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【コンマ】ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くだけのスレ
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109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/15(土) 18:05:20.66 ID:qNHKlakGo
おつー
ばいとあるひくま
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/15(土) 18:06:38.68 ID:qNHKlakGo
失礼
バイトアルヒクマとか明らかに中東系の名前の子もいるし全世界からよりすぐりの人材が集まってるんやろうなぁ
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/15(土) 23:27:36.69 ID:PShYBsyPO
1レスだけ更新します。
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/15(土) 23:28:51.60 ID:PShYBsyPO
*
「おはようございます!トレーナーさん!」
待ち合わせより10分早く来たというのに、バクシンオーはもう待ち合わせの門の前にいた。彼女が時間より遅れたことは、一度たりとてない。
「相変わらず早いな」
「はい!学級委員長たるもの、皆さんのお手本でなければなりませんから!」
「結構。……何分前からいた?」
「はい!30分前です!」
……単にせっかちなだけかもしれない。まあ、悪いことではないのだが。
「まあ、いいだろう。……ん、来たな」
向こうから小柄な男女の二人組がやって来るのが見えた。アリーム君とマックイーンだ。
こうして見ると、中学生の初々しいカップルに見えなくもない。実際、マックイーンは中等部3年なのだが。
「お待たせしました」
「ごきげんようですわ、天王寺トレーナー。いつもお世話になっております。バクシンオーさんもご一緒ですのね」
どこか落ち着かない様子のアリーム君とは対照的に、マックイーンはいつも通りの調子で言う。
「うむ。今日はチートデイだからな。これもトレーニングの一環、というわけだ」
「はい!ちーとでいの後は、体がよく動くのです!ハーハッハッハ!」
「『チートデイ』?」
「説明は車の中でしよう。休日のドライブとしゃれこもうか」
駐車場には、愛車のアウディA4が停めてある。助手席にアリーム君を、後部座席にバクシンオーとマックイーンを乗せ、車は心地よいエンジン音と共に滑り出した。
「目的地は横浜なんですよね。ボクは地理には詳しくないんですけど、横浜のどこですか?」
「菊名という駅にまず向かう。そこでスイーツを買って、電車で隣の大口駅に行きラーメンを食べよう。
今の時刻からなら、ちょうど昼の部が始まる頃には着くな。かなり並ぶが、そこは勘弁してほしい」
後ろからパン、手を叩く音が聞こえた。
「横浜ですの!?横浜と言えば、かの名店『ユウジアジキ』もありますわね!ひょっとして、そこが目的地ですの?」
「『ユウジアジキ』は北山田だから、少し離れているな。今日は『ラトリエ・ドゥ・アンティーク』に行くつもりだ」
「どういうお店ですの?」
ハンドルを首都高方面に切りながら、ミラー越しにマックイーンを見る。
「2019年に世界のパティシエコンクールで優勝したオーナーシェフが開いた店だ。もとは石川町にあった店だが、手狭になったらしくてな。最近、菊名に移転したと聞いた」
「世界一ですの!!?さすが天王寺トレーナー、よくご存知ですのね」
「何、私たちの目的である『中華そば高野』が近くにあるから知っていただけだよ」
「素晴らしいですわ。そのスイーツ、いえ食への探求心、見習わなければなりませんわ」
「そうです!トレーナーさんは何でも知っているのです!」
バクシンオーもマックイーンも何か勘違いしているようだ。そこまで大したものではないと思うが……
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/16(日) 00:37:57.77 ID:xOkM3uHF0
乙
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/16(日) 21:42:47.07 ID:zSgUm9fwO
更新します。
とりあえず軽い設定ですが……
天王寺(34)
190cm 108kg
スキンヘッドの糸目。大体表情は微笑で固定。
見た目は強面だが温厚で理知的。トレセン学園では栄養学を担当する教師でもある。
日本屈指のボディービルダーである一方、スポーツ理化学では博士号も持つ。東大ボディービルディング部の出身で顧問。
トレーニングは速筋系に特化しており、パワートレーニングでは彼の右に出る者はいない。半面、ステイヤー育成は不得手。
これまで担当したウマ娘は全てスプリンターに偏っている。独身、彼女なし。
こんな感じです。随時オリキャラのプロフィールは更新します。
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/16(日) 22:07:48.16 ID:zSgUm9fwO
*
「確かここの辺りのはずだ」
菊名駅近くのコインパーキングにアウディを停め、西口方面に向かう。
すぐに若い女性たちの行列が見えた。……あそこか?
「すごい行列、ですね……ラーメン屋、じゃないですよね、これ」
「う、うむ……」
確かに「ラトリエ・ドゥ・アンティーク」とフランス語で書かれている。ここで間違いないようだ。
店の前には、ラーメン屋よろしく行列の順番待ちの方法が書かれた立て看板があった。行列は、ざっと10人ほどか。
「スイーツに並ぶのは、なかなか珍しいですわね……ああ、コロナ感染対策で入場を絞ってますのね。そういうことですの」
「むむう……早く入りたいですが、我慢です!あ、パンフレットがありますよ!」
バクシンオーが小さなパンフレットを持ってきた。「ショコラ アソート」とある。ああ、そういうシーズンでもあるのか。
「『2015年アジア大会優勝作品』、だそうですわ!!まるで宝石箱のよう……これ、買いますわ!」
「え、誰かにあげるのかい?」
戸惑い気味に言うアリーム君に、マックイーンは上機嫌で返す。
「もちろん、わたくしが自分で食べる分ですわ。トレーナーさんにも分けて差し上げますわよ?」
「だよねえ……」
アリーム君が肩を落とす。どうやら、マックイーンの頭にはスイーツしかないらしい。
これは先行き苦労しそうだ。思わず苦笑いが漏れた。
「トレーナーさんは、何を買うんですか?」
