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【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】
- 241 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:38:43.83 ID:R8XLdqbj0
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モノクマ「でもな、でもな、おかんが言うには魔法が使えるマスコットらしいねんな!」
モノミ「それは……あちしでちゅ! マジカルステッキさえあればあんな夢こんな夢叶え放題なんでちゅ! マイナンバーカードだって2秒で作れちゃうんでちゅ!」
モノクマ「ボクもそう思ったんだけどね、どうやらおかんが言うには反社会勢力とつながりがあるマスコットらしいねん」
モノミ「それはあちしじゃないでちゅ! 反社会勢力とずぶずぶなマスコットなんて存在しまちぇん! 一切の犯罪歴のない人間だけが夢の世界の住人を演じることが許されるんでちゅよ? いや、あちしには中の人なんていまちぇんけど!」
モノクマ「でもな、おかんはそのマスコットは【みんなの記憶を奪っとる】って言うんよな」
モノミ「それは……!」
モノミ「あ、あれ……?」
- 242 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:39:47.35 ID:R8XLdqbj0
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モノクマ「コロシアイ南国生活に参加している【みんなの記憶を奪っちゃってる】あくどいマスコットがいるんだってさ。全く、ひどいマスコットもいたものだよね!」
モノミ「あ、あはは……ほ、本当でちゅね……いったい誰のことやら……」
モノクマ「ほんでおかんが言うにはな、そのマスコットってピンク色のウサギみたいな見た目らしいんや!」
モノミ「……い、今のあちしはツートンカラーの愛らしいウサギでちゅ……人畜無害なウサギさんでちゅ……」
モノクマ「でもな、おかんが言うには最近そのウサギは色を変えられた挙句、お兄さんができたらしいねんな!」
モノミ「いやあああああああ! それ以上はやめてくだちゃい!」
モノクマ「で、オトンが言うにはな、それってモノミちゃうか?って!」
モノミ「……」
モノクマ「もうええわ! どうも、ありがとうございました〜〜〜!」
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- 243 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:41:02.98 ID:R8XLdqbj0
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面白くもない間の抜けた漫才芸が幕を下ろした。
でも私たちは腹を抱えて笑うでもなく、不満に座布団を投げつけるでもなく、今自分の目の前に投げ込まれたその言葉を確かめて、震えることしかできずにいた。
(記憶が、奪われた……?)
モノクマ「ふぅ……久しぶりに漫才なんかしたから、なかなか舌が回らなくて困ったよ!」
モノミ「……あ、あちしは失礼しまちゅ」
ルカ「待てよ」
モノミ「ひぃ! い、斑鳩さん……!?」
ルカ「説明せずに逃げ帰るとか、許されると思ってんのか? さっきの言葉の意味、聞かせてもらえるんだろうな」
果穂「あ、あたしたちの記憶……う、うそですよね……」
夏葉「そんなはずはないわ……ただの悪趣味な冗談でしょう?」
モノクマ「まあこの件に関しては、さっき言った通りボクがやったわけではないのでモノミに聞いてもらわないと!」
バビューン!!
- 244 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:43:12.71 ID:R8XLdqbj0
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にちか「モノミ……! 今、どういうことなの?!」
にちか「本当に私たちの記憶は奪われてるの?! 今って本当は、何年の何月、何日なの?!」
モノミ「え、えーっと……その……」
美琴「教えて」
美琴「私たちはライトの下から離れて……どれくらいの時間が経ったのかを」
モノミ「あのでちゅね……」
モノミは詰め寄る私たちを前に、はっきりしない物言いを繰り返すばかり。
自分のしてしまったことの罪の重さをはかりかねているかのような、そんな怯えたような表情のまま、しばらく。
モノミ「もうこれ以上お話しできることは何もありまちぇん!」
バビューン!!
灯織「……行ってしまいましたね」
愛依「け、ケッキョク……なんも教えてくれなかったね……」
- 245 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:44:42.57 ID:R8XLdqbj0
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透「記憶、か……」
雛菜「雛菜たち、一体いつから記憶を失ってるんだろうね〜」
あさひ「ていうか、記憶を奪うってなんなんすか? そんなことができるっすか?」
結華「さあね……ただ、モノミ・モノクマ・モノケモノとこうも現実味のないことが続いちゃ……疑う気力も沸いてこないっていうか……」
千雪「モノミちゃんが私たちのそんなひどいことをするなんて、信じられないけど……」
ルカ「何を甘いこと言ってんだよ。あいつだって所詮はモノクマ側の存在、ウサミだか何だか知らねえが、ずっと私たちを欺いて笑ってやがったんだ」
智代子「だ、だとしても……どうして!? わたしたちの記憶を奪うことになんの意味があるの?!」
冬優子「その意味すら、ふゆたちは忘れてしまってるのかもしれないね……」
重く冷たい空気がのしかかる。
それも当然だ、人間の存在なんてものは、継続的な観測からなるものでしかない。
つい昨日の自分があるから、今日の自分がある。
これまでの十数年の蓄積が私という存在を形作っている。
でも、今その根幹から揺るがされているのだ。
いつから、どれくらいの記憶が抜け落ちているのかもわからない。
そんな状態で立っている今の自分は、本当に『わたし』だと胸を張って言えるのだろうか……?
- 246 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:46:12.09 ID:R8XLdqbj0
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灯織「……落ち着きましょう、皆さん」
- 247 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:49:01.30 ID:R8XLdqbj0
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それでも、彼女だけはこんな状態でも立ち上がった。
私たちの一歩前に出て、胸に手を当てて。自分自身もその手は震えているというのに、それでも鼓舞するために一歩を踏み出す。
愛依「ひ、灯織ちゃん……」
灯織「確かに記憶の欠落、それを聞いて私も冷静ではとてもいられませんが……不安に駆られてしまってはモノクマの思うつぼです」
夏葉「……ええ、その通りね。きっとモノクマは私たちにゆさぶりをかけたかったのよ。コロシアイになかなか手を付けようとしない私たちを焚きつけるために、不安という起爆剤を投入した」
灯織「だから、まずは深呼吸をして……隣を見てください。私たちには仲間がいます、頼れる存在がいるんです。不安に感じているなら、それを共有してください」
灯織「一人じゃなければ、きっとそれにも立ち向かえるはずなんです……!」
(……やっぱり、風野さんはすごいな)
美琴「……そうだね、狼狽えてても何も変わらないから」
果穂「もし本当にきおくがうしなわれてるなら、その分新しく思い出を作りましょう!」
智代子「果穂! そうだね、楽しい記憶は今からでも取り返しが効くからね!」
摩美々「はぁ……もっと重要な記憶も色々抜け落ちてるかもしれないケド、それは無視―?」
恋鐘「摩美々、今はそういうことにしとかんね。深く考えこんだら、沼んみたく深みにハマってしまうとよ!」
ルカ「……チッ、なんの解決にもなってねえじゃねえか」
あさひ「……わたし、何を忘れてるんだろ」
- 248 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:50:31.20 ID:R8XLdqbj0
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【にちかのコテージ】
キーン、コーン…カーンコーン…
『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』
『ただいま、午後十時になりました』
『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』
『ではでは、いい夢を。グッナイ…』
一部の人を除いて不安はだいぶん和らいだ様子で、そのまま公園で解散となった。
もう夜時間を回っている、私もその瞼はだいぶん重たくなっていた。
ただ、それとは別に思考は巡る。
みんなの手前口にはしなかった不安がふつふつと込み上げる。
確かに仲間に共有できれば気が楽になる不安もある、けどすべてがそう易々と仲間に共有できる不安ばかりじゃないことも私は知っている。
特に私はみんなとは違う。本当のゼロからスタートした私は、その下地も、素材も、心構えも、何もかもが違っている。
違うもの同士の不安に共感なんかできない、そこにあるのはただの憐憫だ。
そんな惨めな真似、私には……
「……お姉ちゃん」
夜は、更けていく。
- 249 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:52:17.76 ID:R8XLdqbj0
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≪island life:day 5≫
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【にちかのコテージ】
昨日に引き続き、アナウンスよりも先に目が覚めてしまっていた。
そりゃ当然、あんなの聞かされて寝ていられるはずもない。
夢もなんだか気持ちが悪いものを見た。
学校の先生とか友達とかがグニャグニャとねじ曲がって、渦みたいになってそこに溶け込んでいく夢。
チーズフォンデュのようにドロドロになった自分の体が、すごく醜悪な感触だった。
「記憶がない……か」
それで目を覚ましたんで居ても立っても居られなくなり、既にコテージの部屋を出てホテルの中を歩くなどしてしまった。
それでもまるでスッキリとしない、ムカムカとしたものが胸にくすぶり続けている。
「あー! なんかもうっ!」
近くにあった紙をぐしゃぐしゃに丸めて近くに放った。
がさがさと耳障りな音を立てて紙屑の山は軋む。
「……とりあえず、なんか口に入れよ」
まだ朝食会には早い。
でも、この放っておけばこのイライラが無限に口から放出されそうで、それを抑え込むための栓が欲しくて。
私の足は自然とレストランに向かっていた。
- 250 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:54:00.38 ID:R8XLdqbj0
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【レストラン】
灯織「……! に、にちかさん……おはようございます」
にちか「おはようございます……相変わらず早いですね、普段から早起きなんです?」
灯織「い、いえ……どうしてもこんな状況だと目が覚めてしまうといいますか……」
にちか「あ、あはは……ですよねー……」
にちか「……? あれ、風野さん、その手に何か持ってます?」
灯織「っ!? い、いえ! これは別に、その、なんでも!」
(いやいや……隠すの下手すぎでしょ……紙っぽいのがモロ見えだったし)
(でも、なんだか追及するのはかわいそうだよね……見なかったことにしてあげよう)
風野さんは平然とした体を取り繕ってはいるものの、よっぽど触れられたくないものに触れられてしまったのだろう。動揺の色を全く隠せていなかった。
そのままなんとも居心地悪そうな時間が過ぎて、徐々に全員が集まったころ……
彼女は切り出した。
- 251 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:55:57.28 ID:R8XLdqbj0
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灯織「あ、あの……もしよろしければ一つ、提案をお聞きしていただいても……」
結華「んー? どったの、ひおりん? なんだか珍しいね」
灯織「そ、その……せっかくこうやって283プロの皆さんがユニットの垣根を越えて集まったことですし……何か【パーティ】のような催しでも出来たらなと思いまして……」
あさひ「えっ?! パーティ!? 楽しそう!」
冬優子「あさひちゃん、まずは静かにお話を聞こうね〜」
灯織「ホテルには旧館もありますし、パーティ会場にはうってつけではないかと」
モノミ「いいでちゅね! すごく素敵な提案でちゅ!」
あさひ「あっ! モノミだ!」
モノミ「せ、芹沢さん……く、来るなら来いでちゅ! そう簡単に、あちしの縫い目がほどけるとは思わないことでちゅ!」
愛依「アハハ、そんな警戒しなくても大丈夫系! あさひちゃん、今はすっかり朝ご飯にムチューみたいだから!」
モノミ「へ?」
千雪「あさひちゃんのために島の果物でデザートを作ってあげたの。喜んでくれたみたいでよかった」
あさひ「すごくおいしいっす! これ何使ってるっすか?」
モノミ「ということはあちしの貞操は守られるってことでちゅか?」
果穂「てーそー……? それってなんですか?」
夏葉「……モノミ、変な言い回しはやめてくれるかしら」
- 252 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:57:23.64 ID:R8XLdqbj0
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結華「と、とにかく! モノミもこのタイミングで姿を現したってことは何か話があるってコトでしょ?」
モノミ「あ! そうでちた! ミナサンのパーティのお話を聞いて居ても立っても居られなくなったんでちゅ。旧館を使ってパーティがしたいとのことでちたけど、長いこと使ってないせいでボロボロなんでちゅよね」
雛菜「え〜! 雛菜パーティやりたかった〜!」
モノミ「施設自体は汚れてはいまちゅけど、使う分に問題は無いので掃除さえすれば大丈夫でちゅよ!」
摩美々「えー、面倒くさー……」
灯織「ただ会場としてはこれ以上ないぐらいにうってつけですし……いたし方ありませんね」
透「あ、それじゃせっかくだし」
にちか「浅倉さん?」
透「この箸使ってくじ引き。ギャンブルで決めるってのは、どうよ」
雛菜「やは〜♡ それじゃあたりを引いた人が掃除係ね〜!」
千雪「う〜ん……でも一人で任せるにはちょっと旧館は広いような」
愛依「うち、掃除やるよ? せっかくのパーティだし、みんな気持ちよくできたほうがいいんじゃん?」
灯織「それでしたら私もお手伝いします。もともと言い出したのは私ですから」
果穂「あたしもやらせてください!」
恋鐘「うちも手伝うばい! こういうのは、全員でやった方が早かやけん!」
摩美々「えー、全員―……?」
結華「あらら……とおるんのくじ引きも面白そうだとは思ったんだけどね」
透「ちぇー」
そういうわけで結局なし崩し的に会場となる旧館の掃除は全員で行うことに。
正直私としては面倒だったし浅倉さんのくじ引き案に賛成ではあったんだけど……しょうがないか。
- 253 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 22:58:23.75 ID:R8XLdqbj0
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【旧館】
にちか「うーわ……埃っぽすぎ……美琴さん、私が美琴さんの分もやるので休んでて大丈夫ですよ!」
美琴「ううん、そういう訳にもいかないから」
いざ足を踏み入れた旧館はそこら中にクモの巣が張ってるし、埃もあちらこちらに溜まっているというありさま。
できれば美琴さんには足を踏み入れてすらほしくない。
うー……全員で掃除をするなんて流れになるから、もう!
