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【コンマ】ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くだけのスレ
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190 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/24(月) 21:30:27.27 ID:4MFITfwwO
もう一度テスト
191 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/24(月) 21:31:31.18 ID:2sM2waKGO
とりあえず鳥付けました。
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/24(月) 21:39:42.48 ID:4P6P3vrio
乙酉
193 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/28(金) 18:17:16.65 ID:KnNp5kHAO
明日更新しますが、その前に簡単な判定だけします。
安価下のコンマがゾロ目だと……
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/28(金) 18:17:33.11 ID:vInwJT3Go
なんやー?
195 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/28(金) 18:19:16.13 ID:KnNp5kHAO
ゾロ目ですのでカレンチャンは実妹設定です。
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/28(金) 18:20:03.93 ID:vInwJT3Go
ファッ!?!??!
197 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/28(金) 18:22:15.24 ID:KnNp5kHAO
年齢が20以上離れてしまいますが、天王寺は長兄、カレンチャンは末妹ということで何卒。
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/28(金) 19:50:46.22 ID:6vfSUpzVo
>>194
素晴らしい!
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/28(金) 20:09:16.14 ID:/GsSRc52o
お兄ちゃん(実)
200 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/28(金) 20:37:55.66 ID:Jiy/5sfnO
これに伴いオリジナル設定入りますがご了承下さい。
(某キャラやゲーム、シングレの描写を見るにほぼ推測は正しそうですが)
201 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 17:22:52.32 ID:uR4r37BxO
それでは更新します。
断続的な書き込みになりますがご了承下さい。
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/29(土) 17:27:15.88 ID:VOED10V8o
カワイイカレンチャン!!!
203 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 17:39:59.88 ID:uR4r37BxO
「24、25、26……」
上腕二頭筋を使ってダンベルを持ち上げながら、私の目はチラチラと時計に向いていた。
筋肉の動きに集中せねばならないのだが、どうにも気がそぞろだ。
「ややっ!?トレーナーさん、どうしたのですか!?」
横でレッグプレスをやっていたバクシンオーが訊いてきた。彼女から見ても分かるほどにはあからさまであったらしい。
「いや、そろそろ来てもいい頃だと思ってな」
「誰がですか?」
ぽかんとしたその様子に、私は思わず苦笑した。何回かスケジュールについては伝えていたはずだが。
「決まっているだろう、カレンだ」
「カレン……おお!そうでした!!」
バクシンオーはレッグプレスのマシーンから降り、パンと手を叩く。
「やっと香港から戻ってこられるのですね!にしても、どうしてトレセン学園に来なかったのですか?」
「このご時世だ、隔離期間を取らねばならなかったのだよ。あいつも随分退屈していた様子だったが」
「かくりきかん?」
バクシンオーの頭の上に、いつものように「?」が浮かんでいる。
「コロナの感染防止のためだよ。あいつはオミクロンの流行前に香港に出ていたからな。それもあって、手続きに時間がかかった。
それに、この前の香港スプリントは大変なことになったからな……身体の検査も念入りにやっておく必要があったわけだ」
「むう、よく分かりませんがお元気なら結構ですっ!」
うんうんとバクシンオーが頷く。
そう、私が担当しているのはバクシンオーだけではない。
トレセン学園が誇るもう一人のスプリンター……カレンチャンも私の受け持ちだ。
そして、昨年末の香港スプリントから、ようやくここに戻ってくる。
204 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 18:07:19.86 ID:4vJdc4mNO
その時、コンコンとノックの音がした。
「失礼しま「お兄ちゃん!!」」
ドスンッ
ドアが開くと同時に、小柄な人影が私に向かって飛び込んできた。
強烈な衝撃を、私はその腹直筋で受け止める。
「お兄ちゃん!!会いたかったよ〜♪」
「ハハハ……人前だからやめなさい」
「むう。1ヶ月以上も会えなかったんだよ?お兄ちゃんは寂しくなかったの?」
「いや、寂しかったよ。ただ、流石に恥ずかしい……「コホン」」
妙齢の女性が咳払いをする。
「仲がよろしいのは結構ですが、場所を弁えて頂きませんと」
「申し訳ございません、理事長代理」
少し顔を赤らめながら、樫本理事長代理が私を見た。
「全く……気持ちは分かりますが。身体が無事だったのは、本当に幸いでした」
私は小さく頷く。そう、本当に幸いだった。
*
カレンは香港スプリントに遠征していた。本来なら私も同行するのが筋だったのだが、私は学園で教鞭を執らねばならなかった。
東京で学会に出なければならなかったこともあり、現地での調整を樫本代理に任せることになったのだ。
そこで、悲劇は起きた。
第4コーナーで、彼女の前を走るウマ娘が、突然骨折し倒れたのだった。
カレンはすかさず、勝敗を度外視して大きく外に進路を変えた。かなり無茶な進路変更だったが、おかげで「カレンは」何事もなくレースを終えた。最下位ではあったが。
だが、転倒の巻き添えを何人ものウマ娘が食い、相次いで倒れた。
時速数十キロで走るウマ娘が転倒した時の衝撃は……人間とは比べ物にならない。
死者こそ出なかったが、1人は意識不明の重体。2人が脚や腰の骨を折り、競争バ生命を絶たれた。
どれほど香港に行きたいと思っただろうか。しかし、出入国制限がかかった中でそれは不可能であった。
樫本代理からの情報を頼りに、この1ヶ月を過ごしてきた……というわけだ。
205 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 18:56:24.98 ID:4vJdc4mNO
*
「ええ。本当に不幸中の幸いでした。一応念のための確認ですが、メディカルチームは何と」
「進路変更に伴う軽度の肉離れは完治したと。本日より通常のトレーニングに戻って結構です」
「やったぁ!!」
カレンがピョンと飛び跳ねる。
「これでまたお兄ちゃんとバクちゃんと一緒に練習できるね♪」
「ハイッ!これからも切磋琢磨いたしましょうっ!!
