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【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】

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83 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:44:45.60 ID:6J07c1J10

智代子「とりあえず島を見た感じだと目立った危険はなかったし、最初ほど絶望的な状況には感じないといいますか……」

あさひ「それより、この島でしかできないことをいろいろ試してみたいっす!」

愛依「アハハ、海もすごくきれいだもんね! せっかくなら泳いだりもしたいしー!」

(うーん……こんな感じで大丈夫なのかな……)

(実際、本当に希望ヶ峰学園の計画でここにいるんだったら余計な心配なんだろうし……)

(ウサミ自体も危害を加えてくるような様子もないわけで……)

にちか「美琴さんは、どう思います?」

美琴「……ウサミの言うことが全部が全部、信用できるわけではないのは変わらない。だけど、今私たちにできることもない……とも思うかな」

にちか「……それは確かに、そうですね」

美琴「脱出しようにもする術もないよね」

にちか「あっ! でもそこらに生えてるヤシの木を切り出してイカダにするとかなら……」




ウサミ「いけまちぇーーーーーーーん!」



84 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:45:54.97 ID:6J07c1J10

(うわっ!?)

ウサミ「七草さん! ロケのしおりをみまちたよね?! この島の生活で環境破壊はだめでちゅよ!」


『ルール その3
ポイ捨てや自然破壊はいけませんよ。この島の豊かな自然と共存共栄しましょう』


ウサミ「草や木にも一つ一つに慈しみの心をもって接してあげてほしいんでちゅ。博愛の心がミナサンの交流にも助けになるはずでちゅよ!」

にちか「げー、木の一本や二本よくないですかー? けち臭いなー」

摩美々「ちょっとー、気持ちはわかるケドさぁ……不用意に刺激しないでよ、摩美々たちにも危険が及ぶかもしれないしー」

ウサミ「はわわ! き、危険なんてそんな! あくまでもあちしが行うのは教育的措置、せいぜいデコピンぐらいのものでちゅよ!」

透「おー、強いよ。私の薬指」

雛菜「円香先輩のデコピンこの前すごかった〜!」

結華「はいはい、脱線しない脱線しない……」

美琴「……まあ、あんまりウサミを刺激しないほうがいいのは確かだと思うから」

にちか「そ、そうですね……すみません!」
85 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:47:17.26 ID:6J07c1J10

ルカ「それより何の用事なんだよ、プレゼントとか言ってたけど」

ウサミ「よくぞ聞いてくれまちた! 希望のカケラを全員分最初の一つ集めたミナサンにご褒美を用意したんでちゅ!」

ウサミ「ぷすー、くすくすっ! ウサミストラップでーちゅ! あのね、お腹押すとしゃべるんでちゅ」


『あちしはウサミ……魔法少女ミラクル★ウサミ。ちょっぴちスイートなミルキーっ娘でちゅ!』


ウサミ「かわいいでしょ! らーぶ、らーぶでしょ!」

あさひ「いらない!」

ルカ「……やっぱ来る意味はなかったな」

摩美々「期待して損したぁ」

千雪「そうかなぁ……すごく細かいところまで手が込んでると思うけど」

夏葉「……ただ、この状況でストラップだけ渡されても少し困るわね」


ウサミに渡されたストラップの数々。
その悉くが……次の瞬間、ウサミの手にもう一度戻っていた。


ウサミ「受け取り拒否でちゅか!? あちしの手は募金箱じゃないんでちゅ、ここに返したところで世界中の不幸な子供たちのもとに届くわけでもないんでちゅよ!」

結華「あ、あはは……せっかく用意してもらって悪いんだけどさ、三峰たちはもっとここでの生活に役立つプレゼントとかを期待しちゃってたところもありまして……」

ウサミ「うぅ……くすん、あちしのストラップもQOLをあげるのに大いに役立つのに……」
86 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:48:24.21 ID:6J07c1J10

ウサミ「わかりまちた、ミナサンにはもう一つのプレゼントを渡すことにしまちゅ」

にちか「もう一つの……?」

美琴「プレゼント……?」

ウサミ「じゃじゃーん! 【動機】を用意させてもらいまちた! ミナサンがこの島で暮らす上で仲良くなる動機だよ!」

果穂「なかよくなる、どうき……すっごく気になります!」

あさひ「何かのおもちゃっすか?! みんなで遊べたりするっすか!?」

ウサミ「いいでちゅねぇ、無邪気な反応はそれだけで癒されまちゅねぇ」

灯織「じ、実際なんなんですか?! その動機というのは……」

ウサミ「はい、これでちゅ!」

夏葉「あら……? これって……」

智代子「み、水着……水着だよ、これ!」

ウサミ「うーみーはひろいーなー、おおーきーいーなー! というわけで、やっぱりまずは海水浴でちゅよね! ミナサン一人一人のスタイルに合わせた水着を用意させていただきまちた!」

ルカ「……はぁ? なんだよそれ、ここで泳げってか?」

ウサミ「はい! そういうことでちゅ! もちろん強制するわけではないんでちゅよ! ミナサンがここの生活でより仲良くなって希望のカケラを集めるその助けになればいいと思って……」

にちか「いやいや……流石にこの状況でそんな、海水浴だなんて……」




あさひ「やったー! 泳いでいいんだー!」

にちか「……え」



87 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:49:27.57 ID:6J07c1J10

あさひ「果穂ちゃん、早く着替えて泳ごうよ!」

果穂「はい! あたしもずっとおよぎたいと思ってましたーーー!」

愛依「ちょいちょい、危ないから走らないで! ほら、手ぇつなぎながら行こ?」

にちか「ちょ、ちょっと……?!」

雛菜「あは〜! 雛菜こういうイベント待ってた〜!」

透「泳ごっか。うちらも」


気が付けば次から次へとみんながみんなスイミングバッグを受け取って更衣のためにコテージへと走り出していた。
数人はそのままその場に待機していたけど、別にウサミを警戒してといった様子でもなく別の事情があってといったところ。


美琴「……にちかちゃんは行かないの?」


美琴さんは不思議そうに私のことを見ている。美琴さんからすれば私のほうが変わって見えるんだろう。
この島では何も起きない、事件なんか起こりっこない。
何も起きずにただ平和な時間だけが過ぎていく。

かくいう私も、本当のところは……その不気味な平和に浸りたいと思っている。
ウサミの口からきいた『希望ヶ峰学園歌姫計画』とやら、それが本当ならこれ以上ない僥倖。
今は美琴さんの手前抑え込んでいるけど、本当はそこかしこに言いふらして回りたいぐらいの代物。


……私も、その一線を越えていいのかな。
考えるのをやめて、つかの間の平和に走る、その一歩を。
88 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:50:13.04 ID:6J07c1J10

私が砂浜を右往左往して考えているうちに、着替えの終わったみんなが次々に戻ってきた。
流石は283プロダクションのアイドル、写真集にでもしようものならかなりの売り上げがありそうな光景が目の前に広がった。


千雪「海で泳ぐなんて久しぶりなんだろう……日の光が気持ちいいなぁ」

灯織「はい……! 天気もいいので、絶好の海水浴日和ですね……!」

摩美々「ふふー、こうやって水に浮いてるといつかのプールのことを思い出しますねー」

結華「ちょっとまみみん……約束したよね、ほかの人を心配させるようなイタズラはしないって。こがたんなんか絶対焦って助けに来るんだから、やっちゃダメだよ!」

恋鐘「ふぇ〜〜〜〜!? 足が攣ってしもうたばい〜〜〜〜〜!」

果穂「すごい……夏葉さん、すっごくかっこいいバタフライですー!」

夏葉「果穂にもやり方を教えてあげるわ、綺麗なフォームを作るにはコツがいるの。……もちろんそのあとで智代子にもみっちりコーチしてあげる」

智代子「うぅ……ゆっくりと浮き輪で浮いていたかった……」

あさひ「あはは! 水、すっごく冷たいっすー!」

愛依「うりうり〜! あさひちゃん、水鉄砲も持ってきたよ〜!」

雛菜「透先輩埋めちゃった〜〜〜!」

透「あー、重いかも。手、出ないわ」
89 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:51:12.91 ID:6J07c1J10

……ずるい。
ずるい、ずるすぎるよ。こっちは現実と自分の都合と、美琴さんとの建前と色々の兼ね合いで手いっぱいなのに手放しで楽しんじゃってさ。
あんなに笑顔で気持ちよさそうに海を満喫なんかしちゃって……

私はいつの間にか食い入るように彼女たちの海水浴を見つめていた。
その一線を中々超えれずにいる自分への歯がゆさと彼女たちに対する嫉妬とをごちゃまぜにしてこぶしを握る。力が入って体が震えてしまっていた。
人生この先長くとも羨ましくて体が震えるなんてこと、そうそうないだろう。
それぐらい人の体が震えるなんて、珍しいことだし、何より目に付く。


美琴「……ねぇ」


実際、美琴さんの目に留まってしまった。
しまった、浅ましいと思われちゃったかな。こんな状況下で遊びたがってるなんて、緊張感が足りてないって失望させてしまったかな。
慌てて言い訳の言葉を口の中で装填する。




____けどその弾を使うことはなかった。




90 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:53:11.73 ID:6J07c1J10




美琴「……泳ごっか、私たちも」




にちか「み、美琴さん?! そ、そんな私に合わせて無理しなくても?!」

美琴「ううん、違うから。私もせっかくだし、ちょっとだけ……ワクワクしてるところもあるかな」

にちか「え、ええ……!?」

美琴「ほら、私の生まれって北海道で……上京してからはそれどころじゃなかったし」

美琴「興味があるんだ、こういうの」


そう言ってはにかむ美琴さんがすごく可愛らしくて、優しくて、もう飛びつきたいぐらいの衝動を抱いて。


にちか「はい!!!!!!」


……全身全霊で返事をした。
91 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:54:06.29 ID:6J07c1J10

「おーい! ウサミー! 私と美琴さんの分の水着くださーい!」

「七草さんもわかってくれまちたか! みんなとらーぶらーぶしてくれるんでちゅね!」


もう知ったこっちゃない。
こうなったからには私だって満喫してやる。めいっぱいこの島での暮らしを遊びつくしてやる。
美琴さんと一緒に過ごせるなら、どこだってそこが最高の場所で最高の時間だ。
今自分たちの置かれている状況も今は忘れよう、それより美琴さんの海水浴がしたいという希望を最高の形でかなえてあげないと。
だから私がまず一番に楽しまないと、嘘!