灯織「正直想像以上の有様ですが……これだけの人数がいればすぐに終わるはずです、頑張りましょう!」
冬優子「うん♡ できた時よりもピカピカにしちゃおうね!」
智代子「よしっ! 果穂、掃除用のエプロンしっかり結べたよ!」
果穂「ありがとうございます! おそうじ用のスペシャルアーマーに変身! です!」
夏葉「負けないわよ果穂! 誰よりもこの旧館を一番きれいにするのは私なんだから!」
透「やるかー」
雛菜「あは〜、雛菜やりたくない〜」
結華「お、温度差!?」
きちんと準備を整えて真面目に掃除に挑もうというメンバー、行動一つ一つが仰々しいやたらやる気の入ったメンバー、全くと言っていいほどやる気のないメンバー。温度感もバラバラなメンバーたちでしばらくの間掃除に取り組んだ。
- 254 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:01:52.71 ID:R8XLdqbj0
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そして、掃除が終わったのは……昼前。
恋鐘「終わった〜〜〜〜〜〜〜〜!」
あさひ「え、もう終わるんすか? もっと床下の方とか掃除したかったっす」
灯織「ありがとうございます、皆さんのおかげで予定よりかなり早く清掃を終えることができました」
結華「一時はどうなることかと思ったけど、これならパーティも問題なく行えそうな感じ?」
透「頑張ったしね、めっちゃ」
雛菜「透先輩途中から同じところばっか掃除してなかった〜?」
透「え? あー、取れなくて。油汚れ」
摩美々「透が掃除してたの玄関周りじゃなかったぁ?」
千雪「ふふっ、でも玄関周りを綺麗にしておくのは大事だから。ありがとう、透ちゃん」
透「ただ掃除してただけなんで」
冬優子「それにしても愛依ちゃんとにちかちゃんはすごく手際がよかったね! ふゆ、驚いちゃった!」
愛依「んー、うちはばあちゃんが腰悪くしてる分やったげることが多いからかな?」
にちか「うちもそんな感じですかねー。お姉ちゃん、家だとてんでダメなので!」
美琴「そうなんだ、えらいね」
にちか「い、いやいやそんな!」
- 255 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:02:47.58 ID:R8XLdqbj0
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智代子「お疲れー、果穂。あとでお菓子食べてリフレッシュしようね!」
果穂「はい! つかれた体にはとう分ほきゅうが必要です!」
智代子「よくぞ言ってくれました!」
夏葉「ふふっ……そんな見せつけるようにしなくても別に咎めたりはしないわ、智代子」
灯織「ひとまずは皆さんご苦労様でした。パーティ自体は、夜時間のチャイムが鳴ってから開始するのでそれまでは自由に過ごしてください」
摩美々「じゃあ摩美々は仮眠でもとろっかなー。今夜は灯織が寝かせてくれないみたいだしー」
結華「ま、まみみん?! その言い方は見過ごせないけど?!」
灯織「ふふっ……でも摩美々さんのように皆さんも体を休めておいてください。せっかくの機会、今夜は目いっぱい楽しんでいただきたいですから」
掃除を終えた私たちは、いったん風野さんの言った通りにそれぞれの個室に戻って体を休めることにした。
掃除というのは何かと無理な姿勢を強いられたり、重いものを持ち上げたり、自分が思っている以上に体が疲労するものだ。
美琴「今日は練習もしないつもりだから、にちかちゃんもゆっくり休んで」
にちか「え? もしかして私に気を使っちゃってます? 大丈夫ですよ、これぐらい平気です!」
美琴「違うの。私も今日はもともと練習をする気じゃなかったから」
にちか「え……そうなんですか?」
美琴「うん、丁度よかった。パーティと予定が重なったおかげで休憩をすることもないし」
にちか「それじゃ、美琴さんも今日はゆっくり休むようにしてください。体は資本って言いますし……」
美琴「心配してくれてありがとう。にちかちゃんもね」
にちか「は、はい!」
- 256 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:05:02.69 ID:R8XLdqbj0
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【にちかのコテージ】
私も自分の部屋に入ると、ベッドにそのまま倒れこんだ。
手足がシーツに溶け込んでいくような心地で、疲労もその白地に浸透していく頃……
私はそのまま意識を手放した。
- 257 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:06:35.32 ID:R8XLdqbj0
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≪night time≫
「……夜、か」
いつもならこのまま寝る支度をするところだけど、今日はそうじゃない。
旧館で行われるパーティのためにスクっと立ち上がった、丁度そのタイミングだった。
ピンポーン
(……インターホン?)
珍しい来客。慌てて扉を開けると、そこに立っていたのは風野さんだった。
灯織「こ、こんばんは……七草さん」
にちか「ど、どうも……あれ、パーティは……?」
灯織「そのことなんですが……少し、お手伝いいただきたいことがございまして」
にちか「手伝い?」
灯織「七草さん、もしよろしければ私と一緒に入場時の【ボディチェック】を行ってもらえませんか?」
- 258 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:07:36.06 ID:R8XLdqbj0
-
にちか「ぼ、ボディチェック? なんでまた……」
灯織「皆さんを疑う訳ではないんですが……状況が状況のため、念のために危険物が持ち込まれないように細心の注意は払いたいと思いまして」
にちか「わかりましたけど……なんで私なんですか?」
灯織「同世代の方にお願いしたくて……でも、どうやらチョコは放クラで集まっているようだったので」
灯織「市川さんは、その……なかなか捕まらなくてですね……」
(消去法ってことか……)
にちか「なるほど……ま、いいですよ。どうせ今から行くとこだったので」
灯織「本当ですか! あ、ありがとうございます……でしたらぜひ一緒に今から旧館の方へ」
にちか「あ、それじゃちょっと待ってくださいね。パーティ盛り上げるために用意してたものもちょっとだけあるので!」
風野さんにそう声をかけると、机の上に用意していたお菓子などを適当に手に取った。
にちか「じゃーん! これ、お気に入りなんですよー!」
灯織「ふふっ……今日くらいは遅くなってからお菓子を食べても許されますよね」
にちか「ですです!」
- 259 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:09:25.55 ID:R8XLdqbj0
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【旧館 玄関】
灯織「一応先んじて七草さんの体を調べさせていただきますね」
にちか「あ、はい……」
風野さんは申し訳なさそうに頭を下げると、私の体を隅々までべたべたと触りだす。
一通り見終えると、満足した様子でふぅと息をついた。
灯織「はい、問題ないと思います」
にちか「ど、どうも……危険物なんか、そうそう持ってないと思いますけど」
灯織「念には念を、ですから……」
ボディチェックを終えて、ひと段落。そう思っていると、今度は逆に私の体に何かを取り付けた。胸元に両面テープでとめたそれは、花を模して造られた布飾りのようだ。
にちか「これ……何ですか?」
灯織「ええ……パーティを開くにあたって、果穂と千雪さんとで用意してくださったものらしくて、全員分ご用意いただいてせっかくなのでここでボディチェックのついでにお渡ししようかと」
(要はこれでご機嫌取りってわけね……)
風野さんは全員分に用意された花飾りを紙袋を広げて見せてくれた。
なるほど形の不揃いな様子が果穂ちゃんの制作風景を想起させ、なんとも愛らしい。
これなら確かにボディチェックのイライラも引っ込むかもしれない。
- 260 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:10:34.45 ID:R8XLdqbj0
-
灯織「あ、どなたか来たみたいですよ」
ガチャ
あさひ「こんばんは! ……あれ? 二人ともどうしたっすか?」
灯織「あさひ……一応パーティを始める前に参加者はみんな身体検査をしておこうと思って」
あさひ「ふーん……でも、わたしなにも変なものなんか持ってないっすよ」
灯織「念のためだから……ごめんね」
パンパン
にちか「……あっ」
灯織「プラスドライバー……人を刺すには十分……」
あさひ「えー、そんなことしないっすよー」
灯織「ごめん、これも念のためだから」
あさひ「ああっ!?」
風野さんにしては珍しいぐらいの強引さで芹沢さんからプラスドライバーをひったくると、そのまま手元にあったジュラルミンケースに放り込んだ。
灯織「パーティが終わったらちゃんと返すから……今は我慢して」
あさひ「むー!」
芹沢さんは納得していないといった様子で頬を膨らませる。
それでも風野さんが折れそうにないとみるや、ぷいとそっぽ向いて、そのまま会場へと走っていった。
にちか「ドライバーでもダメなんですか?」
灯織「全員に安心して参加していただきたいので……七草さんもあれぐらいでお願いします」
にちか「は、はい……」
- 261 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:11:45.70 ID:R8XLdqbj0
-
ガチャ
透「ばんはー」
雛菜「パーティもう始まってますか〜?」
灯織「市川さん……いえ、まだ始まっていません。その前に身体検査をしてもよろしいでしょうか? ……七草さん、浅倉さんをお願いします」
にちか「は、はい!」
透「厳重じゃん、めっちゃ」
にちか「ここまでやる必要はあるんですかねー……」
とはいえ一度引き受けてしまった仕事。
風野さんに言われるがままに浅倉さんの身体検査を行った。
全身をパンパンと叩いていき、不審なものはないか確かめて、さらには胸元も襟を掴ませてもらって一応は確認。
透「えー、恥ず……」
にちか「す、すみません……」
全身くまなく捜査して……不審なものは。
にちか「こんなの、なんで持ってきてるんですか? 十徳ナイフ」
____普通に見つかった。
- 262 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:13:07.33 ID:R8XLdqbj0
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透「あー、なんでだろ」
にちか「いやいや?! 思いっきり刃物じゃないですか?!」
(こ、この人は……!)
雛菜「あ〜、それさっき使ったやつ〜! 透先輩持ってきちゃったんだ〜〜〜!」
(……え?)
