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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.2

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194 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:02:03.77 ID:IcRhkOje0

発言力:♡×5→♡×4

冬優子「確かにカメラに関しては田中摩美々の偽装工作ではないけど……」

冬優子「それは田中摩美々が図書館で偽装工作をしなかった証拠ではないわよね?」

(うーん、少しだけ違ったみたいだ)

(田中摩美々の行動として黛冬優子が列挙しているものを完全に否定するものをぶつけなきゃならねーか……?)

-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

発言力:♡×4
集中力:☆×3

コトダマ
‣【図書館の入退館管理カメラ】
‣【血まみれの本】
‣【冬優子宛の脅迫状】
‣【ボウガン】


摩美々「犯人は私で、私が千雪が殺した」

摩美々「それは間違ってないケド……」

摩美々「この事件には【他の人間が絡んでいる】のは間違いないよー」

冬優子「そ、そんなこと言われたって……」

冬優子「あんたがふゆに【脅迫状を送り付けて】スケープゴートにしようとしたんでしょ!?」

冬優子「【図書館で偽装工作までして】……入念にやってたじゃないの!」

果穂「犯人でもない、ひがい者でもない第三者がいるんでしょうか」

果穂「まさか、この事件にはくろまくがいるんですか……!」

果穂「悪の組織の大ボス、ですね……!」


【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(ロンパ候補の発言の数が減る)

↓1
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 22:07:02.62 ID:pGkL0z1HO
集中力
196 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:09:36.68 ID:IcRhkOje0

集中力:☆×3→☆×2

【集中力を消費しました】

【ロンパ先の候補が減少しました】

【集中力の効果対象が変わりました】

-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

発言力:♡×4
集中力:☆×2

コトダマ
‣【図書館の入退館管理カメラ】
‣【血まみれの本】
‣【冬優子宛の脅迫状】
‣【ボウガン】


摩美々「犯人は私で、私が千雪が殺した」

摩美々「それは間違ってないケド……」

摩美々「この事件には他の人間が絡んでいるのは間違いないよー」

冬優子「そ、そんなこと言われたって……」

冬優子「あんたがふゆに【脅迫状を送り付けて】スケープゴートにしようとしたんでしょ!?」

冬優子「図書館で偽装工作までして……入念にやってたじゃないの!」

果穂「犯人でもない、ひがい者でもない第三者がいるんでしょうか」

果穂「まさか、この事件にはくろまくがいるんですか……!」

果穂「悪の組織の大ボス、ですね……!」


【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
2.集中力を使う(コトダマの数が減る)

↓1
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/26(水) 22:11:02.12 ID:cNxBVQgF0
脅迫状を送りつけて に 冬優子宛の脅迫状
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 22:11:08.29 ID:lsA6xdjG0
冬優子宛の脅迫状
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 22:11:11.21 ID:pGkL0z1HO
脅迫状を送りつけてに脅迫状
200 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:12:03.63 ID:IcRhkOje0

ルカ「それは違うぞ!」論破!

【BREAK!】

ルカ「そうだ……こいつの言うとおりだ。こいつに脅迫状が出せたはずがねえ……!」

冬優子「は、はぁ?! あんたも見たでしょさっき、ふゆの脅迫状!」

冬優子「ふゆはこれのせいで犯行を擦り付けられそうになったのよ!? なら田中摩美々が出したとしか思えないでしょ!?」

ルカ「確かにその状況だけ見ればそうだがよ……お前が素を見せた時のこと、思い出してみろよ」


≪智代子「え、えええええええええええ!?!?」

夏葉「い、今何が起こったの……?」

透「おー……アンビリーバボー……」

摩美々「ちょ、ちょっと……こんな冬優子……【見たことない】んですケド」

美琴「びっくりした……」

冬優子「……」

冬優子「な、なーんて、冗談です♡」≫


ルカ「明らかにこいつは動揺していた、あれは演技なんかじゃねえ。本気でお前の豹変ぶりに驚いていた反応だったぞ」

摩美々「実際、冬優子の素なんてあの時まで知らなかったですからぁ……」

摩美々「摩美々たちに見せる顔がすべてじゃないとは思ってたけど、あそこまでは予想外だったんだよねー」
201 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:13:11.25 ID:IcRhkOje0

冬優子「じゃ、じゃあ何……? こいつは犯人じゃないってこと……?」

ルカ「いや、それはこいつ自身が犯行を自供している以上それは無い」

ルカ「となると、お前に罪を擦り付けようとした人間はまた別になるってことだ」

摩美々「そもそも摩美々が犯人になってもらおうとしたのは愛依の方だしねー」

愛依「う、うち!?」

摩美々「下剤入りドリンク、摩美々が仕掛けたのはそっちの方だよ」

愛依「そ、そんな……摩美々ちゃん、悪戯がすぎるってぇ……」

ルカ「大体、お前の素のことを知ってる人間なんてごくごく一部。この事務所でもほとんどの人間が知らない」

ルカ「それと……こうなると不自然な点が他にも浮上する。図書館二階のボウガン、あれもお前が置いたものじゃないんじゃねーか?」

摩美々「……!」
202 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:13:59.19 ID:IcRhkOje0

ルカ「だって、そもそもストレイのこいつを図書館に呼ぶ計画なんかじゃないならあれを置く意味もない。しかもボウガンの型番の違いなんてミスも犯してる」

ルカ「第三者の人間が、お前の計画を知ったうえで偽装工作を無断で行ったような妙な杜撰さがあるんだよ」

摩美々「摩美々の計画を乗っ取ろうとしたってことですかぁ?」

美琴「どちらかというと、計画の補強かな。弱みを握った相手なら脅迫の証拠も提出できないし、ただ大会を途中退出しただけの愛依ちゃんよりも疑念を強めることができる」

ルカ「そして、そんなことができる人間は限られる。だってこいつの本性を知っていた人間はほんのわずか、なんだからな」

冬優子「ま、まさか……」

(やっと掴んだ……!)

(私たちに紛れて推理をかき乱そうとする【狸】、その尻尾……!)

ルカ「事件をかき乱した第三者は……お前だ!」

-------------------------------------------------
【怪しい人物を指摘しろ!】

↓1
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 22:29:16.49 ID:pGkL0z1HO
せ、芹沢あさひ?
204 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:30:56.57 ID:IcRhkOje0

ルカ「お前しかいない!」

【解!】

ルカ「なあ、中学生。お前……どういうつもりなんだ?」

あさひ「……」

ルカ「そいつに脅迫状を送り付けておいて、いざ裁判になったら庇い立てる。まるでお前の手のひらで踊る私たちを嘲笑うようじゃねーか」

あさひ「……」

ルカ「なんとか言えよ! お前はずっと、私たちの推理をどんなつもりで聞いてたんだっつってんだよ!」

あさひ「……」
205 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:31:31.98 ID:IcRhkOje0





あさひ「……あー、そういうことか」





206 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:32:39.78 ID:IcRhkOje0

あさひ「そっすね、冬優子ちゃんの性格の秘密を知ってたのはこの島ではわたしと愛依ちゃんだけ」

あさひ「愛依ちゃんは摩美々ちゃんに犯行を既に擦り付けられる役になっている」

あさひ「……なら、わたししかいないんだ」

ルカ「あ……?!」

愛依「あ、あさひちゃん、違うよね!? あさひちゃんがそんなこと……」

あさひ「……やるっすね」

ルカ「ハッ、バレねえと思ったか? それとも、そいつがまさか本性を暴露するとは思わなかったか?」

ルカ「どのみち今回はお前の計画は失敗に終わったってことなんだよ」

智代子「ちょ、ちょっと待って! 今回『は』……?」

智代子「今回ってことは……前回があるの……?」

(チッ……結局、言わなくちゃならねーか……)

(前回の事件に残る謎、そしてそれを振りまく【狸】の存在……)
207 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:34:12.69 ID:IcRhkOje0

ルカ「前回の事件、七草にちかが風野灯織を殺した事件は覚えてるよな?」

夏葉「忘れるはずがないわ、彼女が透を殺害する目的の計画が、些細な出来事でねじ曲がってしまった事件よね」

透「……あー」

ルカ「あの事件、解決したようにみえて……まだ謎が残ってたよな?」

果穂「なぞ……ですか?」

ルカ「暗視スコープと鉄串だ。七草にちかの計画では風野灯織が暗視スコープを使えず転倒するなんてものは入っちゃいない。ただあいつは暗がりの中で刺し通せればそれでよかったんだからな」

ルカ「そのせいで私が床下に潜んでいただとか疑われることになって……その時に疑いをかけてきたのも、お前だったよな」

あさひ「……そうだったっすか?」

ルカ「そして鉄串。風野灯織の命を奪った一本の他に、事件発生前に一本無くなっていた。あれも私を疑う一要因だったはずだ」

あさひ「……」

208 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:35:33.54 ID:IcRhkOje0

ルカ「そして今思えば……七草にちかがターゲットを間違えた夜光塗料塗りの花飾り。あれを作ったのもお前だったよな」

果穂「え……?」

夏葉「ちょ、ちょっと待って頂戴……それじゃまさか……」

夏葉「あの事件は最初から……あさひによって、あさひの思い通りに書き換えられていたというの!?」

ルカ「私たちの中に何食わぬ顔して潜伏して仲間面の仲良しこよし。でもその腹の内はそんな甘っちょろいもんじゃない」

ルカ「私たちの命を自分の思い通りにかき乱すだけの【狸】野郎だったんだよ……!」




愛依「そ、そんなわけないじゃん……! あさひちゃんがそんなことするわけない!」




あさひ「愛依ちゃん……」
209 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:36:42.37 ID:IcRhkOje0

愛依「さっきから聞いてればルカちゃんひどすぎるよ! あさひちゃんが冬優子ちゃんの大切な秘密をキョーハクの材料に使うなんてあるはずない!」

冬優子「……脅迫された本人が言うことじゃないと思うけど」

冬優子「ふゆも流石にこいつがそんなことするとは思えない。確かに何考えてんのかわかんないような奴だけど……ふゆの直感ではあんたのそれには同意できないわ」

ルカ「……ハッ、勝手にしろ」

あさひ「……」

愛依「あさひちゃん、ほら、みんなに違うって言おう? あさひちゃんがこんなことするわけないもんね!?」

あさひ「愛依ちゃん、無駄っすよ」

愛依「えっ!?」

あさひ「状況的には、わたししかこれは不可能……今いくら反論したって無駄っす」

(……何を余裕ぶってやがる)

(あいつしかいねえ、あいつが狸なのは明らかなんだよ……!)
210 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:37:55.37 ID:IcRhkOje0

摩美々「……とりあえず、摩美々の事件をかき乱したのがあさひなのは分かったケド」

摩美々「あさひが千雪のお腹に刺さってた矢を抜いたってのはおかしいよねー?」

果穂「はい……あさひさんは最後まであたしたちといっしょにいました……」

果穂「千雪さんを発見するより先に図書館で矢をぬくのはできません……」

ルカ「それはそうなんだよな……」

美琴「……なら、ちがうんじゃないかな」

ルカ「はぁ?」

美琴「この事件の都合がつかないところを第三者に負担させようとするから無理が出る。それなら、もっと別の視点から見てみればいいんじゃない?」

(もっと、別の視点から……?)

