【コンマ】ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くだけのスレ

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30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/23(木) 22:12:33.15 ID:Pmz6c/5go
おつおつ
トレーナーも付いてくるのかこれはお得()
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/12/24(金) 00:12:12.79 ID:uQAwlPV40
ライスはラーメン好きだったような希ガス
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/24(金) 00:58:42.61 ID:/zfJkOwkO
>>31
お祝いの席の代わりにラーメン?ということと解釈してください。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/26(日) 20:42:52.77 ID:I6xYV6WtO
今日更新できるかちょっと微妙です。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/29(水) 22:17:02.75 ID:PfUYSjUvO
*

「運転手さん、ここで結構」

タクシーを歌舞伎座の前で停めてもらう。暮れの銀座の夜は、忘年会に向かうサラリーマンで賑わっていた。
私たちは灯りで彩られた表通りから離れ、静かな小道を歩く。

「銀座、来るのははじめてです!ラーメン屋さんもあるのですね!」

目をキラキラさせながら、バクシンオーがスキップするように私の後ろをついてくる。三田村嬢とライスシャワーはというと、まだ少し戸惑い気味だ。

「ミシュラン一ツ星って……割烹、ですか?」

「いやいや、値段は少し高めのラーメン屋ですよ。ミシュランはラーメンも美食として評価しておりましてな。東京では確か、一ツ星ラーメン店は3店あるそうです」

三田村嬢の後ろに、ピタッとライスシャワーがくっついている。彼女も銀座は初めてなのだろうか、どこか所在なさげだ。

「ライス、ラーメン好きだよ。どんなラーメン、なの?」

「そうだな……ジャンルを言うのは難しいな。塩でも醤油でも、豚骨でも味噌でもない。つけ麺でもない。『食えば分かる』としか、言いようがないな。
ただ、洋食党の君には、きっと気に入ってもらえるはずだ。……と、見えてきたぞ」

行列はざっと20人弱、といったところだろうか。夜ならば多少は並びが少ないと思っていたが、それでもかなりの人数だ。

「ややっ?どこにお店があるのですか?」

「そこの角だよ。まあ、見た目は小料理屋にしか見えないだろうな。
三田村トレーナーとライス君には少々悪いが、しばし待とう。待つことに伴うストレスも、チートデイには有効なのだ」

バクシンオーの頭にまた?が浮かんでいる。

「はて?どういうことですか??」

「チートデイとは、苦痛からの解放のためにある。それによって身体を騙すのだよ。
簡単に言えば、我慢して精一杯やったトレーニングの後の水は美味いだろう?それと同じだよ」

「むむ……分かったような、分からないような……でもとにかく美味しいラーメンなのは分かりました!!」

行列はゆっくりと進む。ある程度進むと、店内の券売機で食券を買うよう促された。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/29(水) 22:25:29.86 ID:NKasLOiho
来たぁ!
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/29(水) 22:37:25.16 ID:PfUYSjUvO

店内は薄明かりで照らされ、サラ・ブライトマンの曲が流れている。
ここをラーメン屋だと知らず入った人は、ここが高級小料理屋だとしか思わないだろう。

「天王寺トレーナー、何を頼めば……って、メニューは中華そばだけですか?」

「そうです。それだけです。トッピングで味玉を入れるか、チャーシューを増量するかだけですな」

「あ……じゃあ特製で」

「ライスも……」

せっかくのお祝いだ、私たちも特製中華そばを注文することにした。
食券を店員に渡してさらに外で待つこと10分弱。ようやく、私たちはカウンター席についた。

「いらっしゃいませ……天王寺さん!?久し振りですね」

頭の禿げ上がった初老の男が、カウンター越しに呼び掛ける。

「半年振りですね。今日は私の教え子たちも一緒ですが、宜しいですか?」

「ああそれはもう。しかしウマ娘さんたちだと、少々量が少ないかもしれませんね……大盛りができればよかったのですが、今は休止中で」

「構いませんよ。チートデイで重要なのは量より質。その観点からは、こちら以上の店はそうはない」

「いえいえ……それは恐縮です。ともあれ、精一杯作らせて頂きます」

一礼して、店主が寸胴に向かった。三田村嬢が、驚いたように私を見る。

「お知り合いなんですか?」

「いやまあ、古い付き合いですよ。彼は昔、某大ホテルチェーンを取りまとめていた総料理長でしてな。引退後にラーメン職人に転じ、開いたのがここというわけです」

奥から芳しいスープの香りが漂ってくる。胃が、そして筋肉が、待ちきれんとばかりに蠢くのが分かった。


そして、程なくして、4つの丼が私たちの前に供された。


「お待たせしました、特製中華そばです」


37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/29(水) 23:38:03.96 ID:PfUYSjUvO

丼には黄金色のスープ。その中を細ストレート麺が、行儀よく漂っている。
さらにその上にはチャーシュー。チャーシューに乗せられた茶色の粒々からは、えもしれぬ刺激的な香りが広がっている。

「やや、美味しそうですね!しかしこれは……何ラーメンなのですか?」

ライスシャワーが、蓮華でスープを掬い、一口飲む。その刹那、ハッしたように目を見開いた。

「これ……コンソメ!?でも、何か違う……複雑で、でもとても深い……」

三田村嬢も、「美味しい!」と言ったまま少し固まった。

「……なんでしょう、これ。天王寺トレーナーの言う通り、塩でも醤油でもない。もちろん味噌でも豚骨でもない……」

店主が微笑みながら彼女に語りかけた。

「うち、『かえし』を使ってないんですよ」

「『かえし』?」

私は頷く。

「ラーメンの味、ひいてはジャンルを決定づけるタレのことですな。塩タレなら塩ラーメン、醤油ベースなら醤油ラーメンになる。それをここでは使っていない」

「えっ、何でですか?」

「それはこのスープにある。極めて複雑かつ深い旨味。このスープの力を生かすには、かえしはむしろ邪魔。……そういうことですな?」

店主が微笑み、私に同意した。

「そこまで理解して頂けると光栄です」

私は寸胴の方を見た。表面は香味野菜で覆われている。

「彼が昔、某大ホテルチェーンの総料理長だったのは説明しましたな。そして彼の専門はフレンチ。スープを取るのにも、その技法は使われている。
ライス君の言った通り、コンソメに近い味わいなのはそこから来ているわけですな。
味の決め手は、スープの出汁を取るのに使われているプロシュート」

「ぷろしゅーと?」

「高級生ハムのことだよ、バクシンオー君。スープをハムで取るのは、高級中華ではよくあることだ。
ただ、そこで使われる金華ハムはあまりに高い。ラーメンで金華ハムを使っているのは、『家元』がスペシャルでやるくらいしか聞いたことがない。
そこでここ『八五』は、プロシュートを使った。それがフレンチに通じる独特のスープを作り上げたわけだよ」

「むむむ……よく分かりませんがとにかくすごいのですね!麺が伸びてしまいますから早く食べましょう!」

「ははは、つい熱が入ってしまったな。バクシンオー君の言う通りだ、頂くとしようか」

私は箸を取り、勢いよく麺を啜る。パツパツとした細麺にスープが絡む。


上品、かつ個性的。どこにもありそうで、しかしどこにもない。
ただ、旨味のみが、喉を通り抜けていく。旨味は筋肉の隅々まで広がり、「飢え」を満たしていく。


……うむ、満足。


「バックシーン!!!」


バクシンオーが大声で叫ぶと同時に、私のワイシャツのボタンが全て弾け飛んだ。


38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/30(木) 00:03:25.18 ID:7W+mlsx/O