透「あー、さっき。雛菜と食べたんだっけ、缶詰」
にちか「か、缶詰……?」
雛菜「雛菜が桃食べたくなったから〜、スーパーで透先輩に食べさせてもらっちゃった〜!」
透「開け方わかんなかったからさ、使ったの。缶切りのとこで」
灯織「は、はぁ……一応、回収しておいてもよろしいですか?」
透「ノープロブレム」
(全く人騒がせな……)
- 263 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:14:21.78 ID:R8XLdqbj0
-
ノクチルの二人の独特な空気感にため息をつきながら、私はジェラルミンケースにそのナイフを放り込んだ。
まあこの二人ならそんな思い付きで缶詰を食べようとしてナイフを持ち出すこともあるだろう。その点については納得も行く。
……ただ、浅倉さんに関して、胸中にふつと湧き上がった疑念を拭い去ることはできなかった。
にちか「い、一応もっかい見といていいですか?!」
透「え、いいけど……どうしたの」
にちか「ね、念のため! 念のためですから!」
ただ、当然それ以上のものは見つからず。
結局浅倉さんも会場にそのまま入っていってしまった。
(だ、大丈夫なんだよね……?)
灯織「七草さん……! 安全意識を高く持っていただけたようで非常にありがたいです……!」
完全に不純な疑いから来た再点検だったのだけれど、風野さんは何か別の勘違いをして、それにいたく感動したのか私の手を取って上下にブンブンと振った。
- 264 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:16:08.78 ID:R8XLdqbj0
- そこからは次々と入ってくるメンバーを一人ひとり点検していった。
灯織「摩美々さん……な、ナイフなんかダメに決まってるじゃないですか?!」
摩美々「いや、これ刃が引っ込むビックリグッズなんだケド……」
とはいえ、流石に露骨な危険物を持ち込む人間などおらず……
にちか「あー、これ……アウトかもしれないです」
千雪「そうなの? 誰かの服がほつれでもしたらと思ったんだけど」
にちか「私はいいと思うんですけどね、別に……」
安全と危険とのその交差点ぐらいのものばかりを拾い集めるだけで……
美琴「にちかちゃん、何やってるの?」
にちか「み、み、みみみみ……美琴さん?!」
美琴「ボディチェック? それじゃあ、私もお願いできる?」
にちか「わ、私が美琴さんの体をあちこち触るなんてそんな……!」
灯織「七草さん……? ユニット同士だし七草さんの方がよいかと思ったんですが……無理なら私が代わりましょうか」
にちか「やります!!!!!!!!!!!」
灯織「は、はぁ……」
特にボディチェック事態に成果はないままに終わった。
- 265 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:18:07.50 ID:R8XLdqbj0
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灯織「斑鳩さんはいらしていませんが……それ以外は全員これで確認できましたね」
にちか「まあ多分……来ないんじゃないですかね」
灯織「後は……会場の確認ですね、改めて」
にちか「え、ちょっ……風野さん?!」
突然くるりと向きを変えたかと思うと、そのままずんずんと風野さんは旧館の奥へ。
慌てて後を追っていくと、そのまま風野さんは厨房へと入っていった。
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【旧館 厨房】
恋鐘「ん? 灯織ににちか、何〜? 料理はあらかた済んだけん、大広間で待っとったら持っていくとよ?」
灯織「料理は大体終わった……そうですか」
恋鐘「……灯織?」
灯織「すみません、恋鐘さん!」
一言だけ謝罪の言葉を述べたかと思うと、風野さんはそのまま目にもとまらぬ速さで次々に卓上に並んだ調理道具をジュラルミンケースへと放り込んでいった。包丁もフライパンも何もかも一緒くた。すぐに厨房の調理現場は草一本生えない荒れ地のように、なにもなくなってしまった。
恋鐘「ふぇ〜〜〜〜〜?! な、なんばしよっと?!」
灯織「これも安全のためなんです……危害を加える可能性のあるものは少しでも減らしておかないとだめですから」
(そ、そこまでしなくとも……)
呆気にとられる私たち。それでも風野さんは意にも留めない様子ですぐに厨房を抜けて、別の部屋へと突き進んでいく。
にちか「す、すみません月岡さん!」
私も一言だけ謝って、すぐその後をついていった。
恋鐘「な、なんやったとやろ……」
- 266 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:19:22.60 ID:R8XLdqbj0
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【倉庫】
灯織「この部屋は特に危険物はなさそうですね……」
にちか「はぁ……はぁ……か、風野さん……どこまで見る気なんですか、もうみんなで一回通り掃除しましたよね……?」
灯織「え、ええ……それはそうなんですが……」
それでも不安だとばかりに辺りをきょろきょろするばかりの風野さん。
心配性もここまで行くと重症だな……
にちか「誰も何も持ち込めないし、何も無いですって……あんまり慎重になっていると、パーティ遅くなっちゃいますよ?」
灯織「……それもそうですね」
灯織「七草さん、お付き合いいただきありがとうございました。パーティ、始めてしまいましょうか」
(よかった、分かってもらえた……)
灯織「皆さんお腹もすいていらっしゃるようですし、それだけでも済ませておきましょう」
にちか「え? それって、どういう……」
灯織「とにかく、いったんは大広間に行きましょうか」
風野さんの言葉の意味は良くつかめず、とりあえずは大広間に戻るとのことだったのでそれについていくことにした。
私も会場に入ってからそれなりに経った、ボディチェックや安全点検はもうたくさんと感じていたところだった。
- 267 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:20:40.27 ID:R8XLdqbj0
- -------------------------------------------------
【大広間】
大広間ではすでに全員が待ち構えていた。手にはジュースの入ったグラスをもって、それぞれ思い思いに談笑をしている。
美琴さんも壁にもたれて、それはそれは優美にフォトジェニックに炭酸水を口へ運んでいた。
美琴「にちかちゃん、お疲れ様」
にちか「美琴さん、お疲れ様です! えっと、パーティはまだ始まってないんですかね」
美琴「うん、料理もまだ揃っていないようだし……始まりはみんなで合わせたいって」
にちか「なるほど……お待たせしちゃいましたかね」
美琴「いいの。恋鐘ちゃんもついさっき料理の盛り付けが終わったばかりみたいだから」
バンッ!
恋鐘「お待たせ〜〜〜〜! うちん特製、スペシャルディナーばい〜〜〜〜〜!」
勢いよく扉が開かれたかと思うと、山盛りになった料理がのせられたワゴンとともに月岡さんが登場。
和洋折衷、ジャンル豊かに取り揃えられた料理の数々、どれも美味しそうで思わずよだれが垂れてくる。
にちか「うわうわうわうわ……! めっっちゃくちゃ豪華じゃないですかー!」
あさひ「すごいっすー! これ、全部食べていいっすか?!」
恋鐘「ふふーん! 好きなだけ食べてくれて構わんとよ! 全員で食べてもまだ余るぐらいの量を用意させてもらったばい!」
夏葉「これは……負けてられないわね!」
智代子「うん! これは食べ尽くさないとむしろ失礼だよね、夏葉ちゃん!」
と、会場全体が食事を前に盛り上がりを見せる中。
……誰よりも最初に飛びついたのは【彼女】だった。
- 268 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:21:57.72 ID:R8XLdqbj0
-
灯織「美味しい! 美味しいです!」
恋鐘「ふぇ〜〜〜!? ひ、灯織〜〜〜!? まだいただきますもやっとらんね?!」
結華「ひ、ひおりん?! そんな大食いキャラだったっけ?!」
灯織「すみません、恋鐘さんの料理があまりにもおいしそうだったので……!」
あさひ「えぇ〜〜〜!? 灯織ちゃん、ずるいっすよ〜〜〜?!」
果穂「あ、あたしも食べたいです!」
灯織「あ、あちらのチャーハンもいただかないと……!」
にちか「うわ……な、なにこれ……風野さん、さっきから様子おかしすぎだよ……」
美琴「よっぽどお腹がすいてたんだね」
にちか「いやいや、にしてもですよ! 大会終わりの野球部じゃないんですから!」
ワゴンの上の料理を片っ端から口に運んだ風野さんは満足そうに「美味しかったです」と声を上げた。
そりゃそうだろうとその場にいた全員が思ったことではあるのだけど、それをやったのが芹沢さんなどではなく風野さんだったことに呆気に取られて言葉は出てこなかった。
- 269 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:23:50.68 ID:R8XLdqbj0
-
灯織「す、すみません……出過ぎた真似を……」
摩美々「や、別にいいんだケド……灯織、大丈夫―?」
灯織「……うう、急いで食べすぎたみたいです」
風野さんはよろよろとお腹を抱えながら大広間を出ていった。
にちか「な、なんだったんだろう……」
恋鐘「パーティで灯織も浮かれとるたい! うちもあれぐらい喜んで食べてもらえたら作った甲斐があるばい!」
雛菜「それじゃあそろそろ雛菜たちもいただいちゃいます〜? 雛菜お腹ペコペコ〜!」
冬優子「そうだね! 灯織ちゃんは抜けちゃったけど……」
摩美々「じゃ、乾杯の音頭は三峰、任せたー」
結華「え?! ま、まあいいか……えーっと……」
- 270 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:25:26.63 ID:R8XLdqbj0
-
結華「この島から全員そろって無事に脱出するための決起集会ということで……とりあえず、かんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
- 271 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:26:36.60 ID:R8XLdqbj0
-
色々とあったけど、とりあえずパーティはその幕を開けた。
それぞれの机の上に豪勢な料理が並び、それを取り囲んでの立食パーティ。
卓と卓とを行き来しながらいろんな人と話をしつつ、パーティは進んでいく。
愛依「にちかちゃん、食べてる〜?」
にちか「は、はい! いや、すごいです……家にいたんじゃこんなの食べられないですから!」
恋鐘「そがん喜んでくれたらうちも嬉しか! ほら、このシュラスコも食べんね!」
あさひ「あ、それおいしそう! 私も食べたい!」
摩美々「ちょっとー、それ今摩美々が取ろうとしたやつなんですケドー……」
夏葉「いい、智代子? デカ盛りに挑むときは急ぐことより咀嚼に力を入れて消化液をより多く分泌するの。野菜を挟むことも肝要ね」
智代子「もちろん! デカ盛りパフェに挑んだ経験を生かす時だね!」
果穂「あ、あたしの顔くらいあります、このフライドチキン!」
千雪「ふふっ、ホントね。かじりついたら美味しさも倍になるよね」
美琴「食べないの?」
冬優子「あ、いや……その、ふゆ、油っぽいのはあんまり……」
透「おー、プロ意識」
雛菜「でも、その割にさっきから麻婆豆腐はいっぱいとってますね〜?」
結華「え? あ、あー……それ三峰も取っちゃってるから減りが早いだけなんじゃないかなー?」
食事の力というのは偉大だ。
馴染みのない人とでも同じ卓を囲めば、ついつい言葉が口から出てしまう。
そんなついついが飛び交って、重なっていくと、頬も綻んでしまう。
どんちゃん騒ぎが繰り広げられて、時間もどんどん過ぎていく。
- 272 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:27:47.62 ID:R8XLdqbj0
- ◆◇◆◇◆◇◆◇
美琴「……ふぅ」
にちか「あれ、美琴さん? どこか行かれます?」
美琴「ちょっと、夜風にあたろうかな。食べすぎちゃったみたいだから」
にちか「だ、大丈夫ですか?! い、胃薬とかいります?!」
美琴「ううん、大丈夫。ちょっと出てれば治るから。それに……この会場にモノクマとか、ルカとかが寄ってきても困るでしょ?」
にちか「見張りってことですか? それならご一緒します……!」
美琴「いいから、にちかちゃんはパーティを楽しんで」
にちか「で、でも……」
美琴「じゃあ、また後で」
にちか「あ、ちょ、美琴さ____
恋鐘「にちか〜〜〜〜! こげんところでなにしとる〜!? ほら、食べんね食べんね!」
にちか「わぁっ?! な、なんでこの人ジュースで酔ってるんですか〜!?」
摩美々「がっつり素面だよー、ほら。恋鐘は雰囲気で酔うタイプだからー」
美琴さんの後を追いたかったけど、なぜか月岡さんに捕まってしまいそのままお別れ。
私はしばらくそのまま酔っぱらい(素面)の対処に付き合うことに。
うぅ……料理はおいしいんだけど、押しつけがましい……
- 273 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:28:45.34 ID:R8XLdqbj0
- ◆◇◆◇◆◇◆◇
あさひ「えっ、このお花って果穂ちゃんが作ったの?!」
果穂「えへへ……千雪さんに教えてもらいました!」
千雪「果穂ちゃんがパーティを盛り上げるための飾りつけを手伝いたいって言ってくれたから、スーパーの布材を使って作ってみたの」
果穂「色付けはあたしがやりました!」
あさひ「へー……あ、そうだ!」
タッタッタッタッ
あさひ「冬優子ちゃん、愛依ちゃん! その花飾り、貸してほしいっす!」
愛依「え? うん、いいけど……何に使う系?」
冬優子「あさひちゃん、ふゆも聞かせてほしいな?」
あさひ「みんなの花飾りを集めて花束を作るっす!」
愛依「花束……? どしてまた?」
あさひ「今、パーティにはルカちゃんがいないけど……料理と一緒に渡してあげたらきっと喜んでくれるっすよ!」
千雪「まあ、素敵!」
果穂「わあ……! あたしも手伝います!」
果穂「すみませーん! みなさんの花かざりを一度回しゅうさせてくださーい!」