すっかり頭がすっからかんになって私は走り出していた。
美琴さんと一緒に海で遊べるなんて夢にも思わなかった、最高の展開。
もうそれが待ちきれない、膨らみ切った思いからの第一歩だった。


その一歩は砂浜の柔らかい地表にすっぽりと埋まって____
92 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:54:36.31 ID:6J07c1J10





____そのまま勢いが止まった。





93 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:55:35.01 ID:6J07c1J10

キーンコーンカーンコーン・・・・・・


『えーえー、マイクテス、マイクテス! 大丈夫? 聞こえてるよね?』


それはウサミとは全く異なる声の持ち主。恐ろしいまでの濁声は、一度聞いただけで内臓まで揺さぶられるような不快感を与え、その語り口の軽妙さがかえって拒絶反応を引き起こす。頭の中の多幸感を一瞬で吹き飛ばすには十分なほどの何かがそこに在った。


『オマエラお待ちかねの時間、【集いの時間】だよー! 南国での仲良しスローライフ、なんてくっだらない茶番劇に幕を下ろして、真の南国ロケが幕を開けますよー!』

『オマエラ、今すぐ中央の島のジャバウォック公園にお集まりください! 来なかったらウサミの家の住所をネットに公開してやるからなー!』


一方的なアナウンスはそのまま途絶えてしまった。
一瞬にしてさっきまでの活気が嘘のように消えてしまった。気が付けば空も曇っているし、飛んでいた海の鳥も姿を隠してしまっている。
残された私たちは理解不能の連鎖を前に狼狽えるのみ。
顔を見合わせ、事態の異常さを確かめ合う。

____そして誰よりも狼狽えているのは【彼女】だった。
94 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:56:48.21 ID:6J07c1J10

ウサミ「ど、どうしてアイツが……この島にいるんでちゅか!」

にちか「ウサミ、今のって?!」

ウサミ「……許しまちぇん! あちしが絶対に、ミナサンを守って見せまちゅ!」


ウサミは私たちの呼びかけに反応する余裕もないといった様子で、一目散に駆けて行ってしまった。
その口ぶりからして、今のアナウンスの主はウサミにとっては知り合いであるらしい。それが良い関係にしろ、悪い関係にしろ。


愛依「ど、どうする……?」

あさひ「とりあえず行ってみるしかないっすよ! 今のアナウンス、ウサミとはまた別人っすよね?」

夏葉「……なんだか胸騒ぎがするわ、何も起きなければいいのだけど」

果穂「あたしも、なんだか体がふるえます……」

智代子「果穂、大丈夫。わたしと夏葉ちゃんがついてるからね!」

にちか「美琴さん……」

美琴「……行くしかないんじゃないかな。今は」


私自身、これまでにない嫌な感覚を覚えていた。
指先が妙に敏感で、風の流れの一つ一つさえ感じとれてしまう。それでいて喉元を伝う汗が妙に脂っぽくて不快だ。
瞳孔もどこをとらえるべきなのか、それとも視界そのものを閉ざすべきなのか、そんなことを制御とは離れたところで思考しているような。
まるで私の体が私の手から離れてしまったような、そんなフワフワとした緊張。


その足取りは、重たかった。

95 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:57:51.36 ID:6J07c1J10
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【中央の島】ジャバウォック公園


ウサミ「どこに隠れてるんでちゅか! でてきなちゃい!」


公園に着くとすでにウサミがすごい剣幕(に見えなくもない)であたりを怒鳴り散らしていた。
私たちの抱いている不安の感情とはウサミのそれは完全に別物、完全な敵意とそれ以上の何かをはらんだ語気だ。


ウサミ「あちしは……あちしは……絶対に負けまちぇんからね!」

摩美々「ねえ、ウサミー。摩美々たちってば完全に置いてけぼりなんだケドー?」

ウサミ「ミナサン……あちしが絶対に守ってあげまちゅからね!」

冬優子「守る……? それ、どういう意味なのかな……?」

ウサミ「やい! いつまで姿を隠してるつもりなんでちゅか! 姿を見せない卑怯者め!」

???「うぷぷぷ……」

結華「……まみみん、今そういうイタズラはいいから」

摩美々「私じゃないケドー? 恋鐘のお腹の音じゃないー?」

恋鐘「ふぇ?! うちじゃなかよ、ついさっきフルーツ食べたばっかりでお腹も空いとらんばい!」

???「うぷぷぷぷぅ!」

千雪「これ……さっきのアナウンスで聞こえた声と同じよね……?」

灯織「は、はい……この声は、一体……?」
96 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 22:59:40.82 ID:6J07c1J10

そして、それは突然だった。
突然に姿を現して、突然に私たちのそれまでの考えを吹き飛ばして、突然にこの島の色を変えて、突然に……

____【理解不能】を持ち出した。


果穂「あっ! あそこをみてください……銅像の、足元が!」


全員一気に果穂ちゃんの指さす先に目を向ける。
巨大な銅像の足元の台座部分が動いたかと思うと、そのまま珍妙な駆動音とともに、何か黒い影が射出される。


バビューン!!


それはさっき教室のような場所で見た、ウサミの登場とそっくりだった。
もっちゃりとしたシルエットが飛び上がったかと思うと、ふんわりとした着地……ではなく不格好なまでにどっしりと着地。

しかもそのぬいぐるみはウサギじゃなくて……【クマ】だった。
97 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:00:09.50 ID:6J07c1J10






「全地球70億超えのファンの皆々様お待たせいたしました! ついにボクの登場だよ!」





98 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:00:54.64 ID:6J07c1J10

愛依「え、ええええええ?! ま、また?!」

透「おー、なんか出た」

ルカ「……はぁ? これ以上ぬいぐるみが増えんのかよ」

摩美々「もう渋滞気味なんですケドー?」

(そのクマは右と左とで彩色が白黒に二分されていて瞳が不気味なほどに赤黒い)

(吊り上がった口元はまるで口裂け女のようで、醜悪な笑みを浮かべていた)

???「コラー! ボクはぬいぐるみなんかじゃないんだぞ! 少なくともそこの薄汚いウサギ風情と一緒にするんじゃなーい!」

ウサミ「なんてことを言うんでちゅか! あちしのフェルト地は高級品でちゅよ!」




モノクマ「ボクの名前は【モノクマ】! オマエラの参加している希望ヶ峰学園歌姫計画の主催元……希望ヶ峰学園の【学園長】なのだー!」

(……は?)



99 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:01:51.77 ID:6J07c1J10

にちか「いやいや、何言ってんの?! 冗談にしてもセンスなさすぎ……」

モノクマ「冗談? 何言ってんのさ、ボクは本気だよ?」

千雪「希望ヶ峰学園の学園長……あなたが?」

モノクマ「学園長なんですけど! きょーいん……の免許?も持ってるんですけど!」

智代子「大変だ! 絶対嘘だよ!」

夏葉「あなたを操作している人間が希望ヶ峰学園の学園長という意味合いなのかしら? だとしたらこれはどういう状況なのか説明してもらえる?」

モノクマ「はぁ……すぐそうやって中の人間がどうとか言い出すやつって本当に萎えるよね。映画とかアニメとか見てるときは世界に没入させてほしいっての」

灯織「返事になってませんね……」

モノクマ「まあいいや、それよりさっさとお仕事をやっちゃいましょうかね! えっと、ボクがここにやってきたのはほかでもありません! オマエラで____

ウサミ「そうはさせまちぇんよ!」


呆気にとられるばかりで動けずにいた私たち、モノクマと名乗るぬいぐるみとの問答しかできなかったその間隙に。
ウサミは私たちの横を抜けて、そのステッキをモノクマめがけて振り下ろした!
100 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:03:05.15 ID:6J07c1J10

モノクマ「痛ぁ!? な、なにするのさ! まだ人が話してる途中でしょうが!」

ウサミ「うるちゃいうるちゃい! オマエなんか、オマエなんか……消えてなくなっちゃえばいいんでちゅ!」

雛菜「なにこれ〜、仲間割れ〜?」

結華「もうお姉さんはなにがなんだかだよ……」

あさひ「……!? あ、あれ! さっきの魔法が出るっすよ!」

冬優子「あ、あさひちゃん引っ張らないで……! ま、魔法!?」


芹沢さんの指摘通り、モノクマに何度もぶつけているそのステッキの先は牧場で見た時のように不思議な光に包まれていた。ピンク色のどぎつい発光に、怪しげなエフェクト……LED電飾か何かなんだろうか。


シャラララ…

ウサミ「行きまちゅよー! ちんぷいちんぷい、ちんちんぷいぷーい! モノクマ、チョコになっちゃえーーーー!」

ピロリロリーン!


