カルネアデス・プリズム(名探偵コナン×竜とそばかすの姫)

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113 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:49:39.21 ID:h31v0oL20

「警察で詳しく調べるんでしょうけど可能性は高いわね。
焼けてはいたけど、
精肉や他のモツ肉にしては全体に緻密過ぎて見えた」

「そっか、焼肉でもお肉だと燃え上がる事もあるけど………」

哀の言葉に、蘭が思慮して口を挟む。

「そう、幾ら牛脂の融点が高いって言っても、
燃える様に脂を加えて焼石に付けたりしたら
何分もかからずに発火するでしょうし、
レバーを炙り続けても焦げるだけでそうそう発火するものじゃない、
あり得るにしても今回だと時間が短か過ぎる。
BBQパーティー大好き中高年の
脂質糖質管理してるからその辺の目は利く心算よ」

「ううむ………」

哀が理路整然と言い、小五郎は軽く唸って僅かに右足を引いていた。

「確かに、この場面に焼肉はおかし過ぎますな。
これは一度カンファレンスに掛けて何の問題があるか、
裏か表か数学的な可能性を潰して見るには値する、
そういう事ですかな、毛利さん」

「そういう事ですな」

当の本人、初士雅人の助け船に、
小五郎は堂々と搭乗して見せた。

「だ、そうだ」

そう言った路留にすうっと横目を向けられ、蘭が僅かに身を縮める。

「他でもない父の事となると、僕の心の広さも少々、ね」

「ホントごめん」

腕組みして蘭に接近していた路留に、蘭が小さく頭を下げる。
114 :探竜唱 ◆Eoymg2mZ2w [saga]:2022/07/08(金) 02:51:31.62 ID:h31v0oL20

「この手の捜査は百も千も無駄の積み重ね、
先に確実に無駄である事を証明しておく必要がある。
そういうものらしいから、
父がそれでいいと言うなら僕も収めるけどね」

「おじさま結構こんな感じで
最終的にはばばんって犯人見つけちゃう感じだから。
でも、私からも謝っておくわ」

「分かったよ。
誰の為にも、精々早めにゴールして欲しいものだね」

間に入った園子が頭を下げ。路留が頷いて返答した。

==============================

今回はここまでです>>106-1000

続きは折を見て。
115 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/08/06(土) 01:29:58.26 ID:6y0KVm0J0
生存報告です
116 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/08/29(月) 23:58:01.87 ID:vpj0uWeA0
生存報告です
117 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/23(金) 02:24:18.28 ID:k+XYCU8+0
間が開いてすいません。
それでは今回の投下、入ります。

>>114

==============================

「まだ何かありますか?」

自分のスマホを取り出していた路留が目暮に尋ねる。

「学校関係でこれからの事をミーティングするので
用事が無ければそちらに行きたいんですけど」

「ああ、構わんよ。
初士先生も、お二人の協力に感謝します」

「それでは」

目暮の言葉に雅人が応じ、
その後ろで路留も頭を下げて初士父娘がその場を離れた。
その一方で、美和子がポリスモードの電話を受け、目暮に耳打ちする。

「どうやら、逃走経路が固まって来た様だ」

「只、少し妙なものも見つかっているみたいね」

目暮の言葉に美和子が続いた。
118 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/23(金) 02:29:19.22 ID:k+XYCU8+0

ーーーーーーーー

「何か、焦げ臭くない?」

「ああ、北側の林で焚火が見つかってな。
現在事件との関連を調べている所だ」

行き掛りでついて来た鈴木園子と目暮が言葉を交わしていたのは、
事件現場となった研修室から廊下を移動した先、
北側にある展望研修室だった。
その部屋は、学習、研修様の机椅子他の一式に、
引き戸式の窓とその外のベランダが特徴だった。

