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真・恋姫夢想【凡将伝Re】5
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124 :
一ノ瀬
◆lAEnHrAlo.
[saga]:2022/06/17(金) 22:31:42.70 ID:5pQtDyk00
魯粛からの報告書に目を通す。
経過は順調とのことだ。穀物等の、民の生活を支える食糧が凄い勢いで幽州から運び出されているのが付随した資料で分かる。
それによりじり、じりと価格が上昇しつつあるな。
逆に酒、茶、肉などの奢侈品については下落の一途(いっと)だ。この勢いは当分止まらんだろうという魯粛の私見も添えられている。どうやら母流龍九商会以外の商人たちもこの流れに乗って来たらしい。
これまでひたすら市場、相場の安定に努めてきた母流龍九商会が率先して市場を荒らすのだから、これに乗らん奴は商才がないと断言できる。
気の利いた豪農もそうだろう。穀物は買い上げ、奢侈品は売りさばく。これだけで濡れ手に粟(あわ)ってやつだからな。
「まあ、こうして見ると醸造所と蒸留施設を南皮に集中させたのは正解だったなあ」
俺が流し読みにする魯粛の報告書。それを俺の数倍(以上だろうが考えるだけ無駄)の速度で目を通すのは張紘。
俺の義兄弟にして今回の任務(ミッション)の総責任者であったりする。
いやまあ、今回のそれには思う所があるみたいなんだけんども。
「まあ、な。運び込んだ穀物を酒にできる。それをまた幽州に売りさばくって循環だ。
しかし。だ。これで幽州にも蒸留施設があったらいざ物資を絞る段になってあちらで供給されてしまうしなあ」
蒸留酒――火酒と呼称している――の扱い、製造方法については最上級の機密として扱われている。華琳を始め、色々技術供与の要請も多いのだが今のところこの技術をオープンにするつもりはない。
特に華琳には内緒だ。絶対にだ。だって絶対に面倒くさいことになるもん。
「――幽州においては治安も悪化の一途とのことだ。
これも目論見どおりだな?」
こちらを見ようともしないで言う張紘の言葉に尖ったものを感じざるを得ない。いや、そんな奴じゃない。きっとそれは俺の後ろめたさだ。
中華全土の獄に繋がれていた凶悪犯、これから裁きを受ける死刑囚。それらは随時幽州へと放逐されている。更生なぞありえんような輩たち。それを提言したのは風であった。
事前から準備していたかのように、次々と追放される罪人たちをあちらこちらに振り分ける手腕には脱帽である。
閑話休題。
まあ、張紘も清濁併せ飲む器量があるから、色々と思う所があっても理解してくれていると思っている。張紘からして本当に駄目なことにはきっちりと言ってくれるはずさ。きっとね。
「にしても、二郎よ。軍の編成はいいのか?」
その声にひらひらと手を振って応える。
「いいのいいの。俺がいても邪魔なだけだし」
「……そう言われるとおいらの邪魔しに来たのかと思ってしまうんだが」
「そ、そんなことねーし!めっちゃ相談したいこととかあったし!」
ちなみにとっても頼りになる義兄弟の張紘君は北伐の物資の調達あれこれの手配をしています。北伐軍内部で必要とされる物資の概算、内部での差配については華琳が担当なんだが、それを用意するのが張紘ってわけだ。
無論出兵の規模が決まらんことには物資の手配もできんのだが、概ね十万前後になる予定で動いている。
俺としてはそれこそ百万の兵で蹂躙したろうと思っていたんだが。
「一声十万とは恐れ入ったよ。むしろ呆れたよ。なんだそれ。なんだよそれ」
そう。北伐軍が実際に準備を始めたら、幽州で彼奴等は募兵をしたんだよ。それはいい。
劉備が呼びかけたらあれだ。十万の兵が集まるとかどういうことなの……。
んでもってこっちが兵を増やせば増やすほどあっちも増員するってことで少数――ではいないんだけんども――精鋭でもって出兵することになった。
まあ、あまりに兵数が大きくても扱いきれなくなっても意味ないしな!俺に用兵の才とか多分ないし。
「ま、頼りにしてるよ」
俺の声に、あいよ、と応えて張紘は俺と馬鹿トークしながらもせっせと書きつけていた書類を放り投げてくる。
「まあ、なんだ。おいらは、どんなことがあっても二郎の味方さ。そこは安心しといてくれ」
気軽さを装い、照れくさそうに言い捨てて急ぎ足で室を辞していく。
ありがてえなあ。
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