(【第三者以外の人間】が……関係してるってのか……?)

-------------------------------------------------
【ロジカルダイブ開始!】

発言力:♡×4

Q1.千雪の腹に刺さった矢はどこで撃たれた?
A.図書館内 B.橋の上 C.花火大会会場

Q2.千雪の腹に刺さった矢が抜かれたのはどこ?
A.橋の上 B.図書館までの道中 C.図書館内

Q3.千雪の腹に刺さった矢を抜いたのは?
A.黛冬優子 B.芹沢あさひ C.田中摩美々 D.桑山千雪

Q4.矢をわざわざ抜いた目的は?
A.証拠隠滅のため B.とどめを刺すため C.再利用するため D.犯行を擦り付けるため


【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】

↓1
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/26(水) 22:47:23.09 ID:cNxBVQgF0
BCDA
212 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:50:21.67 ID:IcRhkOje0

発言力:♡×4→♡×3

(千雪と黛冬優子、それに芹沢あさひ以外の人間が関与はしていないはずだ……)

(なら、あの矢を抜いた人間として考えられるのも千雪で間違いない)

(じゃあ、千雪が矢を抜いた理由って……?)

(あいつの性格を考えてみると……その目的が見えてくるかもしれない)

-------------------------------------------------
【ロジカルダイブ開始!】

発言力:♡×3

Q1.千雪の腹に刺さった矢はどこで撃たれた?
A.図書館内 B.橋の上 C.花火大会会場

Q2.千雪の腹に刺さった矢が抜かれたのはどこ?
A.橋の上 B.図書館までの道中 C.図書館内

Q3.千雪の腹に刺さった矢を抜いたのは?
A.黛冬優子 B.芹沢あさひ C.田中摩美々 D.桑山千雪

Q4.矢をわざわざ抜いた目的は?
A.証拠隠滅のため B.とどめを刺すため C.再利用するため D.犯行を擦り付けるため


【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】

↓1
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 22:52:17.54 ID:LVK+/45L0
BCDB
214 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:53:29.95 ID:IcRhkOje0

ルカ「推理はつながった!」

【COMPLETE!】

ルカ「そうか……単純な話だったんだ……矢を引き抜いた人物は最初っから私たちは知ってたんだ」

智代子「だ、誰なの!? ルカちゃん!?」

夏葉「事件の犯人である摩美々? 脅迫されていた冬優子? 事件をかき乱す【狸】のあさひ?」

ルカ「いや、この事件には深くかかわっている人間がもう一人いるだろ?」

雛菜「ん〜〜〜〜〜〜?」



透「あ、あれだ。【被害者】」



ルカ「ああ、矢を抜いたのは、撃たれた千雪本人だったんだよ」

夏葉「そんな馬鹿な……! 撃たれた本人が矢を抜く理由なんてないわ!」

夏葉「あの矢は深く突き刺さっていた、引き抜きなんかしたらその瞬間命を落とすことは明白じゃない!」
215 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:55:03.51 ID:IcRhkOje0

果穂「え、えっと……それって……」

美琴「刺されただけじゃ出血はそこまでしないんだ。刺さった凶器が蓋の役割を果たすからね」

美琴「一番出血量が多いのは抜かれた時、その瞬間辺りには大量の血が流れることになる」

ルカ「千雪が狙ったのはそれだったんだよ」

愛依「ど、どーいうこと……? なんで、わざわざ血を流すわけ……?」

あさひ「もしかして……【自殺】っすか……?」

摩美々「は、はぁ……? ど、どういうことですか、それ……?」

ルカ「千雪は自分の手で矢を引き抜くことで、自分自身の死因を矢が突き刺さったことから、矢を引き抜いたことに替えようとしたんだ」

ルカ「何度も言っているように、あいつに突き刺さった矢はかなり深かった。満足な治療設備もないこの島じゃ自分の命が助からないことは目に見えていたんだと思う」

ルカ「だからこそ、残り僅かな命を使って、その運命を変えたかった。自分の手で自分自身を殺したことにしたかったんだ」

摩美々「そ、それってつまり……」

摩美々「他のみんなも道連れにしようとしたってことですか……?」

愛依「え……?」

摩美々「だって、そうじゃないですかぁ……千雪のその引き抜くという動作一つでクロは変わってしまう……そうしたら、摩美々たちは正しい正解を導き出せない可能性だって出てきてしまう……」

摩美々「もうこのままじゃ死んでしまう……それならいっそ、って……」



ルカ「そんなわけねーだろ」


216 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 22:56:01.48 ID:IcRhkOje0

ルカ「何馬鹿なこと言ってんだ、お前らの方が千雪との付き合いはなげーだろうが」

ルカ「あいつがそんな恨みがましい真似をすると思うか? あいつはいつだって自分以外のことを気にかけて、勝手に一緒になって悩むような、そんなお節介女なんだよ」

美琴「……私も、千雪さんの狙いはもっと別の所にあると思う」

美琴「千雪さんがクロになったとしたら、大きく変わることが一つあるよね?」

摩美々「はぁ……?」

ルカ「千雪は……お前を救おうとしたんだよ、田中摩美々」

摩美々「……」

ルカ「正確には『ボウガンのトラップを作った人間』を、だろうな。直接の死因が矢を引き抜いたことに変われば、ボウガンを仕掛けた人間はクロではなくなる」

ルカ「そいつが桑山千雪の命を奪ったという事実だけでも雪ぐことができるんだ」

摩美々「そ、それって……」

ルカ「あいつは最期の瞬間、その一瞬まで自分以外の誰かのことを思っていた」

ルカ「他の誰かが自分を殺したという事実を背負って今後生きていくこと、学級裁判という舞台で孤立無援の立場で生き残りをかけて戦わないといけないこと、その結果他の連中を欺かなければならないこと、裏切りを行わねばならないこと」

ルカ「……そんなの、あいつは黙ってみていられない人間だと思う」

摩美々「……」

ルカ「ホント、お節介が過ぎるよな」

(まあ、それがあいつらしいけどな)

ルカ「……私たちが投票すべき相手も、これで決まったな」

ルカ「この事件のクロとして私たちが指摘しなくちゃいけないのは……」

-------------------------------------------------
【クロを指摘しろ!】

↓1
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 22:58:11.17 ID:LVK+/45L0
【桑山千雪】
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 22:58:45.55 ID:lsA6xdjG0
ちゆき
219 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:00:08.11 ID:IcRhkOje0

ルカ「……」

【解!】

◆◇◆◇◆◇◆◇

「……はぁ……はぁ……」

「……痛い……」

ズキズキと痛む下腹部に目を向けると、月明かりに反射して銀色の柱が輝いた。
私の身体からこぼれる赤い液体はその柱を伝ってぽたぽたと地面に落ちる。

「はぁ……はぁ……まだ……ダメ……」

「まだ……ここで死ぬわけには……いかないもの……」

「甘奈ちゃん……ごめんね……あなたを守ることができなくて……」

「霧子ちゃん……ごめんね……あなたを許すことができなくて……」

「はぁ……はぁ……」

飛びそうになる意識を何度も何度も無理やり引き戻して、その歩みを進めた。
右足を引きずり、左足を引きずり、図書館にたどり着くことだけを目指して、歩く。
220 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:01:25.31 ID:IcRhkOje0

「……やっと……着い……た……」

図書館にたどり着いたとき、もはや下腹部の痛みは感じなくなっていた。
痛みとは別の、生暖かく突き刺すようなものが全身に通い始めている。
私の腹に突き刺さった矢から血液に載せて全身に行き届こうとしているそれは、直感で分かった。
遅効性の【死】だ。
死が、今まさに全身に回ろうとしている。
持って後数分、いや、一分にも満たないかもしれない。

「……はぁ……はぁ……」

それでも意地と執念でなんとか体を動かした重たい扉をなんとか押し開けて、わずかな隙間から図書館に侵入する。
そして山積みになっていた本の中から、その一冊だけを手に取った。
もはや視界すらも霞んでいたけど、それが私の探していた一冊だというのはなぜだかすぐに分かった。
誰にも読ませられない、一冊。私から漏れ出る液で汚して、侵して、使えなくする一冊。
その本を左手に携えて、もう片方の手は銀の柱に当てた。私の腹を突き破るそれを握れば、腹の肉と破れた臓物とが、ゴチュッと静かに喚く。
221 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:02:32.66 ID:IcRhkOje0

「……これで……あなたは……クロじゃ……なくなる……」

私には、その【あなた】が誰かはわからない。
でも、その【あなた】を私は赦したい。救いたい。
ほんの一時の気の迷いで、すべてを失ってしまうなんてこと、私は認められないから。
たとえ【あなた】が私を憎んでいようと、恨んでいようと、それで人生を棒に振る必要なんてない。
桑山千雪を殺したという十字架は、私が背負えばいい。
それで【あなた】が生き永らえることができるなら、その後の残った時間でいくらでも反省できる時間はあるでしょう。