「あの窓から逃げた、って事か」

その、途中まで開いた窓を見て世良真純が言う。

「それで、妙なものと言うのは?」

「これだよ」

小五郎の言葉に、鑑識員と言葉を交わしていた目暮が
密封式のビニール袋を見せる。

「粘土?」

「ああ、こんな粘土の団子が室内から幾つも発見されたらしい」

目暮が言い、その視線の先を見ると、
確かに似た様な団子よりやや大きめの粘土玉の入ったビニール袋が
幾つも並んでいた。

「これは、何処で見つかったのですか?」

「それが、ドアや窓、戸棚、
その扉と壁の隙間に押し付けられた状態で張り付けられていました」

小五郎の問いに美和子が応じる。
119 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/23(金) 02:33:43.43 ID:k+XYCU8+0

「ドアの隙間にも張ってあったの?」

「ああ、ドアを開けた時に千切れたんだろうね。
それまでは張り付いてた可能性が高いね」

ドアに線で囲まれた痕跡を見つけたコナンが尋ね、
美和子が頷いて鑑識員が答えた。

「詰まり、この千切れたものは千切れた状態で発見されて、
それも含めて鑑識で剥がした、そういう事ですか?」

「ああ、開け閉めして確認する必要があったからね。
撮影の上でなるべく綺麗に剥がしたんだ」

ビニール袋を確認していた世良真純の問いに鑑識員が言った。

「おやぁー?」

真純がさり気なくその場を離れ、
代わって粘土の団子を確認していた小五郎が声を挙げる。

「何か、埋まってますなぁ。
表から見える様に光るものが」

「ホントだ」

父親の言葉に、近づいた毛利蘭も同意した。

「全部に埋め込まれてるみたい。
これって、何だろ? 何て言うか………」

園子が喉迄出かかってる表情で首を傾げる。

「ビーズ、かなぁ、透明な」

「形はそうかもだけど、大きくない?」

蘭と園子が模索する様に言い、蘭がさっと斜めに退いた。
120 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/23(金) 02:40:52.88 ID:k+XYCU8+0

「哀ちゃんっ?」

近くの椅子を引き寄せ、飛び乗る様にして
机の上を確認する哀の行動に蘭が声を上げ園子と共に目を見張った。

「ベル………竜?」

「これもベル関係なのか?」

哀を追ったコナンが言った。

「今までの流れから言ってそれも考えるべきね。
ベル関連、それも竜の事を」

自分も椅子を用意するコナンの横で哀が言う。

「なんだよリュウってなぁ」
「これです」

口を挟む小五郎に、千葉が自分のスマホを示した。

==============================

今回はここまでです>>117-1000

続きは折を見て。
121 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 02:56:41.93 ID:7ZmgYore0
それでは今回の投下、入ります。

>>120

==============================

「モンスター?」

「これも、その『U』の、
人間と連動しているアニメのキャラクターなのかね?」

「はい」

小五郎と目暮の言葉に、
スマホに獰猛な怪物じみたキャラクターを表示していた千葉が応じた。

「『竜』、ドラゴンの竜。『U』の中では知られた道場荒らしです。
武術系の試合等に現れては、極悪過ぎるファイティングスタイルで
相手のAsのデータが
使用不能に破損する程の攻撃を加える暴力的なユーザーでした」

「そして、ベルのコンサートを妨害した」

「ほう」

哀の補足、と言うか本筋の言葉に目暮の口調が変わる。

「悪質ユーザーとして認知されていた竜は、
『U』に於ける自警団として活動していたグループ『ジャスティス』
の追跡を受けていました」

千葉が、説明しながらジャスティスの画像をスマホに表示する。

「その、ジャスティスに追われた竜が逃げ込んだ先がベルのライブ会場、
それも、初の大規模ライブのね」

「んー、ちょっと待って………」

哀の言葉を聞き、園子が額に指を当てて唸る。
122 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 02:58:45.55 ID:7ZmgYore0