- 274 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:30:07.55 ID:R8XLdqbj0
-
ストレイライトの三人と千雪さん、果穂ちゃんは芹沢さんに協力するようで、卓を回って参加者の花飾りを次々に集めていった。
果穂「にちかさんの花かざりも、いいですか?」
にちか「え、あ……うん。ど、どうぞ……」
(正直、あのルカさんが花束をもらったところで喜ぶかは怪しいけど……)
私も特に断る理由はなかったのでそのまま果穂ちゃんに手渡す。
全員分の花飾りを一通り集め終わると、千雪さんが近くにあった装飾品の布とリボンとで起用に一つに取りまとめ、それを芹沢さんに手渡した。
あさひ「じゃあこれ……果穂ちゃん! 渡してきて!」
果穂「え? あたしですか?」
あさひ「わたしはもうちょっと料理食べたいから!」
千雪「そうだよね、こんなにおいしい料理……離れてる間になくなっちゃってたら悲しいもんね」
千雪「果穂ちゃん、貸して。これは私がきちんと責任をもってルカちゃんに届けます」
果穂「あ、す、すみません……ありがとうございます!」
千雪「ううん、いいの。私の分もパーティを楽しんでね」
(やれやれ……芹沢さんの思い付きなのに勝手なもんだな)
- 275 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:31:18.37 ID:R8XLdqbj0
- ◆◇◆◇◆◇◆◇
そうして千雪さんが花束を抱えて会場を後にした数分後。
入れ替わるようにして、風野さんが戻ってきた。
少しげっそりとした様子……最初の暴食で無理がたたった様子だ。
灯織「すみません、ご心配をおかけしました」
夏葉「灯織……大丈夫? さっきは……尋常ではない様子だったから」
灯織「え、ええ……私もそう思います」
愛依「アハハ……灯織ちゃんの分、まだ料理も残してあるよ。さっきの今だから辛いかもだけど、よかったら食べて」
灯織「ありがとうございます……ゆっくりいただきます」
透「これ、美味しかったよ。なんていうんだっけ……ザリ……ザリなんとか」
結華「いやいや、ザリから始まるものってザリガニくらいしかないでしょ?!」
雛菜「それラザニアだよ〜?」
- 276 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:32:31.34 ID:R8XLdqbj0
-
メンバーの入れ替わり立ち代わりが激しかったパーティ会場もいったんは落ち着きを取り戻した様子。
それを受けてか、三峰さんはふと思い出したかのように懐からデジカメを取り出し、全員の前に立った。
結華「あ、そうだ! 今日のパーティの写真撮っときたかったんだよね、一枚撮ってもよろしいですか?」
愛依「オッケー♪」
透「いいね、じゃんじゃん撮ろうよ」
結華「そう言ってもらえるとカメラマンとしても最高! よっし、それじゃあ行くよ〜!」
結華「はい、こっち向いて〜?」
結華「はい、チーズ!」
カシャッ
結華「うん、いい感じいい感じ! 後でスーパーで焼き増しするから、ちゃんと全員にお渡ししますよ〜!」
(うわうわ……283プロのメンバー揃ってのパーティ写真とか、どんだけ価値あるんだろう……?!)
恋鐘「結華、写真どがん感じになったばい? ちょっと見せてくれんね?」
結華「オッケー、ちょっと待って……今アルバム開くから……」
ピピッ
それは突然のことだった。
会場に突如として響く電子音。
てっきりデジカメの操作音かと思い、みんな三峰さんへ視線を送る。
三峰さんは自分ではないとばかりに首を振る。
____そしてその直後。
- 277 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:33:26.74 ID:R8XLdqbj0
-
バンッ!
暗転。
突如として私たちの視界は黒い闇にべったりと上塗りされてしまった。
- 278 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:34:51.27 ID:R8XLdqbj0
-
???「ふぇ〜〜〜〜!? 真っ暗ばい〜〜〜〜〜!」
???「く、くらいですー! て、てい電ですか?!」
???「あは〜! お化け屋敷みたい〜〜〜♡」
俄かにパニック状態に陥る室内。
それぞれがどこにいるかもわからず、誰が何をしているのかもわからない状況に突如陥った。
???「だ、大丈夫です……こういうこともあろうかと……あれ?」
???「やーん! ど、どうしましょう……暗くて何も見えません……」
???「これぞまさにお先真っ暗ってね!」
???「みんな落ち着いて、不用意に動くと危ないわ」
ガシャーン!
???「だ、大丈夫?! 今誰か転ばなかった?!」
???「ちょっとー、今誰か足踏んだでしょー?」
???「え……? な、なん……で……」
タパパッ
???「あれ、から揚げどっか行った……から揚げから揚げ……」
???「ちょ、ちょっと待ってて! うちがどうにかブレーカー入れてくるから! 壁伝いに行けばなんとかなるっしょ!」
???「なんだか目も慣れてきたっすね」
- 279 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:36:15.12 ID:R8XLdqbj0
- そうして暫く思い思いに騒ぎ続けていると……
パッ
あさひ「あ、点いた!」
にちか「わぁっ?! ま、眩しい……!」
トンネルを抜けたかのように、前触れもなく視界が明るくなった。
ずっと闇を見続けていた目にはかえって光が眩しすぎて、思わず腕で自分の目を覆う。
冬優子「もぅ……なんだったんですかぁ……?」
夏葉「設備不良かしら……モノミはこんなこと言っていなかったと思うのだけど……」
徐々に視界の明暗の落差に目も馴染んできた。
私たちは口々に停電に対する不服の声を挙げながら、その腕を下げていき、世界を自分自身の眼で観測を始める。
- 280 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:37:18.41 ID:R8XLdqbj0
-
でも、それと同時だった。
私たちは自分自身の五感に強く違和感を感じた。
それは視覚でもなく、味覚でもなく、聴覚でもなく、触覚でもなく……【嗅覚】。
あさひ「……あれ? なんの臭いっすか? これ」
恋鐘「うちん料理とはまた違った臭い……」
雛菜「ていうか、なんだかすごく嫌な臭い〜……」
私は幼いころにこの臭いを嗅いだことがあった。
小学生の時だったか。自転車でそれはそれは結構激しく転んで、膝小僧を縫うか縫わないか、その一歩手前ぐらいに擦りむいたことがある。
膝は赤々とした色合いで、幼心に目をそむけたくなるくらいの凄惨な有様。
お姉ちゃんに見せるときにも、自分は目をつむっていた。
それでも、わかるのだ。
自分の鼻に届く臭いがあるから。
傷口から流れ出す、命と苦しみをないまぜにした、鼻の奥の奥まで染みついてしまう頑固な臭い。
- 281 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:38:17.92 ID:R8XLdqbj0
-
あさひ「あ! これ、血の臭いっすね」
- 282 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:39:43.02 ID:R8XLdqbj0
-
にちか「……!」
智代子「血の臭いって……なんで……?」
冬優子「う、うそですよね……?」
夏葉「違う! 違うわ! 考えすぎよ!」
背筋を何か冷たいものが撫でた。
それまでのパーティの熱が嘘のように急速に冷えていき、胃袋に溜まった料理が鉛のように重たくなっていく。
そんなこと、あるはずない。
だってこれは、全員で生き抜いていくための決起集会だったはず。
むしろ、あってはならないことなんだ。
そんな言葉を口腔でもごもごと呟きながらも、全員の視線はある一点へと向けられていく。
人間の本能というのは立派なものだ。理性とは無関係に、感覚でそれとわかると勝手にフォーカスを当ててくれる。
それがよくも悪くも……ね。
- 283 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:40:28.68 ID:R8XLdqbj0
-
そして、それは私も例外じゃない。
視線はどんどんと高度を下げていく。
壁、
みんなの顔、
パーティの料理、
それが乗っていた机、
机のその足……
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
- 284 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:41:38.56 ID:R8XLdqbj0
-
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………赤。
- 285 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:42:28.53 ID:R8XLdqbj0
-
【パーティ会場の大広間、その床には風野灯織の骸が転がっていた】
- 286 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:43:13.67 ID:R8XLdqbj0
- -------------------------------------------------
CHAPTER 01
MIDNIGHTのせいにして
非日常編
-------------------------------------------------
- 287 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/25(木) 23:45:32.61 ID:R8XLdqbj0
-
というわけで事件発生まで進めたので本日はここまで。
最近ずっとペースが低調だったので強引にですが進めさせていただきました。
今回の被害者は予想もしやすかったのではないでしょうか。
次回より捜査パートに移ります。
少し点検をしてからにしたいので次回は11/26の夜を予定しています。
安価で行動指定を行う予定なので、参加していただければ幸いです。
それではお疲れさまでした。
- 288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/26(金) 00:24:17.93 ID:o5xbYzCu0
- お疲れ様です!続きを楽しみにしてます!
- 289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/26(金) 00:59:44.59 ID:9KrhxZ/J0
- ガイシャかホシのどっちかだとは思ったけどやっぱりね
最初に飯食い散らかしたのはやっぱ毒味だったのかな
- 290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/26(金) 23:21:31.53 ID:o5xbYzCu0
- 今日はお休みですか?
- 291 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 00:09:45.90 ID:2HvOXjB50
-
すみません、完全に日付を書き込み間違えてました
一日空けて11/27のつもりでした…
お待ちいただいていたところ申し訳ありません!
- 292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/27(土) 00:23:53.42 ID:QFqYBZKM0
- 明日も楽しみにしてます!
- 293 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 20:58:04.13 ID:2HvOXjB50
- -------------------------------------------------
CHAPTER 01
MIDNIGHTのせいにして
非日常編
-------------------------------------------------
- 294 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 20:59:02.60 ID:2HvOXjB50
-
ほんの数分前、下手すれば数十秒前の話だ。
彼女は私たちと一緒に卓を囲んで、食事を口に運んで、和気あいあいとした会話をしていた。
ついさっきまで、生きていたはずなんだ。
……それなのに。
床に体をぐったりと預けた弛緩し切ったその体からは生気というものを一切感じない。
もはや“これ”がちょっと前には生きていたといわれても、信じられないほどに……【死んでいる】。
これまで漠然としたイメージでしか掴んでいなかった『死』が、これ以上ない鮮明かつ立体的で実像的な形で、私たちの前に姿を現した。
にちか「な、なんで……なんで……なんで風野さんが!?」
思わず風野さんの体に手を触れた。
まだその体はほんのりと温かく、彼女が命を落としたのがつい先ほどであったのを物語る。
ただ、その温かさは私の手の中で急速に、静かに……失われていく。
- 295 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:00:11.89 ID:2HvOXjB50
-
智代子「灯織ちゃん! 灯織ちゃん?!」
あさひ「これ……!!」
果穂「……ひお、り……さん……?」
夏葉「……!! 果穂、見ちゃダメよ!」
にちか「……!! と、とりあえず、テーブルクロスでもかけて隠します!」
小学生が見るにはあまりに刺激が強すぎる。
とっさに私は近くにあったテーブルクロスを死体の上からかぶせた。
恋鐘「灯織、灯織……! 何が、何が起きとうね?!」
結華「ドッキリ……じゃあなさそうだよね」
透「……うん」
考えもしなかった事態を前に狼狽する私たち。目の前で起きているそれを咀嚼することができず、何度も何度も疑った。
頬をつねりもしたかもしれない。
悪い夢であってくれ。
そんなことを現実で思う時が来るなんて、思いもしなかった。
____でも、現実はそんな私たちのことを嘲笑う。
- 296 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:02:06.00 ID:2HvOXjB50
-
ピンポンパンポーン!