ところで、前から不思議だったのですが、なぜカレンチャンさんはトレーナーさんのことを『お兄ちゃん』と呼ぶのですか?」
「だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん。ね?」
カレンが悪戯っぽい笑いを私に向ける。私は乾いた笑いを浮かべ、代理がまた軽く咳払いをした。
そう、事実関係を知らないバクシンオーが不思議に思うのも無理はない。
というより、トレセン学園でもこの事実を知るのは目の前の樫本代理や駿川女史、そしてシンボリルドルフなどごく少数に留まる。
そう、カレンチャン……戸籍名「天王寺カレン」は、私の実妹だ。
代理が困ったように私を見る。
「バクシンオーさん、カレンチャンさん。そこまでにして下さい。天王寺トレーナーと、少しお話があるので」
「ハイッ、わかりました!!」
「は〜い♪」
*
「いつまで秘するつもりですか?」
代理が厳しい目で私を見る。私は静かに緑茶を口にした。
「彼女の卒業まで。平等の面からそうすべきであると考えております」
「それはもっともなことです。ただならなぜ敢えて手元に?」
「……亡くなった母の望みなんですよ。あいつを一人前のウマ娘にしてくれと。
男ばかり生まれた後で、やっとできた娘でしたから、思い入れはよく分かります」
そう、母はウマ娘だった。体質が弱く、競争バにはなれなかったが。
その代わり、父と共にスポーツ医学の研究に没頭した。自分が果たせなかった夢を、いつの日か生まれる娘に叶えてもらうがために。
ただ、そう上手くはことが運ばないものだ。学生結婚で生まれた私の他、下の3人は全員が男だった。
諦めかけていた時にようやく生まれたのがカレンだった。……が、高齢出産の負担は重く、早いうちに母は世を去ってしまった。
それから母代わりとなって、私が彼女を育ててきた。
母の夢を無理に託そうと思ったわけではない。ただ、賢いあいつは母の遺志を敏感に感じ取り、ここまで育った。ブラコン気味になってしまったのはそのせいもある。
だからこそ、彼女に甘くならないようにと、一つのルールを課した。
トレセン学園では、あくまで「トレーナーと生徒である」ということだ。
カレンもそこは理解しているはずだ。ただ、私への呼び方だけは「お兄ちゃん」で変わらない。
代理が息をつく。
「あまりご無理をされないよう。ああいうことがあった後ですから、お気持ちは分かりますが」
「肝に銘じておきます」
命の危険すらあった大事故の後だ。あいつもトレーナーとしてではなく、兄としての私に甘えたい思いはあるのだろう。
さりとて、どう距離感を作るべきか。バクシンオーもいる手前、彼女が求めるようには恐らくできない。
……とりあえず、飯でも誘うとしよう。チートデイも近いことだ。
206 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 18:58:50.33 ID:4vJdc4mNO
少し休憩。
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/29(土) 19:05:02.60 ID:VOED10V8o
たんおつ
208 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 22:22:53.06 ID:4vJdc4mNO
*
「あ、お兄ちゃん!」
トレーナー室に戻ると、カレンが何やら自撮り棒を持って準備をしている。
「……これは?」
「うん!ウマスタのフォロワーさんたちに報告するための投稿しよっかなーって。
カレンは元気だよーってね♪心配かけちゃったし」
「その……悪かったな。辛かっただろう」
「……大丈夫だよ。無事だったし。でも、お兄ちゃんには側にいてほしかったな」
寂しそうに笑うカレンを見て、心が痛んだ。
やむを得なかったことだとは、彼女も理解しているだろう。ただ、それだけに傷ついてもいる。
そして、カレンはその辛さを表には決して出そうとしない。「いつも可愛く元気なカレンチャン」を、どこまでも演じようとするのだろう。
それは彼女なりの処世術ではある。しかし、その無理が彼女の幼い心を蝕みかねないことを、私は知っている。
そんな時にどうすればいいのか?そのことも、私はよく知っている。
「埋め合わせにもならないかもしれないが、明日飯に行くか?」
「ご飯?フレンチ?イタリアン?ウマスタ映えするのがいいなあ」
「私がそういう柄じゃないのは知ってるだろう。それに、お前に辛いことがあった後はいつも決まっている。お前が本当に一番好きなものを食わせてやる」
「お兄ちゃん……」
目を潤ませるカレンの後ろから、バクシンオーが顔を出した。
「むむっ?何があったのです?」
「いや、飯を食わないか、とな。チートデイも近いだろう」
「おおっ、そうでした!ラーメンですね!!」
うんうん、とバクシンオーは上機嫌に頷く。カレンは上目遣いで訊いてきた。
「どこに行くの?」
「それは着いてのお楽しみだ。今しか食えない、特別な一杯が待っているぞ」
209 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 22:23:49.17 ID:4vJdc4mNO
第5R 「饗 くろき」
210 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 22:27:47.47 ID:4vJdc4mNO
明日実食編です。
なお、その前にちょっとした判定を行います。
コンマ下
01〜40 何もなし
41〜50 あるウマ娘が道中に登場
51〜90 あるキャラの噂話が出る
91〜99 あるキャラが登場する
00 あるキャラ登場(???)