2人をよそに、バクシンオーがいつもの調子で聞いてくる。
「ん?私は好きなものを買うとするよ。多分、チョコレート系だな。脳へのエネルギー源として、チョコレートはかなり優秀だからな」
「なるほど!そこまで考えているのですね!では、私もチョコレートにします!手作りチョコレートの参考のために!」
「ん?バレンタインにチョコレートを作るのか?」
「はい!トレーナーさんに、日々の感謝を込めて、です!」
手作りチョコレートとはやや意外だった。こういうイベントには縁遠い子だと思っていたが……まあ、楽しみにしておこう。
*
この私の認識が大甘だったのが分かるのは、これから1ヶ月ほど先のことだ。
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/16(日) 22:30:25.37 ID:zSgUm9fwO
*
「つい買いすぎてしまいましたわ」
満足そうなマックイーンとは対照的に、アリーム君はややげんなりした表情だ。
「いや、幾つ買ったんだ?ケーキ10個に焼き菓子2箱、ショコラアソート2箱……まさか、君一人で食べるんじゃ」
「まさか、それはないですわ。トレーナーさんにも、お一つあげますわよ?」
「……残りは?」
「もちろん!わたくしが賞味期限内に全て責任を持って食べますわ!」
ドヤ顔のマックイーンに、アリーム君は「また体重制限プログラムが……」と呟いた。むしろよくそれであれだけマックイーンを仕上げられると感心するのだが。
私はというと、バクシンオーと2人で食べるだけのケーキとショコラを購入した。
特に「アンティーク」という名のチョコレートケーキは、時計を模したなかなか手の込んだ意匠だ。食べるのが少々勿体無く感じる。
「さて……ケーキはひとまず車内に置こう。電車で大口駅まで向かおうか」
「車では向かわないのですか?」
「車で行ってもいいんだが、またコインパーキングに停めないといかんからな。それに何より、菊名駅周辺は細い一方通行ばかりで動きにくいのだよ」
バクシンオーに告げ、JRの改札に向かう。そして、横浜線で3分。
大口駅を降り、1分ほど歩くと割烹の看板が見えた。
「ここを左に行くとすぐだ」
「え、こんな細い路地に……あ」
小さな立て看板と、行列が見えた。こちらはざっと……25人ぐらいか。
「すごい行列ですわね……どのくらい待ちますの?」
「1時間弱、だな。これでもすぐ近所にセカンド・ブランドの店が最近できたから、短くなった方だ」
「セカンド・ブランド?」
「そっちは塩がメイン、らしいな。私もまだ足を運べてない。
まあ、それはまた別の機会だな。ひとまず、並ぶとしよう」
行列には若い女性やカップルの姿もちらほら見られる。マックイーンが「意外ですわね」と口にした。
「ん?どういうことだ」
「ラーメン屋って、男の方のものというイメージがありましたから。少し店内も見えましたけど、お洒落な感じでしたわ」
「店主はまだ若いからな。元美容師と聞いている。接客も素晴らしいぞ。
最近は、こういうラーメン屋がかなり増えているのだよ。銀座『八五』のようにミシュランに選ばれる店もあるほどだ」
「そうでしたの。なるほど……」
フムフムと何やら感心している様子だ。こういう辺りは、さすがメジロ家御令嬢なのだろう。
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/16(日) 23:05:40.01 ID:zSgUm9fwO
*
待つこと1時間弱。ようやく店内に通された。
「この『鶏の中華そば』を注文すればいいんですか?」
食券機の前で、アリーム君が訊く。
「それでももちろん構わない。が、私が注文するのはそれではないよ」
「え」
「こちらだ」
私は食券機の下部、「鶏つけそば」を指差した。
「つけそば、ですか」
「ああ。こちらの方が、より強烈に鶏の風味を感じられるからね。それと『和え玉』も頼むつもりだ」
「和え玉、とは?」
「ここは大盛りがないからね。その代わりというわけだ。まあ、頼んでみてのお楽しみ、だな」
結局、4人全員が特製鶏つけそばと和え玉シングルを注文することになった。
「色々素材について書いてありますのね。スープは『信玄どり』と『錦爽どり』の鶏ガラに手羽先、胸ひき肉、野菜、昆布……随分凝ってますわ」
「スープはラーメンの命、だからな。……っと、来たぞ」
店員がまず麺を持ってきた。丼の中には昆布水。そしてその中に麺が泳ぐ。穂先メンマが丼の周囲を取り囲み、麺の上にはとろろ昆布。独特のビジュアルだ。
「……これが、つけそば?」
「いや、麺だけだ。ただ……」
「バックシーン!!!」
説明する前に、バクシンオーが麺だけ食べ始めてしまっていた。
「ちょっと、バクシンオーさん?」
「これがつけそばというものですか!!少し硬い、パキパキとした麺にこの……スープ?がよく絡みます!おいしいです!!」
「天王寺トレーナー、あれでよろしいのですか?」
困惑するマックイーンに、私は軽く頷く。
「まあ、間違いじゃない。バクシンオー、つけ汁の分も残すように」
「分かりました!」
もう麺が半分なくなっているが、それはもうしょうがない。私は箸を持ち、麺をリフトアップする。
「まず麺だけを味わうのが、ここの流儀だ。では……」
啜ると、麺と共にやや粘度のある昆布水が口の中に入った。この噛み応えのある麺の存在感。そして、それに負けぬ昆布水の旨味。これだけで既に、完成された麺料理と言える。
「美味しい……しかし、鶏の風味は」
「それはこれからだよ」
続いて店員がつけ汁を持ってきた。「左右どちらに置きましょうか?」と訊いて来たので、左と告げる。こういう対応は、他店ではあまり見ない。
「これに、麺をつけますの?スープに浸かった麺を、別のスープにつけたら、味がぼやけませんこと?」
「それがここの素晴らしいところだよ、マックイーン君」
彼女は恐る恐る麺をつけ汁につけ、啜る。すぐにその表情が一変した。
「これは……なんという……!!」
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/16(日) 23:27:53.91 ID:zSgUm9fwO
アリーム君の顔も、驚きで固まっている。
「これはっ!?紛れもなく、『鶏そのもの』……」
「バクシンバクシーン!!」という奇声も、私の隣から聞こえてきた。私も頂くとしようか。
ズズッ…………
バシーンッ!!!
シャツのボタンが弾けると共に、凄まじいまでの旨味が口の中に拡がった!
昆布水でコーティングされた麺が、鶏油多めのつけ汁でさらにコーティングされる。そしてそこから産み出される、二重の旨味……
いや、これは単なる「1+1」ではない。
まさに、互いが互いを高め合う「マリアージュ」というべきものだ。
箸が一気に進む。止まらない。
鶏の深い旨味と昆布水の優しい旨味が絡むと、これほどまでに暴力的で複雑な味になるのか?
