カルネアデス・プリズム(名探偵コナン×竜とそばかすの姫)

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83 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/12/09(木) 02:45:53.61 ID:4yq8c2840

「なあに、コナン君?」

「何よガキンチョ?」

コナンに服を引っ張られた蘭と園子が口を開く。

「だから何やってんだよ?」

二人が寄せた耳にコナンがごにょごにょ囁き、
蘭と園子は頷き合うと小五郎に構わず佐藤に近づき囁いた。
佐藤が瑠果の目の前で視線を合わせて声を掛け、
瑠果がスマホを差し出す。

「ちかみ、と言うのは漢字でせんどうと書きますか?」

「はい」

佐藤の問いに瑠果が深過ぎるぐらいに頷いて答える。

「目暮警部、取り敢えず時間的にも
部屋にいた理由は一応説明がつくみたいです」

近づいた目暮がスマホを確認し、
ポリスモードのメール機能を使っている佐藤の横で
「ふむ」と一言呟いた。

==============================

今回はここまでです>>70-1000

続きは折を見て。
84 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/12/31(金) 01:10:03.93 ID:Nw84XdKs0
まずは訂正です

>>16
×蘭が言い、スマホを操作し始めた。
○蘭が言い、携帯を操作し始めた。
>>17
×その上で額に占められた白鉢巻きの緒が翻る。
○その上で額に締められた白鉢巻きの緒が翻る。
>>19
×真純の言葉に、スマホを掲げた蘭が答えた。
○真純の言葉に、携帯を掲げた蘭が答えた。
>>30
×真純の言葉に蘭と園子もスマホを取り出す。
○真純の言葉に蘭と園子も自分の携帯を取り出す。

ええ、知ってましたよ。知ってた筈なんですけどね、
完全に手癖書きの失態ですねこれ。
申し訳ありませんでした。

改めまして。
それでは、今回の投下、入ります。
85 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/12/31(金) 01:11:39.03 ID:Nw84XdKs0

==============================

>>83

ーーーーーーーー

「では、お願いします」

事情聴取と搬送調整の見込みがついた事で、
渡辺瑠果は救急搬送に移された。
その一方で、佐藤美和子警部補は
捜査員用携帯電話のポリスモードで電話に出ていた。

「初士路留君だったね」

電話を切った佐藤と少し話し込んでいた目暮警部が、
路留に声を掛ける。

「はい」

「港南高校の」

「はい」

「ちょっと来てもらえるかね」

ーーーーーーーー

父の初士雅人に付き添われて路留が連れて行かれた先は、
すぐ隣の研修室だった。

「ここが、君達の控室だね?」

「はい」

目暮の問いに路留が答える。
86 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/12/31(金) 01:13:12.63 ID:Nw84XdKs0

「これに見覚えは?」

「? いえ」

横から現れた佐藤にポリスモードの画面を見せられ、
その中に何やら巻かれた紙を見て路留が否定する。

「これなんだが」

目暮に、研修室前方の長机を示され、
路留は怪訝に目を細めた。

「全く心当たりはないですけど、
間違いなく事件関係ですよね?」

「一見してそう見えるわね」

路留の言葉に佐藤が応じた。
二つの机の上に乗っている一つは
被害者渡辺瑠果等が通う高知の高校名が書かれた張り紙。
もう一つは、ナイフだった。

「書体等から見ても、
こちらで用意して控室の前に張られていたもの、でいいのかな。
ナイフは軍用のパラシュートナイフか」

「君かね」

顎を指で挟んで呟く世良真純に、目暮が呆れた様に言った。

「すいません、ちょっと路留君が心配で」

「パラシュートナイフ? スカイダイビングに使うの?」

頭を下げる蘭の隣で、園子が聞いた。
87 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/12/31(金) 01:14:58.87 ID:Nw84XdKs0

「正確にはパラトルーパーナイフ、だったかな。
パラシュート部隊が、外せなくなった
紐を切ったりするのに使うナイフだと思うけど」

「そう。これは昔のドイツの軍用モデルだね。
アメリカで製造してるレプリカだとすると、
ある程度量は出回ってる筈だね」

路留の説明に真純が続けた。

「一つ一つも大事だけど、状態だよね」

そう言ったコナンが、
コナンをとっ捕まえようとする小五郎の腕をすかっと交わして
長机の側の椅子から床に降りる。
コナンの言葉通り、
長机の上に広げられている張り紙は×字に切り裂かれていた。

「これは、やっぱり血痕?」

切り口の縁の汚れを指して真純が言う。

「詳細な鑑定はこれからだけど、血液型までは一致してる。
ナイフの血痕もね」

佐藤が言う。剥き出しになっているナイフの刃も、
言われてみればと言う感じで汚れていた。

「これ、このナイフって、もしかしてこの張り紙に包まれてたの?」

「どうしてそう思うんだい?」

(い゛っ)


顔見知りの佐藤に尋ねたコナンが、
横から口を挟む路留の声に喉を引きつらせる。
88 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/12/31(金) 01:18:27.10 ID:Nw84XdKs0