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/29(土) 22:28:15.18 ID:KFGfv0DJ0
乙
212 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 22:30:00.91 ID:4vJdc4mNO
今回は通常進行です。
次回以降「あるキャラ」の登場があるかもしれません。
(伏線は張っています)
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/29(土) 22:36:23.69 ID:VOED10V8o
おつおつ
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/29(土) 23:57:48.17 ID:7OdPHTyn0
00
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 07:38:44.74 ID:CYGE0LOh0
おつ。そういえば根性SSRで委員長の妹出てましたね
216 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 15:17:44.27 ID:3n1lv2WdO
*
翌日昼。目的地に着いた私たちを出迎えていたのは……
「にょわー!?この行列はなんですか!?」
「『八五』ほどじゃないだろう。あと、あそこより更に並ぶ店も存在するぞ」
「ぬぬぬ……バクシンへの道は険しいのですね」
ぐぬぬと唸るバクシンオーをよそに、私たちは30人ほどの列の最後尾に並ぶ。目当てのものは……まだ売り切れてないようだ。
「ここに来るのも久しぶりだね、お兄ちゃん」
「お前が小学生の時以来だな。あの頃はまだ『紫』はあったが」
「今はないの?」
「極稀にやってるらしいけどな。勿体無いが仕方ない」
「そっか、ちょっと残念。あれウマスタ映えするんだけどなあ」
「『紫』とは何なのですか!?」
いつの間にか列に加わっていたバクシンオーが訊いてきた。小学生の下りは聞かれなかっただろうか。
「昔、ここは毎週金曜に鴨醤油ラーメンを出していた。それが『紫』だ。
醤油ラーメンでは傑出した旨さだったんだが、メインメニューのフルモデルチェンジと共にやめてしまった、らしい。
大将にその理由を聞いたことはないが、かなり手間がかかっていたからな……仕入れも大変だったんだろう」
「ほほう、では今日は何を食べるのです?」
私はニヤリと笑う。
「チャーシュー麺。マンガリッツァ豚のチャーシュー麺だ」
217 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 15:59:54.47 ID:3n1lv2WdO
バクシンオーがぽかーんと口を開けている。
「まんが……漫画なのですか!?」
「ハンガリー原産の豚だよ。ドングリなどを食べて育つという意味では、イベリコ豚に近いな。
希少で、ハンガリーの国宝にも指定されている。……これだ」
スマホでマンガリッツァ豚の画像を見せると、カレンが「カワイイー!!」と声を上げた。
「モコモコしてて、羊さんみたい!でも国宝って食べちゃっていいの?」
これが可愛く見えるのかと内心思いつつ、私は頷いた。
「日本でも少数が飼育されているな。これと在来種を掛け合わせたものなら、稀にファミレスでも食べられる。
もちろん、今日のは純正種だ。私も食べたことはない」
「へー、美味しいのかな?」
「食べたことのない味の豚らしいな。……だからこそ、今日はここに来た」
カレンが「あっ」と呟いた。
「お兄ちゃん……そういうこと」
彼女も私の意図を理解したようだ。辛いことがあったら、旨いものをしっかり食べて忘れるのがいい。チートデイも、ある意味それに似ている。
「大将なら、間違いのない味だろう。さて、もう少し待つとしようか」
30分ほどで食券を買うように促された。せっかくなので、「マンガリッツァ豚の脂飯」も頼んでおくか。
値段はしめて2000円とラーメンとしては極めて高額だが、美味いものには金をケチるなというのが親父から受け継いだ家訓だ。
218 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 16:25:35.43 ID:3n1lv2WdO
「いらっしゃい!お、天王寺さんじゃないですか、お久し振り」
店内に入ると、大将が気さくに話し掛けてきた。
「仕事がなかなか忙しくてすみません。今日は教え子も連れてきました」
「教え子……そう言えば、ウマ娘のトレーナーでしたっけ」
「ハハ、まあ」
大将はカレンにも気付いたようだったが、目配せすると意を汲んだらしく作業に戻った。
「ほわーっ!ここもおしゃれな店ですねえ!」
「そうなんだ〜♪見た目も凝ってるんだよー」
横の客が注文した塩ラーメンが見えた。雲呑につくね、それにネギとドライトマト。見るからに美しく、調和の取れた盛り付けだ。
大将はかつて大手外食チェーンの総料理長だったと聞く。「八五」の主人と同様、異業種でかつてはトップにいた人物だ。
それだけあって、やはり見た目の美しさに対するこだわりは共通しているものらしい。
そして、この店のもう一つの特徴は「限定」にある。
時に松阪牛、時に寒ブリ。あるいは見知らぬ高級食材を巧みにラーメンというフォーマットに落とし込むのだ。
最近はこうした期間限定メニューを売りにする店も増えてはきたが、ここほど完成度の高い一杯を出す店はほぼない。
ベクトルが全く異なるが、「家元」の「スペシャル」程度ではないだろうか。
店員が「マンガリッツァは今日終わりなんですよ」と言っているのが聞こえた。どうやら滑り込みで間に合ったらしい。
「むむう、待ちきれません!早くバクシンしたいです!!」
「そう焦るな。……っと、あれかな」
大将と店員が、丁寧に盛り付けを進めていく。メンマにネギ、そして見たこともない赤いナルトのような何かがスープに乗せられた。
「お待ちどうさま。『マンガリッツァ豚の焼豚そば』です」
219 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 16:55:25.16 ID:3n1lv2WdO
「これが……マンガリッツァ豚」
カレンは早速スマホを取り出すと、パシャパシャと角度を変えて写真を撮り始めた。
その横ではバクシンオーがいつものように「バックシーン!」と叫んでいる。
「にょわーっ!!この豚さんは何ですかっ!!この、なんというか……ああっ!表現できる言葉がないのがくちおしい!!」
普段は豚は後で食べる私も、今回ばかりは焼豚から口にした。くにゅり、とした弾力。そして……
何だこれは。
顔色が一瞬のうちにして変わったのが、自分でも分かった。ワイシャツのボタンも弾け飛ぶ。
美味い。尋常ではなく、美味い。しかし、適切な言葉が全く思いつかない。
イベリコ豚のように、脂そのものが香ばしい。しかし、それだけではない。
肉から滲み出る旨味。この深さ、今まで体験したことのあるレベルではない。
バクシンオーでなくても、これを説明するのは難しいだろう。確実に言えることは、醤油で下味をしっかり付けているということだ。
「『鶴醤』、ですか」
「搾りたての特注品です。これに漬けて、旨味を最大限に引き出したんですよ」
大将が説明してくれた。麺を啜る。……これも美味い。
醤油ベースだが、マンガリッツァ豚の脂がそこに加わり、スープだけでも既に尋常じゃない旨さになっている。
赤いナルトのようなものは「赤巻」と呼ばれるかまぼこの一種か。かまぼこをラーメンに使うのはあまり聞かないが、脂が強いこの一杯にはとても合っている。
ふと横を見ると、カレンの目が潤んでいるのが分かった。
「……どうした」
「ううん。……すごく美味しい。というか、なんだかほっとしちゃったの」
「ほっとした?」
「うん……生きて日本に戻れたんだなって。そして、お兄ちゃんと会えたんだなって。やっと実感できた」
「カレン……」
ゴシゴシと目をこすると、カレンはいつもの調子の笑顔に戻った。
「お兄ちゃん、ありがとね!早速、写真ウマスタとウマッターにアップしていい?」
「あ、ああ」
バクシンオーは「大・満・足です!」ともう食べ終えていた。私も麺が伸び切る前に食べ終えねば。
220 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 17:15:40.55 ID:3n1lv2WdO
*
「う〜ん♪美味しかったあ♪」
カレンは満面の笑みで言うと、私にウマスタグラムの画面を見せてきた。ラーメンとの自撮り写真が載っている。
涙の跡は見えないよう加工したのか、全くそんな気配は見えない。
「もう1万『いいね!』がついてるよ!やっぱりカレンってカワイイからね♪」
「まあ、そうだな……明日からは、普段通りのメニューに戻るぞ」
「えーっ。筋トレはいいけど、ほどほどにしてね♪あまり筋肉付け過ぎると、カワイクなくなっちゃうよー。ね?バクちゃん」
「はいっ!カレンチャンさんはカワイイです!私の妹と同じぐらいには!!」
「「……え??」」
カレンと啞然としてバクシンオーを見る。
「……バクシンオー君、妹がいたのか?」
「ハイッ!!お姉ちゃんなのですっ!!トレーナーさんと同じでしょう!!ハーッハッハッハ!!」
