。笑って、呑んで、吐いて。
周りで囃し立ててた人たちを、酒を酌み交わした人たちを、だ。
単なる数字の羅列として切り捨てることが、できない。
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