「あの、竜に台無しにされたライブよね」

「そうよ」

「分かった! あの時のベルの衣装っ!!」

園子が叫び、千葉が操作したスマホを高木と美和子が覗き込んだ。

「ビーズドレス」

美和子が呟く。

「あのライブで着てたビーズドレス。かなり印象的なものだけど、
粘土に埋め込まれた、多分レプリカね。
ドレスのパーツと色も形状もよく似てる。
この状況だとその意図を考える方が自然じゃないかしら」

哀が言った。

「と、すると、すぐに関わるのは竜か?」

「私なら、どちらかと言われたらジャスティスの方を追う」

目暮の言葉に、哀が続いた。

「たまたま追跡されてライブを妨害しただけ、だからかね?」

目暮が尋ねる。

「に、してもあれはやり過ぎ、
ライブ会場で鉄骨振り回して大立ち回りだもの。
そのために、『U』の中では
歌姫ベルの大規模ライブを滅茶苦茶にした悪質ユーザーとして、
竜の悪評は決定的なものになった」

「一時期は凄かったからねぇ、
あれのせいで竜、『U』の全部からお尋ね者扱いで」

哀の言葉に園子が続いた。
123 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 03:01:16.77 ID:7ZmgYore0

「只、その事に就いてベル自身がどう思っていたか、
元々が歌以外で表に出ないタイプだからその辺は分からない。
そして、ベルへの怨恨ならむしろジャスティスの方にあるの」

「千葉君?」

「ええ」

哀の言葉に、美和子が促して千葉が応じる。

「元々、『U』は運営によるユーザーに対する直接的な規制が緩い所で、
その代わりの様に、ジャスティスが企業スポンサーの支援を得て
自警団としての権勢を奮っていました。
そのジャスティスのリーダーである
ジャスティンが保有していた最大の武器がアンベイルでした」

「アンベイル、さっきもそんな言葉を聞いたな」

千葉の説明に目暮が言う。

「はい。アンベイルと言うのは、
『U』の中でオリジンからAsへの変換を無効にする、
詰まり、『U』の中でその光を浴びるとAsから
元の人間の姿に戻ってしまう。そんな装置です。
ジャスティンはどういう訳かそんな装置を装着して
悪質ユーザーを取り締まる自警団活動を行っていました」

「じゃあ、竜もそのアンベイルをされたのかね?」

「いえ、アンベイルされたのはベルです」

「何?」

千葉の返答に、質問をした目暮が戸惑いの声を出した。
124 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 03:01:57.76 ID:7ZmgYore0

「状況から見て、どうもベルを張り込んで、
ベルの歌に誘われる竜を待ち伏せしていた様ですね。
ですが、ベルの方がジャスティンを捕まえて自らアンベイルされた。
当時の状況はそうでした」

「自ら、って、ベルは自分からオリジン、元の姿を公表したと言うの?」

「あの時の事は大混雑の大混乱で情報が錯綜していますが、
それで合っている筈です」

美和子の問いに千葉が答える。

「それがどうして怨恨になるのかね?」

目暮が尋ねる。

「本来、ジャスティンのアンベイルは
『U』の中では非公表で活動している相手の姿を強制的に公開する、
それが脅しになると言う前提で行うもの。
だけど、ベルは何を思ったのか、
今までの話通りだと渡辺瑠果と同じ一介の高校生でありながら、
自らそれを受け容れて堂々と歌い上げた」

「ええ、結果として圧倒的な、
『U』の中でも伝説的なコンサートになりました」

哀の言葉に千葉が補足した。
125 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2022/09/24(土) 03:03:10.98 ID:7ZmgYore0

「逆に、その様なユーザーを巻き込みながら、
例え悪質ユーザーであっても、自警団の判断で
相手に無断でネット社会にプライバシーを公開する独善的な言動。
その対比が余りにも鮮やか過ぎて、ジャスティンの権力の源泉だった
スポンサーが一斉にジャスティンから撤退したのよ」