瞬間、辺りがすさまじい光に満ちた。
目を覆わねば立っていられないほどの眩しさと轟音。
目を覆う直前、最後にはあのステッキから発せられたものがモノクマを取り囲む様子が見えていた。
101 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:03:54.64 ID:6J07c1J10

光が収まるには数秒がかかった。
ゆっくりと手を除けて、その目を開ける。
その先には……


ウサミ「な、なんで……なんで効いてないんでちゅか?!」

モノクマ「“ムリョー・クーショ”……」

モノクマ「クックックッ……ボクの領域内でオマエの魔法が利くとでも思ったのかい? そんなわけあるかい! ボクの領域内では魔法の一切が無効化されるんだよ!」

愛依「ん……? これ、何がどうなってんの?」

摩美々「よくわかんないケド、ヒーローショーみたいなもんじゃないのー?」

果穂「じゃあウサミさんがヒーローで、モノクマさんが怪人なんですね!」

雛菜「どっちもどっちな見た目ですけどね〜?」

モノクマ「しかし生意気なやつめ、ボクに反抗するなんて、いい度胸だよね!」

ウサミ「は、はわわ……」

モノクマ「ボクに反抗できないように、その体に教え込んでやるー! 教育的指導の時間だぜ、ヒャッハー!」
102 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:04:46.23 ID:6J07c1J10

ポカポカポカポカポカポカポカポカ

ウサミ「いやー! やめてくだちゃい! お嫁に行けなくなっちゃいまちゅー!」

ポカポカポカポカポカポカポカポカ

モノクマ「うるさい! 抵抗するな! 形変えてまうぞコラー!」

ポカポカポカポカポカポカポカポカ

ウサミ「いやー! 往年のプロレスラーみたいな脅し文句のパワハラでちゅー!」

ポカポカポカポカポカポカポカポカ

モノクマ「オラ! どうだ! その痛みがボクの心の痛みなんだぞ!」

ポカポカポカポカポカポカポカポカ

ウサミ「いやー! いつ心が傷ついたっていうんでちゅかー!」

ポカポカポカポカポカポカポカポカ

モノクマ「うるさいうるさい! プロメッサを何度も食らう身にもなってみろー!」

ポカポカポカポカポカポカポカポカ

ウサミ「いやー! メランコリーやめてくだちゃいー!」

ポカポカポカポカポカポカポカポカ
103 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:05:32.42 ID:6J07c1J10

私たちを置いてけぼりにしてもみくちゃになるウサミとモノクマ。
やたら激しい喧嘩っぷりで砂煙が舞い上がり、その姿はだんだんと見えなくなっていく。

そして、その煙が晴れるころには……


「な、なんなんでちゅかこれ……!」


ウサミの持っていたステッキはぽっきりと折られ、その姿は白とピンクのツートンカラーに変えられてしまっていた。


モノクマ「今日からオマエの名前は【モノミ】! ボクのかわいい妹になるんだよ!」

モノミ「うぅ……しくしく……あちしの体、弄ばれちゃったでちゅ……」

104 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:06:17.77 ID:6J07c1J10

ルカ「おい、いつまでそんなくだらねぇ茶番やってんだよ! 私たちに用事がないんならもう行くぞ!」

モノクマ「おっと! 妹を愛でるあまりうっかり本題を忘れてしまっていた! ボクからオマエラにお話がございます!」

冬優子「お話、ですか?」

モノクマ「うぷぷぷ……もうこの出来損ないの妹から聞いたとは思うけど、オマエラは希望ヶ峰学園歌姫計画の参加者としてこの島に集められたんですね!」

モノミ「誰が妹でちゅか! あちしは認めた覚えなんかないでちゅよ!」

モノクマ「で、オマエラは実際その歌姫計画でどんなレッスンを受けられるのか疑問を抱いておられるかと思います!」

灯織「それは確かにそうですね……ウサミ、いやモノミからも事の仔細は聞けてないですし……」

モノミ「風野さん……わざわざ訂正しなくていいんでちゅよ……」

モノクマ「今回、その歌姫計画の中身をオマエラに教えてあげようと思いまして! ……まぁ、なんとなく察してるとは思うけどさ」

にちか「……あ! それってもしかして希望のカケラ?!」

モノクマ「ん?」

にちか「私たちで交流していると手に入るアイテムで、さっきも自己紹介で手に入ったやつ! これじゃないです?」

モノクマ「……うぷ、うぷぷぷぷ……」

にちか「な、なに……?」

モノクマ「違うよ、オマエラにやってもらうのはそんなしょーもないギャルゲ兼宝探しじゃなくて……」

105 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:07:08.64 ID:6J07c1J10




モノクマ「コロシアイだよ」




106 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:08:45.22 ID:6J07c1J10

(……は?)

モノクマ「仲間と交流を深めるなんて真逆真逆! 今オマエラの隣にいる、信頼関係ある大切な仲間をその手でぶっ殺してもらいまーす!」

にちか「な、何言って……?」

結華「こ、殺す……って言った? 三峰の聞き間違いじゃなくて?」

雛菜「へ〜〜〜?」

モノクマ「ボクぁね、成長というのは常に犠牲の上にあると思うんですよ。学力だって若い時の貴重な時間と青春とを犠牲にすることで手に入るわけですし、野球だって肩の寿命を犠牲にすることで初めて活躍できるんですよね!」

モノクマ「だからさ、仲間を犠牲にしてステージに立つとき……最高に輝くパフォーマンスができるんじゃないかなって!」


途中から耳が聞こえなくなった。いや、正確にはその音は届いている。
届いていても、それを咀嚼して脳が情報として処理するのを拒んでいる。
生きるだの死ぬだの、まして殺すだのなんて人生において自分から能動的にかかわってきた場面なんてまるでない。
それにこれからだってそんな場面が人生に現れることなんてないと、今この瞬間まで思っていた。


……それなのに、

107 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:10:21.74 ID:6J07c1J10

モノクマ「だから、仲間の誰かを殺してくれればその人は歌姫計画の成功例としてこの島からの脱出を許可しまーす!」

果穂「い、いっている意味がわからないのに……体がふるえて、とまりません……」

夏葉「果穂、私の後ろに隠れておいて」

果穂「は、はい……」

にちか「じょ、冗談……嘘に決まってますよね?」

モノクマ「冗談? 冗談って何さ、ボクがそんないい加減なことを言うと思うかい? ボクはクマ一倍責任には厳しいからね」

モノクマ「いいかい、この世界は殺すか殺されるかなんだよ。それはオマエラのいた芸能界だってそうでしょ? たった一つの椅子のために何十人何百人という人間が蹴落としあう。オマエラは無自覚のうちにコロシアイの輪廻にすでに組み込まれていたんだよ」


殺す殺されるなんて、フィクションの中の話だと思っていた。
そりゃ報道でたまに人の生き死にのニュースは見ることだってある。
でも、それはあくまでテレビの中の出来事で、私が直接関知することなんかじゃない。

なかったはずだ。
108 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:11:26.19 ID:6J07c1J10

モノクマ「殺し方の内容は問いません! 床下からめった刺し? シンプルに正面から金属バット? 見立て殺人なんかも乙だよね! 宙づりにしちゃえば相手が勝手に落下しするかもよ? 運任せの殺人なんかもエンタメ性抜群だよね!」


その口ぶりは異様なほどにコミカルで、本当に私の考える『殺害』の概念と同じなのか疑ってしまう。ただ、その中身を確かめると異常なまでの残虐さも兼ね備えていて、子供が包丁を振り回しているのを見た時のように背筋が凍り付く。

それはこの場に居合わせた全員がそうで、言葉を瞬間的に失ってしまっていた。額には妙に粘度のある汗が伝い、口元は固く結ばれる。焦点も定まらないままに、モノクマの言葉が嘘だと、悪質なドッキリだという証拠を求めていた。


ルカ「おい、ウサギ……どういうことなんだよ、これ」

モノミ「あ、あちしでちゅか……?」

雛菜「もともとこの島に連れてきたのってモノミちゃんでしたよね〜? 希望ヶ峰学園歌姫計画もモノミちゃんから聞いた話だったし〜」

モノミ「ち、違うんでちゅ……あちしは、ただミナサンを……」

あさひ「元からモノミはわたしたちにコロシアイをさせる気だったっすか?」

モノミ「そうじゃないんでちゅ! あちしは、あちしは……」

モノクマ「そうなんだよ、ボクのかわいい妹はボクのために手となり足となりオマエラを誑かせてここまで連れてきてくれたんだ! 上出来だよモノミ!」

モノミ「何言ってるんでちゅか! あちしとあんたに関係なんかないでちゅよ!」


目の前で交わされる会話の数々。
もう私は限界だった。完全に処理落ち。
情報を追うこともできず、口の中にたまる唾を飲み込むことしかできず立ち尽くす。

張り詰めた緊張感と息苦しさに膠着する場の中で、【彼女】だけが動き出した。
109 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:12:37.22 ID:6J07c1J10

ルカ「……ちっ、くだらねぇ。そんなに私たちが従う義理なんかないだろ」

にちか「……え?」

ルカ「トロいんだよ、283プロ。言いなりになってんじゃねえよ、それとも殺人欲求でも普段から持ってたのか?」

美琴「……」


それは唯一私たちの空気感と違う人。
足がコンクリートで固められたみたいに動けなくなってしまっていた私たちとは別に、彼女はモノクマに背を向け歩き出した。
不和を生み出すばかりだった彼女が今度は潮目になったのである。
彼女の挙げた声によって俄かに私の中にも変化が起きた。
単純な話だ、コロシアイに律儀に従う必要なんてない。
だって目の前にいるのはただのぬいぐるみ。こんな奴の命令なんて、従う理由のほうが見つからない。

……そう、思ったのもつかの間。


モノクマ「ん? あー、やっぱり跳ねっ返りはいつの時代もいるものですね。いいよいいよ、それも織り込み済み! コロシアイをしないって言うんなら……」
110 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:13:54.18 ID:6J07c1J10





モノクマ「無理やりにでも従わせてあげましょー!」





111 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:14:53.34 ID:6J07c1J10

そう言ってモノクマが右手を振り上げると、【絶望】が姿を現した。
私たちの目の前にあった巨大な石像は音を立てて崩れ落ち、それを外殻としていた巨大なロボット……というよりも殺戮兵器とも言うべき代物が姿を現した。


ルカ「な、なんだよ……これ……!」

モノクマ「こいつらはモノケモノ! このジャバウォック島の秩序に基づき、オマエラに断罪を下す最終審判だよ!」

モノクマ「コロシアイに従わないって言うんならこいつらと鬼ごっこをしてもらうことになるよ! まあ力加減がちょっと難しいからうっかり踏みつぶしちゃうかもしれないけどね!」

愛依「あ、あんなんにやられたら……うち大ケガしちゃうって……!」

冬優子「お、大ケガどころじゃないんじゃないかな……?」

透「……死ぬね、多分」

夏葉「果穂……大丈夫、私がついてるわ」

智代子「な、夏葉ちゃん……」

夏葉「……智代子も私の後ろに隠れていなさい」

モノクマ「で? コロシアイがなんだって?」

ルカ「……くそっ!」


ルカさんもモノケモノたちを前にしては、悔しそうに握りこんだその拳を宙で振ることしかできない。
八方ふさがり。文字通りの状況下に押し込まれた私たちはこみあげてくる唾を嚥下することしかできないでいた。
112 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:16:17.90 ID:6J07c1J10

モノクマ「ま、ボクも鬼じゃないんでね。今この場で誰かを殺せなんてことは言いませんわな、ここで生活をしていて、出たくなったらチョイとばかし殺してちょ!」

夏葉「……悪趣味が過ぎるわ」

千雪「どうしてこんなことになってしまったのかしら……」

モノクマ「どうして? その答えは何よりもオマエラが一番詳しく知ってるんじゃないの?」

(……え?)