私はつけ汁の中のワンタンを箸で持ち上げた。噛むと、生姜が強めの餡がいい味変となる。
そして、再び昆布水だけで麺を頂く。さっぱりした味が、舌をリセットする。
そして再びつけ汁へ……一体何種類の味を、この一品は与えてくれるのだろうか。
つけ麺、鶏そば数あれど、ここまで複雑玄妙にしてインパクトのある一杯を、私は知らない。
「す、凄いとしか……ラーメンとは、こんなに美味しいものなのですね……。
チャーシューも、確かに鶏だけですね。……むっ!?」
アリーム君がチャーシューを噛むと、また動きが止まった。
「どうしましたの、トレーナーさん」
「君も、チャーシューを食べてくれ。これも……驚くぞ」
「チャーシューって、豚だけじゃないですのね。鶏だとどう……柔らかいですわっ!それにこの風味は……」
私はマックイーンに頷く。
「そう、バジルで下味がついている。そして、モモ肉は……うむ、実に香ばしい」
胸肉のチャーシューは低温調理がなされており、実に柔らかい。
そして、もう一種のモモ肉は皮付きでローストされており、胡椒が利いたパンチのある味だ。
具材の味の変化も、極めて緻密な計算で成り立っている。これほどまでに多様な味がありながら、しかし一体感があるのは驚くべきことだ。
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/16(日) 23:41:42.30 ID:zSgUm9fwO
「本当に、美味しいとしか……そういえば、つけ麺はスープ割をするのでしたわね」
「スープ割はここにはないのだよ、マックイーン君。しばし、昆布水を出汁に入れて楽しんでくれ」
「ああ、そういうことですのね。……『しばし』?」
「そう、しばしだ。この後に、もう一品が来るぞ」
昆布水による出汁割は、鶏の旨味を一段と引き立てる。これもまた上質なものだ。
無論、ここで終えてもいい。だが、この店に来たからには、食べねばならぬもう一つの皿がある。
「お待たせしました、『和え玉』になります」
3人の顔が呆気に取られている。無理もない。
その小皿にあったのは、イタリアンのカルボナーラに近いものだったからだ。レモンの切ったものが添えられている。
「……え?これを、どうしろと」
「そのまま食してくれ。レモンを軽く絞るといいぞ」
麺を啜ったアリーム君が、目を見開いた。
「これは、ポルチーニ?それに、これも鶏の旨味が……」
「そう、ポルチーニカルボナーラをラーメンの麺でやってみた、ということだな。
やや重たい味だが、締めにはピッタリだろう」
「え、ええ。……これほどまでに、ラーメンは奥が深いのですね……ファインモーション殿下が、すっかりはまってしまわれたのがよく分かります」
「ハハハ、彼女にも教えてやってくれ。きっと気に入るだろう」
ふと横を見ると、「バックシーン!!ごちそうさまです!!」と、笑顔で手を合わせるバクシンオーが見えた。
細かい御託を考えながら食べるのも悪くないが、ああやって心を無にして一心不乱に食べる方が、チートデイとしては正しいのかもしれない。ふと、そう思った。
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/17(月) 00:00:36.95 ID:zZAOGZQnO
*
「いや、本当にどうもありがとうございました」
帰りの車内で、アリーム君が頭を下げる。
「いやいや、寒空の下、2回も行列に並ばせてしまいすまなかった。まさか、『ラトリエ・ドゥ・アンティーク』があんなに並んでいるとは。
バレンタインデー前ということを、考えておくべきだったな」
「いえいえ、とんでもない。あんな美味しい店を紹介していただき、本当に感謝しています」
「天王寺トレーナー、私からも御礼……むぐっ、申し上げ、ますわ」
後部座席からマックイーンの声が聞こえる。……何か変だ。
「……マックイーン?」
「あ、んぐ。失礼しましたわ」
信号待ちで振り返ると、モンブランを手掴みで食べているマックイーンが見えた。
「ちょっと待ってくれ!?なぜ待てない!?」
「このモンブラン、絶品ですわ!もう一つ買えばよかったですわ……」
「いやいや、さっきつけ麺を食べたばかりだろ?」
「別腹タンク、ですわ」
悪びれもせず、笑顔で彼女は指についたクリームを舐めた。ストッパーになりそうなバクシンオーは……
「すぴー」
疲れてしまったのか、気持ちよさそうに眠っている。……スプリンターの彼女は、スタミナが切れてしまったようだ。
「……とりあえず、車内は汚さないようにな」
「分かりましたわ!」
*
トレセン学園に着いた時、1つを除いてケーキが食べ尽くされていたのは言うまでもない。
ただ、その1つはアリーム君が選んだものだった。案外、彼女も彼を気に入っているのだろうか?
まあ、若者の恋路は邪魔しないでおこう。
……私も、ああいう甘酸っぱい青春を送るすべきだったのだろうか。思えば、筋肉のことしか考えてこなかった気がする。
少し感傷的な気分になりながら、彼らを見送るのであった。
第3話 完
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/17(月) 00:02:48.35 ID:zZAOGZQnO
以上です。少々長くなりました。
中華そば高野のセカンド・ブランドは一度行きたいのですが、時間がなかなか取れません……
ブレが落ち着いた頃に向かいたいところです。
さて、次回のお題です。
まず登場ウマ娘を決めます。安価下1〜5で、最もコンマが大きいものとします。
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:03:18.00 ID:l/fisPnH0
メイショウドトウ
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:04:11.49 ID:1+L1MTuw0
メイショウドトウ
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:04:31.85 ID:h0xZqHpWO
マヤノトップガン
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:06:27.80 ID:15Pqvn/DO
ゼンノロブロイ
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:06:37.96 ID:tdkeGDPIo
メジロパーマー
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sape]:2022/01/17(月) 00:06:40.96 ID:RpGWe+d4O
ゴルシ
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:09:18.44 ID:RpGWe+d4O
また00
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/17(月) 00:09:56.94 ID:zZAOGZQnO
また00が出ましたのでコンマで決めます。
コンマ下が奇数で
>>126
、偶数でドトウとあともう一人です。
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:10:07.07 ID:RpGWe+d4O
そい
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/17(月) 00:11:27.77 ID:zZAOGZQnO
ではメジロパーマーとします。メジロ家繋がりですね。
続いてジャンルを決めます。安価下1〜5までで、最もコンマが大きいものとします。
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:11:58.81 ID:RpGWe+d4O
鬼金棒
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:15:01.14 ID:RpGWe+d4O
ごめん勘違いした
味噌で
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:15:10.71 ID:1+L1MTuw0
味噌系
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:16:19.30 ID:l/fisPnH0
>>89
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/17(月) 00:18:09.46 ID:zZAOGZQnO
>>133
固有の店でも問題ないです。
ただ鬼金棒は行ったことがないので、要リサーチですが。
(明日行こうと思えば行けます)
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:18:10.05 ID:l/fisPnH0
>>133
店の名前直接出しても良いってどこかで言ってた気がする
安価下
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:31:49.31 ID:xC5jBUKwO
本場博多の豚骨ラーメン
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:32:42.07 ID:Drb+sqNOo
固有店名有りとの事で
麺巧 潮
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:35:57.65 ID:l/fisPnH0
店名出すなら関東オンリーになるのかな(行ったことあれば書けるんだろうけど)
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/17(月) 00:46:25.73 ID:zZAOGZQnO
では
>>132
の鬼金棒とします。多分明日行きます。
>>140
そうですね。関東(それも東京か神奈川)限定です。
埼玉はまあまあ強いですが、千葉は行く機会がないためかなり弱いですね。
福岡は住んでいたことがあるため分かりますが、大阪と名古屋はほぼダメです。
鬼金棒はすぐに行ける場所なので、その点問題ありませんでした。実は宿題店でもありましたし。
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 00:48:03.59 ID:l/fisPnH0
乙
>>1
の食レポに期待
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/18(火) 09:48:41.57 ID:+v0RatJ/O
調べたら40〜50分あれば行ける場所だった
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/01/21(金) 12:25:37.53 ID:Qxzdoc3U0
続きはまだ?