私は【あなた】がいつしか私の死に立ち返って、涙を一滴でも流してくれるなら、それでいい。
……なんて、少しだけ欲張りなのかな。でも、これぐらいは許してくれるよね。


「……はぁ……はぁ……」


____だって、私はまだまだお子様なんだから。





「ばいばい……みんな……!」

力を込めて、銀の柱を引き抜いた。


222 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:03:18.23 ID:IcRhkOje0

◆◇◆◇◆◇◆◇

ルカ「……これでいいんだろ、千雪」

ルカ「お前が最期の最後に残した希望……ちゃんとたどり着いたぜ」

摩美々「そん、な……千雪は……自分を殺そうとした人間のために……?」

恋鐘「……それも、誰かもわからん、犯人のためばい」

結華「……まみみん、今まみみんが背負うことになったものってさ、相当に大きいよ」

結華「千雪姉さんが許してくれたこと、そして千雪姉さんがまみみんを救うために投げうったもの……その全部をこれから背負っていかなくちゃダメなんだ」

摩美々「……そうだねー」

ルカ「ようやく、終わったんだな」

ルカ「私たちはこれで真実にたどり着いた……この学級裁判の正しい結末、そして私たちのこれから生きていくための道筋に」
223 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:04:00.85 ID:IcRhkOje0





あさひ「それは違うっすよ」





224 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:04:48.75 ID:IcRhkOje0

冬優子「あ、あさひ……? あんた……」

あさひ「今ルカさんがたどり着いたのは、事実であって結末じゃない。わたしたちが目指すべき答えじゃないっす」

ルカ「テメェ……まだ裁判をかき乱すつもりかよ」

愛依「ま、待って……! みんながあさひちゃんを疑う気持ちはわかる……いやわかんないけど!」

愛依「でも、何か大事なことを言おうとしてるっぽいし……聞いてあげて!」

夏葉「……ルカ、いったん落ち着きましょう」

夏葉「裁判はあくまで公平に裁く場。発言権は平等に全員に与えられるべきだわ。その妥当性を問うのは、発言が終わってからの話よ」

ルカ「……わかった、言うだけ言いな」

(こいつが何を言おうとも耳を貸すつもりはない)

(なんたってこいつは【狸】、面白半分で事件をかき乱す野郎なんだからな)

(今私たちがたどり着いた真相を覆す方法なんて……)
225 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:05:46.00 ID:IcRhkOje0



あさひ「クロの判定をするのは、千雪さんじゃなくてモノクマっす」



あさひ「わたしが言いたいのはそれだけっすよ」

ルカ「……は?」

ルカ「お前、それどういう意味だよ……おい!」

恋鐘「何を当たり前のことを急に言い出すばい……そげんこと、このコロシアイ南国生活においては当然のことっちゃろ?」

美琴「……もしかして」

美琴「ルカ、この裁判では何度も言われてきたことだけど……推理だけで真実にたどり着くことはできないの」

美琴「大切なのは、確固たる裏付け。今のルカの結論には、それがない」

ルカ「う、裏付けがない……だと……?」

(どういう意味だ……?)

(今の私の推理で裏付けがないって……どういうことなんだ……?)

-------------------------------------------------
【正しい選択肢を選べ!】

・千雪が矢を引き抜いた証拠がない
・モノクマが千雪をクロにするとは限らない
・本当にボウガンのトラップが設置されていたかわからない

↓1
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/26(水) 23:07:53.99 ID:cNxBVQgF0
モノクマが千雪をクロにするとは限らない
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 23:07:56.64 ID:4D24V2eV0
千雪が矢を引き抜いた証拠がない
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 23:08:09.02 ID:lsA6xdjG0
モノクマが千雪をクロにするとは限らない
229 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:09:41.07 ID:IcRhkOje0

ルカ「……!」

【解!】

ルカ「ボウガンのトラップで突き刺さった矢、あれを引き抜いたことで千雪は命を落とした……そこは間違いないはずだ」

ルカ「でも、その場合で千雪がクロになるかどうかは……私たちの希望的観測でしかなかった……」

結華「……え、そ、それじゃあまさか……」

恋鐘「摩美々がクロになる可能性も、まだ残っとるばい……?」

摩美々「……!」

美琴「直接の死因は大量出血だけど……その原因となった矢を刺したのは摩美々ちゃん……」

美琴「どちらをクロにするかの判断は……私たちじゃつけられないよ」

恋鐘「し、心配せんでよかよ! 千雪は命を懸けて摩美々を救うために動いてくれたばい! その頑張りを無碍にするようなわけ……」
230 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:10:38.06 ID:IcRhkOje0




モノクマ「鶏が先か、卵が先か」



モノクマ「この命題に世界中の哲学者がナン百年と頭を悩ましてきました」

モノクマ「ですが、ボクはこう言いたい!」

モノクマ「結論は原因より先に立たず! 卵というものが存在する以上は、ニワトリが先に存在していた、それ以外の結論はないだろう!」

モノクマ「そして、今私たちの前にはある命題が横たわっています」

モノクマ「刺した人間が悪いのか、矢を引き抜いた人間が悪いのか」

モノクマ「これもボクは同じように考えます」
231 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:11:18.33 ID:IcRhkOje0




モノクマ「矢を引き抜くという動作は、そもそも矢を刺すという動作が無ければ存在しえない!」




232 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:12:49.21 ID:IcRhkOje0

モノクマ「まあ、ていうか常識的に考えればそうでしょ。矢を刺して抜くとこまで全部自分でやってれば流石に自殺だけどさぁ……そんなんじゃないし」

結華「……そん、な」

摩美々「……はぁ、やっぱりそうですよねー」

摩美々「ちょっとくらいは希望持っちゃいましたケド……そう甘くはないですよねー」

恋鐘「ま、まだばい……摩美々がクロなわけなか! もう一度ルカの推理を洗い直して……」

夏葉「……恋鐘、ルカの推理を摩美々はすべて認めているの」

夏葉「……これ以上、結論が裏返ることはないわ」

恋鐘「バカ言わんといて! うちはいつまでも摩美々の味方やけん、投票なんかせんよ!」

結華「そうだよ……まみみんに投票なんて、できるはずない……」

摩美々「……」

摩美々「……ルカ、最後に摩美々からお願い一ついいですかぁ?」

ルカ「……もう一つどころじゃなく聞いてる気がするけどな」

摩美々「この分からず屋二人のために、噛み砕いて事件の流れを整理してやってくれないー?」

摩美々「まぁ、素直に聞くかどうかは別としてさぁ……それはけじめとしてちゃんとつけておかないと、摩美々も寝覚めが悪いのでー」

ルカ「……チッ、面倒くせぇ……」

ルカ「わかったよ、改めて田中摩美々、お前の犯行を最初から最後まで振り返る。それでこの事件も終わりにするぞ」

摩美々「ん、頼んだぁ」

ルカ「行くぞ、これがこの事件の真実だ……!」
233 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:14:06.48 ID:IcRhkOje0
-------------------------------------------------
【クライマックス推理開始!】

【act.1】

ルカ「今回の事件は、仕組み自体は簡単な話だった。ただ、証拠隠滅と犯行の擦り付けが丹念に行われていたことで、私たちの思考は犯人の思い通りに操られてしまっていたんだ」

ルカ「事件が起きたのは花火大会の最中。犯人は花火大会に参加する前に準備の悉くを終えてしまっていた。といってもやることは単純だ。犯行を擦り付ける役として、ギャル女の飲み物に下剤を仕込む。そのうえで、千雪の命を奪うためのトラップを第2の島と中央の島を結ぶ橋の柱に取り付ける。これだけの話だったんだ」

ルカ「後は適当に動機のゲームに手を付けようとしているとでも触れ込めば、ゲームの攻略を阻止しようとしている千雪は勝手にジャバウォック島に向かい、その途中で仕掛けを作動させて命を落とす。単純だが、目に見える証拠も残りづらい計画だ」

ルカ「でも、この事件はそれだけじゃ終わらない……私たちの中に潜む【狸】、芹沢あさひによる介入があったんだ」

◆◇◆◇◆◇◆◇

【act.2】

ルカ「どこから中学生が事件のことを嗅ぎつけたのかはわからないが、こいつは今回の犯人に相談をするようなこともせず、単独で行動を始めた。まず最初に行ったのが、黛冬優子への脅迫状の送付」

ルカ「あいつがこの島に来てからもずっと隠していた本性を公開すると仄めかした脅迫状、まあ裁判で追い詰められて結局その秘密は図らずも公開されることになっちまったが、その前段階ではこいつを脅迫するにはこれ以上ない材料だったはずだ」

ルカ「そして、黛冬優子に犯行を擦り付けるために、今度は図書館の内部にボウガンを設置した。千雪の命を奪った場所をこの図書館内部に誤認させるためなんだろうが……生憎、千雪の腹に刺さった矢とは型番が違った。むしろこのボウガンはここ以外で殺害が行われたことを示す手がかりになっちまったんだ」

234 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:15:16.52 ID:IcRhkOje0

◆◇◆◇◆◇◆◇

【act.3】

ルカ「そして花火大会本番。犯人は何食わぬ顔で一番遅れて参加、これは橋にトラップを仕掛けるのに自分より後に橋を渡る人間がいると不都合だからだ。犯人は予定通りに計画を進めていく、下剤をもって犯行を擦り付ける役のギャル女にトイレに籠らせアリバイを無理やりに奪う」

ルカ「でも、ここから犯人にとってのイレギュラーが連続する。まず第一に爆破騒動だ。モノクマが気まぐれで混ぜた爆弾によって島中が揺れ、図書館の本も二階から落下して一階へ。これも今思えば、狸が意図的に爆弾を混ぜていたってことなんだろうな。なんたって芹沢あさひは花火の準備係になっていたんだから」