「え、ええと、変な折り目が付いてるし、
それに、切った時のじゃない、
血の着いたナイフを張り付けたみたいな汚れもあるかなー、なんて」

「だったら、さっきの紙包みかな?」

やたら可愛らしい声のコナンの答えを聞いて、路留が言った。

「ええ、そうよ。あんな風に包まれた状態で、
長机の下の床に放り出されてた」

佐藤が答えた。

「この控室を最後に出たのは?」

「僕です」

目暮の問いに路留が答える。

「君一人かね?」

「はい。身支度に時間がかかって」

路留が、学ランを軽く摘まんで言った。

「鍵は?」

「僕が施錠して受付に預けました」

佐藤の問いに路留が答える。
89 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/12/31(金) 01:25:31.70 ID:Nw84XdKs0

「じゃあ、ナイフを発見した時鍵は開いてたの?」

尋ねたのは、入口近くに移動したコナンだった。

「ああ、開いていたそうだ」

目暮が答える。

「路留君、もう一度聞くけど鍵は掛けた?」

「もちろん」

やはり入り口近くに移動していた真純が、路留から返答を得る。

「これで僕が犯人なら、いわゆる名刺事件、と言う事になるかな」

「現場にてめぇの名刺を置いて行く、
それぐらい簡単な事件って古いデカ言葉だな」

「そして、捜査の裏を掻く為にそれをやる犯人もいる」

路留の言葉に、小五郎と佐藤が言った。

「只、客観的に見ても僕に犯行は難しいと思いますよ。
さっきも言ったけど、
僕はあの学校の吹部とエレベーターホールで合流してる。
その後で、毛利君とそこの庭で合流した。
これで僕が犯人だと言うなら、僕はジャック・ザ・リッパー並みの
早業と悪運の持ち主と言う事にならないかな」

「それは、吹奏楽部にもおいおい確認するとしよう」

路留の言葉に、目暮が言った。

「確かに、その状況でこの鍵だと別の可能性を考えた方がいいかな?」

「ん? ああー、これならそっちの方がありかもな」

真純の言葉に、コナンの確保に動いていた小五郎が反応して
ドアのピンシリンダー錠を確認して言う。
それを見て、目暮が鑑識と打ち合わせて小五郎達が鑑識に場を譲った。
90 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/12/31(金) 01:27:29.03 ID:Nw84XdKs0

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今回はここまでです>>84-1000

なんとか紅白前に一話投下出来た。
と言う、一区切りにも程遠い自己満足な年の瀬ですが、
来年もぼちぼちやらせてもらいます。

それでは良いお年を。

続きは折を見て。
91 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/01/24(月) 19:35:07.08 ID:IA38rMJE0
あけましておめでとうございます。
正月と言う時期でもありませんが、一月中に新年一回目の御挨拶を。

それでは今回の投下、入ります。

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>>90

ーーーーーーーー

「ねえ、高木刑事」

一度廊下に出たコナンが、高木に声を掛ける。

「あれって………もしかしてテープ?」

コナンが指さしたのは、鑑識が壁に描いた白い囲みだった。

「ちょっと待ってよ」

高木が、ポリスモードを操作した。

「そうだね。まだ残ってるけどあそこに両面テープが貼られてる」

鑑識資料を確認した高木が言った。

「だとすると………もしかして、カメラかな?」

コナンが言う。

「ほら、小さくても遠くに映像を飛ばせるカメラがあるって
テレビで観た事あるから」

「だとすると魚眼かな」

「あ、ミチル姉ちゃん」

後ろからの発言に、コナンが乾いた声で応じる。
92 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/01/24(月) 19:37:29.75 ID:IA38rMJE0

「いくら素人の女子でも、控室に三人も四人もいたら犯行自体が難しくなる。
慣れない人間ならごまかせるカモフラージュで壁にカメラを張り付けて、
そこから目的の控室、或いはその周辺の部屋まで出入りを監視して
控室が一人になるのを待っていた。むしろ、そう考えないと辻褄が合わない。
そうでなければ、余程の行き当たりばったりの悪運持ちか
パラトルーパーナイフ振り回してもっと最悪の犯行でも上等の凶悪犯かだ」

「ごめんなさい、ちょっと」

そこに佐藤が現れ、高木と共に路留を港南高校の控室に連れて行く。

「ねえ」

コナンに声を掛けたのは哀だった。

「どう?」

「あー、どうも繋がんねー」

哀の問いに、コナンが答えた。

「一番解んねーのはあの皿と焼肉だ」

「多分硫酸、それに溶けたゴムが浮いてた」

「ああー、もしかしたら時限装置じゃなくて判じ物かもな」

「判じ物?」

「ああ、相手は女の子の顔に傷を付ける変態野郎だ。
刃物で女に傷を付ける、焼けた肉片、あの肉片がレバーだとすると」

「女性を切り裂く、レバー、ジャック・ザ・リッパー」

「その線もあるかもな。だから、別の皿にも、
美少女の顔に切り付ける変態野郎にしか理解出来ない
何かの意味があるのかも知れない」
93 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/01/24(月) 19:39:23.83 ID:IA38rMJE0

「何かのメッセージ、って事?」

「腹が溶けてて分かり難かったけど、あのゴムは二重になってた。
口を縛った一つ目の袋を二つ目の袋に入れて口を縛ってる。
その内側に硫酸が入ってたんだ。
袋の口を縛る、例えば織田信長が受け取った暗号」