バクシンオーに聞かれていたというショック以上に、バクシンオーが長女という事実の衝撃が大きかった。一人っ子だとばかり思っていたが……
「ま、まあ……大事にしてやってくれ」
「ハイッ!もちろんでありますともっ!!」
バクシンオーは妙に上機嫌だ。彼女はどういう姉なのだろうか……やや不安に思いながら、家路につくのであった。
第5話 完
221 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 17:19:02.93 ID:3n1lv2WdO
今回はここまでです。なお、今行ってもマンガリッツァ豚の焼豚そばはありませんのでご注意下さい。
バクシンオー妹は恐らくスプリングコートでしょうが、優秀な姉と凡才の妹感があってなかなか切ないイベントでした。
さて、次回のウマ娘を募集します。
安価下1〜5で、最もコンマが大きいものとします。
なお、今回は結果次第で追加募集もやります。
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 17:22:17.49 ID:Nw9cGq330
メイショウドトウ
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 17:23:09.73 ID:dTteWVCDO
ゼンノロブロイ
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 17:33:47.75 ID:huePy9bCo
ゴールドシップ
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 17:37:46.61 ID:9Q9pminVo
メジロドーベル
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 18:19:28.05 ID:xU32CYE3O
マンハッタンカフェ
227 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 18:29:10.20 ID:m8Us8xklO
ゴルシとします。追加ウマ娘の判定を続いて行います。
コンマ下が50以上でもう一人追加です。
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 18:31:12.12 ID:Nw9cGq330
あ
229 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 18:40:26.69 ID:m8Us8xklO
ゴルシ単独回となります。
続いてジャンルの決定です。
安価下1〜5で最もコンマが大きいものとします。
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 18:57:02.90 ID:ij8C9NZ4O
>>1
が今まで食べた中で一番ぶっ飛んでると思ったラーメン
231 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 18:59:01.77 ID:m8Us8xklO
>>230
ちょっと抽象的なので投票からは除外します。申し訳ありません。
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 19:03:14.72 ID:9Q9pminVo
昔ながらのザ・ラーメンみたいなやつ
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 19:04:57.48 ID:Nw9cGq330
豚骨系
234 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 19:05:33.99 ID:m8Us8xklO
>>232
中華そば系としてカウントします。
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 19:05:57.48 ID:gX2ig18vO
煮干系
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 19:07:11.71 ID:t+YPtv5qo
二郎系
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 19:13:14.70 ID:7Pm1H1gmO
油そば
238 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/30(日) 19:29:50.01 ID:m8Us8xklO
それでは中華そば系とします。
候補は幾つかありますが……
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 19:44:01.77 ID:9Q9pminVo
おつおつー
240 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/31(月) 12:18:36.38 ID:1+IlSQu5O
少し更新が遅れるかもしれません。予定していた店がコロナで休業していました……
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/31(月) 13:38:42.46 ID:ba3u5hUYO
報告乙
ありゃ…災難
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/02(水) 03:29:33.67 ID:zTMxm1okO
石原慎太郎の遺骨ラーメン
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/02/02(水) 06:40:07.37 ID:/5oNaH7m0
コロナで休みなら、しばらくはお休み確定でしょ?
再安価を検討しますか?
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/02/02(水) 06:41:17.66 ID:/5oNaH7m0
再安価するなら、登場ウマ娘にイクノディクタスをお願いします。
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/02(水) 09:25:28.16 ID:X5X1JqOW0
安価コンマ前提のスレでそのズルは不公平でしょ
246 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/02(水) 09:34:55.43 ID:9ENLl3Z4O
安価に変更はございません。
中華そばも対象を変えて検討しますが、実食の結果紹介に値しないと判断した場合は再来週にズレ込みます。
(第2候補の店に今度行ってみます)
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/02(水) 09:43:37.39 ID:ogppO8izO
了解です
その姿勢に頭下がる
248 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/03(木) 12:03:00.35 ID:tmdx9vtqO
大変申し訳ございません。第2候補の店もコロナで休業していました……
今週の更新はお休みします。
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/03(木) 12:20:38.78 ID:HqpNJB5tO
時期的にしゃーない
報告ありがとう
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/03(木) 12:28:58.72 ID:hn9cARjtO
寂しい時代になったもんだ
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/03(木) 12:36:44.05 ID:k49yjWMVO
閉店さえしてなければ救いはある……おつ
252 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/03(木) 15:24:02.72 ID:CiHPL+srO
一応第1候補は来週再開の予定らしいので、再来週の更新はできそうです。
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/03(木) 15:26:12.15 ID:zmSsZU8io
やったぜ。
お待ちしてます
254 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/07(月) 11:41:17.67 ID:t9+WYCdJO
休業延長らしいので、第3候補にします……
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/02/07(月) 12:02:00.93 ID:LHdSIejw0
ラーメン二郎 亀戸店か?