冬優子「ひゃぁ!? こ、これって……?」
『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』
にちか「……は?」
雛菜「ん〜? 何〜? 今のアナウンス〜?」
矢継ぎ早に理解不能を押し付けてくるのが現実というやつだ。
ショート気味な思考回路に割り込んできた突然のアナウンス。
それを確かめるような時間も与えてくれずに、モノクマは姿を現した。
バビューン!!
モノクマ「どうもです!」
結華「も、モノクマ……! こ、これ何がどうなって……」
モノクマ「どうしたのさ、オマエラ。揃いもそろって校長室のツボを割っちゃったみたいな顔しちゃってさ」
智代子「そ、そんな可愛いものじゃないよ! 灯織ちゃんが、灯織ちゃんが……!」
モノクマ「なあんだ、ちゃんと状況はよくわかってるんじゃない。そうだよ、今この状況はオマエラが目で確認したとおり!」
- 297 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:03:07.16 ID:2HvOXjB50
-
モノクマ「【風野灯織】さんが【オマエラの中の誰か】に【殺された】んだよー!」
- 298 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:05:11.47 ID:2HvOXjB50
-
にちか「……!」
本当に、軽々しく口にした。
人の命が誰かの手によって失われたという新聞でも一面を飾るような大きな出来事を、さも当然に、むしろ娯楽の一つでもあるかのように、飄々と。
夏葉「ふざけないで頂戴……! 私たちの誰かが灯織を手にかけただなんて……そんなこと、あり得るわけないでしょう……?!」
モノクマ「あらあら、放課後クライマックスガールズの年長者たる有栖川さんらしからぬ言動でごぜーますね」
夏葉「ど、どういう意味かしら……?」
モノクマ「最年少の小宮さんを抱え込んでおいて、そんな現実逃避みたいなことを口にしちゃってさ、子供の教育には悪影響なんじゃない?」
智代子「げ、現実逃避なんかじゃないよ! だって……わたしも夏葉ちゃんと同じ考え! 仲間内でコロシアイなんて……!」
モノクマ「……はぁぁぁぁ、めんどっちいなぁもう! イヤイヤ期は未就学児の段階でフツー済ませておくものだよ!」
モノクマ「オマエラがどうこう言おうと確かにそれは勝手さ、でもいつまでも現実を直視しないと困るのはオマエラなんだよ」
摩美々「それって、さっきのアナウンスで言ってた【学級裁判】ってのー?」
(……!!)
(そういえばそんなことを言っていた。これまでに聞いたことのない言葉、それが今から開かれると……)
モノクマ「そう! そしてその【学級裁判】こそがこのコロシアイ南国生活のメインディッシュなのです!」
- 299 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:07:46.44 ID:2HvOXjB50
-
モノクマ「オマエラ、この南国生活のしおりはしっかり確認してくれたよね?」
雛菜「モノミの書いてた、自然を大切にするとか仲良くするとかのやつ〜?」
透「……あれ、なんか増えてる」
にちか「え……?」
モノクマ「クロとなった生徒が本当にほかのシロの生徒に殺害を行ったことがバレていないか精査する、それが【学級裁判】なのです!」
【ルール その5 生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます】
【ルール その6 学級裁判で正しいクロを指摘した場合はクロだけが処刑されます】
【ルール その7 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、校則違反とみなして残りの生徒は全員処刑されます】
【ルール その8 生き残ったクロは歌姫計画の成功者として罪が免除され、島から脱出してメジャーデビューが確約されます】
モノクマ「学級裁判では誰かを殺害したクロを見つけ出すために全員参加で議論を行っていただきます。議論の結果指摘した生徒がクロだった場合は、クロだけがおしおき。間違った生徒を指摘した場合は、クロ以外の生徒全員がおしおきされ、見事クロの生徒が希望ヶ峰学園歌姫計画の成功者として、この島を出ることができるのです!」
モノクマ「ま、ほかにも細々したルールはあるけど、それは後で各自確認しといてよね!」
冬優子「それってつまりは犯人当てをしろってことですか……?」
恋鐘「ちょ、ちょっと待たんね! さっきから言うとる【おしおき】って何―?!」
モノクマ「あー、そっか! オマエラってばおしおきも知らないんだ! あのね、おしおきっていうのはね……」
- 300 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:08:41.36 ID:2HvOXjB50
-
モノクマ「平たく言っちゃえば【処刑】だよ! エクスキューション!」
モノクマ「巨大な火山に突き落として人間とんかつを作るとか、大量のロボットで一斉に斬殺するとか! 薬を大量投入してオーバードーズにするのもいいなあ、いっそシンプルに野生動物を従えて轢き殺すのもあり! 予算があればゲームに見立てて処刑なんかもしちゃったりして!」
モノクマ「いやぁ、今から夢と妄想が膨らみまクリスティーナ!」
- 301 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:10:14.74 ID:2HvOXjB50
-
にちか「……え? い、いやいやいやいや! じょ、冗談だよね……?」
モノクマ「冗談? いつだってボクは本気だよ、ブリバリのマジだよ!」
モノクマ「だってさ、これはコロシアイなんだよ? 一方的に殺すだけじゃ面白くない、殺し殺されのリスクを味わってもらわないと! いわばおしおきはコロシアイにおける、天ぷらの塩ってことだね」
言葉を失った。
モノクマは、ただ私たちの命を弄んでいるんじゃない。
人間としての尊厳すらも、おもちゃとしか見ていない。
人を殺す方法を晩御飯のおかずを考えるときのように、浮足立った口調で話すそれは、別の生物……いや、同じ世界の住人とも思えない異質さだった。
透「……じゃ、灯織ちゃんを殺した犯人を見つけないと……死ぬのはうちら?」
智代子「しかもおしおきなんて、ひどい方法で……」
- 302 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:11:54.88 ID:2HvOXjB50
-
あさひ「……モノクマ、それって誰が正解不正解を決定するっすか?」
モノクマ「あ、そこに関しては安心してくれていいよ。ボクは千里眼を持っているからね、今回の事件の犯人もマルっとスリっとお見通し!」
モノクマ「どっちに加担するとか一切なしに公平に判断いたします!」
雛菜「こんな真っ暗闇で起きた事件なのに〜?」
モノクマ「まあね、クマは夜目が効くからさ」
モノクマ「さ、立ち止まってる時間はないよ! ほら、犯人を見つけないと最終的に困る、死ぬことになるのはオマエラだよ〜!」
にちか「……っ!」
夏葉「……致し方ないわ。捜査を行いましょう」
智代子「夏葉ちゃん!?」
夏葉「……私だって認めたくないわ。でも、だからといって止まっていたら……私だけでなく、果穂や智代子……大切な仲間を失ってしまうことになる。それ以上に耐えがたいことはないもの」
摩美々「……夏葉の言う通りだよ、灯織のためにも今摩美々たちがすべきことはここで泣き叫ぶことなんかじゃないってー」
冬優子「……やりましょう。捜査を……ふゆたちは戦わなくちゃいけないですよ」
夏葉「智代子、果穂のことは頼めるかしら。少なくともこの凄惨な現場は果穂に見せるべきじゃないわ」
果穂「……夏葉さん」
智代子「う、うん……行こう、果穂」
モノクマ「うんうん、えらいね。やっぱりこういう時に場を引っ張ってくれるのは年長者のお姉さん型なんだよね。ボクもお姉ちゃんが欲しかったよ」
摩美々「用件が済んだなら引っ込んでてくれるー?」
モノクマ「ああ、ちょっと待ってよ。まだボクにはやるべきことが残ってるからさ」
ピピッ
モノクマ「オマエラの電子生徒手帳に【モノクマファイル】を送っといたから確認しといてよね!」
モノクマに言われるがまま電子生徒手帳に目を落とす。
見慣れたホーム画面には初めて見るポップアップ。それをタップしてみると、画面いっぱいに刑事ドラマで見るようなプロファイリングのデータのようなものが現れた。
- 303 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:13:30.42 ID:2HvOXjB50
-
モノクマ「これはモノクマファイル! 事件の捜査についてオマエラにとって重要な情報が収められています。死因だとか死亡推定時刻とかってずぶの素人のオマエラじゃわかんないじゃん? そういうのを調べる手間を省いてくれますよ!」
あさひ「でも今回の事件はそこら辺の情報は見ればわかるっすよ」
冬優子「わっ、あ、あさひちゃん!? そんな急にテーブルクロスをめくっちゃダメ!」
あさひ「え、でもこうしないと状況わかんないじゃないっすか」
夏葉「……いずれ直視せねばならない現実よ。果穂もいないし、大丈夫よ」
あさひ「……だって、冬優子ちゃん!」
モノクマ「まぁ今回は不必要かもしれないけどさ、今後の事件では有効になるかもしれないよ!」
摩美々「今後とか、やめてよねー……」
結華「それじゃあこれを踏まえて捜査するしかないか……」
夏葉「ええ……そのようね」
にちか「……」
透「しゃー、やるかー」
恋鐘「ふ、踏ん張りどころばい……気合い入れていかんと!」
モノクマ「では、ボクは捜査の様子を自分の部屋から生暖かい目で見守らせてもらうよ! グッドラック!」
バビューン!!
冬優子「行っちゃいましたね……」
夏葉「……覚悟を決めるしかないわ」
にちか「……は、はい!」
- 304 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:14:35.83 ID:2HvOXjB50
-
イかれてる。
仲間の死ってだけで手いっぱいなのに、それに加えて犯人捜し?
胸に燻ぶるこれに蓋をして、無理やりにでも動けって?
……でも、それをするしかないんだよね。
犯人以外の全員が生きていくのなら、それしか道はない。
……怖い。
死にたくない。
でも、だからこそ、動かなくちゃ。
暗闇に沈んでいる、残酷で凄惨な真実を無理やりにも引きずり出して、白日の下に晒す。
その結果、犯人が死ぬことになろうとも。
____それしか道は、ないんだから。
【捜査開始】
- 305 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:16:12.12 ID:2HvOXjB50
-
さて、まずはさっきモノクマに渡されたモノクマファイルとやらのデータの確認からかな?
『被害者は風野灯織。死亡推定時刻は午後11時30分ごろ。旧館で行われていたパーティ中に発生した停電の中で襲われたものとみられる。死因は胸部を正面から鋭利な刃物で一突きされたことによる臓器損傷によるショック死並びに失血死。ほぼ即死だったものと思われる』
まあ、さっき芹沢さんも言ってたけど今回の情報に関しては『見ればわかる』範疇だよね。
風野さんは私たちの目の前で死んだわけだし、死因も状況を見れば明らか。
一応の見分記録としては使えるかな……?
コトダマゲット!【モノクマファイル1】
〔被害者は風野灯織。死亡推定時刻は午後11時30分ごろ。旧館で行われていたパーティ中に発生した停電の中で襲われたものとみられる。死体は胸部を千枚通しのような細くとがった鋭利な刃物で胸元を貫通している、これが直接の死因となったと思われる。臓器損傷によるショック死並びに失血死。ほぼ即死だったものと思われる〕
-------------------------------------------------
丁度モノクマファイルを確認し終え、捜査を始めようとした頃合いだった。
大広間の扉は突然にものすごい勢いで開かれた。
バンッ!