「ひいっ!!?」


ライスシャワーが驚いた声をあげる。バクシンオーも目を丸くした。


「ちょわっ!?これはどうしたことですかっ!?」

「ハッハッハ、すまないね。美味さで筋肉が満足すると、こうなるのだよ」

カウンターの奥の店主も苦笑する。

「天王寺さんのそれ、久々に見ました」

「お恥ずかしい。チートデイで美味いものを食うと、どうしてもこうなってしまうのですよ。
ともあれ皆、私のことは気にせず食べたまえ」

バクシンオーは一心不乱に麺を啜り始めた。

「美味しいっ!美味しいでふトレーナーさんっ!!こんな美味しいラーメンは初めてです!!」

「ライスも同じだよ?本当に、今まで食べたことのないラーメン……
それに、この粒々。胡椒みたいだけど、とても複雑な味がする」

三田村嬢が首を縦に振る。

「それ、気になってたの。何なのですか?」

「マダガスカル産の最高級胡椒『ペッパーキャビア』ですよ。これもフレンチならではの薬味ですな」

端麗系のラーメンは、往々にして味が単調になりがちだ。そしてえてして、上品なだけの味になり、印象がぼやけやすい。
それをペッパーキャビアが封じている。しかも、食べ進めるごとにそれはスープに溶け出し、スープ自体の味を変えていく。故に、飽きない。

「チャーシューも、柔らかくて美味しいです!」

バクシンオーはほとんどスープも飲み干そうとしている。脚だけでなく、食べるのも速い。
ライスシャワーはというと、味わうようにゆっくりと食べている。これもスプリンターとステイヤーの違いというものか。

「本当に、美味しい……!天王寺トレーナーさん、ありがとうございます」

「いやいや、礼には及ばないよ。お祝いの穴埋めにはなったかな?」

「うんっ……!」

嬉しそうなライスシャワーを見て、私も思わず笑顔になる。そうしていると、私たちの前にグラスが出された。

「これは……?」

「ほうじ茶です。よろしければ」

「……!!」

三田村嬢が絶句した。バクシンオーも「ややっ!!」と声をあげる。

「これは濃い、美味しいお茶ですね!」

「スープの味を、クリアに流していく……まるで完成された、フルコースの最後のデザートみたい」

三田村嬢に私は頷いた。

「その通り。それこそが、この店のコンセプトですからな」

「コンセプト……あっ!!確か、フレンチ出身って……」

「そういうことです。元々、フレンチレストランに行くおつもりだったのでしょう?
ここを選んだのには、然るべき理由があったわけですよ」

「そういうことでしたか……!心遣い、本当にありがとうございます!」

「いやいや、たまたまチートデイにラーメンをと思っただけですよ。そして狙い通り、筋肉も満足した。
あまり長居すると、待っているお客さんに悪いですな。そろそろ出ましょうか」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/30(木) 00:15:48.67 ID:7W+mlsx/O
*

「本当に今日は、ありがとうございます……!ご馳走にまでなってしまって」

「いやいや、困った時はお互い様ですからな。当然のことをしたまでです」

三田村嬢に続いて、ライスシャワーも一礼した。

「トレーナーさん、ありがとう……!とってもいいお祝いになったよ……!」

「そう言ってもらえるとありがたい。……ところで、どうして急に店が休みになったのかな?」

「ライスも分からな「ちょわーっ!!」」

横でバクシンオーが奇声を挙げた。何やらスマホを見ているが……

「どうかしたのかな?」

「トレーナーさんっ!!これを見て下さいっ!!」

私は彼女の桜色のスマホを覗き込む。ニュースサイトのようだが……

「何々……?」


『オグリキャップ、とんだ優勝祝い 店の食材を食べ尽くす』


まさか、これは……

スマホを見せると三田村嬢とライスシャワーの顔色が青ざめ、引きつった笑いが浮かんだ。

「「あ、ああ、そういう……」」

「やはり、行く予定のお店でしたか……」


私は、あの時門の前にいたのがオグリキャップではなく、彼女たちだったことに深く感謝するのであった。


第一話 完

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/30(木) 00:17:56.48 ID:7W+mlsx/O
以上です。このために今日1時間半並んで食べてきました。
久々なので記憶をリフレッシュするためでしたが、やはりハ五は美味いですね。

早速次回のお題です。まず、ゲストのウマ娘を決めます。
安価下1〜5で、最もコンマが大きいものとします。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 00:30:15.42 ID:lIMH2DI6o
セイウンスカイ
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/12/30(木) 00:39:04.27 ID:SaqYcGMpO
ファインモォォーーションッッッ!
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 00:41:34.83 ID:Tn5CMADBo
おつおつ

ファインモーション
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 00:56:22.13 ID:PJyCGCD7o
オグリキャップ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 00:57:12.38 ID:7KG988H5o
ミホノブルボン
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/30(木) 01:12:07.98 ID:7W+mlsx/O
それではファインモーションとします。

続いてラーメンのジャンルを決めます。同じく安価下1〜5で最も大きいものとします。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 01:45:51.48 ID:7KG988H5o
二郎系
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 02:23:27.32 ID:hhnTll5S0
一風堂みたいな博多系とんこつラーメン
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 02:25:16.63 ID:7KG988H5o
えん寺

固有店名はあれならつけ麺系
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 02:26:04.09 ID:7KG988H5o
書き込めてたすまん
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 03:22:45.79 ID:uXmy1Lkjo
ファインといえば札幌記念
北海道ラーメン系
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 05:21:23.70 ID:Tn5CMADBo
>>51
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/30(木) 07:36:44.53 ID:08Rqc2IZO
北海道ラーメン系で決定しました。
多分少し変化球で行きます。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 19:08:50.11 ID:Tn5CMADBo
おつおつ
良いお年を
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/08(土) 14:38:59.49 ID:+AqJxiVOO
明けましておめでとうございます。
更新は明日までに行う予定です。

なお、オリジナルウマ娘(?)が出ますのでご注意下さい。
(一応ゲーム本編には出てますが)
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/08(土) 14:44:07.58 ID:wRRx+65vo
了解

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/08(土) 16:52:37.14 ID:+AqJxiVOO

「6、7、8……」

丁寧に焦らず、大胸筋と上腕三頭筋に力を込める。頭上のバーベルはわずかな震えもなく、静かに上下動を繰り返した。
15回を数えた所で私はバーベルを起き、タオルで汗を拭いた。ベンチプレスの負荷は、もう少し高めてもよいかもしれない。

時計を見ると昼手前だ。そろそろ昼食の時間か。
バクシンオーには弁当を持たせてある。スプリンターである彼女には、エネルギーの変換効率が高い食事が望ましい。
学園の食堂でも充分なのだが、私が自ら作った方がより効果的だ。トレーナーには、私のように担当ウマ娘の食事まで作る者が少なくない。

私は冷蔵庫を開け、ホエイプロテインの袋と牛乳を取り出す。シェイカーでそれらを混ぜ、喉に流し込む。
そして、サラダチキンとバナナ、ビタミングミにエネルギーバー。これで昼食は終了だ。
味気ない食事ではあるが、私にとってはこれで充分だ。何より、チートデイは近い。不満に耐えた先のカタルシスこそ、チートデイでは重要なのだ。