モノクマ「ま、いいや! とりあえずはオマエラに言っておくべきことは大体全部伝えたので……【最後の催し】に移ろうか!」

冬優子「最後の催し……?」

あさひ「何するっすか?」

モノクマ「オマエラの、コロシアイ南国生活の希望に満ちた門出、いや船出を祝しまして……どでかい【花火】を打ち上げさせていただきます!」

雛菜「やは〜! 雛菜花火好き〜!」

智代子「ぜ、絶対雛菜ちゃんが思ってるような花火じゃないよ?!」

雛菜「え〜? そうなんですか〜?」

モノクマ「一度といわず何度でも! たまや〜! かぎや〜! 絶望や〜〜〜〜〜〜〜〜!」
113 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:17:32.25 ID:6J07c1J10
-------------------------------------------------
モノクマが右手を掲げたかと思うと、すぐにその惨劇は始まった。
モノケモノのうちの一体、足にマシンガンを携えた鳥は即座にワイヤーを射出!
私のすぐ隣、奥にいたモノミをとらえた。


ダダダダダダ
ダダダダダダ
ダダダダダダ
ダダダダダダ


そして、そこから数秒。いや数分? 数時間だったかもしれない。
すぐ真横を掠め通っていく弾丸の雨に生命の危機を本能で感じ取った私は、時間感覚というものを壊してしまったのだ。
永遠にも感じる刹那、その果てには……



モノミの姿はかけらほども残らず、穴だらけのぼろきれのようなリボンだけが宙を舞っていた。



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114 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:18:52.04 ID:6J07c1J10

にちか「……え?」


千雪「な、何してるの……? も、モノミちゃんは……妹さんなんじゃ……」

モノクマ「ん? あー、そういえばそんなこと言ったばっかだったか! まあいいよ、そんなの一時的な設定に過ぎないんだし!」

にちか「た、確かについさっき思いついたようなものだったけど……でも、なんでこんな一方的に、突然に……!?」


ものの数秒前まで横に立っていたものが、消え失せている。
これまで感じたことのない脅威が、私たちに身のひりつきを与えた。
感覚が嫌に研ぎ澄まされて、肌を伝う汗が痛い。


モノクマ「はぁ……これってさ、ボクの優しさなんだよね」

灯織「ど、どこが優しさなんですか……今のがもし人だったら……一方的な虐殺ですよ!」

モノクマ「それの何が悪いの?」

灯織「!?」

モノクマ「生きていくってのはそういうことじゃん。一方的に自分より弱い存在を虐げて、殺して、自分の血肉に変えていく。ただオマエラはそれから目を背けて自分たちは平和主義者だって謳ってるだけ。言葉では何とでもいえるけどね、オマエラの血がまっさらなわけないんだよ」

摩美々「はぁ? コロシアイとか処刑とか、生きるために別に必要じゃないし論点ずれてないー?」

モノクマ「ズレてないよ! だってこの島で生きていくにはまず、『殺す』ことが大事なんだからさ! 殺される前に殺す、それってサバイバルの基本でしょ!?」

愛依「う、うち……そんなサバイバルなんか、する気……」

美琴「……生きるために、殺す」

モノクマ「オマエラみたいな現代の気にほだされた腑抜けの令和世代がコロシアイに挑むにあたって、死とはどういうものなのかを改めて実感してもらわないとじゃん? モノミには身を挺してそれを実演してもらったわけ! ああ、なんと心優しきクマとウサギなのでしょう!」

結華「いやいや、そんな倒錯した優しさ……流石に受け入れられないっていうか!」

恋鐘「少なくともモノミはそんなつもりはなかったはずたい! モノクマの言うことなんか信用ならんよ!」

モノクマ「まあオマエラが信用しようがしまいが関係ないんだけどね、すぐにその身をもって理解することになるさ。この島で生きていくことの難しさをね!」

にちか「……そ、それって、どういう意味……?」


聞いたことをすぐに後悔した。だって、こんなのモノクマに言われなくたって分かり切ってる結論。きっと全員が思いついている結論。
ただそれを口にされて、目の前に提示されてしまうと、正気ではいられなくなる、あの結論。

それを、私はみんなの前で尋ねてしまったんだ。
115 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:19:42.13 ID:6J07c1J10





「オマエラの周りの誰かが、オマエを殺すんだよ」





116 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:21:29.67 ID:6J07c1J10

にちか「……っ!」


それしか解答がないことは、分かり切っていた。
みんながみんな、わかっていた。
ただ、それを言葉にされると、これまでにない衝撃がずしんとその身にのしかかり、視界は帳が降りたかのように暗くなってしまうのだ。
私たちは【疑心暗鬼の暗礁】に乗り上げたのである。


モノクマ「隣で涼しい顔してるあの子も、動揺しているように見えるその子も、腹の内はわかんないよね! もしかしたらオマエをどう殺すか考えている真っ最中なのかも?」

灯織「そ、そんなこと……あるわけありません!」

モノクマ「どうしてそう言い切れるの? オマエってばサイコメトラーだったりするわけ?」

モノクマ「いいかい? どれだけオマエが相手のことを好きだとしても、相手のことを真に理解することはできないんだ。反対に相手だってそう、オマエがいくら信じても相手も信じてくれるかどうかはわからない!」


私たちは顔を見合わせていた。
これまで事務所で毎日のように見てきた顔、顔、顔。
テレビの中で追っていた憧れにも近しい顔、顔、顔。
そのどれもが表情を取ってつけたようにのっぺりとしたものに見えた。
この人は今何を考えているんだろう。これから何をしようとしているんだろう。

……そんな猜疑心の芽が顔を出すには、そう時間はかからなかった。
117 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:22:36.23 ID:6J07c1J10

モノクマ「それでも仲良しこよしを貫くって言うんならお好きにどうぞ! ま、ボクとこのモノケモノ達が何をするのかは保証できないけどね!」

ルカ「……ちっ、ご丁寧に恐喝までしやがって」

果穂「あ、あたし……どうなっちゃうんですか……?」

夏葉「果穂、大丈夫……大丈夫よ……」

あさひ「……」

透「……これ、もしかしなくても……やばいやつ」

雛菜「あは〜……」

モノクマ「さあさ今から始まるのは希望ヶ峰学園の秘蔵も秘蔵の極秘プロジェクト・歌姫計画〜〜〜〜! 仲間を手にかけ、踏み台にして! 新時代の希望となる歌姫は誰になるのか、乞うご期待!」

モノクマ「アーッハッハッハッハ!」


モノクマの笑い声に、遠くに打ち寄せる波音だけが響いた。
頭がやけに重たくなっていた。そこに詰め込まれていたのは、これまでの人生を、現実を生きてきた脳漿。
ただ、ものの数時間と経たないうちにその中には南国という非現実、拉致監禁という非現実、コロシアイという非現実、モノクマという非現実、命の危機という非現実……
根限り挙げてもきりのないほどの非現実が図々しくも堂々と詰め込まれてしまった。

揺らぎ、揺れる、世界。
その世界から振り落とされないように、輪からはみ出さないように、誰にも殺されないように。
この島では私たちは、縋ることしかできないんだ。
118 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:23:24.46 ID:6J07c1J10





____自分の【命】そのものに。





119 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:24:32.17 ID:6J07c1J10
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PROLOGUE

VOY@GER
〜超高校級の希望たちの希望に満ちた船出〜

〜そして絶望的な座礁〜

END

残り生存者数
16人

To be continued…

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120 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/19(金) 23:25:39.49 ID:6J07c1J10

というわけでプロローグ終わりまで投稿し終わりました。
次回更新から安価を使用する自由行動を含む1章(非)日常編パートが始まります。
どうかお付き合いください。

次回更新は11/21の夜を予定しています。
よろしくお願いします。
121 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:44:59.53 ID:Ojbp8S+g0
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CHAPTER 01

MIDNIGHTのせいにして

(非)日常編


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122 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:46:02.09 ID:Ojbp8S+g0

煌々と輝く満月の月光の元、沈黙だけが流れた。
伏目がちに猜疑の視線を送る人、仲間をかばうようにして背を向ける人、狼狽えた様子で口をパカパカさせる人……
その反応はまちまちだが、恐怖と不安というマイナス感情の鎖には全員が全員縛り上げられている。

気づけば全員顔を見合わせていた。
このコロシアイという言葉を前にして考えなかったわけではない。
殺し『あう』ということは、この場にいる全員が狙うだけでなく、狙われる側にもなるということ。
今私がこうしている間にも、誰かが私の命を狙っているかもしれない。


「……死にたくない」


誰かがそう言葉を零すまでにそう時間はかからなかったし、誰もそれを咎めようとはしなかった。
ここにいる全員が同じことを思い、その感情を発露しかけていたから。

重く、苦しい空気。
薄靄がかったような空気感の中で、手足を動かすのが辛い。
ずっと胸のあたりが痛くて、息も浅くて。


「……」


居心地の悪い沈黙だけが、続いていた。




___その膠着を破ったのは、ナイフのように鋭い言葉だった。
123 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:46:55.53 ID:Ojbp8S+g0





ルカ「言っておくけど……私は殺れるからな」





124 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:48:52.97 ID:Ojbp8S+g0

押し黙る私たちを前に、伸びでもするように何気ない様子で宣言するルカさん。その口元には笑みすら滲んでいた。
これを好機とでも捉えているかのように。


にちか「……!?」

美琴「ルカ……?」

ルカ「私はほかの連中と違って283プロの仲良しのグループでもない。ここから出ていくために他の誰かを手にかけるなんてハードルが一番低いのは私だ」


ルカさんが言っていることは真理だ。
もし万が一にでも私たちが他の誰かを殺して出ていこうと決意したとしても、私たちには同じ事務所の仲間、長い時間を共に過ごした仲間という温情があって、それが最期の防波堤の役割を果たすことだろう。ルカさんには、【それ】がない。
むしろ彼女には美琴さんとの間の諍いという動機すら存在している。
ルカさんの言葉は、異様な質量をもっていた。