愛依「い、今のアナウンス……それにこのデータって……?!」
千雪「ひ、灯織ちゃんは……!?」
大広間の殺害現場にちょうど居合わせていなかった人たちだ。
確か愛依さんは停電中にブレーカーを入れるために部屋を出て、千雪さんはもっと早くにルカさんに花束を渡すために部屋を出ていた。
美琴「……本当に、殺人事件が起きたの?」
そして、美琴さんはさらに早くに玄関で夜風にあたっていた。
ルカ「……ハッ! あんなこと言ってた割に……私より先に動いた奴がいるんじゃねーか」
そもそも参加すらしていないルカさんもいるんだけど。
- 306 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:18:58.38 ID:2HvOXjB50
-
四人とも情報は聞きかじった程度でしか知らず、赤い血の中に倒れている風野さんの姿を見るなり、叫ぶでもなく金切り声をあげるでもなく、口元を抑えるようにして戸惑いの色を見せた。
愛依「灯織ちゃんが……ひ、灯織ちゃんが……」
千雪「……そんな」
美琴「……」
ルカ「……けっ」
夏葉「色々と思うところはあると思うけど、今は犯人を見つけることが先決よ。校則に追加された学級裁判のルール、これに則ってシロ側が勝利しなければ……私たちが命を落としてしまう」
愛依「……うぅ……うち、そんな……」
摩美々「今は一秒でも時間が惜しいワケー、だから早いとこ分担も決めとかないとー」
結華「まみみん、分担って?」
- 307 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:21:10.70 ID:2HvOXjB50
-
摩美々「推理する側と現場を保存する側ってとこかなー。ほら、真犯人側からすれば証拠は一つでも取り除きたいじゃーん。見とく人がいないと真実からは遠ざかると思うんだよねー」
透「あー、それじゃ見とくよ。うちら」
雛菜「雛菜も推理とかできそうにないし〜、透先輩の手伝いする〜!」
にちか「あ、あの……! もうちょっといたほうがいいと思います、見張り!」
(流石に浅倉さんと……その仲良しの市川さんじゃ心配だ)
愛依「じゃあうちも見とく……今はまだ、灯織ちゃんのこと、受け入れられそうにないし……」
愛依「ごめん、冬優子ちゃん……あさひちゃんのこと、見てあげて。多分きっと、うちよりももっとショック受けてると思うし」
冬優子「う、うん……」
あさひ「……」
(でも、ショックを受けているというよりも深く考えている、みたいな感じっぽいけどな……)
- 308 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:22:51.42 ID:2HvOXjB50
-
夏葉「それじゃあ残りはとにかく捜査に集中しましょう。証拠を一つでも多く集めて、真実をなんとしても見つけ出すの」
美琴「にちかちゃん、手伝ってもらえる?」
にちか「え、あ、はい! ぜひ!」
美琴「よかった。私は途中からパーティから抜けてたし、その情報も共有しておきたかったの」
にちか「そうですね……美琴さんのお話も少し聞かせていただければ!」
よし、ここからが本格的な捜査だ。
調べるべきはひとまずこの犯行現場である【大広間】。
それにここにいる人たちに【聞き込み】もしなくちゃだよね。
あとは……【倉庫】ぐらい見ておくべきかな。
事件に関係するものはあそこで調達されている可能性も高い!
時間はいつまであるかわからない。
とにかく今は、できることをすべてやり抜くんだ……!
-------------------------------------------------
【大広間の捜査】
1.死体周辺を調べる
2.結華に聞き込み
3.あさひに聞き込み
4.エアコンを調べる
5.美琴と情報共有する
↓1
- 309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/27(土) 21:26:04.09 ID:SCKCfH0t0
- 2
- 310 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:29:21.90 ID:2HvOXjB50
- 2 選択
【結華に聞き込み】
今回の事件において、重要な情報を握っているだろう人が一人いる。
彼女は事件が起きる直前の私たちをそのままの形で可視化された形の情報として持っている。
集合写真という形で。
にちか「結華さん、ちょっと話聞いてもいいです?」
結華「ああ……にっちゃん……うん、大丈夫だよ」
にちか「あの、停電が発生する前にパーティの写真を撮ってましたよね。あれって今見られます?」
美琴「写真?」
結華「ああ、美琴姉さんは知らないか……停電が起きる直前に大広間にいた皆で一度写真を撮ったんだよね。美琴姉さん、千雪姉さんとルカルカ以外の全員が写った写真なんだけど……はいこれ」
結華さんのデジカメを二人で覗き込む。
言った通り、パーティの参加者はほぼ全員が写り込んでいる。
料理を片手に笑顔を浮かべて、まさかこの後に風野さんが命を落とすなんて誰一人として考えていなかっただろう。
結華「あと……一応事件が発生してからすぐに写真も撮ったんだけど、これも見る?」
続いて出てきたのは風野さんの死体を発見した直後の写真。
停電の中でパニック状態だった私たちが荒らしてしまった現場の様子が写っている。
テーブルも一卓倒れていて、料理も散乱している。
結華「うーん、これを見れば大体の停電中の参加者の立ち位置とかわかりそうだよね」
にちか「確かにそうですね……あの暗闇の中で大きく動いた人はそうそういないですし」
結華「確かめいめいが停電を直しに行ったぐらいだっけ……?」
美琴「……ねえ、その写真をもとに立ち位置の情報を整理してもらえるかな。私は開錠にいなかったから、知っておきたいの」
結華「了解! 今の三峰にできるのはそれぐらいだしね! 【上面図】を裁判までに作っておきますよ!」
あの暗闇の中で何が起きたのか、それを今から完全にうかがい知ることは難しい。
でも、立ち位置さえわかればその手掛かりとしてはこれ以上ないはずだ。
結華さん、頑張って……!!
コトダマゲット!【パーティの上面図】
〔結華の写真をもとにした上面図。現在鋭意制作中〕
-------------------------------------------------
1.死体周辺を調べる
2.あさひに聞き込み
3.エアコンを調べる
4.美琴と情報共有する
↓1
- 311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/27(土) 21:50:25.19 ID:QFqYBZKM0
- 1
- 312 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 21:56:33.24 ID:2HvOXjB50
- 1 選択
【風野灯織の死体周辺】
風野さんの死体だ……
胸に深く突き刺さった凶器はもう残っていないけど、そこからあふれ出る血液はまだ乾いてもいない。
それはつまり、命を落とした、その瞬間からそう経っていないことを表している。
美琴「にちかちゃんたちの目の前で事件は起きたんだよね?」
にちか「はい……とはいえ停電中だったので、よく見えなかったんですけど」
美琴「……確かに、今は真夜中だしここには外の光を取り入れられそうな光もないね」
にちか「完っっ全に真っ暗でした。あの中で不用意に動いてたらそれはもう大変だぞー!って感じで」
美琴「……だとしたら、どうやって犯人は灯織ちゃんを刺したのかな?」
にちか「……暗闇でも犯人は見えてたってことなんですかね?」
美琴「どうだろう……ただ、そこにヒントはありそうだね」
(あの暗闇の中ではどこに誰がいるかの判別をつけることは不可能だった)
(……暗闇に目が慣れる、ほどの時間じゃなかったはずだよね)
美琴「さて、死体を少し調べてみようか」
1.死体についている花飾り
2.死体の傍らのスコープ
3.死体にかけていたテーブルクロス
4.死体の近くで散乱している料理
↓1
- 313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/27(土) 22:01:42.62 ID:QFqYBZKM0
- 1
- 314 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:06:30.64 ID:2HvOXjB50
- 1 選択
【死体についている花飾り】
にちか「あ、そういえば風野さん……まだこの花飾りつけっぱなしだったんですね」
美琴「旧館に入る時にもらったやつ? 私もまだつけてるけど……あれ、皆はつけてないんだね」
にちか「あー、そっか! 二人がいなくなってから芹沢さんと果穂ちゃんと千雪さんの花束づくりが始まったからだ」
美琴「花束?」
にちか「はい、全員分の花飾りを集めなおして、それを一つにしたんです。それでパーティに来てない……あっ」
美琴「ルカに、渡してくれようとしたんだね」
にちか「……は、はい」
美琴「気を遣わせちゃったかな。大丈夫、ルカのことを思ってくれたのは純粋にうれしい」
(よ、よかった……)
にちか「でも、結局あの花束ってどうなったんだろう……後で千雪さんに確認しておいた方がいいかもしれませんね」
美琴「うん、私もちょっと……見てみたいかも」
コトダマゲット!【胸元の花飾り】
〔パーティの参加者が胸につけていた花飾り。被害者となった灯織もその胸につけたままになっている〕
【千雪への聞き込みが可能になりました!】
1.死体の傍らのスコープ
2.死体にかけていたテーブルクロス
3.死体の近くで散乱している料理
↓1
- 315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/27(土) 22:12:11.32 ID:QFqYBZKM0
- 1
- 316 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:16:09.31 ID:2HvOXjB50
- 1 選択
【死体の傍らのスコープ】
風野さんの死体のそばにはあまり見なれない、珍妙な機械が落ちている。
双眼鏡のような形状、いやむしろVRゴーグルのようというべきか。
とにかく頭に装着して使う、スコープ型のものらしい。
美琴「……これ、暗視スコープかな」
にちか「暗視……ですか?」
美琴「うん……前、バラエティのロケで使ったことがあるから。これを使えば暗闇でも赤外線で物を見ることができるはず」
(どんなバラエティに出たんだろう……)
にちか「……あれ? それってつまり……これを使えば停電中でも物が見れたってコトじゃないです?!」
美琴「普通ならね。……にちかちゃん、これ、覗き込んでもらえる?」
にちか「え? は、はい……」
にちか「……うわ?! ま、真っ黒ですよ、美琴さん!」
美琴「これ、レンズの部分がペンキか何かで黒色に塗りつぶされてる。スコープとして機能しないように細工がされてるみたい」
にちか「さ、細工?!」
美琴「……これは、どういうことなのかな」
真っ暗闇でも動ける暗視スコープ。
通常ならこれで行動可能なはずだけど……塗りつぶされてたせいで使えない。
じゃあ、これを用意したのって……?
コトダマゲット!【暗視スコープ】
〔死体付近に落ちていた暗視スコープ。通常なら暗闇でも物を見ることができるが、レンズ部分が塗りつぶされて使用不可〕
1.死体にかけていたテーブルクロス
2.死体の近くで散乱している料理
↓1
- 317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/27(土) 22:17:17.30 ID:QFqYBZKM0
- 1
- 318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/27(土) 22:17:34.68 ID:SCKCfH0t0
- 2
- 319 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:20:15.32 ID:2HvOXjB50
- 1 選択
【死体にかけていたテーブルクロス】
死体の傍らには、つい先ほど果穂ちゃんの目から死体を隠すために使っていたテーブルクロスをぐしゃぐしゃにしておいてある。
美琴「とっさの判断……よかったよ」
にちか「え、えへへ……小学生にはさすがに刺激が強すぎですからね」
死体にある傷は胸部の貫通痕のみだけど、あふれ出る血液はかなりの量。
私たち高校生でもうっとたじろいでしまうようなインパクト。
死体に一瞬かぶせただけのテーブルクロスも、その内側に風野さんの血液を写し取って真っ赤に染まっている。
にちか「うわうわ……ここまでついてると洗濯しても落ちませんよ……」
美琴「そうなの?」
にちか「血とかってただでさえ落ちにくいのにここまでべったりだと流石にご愁傷さまって感じです!」
にちか「……いや、この状況じゃ使う表現じゃなかったですね……すみません」
美琴「ううん、気にしてないから」
コトダマゲット!【テーブルクロス】
〔果穂に死体を見せないようににちかが死体にかぶせたテーブルクロス。灯織の血によって真っ赤に染まっている〕
【選択肢が残り一つとなったので自動で進行します】
- 320 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:21:16.38 ID:2HvOXjB50
-
【死体の近くで散乱している料理】
美琴「和洋折衷……恋鐘ちゃん、本当に料理が上手なんだね」
にちか「確かご実家がもともと料理屋さんだって言ってましたよね!」
美琴「うん……流石だよね。こんな串焼きなんか作り方、わからないな」
にちか「夏祭りの屋台とかで売ってるのよりもっとでかいですもんねー……こんなの火も通らないですって」
美琴「……あれ? このシュラスコ……肉だけ串から引き抜いてあるんだね」
にちか「……? え、あ……はい……そうみたいですけど……」
美琴「……」
(……何か気になってるのかな?)