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/07(月) 12:12:41.91 ID:n67VBEN4O
中華そばジャンルだから違うでしょ
257 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/08(火) 17:49:21.20 ID:QxMIUNi3O
当初予定の店ではありませんが、超老舗の名店に行ったのでそこにします。美味かったです。
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/08(火) 18:09:22.01 ID:LD+xEfCCO
架空の店の架空のラーメンでいいじゃん
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/08(火) 18:22:14.70 ID:Lw3A3heJo
待ってます
260 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 20:19:22.20 ID:91xhjFU9O
更新します。独自解釈がありますがご注意下さい。
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/11(金) 20:29:52.73 ID:/9JsJiwqo
待機!
262 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 20:31:19.05 ID:91xhjFU9O
ウマ娘の健康管理は難しい。
もちろん、彼女たちがアスリートだから、というのは勿論ある。トレーナーはフィジカルだけでなくメンタルのケアもせねばならない。
いかに心身ともに万全の状態でターフに送り出すか。それこそがトレーナーの仕事であり、やりがいでもある。
この点については、些かながらではあるが自信を持っているつもりだ。私のトレーニング手法から活躍できる距離は限られてはいるが、相応の実績は積んでいる。
ただ、トレーナーの努力だけでは如何ともし難いこともある。……病気への対応だ。
ウマ娘は、生物学的にはホモ・サピエンスの亜種「ホモ・サピエンス・カルバス」と位置付けられる。
女性からのみの優性遺伝であり、ホモ・サピエンスよりも高い身体能力を持っていることが圧倒的に多い。
外見的に優れているのも、外見上の老化が遅いのも、遺伝子的にホモ・サピエンスとはやや異なることに由来する。
無論、未解明な点も多々ある。彼女たちが先天的に「ウマ娘としての名」を認識している理由や、食の嗜好がややホモ・サピエンスと異なっている点はその代表格と言えよう。
毒などに高い抵抗力を持つ理由も不明だ。医学的に、彼女たちが重要であり続けているのは当然と言える。
そして、未解明な点の中には、彼女たちがホモ・サピエンスより劣位にあるものもある。
病気への抵抗力だ。
263 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 20:43:07.09 ID:91xhjFU9O
ウマ娘は病気の類に対し、免疫的に弱いことが多い。特に若い場合、ウイルス性の病気に対しては我々よりも遥かに脆い。
ウマ娘の平均寿命はヒトよりやや短いが、その最大の理由がこれだ。幼少時に罹った病気で夭折することが多いのだ。
トレセン学園の生徒にも、姉妹が早くに亡くなっている者が少なくない。高等部のマチカネフクキタルやアドバイヤベガはその代表格と言えるだろう。
成長するにつれウマ娘はヒトと同じ程度の免疫力を獲得するが、それでも相当感染症対策には気を遣わねばならないのだ。
そして、オミクロン型の蔓延は、私たちのトレーニングにも影響を与え始めていた。
外出は許可制に変わり、不要不急の外出は一切禁止となった。ウマ娘の免疫力の低さを鑑みれば当然の措置ではあるのだが……
それが意味することは……チートデイの見送りだ。
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/11(金) 20:49:45.87 ID:KRHWD2g4O
情勢的に仕方ない…
265 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 21:16:42.55 ID:91xhjFU9O
先週はまさにその影響にぶち当たってしまった。バクシンオーは「よよよ……」と肩を落とし、カレンは「つまんなーい」とむくれた。
そして、私自身も調子があまり出ない。態度には出さないよう努めてはいるが、やはり筋肉の「ノリ」が出ていないのだ。
競技会はコロナの影響で延期になっているが、このままではやはり良くない。チートデイを学園内でできるようにするか、それとも何とかして外出許可をもらうか……
「……やれやれだな」
「どうかしたかね、天王寺君」
塩田トレーナーが少し驚いた様子で私を見る。どうも思っていたことが口に出てしまったらしい。私は苦笑する。
「あ、いえ。特に大したことは」
「その割には深刻そうな顔だったが。君にしては珍しいねえ」
世界史の教師でもある塩田トレーナーは、トントンと授業に使う資料を机に叩いて整理した。
「まあ、君でなくてもストレスが溜まりやすいご時世だがねえ。オミクロンで外出制限がかかり、荒れてるウマ娘も少なくないし」
盛大な溜め息を塩田トレーナーがついた。そう、彼の受け持ちには問題児が多い。
パーマーも一時出奔していたし、ギャンブル狂のナカヤマフェスタは言うまでもない。卒業生でマックイーンの姉、メジロデュレンもなかなか面倒な娘だったようだ。
海外留学中の「あの2人」がいたらと思うとゾッとする。実力は確かだが、どちらもシリウスシンボリの比ではないほどの問題児だからだ。
ともあれ、塩田トレーナーの気苦労の多さは容易に想像ができた。私の悩みなど、大したものではないのかもしれない。
「どう感染リスクを避けつつ、ストレスを解消させるかですね……」
「そうだねえ、ただ外出は難し」
その時、バンッ、と職員室の扉が開かれた。
そこに立っていたのは、長身で銀髪のウマ娘。「トレセン学園三大問題児」……残り2人は海外だから、実質は問題児の筆頭。
「トレーナー、あっそびに来たぜ〜」
所属不明、学年すら不明。中等部にも高等部にも顔を出し、挙動は一切予測不能。
「白い不沈艦」、ゴールドシップである。
266 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 22:06:05.81 ID:Y7Qy6ZaMO
塩田トレーナーが頭を抱えた。
「また君の暇潰しに付き合わされるのか……」
なるほど、彼が溜め息をつくわけだ。普段からゴールドシップ……通称「ゴルシ」について、塩田トレーナーからはその奇行の愚痴を散々聞いていた。
五輪が近いからと「お前がストーンな!」とエアカーリングをやらされたり、自作の超難度ゲーム「ゴルシちゃんゲー」をクリアするまで散々やらされたり、「打倒ヤエノムテキ!空気椅子特訓」をやらされたり……
どれも聞くだけで気苦労が想像できるものばかりだ。この前の「サメ映画24時間耐久視聴」は、まだかわいい方かもしれない。
「なんだよー。『シャークネード2』面白かっただろ?」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……とにかく今日はそういう気分じゃ……って何だその手に持っているものは」
塩田トレーナーの顔色が変わった。職員室もざわついている。
それも当然だ。ゴルシの手には、黄金の槍が握られていたからだ。
「ん?これか?よく聞いてくれた!これはなー、『黄金の槍』ってんだ」
「見たままだろう!?だから何でそんなものをここに持ち込んでるんだ!?」
「あー、何だかんだあってなー。大丈夫!危険なものじゃないから!」
「いや、危険とかそういう問題じゃ」
「てかこれすげえんだぜ!さっきまでマックイーンとスペとスズカとテイオーと一緒に異世界で一暴れしてやったんだぜ!