125 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:49:37.36 ID:Ojbp8S+g0

美琴「……ルカにはできないよ」

ルカ「ハッ! 美琴に私の何が分かるんだよ!」

美琴「……」

ルカ「むしろ美琴は自分自身の心配をした方がいいんじゃねえのか? 私からは勿論、事務所での新参なんて殺す上でほかの連中からしても格好の的だろ」

夏葉「そ、そんなわけないじゃない……! 誰かを殺して脱出なんて方法、私たちが選ぶはずがないわ!」

ルカ「……何を知った気になってるのか知らねえけどよ、モノクマも言ってたように他人の気持ちなんか完全に推し量ることは無理だろ」

ルカさんは含みを持たせた言葉を放ちながら、美琴さんの方を見やった。それに美琴さんは視線をそらして答える。

ルカ「さっきの『死にたくない』って言葉……それって要は誰かはコロシアイに参加してしまうかもしれないっていう疑いだろ? よくもそんなにお互い信頼してますって面出来るもんだな」

ルカ「もういいな? 私はこんなところで立ち止まってる時間なんかないんだよ、じゃあな283プロ」


ルカさんは捨て台詞のような言葉を吐いて、一人公園から出て行ってしまった。

ルカさんの発言を否定することは誰もできず。
だってそれは本当のことだから。

……美琴さんが誰かを殺すなんてことは天地がひっくり返ってもあり得ないと思う。
ただそれをほかのユニットの全員にも言えるかというと、私には自信がない。



私だって____死にたくはない。



126 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:51:05.97 ID:Ojbp8S+g0

そして、公園に残された私たちは。


灯織「……そうはさせません」

千雪「灯織ちゃん……?」

にちか「うそ……風野さん……?」


あの、気弱な女の子のはずの風野さん……
その右手は、爪が食い込むまでに固く強く握りこまれていた。
まるで何かの怒りに打ち震えるかのように、彼女からはこれまでに感じたことのないような熱を感じる。


灯織「斑鳩さんのご指摘は間違いではないと思います。今この状況で、お互いを完全に信用することは難しい……それを否定することは欺瞞だと思います」

愛依「ぎ、ギマン……?」

冬優子「……本当の気持ちで向き合ってないって意味なんじゃないかな」

灯織「でも、だからといって信じることをやめてしまってはいけない……疑いながらも信じる、信じながらも疑う……私たちに今求められているのは、そういう付き合い方なんじゃないかと……そう思う次第です」

摩美々「信頼と疑念は両立できる……疑念にいつまでも囚われているようじゃダメ……そういうコトー?」

結華「ひおりん……すごいね、そんなこと思ってても、なかなか言えない……言う勇気なんか持てないよ」

灯織「以前、私も……誰も信用できないような【疑心暗鬼の状態】に陥ったことがありました。その時、私は大切なものをいくつも失って……そんな悲しみを、ここでも背負う訳にはいかないんです」

雛菜「ん〜? それってなんのこと〜?」

灯織「……それは、言えませんが……」

灯織「それでも、今こうして疑念だけをぶつけあってにらみ合っている状況のままではいけないのは確かだと思うんです」


風野さんは、市川さんの質問には口を噤んだ。
でも、風野さんの発した言葉は深く深くに突き刺さり、完全に凍り付いていた私たちの心臓を再びよみがえらせるには十分たるものだった。
127 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:52:48.84 ID:Ojbp8S+g0

千雪「私……灯織ちゃんの言うとおりだと思うな。私だって、もしかしたらって気持ちを持ってしまう……この状況だからこそ、みんなをもっと信じてみようと思う」

あさひ「よくわかんないっすけど……このままじっとしてても何も変わらないっすよね?」

恋鐘「そうばい! こげん顔していつまでも睨めっこしとったら疲れてしまうたい!」

透「考えるな、感じろ。……ってやつ?」

愛依「さっすが透ちゃん! うちもそれにサンセー!」

冬優子「あはは……透ちゃんの言葉があってるかはちょっとわからないけど、ふゆも皆を今一度信じなおすってことには賛成です」

灯織「皆さん……」


再び全身に血が通う。
膠着した疑心暗鬼の中で活動を停止していた心臓は痛いくらいに鼓動を速めていき、視界も徐々に元の明るさを取り戻してきた。


夏葉「何もモノクマの言うことに従うしか道がないわけではないわ、モノケモノは脅威だけれど、あのロボットを相手どらないで済む方法もあるかもしれない」

智代子「うん! この島の外の人たちだって動いてくれるかもしれないよね!」

果穂「はい! 困ったときには、ヒーローがたすけにきてくれます!」
128 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:53:45.72 ID:Ojbp8S+g0

結華「というか普通に考えて……こんなに一気に事務所のアイドルが消えたら、大騒ぎだよね?」

摩美々「プロデューサーなら今頃各所に通報してそうなもんだよねー」

結華「あはは、Pたん今頃血相変えて電話しまくってるんじゃない?」

灯織「並大抵の事件ではないはずです。きっと……助けはきますよ」

にちか「じゃあ今はとにかく生き残らなくちゃって感じです?」

愛依「かなー、まあさっきルカちゃんがかなり危なげなことは言ってたけど……」

美琴「……ルカのことは、私がどうにかしてみる」

にちか「美琴さん!」

美琴「大丈夫、今日明日にすぐ動きはしない……はずだから」

(ほ、ほんとかな……?)

あさひ「じゃ、とりあえずここを出るっすよ!」

千雪「もともとモノミちゃんが用意していたように、この島には生活が行えるだけの設備はあるから……いったんはコテージに戻って体制を整えるのがいいかな」

冬優子「一人ひとりに専用の個室がありましたよね……ふゆもそれがいいと思います」

結華「まあそうしましょうかー、今の状況が悪い夢っていう可能性もないわけじゃないわけじゃないだろうし!」

摩美々「ふぁぁぁ……まあ、普通に結構遅い時間で眠たい感じだしぃ……」

恋鐘「うちもなんだかクタクタばい! 一気にいろんなことが起きすぎたとね〜……」

にちか「私もです……キャパオーバーって感じで!」


ひとまず私たちは公園を後にして、それぞれのコテージへと戻った。
何も今の状況を受け入れたわけじゃない、今は自分たちの身を安全に保つことが大切。モノクマに逆らうことも、事を荒立てることも得策じゃない。
それよりも、これから先起こるかもしれない何かのために体力と精神力とを取り戻す必要がある。
129 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:55:36.68 ID:Ojbp8S+g0
-------------------------------------------------
【にちかのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


「うーわ……なにこれ、ヤバ! ……めっっちゃくちゃ豪華なんだけど?!」


待ち構えていたのは高級ホテルも裸足で逃げ出すような最新設備に広々空間を兼ね備えた、『快適』の二文字そのもの。
クイーンサイズのベッドは手が沈むようにふかふかで、風呂とトイレはしっかり別々。手足を伸ばせるだけのバスタブまである。


「……ちょっとだけ、帰りたくないかも」


隙間風吹き込むごく狭コンクリアパート。
寝っ転がっているだけで小言を言われる我が家に比べると数倍、数十倍は居心地がいいだろう。




……ただ一つのものを除いてだけど。



130 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:56:46.56 ID:Ojbp8S+g0

「なーんでここにもあるかなぁ……カメラ」


普通ホテルの部屋ってもっとプライバシーとか厳しいものでしょ?
部屋には堂々と我が物顔した監視カメラ。寝ようにもこいつが寝顔を撮ろうとしているからなかなか気が休まらない。

……やっぱりここは、異常だ。


「……うん、やっぱり出なくちゃだよ。こんなところにいていいわけない……絶対、脱出しないと!」


俄かに心を持っていかれかけた快適にいったんは蓋をして、ベッドの上に倒れこんだ。
音もたてずに体はマットの中に沈んでいき、肌触りのやけにいいシーツは太陽の優しい香りを鼻孔に届けた。


ただ、今の私の状況にそんな優しさなんて一抹も残っちゃいない。
私の眼前にあるのは底知れない恐怖。黒々としてぶくぶくと太った醜悪な何かが聳え立って、どいてくれない。
感情をせき止めるようなそれが、やりようのないモヤモヤとした不安ばかりを募らせる。
これから先、どうなってしまうんだろう。もし今目を閉じてしまったら、次に目を開けた時が私の最後になってしまうんだろうか。
考えていたらきりがない、だけど思考はめぐる。


ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。


思考は二転三転四転…………無限那由他。
無限にも思える一瞬の時間に、思考はメビウスの輪を描いて転がっていき……




私は意識を手放した。
131 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:58:16.55 ID:Ojbp8S+g0
-------------------------------------------------
【ビーチ】


「……来たかよ」

「……本気じゃないでしょ? 殺せる、なんて」

「ハッ! 言ったろ、人の気持ちなんか他人にわかるわけない」

「……わかるよ」

「……はぁ?」

「……ルカの気持ちなら、わかる」

「……」

「……同じユニットだったから。ルカと過ごした時間ならだれにも負けない、ルカの親にだって負けない。だから、ルカが今……すごく怯えていることだって」

「…………くくっ」

「……ルカ?」

「何勘違いしてるんだよ……美琴! お前が私の気持ちをわかってる? そんなわけないだろ……お前は誰よりも私に近くて、誰よりも私と一緒の時間を長く過ごして……」
132 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:59:02.85 ID:Ojbp8S+g0





「それでも私のことを知ろうともしなかったクソッタレだよ」






133 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 20:59:49.88 ID:Ojbp8S+g0

「……!」

「……ほかの連中に何を言われたのかは知らねえ。けど、私が美琴のことを信用して動くと思うなよ」

「……やっぱり、そうなんだ」

「お互い様だろ、美琴だって私のことを信用なんかしていない。丸わかりなんだよ、そういうの」

「……時間の無駄だったみたい」

「だな、さっさと消えろ」

「……それじゃ、行くから」

ザッザッ




「……」




「……くそっ!」

「違うだろ……違うだろ……! 私は……私は……美琴を信用しないんじゃなくて……」

「美琴に……美琴に……ただ……ただ……!」
134 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:01:15.84 ID:Ojbp8S+g0
____