「さて……」

午後は高等部で栄養学の授業がある。教員も兼ねている以上、準備は怠れない。シャワーを浴び、教科書を確認せねば……


コンコン


ノックの音だ。すぐに飛び込んでこない所からして、バクシンオーではない。
なら誰だろうか。またライアン君が、筋トレの指導をお願いしに来たか。10分程度なら、余裕はある。


「入りたまえ」


「失礼します」


ペコリと頭を下げたその顔が誰か認識するのに、わずかに時間がかかった。
見慣れないのと、彼女がここに来る理由が分からなかったからだ。


両耳の耳飾り……昨夏に編入してきた、彼女か。


「どうかしたかな?ファインモーション君」


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/08(土) 17:13:26.17 ID:+AqJxiVOO

パアッと彼女の顔が明るくなった。

「あ、私の顔を覚えて下さったんですね。感激だなあ」

「授業以外で1対1で会うのは初めてだがね。バクシンオーと同じクラスだったな」

「はい!バクちゃんにはいつもお世話になってます」

ニコニコとファインモーションは弾んだ様子で話す。アイルランドの王族ということだが、とてもフランクな子だ。尻尾は上機嫌そうにパタパタ揺れている。
彼女は上流階級が多い学園でも最高レベルのVIPと聞いているが、その気さくさはバクシンオーからも聞いていた。

「バクシンオーなら食堂だが?」

「ええ。実は天王寺トレーナーに用事があって」

「私に?授業内容の質問かな」

フルフルと彼女が首を振る。

「違うの。年末、バクちゃんとライスちゃんとで、一緒にラーメン屋さんに行ったって話を聞いて」

「まあ、そうだが」

「うん。せっかくだから、私にもラーメン屋さん、教えてほしいんだ」

「……は?」

予想だにしない質問に、頭が一瞬真っ白になる。ラーメン?

「だからラーメン屋さんだよー。美味しいラーメン屋さん、色々探してるんだ。天王寺トレーナーなら、美味しいお店を知ってるんじゃないかって思って」

「意外だな。ラーメンがそこまで好きか」

「うんっ!!」

ファインモーションの尻尾の揺れが、さらに激しくなった。

「ラーメンはね、一杯の中に宇宙があるんだ。言ってみれば、それだけで完結したフルコース、みたいな?
色々美味しいものを食べてきたけど、ラーメンより美味しいものなんてないよー。日本にいるうちに、美味しいお店は行けるだけ行っておきたくて」

そうか、彼女は王族だ。日本に骨を埋めるわけにはいかない。
さりとて、アイルランドにマトモなラーメン屋があるとは思えない。なぜラーメンがそこまで好きなのかという疑問はあれ、気持ちは理解する。

「なるほど。ジャンルに希望はあるか?」

「希望……そうだ!北海道ラーメン!」

パン、と手を叩いてファインモーションが言う。


……これは、なかなか難しいミッションだぞ。


59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/08(土) 17:42:56.22 ID:0x9fhWilO
夜に再開します。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/08(土) 18:23:54.05 ID:wRRx+65vo
たんおつ
王族に食わせに行く店……難易度高い
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/08(土) 21:56:25.25 ID:0x9fhWilO

北海道ラーメンと一口に言っても、種類は多種多様だ。

有名なのが味噌ベースの札幌ラーメン。ラードでスープに蓋をする技法を採る店が多く、北海道ラーメンといえばまず味噌が思い浮かぶ。
しかし、醤油ベースの旭川ラーメンはそれとは全く異なる。濃厚で塩分強めのダブルスープが特徴で、札幌に住む人はむしろこちらを好む、らしい。
函館の塩ラーメンも有名だ。清湯のあっさりした味が特徴で、昆布を使ったスープが多い。
この他にも、鰹節の風味が強い釧路ラーメン、利尻昆布の旨味を前面に出した稚内ラーメンなど、広大な北海道に相応しく味もまた多種多様だ。

ファインモーションがこのうちのどれを望んでいるかで、連れていくべき店は大きく変わってしまう。
もう少し細かく訊きたいが、日本に来てまだ半年の彼女にそこまでの知識があるのかどうか。
事前に日本語を猛特訓したというだけあり言葉は驚くほど流暢だが、正直確信は持てない。


「……そもそも、なぜ北海道ラーメンなんだ?」


んー、と人差し指を口に当て、ファインモーションが考える素振りをした。

「日本に来て、デビューが札幌だったの。そこで浦安トレーナーに連れていってもらった、路地裏の店にあるラーメンが美味しくて!
世の中には、こんなに美味しいものがあるんだって知ったんだ。
それで、色々ラーメンを食べ歩くようになったの。最近は自分でも作ろうと思ってるけど、まだまだかな」

「路地裏、か……」

おそらくはラーメン横丁だろう。あそこは観光客向けの店が多く、味はピンキリだ。当たりの店の方が少ない。
王族である彼女の舌を満足させる店となると……


私はニィと笑った。東京にその流れを汲む店がある。恐らくは、あそこだ。


「分かった。君にピッタリの店が六本木にある」

「六本木?あ、明日近くまで行く用事があるよ!ミッドタウンで、◯◯国の大臣とお会いするの。夜は予定ないから、ついでに行ってみようかな。
天王寺トレーナー、案内してくださる?」

明日か、チートデイには丁度いいだろう。バクシンオーも連れて、行くとしようか。

「無論、構わないよ」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/08(土) 21:57:36.12 ID:0x9fhWilO



第2R 六本木「天鳳」



63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/08(土) 22:20:47.53 ID:0x9fhWilO

*

「ややっ!ここが六本木ですか!!」

バクシンオーがキョロキョロと辺りを見渡す。待ち合わせはミッドタウンの1階。時間より少し早めに着いてしまったようだ。
ファインモーションは、リッツ・カールトンにいるらしい。私にはあまり縁の無さそうなホテルではある。

エントランスから、2人の女性の姿が見えた。1人は正装のファインモーション。もう一人は背の高い、黒いスーツに身を包んでいる。……ウマ娘か?

「お待たせしました!」

「おおっ!ファインモーションさんっ!こんばんはっ!!」

スーツのウマ娘は、険しい目で私を見つめている。何か、気に障ることでもしただろうか?

「お疲れ様。彼女は?」

「あっ、彼女はSPのハリィ。外出する時は、いつも一緒なのよ」

「…………」

まだ私を睨んでいる。これはやりにくい。

「私はトレセン学園のトレーナー、天王寺定光です。よろしく」

握手しようと手を差し出したが、「フン」ととりつく島もない。

ファインモーションが「むう」と頬を膨らませた。

「いい加減にしてよ、ハリィ。男の人が苦手なのは分かるけれど」

「……お言葉ですが殿下。男の勧める店、それもラーメン店などロクなものではございません。行って後悔してからでは、遅いかと」

「天王寺トレーナーはいい人よ?ボディビルの世界では、世界的にも有名な方なのに」

「そんなことなど、私は知りません。とにかく、この男が何か妙な真似をしたら、腕の1本や2本、へし折ってご覧にいれます」

はあ、とファインモーションが溜め息をつく。

「ごめんなさいね。彼女、男性が苦手なの。とても有能なSPだし、ウマ娘としても大きなレースを幾つも勝っていたのだけど……」

「過去の話です。何より、殿下の姉上には、一度も勝てず仕舞いだった」

「でも最後まで諦めず食らいついた。だからお姉さまはハリィが大のお気に入りなんだけど……。
あ、ごめんなさい!ラーメンだったね。ここから近いのかな?」

私は頷く。

「ここから3分も掛からないよ。じゃあ、行こうか」

ハリィの険しい視線を背中に受け、私は歩き出した。すぐに、店の目印になるドラム缶が見えてくる。

「……ドラム缶ラーメン?」

「実際にドラム缶では作ってないから、安心してくれ。では、入ろう」

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/08(土) 22:22:09.12 ID:0x9fhWilO
少し休憩。