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 16:48:55.73 ID:fpZyINMJO
それでは、夜に前半更新します。
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 17:15:12.76 ID:fpZyINMJO
「バクシンバクシンバクシーン!!!」
叫び声と共にバクシンオーがゴール板前を圧倒的大差を付けて駆け抜けた。……素晴らしい。
満足して頷く私の背中を、誰かが軽くつついた。
「さすがだねえ、天王寺君」
「塩田トレーナー」
振り向くと、眼鏡を掛けたその細身の男がニヤリと笑った。
「素晴らしい直線の末脚だったねえ。坂対策は万全だった、ということかな」
「まあ、そうですな。このコースはスピード以上にパワーが求められるので」
目の前には、中京競馬場を模した模擬コースがある。バクシンオーは2ヶ月後の高松宮記念の模擬レースに出ていたのだった。
とはいっても、これはただの模擬レースではない。
「チャンピオンズミーティング」……通称「チャンミ」。
トレーナーの査定にも関わる、重要なレースだ。
毎月1度、トレセン学園ではコースを変えた模擬レース大会が開かれる。
先月は「有馬記念」、先々月は「天皇賞秋」。実際のG1をイメージしたコースを、ウマ娘たちは走る。
賞金こそ出ないが、そこにかける彼女たちの意気込みは本番と全く変わらない。むしろ、本番以上に気合いを入れる娘もいるほどだ。
バクシンオーもその一人。「スプリント戦なら負けられません!」と並々ならぬ意気込みだった。
阪神1600の「ヴァルゴ杯」では思うような結果が出せなかった悔しさもあったのだろう。
大腿筋を中心に徹底的に鍛え上げ、直線の坂でさらに突き放す。この狙いは見事に当たった。
フフ、と塩田トレーナーが軽く笑った。
「それにしても5バ身差はそうそうお目にかかれないねえ。噂の『チートデイ』の成果かな?」
「……誰が噂を?」
「ウマ娘たちの間ではかなり知られてるよ?ファインモーションとメジロマックイーン、2人のVIPのお墨付きとあれば、信憑性は嫌でも増す。
そこにもってきて今日のバクシンオーの圧勝だ。君のやり方を学びたいというトレーナーは多くなるだろうよ」
「貴方もですか?」
「バレたか」
ペロッと塩田トレーナーが舌を出す。冗談のつもりだったが、本当だとは。
塩田トレーナーは、沖野君や柰瀬君と並ぶ、トップトレーナーの一人だ。
私と違い、ステイヤーの育成を得意とする。メジロ家のウマ娘が多く師事しており、アリーム君も彼に学んでいたはずだ。
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 17:33:41.50 ID:fpZyINMJO
「私に学ぶことがあると?」
「幾らでもあるよ。筋肉の付け方だけじゃない。ウマ娘のモチベーションをいかに高めるか。その方法論として、『チートデイ』は実に有力だ。
僕も色々ご機嫌を取ろうとはしているのだけどねえ。なかなか思うようにはいかない。
オペラオーのように聞き分けのいい娘ばかりじゃないからねえ」
はあ、と彼が溜め息をついた。いつも余裕綽々の彼にしては珍しい。
思えば彼の担当ウマ娘は、ゴールドシップやナカヤマフェスタなど一癖ある娘が多い。
今海外留学中のウマ娘2人は、さらに酷い。すぐにサボったり、レースいきなりキレて止まろうとしたり……
それもこれも、塩田トレーナーが有能だから任されているというわけだが。
「誰かでお悩みですか」
「まあ、ね。後で彼女を連れて、君のトレーナー室に行っていいかな?」
「構いませんが。誰なんです」
「メジロパーマーだよ」
意外な名前が出てきた。彼女の交友関係はゴールドシチーやダイタクヘリオスなど派手だが、彼女たちと違い授業態度は真面目な方だ。
成績は決して良くはないが、あまり塩田トレーナーの手を煩わせるタイプでもない。
「何かあったんですか?」
「ま、それは会えばすぐ分かるよ。じゃあ、また」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 18:27:55.72 ID:fpZyINMJO
*
「失礼するよ」
「失礼……します……」
彼らが部屋に入ってくるなり、私はすぐにパーマーの異変に気付いた。
目には光がなく、明らかに意気消沈している。メンタルに異常を抱えているのは、誰の目から見てもすぐに分かった。
「どうしたんです?」
「平たく言えば、スランプだね。僕の責任でもある」
向かい合ったパーマーは、目線を私に合わせようともしない。
確かに彼女の競争成績にはムラがある。惨敗も決して少なくはない。
ただ、彼女の様子は、それだけではないように見えた。
「それだけじゃないでしょう?」
「……『バーンアウト』」
「……そういうことですか」
私は、パーマーの身に何が起こったか察した。
「ああ。この娘は、実は誰より真面目だ。マイペースに見えて、実は周囲に合わせる努力を怠らない。
負け続けていた時も、どうにかしようと必死にもがいていた。だからこそ、宝塚を勝った。
ただ、負けが込んでた時に僕に隠れて練習をしてたみたいでね……非公認の『フリースタイルレース』にも、こっそり出ていたらしいんだ」
「そして、張り詰めていた糸が、切れかかっている、と」
「……恥ずかしい話だけどね。友人たちに合わせようと、必死になっていたのもあったかもしれない。
僕が気付いて、ガス抜きをさせてあげなきゃいけなかった。ただ、何分どういう方法がいいのか……」
塩田トレーナーが、息をついた。
「パーマーはゴルシのように勝手に暴れて発散するタイプでも、フェスタのようにギャンブルでストレス解消をするタイプでもない。
考えた挙げ句、君の『チートデイ』が思い浮かんだ、というわけだ」
「食事なら、いいところは幾らでも……」
「パーマーは、高級レストランは嫌いなんだよ。庶民的な味の方がいいらしい。
庶民の味と言えばラーメンだ。元気の出る、スタミナラーメンとか知らないものだろうかな」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 18:30:18.37 ID:fpZyINMJO
頭にパッと思い浮かんだのは二郎だ。だが、あれは人を選ぶ。特に女性の場合は。
「パーマー、何か好みは」
「……逃げたくなるようなのがいい」
「それはどういう」
彼女はうつむいて、言葉を返さない。これはなかなかに重症だな。
「バックシーン!」
大声と共に、バクシンオーが入ってきた。
「トレーナーさん!!見ましたか私の走り!!まさに学級委員長にふさわしい走りだったでしょう!!」
「あ、ああ。……来客中なのだが」
「や、ややっ!!これは失礼しました!!パーマーさんではありませんか!!こんにちは!!」
「…………」
パーマーはまた返事をしない。バクシンオーのこのテンションは、彼女にあまり良くないかもしれない。
「どうしたのですか!?」
「…………」
「バクシンオー、そっとしておいてやってはくれないかね」
「むむっ、そうですか、分かりました!!辛いものでも食べて、元気出してください!!」
…………ん?