_______

__________

=========
≪island life:day 2≫
=========

【にちかのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も前回気分で張り切っていきましょう〜!』


……夢では、なかった。
目を開けると部屋中に差し込むまばゆいばかりの陽光。部屋に取り付けられた両腕を開いても足らないほどの大きな窓、その廂の隙間かららしい。
それにしても無駄にセンスがいい、都会にいれば三歩歩けばデザイナーズ物件なんかにかち当たるものだけど、そういうところにあっても見劣りしない立派な窓。
これがこんな状況下じゃなければ最高の目覚めだったんだけど。


「……さいっっあく」

135 :誤字×前回気分 〇全開気分 ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:02:22.53 ID:Ojbp8S+g0

頭をもたげながら起き上がった。
濁声のアナウンスで目を覚ました今朝の目覚めは最悪。
瞼が漬物石のように重たく、なんだか手足もけだるさを感じるけどこれはきっと気のせい。というか精神由来。

あんなことがあった後でぐーすかできるはずなんかない。
数時間おきに悪夢で目を覚ました長い長い夜の果て、出来上がったのがこのボロボロボディ。


「……はぁ」


したくもないのにインド象が吐くみたいなバカでかい溜息を吐いた。
『憂鬱』なんて漢字書けやしないけど、頭の中はその二文字でいっぱい。
動くのもけだるさを感じるけど、そうこうしてもいられない。
昨日の今日で美琴さんがルカさんを説得に行ったはず、その成果を確認しなきゃだし、今の状況は部屋に閉じこもったとてどうにかなるものでもない。

イヤイヤ体を引き起こして顔を洗い、歯を磨いて。
そこでようやく部屋を出た。
136 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:03:43.87 ID:Ojbp8S+g0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】


ひとまずは朝ご飯を口に入れたい。
寝ている間の数時間のうちに胃袋の中はすっかり空っぽになっており、気が付けば私の足はレストランに踏み入っていた。

そしてそれは私以外の人たちも一緒だったらしく、そこにはルカさん以外の全員が待ち構えているではないか。
特に芹沢さんなんかはすでに食器の上に食パンを何枚も載せていて、脇にはフルーツも山積み。
それを愛依さんが宥めてペースを調整しながら餌付けしている、といった様子。


にちか「これって……?」

あさひ「朝起きたらもうあったんっすよ! にちかちゃんも食べるっす! 美味しいっすよ!」

愛依「アハハ、あさひちゃん落ち着いて食べないとのどに詰まるよ〜?」

冬優子「それもそうだけど……みんなで一緒にいただきますしてからにしよっか?」

あさひ「え〜? もうお腹ペコペコっすよ」

灯織「一番最初に来たのは私なんですが……その時にはすでにこちらの朝食は人数分用意されていました。ホテルに他の人間はいないはずなんですが……」

千雪「昨日も確認したもんね……どういうことなのかな」

にちか「えぇ……そんなもの食べて大丈夫です?」

摩美々「まぁ……毒見は済んでるしいいんじゃないー?」

あさひ「美味しいっす!」

冬優子「……はぁ」
137 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:04:50.84 ID:Ojbp8S+g0

ガツガツという擬音を恣にする芹沢さんを他所に私は美琴さんの隣に腰かけた。
美琴さんはここにきても必要最低限以上のものは取るつもりはないみたい。栄養価の高いバナナだけで済ませる様子。


にちか「美琴さん……その、どうでした……?」

美琴「……ルカのこと?」

にちか「は、はい……公園では、結構なこと言ってましたけど……」

美琴「……説得はしようとしたんだけどね」

にちか「……そ、そうですか」


美琴さんは気を落とすというよりは、前にルカさんのことを訪ねた時よりも苛立った様子だった。
昨夜二人の間に何があったのかは想像するに足る。

……これ以上触れないほうがよさそう。
138 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:06:38.47 ID:Ojbp8S+g0

結華「はいはい! とりあえずはせっかくみんな集まってるんだし、今後のことを話し合いませんか?!」

摩美々「約一名足りてないケドねー」

美琴「……ごめんね」

恋鐘「しょうがなかよ、気落とさんといて! こんな状況やけん、ルカだって混乱してしもうとるだけばい!」

千雪「朝ご飯はちゃんと食べてるのかなぁ……」

雛菜「で、今後のことってなんなんですか〜?」

冬優子「ふゆたちがコロシアイをせずにこの島からどうやって脱出するか……だよね、結華ちゃん」

夏葉「空港の航空機が使えればよかったのだけれど……あいにくあれはハリボテよ」

智代子「イカダで脱出ってわけにもいかないよね……にちかちゃんも前モノミに叱られちゃってたし」

摩美々「というかそんな目立つ方法じゃモノケモノが飛んでくるでしょー」

美琴「自分から能動的には出られそうにないみたい」

結華「そうなのですよ! ……となると外の助けを待つしかないわけで」

果穂「けいさつの人は、来てくれないんですか?」

夏葉「来るかもしれないけど、ここは海の上。いつに助けが来るのかは正直見当もつかないわね……」

結華「そう、ここからは何日かかるかわからない耐久戦!」




結華「……なので、どうでしょう! 毎朝レストランで揃って朝ご飯を食べるのを習慣にしてみては!」

139 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:07:32.41 ID:Ojbp8S+g0

透「あー、いいんじゃない。それ」

千雪「毎朝の習慣にしておけば生活リズムを作ることにもつながるし、私も賛成に一票!」

果穂「はい! みなさんでそろって朝ご飯を食べたほうがきっとおいしいですし、あたしも賛成です!」

結華「それもあるし、情報共有の場にもなりそうじゃない? ほら、脱出のためには協力が大事だよね!」

灯織「なるほど、定例報告会を兼ねているんですね」

愛依「ちゃ、ちゃんと起きれるかな〜……うち」

冬優子「愛依ちゃんはふゆが起こしに行くから大丈夫だよ♡」

雛菜「あは〜、それって自由参加ですか〜?」

結華「まあ強制はしないけど、できる限りはひななんにも参加してほしいかも!」

雛菜「はい〜、それじゃほどほどに参加します〜」


結華さんからの提案で毎朝朝ご飯を全員で食べることが決定。
正直なところ、まだ事務所には完全に馴染めてるわけじゃないし、ちょっとだけ気後れするところもあるんだけど……この状況下じゃ言ってても仕方ないか。
私も毎朝ちゃんと集まるようにはしよう。


美琴「……どうしたの?」

にちか「い、いえ……!」


それに、毎朝美琴さんと朝ご飯が食べられるなんてちょっとラッキーじゃない……?!
140 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:12:24.77 ID:Ojbp8S+g0
-------------------------------------------------
【にちかのコテージ】


朝ご飯を食べ終えた私は一旦自分の部屋に戻ってきた。

(……ふぅ、やけにおいしかったからついつい食べすぎちゃったかも)

(これ、消化しとかなきゃだなー……)


時計に目をやった。
まだ日も登ったばかりで一日も始まったばかり。
脱出を待つにしても時間は有り余って仕方ない。

「ここにいても仕方ないって感じだよね……よし!」

ここにいる限りはレッスンもお仕事もできないし、今やるべきことはヒントを探すこと!
じっとしてるだけじゃ退屈だしぶくぶく太っちゃうって!

とりあえずは行動あるのみ、それに尽きる!


【自由行動開始】

□■□■□■□■□■□■□■□■
☆自由行動について

お久しぶりです、イントロダクションの時間でございます。
さて、いよいよ(非)日常編の花形・自由行動でございますね。
自由行動とはコロシアイだとか物騒なことは俄かに忘れ、つかの間の平和的な交友を堪能することができる、いわばオアシス!
存分に親交を深めてくださいませ。
今回もアイドルの皆さまとの間には【親愛度レベル】が存在しております。
こちらはアイドルの方とお会いするたびに+1、プレゼントをお渡しすれば+0.5、プレゼントをお渡しして喜んでいただけたらさらに+0.5される仲良しのパラメータでございます。
親愛度レベルを上げて見事MAXである12に到達させると、その仲の深さを象徴するアイテムとともにスキルを獲得することができるのです。

ちなみにプレゼントはコンマの数値に応じてアイテムを排出するモノモノヤシーン、そしてほしいものを選んで購入できる自動販売機の二つで獲得可能です。
自動販売機には他にも便利な商品がいくつかございますので、ぜひご確認ください。

更に今回は親愛度レベルの一定の数値ごとに【希望のカケラ】を獲得することができます。
こちらは一定個数に応じて別種のスキルと交換できるアイテムになります。
自動販売機で交換できるほか、????開始前にも交換可能です。

え? この伏字、でございますか……?
はて……?

□■□■□■□■□■□■□■□■

【現在のモノクマメダル枚数…23枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

1.交流する【人物指定安価】※ルカを除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:29:11.42 ID:gsRmRnpl0
2
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:29:12.70 ID:lk6lUyP+0
2
143 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:38:27.24 ID:Ojbp8S+g0
2 選択

【第1の島:ビーチ】


手持ち無沙汰になってしまった空き時間をつぶすために、島を散歩していた。
何かに誘われるように、と言ったら大げさだけど……私の足は自然とこの島にやってきたときに初めに立っていたあのビーチに引き寄せられていた。

ザザーン……


「はぁ……なんか癒されるなぁ……」


生まれも育ちも町中で、波音なんかまともに聞いて育ってきちゃいないけど、これは本能的なものなんだろう。
波風と波音に身をゆだねて、ぼぅ……っとあたりを見渡すと。


「うげっ……なにこれ……趣味悪ッ……!」


ビーチに立つヤシの木の一つ、その幹には妙にゴテゴテした機械。
これは……どうやらガチャガチャみたい。

□■□■□■□■□■□■□■□■
☆モノモノヤシーンについて

交友でほかのアイドルの皆様にお渡しするアイテムにお困りのそこのあなた!
是非ともモノモノヤシーンに挑戦ください!
こちらの中身は本家『スーパーダンガンロンパ2』のプレゼントと中身を共有しております。
プレゼント番号(01〜100)のアイテムがコンマの値に応じて排出される仕組みとなっております。

※プレゼント番号は101以降も本家では存在しておりますが、省略しております。予めご了承ください。
□■□■□■□■□■□■□■□■

ふーん、ここで手に入ったやつは自由に使っていい感じなんだ……
もしかして、脱出に何か使えたりするのかな?