ハリィには一応元ネタがあります。
元ネタの馬はファインモーションより年下ですが。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/08(土) 23:14:52.07 ID:wRRx+65vo
おつー
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 22:12:47.35 ID:/CyxYZTNO

店の前には数人ほどの列ができていた。振り向くとハリィが険しい顔をしている。

「あれで作っているのでなければ、何のためにあの缶はあるのだ」

「昔の名残だよ。遥か昔、数十年前にこの店のルーツができた時には、実際にドラム缶を寸胴代わりにしていたらしいな。
元々、この店は旭川にあった。そして初代の親父の息子たちが、札幌と六本木に店を出したってわけだ」

パン、とファインモーションが手を叩いた。

「だからお店の名前が同じなんだね!ドラム缶を見て、思い出したよ」

「そういうことだ。ただ、味は少し違うらしいが」

横のバクシンオーがソワソワと落ち着かない様子で店内を見ている。

「トレーナーさん!私、お腹が空きました!お勧めは何ですか?」

「えっと、醤油も味噌もあるねー。確か、札幌で食べた時は味噌だったかな」

そう言うファインモーションに、私は微笑みながら首を横に振る。

「六本木の天鳳では、ほとんどの客が『135』を注文するな」

「……135?」

「うむ、135というのは……っと、席が空いたようだ」

テーブル席に通されると、周囲の目線が一斉にこちらに向いた。見目麗しいウマ娘3人に、屈強なスキンヘッドの大男とくれば嫌でも目立つ。
そこにハリィが鋭い眼光で客を睨むと、視線が逸れて行くのが分かった。なるほど、令嬢の護衛には確かに向いた人物らしい。

向こうから東南アジア系と思われる店員がやってきた。

「ゴ注文は」

「135大盛り、それにライスを。君たちは?」

「トレーナーさんと同じのにします!」

「私もそうするよー」

ハリィは暫し黙った後、「殿下と同じもので」と不機嫌そうに言った。

「それで、135って何なの?」

「メニューにも書いてあるが、醤油ラーメンの『麺硬め』『油多め』『しょっぱめ』を指す。
これよりさらに味が濃く、油っぽく、しょっぱい『めんばり』もあるが、こちらの方が万人向けだ」

ハリィが私を不満そうに見ている。

「そんな健康に悪そうなものを、よく殿下に食わせようとしているな」

「これは『チートデイ』だ。健康に悪い、大いに結構。ただ旨ければいい。
ファインモーション君も、うちのバクシンオーも私も、日々激しいトレーニングを行っている。旨いものを好きなだけ食うことが、何よりのストレス解消になるのだよ。
そして、旨いものは健康には必ずしも良くはない」

私は静かにハリィに微笑んだ。

「そして、トレーニングを熱心に行っているのは、君もじゃないかね?その鍛え上げられた肉体を見れば分かる。
君にとっても、この店はチートデイにはもってこいだと思うが」

「……不味かったら承知せんぞ」

そう言う彼女の前に、丼が置かれた。

「135とライスデス」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 22:34:11.43 ID:/CyxYZTNO

スープはやや少なく、麺が一部顔を覗かせている。そしてメンマとネギに、硬めのチャーシュー。
スープの色は茶色に濁っており、透明度はほとんどない。

「これ、味噌じゃないの?」

「れっきとした醤油ラーメンだ。さあ、頂こ「バックシーン!!!」」

着丼と共に、バクシンオーが凄まじい勢いでラーメンを食べ始めている。

「美味しいですトレーナーさん!!しょっぱくて、美味しくて、箸が止まりません!!」

「……改めて、頂こうか」

リフトアップされたのは、西山製麺の縮れ麺。これに油を纏った濃厚なスープがガッツリと絡んでいる。
それを勢いよく啜ると、動物系の旨味と塩分の暴力が、味蕾に突き刺さる!


……これだ。これを身体は待っていたのだ。


パシーンッッ!!!


ワイシャツからボタンが弾け飛んだ。そう、チートデイはこうでなくてはならぬ。


「美味しいっ!!しょっぱいんだけど、それが不快な塩気じゃなく……まろやかですらある。
スープが少ないのは、これだけで充分だからね!?量が多かったら、きっとしつこくなってしまう」

ファインモーションも熱心に丼にかじりついた。ハリィはというと、まだ訝しげに丼を見ている。

「どうした?食べないのか」

「……なぜライスも頼んだ」

「食えば分かる。スープを飲んだ後、ライスを食べてみてくれ。抵抗がないなら、スープをライスにかけるのもお勧めだ」

渋々ラーメンを啜ると、ハリィの目の色が変わった。

「…………!?」

そして、スープを蓮華で飲んだ後、ライスを口にした瞬間。終始不機嫌そうな仏頂面だった彼女の表情が変わった。

「……So, delicious!!!何だこれはっ!?ライスが、甘いぞ!!?」

私はニヤリと笑う。

「135にはライスが必要なのだよ。過剰な塩分は、ライスの甘みを際立たせる。
そしてそれがさらに箸を進ませる。よく考えられた一杯だ」

「……う、うむ。確かに、旨い……」

ハリィもラーメンに夢中になったようだ。135の中毒性に勝るラーメンは、都内でもそうはあるまい。


……同じ北海道ラーメンを祖とする、あの店以外は……


68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 22:42:12.74 ID:/CyxYZTNO
*

「大・満・足、ですっ!!」

店から出ると、ハッハッハと腰に手を当ててバクシンオーが笑う。ファインモーションも上機嫌な様子で、ハンカチで口を拭った。

「本当に美味しかったよー。札幌のお店もいいけど、ここも美味しかったね。
六本木は大使館とかあるからよく来るけど、行きつけになるかも」

ハリィが私に頭を下げた。

「ミスター天王寺……無礼をお許し下さい。確かに、美味でした。殿下を充分に満足せしめるとは……」

「いや、私は単に旨いラーメンを紹介したまでだよ。そんな大層なことはしていない」

「だが、この埋め合わせは何かしらの形でしなければなりません。何をすべきでしょうか……」

ファインモーションが「むう」と頬を膨らませる。

「もう、ハリィは大袈裟なんだよー。天王寺トレーナーも気にしてないみたいだし、いいじゃない」

「ですがっ!!私の気が収まりません。ここは一つ……」

※コンマ下が60以上で追加の店舗紹介
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 22:42:29.52 ID:zAsIrhFv0
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 22:47:37.06 ID:/CyxYZTNO

ファインモーションが溜め息をつく。

「もう、ハリィったら……じゃあ、今度機会があったら、私のお勧めのお店に天王寺トレーナーとバクちゃんを連れていってあげるね。ハリィはそれでいい?」

「はっ、分かりました」

ハリィが恐縮したように頭を下げる。


さて、どんな店を彼女は紹介してくれるのだろう。その時が今から楽しみになってきた。


第二話 完


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 22:50:49.67 ID:/CyxYZTNO
以上です。新年早々天鳳に行こうとしたら臨時休業でした……。