「面子を潰された、ってぇ事か。金だって馬鹿にならねぇ」

哀が説明し、小五郎の言葉に頷いた。

「ふうむ。ベルの、それも妨害されたライブに繋がるメッセージ、
と、なると、竜とジャスティス、両方の線を当たる必要があるな」

「竜、ジャスティン、或いはその過激な信奉者やアンチ」

「例のベル担当ともその辺りの事を詰めてくれ」

「分かりました」

目暮と千葉がやり取りをして指示を確認した。

==============================

今回はここまでです>>121-1000

続きは折を見て。
126 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/09/28(水) 00:31:42.92 ID:ZcOuCRX00
調整的生存報告です
127 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/10/22(土) 02:17:29.65 ID:NMZx0fOJ0
生存報告です
128 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/11/12(土) 23:21:16.72 ID:TN+3XaGb0
生存報告です
129 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2022/12/09(金) 02:22:19.26 ID:nhtyELtn0
生存報告です
130 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/01/05(木) 02:24:21.75 ID:n3q3QwQD0
生存報告です
131 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/02/04(土) 20:07:40.81 ID:jI0W/ewr0
生存報告です
132 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/03/03(金) 01:09:31.85 ID:YJ6V6AnZ0
生存報告です
133 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/04/01(土) 21:17:26.69 ID:3bL1AtgJ0
生存報告です
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/04/12(水) 23:22:41.79 ID:wbp6i9BI0
135 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/04/30(日) 03:04:06.80 ID:rGcO9hpq0
生存報告です
136 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/05/29(月) 02:27:52.25 ID:HsuT/W4w0
生存報告です
137 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/06/13(火) 01:51:44.14 ID:4OaJuCH10
生存報告しときます
138 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/07/10(月) 02:29:43.07 ID:T0dMNvnp0
生存報告です
139 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/08/08(火) 02:36:01.68 ID:c8Sz81gr0
生存報告です
140 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/09/07(木) 20:01:21.68 ID:EWYncz1E0
生存報告です
141 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/10/06(金) 01:31:53.01 ID:KzRnoKR90
生存報告です
142 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/11/04(土) 03:34:53.21 ID:Y4m0RoK40
生存報告です
143 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/12/03(日) 02:00:26.46 ID:v4ErjX0h0
生存報告です
144 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2023/12/25(月) 01:51:56.62 ID:kQptvkss0
生存報告です
145 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/01/24(水) 03:23:28.87 ID:V8BfDPVO0
生存報告です
146 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/02/23(金) 02:38:14.52 ID:PQ+iUXK70
生存報告です
147 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/03/21(木) 20:11:46.90 ID:AIQx1/mU0
生存報告です
148 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/04/19(金) 01:30:14.19 ID:qG0MV/ra0
生存報告です
149 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/05/17(金) 02:09:20.59 ID:UreFUhzj0
生存報告です
150 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/06/14(金) 23:59:45.26 ID:nmFw1VJ50
生存報告です
151 :探竜唱 ◆h5Q3At6mnQ [sage]:2024/07/11(木) 02:52:45.79 ID:xJ99ahSB0
生存報告です
152 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/08/08(木) 01:52:08.90 ID:ftN8msYz0
生存報告です
153 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/09/06(金) 21:39:38.49 ID:SPNgdS4g0
生存報告です
154 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/10/05(土) 03:55:56.97 ID:mxqqGFVR0
生存報告です
155 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/11/03(日) 13:56:48.74 ID:/O5qT6vA0
生存報告です
156 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/11/29(金) 02:03:59.69 ID:cTRuizgo0
生存報告です
157 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2024/12/28(土) 01:58:51.90 ID:bRdDir/h0
生存報告です
158 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2025/01/27(月) 02:47:58.16 ID:8Ox9qwwU0
生存報告です
159 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2025/02/25(火) 02:28:38.38 ID:qqUwJPok0
生存報告です
160 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2025/03/23(日) 19:54:22.97 ID:SlHCxwHE0
生存報告です
161 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2025/03/30(日) 02:07:53.28 ID:Wdcced8o0
生存報告です
162 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/03(木) 19:27:42.49 ID:/+5vj4Ud0