「……やるだけ、やってみる……?」

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…23枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

1.モノモノヤシーンを回してみる【枚数指定安価】
2.やっぱりやめる

↓1
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:46:53.53 ID:lk6lUyP+0
1で13枚
145 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 21:49:38.65 ID:Ojbp8S+g0
1 選択

ま、物は試しってことで。
それにいいアイテムが出て、脱出の役に立ったら美琴さんに褒めてもらっちゃったりして……!?


「よーし、いっちょ回しちゃうぞ〜!」


【コンマ判定を行います】
【このレスより直下13回連続でコンマ判定を行い数値に応じたアイテムを獲得します】

↓1~13
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:50:05.94 ID:gsRmRnpl0
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/21(日) 21:51:50.61 ID:gykdOuzQ0
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:53:38.28 ID:gsRmRnpl0
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:54:46.01 ID:k033wRB1O
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:56:12.44 ID:gsRmRnpl0
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:58:59.33 ID:lk6lUyP+0
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 21:59:28.54 ID:k033wRB1O
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:05:47.83 ID:lk6lUyP+0
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:09:57.59 ID:k033wRB1O
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:10:20.19 ID:lk6lUyP+0
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:11:08.37 ID:ysgKiWmV0
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:12:58.54 ID:lk6lUyP+0
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:17:44.58 ID:gsRmRnpl0
159 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 22:23:31.23 ID:Ojbp8S+g0

【ミネラルウォーター】
【ヤシの実】
【半分安全靴】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【キルリアンカメラ】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【トイカメラ】
【表裏ウクレレ】
【バール】
を手に入れました!

「うわっ……なんか色々出てきた……けど」

「……どれも使えなさそーだな……」


ひとまず、捨てるわけにもいかないし持ち帰ろうか……
誰かありがたがってくれる人とかいたり……いないか……


「まあ、まだ時間はあるし……これの使い道でも探そうか……」

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…10枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

1.交流する【人物指定安価】※ルカを除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:24:49.71 ID:ysgKiWmV0
1 美琴
161 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 22:30:28.73 ID:Ojbp8S+g0
1 美琴選択

【第1の島:空港】


脱出への糸口を探すための時間。とはいえもうほとんど調べは尽くしたわけで。
結局のところこの時間は誰と過ごすか、の大切な時間になっている。

……それなら。


にちか「美琴さーーーん!」

美琴「……にちかちゃん?」

にちか「あ、あの……! い、一緒に調査、しちゃってもいいですか……?」

美琴「……いいけど、どうしたの? やけに疲れてるみたいだけど」

にちか「そ、そりゃもう美琴さんをさが___

(い、いやいや! 言えない言えない……美琴さんを探して島を三週半したなんて……重すぎでしょ!)

美琴「……? まあ、とりあえず……一緒に島を見て回ろうか」

にちか「は、はい!」


美琴さんと一緒に島を探索した……

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ミネラルウォーター】
【ヤシの実】
【半分安全靴】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【キルリアンカメラ】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【トイカメラ】
【表裏ウクレレ】
【バール】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:31:32.96 ID:gsRmRnpl0
1 ミネラルウォーター
163 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 22:39:52.18 ID:Ojbp8S+g0

【ミネラルウォーター】を渡した……


にちか「み、美琴さん……これ、どうぞ!」

美琴「水……? どうして?」

にちか「美琴さん、つい自分の体をおろそかにしてしまいがちなので……えっと、水分補給とか、忘れないようにしてくださいね!」

美琴「気が利くね、ありがとう」

キュッ ゴク……ゴク……

にちか「もしかして……今もずっと飲むの忘れてた感じですか?」

美琴「朝ご飯以来だから……3時間くらいかな」

にちか「あんまり飲まなさすぎだとラクダになっちゃいますよ……」

美琴「ふふ……面白いね、にちかちゃん」

(やった……! 美琴さんに喜んでもらえたーーーーーーー!!)

【PERFECT COMMUNICATION】

【親愛度レベルがいつもより多めに上昇します】

-------------------------------------------------

……しかし、こんな状況になっても美琴さんは冷静だな。
いつも通りクールで端正で整った横顔……思わず見惚れてしまいそう……


美琴「……どうかした?」

にちか「あ、いえ! なんでもです! えっと、その……美琴さん、この島に来てから何か困ってることとかないです?」

美琴「困ってること……? そうだね……」

美琴「でも、この島は衣食住はどれも揃っていて……暮らす上で不便は感じないかも」

にちか「で、ですよねー! 私も、元々の暮らしなんかよりよっぽどランクが高い感じで……いっそここに永住しちゃおうかなみたいな!」

美琴「永住は……流石に困るかな。私は早く戻って、レッスンの後れも取り返したいし」

にちか「そ、そうですよねー! ここじゃトレーナーさんもいませんし、新しい振り付けも教えてもらえませんもんね!」

美琴「うん……練習も、できなくはないけどね」

にちか「そっか……そうですよね……」

(やっぱり美琴さんは違うな……)

(私みたいに生活がどうこうじゃなくて、アイドルとしての活動とかを懸念してるんだもん)

(……何か私が美琴さんのためにしてあげられることはないかな?)


1.き、基礎の練習ならお付き合いできますよ!
2.う、歌の練習とかどうですかね……!
3.自由安価

↓1
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 22:55:24.95 ID:gsRmRnpl0
2
165 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:02:24.90 ID:Ojbp8S+g0
2 選択

にちか「う、歌の練習とかどうですかね……! それなら、私もお付き合いできますよ……!」

美琴「……? うん、今度にちかちゃんとも一緒に合わせようか」

にちか「は、はい……こ、今度っていうのは……?」

美琴「ううん、ごめん……昨日もみんなと別れてから自分のコテージで自主練はしてたから」

にちか「え」

美琴「コテージは窓を閉めれば防音性も高そうだったし、特に夜はやることもなかったから」

(う、噓でしょ……? 昨日のあの後に自主練……?)

(さ、流石すぎる……)

にちか「み、美琴さん……プロ意識の高さ、流石です……!」

美琴「別にそんなことじゃ……一日でも練習を欠くと、失ってしまうから」

(う……私、そんなこと考えもしなかった……)

美琴「私はいつでも大丈夫だから、歌のあわせも都合がいいタイミングを教えてくれるかな」

にちか「い、今からでも大丈夫です! わ、私……!」

(や、休んでなんかいられないよ……!)


【親愛度レベルが上昇しました!】

【緋田美琴の親愛度レベル…2.0】

【希望のカケラを入手しました!】

【現在の希望のカケラ…16個】
166 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:04:42.35 ID:Ojbp8S+g0
【にちかのコテージ】


美琴さんと歌の練習をご一緒させていただいた……
うう……精神的な問題なのかな、私は思った通りに歌えなかった。

「美琴さんの足引っ張っちゃったかな……」

こんなんじゃだめだ……!
喉を枯らしてでも歌の練習をしないと……!

「今日の晩からでも自主練やった方がいいやつだこれ……」


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…10枚】
【現在の希望のカケラ…16個】

1.交流する【人物指定安価】※ルカを除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 23:10:40.29 ID:gsRmRnpl0
1 透
168 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:14:59.59 ID:Ojbp8S+g0
1 透選択

【第1の島:ロケットパンチマーケット】


にちか「あの……なにやってるんです……?」

透「え……なんだろ」

にちか「そもそも、なにもってるんです……?」

透「え……わからん」

にちか「……」


この人に答えを求めちゃいけない、それはこの短い付き合いでも嫌というほど理解してるんだけど……
流石に、スーパーマーケットの真ん中でナンを焼く鍋を眺めてるのは謎が過ぎる……


透「これ、タンドールって言うんだって」

にちか「は、はぁ……」


浅倉さんと見慣れない調理器具をいじって過ごした……

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ヤシの実】
【半分安全靴】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【キルリアンカメラ】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【トイカメラ】
【表裏ウクレレ】
【バール】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 23:26:53.95 ID:gsRmRnpl0
1 ヤシの実
170 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:36:21.85 ID:Ojbp8S+g0
【ヤシの実】を渡した……

透「お、本物」

にちか「はい……! 私もこんなの初めて見ました……!」

透「おっしゃ、作るかー」

にちか「え、ちょ、浅倉さん……? な、何を……?」

透「ココナッツミルク、飲みたくない?」

にちか「え、そうやって作るんですか? 包丁? そ、それ、ちゃんと切れます……?」

透「わからん」

にちか「ちょ、浅倉さんストップ! ストーーーーーップ!」

(うっ……別のものを渡せばよかったかな)

-------------------------------------------------

浅倉さんは美琴さんとはまた別の意味で冷静というか……
この人が取り乱すとかあるんだろうか……


透「……」

にちか「あ、浅倉さん……すごいですね、全然、普段と変わんなくて……」

透「そうかな。……あー、雛菜いるし」

にちか「そっか……そうですよねー、この状況で幼馴染がいるのってすごく心強そうです」

透「……」

にちか「ん……?」

透「あー、うん。そう。樋口と小糸ちゃんはいないけどさ」

(い、今の間は……?)

透「友情パワー、イエーイ」

(うーん、なんだか気が抜けるなぁ……)

にちか「あ、じゃあせっかくだし浅倉さんたちについて聞いてみたいことあるんですけど、いいです?」

透「え? うん」

(幼馴染でアイドルユニットなんて特殊な状況、色々聞き甲斐はありそうなんだよな……)

(せっかくだし、今ここにいない人について聞いてみようかな)


1.樋口さんについて教えてください
2.福丸さんについて教えてください
3.自由安価

↓1
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/21(日) 23:46:16.31 ID:gsRmRnpl0
2
172 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:52:49.92 ID:Ojbp8S+g0
2 選択

にちか「あ、それじゃあ福丸さんについて教えてもらってもいいですか?」

透「小糸ちゃん? あー、えーっと」

透「中学。別だったんだよね」

にちか「え……そ、そうなんですか?」

透「うん、小学は一緒だったけど、小糸ちゃんは別のガッコ受けて。でも、高校でまた一緒」

(そ、それって……進路をほかの三人に合わせた、とか……?)