……とはいえ、実家の料理屋さんでこんな料理をふるまっているとは到底思いづらいんだよね。
シュラスコにチャーハン、ラザニア、etc……いったいどんなお店ならこんな取り合わせになるんだろう。
もしかして、ホテルのバイキングとかやってる感じだったりして。
うーん、私もこれぐらいできたほうがいいのかな……?
でも、そのおいしそうな料理の数々はその悉くが床に無残な形でぶちまけられている。
美琴「……勿体ないね」
にちか「はい……これ、結構まだ量がありますよね」
美琴「私がパーティにいた時はこんな風じゃなかったよね?」
にちか「ええ、まあ……多分停電中じゃないですかね。誰かが足を引っかけて倒したみたいなめちゃでかい音がしてたので!」
美琴「それは……倒した人が心配だね」
にちか「あはは……そうですね」
あのしっちゃかめっちゃかな状況なら誰かが倒してもおかしくない。
みんなそう思ってるみたいだけど……どうだろう、これって『そんな認識』のままでいいのかな……?
コトダマゲット!【床に散乱した料理】
〔シュラスコやチャーハン、ラザニアなど和洋折衷の品目の並んだ恋鐘特製料理。停電中のパニックで床に食べかけの料理がぶちまけられている〕
- 321 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:22:53.37 ID:2HvOXjB50
-
にちか「死体のそばで調べられるのはこれくらいです?」
美琴「そうだね。新しく確認したいこともできたから、併せて検証しようか」
にちか「はい!」
-------------------------------------------------
1.あさひに聞き込み
2.エアコンを調べる
3.美琴と情報共有する
4.千雪に聞き込み
↓1
- 322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/27(土) 22:24:26.12 ID:QFqYBZKM0
- 1
- 323 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:26:07.63 ID:2HvOXjB50
- 1 選択
【あさひに聞き込み】
芹沢さん、なんだか深く集中して風野さんの死体を眺めているな……
にちか「せ、芹沢さん……あの、ちょっと、いい……?」
あさひ「……」
冬優子「あ、あはは……あさひちゃん、なんだか考え事してるみたい……ちょっと待ってくださいね」
冬優子「あさひちゃ〜ん? にちかちゃんと美琴さんがお話したいって言ってくれてるよ〜?」
あさひ「……今忙しいっす」
にちか「えぇ……」
美琴「ちょっとでいいの、何か気づいたことはないかな?」
あさひ「今はわたしも捜査中だから、にちかちゃんと美琴さんと一緒っすよ?」
冬優子「ほら、あさひちゃん。あさひちゃんだからこそ気づいたこともあったりするんじゃないかな?」
あさひ「わたしだから気づいたこと……気づいたこと……」
あさひ「特にないっすね!」
にちか「な、無いの?!」
美琴「……聞き方がまずかったかな、きっとこの子は……漠然とした聞き方じゃ分からないんだと思う」
にちか「さ、流石美琴さん! お医者さんみたいな洞察力です!」
美琴「あさひちゃん、あなたの知っていることで私の知らなさそうな情報はないかな」
あさひ「……」
あさひ「あ、それじゃあ美琴さんがいなかった時のことでいいっすか?」
にちか「それってつまり、美琴さんが離席中のときのこと?」
あさひ「ていうか停電中っすかね。あの時、真っ暗闇でみんなの姿は見えなかったっすけど、誰が何をしゃべってたかぐらいは分かったから……それでいいっすか?」
冬優子「え?! あ、あの時の会話を聞き分けて、さらに覚えてるの?!」
あさひ「……? そうっすけど……どうかしたっすか?」
美琴「聞かせてもらえる?」
あさひ「はいっす。えっと確か……」
- 324 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:27:14.05 ID:2HvOXjB50
- ◆◇◆◇◆◇
バンッ!
恋鐘「ふぇ〜〜〜〜!? 真っ暗ばい〜〜〜〜〜!」
果穂「く、くらいですー! て、てい電ですか?!」
雛菜「あは〜! お化け屋敷みたい〜〜〜♡」
灯織「だ、大丈夫です……こういうこともあろうかと……あれ?」
冬優子「やーん! ど、どうしましょう……暗くて何も見えません……」
結華「これぞまさにお先真っ暗ってね!」
夏葉「みんな落ち着いて、不用意に動くと危ないわ」
ガシャーン!
智代子「だ、大丈夫?! 今誰か転ばなかった?!」
摩美々「ちょっとー、今誰か足踏んだでしょー?」
灯織「え……? な、なん……で……」
タパパッ
透「あれ、から揚げどっか行った……から揚げから揚げ……」
愛依「ちょ、ちょっと待ってて! うちがどうにかブレーカー入れてくるから! 壁伝いに行けばなんとかなるっしょ!」
あさひ「なんだか目も慣れてきたっすね」
パッ
◆◇◆◇◆◇
- 325 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:29:41.73 ID:2HvOXjB50
-
あさひ「多分こんな感じだったっす」
冬優子「す、すごい……あさひちゃん、流石の記憶力だね」
美琴「……だいぶ混乱していたんだね」
にちか「突然でしたからねー」
美琴「……それにしても、灯織ちゃんの発言がなんだか不思議だね」
≪灯織「だ、大丈夫です……こういうこともあろうかと……あれ?」≫
美琴「停電になっても何か対策をしていたような口ぶり……でも最終的に彼女も動揺している」
冬優子「何かがうまくいかなかったんでしょうか……?」
≪灯織「え……? な、なん……で……」≫
美琴「そして彼女が刺されたのはこのタイミングかな?」
にちか「ちょうど大きな物音がした直後くらいですねー、その後に水が飛び散るような音がしてて……」
あさひ「多分返り血っすね。突き刺した瞬間に犯人は灯織ちゃんの血液を浴びたはずっすよ」
美琴「……でも、そんな人はいないよね?」
冬優子「どういうことなんでしょう……」
美琴「……あさひちゃん、邪魔してごめんね。ありがとう、参考になったから」
あさひ「そっすか? それならよかったっす!」
芹沢さんから聞けた停電中の私たちのやり取り……
具体的に何か判明したわけじゃないけど、死の直前の灯織ちゃんの言動が少しでも分かったのは収穫かな?
コトダマゲット!【あさひの証言】
〔あさひは旧館が停電になった時の反応を正確に聞き取っていた。発言は以下の通り。
恋鐘「ふぇ〜〜〜〜!? 真っ暗ばい〜〜〜〜〜!」
果穂「く、くらいですー! て、てい電ですか?!」
雛菜「あは〜! お化け屋敷みたい〜〜〜♡」
灯織「だ、大丈夫です……こういうこともあろうかと……あれ?」
冬優子「やーん! ど、どうしましょう……暗くて何も見えません……」
結華「これぞまさにお先真っ暗ってね!」
夏葉「みんな落ち着いて、不用意に動くと危ないわ」
ガシャーン!
智代子「だ、大丈夫?! 今誰か転ばなかった?!」
摩美々「ちょっとー、今誰か足踏んだでしょー?」
灯織「え……? な、なん……で……」
タパパッ
透「あれ、から揚げどっか行った……から揚げから揚げ……」
愛依「ちょ、ちょっと待ってて! うちがどうにかブレーカー入れてくるから! 壁伝いに行けばなんとかなるっしょ!」
あさひ「なんだか目も慣れてきたっすね」〕
-------------------------------------------------
1.エアコンを調べる
2.美琴と情報共有する
3.千雪に聞き込み
↓1
- 326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/27(土) 22:29:52.94 ID:QFqYBZKM0
- 2
- 327 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:32:51.25 ID:2HvOXjB50
- 2 選択
【美琴と情報共有】
美琴「それじゃあ私が合流するまでのことを聞かせてもらえるかな」
にちか「はい……えっと、覚えている限りで全部、お話しますね!」
私は美琴さんにすべてのことを話した。
パーティの中の騒ぎの様子から停電中のパニックまで。
流石に詳細部までは伝えられなかったけど、何があったかぐらいは全部伝えることができたはず。
美琴さんは私の話を聞き終えると、「そう」とだけ返し、私にも情報を少しだけ与えてくれた。
美琴「私は……ずっと玄関にいたの」
にちか「旧館のですか?」
美琴「そう、出てすぐのところ。モノクマやルカが近づいてこないようにじっと見てたんだけど……誰も近寄っては来なかったかな」
にちか「まあ、そうですよねー……」
美琴「一回だけ、千雪さんが出ていったときはあったけど、出入りもそれぐらいかな」
(千雪さんが出ていったのは、きっと花束を作ったときのことだな……)
美琴「ごめんね、特に何も見ていなくて」
にちか「いえいえ! 美琴さんは何も見ていない、それだけでも重要な情報になりますよ!」
美琴「そうなの?」
にちか「はい!」
コトダマゲット!【美琴の証言】
〔美琴が旧館の玄関に出てからは、千雪が出て行ったのみで他に誰も来ていない〕
-------------------------------------------------
1.エアコンを調べる
2.千雪に聞き込み
↓1
- 328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/27(土) 22:34:59.08 ID:QFqYBZKM0
- 1
- 329 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:36:56.97 ID:2HvOXjB50
- 1 選択
【エアコン】
美琴「そういえば、なんだかやたら涼しいような気がするね」
にちか「言われてみれば……夜ってのもありますけど、むしろ肌寒いくらいです!」
美琴「……もしかして、エアコンがついてる?」
にちか「……! そうみたいです!」
よく耳を澄ますとどこかから風が吹き込むような音がしている。
ボロい旧館ではあるものの、流石に隙間風が差し込むほどじゃない。
これは間違いなく、空調から出ている音だ。
にちか「そういえば、停電が発生する直前に……」
≪恋鐘「結華、写真どがん感じになったばい? ちょっと見せてくれんね?」
結華「オッケー、ちょっと待って……今アルバム開くから……」
ピピッ≫
にちか「何かが作動するような電子音が鳴ってました!」
美琴「……! ちょっと、見てみようか」
美琴「……やっぱり、23時30分にタイマーが設定されている。この島の気候は割と穏やかなようだから誰も操作せず、気づかなかったんだね」
にちか「じゃあこれって……何か意図的なものってことですよね」
美琴「停電とも無関係には思えないかな、ちゃんと抑えておいた方がいい情報だと思う」
にちか「は、はい!」
コトダマゲット!【エアコンのスイッチ】
〔大広間のエアコンは事件発生直前の午後11時30分に起動するようにタイマーがセットされていた。なお、停電が起きたのはその直後〕
【選択肢が残り一つとなったので自動で進行します】
- 330 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:38:05.46 ID:2HvOXjB50
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【千雪に聞き込み】
千雪「……」
千雪さん、かなり思いつめた表情をしているな。
事件が起きたのは偶然にも彼女がパーティ会場を後にしたとき。
今この島にいる人間の中では年長者の部類にあたる彼女からすれば何か思うところがあるのかもしれない。
にちか「あの、千雪さん! 今ちょっと話聞いてもいいですか?」
千雪「あら? うん、大丈夫だけれど……どうしたの?」
にちか「えっと……千雪さんがパーティを途中で抜けた時の話をちょっと伺いたいんですけど……」
千雪「……! ええ、そうよね……停電中に姿を消してたんだもの、疑われても仕方ないよね」
にちか「え、ええ?! そ、そういうわけではなくてですね!」
美琴「みんなの花飾りを集めて作ったっていう花束について聞きたかったの。私はその花束づくりを知らなかったし、にちかちゃんも千雪さんが旧館を出てからのことは知らないから」
千雪「なんだ、そうだったの……でも、特に話せるようなことは何もないかなぁ……」
- 331 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:39:03.42 ID:2HvOXjB50
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千雪「あさひちゃんの思い付きでルカちゃんに花束を渡すことになって……会場に居合わせた灯織ちゃん、美琴ちゃん、ルカちゃん以外の全員の花飾りで花束を作ったわ」
千雪「それを私が代表してルカちゃんに渡しに行った……でも、結局ルカちゃんは見つからずにそのまま今の状態に至るの」
にちか「午後11時30分ごろはどのあたりにいましたー?」
千雪「えっと……ロケットパンチマーケットのあたりかしら? でも誰もアリバイを証明してくれる人はいないな」
美琴「大丈夫、旧館から出ていく千雪さんは私が見ているし、戻ってくる千雪さんは見ていない。停電の最中に事件に関与できないのは私が把握してる」
千雪「そ、それならいいんだけど……」
千雪さんは灯織さんを刺すことはできなかった。
それよりも重要なのは花束周りの話だよね。
誰の花飾りが使われてなかったのか、それが結局ルカさんの手にはわたっていないこと。ここら辺を押さえておく必要がありそう。
コトダマゲット!【花束】
〔パーティの参加者が身に着けていた花飾りを使って作った花束。あさひがパーティの最中に思い付いたものであり、灯織・美琴・ルカ以外でその場に居合わせた参加者全員の花飾りを使って制作した。ルカに渡す予定だったが、結局渡すことはできなかった〕
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にちか「大広間での捜査はこんなところですかねー……」
美琴「そうだね……上面図ができるまでには時間もかかりそうだし、ほかのところを調べておこうか」
にちか「それなら倉庫を見といたほうがいいかもです、廊下の奥まったところだし、何かを調達するにはもってこいですから!」
美琴「わかった、倉庫に行ってみようか。時間もあまり残っていないようだから、急がないとね」
にちか「はい!」
- 332 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:40:28.41 ID:2HvOXjB50
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【倉庫】
みんなの掃除のおかげか朝には蜘蛛の巣まみれだった倉庫も、今は見違えたように綺麗になり、備品も基本的には整然と並べられている。
コンセントの前の不自然なアイロン台を除いては。
美琴「……あれ? これ、出しっぱなしみたいだね」
にちか「ですねー、コンセントにも刺しっぱなし……これ電気代めっちゃかかるやつですよ」
美琴「アイロン……みたいだね。しかも三台も」
にちか「まさか誰かがシャツを三つもしわ伸ばしした―とかじゃないですよね。これ」
美琴「……それか三台ぶんくらい大きなシャツを着ていたとか」
にちか「あはは! そんなの巨人じゃないですかー!」
美琴「でも、これはおそらく意図的なものなんだろうね」
にちか「そうですよねー……何もなしにこんなことするわけないし」
美琴「……何を狙っているのかな」
挿しっぱなしのアイロンか……
いつからこのままなのかは正確にはわからないけど、挿した時から数えると相当に旧館内の電力を食っていたはずだよね。
そこから見える狙いって……?