「バクシンオー、今何と言った?」
「はいっ!!元気出してくださいと言いました!!」
「その前だ。辛いもの、と言ったかな」
「はいっ!!母は私が子供のころ、かけっこで負けた日にはいつもカレーライスを作ってくれましたので!!」
……カレー……そうでなくても辛いもの……しかも比較的食べやすい……
ここにするか。
「塩田トレーナー、明日の予定は」
「いや、ないが」
「一つ、元気を出してもらえそうな店を知ってます。そこに行くとしましょうか」
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 18:31:00.59 ID:fpZyINMJO
第4R 神田「鬼金棒」
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 18:32:41.12 ID:fpZyINMJO
続きは夜か明日です。
カプリコーン杯、予想されていましたがバクシンオー強いですね。
エル固有とマミクリ固有と登山家さえあれば、高確率で直線ぶっちぎってくれます。
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 18:57:50.24 ID:PRNe5Yfto
たんおつおつ
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 20:30:16.15 ID:6Uf2v+mxO
*
「やあ、おはよう」
「…………」
塩田トレーナーとパーマーが、待ち合わせの門に現れた。パーマーの頬は、心なしかコケている。
「食事は食べたのかね?」
「……」
フルフル、とパーマーが首を振った。なるほど、これは重症だ。
*
昨日、彼らが去った後にダイタクヘリオスに会うことにした。
学園の中庭でいつもの3人でワチャワチャやっているのが見えたが、心なしかいつもの明るさがない。
「失礼、ちょっといいか」
「あ!マッチョ先生チース!!どしたんそんなガチな顔して。もっとあげみざわでいかん?」
ヘリオスがいつも通りの調子で言う。相変わらず言ってることはよく分からないが、とりあえず話を進める。
「ん、ちょっとな。パーマーのことなんだが」
一気に空気が重くなった。ヘリオスも伏し目がちになる。
「パーマー、ずっとつらたんだったけどどしたん?ぴえん超えてびえんになってたけど、なんでかわからんくて……」
「塩田トレーナーから相談を受けてね。オーバートレーニングによるバーンアウトの初期症状だろうと推測してるが」
「ばーんあうち?」
「『バーンアウト』、燃え付き症候群のことね」
リーダー格のゴールドシチーが言う。
「彼女、ああ見えて結構コンプレックス強いから。マイペースに見せて裏で人一倍努力するのよね。食事も惜しんで走り込みしたりしてるし」
「食事、食べてないのか」
「ここ数日、体調不良で休んでるって聞いて多分そうかなと。前にもそうなりかけたことはあったわ」
「昼を抜いてたりするわけだな」
「多分。さすがに塩田トレーナーの手前、そうは言ってないんだろうけど」
なるほど。栄養バランスも加味すべきということになる。やはりあの店が最も適切だろうか。
「助かる。それと、彼女は辛いのは?」
「一度罰ゲームで激辛ロシアンルーレットやったら、メチャ辛そうだったよ。そんな強くないんじゃね?」
トーセンジョーダンがネイルから顔を上げて答えた。
ふむ……いよいよあそこだろう。もう一つのオプションはここで消えた。
「ありがとう、助かった」
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 20:43:37.69 ID:6Uf2v+mxO
*
「こんな具合だよ。リフレッシュ休暇でも取らせてあげたいが……」
塩田トレーナーが溜め息をつくと、「大丈夫です!!」とバクシンオーが割って入った。
「トレーナーさんなら、きっと美味しい食事で元気にしてくれます!!ところで、今日はどこに行くのですか!?」
「神田だ。今日は電車と地下鉄で向かうとしよう」
塩田トレーナーが「神田かあ」と呟いた。
「久しく行ってないね。カレーでも食べに行くのかな」
「それも少し考えましたが、ちょっと違う所です」
「ああ、ラーメンか。その件では殿下がとても君を買っていたねえ。『あの方こそマイスターだよ』とかなんとか」
「ハハ、そこまで詳しいわけではないですよ」
また随分尾ひれがついているらしい。褒められるのは嫌ではないが、どうにも落ち着かなくはある。
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 20:54:34.82 ID:6Uf2v+mxO
ちょい休憩します。
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 21:03:58.34 ID:+D9DfnQdo
おつ
パーマーは色々抱え込みそうそうよねわかる
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 22:42:22.97 ID:b74g9IW4O
*
神田駅から歩いて3分。目当ての店が見えた。
「今日はここです」
「『カラシビ味噌ラーメン 鬼金棒』……なるほど、辛い系のラーメンか」
ふと後ろを見ると、パーマーの表情がさらに曇っている。
「天王寺トレーナー、気持ちはありがたいんだけどさ。私、激辛はあまり」
「それはジョーダンに聞いた。そして、だからこそここにしたのだよ」
「……え?」
「まず、君が十分な栄養を採っていないことは推測した。故にある程度の野菜を採れるものがいいと判断した。
ただ、野菜がたっぷりでも二郎はいささか好き嫌いが分かれる。故にここにしたのだよ。野菜がかなり多めの店だからな。
あと、食欲増進のためには、ある程度の辛味が必要だ。カプサイシンの血行促進効果については、授業でもやった点だな。
もっとも、辛さに対する耐性には個人差がある。ここはその点、比較的食べやすい」
「そうなの?」
「まあ、食えば分かる。それでも辛いのがあまり得意でないなら、つけ麺を選ぶといい」
券売機でカラシビつけ麺を4枚購入する。行列に戻ると、塩田トレーナーが「質問なのだけど」と切り出した。
「なぜデフォルトではなくつけ麺に?確かに、こちらも看板メニューのようだが」
「麺がポイントなのですよ。こちらの方が、激辛初心者にはいい」
「というと?」
「麺が太麺でしっかりしているからです。麺自体に小麦粉の甘みがある。そして、ここのつけダレは……」
話しかけた所で店員が「4名様どうぞー」と引き戸を開けた。コロナ感染防止のこともある、説明はここまでにしておこう。
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 23:17:15.63 ID:OR5k1JPSO
店内に入ると、どこか空気が肌に刺すような気がする。バクシンオーも気付いたのか、「どうしたことですか?」と訊いてきた。
「多分、あれだろうな」