追加の店舗紹介としたのは、その際に代わりに行ったお店です。こちらもかなりのインパクトがあるお店だったので、いつか登場させたいですね。

さて、次回のお題です。まず、ゲストのウマ娘を決めます(今回はファインモーション以外で)。
安価下1〜5で、最もコンマの大きいものとします。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 22:51:38.48 ID:+VUuXkqxo
おつおつ
本当に食べたくなる

ゲストはエアシャカール
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 22:51:46.00 ID:YFtBc2//O
カレンチャン
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 22:52:27.56 ID:zAsIrhFv0
ゼンノロブロイ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 22:53:10.44 ID:JdmKVAcDO
メイショウドトウ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 22:53:14.98 ID:Y8fG/jIIO
メジロマックイーン
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 22:56:55.11 ID:/CyxYZTNO
>>73
00をどうするか考えていませんでした。
安価下が奇数なら>>76、偶数なら>>73とした上でもう一人追加します。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 22:57:23.37 ID:nyn0RK5q0
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 22:59:42.03 ID:/CyxYZTNO
メジロマックイーンとします。甘味が美味しいラーメン屋ですかね……

続いてジャンルを決めます。同じく安価下1〜5で最も大きいものとします。
固有店名でも構いませんが、行ったことのない店の場合リサーチにお時間を頂くことになります。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 23:00:38.89 ID:+VUuXkqxo
チョコレートらーめん
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 23:00:47.58 ID:Zr0u/y4LO
煮干系
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 23:01:32.26 ID:nyn0RK5q0
>>80
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 23:01:57.89 ID:/CyxYZTNO
>>80
さすがに思い付かないので除外します……すみません。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 23:02:53.92 ID:nyn0RK5q0
あら、じゃあ下の>>81(コンマはそのままで)
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 23:03:29.13 ID:+VUuXkqxo
すまねぇ
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 23:07:05.80 ID:/CyxYZTNO
有効票は
>>81
>>82(煮干扱い)
です。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 23:09:43.87 ID:x/Aik72to
鶏そば系
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 23:09:51.45 ID:WejkOssvO
鶏白湯
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 23:14:12.84 ID:R/Fy+EtaO
魚介醤油
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 23:23:25.09 ID:/CyxYZTNO
鶏そば系に決定します。
鶏そばならここしかない、という店からがあるのですが、サイドメニューにスイーツがあったかどうか……
もう一つの候補はスイーツはあるのですが、鶏そばがあるかは未確認です。行ってから考えます。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/09(日) 23:26:38.97 ID:/CyxYZTNO
少し文章が変になっていました。

場合によっては、ラーメン紹介+スイーツ店紹介にするかもです。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/10(月) 01:48:49.35 ID:BKCKS5iLo
おつ
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/10(月) 11:08:12.42 ID:a5ebB3haO
展開を思い付いたので、横浜のあの店にします。

なお、余談ですがハリィ=ハリケーンランです。アイルランド繋がりですね。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/11(火) 02:38:45.77 ID:ohMVBuJb0
もしかして前にでちでち言うピンク髪スク水で書いてた?
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/11(火) 03:03:16.00 ID:zZrgF2x40
あったなあそんなスレ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/11(火) 17:38:58.12 ID:TofSKLWHO
訂正です。
>>16で「月1回」とありましたが、「週1回」が正しいものです。
(アスリートのチートデイは頻繁に行うもののようです)
謹んでお詫び申し上げます。
更新頻度も、当面はこんな感じです。極力食べた後に書きたいので。

>>94
よくご存じですね。その通りです。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/11(火) 17:47:29.80 ID:cDyb2KW3o
あいー
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/11(火) 18:02:06.43 ID:KSP9odIv0
続きはまだ?

スレ作っておいて、そのままエタるのはどうかとおもいますが?
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2022/01/11(火) 21:53:48.02 ID:BaqsE2OLO
明星×パックインソフト共同開発
ラーメンを売る
経営シミュレーションゲーム

『PS/チャルメラ(ゲーム)1999年』実況プレイ
(22:00〜放送開始)

https://youtube.com/watch?v=hQ0MFd5-tT4
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/14(金) 06:45:15.52 ID:TLFqdSMz0
3日経った亀レスだけど、そっかやっぱりでち公のラーメンの人だったか。酉付いてないけど書き方似てるなと思ってたのよ。これ以降はROMるけど、
お前を見ているぞ?
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 16:45:27.65 ID:TDjsODSLO
2回に分けて更新します。

>>98
これについては申し訳ありませんとしか……
仕事が多忙になると更新が途切れ、そのままエタる傾向があるのは本当に良くないですね。
基本勢いで書いているので、途切れると構想や設定が飛んでしまうのです……

差し当たり、ショタの方は単独で読めるものにリメイクしようとは考えています。かなり色々設定も展開も変えますが。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/15(土) 16:56:17.34 ID:qNHKlakGo
了解待機
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 17:10:32.99 ID:TDjsODSLO



※今回は独自設定が幾つかあります。ご注意下さい。



104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 17:12:34.86 ID:TDjsODSLO

トレセン学園のトレーナーには、色々な人物がいる。

トレーナー専業という者はもちろん多い。彼らの多くは、数人のチームを組んでウマ娘たちを指導する。「スピカ」や「シリウス」はその代表格と言えるだろう。
名門チームのトレーナーともなれば、一般のエリートサラリーマンが裸足で逃げ出すほどの給料が貰える。

もっとも、トレーナー職はそれだけに狭き門だ。医学的知識はもちろん、教育者としても優れていることが要求される。
数十倍とも言われるトレーナー試験の倍率は、それを物語っていると言えるだろう。
故に、先祖代々トレーナーをやっている家系というものが存在する。親から子へと受け継がれるノウハウは、試験において大きなアドバンテージとなるのだ。


そして、目の前にいる褐色の肌をした少年……いや、青年もまた、その一人だ。


「ご多忙な中すみません」

流暢な日本語で彼……アリーム・アルナシームは頭を下げた。

「いや、構わないよ。して、用件は何かな?」

私はコーヒーを口にする。アリーム君は少し恐縮した様子だ。

「えっと、その……」

「ハハ、怖がらなくていい。私は秘密主義ではない。トレーニングの方法なら、幾らでも教えよう。
私がトレーナーをやっているのは、私自らの研究も兼ねてのことだからね」

「えと、トレーニングのことじゃないんです。ボクの担当の、メジロマックイーンのことで」

「彼女か」

話には聞いている。アリーム君がUAEから赴任してきたのは1年前。最初に受け持ったのが彼女だ。
前任から引き継ぎを受けたマックイーンはたちまち結果を残し、目下菊花賞含む3連勝。春の天皇賞では早くも大本命との呼び声が高い。


そして、彼女の快進撃の背景に彼、アリーム君の存在を指摘する声は少なくない。


アリーム君はUAE王族の出身だ。身内にも大レースを勝ったウマ娘が多いと聞く。
王家であり、名門トレーナーの一族。それがUAE王族、アルナシーム家なのだ。
若干19歳で年若く見えるが、私など及びもつかぬエリート。それが彼だ。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 17:45:26.07 ID:TDjsODSLO

「君ならウマ娘の扱いは慣れたものではないのかな?」

顔を真っ赤にしてアリーム君が否定する。

「とんでもない!女の子とどう接したらいいか、よく分からないんです。
母さんや姉さんならともかく、赤の他人のウマ娘と接したのは、マックイーンが初めてで……」

「そういうことなら適任は別にいると思うが?沖野君とかに聞けば早いだろう」

「いえ、天王寺トレーナーに是非、と思いまして……天王寺トレーナー、食通なんですよね?」

思わずコーヒーを吹き出しそうになった。

「誰だね、そんなことを言っているのは?」

「ファインモーション殿下です。この前、大使館でお会いした時に天王寺トレーナーとご飯を食べたとお聞きしまして……。その知識に感服した、と」

私は苦笑した。ラーメン屋に連れていっただけなのに、どうしてそんなに尾ひれが付いているのか?