ルカ「爆破騒動のさなか、千雪は思ったはずだ。今の衝撃でもしかすると攻略本が他の人の目につくところに落下しているかもしれない、確かめないと、ってな」

ルカ「そしてここからは芹沢あさひの予定通りに事件が進行する。まず最初に攻略本を確かめるために千雪が入室。その次に脅迫状を手にした黛冬優子が入室する。千雪は慌てて身を隠した。なんたって、ここでこそこそ行動しているのが見つかれば、他の誰かが攻略本の存在に勘づいてしまうからな」

ルカ「黛冬優子はそのまま暫く呼び出し主を待った後、痺れを切らして退室。千雪がその背中を見届けると、一つの疑念が沸き上がる。もしかして、黛冬優子は攻略本を見つけて、ゲームをクリアするために去ったんじゃないだろうか」

ルカ「そうなると千雪も黙っているわけにはいかない、なんとしてもそれだけは防がないといけない……千雪はすぐにその後を追った。図書館の入り口に取り付けられた入退室管理用のカメラを止めてからな」

ルカ「出入りする姿をこれ以上録画されたくなかった……ってところだろうな。後でデータを消すつもりだったのかもしれない、一応ノクチルの二人に説明に行くっていう体で大会を抜け出してたんだしな」

235 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:16:08.01 ID:IcRhkOje0
◆◇◆◇◆◇◆◇

【act.4】

ルカ「千雪が向かったのは中央の島のジャバウォック公園。黛冬優子がゲームをクリアしに向かったんだとすれば、その目的地はここだ。そして、公園に行くためには必ず通る場所がある。……そう、犯人が花火大会に参加する前にトラップを仕掛けておいたあの橋だ」

ルカ「橋の柱にワイヤートラップを設置し、通過の際に足を引っかけるとボウガンが撃たれる仕組み……それが作動した瞬間、千雪の脛には切り傷が付いた。そして見事狙い通りに矢は千雪の下腹部に深く深く突き刺さった」

ルカ「……確かに致命傷の一撃ではあったが、それで千雪が即死するには至らなかった。矢が突き刺さるだけじゃ出血もそこまでない、そして何より、千雪には強い精神力があった。『誰も自分を殺したクロにしたくない』『攻略本の存在だけは隠し通したい』その思いでなんとか踏みとどまったんだと思う」

ルカ「そしてどうにかたどり着いた図書館で、千雪は攻略本を手に取り、自分の手で矢を引き抜いた。その瞬間、矢が蓋の役割を果たしていた分大量の血が流れだした。現場には千雪の血が水たまりのようになるほど、死因になるには十分な量だったと思う」

ルカ「でも……モノクマの結論は違った。直接の死因よりも、それが生じるきっかけとなったトラップを仕掛けたほうがクロとしては適切だという判断だった。千雪の命がけの策は……無駄に終わってしまった」

ルカ「でも、だとしても私たちがあいつの死から感じ取れる想いは本物だ。あいつは最期の最後まで、他の人間のことを想って行動していた。それは間違いねーんだ」


ルカ「……だから、目を背けるんじゃねー」



ルカ「この事件の犯人は、【田中摩美々】なんだよ」



【COMPLETE!】

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236 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:17:46.22 ID:IcRhkOje0

ルカ「私たちにできることは、自分たちが生き残るために他の人間を切り捨てることだ。その判断から逃げ出すことは、自分自身の命を投げ出すことと同じ」

ルカ「そんな無責任な真似、してんじゃねーよ」

結華「……まみみん、一つだけお願いしてもいい?」

摩美々「ん、一つだけねー」

結華「さっきさ、千雪姉さんが命がけでまみみんを守ろうとしたって話になった時……背負ったものがあるって話をしたよね」

摩美々「千雪が許したこと、そして許すために投げうったもの……だったよねー」




結華「……それ、これから先は三峰が代わりに背負うから」



237 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:18:26.27 ID:IcRhkOje0

恋鐘「ゆ、結華……結華は摩美々を諦めると?!」

結華「そんなわけない! 三峰だって……まみみんがクロだなんて、今も信じてない……」

結華「でも、もし、もし仮に……ここでまみみんがクロとして、処刑されてしまうようなことがあるのなら……」

結華「……私が、それを背負う責務があるの」

摩美々「三峰……それって」

結華「ほら、だってそうでしょ? 三峰ってばアンティーカのみんなのお姉さんなんだから! かわいい妹が困ってるなら手を差し伸べるし、かわいい妹から受け継げるものは受け継ぎたい」

結華「だからまみみん、一つだけお願い。まみみんの素直な気持ちを聞かせてほしいな」

結華「いつもみたいに余裕ぶった態度で取り繕ってない、ありのままの……あなたの気持ちを」

摩美々「……ふふー、料金は高くつきますよー」

結華「あちゃー、困ったなぁ……生憎持ち合わせはメダルが30枚程度しか」

摩美々「手元にあるじゃないですかぁ、お金に替えられないだけの価値のある」

摩美々「……投票権が」

結華「……ホント生意気な妹を持ったものですよ、こりゃ」
238 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:19:03.81 ID:IcRhkOje0

モノクマ「どうやら結論が出たみたいですね!」

モノミ「やい、モノクマ! 桑山さんの気持ちを踏みにじって、それで満足でちゅか!」

モノクマ「死に際の決死の覚悟を無駄な元だと踏みにじるなんて、上等な料理にハチミツをブチまけるがごとき思想だよね!」

モノクマ「まあでもボクってばクマなので。ハチミツ大好きなので、なんにでもハチミツかけちゃうので」

モノクマ「ちなみにおすすめはアツアツのご飯に納豆と刻みのり、それとショウガを混ぜた後にハチミツを垂らすあまあま納豆丼だよ!」

モノクマ「じつはハチミツと納豆ってすごく相性がよくってね。あの粘っこさの二重奏は中々癖になるんだよなぁ」

モノミ「はえ〜、あちしも今度やってみようかな」

モノミ「……ってコラー! おいしそうな料理でけむに巻こうとするんじゃないでちゅー!」

モノクマ「それでは行ってみましょう、投票ターイム! オマエラはお手元のスイッチでクロだと思う人物に投票してくださーい!」

モノクマ「議論の結果導き出されたクロは正解なのか、不正解なのかー!」

モノクマ「さあ、どっちなんでしょうかね?」
239 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:19:45.09 ID:IcRhkOje0
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     【VOTE】
〔摩美々〕〔摩美々〕〔摩美々〕

 CONGRATULATIONS!!!!

   パッパラー!!!


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240 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:20:26.02 ID:IcRhkOje0





【学級裁判 閉廷!】




241 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/26(水) 23:24:08.62 ID:IcRhkOje0

というわけで二章学級裁判これにて終了です。
次回更新では裁判終了パートとなりますが、少々長めになっておりますので予めご了承を。
どうしても今回の動機は文字数が嵩む……

次回更新は明日も21:00〜で予定しています。
安価は特にありません。
それではお疲れさまでした。またよろしくお願いします。
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 23:25:25.15 ID:4D24V2eV0
お疲れ様でした!
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 23:30:49.41 ID:lsA6xdjG0
お疲れ様でした!
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/26(水) 23:37:40.64 ID:pGkL0z1HO
お疲れさまです
おれの中の千雪さんの株がストップ高
245 :公式生放送を見ていて少し遅れました、ゆっくり投下していきます。 ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:23:03.11 ID:m2HupEjL0
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CHAPTER 02

厄災薄命前夜

裁判終了


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246 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:24:06.66 ID:m2HupEjL0

モノクマ「なんと! 二連続大正解〜〜〜!」

モノクマ「オートマティックなトラップを仕掛けて、超社会人級の手芸部である桑山千雪お姉さんを殺害したクロは超高校級の服飾委員の田中摩美々さんなのでしたぁ〜〜〜〜!」

摩美々「……はぁ」


一度は千雪の決死の覚悟のもとに解放されるかと思った処刑の重荷。
それを背負い直されたことによって、田中摩美々の表情はより沈痛なものになっていた。


夏葉「まさか、こんな終わり方になるとは思わなかったわ」

夏葉「摩美々、あなたの犯した罪は到底許されるべきものではない。でも、だとしても、あなたをこの場で失いたくはなかったわ」

摩美々「……ごめんなさいー」

智代子「夏葉ちゃん……」

冬優子「田中摩美々、あんたのやったことはふゆとしても許せない」

冬優子「うちの大事なユニットメンバーを身代わりに据えようとしたなんて、いい度胸じゃないの」

摩美々「そっか……冬優子は自分のことより、そっちで怒るんだぁ……」

冬優子「はぁ? 当たり前でしょ、ふゆの脅迫状に関してはあんたがやったことじゃない」

冬優子「まして、あさひがやったことでもないのよ」

あさひ「……!!」

夏葉「そのことも、おいおい話をしましょう……もちろん、透のこともね」

透「……うん、私も話したいかな」

雛菜「透先輩〜?」
247 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:25:38.08 ID:m2HupEjL0

美琴「今はそれよりも、限られた時間をどう使うべきかだよ」

美琴「モノクマがいつ強制的に執行してくるかもわからない。その前に話をしておかなくちゃ。そうでしょ?」

結華「美琴姉さん……うん、ありがとう」


美琴に促されるままに、メガネ女は田中摩美々の前に立った。
裁判の幕引き、その間際にこいつはユニット仲間の本当の気持ちに向き合うことを決めた。
それがユニットの年長者としての責任なのか、それともこいつとしての覚悟なのか。
私たちはその行く末を見届けてやらなくちゃならない。


摩美々「その前に料金の精算からねー、モノクマ、三峰の投票先はぁ?」

モノクマ「え? はいはい、えーっと……三峰さんは田中さんに投票してますね!」

モノクマ「ていうか投票は満場一致なので気にもしてなかったよ、どしたの急に!」

モノミ「もう、デリカシーがないでちゅね! あんたは女性の心をもっと勉強するべきでちゅ!」

摩美々「そっかぁ、三峰も、恋鐘も……やってくれたんだぁ」

恋鐘「うちも……最後に聞きたか、摩美々の本当の気持ちを」

恋鐘「だから、うちも逃げんかった。摩美々がそがん覚悟決めとるんやったらうちもそれを尊重するって決めたばい」

摩美々「ふふー、及第点ってとこですかねー」

結華「これでまだ及第点? 手厳しいなぁ」

摩美々「……」
248 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:26:48.98 ID:m2HupEjL0