ジャーという音と共に、唐辛子の入った鍋に油が注がれる。そこでカプサイシンが揮発しているのだ。パーマーが不安そうな顔になる。
「辛そう……」
「心配は無用だ。追加料金を払って『鬼』にしなければ」
「鬼?」
「激辛党のドトウ向けだな。私もさすがに頼まないよ」
待つこと数分。カウンター越しに、大盛りの麺とつけダレが供された。
「え……つけダレって、こんなのだっけ?」
塩田トレーナーが困惑気味に言う。タレの色は赤茶色で、ネギがたっぷり散らしてある。問題は、その粘度だ。
「ポタージュ……というか、ほぼ固形?」
「それがポイントだ。さて、頂こう」
極太麺を軽く浸すと、濃厚なつけダレがそれにしっかり絡み付く。
そして一気に啜ると、小麦の甘みが味噌の旨味と混ざって口の中に広がった。
「バックシーン!!!」
隣のバクシンオーは叫ぶと、猛烈な勢いで麺を啜り始めた。私のワイシャツのボタンも、パシーンッという音と共に弾ける。
「これはっ!?」
「え、美味しい……あ、確かにちょっと辛いけど、これなら食べられるかも」
パーマーも恐る恐る食べ始めた。私は微笑みながら頷き、自分の丼に取り掛かる。
麺と味噌の異なる甘みの後に、唐辛子の刺すような辛み。そして花椒の痺れが追い掛けてくる。
それを忘れんと次なる麺に箸を伸ばす。見事なループだ。
そして、つけダレの底には……
「むっ!?モヤシ炒め!?それに、これは……」
「アッツアツだよ!え、どうして……」
「ポイントはタレの粘度だよ。これがモヤシ炒めの熱さを保っているわけだ」
それを口にすると、野菜の甘みでさらに辛さが中和される。シャキシャキの玉葱の甘さも、単調になりがちな辛さにアクセントを加えてくれる。
そして、もう一つ。
「ムムッ!?これはなんですかトレーナーさん!?」
バクシンオーが箸で細長い具を見せてきた。
「ヤングコーンだよ」
「??」
「トウモロコシの小さいヤツだな」
この甘みも、さらなる変化をつけダレに加える。実によく考えられた一品だ。
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 23:47:06.26 ID:OR5k1JPSO
ふとパーマーを見ると、すっかり麺を食べ終えていた。青白かった顔にも生気が戻っている。
「うん、美味しい!今度ヘリオスにも教えてあげなくっちゃ」
塩田トレーナーと目が合う。「ありがとう」とその目は語っていた。
*
「んー!美味しかったあ。何かスッキリした感じだよ」
店を出ると、パーマーがうーんと大きく伸びをした。やっと本来の彼女の調子が出てきたようだ。
「天王寺トレーナー、本当にありがとう。それにしても、君の知識には感服させられるよ。どこで身に付けたのかな?」
「……まあ、ただの趣味ですよ」
私は笑って誤魔化した。
……そう、チートデイにラーメンばかり選ぶようになったのには、一応の理由がある。
私がスキンヘッドに敢えてしているのも、「彼」の影響だ。
私は深く、青い空を見上げる。私がトレーナーを志すようになったのも、「彼」に大学時代に出会ったからに他ならない。
「彼」の名は、すっかり聞かなくなってしまった。日本のどこかでラーメン屋をやっているのか、それとも海外でトレーナーをやっているのか……
「トレーナーさん?」
バクシンオーの声で、私は我に返った。どうにも感傷的になってしまったようだ。
「何でもない。行こうか」
私は歩き始めた。
「彼」と再会する日がそう遠くないことを、この時の私はまだ知らない。
第4話 完
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 23:48:28.86 ID:OR5k1JPSO
今回はここまでです。色々伏線や小ネタがありますが、回収するかは未定です。
次回登場のウマ娘を決めます。
安価下1〜5で、コンマが最も大きいものとします。
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 23:49:46.79 ID:5jU4/bAi0
メジロアルダン
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 23:49:56.55 ID:e3RnlvXAo
サクラチヨノオー
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 23:50:27.98 ID:V/hLXOMTO
カレンチャン
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 23:51:30.87 ID:RZLHASr4O
メイショウドトウ
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 23:53:01.88 ID:NBVkHXo20
メイショウドトウ
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/22(土) 23:54:21.73 ID:OR5k1JPSO
カレンチャンに決定しました。
続いてテーマを決めます。同じく安価下1〜5で、コンマが最も大きいものとします。
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 23:55:57.66 ID:e3RnlvXAo
つけ麺
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 23:58:58.80 ID:RZLHASr4O
ウマスタ映えしそうなラーメン屋さん
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 00:01:07.21 ID:1zktD7nlo
眞久中
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 00:03:45.96 ID:fJl2DPlY0
くろき
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 00:05:07.26 ID:ajlpTH/bO
煮干系
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/23(日) 00:08:45.02 ID:IBFuVrRbO
くろきで決定します。あそこはインスタ映えしそうですね……
わりと最近行ったので、リサーチなしでやれそうです。その時に食べた限定でやります。
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/01/23(日) 00:24:37.68 ID:KHJGT0pC0
話の更新するタイミングを教えてください
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/01/23(日) 00:26:16.86 ID:KHJGT0pC0
後から出合わせで来るウマ娘はいて、次のお店を紹介する回もありますか?