「私の知識など、たかが知れているぞ?メジロ家のご令嬢を満足させるような店なら、君の方がなんぼか詳しいだろう」

「いえいえ、まだ日本に来て日が浅いですし……何より、スイーツは専門外なんです」

「スイーツ」

アリーム君が頷いた。

「マックイーンは素直でとてもいい子なんです。優秀ですし、話も合う。
ただ、スイーツにだけは目がなくて……よくパティシエールの食べ歩きに同行させられるんですが、都内のめぼしい所は大体行き尽くしちゃいまして。
天王寺トレーナーなら、どこか彼女の知らない名店をご存じかと」

「そこまでか」

「ええ。スイーツの食べ過ぎで体重管理が大変ですよ……」

アリーム君が深い溜め息をつく。私は腕を組んで唸った。

「スイーツは、私もそこまで詳しいわけではないぞ?」

暫しトレーナー室の天井を見ながら考える。パティシエールのように若い女性が好むような店は、悲しいかなあまり知らない。
ボディービルと肉体研究にかまけて34年。恋愛経験が豊富というわけではないのだ。
かといって無下にアリーム君を追い出すわけには行かない。何か助けになってやれないものか……


グゥ


不意に腹が鳴った。そうか、食事の時間が近いのか。
よく考えれば、チートデイの日は明日だ。あの店に行くつもりだったが……


……ん?あの店の近くには……


106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 17:45:54.81 ID:TDjsODSLO


私は思わず笑みを浮かべた。


「……心当たりがある」

「本当ですか!!?」

「ああ。間違いのない店だ。マックイーン君も、気に入ってくれるだろう。
その代わり、私たちのチートデイに君たちも付き合ってくれたまえ」

「チートデイ、ですか」

「そうだ。目当ての店の隣駅で、ラーメンを食そうと思っている。どうかな?」

アリーム君の顔が曇った。

「お気持ちはありがたいのですが……イスラム教徒のボクには、豚の入っているラーメンは食べられないので……」

「心配は無用だ。その店は鶏出汁で、豚はチャーシュー含め一切使われていない。ハラルにも抵触しない。いかがかな?」

「そんなラーメンがあるんですか?」

「鶏そば、というジャンルだ。チャーシューに豚を使わない店も少なくはない。
全国の鶏そば、いやラーメン全体でも上位10指に確実に入る。マックイーン君も気に入るだろう」

「ありがとうございます!!」

アリーム君が急に立ち上がって、私の手を取った。

「で、どこなんですか?」

「横浜だ。明日、ドライブも兼ねて行くとしよう」

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 17:46:54.05 ID:TDjsODSLO



第3R 横浜「中華そば高野」



108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 17:47:59.66 ID:TDjsODSLO
続きは明日です。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/15(土) 18:05:20.66 ID:qNHKlakGo
おつー
ばいとあるひくま
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/15(土) 18:06:38.68 ID:qNHKlakGo
失礼
バイトアルヒクマとか明らかに中東系の名前の子もいるし全世界からよりすぐりの人材が集まってるんやろうなぁ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 23:27:36.69 ID:PShYBsyPO
1レスだけ更新します。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/15(土) 23:28:51.60 ID:PShYBsyPO
*

「おはようございます!トレーナーさん!」

待ち合わせより10分早く来たというのに、バクシンオーはもう待ち合わせの門の前にいた。彼女が時間より遅れたことは、一度たりとてない。

「相変わらず早いな」

「はい!学級委員長たるもの、皆さんのお手本でなければなりませんから!」

「結構。……何分前からいた?」

「はい!30分前です!」

……単にせっかちなだけかもしれない。まあ、悪いことではないのだが。

「まあ、いいだろう。……ん、来たな」

向こうから小柄な男女の二人組がやって来るのが見えた。アリーム君とマックイーンだ。
こうして見ると、中学生の初々しいカップルに見えなくもない。実際、マックイーンは中等部3年なのだが。

「お待たせしました」

「ごきげんようですわ、天王寺トレーナー。いつもお世話になっております。バクシンオーさんもご一緒ですのね」

どこか落ち着かない様子のアリーム君とは対照的に、マックイーンはいつも通りの調子で言う。

「うむ。今日はチートデイだからな。これもトレーニングの一環、というわけだ」

「はい!ちーとでいの後は、体がよく動くのです!ハーハッハッハ!」

「『チートデイ』?」

「説明は車の中でしよう。休日のドライブとしゃれこもうか」

駐車場には、愛車のアウディA4が停めてある。助手席にアリーム君を、後部座席にバクシンオーとマックイーンを乗せ、車は心地よいエンジン音と共に滑り出した。

「目的地は横浜なんですよね。ボクは地理には詳しくないんですけど、横浜のどこですか?」

「菊名という駅にまず向かう。そこでスイーツを買って、電車で隣の大口駅に行きラーメンを食べよう。
今の時刻からなら、ちょうど昼の部が始まる頃には着くな。かなり並ぶが、そこは勘弁してほしい」

後ろからパン、手を叩く音が聞こえた。

「横浜ですの!?横浜と言えば、かの名店『ユウジアジキ』もありますわね!ひょっとして、そこが目的地ですの?」

「『ユウジアジキ』は北山田だから、少し離れているな。今日は『ラトリエ・ドゥ・アンティーク』に行くつもりだ」

「どういうお店ですの?」

ハンドルを首都高方面に切りながら、ミラー越しにマックイーンを見る。

「2019年に世界のパティシエコンクールで優勝したオーナーシェフが開いた店だ。もとは石川町にあった店だが、手狭になったらしくてな。最近、菊名に移転したと聞いた」

「世界一ですの!!?さすが天王寺トレーナー、よくご存知ですのね」

「何、私たちの目的である『中華そば高野』が近くにあるから知っていただけだよ」

「素晴らしいですわ。そのスイーツ、いえ食への探求心、見習わなければなりませんわ」

「そうです!トレーナーさんは何でも知っているのです!」

バクシンオーもマックイーンも何か勘違いしているようだ。そこまで大したものではないと思うが……
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/16(日) 00:37:57.77 ID:xOkM3uHF0
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/16(日) 21:42:47.07 ID:zSgUm9fwO
更新します。

とりあえず軽い設定ですが……

天王寺(34)
190cm 108kg
スキンヘッドの糸目。大体表情は微笑で固定。
見た目は強面だが温厚で理知的。トレセン学園では栄養学を担当する教師でもある。
日本屈指のボディービルダーである一方、スポーツ理化学では博士号も持つ。東大ボディービルディング部の出身で顧問。
トレーニングは速筋系に特化しており、パワートレーニングでは彼の右に出る者はいない。半面、ステイヤー育成は不得手。
これまで担当したウマ娘は全てスプリンターに偏っている。独身、彼女なし。

こんな感じです。随時オリキャラのプロフィールは更新します。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/16(日) 22:07:48.16 ID:zSgUm9fwO
*

「確かここの辺りのはずだ」

菊名駅近くのコインパーキングにアウディを停め、西口方面に向かう。
すぐに若い女性たちの行列が見えた。……あそこか?