にちか「それって福丸さんが、自分で選んだんですよね?」

透「うん、たまたま一緒になった」

(絶対たまたまとかじゃないって……)

透「小糸ちゃん、めっちゃ頭いいからさ。うちからでも、多分いいとこ行くよ」

にちか「……そ、そうなんですね……今度勉強教えてもらっちゃおっかなー……なーんて」

(福丸さん……中学でどんな学生生活送ってたんだろ……)

(な、なんだか心配になってきたな……)


【親愛度レベルが上昇しました!】

【浅倉透の親愛度レベル…1.5】
173 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:54:34.35 ID:Ojbp8S+g0

浅倉さんと別れてからもぼんやりとノクチルの四人の関係性のことを考えながら、自分のコテージへと戻った。
幼馴染という関係性にはちょびっとだけ憧れもするけど、単純な仲良しに終始する話でもなさそうだよね。

-------------------------------------------------
【にちかのコテージ】

……今日も一日島をウロチョロしたけど新しい発見は特になし。
開放的な風景なのに、閉塞的な状況が広がっていることを再認して肩をがっくりと落とす。

それなのに今日がまた終わろうとしている。


「……なんかもったいないなー」


別に何をするでもない、ただぼーっと時間を浪費するのは流石に落ち着かない。
その居心地の悪さに突き動かされて、私は部屋を出てふらつくことにした。
174 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:56:20.88 ID:Ojbp8S+g0
-------------------------------------------------
【第1の島:ビーチ】


海に沈んでいく太陽を追うように島の外周を歩いていくと、開けた場所に出た。
私たちがこの島に来た時に最初に足を踏み入れた場所、そしてこのコロシアイ南国生活が始まった場所。
そんなやたらと縁の深い場所にたどり着くのはもはや当然のことだったのかもしれない。
いや、きっと多分そういう……最悪の縁じゃなくて、ここに私を引き合わせたのは別。最悪じゃなくて、むしろ【最高】の縁だった。


美琴「……はぁっ……はぁっ」


(……美琴さん?!)


そこにいることを知っていたわけじゃない。
私は本当に何気ない気持ちで、何の考えなしにやってきたというのに。
そこには私のたった一人で最高のパートナーである美琴さんの姿があった。
これが運命でないならなんというのだろう。
175 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:57:46.95 ID:Ojbp8S+g0

美琴さんはステップを練習している様子だった。
私との練習の中でも何度か見たことのある少し応用を聞かせた難しいステップ。

前に見た時、美琴さんのステップはもっと上手だったと思う。
それもそのはず、今美琴さんがステップを刻もうとしているのは砂浜の上。
どんどんと足を取られ、もつれていく劣悪な環境で、あえての練習をしているのだから。


(……す、すごい気迫……!)


それでも美琴さんは表情を変えない。思うようにいかなくても、転んでしまっても。
ただ立ち上がってまた初めから。全身には汗の痕が浮かび上がり、キレのある動きをするたびにその飛沫が飛ぶ。
私には、その光景が水彩画のように見えた。


(こ、こんなの……ブロマイドものでしょ!)


まるでイルカが海面から飛び上がったような、そんな刹那的な美しさを夕日をバックにした美琴さんの姿に見た。


にちか「うわ……すごい……」

美琴「……! にちかちゃん、いたんだ……」

176 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:58:22.85 ID:Ojbp8S+g0

にちか「あ、はい……すみません、お邪魔しちゃって」

美琴「大丈夫、ちょうど一セットのところだから」

にちか「……自主練、続けてるんですね」

美琴「……うん、そうだけど……どうして?」

にちか「い、いや……えっと……わ、私も練習、やっちゃおうかなー! な、なーんて」

美琴「うん、いいと思う。……砂浜だと、いつもと環境が違って刺激になるから」

(本当にどこまでいってもストイック……美琴さんって、すごい……!)


明日もわからないこの状況下でも美琴さんは元の生活に戻ってアイドルとして活動することを見据えている。
それなら、その隣に立つために私がすることは一つだった。

____なんて、別に元々そんなつもりはなかったけど、覗いていたことを悟られないようにの照れ隠しで練習を一緒にすることに。


美琴「にちかちゃん、ちょっと遅れてる」

にちか「は、はい……!」


事務所のレッスン場でいつもやっているのと変わりないメニュー。
いやむしろそれよりもハードさすらあるメニュー。

失われた日常をせがむように、焦燥の色をにじませながら美琴さんはただひたすらにその汗を散らした。
177 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/21(日) 23:59:31.09 ID:Ojbp8S+g0
____
______
________

そうしてしばらくの時間が過ぎて。


美琴「ちょっと休憩入れようか」

にちか「は、はい……」


それは美琴さんよりも私の疲労を理由にしたものだった。
手足は痺れて震えだし、肩は呼吸に合わせて荒馬のように上下している。体力の限界だ。


にちか「つ、疲れたー……!」


どさっと腰から砂浜に腰かけた。
いつものフローチングのかたい床とは異なり、砂浜は乳酸の溜まったその体を優しく抱き留め、潮風がその熱を冷まそうと吹き付けてくれる。
まるで直属のレッスントレーナーのピットインのような待遇が、どことなくくすぐったい。


美琴「……」


美琴さんはそんな私を他所に、海の向こうを見つめてじっと動かなかった。
きっと美琴さんは、今この瞬間だってあのステージのことを思っている。
あのライトの下でパフォーマンスを披露する、その瞬間を今か今かと待ちわびている。
日も沈み、登ってきたその月はステージライトの輝きには遠く及ばない。




ザッ

その時だった。ふと背後で草木が揺れるような音がした。

178 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/22(月) 00:00:46.86 ID:tZlr+b7d0

美琴「……誰?」

にちか「え、えっ?! 誰かいるんですか?!」


しばらくの沈黙。
一時はそのまま身を隠してことを終えようとしたのだろうか、だがすぐに観念した様子で物音の主はその姿を現す。



ルカ「……なにやってんだよ、お前ら」



美琴「……練習再開しようか、にちかちゃん」

にちか「み、美琴さん……その、すみません、体がまだ」


これは本当のことだ。さっきの今で疲労困憊のこの体がもとには戻らない。
立ち上がってあのステップをまた刻むためには少しだけ時間が必要だった。

179 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/22(月) 00:02:29.72 ID:tZlr+b7d0

ルカ「……相変わらず無茶してんだな、美琴」

美琴「別に無茶なんかしてない、私はこれが必要なだけ」

ルカ「お前だけじゃねーよ、その緑髪だってお前につき合わされて無茶させられてんじゃねーか」

にちか「わ、私だって無茶なんかしてないですよ!」

ルカ「よく言うもんだな、そんな風に座り込んでおいて」

にちか「こ、これは……!」


ルカ「美琴は自分のことも、他人のことも顧みなさすぎなんだよ。……コンビ解消したのに、また同じことをやってるようじゃ救えないな」


美琴「ルカに何が分かるの?」

ルカ「ハッ! そこまでしてアイドルに縋りたいのかよ!」

美琴「……当然でしょ、私はそのためだけにここにいる。そのためだけに生きてきた。今更それ以外の生き方なんて、ないから」

ルカ「……くだらない拘りだな、ほとほと愛想がつきたよ」

美琴「……言いに来たのはそれだけ?」

ルカ「ああ、満足した。それじゃあな」

180 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/22(月) 00:03:16.79 ID:tZlr+b7d0

途中から私はルカさんに向ける視線を迷っていた。

彼女はまず間違いなく私たちに敵意を持っている。それは変わらない。
ただその敵意の中にある揺らぎもまた、私の目に焼き付いている。
練習をやめる素振りのない美琴さんのその反発を目にした時のルカさんの口元のゆがみ。
ただ恨んでいるだけで、あんな表情ができるんだろうか。


でもそんな疑念を帯びた視線を悟ったのか、ルカさんは最後に私に向かって。


ルカ「見てんじゃねーよ」


その言葉を吐き捨てて去っていった。


美琴「……ごめんね、邪魔が入っちゃった」

にちか「い、いえ……お構いなく」

美琴「立てる?……そろそろ練習再開したいな」

にちか「だ、大丈夫です! もういけます!」


そこからまたしばらく練習を再開した。
相変わらず手足は疲れ切っていたけど必死に我慢して、一生懸命美琴さんの背中を追うためだけにその体を動かした。


≪ルカ「美琴は自分のことも、他人のことも顧みなさすぎなんだよ。……コンビ解消したのに、また同じことをやってるようじゃ救えないな」≫


練習中、ルカさんの言葉がずっと脳裏にちらついていた。

181 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/22(月) 00:04:27.17 ID:tZlr+b7d0
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【にちかのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


シャワーを浴びた私は真正面からベッドに倒れこんだ。
もう無理、手も足も動かない。
美琴さん、私が来る前から練習をやってたけど……本当に大丈夫かな。
ルカさんじゃないけど、流石に少しだけ心配。
時間が少しでもあれば練習に生かそうとするストイックさは見習うべきものだけど、限界を超えて肉体と精神をすり減らしてまで挑み続けることが本当のストイックさなのかな。

……いや、美琴さんがやってるのはそんな無謀なことじゃない。
美琴さんの一挙手一投足だって、無駄にならない。
だって美琴さんなんだもん、私じゃない。


≪ルカ「美琴は自分のことも、他人のことも顧みなさすぎなんだよ。……コンビ解消したのに、また同じことをやってるようじゃ救えないな」≫


それなのに、ルカさんの言葉がやけに胸に突き刺さって、寝る前は少しだけ苦しかった。
182 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/22(月) 00:05:24.37 ID:tZlr+b7d0

島の暮らしの二日目が終わったところで本日分の更新はここまで。
自由行動も始まって本格的に物語が始まりましたね。

次回更新は11/23の夜を予定しています。
またよろしくお願いします、それでは。
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