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/23(日) 00:29:48.41 ID:IBFuVrRbO
>>173
基本週末です。また
>>174
のようなパターンは考えています。
(実はファインモーション回でやりかけました)
ウマスタ映えするお店という観点からはくろきは十分に足る店ですが、ファボ数を求めてカレンチャンが連食を求めるのもありと言えばありですね。
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 01:02:14.87 ID:1zktD7nlo
おつー
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/23(日) 01:04:44.75 ID:IBFuVrRbO
ちょっと多数決要素を入れます。
カレンチャンのトレーナーですが、以下の誰にするか決を取ります。
3票先取です。
1 三田村トレーナー(ライスのトレーナー、29歳女子)
2 浦安トレーナー(ファインのトレーナー、???、男性)
3 アリームトレーナー(マックのトレーナー、19歳童顔男性)
4 塩田トレーナー(パーマーのトレーナー、46歳男性)
5 新規(要望あれば)
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/23(日) 01:05:44.84 ID:IBFuVrRbO
一応6に天王寺が担当も入れておきます。
カレンチャンは筋トレ嫌がりそうですが。
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 01:08:16.40 ID:1zktD7nlo
1
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 01:21:10.60 ID:fJl2DPlY0
1
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 01:39:34.33 ID:yFidTUPXo
嫌がってそうなカレンチャンが見たいので6!
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 02:05:06.95 ID:ajlpTH/bO
6
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 02:28:01.96 ID:UK2X0hSZO
6
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/23(日) 11:20:44.83 ID:cTXlwaZtO
では6で決定します。
これまで出てないのは香港に行ってたということにします。
(天王寺は教員兼務なので、日本を離れにくいのです)
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 18:14:45.36 ID:UK2X0hSZO
店名指定されてもすんなり対応してるのすごいなぁ
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/23(日) 18:58:42.74 ID:UbI0gbiQ0
調子に乗った乞食がつけ上がって更なる無茶振りに走らなきゃいいけどね
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/01/24(月) 06:26:01.21 ID:JzH2Ieh60
検討案件だと思いますが、行った先のラーメン屋で他作品のキャラ(マシュとか立花響など)と鉢合わせして、そこのラーメンに対する自身らの評価を話し合うのもありますか?
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/24(月) 11:59:14.86 ID:K+RobaPnO
>>187
それはないです。
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/01/24(月) 21:28:57.07 ID:4MFITfwwO
テスト
190 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/24(月) 21:30:27.27 ID:4MFITfwwO
もう一度テスト
191 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/24(月) 21:31:31.18 ID:2sM2waKGO
とりあえず鳥付けました。
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/24(月) 21:39:42.48 ID:4P6P3vrio
乙酉
193 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/28(金) 18:17:16.65 ID:KnNp5kHAO
明日更新しますが、その前に簡単な判定だけします。
安価下のコンマがゾロ目だと……
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/28(金) 18:17:33.11 ID:vInwJT3Go
なんやー?
195 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/28(金) 18:19:16.13 ID:KnNp5kHAO
ゾロ目ですのでカレンチャンは実妹設定です。
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/28(金) 18:20:03.93 ID:vInwJT3Go
ファッ!?!??!
197 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/28(金) 18:22:15.24 ID:KnNp5kHAO
年齢が20以上離れてしまいますが、天王寺は長兄、カレンチャンは末妹ということで何卒。
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/28(金) 19:50:46.22 ID:6vfSUpzVo
>>194
素晴らしい!
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/28(金) 20:09:16.14 ID:/GsSRc52o
お兄ちゃん(実)
200 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/28(金) 20:37:55.66 ID:Jiy/5sfnO
これに伴いオリジナル設定入りますがご了承下さい。
(某キャラやゲーム、シングレの描写を見るにほぼ推測は正しそうですが)
201 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 17:22:52.32 ID:uR4r37BxO
それでは更新します。
断続的な書き込みになりますがご了承下さい。
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/29(土) 17:27:15.88 ID:VOED10V8o
カワイイカレンチャン!!!
203 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 17:39:59.88 ID:uR4r37BxO
「24、25、26……」
上腕二頭筋を使ってダンベルを持ち上げながら、私の目はチラチラと時計に向いていた。
筋肉の動きに集中せねばならないのだが、どうにも気がそぞろだ。
「ややっ!?トレーナーさん、どうしたのですか!?」
横でレッグプレスをやっていたバクシンオーが訊いてきた。彼女から見ても分かるほどにはあからさまであったらしい。
「いや、そろそろ来てもいい頃だと思ってな」
「誰がですか?」
ぽかんとしたその様子に、私は思わず苦笑した。何回かスケジュールについては伝えていたはずだが。
「決まっているだろう、カレンだ」
「カレン……おお!そうでした!!」
バクシンオーはレッグプレスのマシーンから降り、パンと手を叩く。
「やっと香港から戻ってこられるのですね!にしても、どうしてトレセン学園に来なかったのですか?」
「このご時世だ、隔離期間を取らねばならなかったのだよ。あいつも随分退屈していた様子だったが」
「かくりきかん?」
バクシンオーの頭の上に、いつものように「?」が浮かんでいる。
「コロナの感染防止のためだよ。あいつはオミクロンの流行前に香港に出ていたからな。それもあって、手続きに時間がかかった。
それに、この前の香港スプリントは大変なことになったからな……身体の検査も念入りにやっておく必要があったわけだ」
「むう、よく分かりませんがお元気なら結構ですっ!」
うんうんとバクシンオーが頷く。
そう、私が担当しているのはバクシンオーだけではない。
トレセン学園が誇るもう一人のスプリンター……カレンチャンも私の受け持ちだ。
そして、昨年末の香港スプリントから、ようやくここに戻ってくる。
204 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 18:07:19.86 ID:4vJdc4mNO
その時、コンコンとノックの音がした。
「失礼しま「お兄ちゃん!!」」
ドスンッ
ドアが開くと同時に、小柄な人影が私に向かって飛び込んできた。
強烈な衝撃を、私はその腹直筋で受け止める。
「お兄ちゃん!!会いたかったよ〜♪」
「ハハハ……人前だからやめなさい」
「むう。1ヶ月以上も会えなかったんだよ?お兄ちゃんは寂しくなかったの?」
「いや、寂しかったよ。ただ、流石に恥ずかしい……「コホン」」
妙齢の女性が咳払いをする。
「仲がよろしいのは結構ですが、場所を弁えて頂きませんと」
「申し訳ございません、理事長代理」
少し顔を赤らめながら、樫本理事長代理が私を見た。
「全く……気持ちは分かりますが。身体が無事だったのは、本当に幸いでした」
私は小さく頷く。そう、本当に幸いだった。
*
カレンは香港スプリントに遠征していた。本来なら私も同行するのが筋だったのだが、私は学園で教鞭を執らねばならなかった。
東京で学会に出なければならなかったこともあり、現地での調整を樫本代理に任せることになったのだ。
そこで、悲劇は起きた。
第4コーナーで、彼女の前を走るウマ娘が、突然骨折し倒れたのだった。
カレンはすかさず、勝敗を度外視して大きく外に進路を変えた。かなり無茶な進路変更だったが、おかげで「カレンは」何事もなくレースを終えた。最下位ではあったが。
だが、転倒の巻き添えを何人ものウマ娘が食い、相次いで倒れた。
時速数十キロで走るウマ娘が転倒した時の衝撃は……人間とは比べ物にならない。
死者こそ出なかったが、1人は意識不明の重体。2人が脚や腰の骨を折り、競争バ生命を絶たれた。
どれほど香港に行きたいと思っただろうか。しかし、出入国制限がかかった中でそれは不可能であった。
樫本代理からの情報を頼りに、この1ヶ月を過ごしてきた……というわけだ。
205 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 18:56:24.98 ID:4vJdc4mNO
*
「ええ。本当に不幸中の幸いでした。一応念のための確認ですが、メディカルチームは何と」
「進路変更に伴う軽度の肉離れは完治したと。本日より通常のトレーニングに戻って結構です」
「やったぁ!!」
カレンがピョンと飛び跳ねる。
「これでまたお兄ちゃんとバクちゃんと一緒に練習できるね♪」
「ハイッ!これからも切磋琢磨いたしましょうっ!!