「すごい行列、ですね……ラーメン屋、じゃないですよね、これ」

「う、うむ……」

確かに「ラトリエ・ドゥ・アンティーク」とフランス語で書かれている。ここで間違いないようだ。
店の前には、ラーメン屋よろしく行列の順番待ちの方法が書かれた立て看板があった。行列は、ざっと10人ほどか。

「スイーツに並ぶのは、なかなか珍しいですわね……ああ、コロナ感染対策で入場を絞ってますのね。そういうことですの」

「むむう……早く入りたいですが、我慢です!あ、パンフレットがありますよ!」

バクシンオーが小さなパンフレットを持ってきた。「ショコラ アソート」とある。ああ、そういうシーズンでもあるのか。

「『2015年アジア大会優勝作品』、だそうですわ!!まるで宝石箱のよう……これ、買いますわ!」

「え、誰かにあげるのかい?」

戸惑い気味に言うアリーム君に、マックイーンは上機嫌で返す。

「もちろん、わたくしが自分で食べる分ですわ。トレーナーさんにも分けて差し上げますわよ?」

「だよねえ……」

アリーム君が肩を落とす。どうやら、マックイーンの頭にはスイーツしかないらしい。
これは先行き苦労しそうだ。思わず苦笑いが漏れた。

「トレーナーさんは、何を買うんですか?」

2人をよそに、バクシンオーがいつもの調子で聞いてくる。

「ん?私は好きなものを買うとするよ。多分、チョコレート系だな。脳へのエネルギー源として、チョコレートはかなり優秀だからな」

「なるほど!そこまで考えているのですね!では、私もチョコレートにします!手作りチョコレートの参考のために!」

「ん?バレンタインにチョコレートを作るのか?」

「はい!トレーナーさんに、日々の感謝を込めて、です!」

手作りチョコレートとはやや意外だった。こういうイベントには縁遠い子だと思っていたが……まあ、楽しみにしておこう。

*


この私の認識が大甘だったのが分かるのは、これから1ヶ月ほど先のことだ。



116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/16(日) 22:30:25.37 ID:zSgUm9fwO
*

「つい買いすぎてしまいましたわ」

満足そうなマックイーンとは対照的に、アリーム君はややげんなりした表情だ。

「いや、幾つ買ったんだ?ケーキ10個に焼き菓子2箱、ショコラアソート2箱……まさか、君一人で食べるんじゃ」

「まさか、それはないですわ。トレーナーさんにも、お一つあげますわよ?」

「……残りは?」

「もちろん!わたくしが賞味期限内に全て責任を持って食べますわ!」

ドヤ顔のマックイーンに、アリーム君は「また体重制限プログラムが……」と呟いた。むしろよくそれであれだけマックイーンを仕上げられると感心するのだが。

私はというと、バクシンオーと2人で食べるだけのケーキとショコラを購入した。
特に「アンティーク」という名のチョコレートケーキは、時計を模したなかなか手の込んだ意匠だ。食べるのが少々勿体無く感じる。

「さて……ケーキはひとまず車内に置こう。電車で大口駅まで向かおうか」

「車では向かわないのですか?」

「車で行ってもいいんだが、またコインパーキングに停めないといかんからな。それに何より、菊名駅周辺は細い一方通行ばかりで動きにくいのだよ」

バクシンオーに告げ、JRの改札に向かう。そして、横浜線で3分。
大口駅を降り、1分ほど歩くと割烹の看板が見えた。

「ここを左に行くとすぐだ」

「え、こんな細い路地に……あ」

小さな立て看板と、行列が見えた。こちらはざっと……25人ぐらいか。

「すごい行列ですわね……どのくらい待ちますの?」

「1時間弱、だな。これでもすぐ近所にセカンド・ブランドの店が最近できたから、短くなった方だ」

「セカンド・ブランド?」

「そっちは塩がメイン、らしいな。私もまだ足を運べてない。
まあ、それはまた別の機会だな。ひとまず、並ぶとしよう」

行列には若い女性やカップルの姿もちらほら見られる。マックイーンが「意外ですわね」と口にした。

「ん?どういうことだ」

「ラーメン屋って、男の方のものというイメージがありましたから。少し店内も見えましたけど、お洒落な感じでしたわ」

「店主はまだ若いからな。元美容師と聞いている。接客も素晴らしいぞ。
最近は、こういうラーメン屋がかなり増えているのだよ。銀座『八五』のようにミシュランに選ばれる店もあるほどだ」

「そうでしたの。なるほど……」

フムフムと何やら感心している様子だ。こういう辺りは、さすがメジロ家御令嬢なのだろう。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/16(日) 23:05:40.01 ID:zSgUm9fwO
*

待つこと1時間弱。ようやく店内に通された。

「この『鶏の中華そば』を注文すればいいんですか?」

食券機の前で、アリーム君が訊く。

「それでももちろん構わない。が、私が注文するのはそれではないよ」

「え」

「こちらだ」

私は食券機の下部、「鶏つけそば」を指差した。

「つけそば、ですか」

「ああ。こちらの方が、より強烈に鶏の風味を感じられるからね。それと『和え玉』も頼むつもりだ」

「和え玉、とは?」

「ここは大盛りがないからね。その代わりというわけだ。まあ、頼んでみてのお楽しみ、だな」

結局、4人全員が特製鶏つけそばと和え玉シングルを注文することになった。

「色々素材について書いてありますのね。スープは『信玄どり』と『錦爽どり』の鶏ガラに手羽先、胸ひき肉、野菜、昆布……随分凝ってますわ」

「スープはラーメンの命、だからな。……っと、来たぞ」

店員がまず麺を持ってきた。丼の中には昆布水。そしてその中に麺が泳ぐ。穂先メンマが丼の周囲を取り囲み、麺の上にはとろろ昆布。独特のビジュアルだ。

「……これが、つけそば?」

「いや、麺だけだ。ただ……」

「バックシーン!!!」

説明する前に、バクシンオーが麺だけ食べ始めてしまっていた。

「ちょっと、バクシンオーさん?」

「これがつけそばというものですか!!少し硬い、パキパキとした麺にこの……スープ?がよく絡みます!おいしいです!!」

「天王寺トレーナー、あれでよろしいのですか?」

困惑するマックイーンに、私は軽く頷く。

「まあ、間違いじゃない。バクシンオー、つけ汁の分も残すように」

「分かりました!」

もう麺が半分なくなっているが、それはもうしょうがない。私は箸を持ち、麺をリフトアップする。

「まず麺だけを味わうのが、ここの流儀だ。では……」

啜ると、麺と共にやや粘度のある昆布水が口の中に入った。この噛み応えのある麺の存在感。そして、それに負けぬ昆布水の旨味。これだけで既に、完成された麺料理と言える。

「美味しい……しかし、鶏の風味は」

「それはこれからだよ」

続いて店員がつけ汁を持ってきた。「左右どちらに置きましょうか?」と訊いて来たので、左と告げる。こういう対応は、他店ではあまり見ない。

「これに、麺をつけますの?スープに浸かった麺を、別のスープにつけたら、味がぼやけませんこと?」

「それがここの素晴らしいところだよ、マックイーン君」

彼女は恐る恐る麺をつけ汁につけ、啜る。すぐにその表情が一変した。


「これは……なんという……!!」


118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/16(日) 23:27:53.91 ID:zSgUm9fwO

アリーム君の顔も、驚きで固まっている。

「これはっ!?紛れもなく、『鶏そのもの』……」

「バクシンバクシーン!!」という奇声も、私の隣から聞こえてきた。私も頂くとしようか。


ズズッ…………


バシーンッ!!!