それもこれもこいつのおかげってわけだ」
フフンと得意そうにゴルシが胸を張る。異世界やらなんやらさっぱり理解ができないが、ゴルシならしょうがない。
昨年夏の「ウマネスト騒動」も、大体こいつのせいだったらしい。またウマレーターでも使ったのだろうか。
塩田トレーナーが盛大に肩を落とした。
「……分かったから、それを貸してくれ。こんな危ないものを持たせるわけには」
「おっ!天王寺ちゃんじゃねえか〜。丁度いいところにいたぜ」
塩田トレーナーを無視して、満面の笑みでゴルシが私に語りかけてきた。血の気が引くのが分かる。
「な、何だっ」
「いやな?『グラブル』の世界から帰ってきたらすげー腹が減ってさー。それでトレーナーに何か食わせてもらおうかなって来たんだよー。
そしたら天王寺ちゃんもいるじゃねえか!パーマーから聞いたぜえ?すげーラーメンに詳しいらしいじゃんか」
「まさか、君を連れて行けと!?」
「大・正・解!!察しがいいなー、さっすが天王寺ちゃんだ」
267 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 22:41:43.62 ID:Y7Qy6ZaMO
「しかし外出制限が掛かっているぞ?許可なんてそう簡単に」
ゴルシがニヤッと笑う。
「取れるんだな、これが」
「は?」
「この槍さえあれば何でもできるってことよ。とおっ!!」
ゴルシが持つ槍が激しく輝く。その光は職員室を満たし、そしてすぐに消えた。
「……何をした?」
「まあ見てなって」
ゴルシはツカツカと風紀委員会顧問の溝口トレーナーの所に向かう。生真面目で神経質そうな見た目通り、とても厳格な男だ。
正当な理由なしに外出許可など下りない。そのことは簡単に想像がつく。
「何だゴルシ」
「あのさー、外出許可出してほしいんだけど」
溝口トレーナーはじっとゴルシを見ると、深く息をついた。
「分かった、いつだ?」
「今日がいいかなー。人数はあたしと塩田トレーナーと天王寺ちゃん、あとはバクシンとカレンちゃんの5人だ」
※コンマ下80以上で乱入者あり
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/11(金) 22:42:27.55 ID:45s5ZLmc0
な
269 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 23:06:24.13 ID:Y7Qy6ZaMO
※特になし
実にあっさりと許可が下りた。まさか……
「あの槍の力で催眠術でもかけたのか?」
「いんや、分からねー。というか、『願った』だけだけどな」
恐ろしいことをサラッと言っている気がする。まさか思ったことを実現できてしまう謎のアイテムなのか?
塩田トレーナーは渋い顔のままだ。
「だが、外出できてもオミクロン型はどうする?感染したら、競争生命どころか命にもかかわりかねないぞ?そんなリスクなど……」
「大丈夫だって。こいつで『コロナにかからないように』と願えばモーマンタイってことよ」
んな馬鹿な、と口に出かけたが、溝口トレーナーのあの様子を見るとでまかせとも言えない。
多分、本当に大丈夫なのだ。黄金の槍の正体は一切分からないが。
「……分かった。こちらもチートデイをやりたかったところだ」
「さっすが天王寺ちゃんだ!話が分かるねえ。で、食いたいものがあるんだけどさ」
「何だ」
ゴルシが遠い目になった。
「アタシさー、中華そばが食いてえんだ……むかーしながらの、醤油の利いたヤツがさー」
「どうしてだ」
「アタシがここに来たのは、あるウマ娘のおかげなんだ。走るのが苦手だから屋台でラーメン作ってるって奴でさ……その時の中華そばが忘れられねえんだよ。
だからたまーに、無性に中華そばが食いたくなるってわけだ。昔ながらの醤油ラーメンがさ」
珍しく真面目にゴルシが話している気がする。
「なるほど、そういうことなら力を貸そう。ただ、今日行くとなると難儀だな。コロナのせいで閉まってる店ばかりだぞ」
「いいんだよ、町中華のやっすいやつでも。でも美味くなかったらパロ・スペシャルな、塩田トレーナーが」
「は?」
塩田トレーナーが啞然としている。さすがにウマ娘の力でパロ・スペシャルなんてやられたら命に関わる。何とかして店を探さねば……
……
…………
あった。老舗で昔ながらの中華そばを出し、かつ安くて美味くコロナでもやっている店が。
「いい店があるぞ」
「さっすが天王寺ちゃん!で、どこなんだ」
「場所は飯田橋。17時に正門前に集合だ」
270 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 23:06:54.51 ID:Y7Qy6ZaMO
第6R 飯田橋「びぜん亭」
271 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/11(金) 23:08:47.38 ID:Y7Qy6ZaMO
続きは明日。
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/11(金) 23:10:20.66 ID:/9JsJiwqo
おつおつー
ゴルシ……コロナごと消してくれ……
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/11(金) 23:14:35.79 ID:gpsD+ZGwo
SS速報避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
274 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/12(土) 17:23:12.33 ID:4Zu590cgO
*
「久々の外出ですね!やっとバクシンできますっ!バックシーン!!」
「バクちゃんまだ早いよ……というかお兄ちゃん、よく許可取れたね」
「まあな……あまり深くは突っ込まないでくれ」
訝しげなカレンに苦笑していると、問題の人物がやってきた。もちろん、手には例の槍がある。
「オーッス!!元気そうで何よりだぜ」
「「ゴルシさん!?」」
いささかゲンナリしたような塩田トレーナーを引き連れて、ゴルシは上機嫌でやってきた。
「今日はゴルシさんも一緒なのですか!?」
「ハハ、まあな……」
「何だよ、説明してなかったのか。まあいいや、じゃあ早速やるぜ。