ところで、前から不思議だったのですが、なぜカレンチャンさんはトレーナーさんのことを『お兄ちゃん』と呼ぶのですか?」
「だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん。ね?」
カレンが悪戯っぽい笑いを私に向ける。私は乾いた笑いを浮かべ、代理がまた軽く咳払いをした。
そう、事実関係を知らないバクシンオーが不思議に思うのも無理はない。
というより、トレセン学園でもこの事実を知るのは目の前の樫本代理や駿川女史、そしてシンボリルドルフなどごく少数に留まる。
そう、カレンチャン……戸籍名「天王寺カレン」は、私の実妹だ。
代理が困ったように私を見る。
「バクシンオーさん、カレンチャンさん。そこまでにして下さい。天王寺トレーナーと、少しお話があるので」
「ハイッ、わかりました!!」
「は〜い♪」
*
「いつまで秘するつもりですか?」
代理が厳しい目で私を見る。私は静かに緑茶を口にした。
「彼女の卒業まで。平等の面からそうすべきであると考えております」
「それはもっともなことです。ただならなぜ敢えて手元に?」
「……亡くなった母の望みなんですよ。あいつを一人前のウマ娘にしてくれと。
男ばかり生まれた後で、やっとできた娘でしたから、思い入れはよく分かります」
そう、母はウマ娘だった。体質が弱く、競争バにはなれなかったが。
その代わり、父と共にスポーツ医学の研究に没頭した。自分が果たせなかった夢を、いつの日か生まれる娘に叶えてもらうがために。
ただ、そう上手くはことが運ばないものだ。学生結婚で生まれた私の他、下の3人は全員が男だった。
諦めかけていた時にようやく生まれたのがカレンだった。……が、高齢出産の負担は重く、早いうちに母は世を去ってしまった。
それから母代わりとなって、私が彼女を育ててきた。
母の夢を無理に託そうと思ったわけではない。ただ、賢いあいつは母の遺志を敏感に感じ取り、ここまで育った。ブラコン気味になってしまったのはそのせいもある。
だからこそ、彼女に甘くならないようにと、一つのルールを課した。
トレセン学園では、あくまで「トレーナーと生徒である」ということだ。
カレンもそこは理解しているはずだ。ただ、私への呼び方だけは「お兄ちゃん」で変わらない。
代理が息をつく。
「あまりご無理をされないよう。ああいうことがあった後ですから、お気持ちは分かりますが」
「肝に銘じておきます」
命の危険すらあった大事故の後だ。あいつもトレーナーとしてではなく、兄としての私に甘えたい思いはあるのだろう。
さりとて、どう距離感を作るべきか。バクシンオーもいる手前、彼女が求めるようには恐らくできない。
……とりあえず、飯でも誘うとしよう。チートデイも近いことだ。
206 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 18:58:50.33 ID:4vJdc4mNO
少し休憩。
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/29(土) 19:05:02.60 ID:VOED10V8o
たんおつ
208 :
◆/4adlfiarI
[saga]:2022/01/29(土) 22:22:53.06 ID:4vJdc4mNO
*
「あ、お兄ちゃん!」
トレーナー室に戻ると、カレンが何やら自撮り棒を持って準備をしている。
「……これは?」
「うん!ウマスタのフォロワーさんたちに報告するための投稿しよっかなーって。
カレンは元気だよーってね♪心配かけちゃったし」
「その……悪かったな。辛かっただろう」
「……大丈夫だよ。無事だったし。でも、お兄ちゃんには側にいてほしかったな」
寂しそうに笑うカレンを見て、心が痛んだ。
やむを得なかったことだとは、彼女も理解しているだろう。ただ、それだけに傷ついてもいる。
そして、カレンはその辛さを表には決して出そうとしない。「いつも可愛く元気なカレンチャン」を、どこまでも演じようとするのだろう。
それは彼女なりの処世術ではある。しかし、その無理が彼女の幼い心を蝕みかねないことを、私は知っている。
そんな時にどうすればいいのか?そのことも、私はよく知っている。
「埋め合わせにもならないかもしれないが、明日飯に行くか?」
「ご飯?フレンチ?イタリアン?ウマスタ映えするのがいいなあ」
「私がそういう柄じゃないのは知ってるだろう。それに、お前に辛いことがあった後はいつも決まっている。お前が本当に一番好きなものを食わせてやる」
「お兄ちゃん……」
目を潤ませるカレンの後ろから、バクシンオーが顔を出した。
「むむっ?何があったのです?」
「いや、飯を食わないか、とな。チートデイも近いだろう」
「おおっ、そうでした!ラーメンですね!!」
うんうん、とバクシンオーは上機嫌に頷く。カレンは上目遣いで訊いてきた。
「どこに行くの?」
「それは着いてのお楽しみだ。今しか食えない、特別な一杯が待っているぞ」
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