シャツのボタンが弾けると共に、凄まじいまでの旨味が口の中に拡がった!


昆布水でコーティングされた麺が、鶏油多めのつけ汁でさらにコーティングされる。そしてそこから産み出される、二重の旨味……
いや、これは単なる「1+1」ではない。
まさに、互いが互いを高め合う「マリアージュ」というべきものだ。

箸が一気に進む。止まらない。
鶏の深い旨味と昆布水の優しい旨味が絡むと、これほどまでに暴力的で複雑な味になるのか?

私はつけ汁の中のワンタンを箸で持ち上げた。噛むと、生姜が強めの餡がいい味変となる。
そして、再び昆布水だけで麺を頂く。さっぱりした味が、舌をリセットする。
そして再びつけ汁へ……一体何種類の味を、この一品は与えてくれるのだろうか。


つけ麺、鶏そば数あれど、ここまで複雑玄妙にしてインパクトのある一杯を、私は知らない。


「す、凄いとしか……ラーメンとは、こんなに美味しいものなのですね……。
チャーシューも、確かに鶏だけですね。……むっ!?」

アリーム君がチャーシューを噛むと、また動きが止まった。

「どうしましたの、トレーナーさん」

「君も、チャーシューを食べてくれ。これも……驚くぞ」

「チャーシューって、豚だけじゃないですのね。鶏だとどう……柔らかいですわっ!それにこの風味は……」

私はマックイーンに頷く。

「そう、バジルで下味がついている。そして、モモ肉は……うむ、実に香ばしい」

胸肉のチャーシューは低温調理がなされており、実に柔らかい。
そして、もう一種のモモ肉は皮付きでローストされており、胡椒が利いたパンチのある味だ。
具材の味の変化も、極めて緻密な計算で成り立っている。これほどまでに多様な味がありながら、しかし一体感があるのは驚くべきことだ。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/16(日) 23:41:42.30 ID:zSgUm9fwO

「本当に、美味しいとしか……そういえば、つけ麺はスープ割をするのでしたわね」

「スープ割はここにはないのだよ、マックイーン君。しばし、昆布水を出汁に入れて楽しんでくれ」

「ああ、そういうことですのね。……『しばし』?」

「そう、しばしだ。この後に、もう一品が来るぞ」

昆布水による出汁割は、鶏の旨味を一段と引き立てる。これもまた上質なものだ。
無論、ここで終えてもいい。だが、この店に来たからには、食べねばならぬもう一つの皿がある。


「お待たせしました、『和え玉』になります」


3人の顔が呆気に取られている。無理もない。
その小皿にあったのは、イタリアンのカルボナーラに近いものだったからだ。レモンの切ったものが添えられている。

「……え?これを、どうしろと」

「そのまま食してくれ。レモンを軽く絞るといいぞ」

麺を啜ったアリーム君が、目を見開いた。

「これは、ポルチーニ?それに、これも鶏の旨味が……」

「そう、ポルチーニカルボナーラをラーメンの麺でやってみた、ということだな。
やや重たい味だが、締めにはピッタリだろう」

「え、ええ。……これほどまでに、ラーメンは奥が深いのですね……ファインモーション殿下が、すっかりはまってしまわれたのがよく分かります」

「ハハハ、彼女にも教えてやってくれ。きっと気に入るだろう」

ふと横を見ると、「バックシーン!!ごちそうさまです!!」と、笑顔で手を合わせるバクシンオーが見えた。
細かい御託を考えながら食べるのも悪くないが、ああやって心を無にして一心不乱に食べる方が、チートデイとしては正しいのかもしれない。ふと、そう思った。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/17(月) 00:00:36.95 ID:zZAOGZQnO
*

「いや、本当にどうもありがとうございました」

帰りの車内で、アリーム君が頭を下げる。

「いやいや、寒空の下、2回も行列に並ばせてしまいすまなかった。まさか、『ラトリエ・ドゥ・アンティーク』があんなに並んでいるとは。
バレンタインデー前ということを、考えておくべきだったな」

「いえいえ、とんでもない。あんな美味しい店を紹介していただき、本当に感謝しています」

「天王寺トレーナー、私からも御礼……むぐっ、申し上げ、ますわ」

後部座席からマックイーンの声が聞こえる。……何か変だ。

「……マックイーン?」

「あ、んぐ。失礼しましたわ」

信号待ちで振り返ると、モンブランを手掴みで食べているマックイーンが見えた。

「ちょっと待ってくれ!?なぜ待てない!?」

「このモンブラン、絶品ですわ!もう一つ買えばよかったですわ……」

「いやいや、さっきつけ麺を食べたばかりだろ?」

「別腹タンク、ですわ」

悪びれもせず、笑顔で彼女は指についたクリームを舐めた。ストッパーになりそうなバクシンオーは……

「すぴー」

疲れてしまったのか、気持ちよさそうに眠っている。……スプリンターの彼女は、スタミナが切れてしまったようだ。

「……とりあえず、車内は汚さないようにな」

「分かりましたわ!」

*

トレセン学園に着いた時、1つを除いてケーキが食べ尽くされていたのは言うまでもない。
ただ、その1つはアリーム君が選んだものだった。案外、彼女も彼を気に入っているのだろうか?
まあ、若者の恋路は邪魔しないでおこう。

……私も、ああいう甘酸っぱい青春を送るすべきだったのだろうか。思えば、筋肉のことしか考えてこなかった気がする。
少し感傷的な気分になりながら、彼らを見送るのであった。


第3話 完

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/17(月) 00:02:48.35 ID:zZAOGZQnO
以上です。少々長くなりました。

中華そば高野のセカンド・ブランドは一度行きたいのですが、時間がなかなか取れません……
ブレが落ち着いた頃に向かいたいところです。

さて、次回のお題です。
まず登場ウマ娘を決めます。安価下1〜5で、最もコンマが大きいものとします。
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/17(月) 00:03:18.00 ID:l/fisPnH0
メイショウドトウ
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/17(月) 00:04:11.49 ID:1+L1MTuw0
メイショウドトウ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/17(月) 00:04:31.85 ID:h0xZqHpWO
マヤノトップガン
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/17(月) 00:06:27.80 ID:15Pqvn/DO
ゼンノロブロイ
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/17(月) 00:06:37.96 ID:tdkeGDPIo
メジロパーマー
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sape]:2022/01/17(月) 00:06:40.96 ID:RpGWe+d4O
ゴルシ
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/17(月) 00:09:18.44 ID:RpGWe+d4O
また00
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/17(月) 00:09:56.94 ID:zZAOGZQnO
また00が出ましたのでコンマで決めます。
コンマ下が奇数で>>126、偶数でドトウとあともう一人です。
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