オンアビラウンケンソワカ、南無阿弥陀仏……ジーザスクライストスーパースターぁぁぁ!!」
謎の呪文をゴルシが叫ぶと、黄金の槍が光り輝いた。そして……
バリンッ
「あ、壊れちまった」
槍は粉々に砕け散った。
「ちょっと待て、これでコロナにかからないってのがなくなったんじゃないだろうな?」
「多分大丈夫だろー。散々向こうの世界で使ってきたからなー、使用回数切れってことか。まあしゃあないな」
口を尖らせてゴルシが言う。……本当に大丈夫なのか。
275 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/12(土) 17:51:40.88 ID:4Zu590cgO
「とにかく、さっさと行こうぜ!天王寺ちゃんおすすめの中華そば、どんなんだろうなー」
「お兄ちゃん質問。中華そばってそもそも何なの?」
カレンが手を挙げた。
「説明するには少々手間だな。寒い中喋るのもアレだ、車の中で話そう」
アウディA4に乗り込み、車を東京方面に向かわせた。大柄なゴルシがいるせいか、後部座席はかなり窮屈になってしまっている。
「さっきのカレン君の話だが。私もそこは気になっていた。色々中華そばはあるが、『昔ながらの』というのはどう違うのかね」
助手席の塩田トレーナーが訊いてくる。
「その定義は難しいですね。一般的には、いわゆる『東京ラーメン』がそれに該当すると思います。
醤油ベースの透明度のやや高いスープに縮れ麺、チャーシューにナルトにメンマ。スープは鶏ガラ中心の動物系で、スッキリとした癖のない味ってとこでしょうか」
「そういう店はどこにでもあるんじゃないか?」
「差別化が難しいんで、そういう店は少ないんですよ。化調をたっぷり入れたヤツなら、大手チェーンとかがやってますけどね。
個性があって、かつハイレベルな店は絶滅危惧種です。ゴルシ、満足行く店は今まであまりなかったんじゃないか?」
「あ?ルービックキューブやってたから聞いてなかったぜ」
相変わらずフリーダムな奴だ。代わりにカレンが答える。
「言われてみれば、今までお兄ちゃんと一緒に行った店でそういうのはあまりなかったかも。『支那そばや』とかはまた違うよね」
「あれは『淡麗系』という別のジャンルだな。素材からこだわり抜いて、魚介系なども含めたより複雑な味を志向している。
昔ながらの中華そばは、もう少しシンプルなスープの組み立てなんだ。だからこそ作るのが難しい。何より、安くないといけない」
「確かに……最近は一杯1000円以上のもザラだな」
塩田トレーナーに私は頷いた。車は東関東自動車道へと入って行く。
「それが悪いとは思いません。ラーメンは進化し続ける料理ですから。ただ、原点は『昔ながらの中華そば』なんです。
だからこそ、原点回帰の動きもあります。煮干し系や淡麗系とのハイブリッドとも言える『ネオクラシカル』がそれです」
「なんかよく分からなくなってきたな。ネオクラシカル?」
「まあ、中華そばの亜種と考えてもらえてば。前に三田村トレーナーとライスシャワーと言った『八五』の系列、『勝本』はその代表格ですね。
ただ、今日行くのは正真正銘、本物の『中華そば屋』です。『メルシー』でもよかったんですけどね」
「『メルシー』……早稲田生御用達のか。聞いたことはあるが」
「あそこは夜は早仕舞いするので。まあ、着いてのお楽しみという奴です」
後部座席からゴルシが身を乗り出してきた。
「まあ御託はいいからさっさと行こうぜ!美味けりゃそれでよし!情報を食べてるんじゃねえんだからさ」
※70以上でイベント
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/12(土) 17:55:00.65 ID:0b2e4jgDO
はい
277 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/12(土) 18:12:20.05 ID:4Zu590cgO
※特になし
……情報を食べている?どこかで聞いたような言葉だが。まあ、よくある台詞かもしれない。
車は首都高に入りつつある。飯田橋まではもう少しだ。
*
「ここが今日の目的地だ」
「ほー……渋いねえ。いいぜいいぜ、こういうのだよ」
ゴルシが満足そうに言う。古ぼけた小料理屋のような佇まい。ここに来るのはかなり久し振りだが、何一つ外観は変わっていない。まさに時が止まったかのようだ。
「『びぜん亭』か。年季が入った店だな」
「創業から45年ですからね。店主が同じでここより長くやってる店は殆どないはずです」
「45年!?驚いたな……」
塩田トレーナーが呟く。待ちきれなかったのか、バクシンオーが「バックシーン!!」と店内に入っていった。
「あ、バクちゃん!?」
「アタシたちも入ろうぜ。いやー、これはテンション上がってきたぜ」
カレンとゴルシも中に入る。私たちも続くと、老齢の主人が「いらっしゃい」と出迎えた。
「お久しぶりです」
「ああ、天王寺さん。3年ぶりですか」
「すみません、仕事が忙しくて」
「ウマ娘のトレーナーさん、でしたね。教え子さんといったとこですか」
「まあそんなところです」
振り向くとメニューが見えた。支那そば650円、チャーシュー麺850円。これでも値上げしているのだろうが、昨今のラーメンからすればかなり安い。しかも場所は飯田橋だ。
飯田橋はラーメン激戦区だが、最低でも800円以上は取られる。どれほどの経営努力をしているのだろう。
「お、外国からも客が来るんだなー。有名なのか?」
ゴルシが入口のポスターを指差した。確かに外国人と店主の植田氏が写っている。
「ああ、最近ドキュメンタリー映画になりまして。お恥ずかしい限りです」
こんな映画があったとは知らなかった。やはり、中華そばのノスタルジーに惹かれるのは万国共通なのかもしれない。
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/12(土) 19:02:16.94 ID:tquuAKR6O
00含めイベントほとんど引けんな……
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/02/12(土) 19:09:03.63 ID:wxZOA/QG0
コンビニや自販機などのお持ち帰りのラーメンも美味しいのがありますから、たまにはそれを選ぶのもありですか?