それまでは飄々と周りを茶化しながら話していた田中摩美々。
だが、その時は刻一刻と近づいている。そのことを彼女も感じ取ったのだろう。
二人を前にして、自分の髪を撫でた後呼吸を一つ。
努めて落ち着いてみせるその顔は、少し強張っていた。


摩美々「摩美々が千雪を殺そうって決めたのはあの動機が発表された翌日、この島に来てから9日目の夜だよ」

(私が美琴とひさしぶりに練習をした日か……)

摩美々「私は、モノクマの用意したあのゲームをプレイしちゃったんだよねー」

結華「え……ゲームって、【かまいたちの真夜中】!?」

美琴「やっぱり、そうだったんだね」

摩美々「あのゲームは、ノンフィクション。実在の人物を題材にした、実際に起きたゲームを再現したゲームだったんだよー」

果穂「え、そ、それって……生きている人が、ゲームに出てくるってことですか?」

智代子「架空の人物じゃないってことだよ、果穂」

249 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:27:59.65 ID:m2HupEjL0

ルカ「……あのゲームに出てきてたのは、てめェら283プロの人間だ」

雛菜「へ〜?」

ルカ「今この場所に立っていない人間ばかりだけどな、私でも知ってる顔ぶれだったし……お前からすれば気が気でなかったんだろ?」

摩美々「その調子だとルカはプレイした側なんですねー」

ルカ「事件の捜査の時に、だけどな」

摩美々「なら、あのゲームがどんな内容だったのかも知ってますよねー」

(……言えって言うのか)


私を見つめたまま押し黙る田中摩美々。
学級裁判終わりという空気の中で、あんな凄惨な事件を口語るのは流石に抵抗を感じるが、
これより死に行くものたっての希望だ、聞いてやらないわけにもいかない。
それに、こいつはきっと私が語らない限りは本心を語るつもりもないんだろう。
250 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:28:28.63 ID:m2HupEjL0



ルカ「あのゲームでは……大崎甘奈が杜野凛世と幽谷霧子を襲撃して、大崎甜花を殺害していた」



愛依「……え? い、今の……うちの聞き間違い……?」

夏葉「甘奈が、凛世と霧子を襲って、甜花を……殺害した……?」

恋鐘「る、ルカ……冗談にしても悪質ばい……! 人の命をネタになんかしちゃいかんとよ……!」

摩美々「ルカは何も嘘を言ってない」

恋鐘「摩美々……!?」

摩美々「だって、同じものを、私は見たからこそ……この事件を引き起こしたんだから」

251 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:29:24.64 ID:m2HupEjL0
◆◇◆◇◆◇◆◇

あのゲームの真相は、明らかにしないとダメだった。

あのゲームに出てきていたキャラクター達、名前こそ持っていなかったケド……
私たち283の人間が見れば一発でわかる。
あのシナリオで描かれていたのは、甘奈が凛世や霧子を次々と襲っていく様子。手には刃物をもって、姿を隠して……

『Normal END』

でも、ゲームの中ではその真相にはたどり着けない。
甘奈が刃物を振り回し、霧子を襲い、甜花の死体が映って終わる。
勿論、このゲームが現実のものだなんて手放しに信じたわけじゃない。
でも、甜花の写真の妙なリアルさ、そして何よりこの場にいない霧子の存在が、どうしても気になって仕方がなかった。

モノミが抜き取ったという私たちの記憶。
その空白の記憶の中で、私たちが忘れ去ってしまった重要なものがあるとすれば……
それはきっと、この中にある。

でも、どれだけ試してもこのゲームをクリアする方法は分からなかった。
何度挑戦しても、画面には『Normal END』の文字が浮かび上がり、真実は闇の中。

私はその真実が欲しくて欲しくて……藁にも縋る気持ちだった。

他のみんなにはゲームをプレイしたことは黙っていなきゃダメだった。
でも……千雪にだけは、黙っていることはできなかった。
252 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:30:45.11 ID:m2HupEjL0

ピンポーン

千雪「……あら? 摩美々ちゃん、こんな遅くにどうしたの?」

摩美々「こんばんはー……ちょっと、話が合って……中入ってもいいー?」

千雪「あら、珍しい……うん、大丈夫よ。入って」


千雪はその時も平然としていて、まるで私の来訪の理由にも心当たりがなさそうだった。
私を部屋に招き入れると、千雪はちゃきちゃきと支度をしてお茶とお菓子とを机の上に広げた。


千雪「じゃあお姉さんに相談、聞かせてもらおうかな」

摩美々「……千雪はさぁ、あの広場のゲームってやったぁ?」

千雪「……!」


俄かに千雪の目元がピクリと動いた。
253 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:31:26.56 ID:m2HupEjL0


千雪「さあ……あの時、みんなゲームはやらないって約束だったでしょ?」


そんな安っぽい嘘で誤魔化し通せると思っているなら舐められたものだ。
人を騙したり嵌めたり、そういう悪戯じみたことは悪い子の専売特許。
他の誰かは騙せても摩美々の目は騙せない。
明らかな手ごたえを感じて、一切隠しもせずにその話を持ち出した。


摩美々「摩美々はさぁ、やっちゃったんだよねー。あのゲーム」

千雪「え……?」

摩美々「で、あのゲームはどんな内容だったと思うー?」

千雪「さ、さぁ……どうかしら」

摩美々「ゲームの中で甘奈が霧子を殺そうとしてたんだよ」

千雪「……!」


そんなのただのゲームの中のフィクションだ、普通はそう言ってあしらえばいい。
でも、千雪はそれをしなかった。私の口から出たその言葉を前に肩を震わせて、押し黙る。
間違いない、千雪はこのゲームの内容を知っていた。
プレイした側の人間の反応だ。

254 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:32:13.02 ID:m2HupEjL0

摩美々「甘奈、どうしちゃったんだろうねー。あんな風に追い詰められちゃって……けがの治療をしていた凛世と霧子に追い打ちをかけるように襲撃をかけて」

摩美々「まるでホッケーマスクの殺人鬼って感じじゃないー?」

千雪「……あ、甘奈ちゃん、が……」

摩美々「……ねえ、千雪―」

千雪「……え」

摩美々「いい加減嘘つくのやめてくれるー? 千雪はあのゲーム、プレイしたんだよねー?」

千雪「わ、私は……」

摩美々「私の目を見て答えてもらえますかぁ」

千雪「……っ!」

千雪「ま、摩美々ちゃん、は……その、霧子ちゃんのことを……あのゲームをやってどう思ったの?」

摩美々「はぁ? なんで霧子……今は甘奈の話をしてるんですケドー」

千雪「え……?」

摩美々「……?」

千雪「もしかして、摩美々ちゃん……ゲームのクリアはしてないの……?」


その瞬間、千雪の表情が一変した。

255 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:33:21.34 ID:m2HupEjL0

摩美々「ちょっと待っ……クリアって……もしかして、別のエンディングに千雪は到達したの……?!」

千雪「……摩美々ちゃん、悪いけど、お話はこれ以上できないわ」

摩美々「そ、そんなの認められないって……霧子は、霧子はどうなったの……!?」

千雪「あなたの見た通りよ、それ以上でも、それ以下でもないの」

摩美々「だから嘘つくのはやめ____」



千雪「ごめんなさい」




バンッ!
256 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:34:43.51 ID:m2HupEjL0

しばらく、何が起きたのかわからなかった。
見たことのない剣幕の千雪にいつの間にか立ち上がって後ずさりしていたらしく、私はその体を簡単に部屋の外に突き飛ばされてしまった。
そして眼前で響く施錠音。完全に締め出された形だ。


摩美々「……」


今の様子からしても、千雪が私に対して、ゲームのクリアした先にある真相を隠そうとしていることは明らかだった。
そして、私に投げかけたあの質問。

____「霧子についてどう思ったか」

霧子の安否以上のものがそこに含まれているのは間違いない。それさえも隠すということは、きっとそこに何らかの不都合が生じている。
甘奈についてもまるで答えようともしない。
ただ自分だけがたどり着いた真相を胸に抱えて、押し黙っている。
真相を共有しようという考えは毛頭持ち合わせていないらしい。
257 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:35:52.64 ID:m2HupEjL0





____誰も知らない真相は、虚構と同じ。





258 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:36:51.31 ID:m2HupEjL0

私の中に芽生えたのは、口封じという発想だった。
私自身、いつの間にかあのゲームの真相を知りたいという欲求から真相を知るのが怖いという不安感にその根底の思想が切り替わっていた。
甘奈が霧子を襲ったその後に何が起き、誰が死に、誰が生き永らえたのか。
それより先の真実に目を向けるのが、怖かった。
だから遠ざけた。
真相を知る人間をこの世から抹消することで、その真相を闇に葬り去ろうとした。

でも、この不安に足を取られたことで、私はもっと大切なものを見失っていた。





……私には霧子の他にも、アンティーカの仲間がいたというのに。

259 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:38:04.08 ID:m2HupEjL0

◆◇◆◇◆◇◆◇


摩美々「摩美々は……怖かったんですよ、あの事件の続きを知ることが」

摩美々「だって、甘奈は正常じゃなかった。みんなを殺さないとダメ、だなんて私の知る甘奈じゃなくて……その結果、実際……甜花を手にかけた」

摩美々「その先に待っている結末なんて、分かり切ってるじゃん」

摩美々「でも、だからこそ、それを知る人間さえ消してしまえばそれはあくまで予測で済む、確定はしない」

摩美々「摩美々は……霧子の死を、知りたくなかったんですよ……」

結華「まみみん……」


それは、震える身体で無理やり絞り出した、か細く、幽かな本心だった。
きっと、今この瞬間になるまで田中摩美々自身もその感情の言語化は出来ていなかった。
自分の口から出た『怖かった』『知りたくなかった』その言葉に自分自身で戸惑っているようで、田中摩美々はせわしなく自分のツインテールを撫でていた。
人というのは恐ろしい生き物だ、自分を突き動かしているものの正体も分からずに、それに従ってしまうのだから。