「確か、あれは小豆だったかしら?」

「ああ、両方縛って袋の鼠。だけど、今回のは片方、
あれにしたら普通の縛り方だ、
本来の使い方だと、刺激を和らげる為にああやって二重にする、
ってのは聞いた事はあるけど」

「それ、やめた方がいいわよ。カウントダウンを遅らせる以前に
イレギュラーな摩擦で破損や脱落の原因になるから
行き着く先は土下座からの一本背負いって事になるわね」

「バーロ。だけど、その線の判じ物って事は考えられるな」

「だとすると、まあ十中八九犯人の勝手な妄想の産物ね」

「そこまで決め付けていいのか?」

「少なくとも彼女、渡辺瑠果に心当たり、それに繋がる自覚は無い。
女の目であの娘の一連の反応を見てたら解るわよ。
この推測が外れならアカデミー賞ものね」

「ねえ、世良君。あれは末恐ろしいと言うべきなのかな?」

「まあ、知ろうともない馬鹿野郎よりは遥かにマシじゃないのかな?」

ちょっとした確認の後に自校の控室を出ていた路留が、
真純と言葉を交わして二人で苦笑する。
94 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/01/24(月) 19:40:40.54 ID:IA38rMJE0

ーーーーーーーー

「なあ、気が付いたか?」

犯行現場である控室にするりと移動していたコナンが、
隣を歩く哀に声を掛ける。

「ええ」

二人がさり気なく視線を向けた先には、床に荷物が置かれていた。

「ザックが二つ、その上にジャケットが掛けられてる。
被害者の顔の痕跡とあのジャケットの痕跡から言って、
被害者渡辺瑠果は意識を失った状態であの上に寝かされていた」

「それも、恐らく上半身をあのザックの上に乗せてね」

「ああー、彼女の顔には、血と唾液が真っ直ぐ横向きに流れた痕跡があった。
そして、ジャケットにも丁度それに合いそうな痕跡がな。
彼女は上半身をあの上に乗せて横向きに寝かされていた、
そう見るべきだろうな」

二つ並べられて、その上にジャケットが掛けられたザックを横目に
コナンと哀が言葉を交わす。
95 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/01/24(月) 19:44:17.25 ID:IA38rMJE0

「渡辺瑠果の供述を要約すると、作業服の男にスタンガンを当てられて、
脱力した所に薬を嗅がされて意識を失った。恐らくこの手順だろう。
だけど、これ自体簡単じゃない」

「そうね。意識だけを失う様な薬、
それも外部から投与するのは本来コントロールが難しい」

「ああー、外からの投与でさっさと意識を失って、
それで何時間もしない内に目が覚めて特別な後遺症も無い。
考えられるのは、適当に薬物を使ってたまたまそれで上手く行ったか、
そんなオーパーツじみて都合のいい薬物の持ち主を探すか、或いは」

「或いは、その面倒な条件を満たすだけの
薬物のコントロールに長けている人物。
そして、今回の切り裂き事件に関わるキャストには、
今の所脳卒中後の老人はいない」

哀が言い、哀とごにょごにょ話していたコナンは
瞬時に目から鋭さを消してぱっと駆け出した。

「わあー、大きなバッグ。これって救急箱なの?」

「ああ、ファーストエイドキットだよ」

床に置かれていたファーストエイドキットに駆け寄って叫ぶコナンに、
初士雅人医師が優しく言った。

「この様なものを持ち歩いているのですかな?」

雅人の背後から現れた目暮が尋ねる。

「ええ、普段は車に。
山に登る時等はコンパクトなものを使うのですが、
今回は車に積んでいた災害用のものを」

「用意がいいですなぁ」

「やはり、昔からの仕事柄ですかね。
出来る限り二重三重の用意で万一に備えるのが
習い性になっている様で」

小五郎の言葉に雅人が言った。
96 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/01/24(月) 19:45:47.71 ID:IA38rMJE0

「えーと、メスとかも入ってるとか」

雅人の言葉に、園子が言う。

「ああ、入ってるよ。
免許と技能とメスがあれば何かあった時の選択肢が大幅に広がるからね。
だけど、使用前には梱包封印されている使い捨てメスだし、
この中のカード型万能ナイフを含めて任意提出には応じますよ」

「では、後程お預かりしましょう」

キットの入ったバッグをぽんと叩く雅人の言葉に目暮が言った。

「先生は、ミチル姉ちゃんと一緒にここに来たの?」

「ああ、そうだよ。部活の現地集合で、
ミチルを送り届けて私も見物しようと思ってね」

コナンの問いに、雅人が答えた。

「だったら、運が良かったのかな。お医者さんがすぐ来てくれたから」

「ミチルからここで怪我人が出たって報せて来たからね」

「でも、あなた電話に出なかったわよね」

コナンの言葉に応じた雅人に、哀が言った。
97 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/01/24(月) 19:48:57.26 ID:IA38rMJE0