(それを作るのは担当のウマ娘)
280 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/12(土) 19:20:14.72 ID:4DBzYjR4O
「とにかくお腹がすきました!注文しましょう!」
「バクシンオーの言う通りだな。ではチャーシュー麺大盛りで」
ゴルシが不思議そうにこちらを見る。
「ん?支那そばじゃねーの?」
「まあ、食えば分かる」
「そう言うなら乗ってやっか。アタシもそれで」
結局5人とも同じ注文になった。待つこと数分、丼がカウンター越しに置かれる。
「お待ちどうさま」
具はメンマにネギ、そしてほうれん草。極めてベーシックなものだ。一見何のひねりもないが……
「お兄ちゃん!このチャーシュー……」
「カレン、それだ」
ラーメンに浮かぶチャーシューはトロトロに柔らかく、脂が蕩けている。そう、このチャーシューこそ肝なのだ。
「え、このままでいいの?」
「いいから食べよ「バックシーン!!」」
バクシンオーが凄まじい勢いでラーメンを啜っている。
「何ですかこの味は!スープが、なんか、こう……」
「……!!おお、確かに……あまり飲んだことのないスープだ」
塩田トレーナーも目を見開いた。私も箸でやや柔らかめの麺をリフトアップし、一気に啜る。
バッシーンッッッ!!!
ボタンが弾け、大胸筋が喜ぶのを感じた。
ここのスープは、ただの醤油スープではない。鶏ガラと豚骨の動物系が強く押し出されるスープに、チャーシューから溶けた脂が深みを加えている。
そして、この脂には香ばしさがある。しっかり下味を付けた上で焦げ目が付くほどに焼かれたチャーシューは、ただの具ではない。スープに欠かせないパーツなのだ。
ゴルシを見ると、目をウルウルと潤ませている。
「……うめえな……懐しいけど、新しい……アタシが求めてたのは、これだよ……。
あいつが作ったラーメンも、こんな飽きのこない味だった」
「それは、ここのラーメンがオリジナルだからだろうな。個性は色褪せない。たとえそのスタイルが古くからあろうとも、常に新鮮さを与え続けるものだ。
だから『ネオクラシカル系』を志すラーメン職人は、ここに教えを乞いに来る。温故知新ってやつだな」
「よくわかんねーけど、うめえものはうめえ。それでいいじゃねえか。親父!お代わりあるか!?」
ゴルシはあっという間に平らげていたらしい。まあ、一杯くらいなら大丈夫だろう。
※70以上で店主が……
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/12(土) 19:23:28.01 ID:tquuAKR6O
はい
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/02/12(土) 19:30:37.17 ID:wxZOA/QG0
隣の客にラーメンを提供する
その隣の客がツインターボ
283 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/12(土) 19:36:28.56 ID:4DBzYjR4O
※何もなし
※
「いやー!食った食った!!」
腰に手を当て、満足そうにゴルシが言う。結局彼女は3杯おかわりをした。まあ、オグリやスペシャルウィークならこんなものではないから良かったと思うべきか……
「天王寺君、すまない。パーマーに続いて、うちのゴルシが……」
「まあいいってことです。私も久々のチートデイで、かなりコンディション上がりそうですし」
その通りだ。筋肉が脈動しているのを感じる。やはりチートデイは、私には欠かせないルーティーンであるようだ。
「私も絶好調です!!学級委員長として、週明けからもがんばりますとも!!」
「カレンもいい感じだよ♪でも次はいつできるかなあ……」
それもその通りだ。オミクロン型はピークアウトしつつあるが、外出制限は簡単には解除されまい。
何とかして外に出たいところだが……
そう思っていると、ゴルシがニヤリと笑った。
「しょぼくれた顔してんなあ。例の槍の『認識改変』なら、多分しばらく続くぜ?」
「……は?」
「いや、なんとなーくわかんだよ。ま、旨いラーメン食わせてくれたお礼ってことだな!」
そう言うと、上機嫌な様子で彼女はコインパーキングに停めてあるアウディへと向かうのであった。
*
ゴルシが槍で色々なウマ娘の認識を滅茶苦茶にしていたと知るのは、その翌日のことだった。
そして、我々トレーナー陣はその後始末に追われるのだが、それはまた別の話だ。
第6話 完
284 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/02/12(土) 19:39:05.38 ID:4DBzYjR4O
今回はここまでです。多分12か13話くらいで一度締めますが、ぼちぼちそこに向けて走りたいところです。
(イベント判定はそこに絡むものです)
さて、次回のウマ娘を決めます。
安価下1〜5で、コンマが最も大きいものとします。
また、決定されたウマ娘次第で、追加判定があるやもしれません。
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/12(土) 19:39:27.12 ID:e44zXBNso
ナリタブライアン
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/02/12(土) 19:39:40.70 ID:wxZOA/QG0
イクノディクタス
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/12(土) 19:39:43.07 ID:yDmBWYyZ0
サトノダイヤモンド
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/12(土) 19:40:07.72 ID:tquuAKR6O
メジロアルダン
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/12(土) 19:40:25.53 ID:bneTMgQMO
サイレンススズカ
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