コトダマゲット!【倉庫のアイロン】
〔旧館倉庫でコンセントに挿しっぱなしになっていたアイロン三台。いつからそのままかはわからないが、相当に旧館の電力を消費していたものと思われる〕
- 333 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:41:18.17 ID:2HvOXjB50
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【棚】
倉庫の棚も、はじめのゴミ屋敷のようなありさまとは見違えたように綺麗に整列されている。
確かここも風野さんが整理整頓していたっけ。彼女の性格、その「らしさ」が前面に押し出された寸分の乱れもない並べ方。
美琴「すごいね、こういうビニールひもとかって散乱しやすいのに。よくまとめてある」
にちか「真ん中に押し込んだりしてもすぐ撓んじゃいますよねー、わかります!」
美琴「専用のケースも使わずに……縁側を紐自身で結んであるんだね。器用な整理の方法」
にちか「にしても他のものもほとんど乱れてないし……流石は血液型A型ですよね!」
美琴「ふふ、そうかも。……あれ、これは誰かが使用したのかな」
にちか「美琴さん?」
美琴「この缶だけ蓋がちゃんとしまってないから……これって、夜光塗料?」
にちか「夜光塗料って言うと暗闇でもほんのり光るやつですよね?」
美琴「うん、そう……バミる時とかでも使うことがたまにあるかな。暗所でも位置とか場所が確認できる便利な塗料なの」
にちか「ふーん……それを、誰かが使ったんですよね」
美琴「……私は特に使用先にピンとくることはないかな」
誰かが使った夜光塗料か……
暗所で用いるには効果的、今回の停電とも何か関係があるかもしれないよね。
コトダマゲット!【夜光塗料】
〔倉庫に備蓄してあった塗料。暗闇の中でもほのかに発光し、大体の位置などを確認することができる。何者かが使用した痕跡がある〕
- 334 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:42:48.17 ID:2HvOXjB50
-
他に倉庫にはとくにみるべきものも何もない、そう考えて部屋を出ようとした。
にちか「あ、あれ……? 美琴さん……どうしました、何か気になるものでもある感じです?」
美琴「えっと……そうだね、ちょっとだけ」
美琴さんの視線の先にあったのは段ボールの山。数段にわたってずっしりと積み上げたそれはおいそれと簡単には運べなさそう。
でも、美琴さんが目を付けたのは段ボールそのものではなく、その下。
美琴「ここ……なんだか妙な跡がついてるの」
にちか「跡ですか……?」
美琴「昼の掃除で全体的にきれいにした後だけど、ここの一部分は色が少しほかの床と違って……何か物を引きずったように埃がつぶれて引きずられてる」
にちか「……わ、ほんとですね! 多分この段ボールを引きずった跡ですよこれ!」
美琴「すこし、どけてみようか」
にちか「はい!」
美琴さんの指示に従っててきぱきと段ボールを他所にどかす。
最後の段ボールを持ち上げた時、私たちの目に飛び込んできたのはこれまでに見たことのない取っ手付きの区画。
引き上げればパカっと外れてしまいそうな……
美琴「……扉?」
- 335 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:44:01.90 ID:2HvOXjB50
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そういえばこの旧館は床が高く作られている。玄関から入る時でも数段階段を上って入館する設計だったはずだ。
実際、扉を引き上げてみるとそこは収納ではなく、明確な床下としての空間があるようだった。
美琴「入ってみようか」
にちか「み、美琴さんは入っちゃダメです! こんなとこ、絶対ばっちいですから! 私が代表して入るので……美琴さんは待っててください!」
美琴「そう?」
少し扉を開けただけでも埃が舞い上がった。
昼の掃除でもだれも手をつけてない空間なんだろう。
こんなんじゃゴキブリやネズミが住み着いている可能性もある。
そんなところ、美琴さんに入ってもらう訳にはいかない。
慌てて私は名乗りを上げて、美琴さんの代わりに飛び込んだ。
にちか「うーわ、暗……」
ただ、床下空間はほとんど真っ暗。床板の隙間から部屋の光が多少差し込んではいるものの、ほとんど見えてないのと同じ。
這いつくばって進むにしても、前後すら怪しいみたいな空間だ。
美琴「……何か怪しいものはあった?」
にちか「いや、全くって感じです……そもそも物があるかどうかすら見えないし、こんなの誰も入れないですって」
目立った成果も上がらず、私たちは床下の調査を引き上げた。
美琴「残念。せっかく新発見だと思ったんだけどな」
にちか「い、いや! 発見は発見ですよ! 事件に使うのは難しそうですけど……何か別の方法があったのかもしれないですし……!」
美琴「一応、覚えておくだけ覚えておこうか」
にちか「はい!」
- 336 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:45:29.32 ID:2HvOXjB50
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にちか「大体捜査はし終えましたかね、美琴さんも状況はつかめました?」
美琴「うん……大体は。でも、まだ時間が残っているのなら、もう一つだけ調べておきたいところがあるの」
にちか「どこですか?」
美琴「灯織ちゃんの部屋。……彼女がパーティの直前まで何を考えていたのか、それを知りたいの」
思えば、パーティの最中の彼女はいつもとは様子が違っていた。
どこか気弱だけど、責任感は強くて、なんでも一人で背負いこんでしまう。
そんな彼女の性格の起伏の上振れと下振れとが同時に顔を出したような、そんなチグハグとした振る舞いが見て取れた。
何が彼女にあんな行動の数々を取らせたのか、確かにそれはこの島にいる全員が知っておくべきことだろう。
私は美琴さんに賛同の意志を示した。
- 337 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:48:08.98 ID:2HvOXjB50
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【灯織のコテージ前】
にちか「来ちゃいましたけど……でも、どうやって入りましょう」
美琴「そっか……鍵もないもんね……どうしよっか」
美琴さんはあたりをきょろきょろと見渡すも解決の方法が見つからないとみるやいなや、すぐに口に手を添えて呼びかけ始めた。
美琴「モノクマ! 力を貸してもらえるかな」
にちか「そ、そんなスマホのAIアシスタントじゃないんですから……」
バビューン!!
モノクマ「およびですか!」
にちか「で、出た!?」
美琴「うん、灯織ちゃんの部屋の鍵を開けてほしいの。頼めるかな」
特に驚く様子もなく淡々とモノクマに開錠を要求して見せる美琴さん。
モノクマの音速レスポンスとか、色々と私としては気になるところではあったんだけど……美琴さんのお邪魔をしてはならない。
その手はすぐに引っ込めた。
- 338 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:49:15.00 ID:2HvOXjB50
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モノクマ「えっ?! 女子高生の部屋の鍵を開けてしまうなんて……そ、そんな破廉恥な!」
にちか「は、ハレンチって……死語ですよ、おじさんくさすぎます!」
モノクマ「死語とはなんだ死語とは! 温故知新という言葉を知らないのか!」
にちか「もうそのキレ方がおじさんなんですって……!」
美琴「二人で楽しくおしゃべり中のところ悪いけど……扉は結局開けてもらえるのかな」
モノクマ「だから言ってるでしょ! 教育者としてはそんなインモラルな企てには協力できないよ!」
にちか「美琴さんがそんなことするわけないじゃないですか!」
モノクマ「いや、分からないよ……案外その澄ました表情の裏はとんでもない野獣が潜んでいるのかもしれないよ……?!」
美琴「ううん、やましいつもりがあるわけじゃないの。これも捜査のためだから」
(うわぁ……モノクマの発言とかガンスルーだよ美琴さん……)
モノクマ「なんだよノリ悪いなぁ……まあいいですよ、例えハレンチ目的でも許可してましたし」
モノクマ「死人に口なし、プライバシーなし! 思う存分隅から隅まで調べていいよ。彼女相当ため込んでたみたいだしさ」
美琴「……ため込んでた?」
モノクマ「クックックッ……まあそれは自分の目で見たほうが早いよ。あのパーティの裏に隠された彼女の葛藤はきっとすぐに感じ取れるからさ」
バビューン!!
にちか「い、行っちゃいましたね」
美琴「あのパーティの裏に隠された葛藤……か。にちかちゃん、見てみよう」
にちか「は、はい!」
モノクマは言葉通り開錠を済ませておいてくれたようで、扉はすんなりと開いた。
- 339 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:50:32.54 ID:2HvOXjB50
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【灯織のコテージ】
持ち主を失った部屋はどこか空虚な雰囲気が漂っていた。
それは風野灯織という人間の人柄によるところもあっただろう。
本やスリッパなどすべての並びがきっちりと揃えられ、ベッドの布団ですら折り目正しく整えられたそこは、もはや未使用と言われても気が付かない。
生活感をうかがい知れるのは、シャワールームの壁についたわずかな水滴。
そして、机の上に広げられた、少しだけ縁にくしゃっとしたゆがみのある紙一枚ぐらい。
美琴「この紙……」
すぐに私たちはその紙を手に取って広げてみた。
- 340 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/27(土) 22:51:22.31 ID:2HvOXjB50
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『今夜必ず誰かが死ぬ
夜を一人で過ごさぬようご用心』
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