そして気が付いたときにはもう遅い。
無自覚な恐怖の暴走の行く末が、この今の田中摩美々だ。
283の連中の中でも冷静に事態を見極める側だとばかり思っていた、いやその認識は誤ってはいない。

ただ、彼女も年相応の【子供】だった、というだけ。
260 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:38:42.23 ID:m2HupEjL0

結華「……それでもやっぱり、三峰はもっと早くに、三峰に話してほしかったって思っちゃうな」

摩美々「……」

結華「そしたら、何も解決は出来なくても、一緒に怖がってあげることぐらいはできたかもしれないじゃん?」

結華「三峰が言えたことじゃないけどさ、不安とか恐怖とかって一人で抱え込んじゃうと膨らみまくっちゃって……それでも本人は一人で解決できる、誰も頼りたくないとか思っちゃうんだよね」

結華「そんな時、誰かに話すとちょっとだけ楽になったりして……」

摩美々「そう、だったカモ……ねー」

結華「……ごめんね、まみみん。三峰が、気づいてあげればよかったんだよね」

摩美々「ちょっと、なんでここで自分を責めるのー。どう考えても悪いのは摩美々じゃーん」

結華「……はぁ、Pたんみたいに上手くはいかないか。まだまだ三峰も若造ってことですな」

摩美々「じゃあ、摩美々は赤ん坊かなぁ」

結華「あはは、なにそれー」


おちゃらけた態度には、努めて明るくしようとしているのが透けて見えた。
三峰結華も、今逃げ出したいほどの恐怖を感じている。
暫くののち、今自分の目の前に経っている、愛してやまないユニットの仲間はその命を落とす。
でも、だからこそ、そこに涙を持ち込みたくはなかったのだろう。
無理やりにでも口角を吊り上げて、おどけた笑い方をした。

その笑い方が、あまりにも屈託がなく、ひどく痛々しくて、私は思わず目をそむけた。
261 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:39:53.97 ID:m2HupEjL0





____そむけた先で、目が合ったのは、モノクマだった。



モノクマ「あのさ、そんなに気になるんなら……【TRUE END】、見ちゃいます?」





262 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:40:37.73 ID:m2HupEjL0

ルカ「……は? おま……何言って……!」


俄かに動揺が走った。
ゲームの隠されたエンディング、真のクリアは千雪がずっと隠し続け、田中摩美々が闇に葬り去ろうとしたパンドラの匣だ。
それをこの場において、衆目に晒すというのは持つ意味が歪に大きい。


モノクマ「やっぱりね、製作者としましてはゲームも隅々までプレイしてもらいたいと思っちゃうわけですよ! なんたって我が子なんですからね!」


声高に語るモノクマに対し、どうしても尻込みをする面々。
それもそのはず、私と美琴、田中摩美々以外はおそらくゲームをプレイもしていない。
大崎甜花の死という事実をつい先ほどの情報として受け取った彼女たちからすれば、これ以上の情報などそう簡単に受け入れようなんて思わない。
263 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:41:24.16 ID:m2HupEjL0

……でも、そんな中でも食いついた人間が一人。
彼女は身を乗り出すようにしてまで、その【もう一つのエンディング】を求めた。
ずっと知りたくて知りたくてたまらなかった真実に向かって、必死に手を伸ばす。


摩美々「え、え……? そ、それって……霧子がどうなったかも見れるってことですか……?」

結華「ま、まみみん……ちょっと、落ち着いて……!」

摩美々「お、教えて……どうすればTRUE ENDが見れるんですか……」

モノクマ「おっ、いい反応ですねぇ。流石、事件を引き起こしただけのことはあるなぁ! ではでは、田中さんのそのやる気にこたえてお教えしましょう!」

モノクマ「タイトル画面で↑↑↓↓←→←→BAを入力してください! されば真実の扉は開かれよう……」

摩美々「げ、ゲームはどこなんですかぁ?! 早く、早く入力しないと……」

恋鐘「摩美々、ちょっと冷静にならんね! 摩美々はそのエンディングを封印ばするために千雪んこと狙ったと違ったばい!?」

摩美々「それどころじゃない……摩美々はもうあと少しの命なんだよ……真実を自分の目で確かめないと、一生知ることは出来ないんだから……!」

264 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:41:56.58 ID:m2HupEjL0

田中摩美々はもはや獣のようだった。
他の人間の手を振りほどき、言葉を拒絶し、真実という餌を追い求める。
もはや今の彼女には誰の言葉も届かない。
鬼気迫る様子に全員一歩引く中、彼女は裁判場の一角に置かれた筐体を見つけ、それに飛びついた。


摩美々「↑↑↓↓←→←→BA……↑↑↓↓←→←→BA……」


譫言のように口走るコマンドを、震える手でボタンを押してなぞった。
その瞬間、聞いたことのない効果音が鳴り響き、タイトル画面は私の知るものから一変した。


『かまいたちの真夜中 真相編』


摩美々「来た……来た……! これで、霧子がどうなったか分かるんだぁ……」

265 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:42:46.66 ID:m2HupEjL0

『それは、惨劇が巻き起こる前の日の晩。
学園内に住まう者たちの悉くが自分の部屋へ戻り、瞼を閉じて明日へ備えていた深夜の頃だった。
人目をはばかる様にして、廊下を歩む者が一人。
その手には一枚の紙片が握られていた。

ピンポーン

目当ての部屋の前でインターホンを鳴らした。この学園の寄宿舎は防音設備。
例え隣室だろうとも訪問があったことには気づかれはしまい。
まさか他の人間は、こんな時間に【D子】が出歩いているとは夢にも思わないだろう。

そして、数秒後。扉はゆっくりと開いた。
彼女を出迎えた人物は口を閉ざしたままに入室を促す。
そのただならぬ空気に生唾を一つ飲み込むと、静かに、後ろ手に扉を閉じてD子は彼女の後をついていった。』
266 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:44:04.08 ID:m2HupEjL0

『F子:来てくれてありがとう、D子ちゃん……♪

部屋の主であるF子は不敵な笑みを浮かべていた。
彼女は普段から笑顔を見せることが多い。柔和な雰囲気に不思議な魅力を兼ね備えた彼女の笑顔にはいつも力を貰っていた。
でも、今この局面において彼女の笑顔ほど不気味なものはない。だって、その裏には並々ならぬ思惑があることが分かり切っているから。

F子:お手紙、呼んでくれたんだね……
D子:……F子ちゃん、これどういうことなのかな
F子:え?


【D子 お前の命運は既に私の手中にある すべてを失いたくないのなら私の命令に従え】


D子:これ、どうみても脅迫状だよね……?
F子:ふふ……ふふふふ……♪
D子:な、なにがおかしいのかな
F子:これ、どうぞ……♪

F子はD子に近づいて、その手にある機械を握らせた。液晶付きのボタン操作、D子自身も見慣れている物だ。
____これは、【E子の使っていた】ゲーム機。

F子に促されるままにそれを起動する。
267 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:45:00.35 ID:m2HupEjL0

最新のゲーム機は多機能だ。写真撮影、動画撮影なんてお手の物。
手元のゲーム機でも、写真撮影用のアプリが起動していた。
既に何枚か撮影されているらしい、D子はその閲覧を始めた。

F子:ふふふふ……♪

そこに映っていたのは、最愛の姉・【E子】。
E子は数日前から体調を崩しており、F子の看病の下にあるはずだった。
そんな彼女が点滴を受けている写真がそこにあった。

でも、その点滴は普通じゃない。
そのパックには【必ず希釈して使用すること】と書かれているのだ。
心臓が嫌に早く打つ。呼吸も浅くなる。
268 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:45:37.17 ID:m2HupEjL0

F子:カリウム製剤はね、急速注入すると不整脈や心停止に繋がっちゃうんだ……
F子:これだけの量を、薄めることなく投与しちゃったら……E子ちゃんはどうなっちゃうのかな……
D子:や、やめて……! なんで、そんなことするの……!?

必死の問いかけをF子は嘲笑いながら体をくねらせる。
生殺を自分が握っていることに酔いしれるような恍惚とした表情、その口元からは一筋の涎さえ垂れていた。
違う、あまりにも違いすぎる。これまでずっと見てきたF子の人物像とあまりにも乖離している。
D子は自分の前のその人間を、もはやF子として見ることさえ拒んだ。
それでも、拒絶さえも無視してF子はD子に躙り寄る。

F子:お姉ちゃんがとっても大好きなD子ちゃんにお願いです……
D子:な、なに……何をしようとしてるの……?
F子:D子ちゃんには、別の誰かを……生贄さんを探してきて欲しいんだ……
F子:E子ちゃんの代わりに、死んじゃう誰かを……
D子:そ、そんなのって
F子:みんなの命は平等です……だからね、誰かを守るには、誰かを犠牲にしなくちゃダメなんだ……

破綻した喋り口。平等も何も、勝手にその天秤を置いたのはF子自身だ。
でも、D子にそこを追求することなどできない。E子が人質に取られていること、そしてF子に対する恐怖心が言葉を詰まらせる。
269 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:46:29.69 ID:m2HupEjL0

F子:D子ちゃんを一人にはしないよ……わたしも、協力する……
D子:な、なんで……? この学園じゃ、クロになるのは実行犯だけなんだよ……?
F子:ふふ……♪ わたしはね、みんなのポカポカが見たいんだ……
F子:手を取り合って立ち向かうあたたかさ……諦めず立ち上がるあたたかさ……
F子:そして、誰かのために戦うあたたかさ……
F子:D子ちゃん、お願いします……E子ちゃんのために、他の誰かを裏切ってください
D子:そ、そん……な……

F子はただ人を殺せと言っているのではない。自分にもその片棒を担がせて、特等席でその殺人ショーを見せろと要求してくる。

F子:これで心臓を狙えば一撃だから……

手渡されたのは新品の彫刻刀。その刃先は木材を抉るには十分すぎるほどによく研がれている。
彼女のいう通り、これを人の心臓に突き立てようなら、すっぽりと心臓を抜き取ることも可能だろう。
でも、それは人の命を奪い去るにしてはあまりに軽くて、乾いていて、それがとても不気味だった。

F子:じゃあ、作戦会議だね……どうやって、誰を殺そっか……?