無言土下座

連載再開します。

大まかな話になりますが、本作は映画「竜とそばかすの姫」
の公開時期(2021年7月16日)頃の元ネタの状況を基準に作られています。
(ブレが出そうではありますが)

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>125

ーーーーーーーー

「あの、ちょっと外見ていいですか?」

そう発言したのは、北側のベランダに繋がるガラスの引き戸の前で
右手親指で自分の顎を押しながらじっと考え込んでいた世良真純だった。

「ああ、いいよ」

視線を向けられた鑑識係員が返答する。
真純はガラス戸に手を伸ばし、一拍置いてからガラス戸を開いてベランダに出る。
コナンが真純の後を追い、二人でベランダから周辺を見回した。

「何か解った?」

「んー」

園子の問いに、真純は曖昧に呻く。そして、戸を動かした。

「このガラス戸はこの位置にあったんですか?」

「そうだね」

真純の問いに鑑識係員が答えた。
163 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/03(木) 19:29:27.22 ID:/+5vj4Ud0

「開いてた、って事?」

中途半端に開いたガラス戸を見て園子が言う。
園子の問いに答える前に、真純はまずコナンにごにょごにょ話しかける。
次に、灰原哀は真純の手招きを受けてちょっと嫌そうな顔をしたが、
コナンに目で促されて真純からの耳打ちを受ける。

「ちょっといいかな?」

真純が園子と蘭が並んでいる方向に言葉を発した。

「二人共、上着を脱いで順番に外に出て貰える?
なるべく戸を動かさない様に。先ず園子君から」

「解った」

真純の言葉に、園子がガラス戸に近づいた。

「なるべく動かさない、ちょっと待って」

園子は色々角度を変えながら、最終的に蟹歩きの形でベランダに出た。
真純の視線の先で、スマホを持ったコナンが親指で丸を作り
同じくスマホを手にした哀が頷く。

「OK、普通に戻って来て」

真純が言い、園子がベランダから室内に戻る。

「じゃあ、次に蘭君」

ガラス戸を調整していた真純が言い、入れ違う様に蘭がガラス戸に近づいた。

「こう、かな」

「うん、なるべく戸を動かさない様に、なるべくね。外に出るのを優先で」

真純の指示を受けながら、
蘭が蟹歩きをして無理矢理な加減でベランダへと移動する。
164 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/03(木) 19:31:06.95 ID:/+5vj4Ud0

「はい、OK。じゃあ高木刑事と千葉刑事もお願い出来るかな」

「「僕が?」」

ガラス戸を直しながら言う真純に高木と千葉が自分を指さして問い返すが、
それでも、これまで同様の実験は順調に進められた。

「はい、OK」

高木に続いて千葉がベランダに出て、真純がOKを出す。

「何をやりたいのか、大体見当はつくけど」

「うん」

佐藤美和子の言葉に真純が頷き、ガラス戸に近づいた。

「犯人の脱出路はこのベランダの可能性が高いだろうね。
時間的に見ても立地条件から見ても、
ここで細工をしてわざわざ別の場所から出たと言うのは考え難い。
見た感じ、ベランダから下に降りる事も多少の心得があれば十分可能だ。
そして、このガラス戸は犯人が脱出した後、
こうして開いた状態で発見された、そうですね?」

「ああ、そうだね」

真純の言葉に鑑識係員が応じる。

「問題は、例のビーズを埋め込まれた粘土細工だ。
今は目印になってるけど、粘土はガラス戸の上側や下側と、
窓枠のレール近くを跨ぐ様にべったりと幾つも押し付けられていた。
そして、それらの粘土細工は、外からは外せない位置に貼り付けられていた」

「あん?するってぇと」

「詰まり、このガラス戸は犯人が粘土を張り付けて以降動いていない。
動いていないガラス戸から脱出した、そういう事ね」

「そういう事」

小五郎が頭を捻っている側で美和子が言い、真純が返答した。
165 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/03(木) 19:32:22.79 ID:/+5vj4Ud0