「彼女、少し苛々してメール打ってたわよ」

「ああ、車にスマホを忘れてね。
車に戻ったら丁度電話が切れた所だったね」

哀の言葉に雅人が答えた。

「つまり、先生がお嬢さんと分かれて車に戻るまでの間に
お嬢さんは事件に遭遇した、そういう事になりますか」

「ええ。私は娘と別れてから
少し辺りを散策したり売店に寄ったりはしていましたけどね。
気付いてすぐに取りに戻らなかったのは、今思えば不覚でした。
休みで時間もあったので気が緩んでいましたね」

目暮の問いに雅人が答えた。

==============================

今回はここまでです>>91-1000

続きは折を見て。
98 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/01/27(木) 19:24:49.40 ID:Qu6pCdOS0
念のため生存報告しときます
99 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/02/26(土) 01:25:22.73 ID:FyUjnOSx0
生存報告です
100 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/03/19(土) 22:48:35.12 ID:prufWT440
生存報告です
101 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/03/31(木) 23:23:56.24 ID:OSQCXiry0
調整的生存報告です
102 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/04/28(木) 00:38:37.82 ID:rfYZAF9b0
生存報告です
103 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/05/06(金) 19:11:03.71 ID:cggI0odA0
調整的生存報告です
104 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/05/29(日) 00:37:11.50 ID:CaaFuz7t0
生存報告です
105 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/06/28(火) 02:21:47.19 ID:Hw4caRY90
生存報告です
106 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:37:02.86 ID:h31v0oL20

まずは忘れられるレベルの進行遅れ、只々お詫び申し上げます。

………ええと、公式から追加情報とかあった?
最近、って言っても結構前からネットで見かける設定関連情報に
割と血の気引いてるんですけど(汗

取り敢えず、竜そば側に関しては、小説と設定資料、
映画の記憶から起こしたプロットの大筋は変更せずに
このままなる様になるで突き進みます。見落としあったらすいません。

と、言ってる側から訂正です。

>>93
×この推測が外れならアカデミー賞ものね

○この推測が外れならマカデミー賞ものね

………引っ掛かってはいたんですけど、
原作中の通説度を見誤りました。参列の上訂正します。
自分で書いておいてのニワカっぷりが嫌になる。

個人的に色々ドツボにはまってる間に
地上波放送カウントダウン時期だし。

前置き長くなりましたが、
それでは今回の投下、入ります。
107 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:38:49.82 ID:h31v0oL20

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>>97

「分かりましたぞ警部殿!」

その自信満々の声に、コナンはぎょっとして振り返った。

「本当かね毛利君っ!?」

果たして目暮警部がこの様に反応した相手は、
世間では名探偵で通っている毛利小五郎その人だった。

「ええ。発見された凶器、あれが私を導いてくれました」

「パラシュート用ナイフが?」

そう言った世良真純に小五郎がちらと視線を向け、小さく頷く。

「しかし、あのナイフが軍用ナイフとしては小さなものだと言っても、
それにしても被害者の傷が小さ過ぎる、浅過ぎる」」

「それは確かに、私も気になってはいました」

小五郎の言葉に、佐藤美和子警部補も顎を摘まんで同意する。

「一理あるわね」

コナンがスマホで撮影した傷口を確認し、
その背後で哀が呟く。

「それに、出血の量も少ない。流れっぱなしだったとは思えない。
パニックになった時に傷口が開いた、ってのが妥当か」

コナンが小声で言った。

「じゃあ、別に凶器があると?」

「いえ、凶器はあのナイフでしょう」

目暮の問いに小五郎が応じる。
108 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:40:11.05 ID:h31v0oL20

「そして、敢えて凶器をあの場に残した。
それは何故か? 本当の凶器をあの場に残す事で、
別の凶器の可能性を想像させない為です」

「よく分からんが」

「別の凶器、あの傷口を作るのにもっと適した凶器ですよ警部殿」

小五郎と目暮のやり取りをじっと聞いていたコナンが、
脇腹への肘打ちを受けて哀の方を見る。

(い゛っ………)

そして、くいっと哀が向けた視線の先を見て、
コナンは心の中で乾いた呻き声を上げる。
そちらでは、目を細めて小五郎を見る初士路留が
微かに剣呑な雰囲気を漂わせていた。

「初士先生、あなたはスマホを車に忘れた、と言いましたな?」

「ええ」

「お嬢さんと別れた後、散策して売店に立ち寄ってから車に戻り、
そこでお嬢さんからのメールに気付いたと」

「ええ、そうです」

「スマホを持ち歩くと、位置情報セルやGPS機能で
後で行う説明とは違う居場所の記録が残る恐れがある。
かと言って、犯行時刻だけ電源を切っていればあからさまに怪しい。
電池切れ等を装って切りっ放しにする、
と言うのも万一を考えて出来ない性格なのでしょうな。
だから、その時だけ車にスマホを置いておいた。
現場で爆竹を鳴らせば早期に通報が為されて救急車が来る。
あなたはそれに合わせて動く予定だった、が、ここで予想外の事が起きた」

「ミチル君が蘭君との予定外の待ち合わせで住民センターに留まっていた事、
そのために事件を知ってこの人に直接連絡を入れた事か」

「そう」

真純の言葉を、小五郎が肯定した。
109 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:41:34.40 ID:h31v0oL20

「だから、あなたは電話に出る事が出来ず、
メールを見て急遽ファーストエイドキットを持って現場に急行した。
長い間スマホを放置していたとなると、それだけで不審を買いますからな」