D子の瞳を覗き込むその黒く濁り切った眼。
D子はその絶望にどっぷりと身体が浸かっていくのをゆっくりと実感していた。
一度落ちたら抜け出せない底無しの沼に、彼女は呑み込まれていたのである』
270 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:47:53.13 ID:m2HupEjL0

『D子:はぁ……はぁ……ごめん、C子ちゃん……でも、E子ちゃんのため、だから……

まだ事は始まったばかり、計画の初歩段階としてC子を襲い、騒ぎを起こす。そのために彫刻刀をちらつかせて不安を煽り、突き飛ばした。
肌を裂いたわけでも、肉に突き立てたわけでもない、取っ組み合い程度のやりとりなのに、D子の心臓はかつてないほどに暴れていた。
拍動が煩い、今にも喉から飛び出そうだ。
人をこれから殺めるという認識が、必要以上に血を沸騰させた。

バタバタ…

廊下の方から何人かの足音が聞こえた。D子の潜伏する女子トイレの前を抜けて、彼女たちは上階層へ。

F子の扇動がうまく行ったのだろう。今回の計画はF子による扇動が鍵を握る。
F子の捏造の目撃情報で上に登らせている間に保健室でF子と合流。C子をそこで気絶させ、体育館まで二人で運搬。
保健室に残ったF子がまたC子が連れ去られたと今度は寄宿舎エリアに誘導する。
ここで不審者役を交代して、今度はD子が保健室で襲われた形をとり、お互いのアリバイを確保したうえで体育館のC子を殺害する。そういう計画だ。

D子は恐る恐る扉を開けて首を覗かせる。誰もいない、今なら問題ないようだ。
271 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:49:03.04 ID:m2HupEjL0

そろりそろりとたどり着いた保健室。
中からはC子とF子の話し声が聞こえてくる。こうやって聞いていると、F子が狂ってしまったとは俄かに思い難い。
だが、彼女は確実に狂気に蝕まれている。
D子もその狂気から逃れる術などないのだ。
まだD子は不審者を演ぜねばならない、覚悟を決めて扉を引く。

D子:見つけた……
C子:……!? な、なぜここに……?!
F子:C子ちゃん、危ない……!

F子が庇うようにC子に覆い被さった。
視界を一気に遮るこの瞬間が合図、D子が後頭部を殴りつけるような素振りをすると、呻き声を上げながらF子はその場に崩れ落ちた。

C子:F子さん……!?
D子:次はお前だ……

F子の気絶は狂言だが、ここは本番。失敗すれば計画そのものがパー。愛してやまない姉の命も危うい。
渾身の力でこめかみを目掛けて殴りつけた。
元々痩身のC子は思っていた以上に軽く、地面に体を打ちつけても大した音はしなかった。
272 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:49:42.16 ID:m2HupEjL0

D子:……気絶、しちゃった……?

思わずそう口にしてしまった。
人を殴るなんて生まれて初めて、その手応えの気色悪さに掌を何度も見直す。

F子:D子ちゃん、力持ちさんだね……

戸惑い喘いでいると床に寝そべっていたF子がゆらりと身を起こしながら微笑んだ。
これでもう引き下がれない、その確信を携えた薄気味悪い微笑みだ。

D子:……次は、C子ちゃんを体育館に運ぶんだね?
F子:うん……いっしょに頑張ろうね……!

____「いっしょに頑張る」

アイドルとして活動していた頃も何度も耳にした言葉なのに、その言葉にゾワッと背筋を凍らされる経験はこれが初めてだった。
仲間ではなく、【共犯】。二人の関係性を指し示す言葉もこれで完全に変わってしまった。』
273 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:51:07.38 ID:m2HupEjL0

『体育館にC子を横たえて、大きな息を一つついた。
C子を襲撃して以来、D子はずっと着ぐるみを着ていた。
犯人を奇怪な存在として印象付けるための格好、そして犯人が複数人である事をカモフラージュするための格好だ。
運搬、殺害、逃走、そのいずれもこれを着たまま行うため手足は出せる設計にしておいたが、呼吸がしづらいのは盲点だった。
ただ持ち上げて運ぶほどの動作なのに、息苦しさが想像以上に体力を奪う。自分の吐いた息が篭っているのも心地悪い。

D子:とりあえず、これで第一段階、なんだよね
F子:うん……D子ちゃん、ノリノリだね……!

思ってもない事を。無理矢理従わせておいてノリノリも何もあったもんじゃない。
274 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:51:54.28 ID:m2HupEjL0

D子:C子ちゃん、ごめんね……こんな形で巻き込んじゃって

横たわるC子の姿を見ると、罪悪感という罪悪感が胃の奥底から湧き上がってくる。
ただ小柄だったというだけ、ただ狙いやすかったというだけ、それだけの理由でC子はこの数十分後に命を落とすことになる。

____他でもない、D子の手によって。
その事を思うとD子は譫言のように謝罪の言葉を口にせざるを得なかった。
そんな様子をF子は静かにクスクスと笑って見つめていた。

F子:ご苦労様でした……♪

突如としてF子はねぎらいの言葉をかけた。
それはきっと、共犯として最初の一線を超えたことに対する評価の言葉なのだろうと思った。
これはただの始まりに過ぎない、D子はそれをわかっていたから、その言葉は流して終わらせようとした。

D子:……まだまだだよね、F子ちゃん



F子:ううん、D子ちゃんはここまでだから……ご苦労様でした……♪


275 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:52:35.38 ID:m2HupEjL0

____でも、そうではなかった。

D子:え?

鮮血。
視界の一面が赤に彩られたかと思うと、喉のあたりに焼けつくような痛みを感じる。
痛みを訴えるため声を上げようとするが、声の代わりに飛沫が散る。




F子:今回の事件のクロは、わたしなんだよ……?




276 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:53:07.50 ID:m2HupEjL0

騙されていた、最初からF子はそのつもりだったのだ。
姉のE子を人質にされればD子が何も言えなくなる事を知っていて、自分のための舞台装置にしていたのだ。
絶命までの数瞬、途絶えゆく意識の中で思う。

もし、あの夜に断ることができたなら。
目の前のF子を突き飛ばして、E子をすぐに助けに行くことができたなら。

D子は選び取る選択肢を最初から間違えていた。
選ぶべき選択肢を踏むには、彼女は優しすぎて、少しばかり臆病だったのだ。
瞼が重い、段々とF子を挟むようにシャッターが降りてくる。

F子:ここまで手伝ってくれたお礼に、最後に教えてあげるね……?

崩れゆく身体に近づき、F子は囁く。
かつて共に過ごした日々と同じ調子の、柔和な響き。
277 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:54:12.82 ID:m2HupEjL0





F子:E子ちゃんは、もうとっくに死んじゃってるんだよ……♪





ただ、そこに並べ立てる事実はかつてないほどに残酷だった。』
278 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:54:56.58 ID:m2HupEjL0






『TRUE END』





摩美々「……はぁ?」
279 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:55:34.36 ID:m2HupEjL0

摩美々「こ、これ……何ですかぁ……?」


ゲームをクリアし終えた田中摩美々は弱々しく声を上げる。
当然だ、外野のある私ですらそのシナリオは飲み下すことができない異物感を感じている。
ユニットの仲間の無事を願い追い求めたはずの真実は、あまりにも残酷な形で牙を剥いた。


モノクマ「何って、TRUE ENDだよ?」

モノクマ「オマエが知りたくて知りたくて、でも知るのが怖くて桑山さんを手にかけてまで隠蔽しようとした真実そのものだよ!」

摩美々「ち、違う……摩美々が知りたかった真実はこんな……」

モノクマ「ん? なんでオマエが勝手に真実を裁定してるの?」

モノクマ「真実ってのは誰の意思にも関係なくそこに存在しているからこそ真実なんだよ? 誰かの願望や意思に合わせて動くものはただの都合の良い欺瞞だよね!」

摩美々「じゃあ本当に……霧子が甘奈を脅迫して……その上で甘奈を裏切って殺したっていうんですかぁ……?」

モノクマ「へー、オマエにはそう見えたんだ」

モノクマ「ごめんね、これはあくまでゲームだからさ、その細かい設定まではわかんないや!」

摩美々「ふ、ふざけないでくださいよー、このゲームがノンフィクションって言ったのはあなた……」

モノクマ「うぷぷぷ……さあどっちなんでしょうね?」


モノクマはのらりくらりと田中摩美々の追及を躱す。
このゲームが真実なのかどうか、そもそもノンフィクションという言葉をどこまで信用していいのか、それを知るのはモノクマのみ。
モノクマはその絶対的な知の優位を振り翳して悦に浸っているようだった。
280 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:57:10.27 ID:m2HupEjL0


モノクマ「まあ真偽はどうあれ、これが桑山さんが隠し通そうとした残酷な真実なんだよね」


モノクマ「桑山さんは最初この終わり方を見たときに相当戸惑ったはずだよ。だって、ノーマルエンドでは狂乱に堕ちた大崎甘奈さんが人を殺したシナリオだったのに、その裏では幽谷霧子さんが彼女を唆していた。つまりは加害者と被害者がそっくりそのまま裏返ったわけだしね」


モノクマ「それと同時に、大崎甜花さんのみならず大崎甘奈さんまでもが命を落としてゲームは終わってしまう。二人の面倒を見ていた桑山さんの感じた絶望もまた計り知れないだろうね」


モノクマ「でもね、彼女は憎しみを幽谷さんに向けようとはしなかったんだ。恨み憎しみ妬み嫉み……そのいずれをぶつける理由も権利も彼女にはあったのにね」


モノクマ「このゲームのエンディングを明らかにして仕舞えば、大崎さんの無念を晴らすこともできたかもしれない、それでも彼女はそうしない選択肢をとったんだ」

281 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:58:26.13 ID:m2HupEjL0


『今私が、これを明らかにしてしまえばアンティーカの3人は悲しんでしまう。大切なお友達が誰かを裏切るような真似をしてしまったこと、そしてお友達が変わり果てた事を知ってしまって……』