「成程」

小五郎の言葉に、初士雅人が一つ頷いた。

「つまり、あなたは私が代理ミュンヒハウゼン症候群を患っている、
そう仰りたいのですかな?」

「ん? 代理………」

「代理ミュンヒハウゼン症候群」

雅人の言葉に小五郎が聞き返す寸前に哀が口を挟んだ。

「通常は児童虐待の一種として使われる言葉ね。
親が子どもを傷つけながら傷つけた子どもを甲斐甲斐しく看病する、
入院中の子どもの点滴に異物を入れたりしたりね。
そういう精神疾患、って、この間テレビで観たわ」

「って、じゃあまさか治療する為に。って事?」

鈴木園子が引き攣った声で尋ねる。

「そういう精神疾患、或いは、被害者がベルに近しいと
知っていたのならば売名、売り込みと言う線もあり得ますな」

「成程」

それは、雰囲気だけで言えば、驚く程似通った声だった。
110 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:43:04.47 ID:h31v0oL20

「Ms.Watson。この場合、僕はどんな顔をすればいいのかな?
普通だったら怒ると思うんだけど」

「それで正解じゃない?
流石にこの状況で笑えるアドバイスをする度胸は私にはないわね」

「OK、じゃあこれは僕の意思だ。
不条理もここまで来ると漫画染みて笑わずにはいられない」

哀の返答を聞いた路留が軽く肩を竦めて口角を上げた。

「お立合い」

ぱんっ、と、柏手を打った路留が、それと共に伏せていた顔から
すうっと上目で小五郎を見る。

「ちょっと、どうするのよこれ?」

「どうにもなんねーよ」

哀とコナンが、焦りに満ちた小声で言葉を交わす。

「麻酔銃も誘導も、おっちゃんや蘭や園子ならまだしも
これでミチルにバレるなとか無理だ。
大体、眠らせてもまだ喋る中身が決まってねーし。
最悪、ミチルには土下座で秘密を守ってもらうから
その時はオメーも覚悟決めてくれ」

「あ゛ー、冗談じゃないわね」

コナンと哀がごそごそ囁き合っている間にも事態は進む。

「さて、問題は犯人が何処からこの建物を脱出したかだ」

言いながら、路留はスマホを操作する。

「この建物は、北側に裏山に繋がる林、南側に正面玄関がある。
そして、このフロアはエレベーターホールを出たら廊下、
一本の廊下の北側と南側に部屋が並んでいる作りだ。
この部屋があるのは南側だね」

路留が、この周辺を表示した地図サイトを示して言った。
111 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:46:03.06 ID:h31v0oL20

「まず、最もポピュラーなルートは階段かエレベーターで一階に降りて
正面玄関から脱出するルートだけど、生憎僕は父を見ていない」

「確かに、大まかな時間を考えても、そのルートだと
ミチル君と犯人は玄関周辺で遭遇していた筈だ」

路留の言葉に真純が続けた。

「窓から脱出するとする。
玄関のある南側からの脱出は目立ち過ぎて非現実的。
北側ではどうか? タイムオーバーだ」

路留が、地図の建物周辺を指でなぞりながら言った。

「窓から脱出して建物の南側に回って道沿いにある駐車場まで走る。
それから車からキットを出してここに戻って来る、
なんて事は時間的にまず不可能だ。
あの爆竹に時限発火装置を使った形跡は無い。
蝋燭だとしても、あの量では保って五分って所かな、
毎日仏壇で見てるからね。
本人や身内の証言が当てにならないと言うなら、
警視庁ご自慢のSSBCに問い合わせてみればいい」

「キックオフ?」

哀の呟きを聞きながらコナンが見ると、
確かに路留は手の甲に乗せるコイントスをしていた。

「これだけの建物、公共施設だ。
玄関と駐車場、それらの出入りが何時にどうだったか
程度の事は簡単に分かるだろう。
僕達の証言が嘘だとしたら、
映像一つで覆るんだから随分と分の悪い賭けだ」

路留が、自分の手の甲を掴みながら小五郎にずいっと迫る。

「言っておくが僕も父もここには土地勘がある。
父は業界の研修会で時々ここに来てると聞いているし、
僕も行楽がてらそれに付き合ったり、今日の為に下見に来た事もあるからね。
冷静であれば、嘘であんな証言をすればすぐバレると考える。
そんな場所だねこの辺りは。
映像が出るか出ないか白か黒か表か裏かお立合いだ」
112 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:48:05.60 ID:h31v0oL20

「毛利君」

路留に迫られ、目暮に声を掛けられた小五郎は
不敵に口角を動かした。

「石焼き芋ですよ警部殿」

小五郎の言葉を聞き、コナンの目に鋭さが走る。

「石と焼肉、これが時限発火装置だったんです。
焼いた石は長時間高い熱を保ち続ける。そこに肉片を当てておく事で、
時間が経てば熱せられた肉が燃え上がり導火線に着火する。
その間に逃走したと言う訳ですな」

「成程」

小五郎の言葉に応じたのは路留だった。

「そのやり方だと、サシが多過ぎるとすぐに着火する、
赤身肉だけだと焦げるだけで火が回らない。
短時間のアリバイ工作に使う時限装置である以上、
相当の精度か求められる筈だけど?」

「脂身を焼いてすぐに発火して爆竹が破裂したら
逃走前に人を呼び寄せる事になるわね。
燃え難い赤身の肉を駄目元で仕掛けてみた、って事も考えられるけど………」

路留の言葉に、美和子が一応の可能性を示す。

「現実にこの部屋で爆竹は鳴ってる、それは確かだ」

「だったら、あの焼肉を時限装置と見るのは厳しいわね」

路留の言葉に続いたのは哀だった。

「あれ、焼肉は焼肉でもレバーよ」

「おいおい本当かよ?」

哀の言葉に小五郎が言った。
113 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:49:39.21 ID:h31v0oL20

「警察で詳しく調べるんでしょうけど可能性は高いわね。
焼けてはいたけど、
精肉や他のモツ肉にしては全体に緻密過ぎて見えた」

「そっか、焼肉でもお肉だと燃え上がる事もあるけど………」

哀の言葉に、蘭が思慮して口を挟む。

「そう、幾ら牛脂の融点が高いって言っても、
燃える様に脂を加えて焼石に付けたりしたら
何分もかからずに発火するでしょうし、
レバーを炙り続けても焦げるだけでそうそう発火するものじゃない、
あり得るにしても今回だと時間が短か過ぎる。
BBQパーティー大好き中高年の
脂質糖質管理してるからその辺の目は利く心算よ」

「ううむ………」

哀が理路整然と言い、小五郎は軽く唸って僅かに右足を引いていた。

「確かに、この場面に焼肉はおかし過ぎますな。
これは一度カンファレンスに掛けて何の問題があるか、
裏か表か数学的な可能性を潰して見るには値する、
そういう事ですかな、毛利さん」

「そういう事ですな」

当の本人、初士雅人の助け船に、
小五郎は堂々と搭乗して見せた。

「だ、そうだ」

そう言った路留にすうっと横目を向けられ、蘭が僅かに身を縮める。

「他でもない父の事となると、僕の心の広さも少々、ね」

「ホントごめん」

腕組みして蘭に接近していた路留に、蘭が小さく頭を下げる。
114 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:51:31.62 ID:h31v0oL20

「この手の捜査は百も千も無駄の積み重ね、
先に確実に無駄である事を証明しておく必要がある。
そういうものらしいから、
父がそれでいいと言うなら僕も収めるけどね」

「おじさま結構こんな感じで
最終的にはばばんって犯人見つけちゃう感じだから。
でも、私からも謝っておくわ」

「分かったよ。
誰の為にも、精々早めにゴールして欲しいものだね」

間に入った園子が頭を下げ。路留が頷いて返答した。

==============================

今回はここまでです>>106-1000

続きは折を見て。
115 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/08/06(土) 01:29:58.26 ID:6y0KVm0J0
生存報告です
116 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/08/29(月) 23:58:01.87 ID:vpj0uWeA0
生存報告です
117 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/23(金) 02:24:18.28 ID:k+XYCU8+0
間が開いてすいません。
それでは今回の投下、入ります。

>>114

==============================

「まだ何かありますか?」

自分のスマホを取り出していた路留が目暮に尋ねる。

「学校関係でこれからの事をミーティングするので
用事が無ければそちらに行きたいんですけど」

「ああ、構わんよ。
初士先生も、お二人の協力に感謝します」

「それでは」

目暮の言葉に雅人が応じ、
その後ろで路留も頭を下げて初士父娘がその場を離れた。
その一方で、美和子がポリスモードの電話を受け、目暮に耳打ちする。

「どうやら、逃走経路が固まって来た様だ」

「只、少し妙なものも見つかっているみたいね」

目暮の言葉に美和子が続いた。
118 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/23(金) 02:29:19.22 ID:k+XYCU8+0

ーーーーーーーー

「何か、焦げ臭くない?」

「ああ、北側の林で焚火が見つかってな。
現在事件との関連を調べている所だ」

行き掛りでついて来た鈴木園子と目暮が言葉を交わしていたのは、
事件現場となった研修室から廊下を移動した先、
北側にある展望研修室だった。
その部屋は、学習、研修様の机椅子他の一式に、
引き戸式の窓とその外のベランダが特徴だった。

「あの窓から逃げた、って事か」

その、途中まで開いた窓を見て世良真純が言う。

「それで、妙なものと言うのは?」

「これだよ」

小五郎の言葉に、鑑識員と言葉を交わしていた目暮が
密封式のビニール袋を見せる。

「粘土?」

「ああ、こんな粘土の団子が室内から幾つも発見されたらしい」

目暮が言い、その視線の先を見ると、
確かに似た様な団子よりやや大きめの粘土玉の入ったビニール袋が
幾つも並んでいた。

「これは、何処で見つかったのですか?」

「それが、ドアや窓、戸棚、
その扉と壁の隙間に押し付けられた状態で張り付けられていました」

小五郎の問いに美和子が応じる。
119 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/23(金) 02:33:43.43 ID:k+XYCU8+0