モノクマ「この島で暮らす年長者として、桑山さんは他のみんなを守る義務があると感じていました。ここで一緒に暮らすみんなが、できる限り多くの人が悲しまない選択肢を選ぶ決意をしたのです」


『もし誰かがゲームをプレイしてしまっても、私だけを憎めばいい。アルストロメリアは今はもう私だけ、私だけが憎しみをもらい受ければ解決する』


モノクマ「アンティーカの3人を守るため、ひいてはこの島の全員を守るため、彼女は罪と罰を背負い込む事を決意したのです。真実を闇に葬る事で、恨むべき相手は一人だけだとみんなに教えようとしたのです」

モノクマ「たとえそれが間違った真実だったとしても、ね」
282 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 21:59:23.13 ID:m2HupEjL0

モノクマ「でも、彼女の想いは届きませんでした。真実を隠そうとする彼女を疑う者が現れたのです。しかも、その疑う者は彼女が庇おうとしたアンティーカの一人だったのです」


『どうして教えてくれないんですかぁ……? もしかして、霧子を甘奈が殺す決定的なシーンがあるから、それをなんとか隠そうとしてる、とか?』

『摩美々ちゃん、わかって欲しいの……この真実は、あなたに知ってほしくない。心優しいあなたの胸を痛ませたくはないの』


モノクマ「二人の思惑はどこまでも平行線、交わることはありませんでした」


『霧子の安否を知りたい……でも、知るのが怖い』


モノクマ「そしてやがて、片方の直線がぶれ始めたのです」


『怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い』


モノクマ「知識欲はねじ曲がり、未知への恐怖へ。妄想ばかりが膨らんでいき、知らない真実は彼女の中でいつのまにか怪物に化けてしまったのです」
283 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:00:01.33 ID:m2HupEjL0

モノクマ「あーあ、田中さんが自分の好奇心に振り回されるんじゃなくて、少しでも桑山さんの想いに触れることができていたらこんな悲しい結末にはならなかっただろうにね」

摩美々「……そん、な」


千雪の覚悟は想像以上だった。彼女は一人でこの凄惨な真実を受け止め、そのうえで遺された人間全員を守ろうとしていたのだ。
私と肩を並べて花火をしていたあの瞬間も、ずっと心の中ではその苦しみが渦巻いていたことだろう。
そんな苦しみから彼女は解放されることもなく、すべては終わってしまった。

田中摩美々は愕然とその場に膝をついた。
真実を知ったこと以上に、千雪の心中を知ったことで、押し寄せてくるものがあったのだろう。
罪悪感というよりも、それは後悔に近かった。
自分自身の衝動を抑え込むことができなかった、その理性の敗北に打ちひしがれている。
284 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:01:15.56 ID:m2HupEjL0



……だが、時間はもう残っていなかった。



モノクマ「ま、これで全部明らかになったことですし、やっちゃいますか!」

結華「ま、待ってよ……それって……おしおき……?!」

摩美々「……ッ!」

モノクマ「うん、知りたかった真実を知れて田中さんも満足したでしょ? それにほら、そろそろお開きにしないとそこのキッズたちもお眠じゃないかなって」

果穂「そ、そんなことありません! あたしは全くねむくなんてないですから……摩美々さんをころさないであげてください……!」

あさひ「わたしも、摩美々ちゃんとまだお別れなんてしたくないっすよ」

摩美々「まだ、まだですよ……」

モノクマ「ん?」


摩美々「まだ、摩美々の知りたい真実は知れてないって……【霧子がどうなった】のか、これじゃわかんないじゃないですか……」


そうだ、確かに真相編と銘打っていたものの、そこにあったのは幽谷霧子の残忍な裏切りまで。
その先、大崎甘奈を殺害した後のことを私たちは知らない。
断片的に、恣意的に切り取られた情報を受け取ったことで、田中摩美々の中の衝動が再び熱を帯びる。
あの殺害の果てに幽谷霧子は何を手にしたのか、そして何を失ったのか。
誰よりもそばで見てきた存在だからこそのそれは、『知りたい』という知識欲よりももっと根源的なもの、『知っておかなければならない』だった。
285 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:01:54.93 ID:m2HupEjL0

でも、それを分かったうえでモノクマは田中摩美々の問いかけの一切を無視した。
あのエンディングを見ればその欲望が顔をのぞかせるのを知っていたから、
それを踏みにじるこの時を待ちわびていたかのように、声高々意気揚々として、処刑を宣言する。


摩美々「霧子は、無事なんですか……? 咲耶は? 他のみんなは?」


モノクマ「今回も、超高校級の服飾委員である田中摩美々さんのためにスペシャルなおしおきを用意しましたぞ!」


摩美々「教えてくださいよ、みんなは無事なんですか……?」


モノクマ「それでは張り切っていきましょう!」


摩美々「あのゲームは、本当にノンフィクションなんですか?」


モノクマ「おしおきターイム!」


摩美々「誰でもいいから教えてよ……」

286 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:02:32.68 ID:m2HupEjL0





摩美々「真実を、摩美々に教えてよ……」




287 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:03:20.18 ID:m2HupEjL0
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GAMEOVER

タナカさんがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。



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288 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:04:02.82 ID:m2HupEjL0

普段から『悪い子』を自称している田中さん。
そんな彼女は今裁きの場についています。
彼女に下されるのは『天国行き』か、それとも『地獄行き』か!?
閻魔大王様のアンサーズチェック!

…………
…………
…………

おめでとう!
見事『地獄行き』の片道切符を手に入れましたね!
これで名実ともに『悪い子』ですよ〜!

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地獄めぐりぶらり旅

超高校級の服飾委員 田中摩美々処刑執行



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289 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:06:29.88 ID:m2HupEjL0

地獄に落とされた田中さんがまず最初に登らされるのは針山地獄!
まち針を刺された剣山みたいな針山をよじ登らなければ下から登ってくる巨大なトカゲに丸呑みにされてしまいます。
急いで急いで登らないと、ほら!
手に針が刺さったぐらいで止まってちゃダメダメ!
最近の若者はダメですねぇ、針が足を貫通したぐらいで音を上げちゃって。
それでも虫みたいに必死に必死に這い上がって、なんとか頂上に辿り着きました。


針山地獄を登ってみると行き着いたのは賽の河原!
早いところネイルストーンを積んで塔にしてしまわないとカメレオンに捕食されちゃいますよ!
だけどいくら積んでも積んでも獄卒に倒されてしまう、それが賽の河原。
出来たと思ってもすぐ壊されて、また出来たと思っても壊されて。
手足に空いた穴も痛むのか、いよいよ途中から田中さんは積むことすらできずに終わってしまいました。
当然田中さんは間に合わず、そのままカメレオンの口の中へ。
290 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:08:33.74 ID:m2HupEjL0

カメレオンの口の中は最後の審判、その寝台の上。
田中さんは気がつけばその舌をペンチでつまみ上げられている状態。

子供の時からよく言いますよね、『嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる』って!
嘘ばっかりついて人を揶揄ってばかりの田中さんの舌……こんなもの、もう要りませんよね!

ガタンッ!

音を立てて寝台の乗っていた床は抜け落ち、田中さんの舌の先っぽは体とお別れを告げました。
ぺンチにつままれた舌だけが風に靡いて、なんだか柳の葉っぱみたい。





地獄の地の底で自らの血に沈む田中さん、大好きな爬虫類とお揃いの舌になってしまいましたね。
これぞまさしくスプリットタン、なんちゃって!
291 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:09:51.16 ID:m2HupEjL0

……田中摩美々は死んだ。

知りたくて知りたくて仕方がない真実。その断片だけを渡されたまま、新たに沸きあがった疑問の身を抱えて、果てた。
その虚しさを前にして、私たちは言葉を発することができずにいた。


モノクマ「日本の夏、おしおきの夏……いやあ、これぞまさしく南国生活の風物詩ですな」

モノミ「なんてことを……なんてことをしてくれたんでちゅか!」

モノクマ「夜空に輝くは花火、地底に輝くは命の爆散。どっちが眩しいかって話ですよね」

モノミ「そんな品評会したくないでちゅよ!」

結華「……なんで、なんでまみみんにあんな残酷な真似をしたの!」

モノクマ「ん? なんのこと?」

恋鐘「ゲームのことたい! あんな終わり方なら、見せんほうがよかったのに……なんで最後の最後、追い詰めるようなことを……」

モノクマ「やれやれ、真実を教えてなかったら教えなかったで文句言うくせにさ、ボクは求められたままに真実を与えてやっただけだよ?」
292 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:10:20.06 ID:m2HupEjL0

結華「……でも、それでも……まみみんに、わざわざあんな表情させなくてもよかったじゃん……」

恋鐘「結華……」


メガネ女はその場に膝をついてすすり泣く。
あれだけ冷静に事態を見極めていたはずの田中摩美々が散々取り乱して命を落としたという光景はインパクトも大きく、私の耳にも彼女の悲痛な叫びが沁みついてしまっていた。
真実はいつも私たちを救う訳ではない、むしろ最後の最後に追い詰める決め手にもなりかねない。
あいつの死は私たちの心に大きく影を落とすこととなった。


あさひ「……あのゲーム、本当だったっすかね」

夏葉「……凛世」


そして、283プロの連中は私とは別に、新たな事実を咀嚼せねばならない。
大崎甜花と大崎甘奈の死、そしてあのゲームの中で起きていた【惨劇】だ。
幽谷霧子が二人を手にかけたあれはいったい何だったのか。

……その答えは全員の頭にぼんやりとは浮かんでいた。
でも、それを口にするのはためらわれる。
田中摩美々と同じだ、誰かがそれを口にしてしまえば、それが絶対になるような気がして、怖くて怖くて、その一歩が踏み出せない。
293 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:10:58.57 ID:m2HupEjL0





モノクマ「もしかして、このコロシアイは一回目じゃないのかもしれないね!」





そういう一歩だからこそ、モノクマは悠々とそれを口にした。
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