「ドアの隙間にも張ってあったの?」

「ああ、ドアを開けた時に千切れたんだろうね。
それまでは張り付いてた可能性が高いね」

ドアに線で囲まれた痕跡を見つけたコナンが尋ね、
美和子が頷いて鑑識員が答えた。

「詰まり、この千切れたものは千切れた状態で発見されて、
それも含めて鑑識で剥がした、そういう事ですか?」

「ああ、開け閉めして確認する必要があったからね。
撮影の上でなるべく綺麗に剥がしたんだ」

ビニール袋を確認していた世良真純の問いに鑑識員が言った。

「おやぁー?」

真純がさり気なくその場を離れ、
代わって粘土の団子を確認していた小五郎が声を挙げる。

「何か、埋まってますなぁ。
表から見える様に光るものが」

「ホントだ」

父親の言葉に、近づいた毛利蘭も同意した。

「全部に埋め込まれてるみたい。
これって、何だろ? 何て言うか………」

園子が喉迄出かかってる表情で首を傾げる。

「ビーズ、かなぁ、透明な」

「形はそうかもだけど、大きくない?」

蘭と園子が模索する様に言い、蘭がさっと斜めに退いた。
120 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/23(金) 02:40:52.88 ID:k+XYCU8+0

「哀ちゃんっ?」

近くの椅子を引き寄せ、飛び乗る様にして
机の上を確認する哀の行動に蘭が声を上げ園子と共に目を見張った。

「ベル………竜?」

「これもベル関係なのか?」

哀を追ったコナンが言った。

「今までの流れから言ってそれも考えるべきね。
ベル関連、それも竜の事を」

自分も椅子を用意するコナンの横で哀が言う。

「なんだよリュウってなぁ」
「これです」

口を挟む小五郎に、千葉が自分のスマホを示した。

==============================

今回はここまでです>>117-1000

続きは折を見て。
121 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 02:56:41.93 ID:7ZmgYore0
それでは今回の投下、入ります。

>>120

==============================

「モンスター?」

「これも、その『U』の、
人間と連動しているアニメのキャラクターなのかね?」

「はい」

小五郎と目暮の言葉に、
スマホに獰猛な怪物じみたキャラクターを表示していた千葉が応じた。

「『竜』、ドラゴンの竜。『U』の中では知られた道場荒らしです。
武術系の試合等に現れては、極悪過ぎるファイティングスタイルで
相手のAsのデータが
使用不能に破損する程の攻撃を加える暴力的なユーザーでした」

「そして、ベルのコンサートを妨害した」

「ほう」

哀の補足、と言うか本筋の言葉に目暮の口調が変わる。

「悪質ユーザーとして認知されていた竜は、
『U』に於ける自警団として活動していたグループ『ジャスティス』
の追跡を受けていました」

千葉が、説明しながらジャスティスの画像をスマホに表示する。

「その、ジャスティスに追われた竜が逃げ込んだ先がベルのライブ会場、
それも、初の大規模ライブのね」

「んー、ちょっと待って………」

哀の言葉を聞き、園子が額に指を当てて唸る。
122 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 02:58:45.55 ID:7ZmgYore0

「あの、竜に台無しにされたライブよね」

「そうよ」

「分かった! あの時のベルの衣装っ!!」

園子が叫び、千葉が操作したスマホを高木と美和子が覗き込んだ。

「ビーズドレス」

美和子が呟く。

「あのライブで着てたビーズドレス。かなり印象的なものだけど、
粘土に埋め込まれた、多分レプリカね。
ドレスのパーツと色も形状もよく似てる。
この状況だとその意図を考える方が自然じゃないかしら」

哀が言った。

「と、すると、すぐに関わるのは竜か?」

「私なら、どちらかと言われたらジャスティスの方を追う」

目暮の言葉に、哀が続いた。

「たまたま追跡されてライブを妨害しただけ、だからかね?」

目暮が尋ねる。

「に、してもあれはやり過ぎ、
ライブ会場で鉄骨振り回して大立ち回りだもの。
そのために、『U』の中では
歌姫ベルの大規模ライブを滅茶苦茶にした悪質ユーザーとして、
竜の悪評は決定的なものになった」

「一時期は凄かったからねぇ、
あれのせいで竜、『U』の全部からお尋ね者扱いで」

哀の言葉に園子が続いた。
123 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 03:01:16.77 ID:7ZmgYore0

「只、その事に就いてベル自身がどう思っていたか、
元々が歌以外で表に出ないタイプだからその辺は分からない。
そして、ベルへの怨恨ならむしろジャスティスの方にあるの」

「千葉君?」

「ええ」

哀の言葉に、美和子が促して千葉が応じる。

「元々、『U』は運営によるユーザーに対する直接的な規制が緩い所で、
その代わりの様に、ジャスティスが企業スポンサーの支援を得て
自警団としての権勢を奮っていました。
そのジャスティスのリーダーである
ジャスティンが保有していた最大の武器がアンベイルでした」

「アンベイル、さっきもそんな言葉を聞いたな」

千葉の説明に目暮が言う。

「はい。アンベイルと言うのは、
『U』の中でオリジンからAsへの変換を無効にする、
詰まり、『U』の中でその光を浴びるとAsから
元の人間の姿に戻ってしまう。そんな装置です。
ジャスティンはどういう訳かそんな装置を装着して
悪質ユーザーを取り締まる自警団活動を行っていました」

「じゃあ、竜もそのアンベイルをされたのかね?」

「いえ、アンベイルされたのはベルです」

「何?」

千葉の返答に、質問をした目暮が戸惑いの声を出した。
124 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 03:01:57.76 ID:7ZmgYore0

「状況から見て、どうもベルを張り込んで、
ベルの歌に誘われる竜を待ち伏せしていた様ですね。
ですが、ベルの方がジャスティンを捕まえて自らアンベイルされた。
当時の状況はそうでした」

「自ら、って、ベルは自分からオリジン、元の姿を公表したと言うの?」

「あの時の事は大混雑の大混乱で情報が錯綜していますが、
それで合っている筈です」

美和子の問いに千葉が答える。

「それがどうして怨恨になるのかね?」

目暮が尋ねる。

「本来、ジャスティンのアンベイルは
『U』の中では非公表で活動している相手の姿を強制的に公開する、
それが脅しになると言う前提で行うもの。
だけど、ベルは何を思ったのか、
今までの話通りだと渡辺瑠果と同じ一介の高校生でありながら、
自らそれを受け容れて堂々と歌い上げた」

「ええ、結果として圧倒的な、
『U』の中でも伝説的なコンサートになりました」

哀の言葉に千葉が補足した。
125 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 03:03:10.98 ID:7ZmgYore0

「逆に、その様なユーザーを巻き込みながら、
例え悪質ユーザーであっても、自警団の判断で
相手に無断でネット社会にプライバシーを公開する独善的な言動。
その対比が余りにも鮮やか過ぎて、ジャスティンの権力の源泉だった
スポンサーが一斉にジャスティンから撤退したのよ」

「面子を潰された、ってぇ事か。金だって馬鹿にならねぇ」

哀が説明し、小五郎の言葉に頷いた。

「ふうむ。ベルの、それも妨害されたライブに繋がるメッセージ、
と、なると、竜とジャスティス、両方の線を当たる必要があるな」

「竜、ジャスティン、或いはその過激な信奉者やアンチ」

「例のベル担当ともその辺りの事を詰めてくれ」

「分かりました」

目暮と千葉がやり取りをして指示を確認した。

==============================

今回はここまでです>>121-1000

続きは折を見て。
126 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/09/28(水) 00:31:42.92 ID:ZcOuCRX00
調整的生存報告です
127 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/10/22(土) 02:17:29.65 ID:NMZx0fOJ0
生存報告です
128 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/11/12(土) 23:21:16.72 ID:TN+3XaGb0
生存報告です
129 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/12/09(金) 02:22:19.26 ID:nhtyELtn0
生存報告です
130 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/01/05(木) 02:24:21.75 ID:n3q3QwQD0
生存報告です
131 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/02/04(土) 20:07:40.81 ID:jI0W/ewr0
生存報告です
132 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/03/03(金) 01:09:31.85 ID:YJ6V6AnZ0
生存報告です
133 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/04/01(土) 21:17:26.69 ID:3bL1AtgJ0
生存報告です
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/04/12(水) 23:22:41.79 ID:wbp6i9BI0
135 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/04/30(日) 03:04:06.80 ID:rGcO9hpq0
生存報告です
136 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/05/29(月) 02:27:52.25 ID:HsuT/W4w0
生存報告です
137 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/06/13(火) 01:51:44.14 ID:4OaJuCH10
生存報告しときます
138 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/07/10(月) 02:29:43.07 ID:T0dMNvnp0
生存報告です
139 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/08/08(火) 02:36:01.68 ID:c8Sz81gr0
生存報告です
140 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/09/07(木) 20:01:21.68 ID:EWYncz1E0
生存報告です
141 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/10/06(金) 01:31:53.01 ID:KzRnoKR90
生存報告です
142 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/11/04(土) 03:34:53.21 ID:Y4m0RoK40
生存報告です
143 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/12/03(日) 02:00:26.46 ID:v4ErjX0h0
生存報告です
144 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/12/25(月) 01:51:56.62 ID:kQptvkss0
生存報告です
145 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/01/24(水) 03:23:28.87 ID:V8BfDPVO0
生存報告です
146 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/02/23(金) 02:38:14.52 ID:PQ+iUXK70
生存報告です
147 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/03/21(木) 20:11:46.90 ID:AIQx1/mU0
生存報告です
148 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/04/19(金) 01:30:14.19 ID:qG0MV/ra0
生存報告です
149 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/05/17(金) 02:09:20.59 ID:UreFUhzj0
生存報告です
150 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/06/14(金) 23:59:45.26 ID:nmFw1VJ50
生存報告です
151 :探竜唱 ◆h5Q3At6mnQ [sage]:2024/07/11(木) 02:52:45.79 ID:xJ99ahSB0
生存報告です
152 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/08/08(木) 01:52:08.90 ID:ftN8msYz0
生存報告です
153 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/09/06(金) 21:39:38.49 ID:SPNgdS4g0
生存報告です
154 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/10/05(土) 03:55:56.97 ID:mxqqGFVR0
生存報告です
155 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/11/03(日) 13:56:48.74 ID:/O5qT6vA0
生存報告です
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