「確認しますが、
発見された時粘土は千切れたりしないで無傷だったんですよね?」

「ああ、我々が写真を撮影してガラス戸を開くまで綺麗なまま張り付いてた」

「OK。じゃあ、次にこれを見て下さい」

真純が促し、コナンと哀がスマホに撮影した動画を表示し始めた。

「じゃあ、同時進行するわよ」

哀が言い、哀のスマホにガラス戸をくぐろうとする面々の全体映像、
コナンのスマホに、
ガラス戸の下側につけられた粘土跡の目印の接写の動画が表示される。

「あ、動いた」

コナンのスマホを覗き込んだ園子が言った。

「じゃあもう一度、音で状況は解るよね」

真純がそう言って、コナンが動画を巻き戻す。

「見ての通り、上下の目印をずらさずにベランダに出られたのは
園子君と高木刑事、蘭君と千葉刑事は無理だった。
もう一度言うけど、このポイントに貼り付けられた粘土は
外からは貼り付ける事は出来ない状態だった」

「詰まり、犯人はこの隙間から向こうに行く事が出来る者。
体形、体格が限定されると言う事か」

「蘭が無理ならミチル君はもっと無理か」

「そういう事になるね」

コナンが顎を摘まむ様にして考え込んでいる側で、
目暮警部と園子の言葉を真純が肯定した。
166 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/03(木) 19:34:00.88 ID:/+5vj4Ud0

ーーーーーーーー

「燃えてたのはここか」

コナン達の一行と目暮班の面々が住民センター北側の森の一角を訪れ、
小五郎が独り言ちる。

「今時これでゴミ焼きしてんのかよ?」

そういう小五郎の目の前には輪切りにした土管が立てられており、
それは黒く煤けてゴミ焼きを思わせる臭気も真新しかった。

「ええ、昔はゴミ焼きにも使われていたみたいですが、
随分前から放置されていたみたいですね。
権利関係がごたごたになって敢えて片付ける人もいなかった様です」

周辺で情報を収集していた高木が言った。

「ごく近い時間まで燃えてたみたいだね。
同一犯だとすると証拠隠滅?」

「詳しく調べてる所だけど、残留物から見てもその線は強そうだね」

真純の言葉に高木が答えた。
そのやり取りを真純の背後から見ていたコナンは、改めて後ろを見る。
背後、詰まり、南側には住民センターがある。
確かに、建物の北側に当たるガラス戸からベランダに出て、
そこから下に降りて森に、ここで証拠を隠滅して立ち去る。
正面玄関のある、人通りの多い南側から出入りするよりは安全だろう。
建物の外側を回ってさり気なく南側に移動する事も
ずっと北側に抜ける事も出来そうだと見当を付ける。
167 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/03(木) 19:36:01.77 ID:/+5vj4Ud0

ーーーーーーーー

「んー」

大会終了後、初士路留は学ランの上着を左肩に引っ掛け、
川沿いに広がる公園の散歩道を歩いていた。
本来友人と共に行動したかったのだが、
応援が終わるのを待っていたらしい所轄署の刑事に声を掛けられ、
詰所の一つで少しばかり追加の事情聴取を受けてから
一人で集合場所に向かっている所だった。

「よう、姉御」

「あ、どうも」

そんな路留は、一つ伸びをした所で
正面から現れた顔見知りのOBに声を掛けられ、
一度首を鳴らしてから小さく頭を下げる。

「そこで毛利探偵に会ったよ、なんか、大変だったらしいな」

「そうですか。ちょっと傷害事件に巻き込まれまして。
第一発見者ってだけなんですけど、
応援に来てる時に警察から色々聞かれるのは少し疲れました」

言いながら、路留は無意識にとんとん左肩を叩く。

「だよなぁ。まあ、それでアネさんに何かあった訳じゃなくて良かったよ。
応援良かったよ、相変わらず凛々しくて」

「有難うございます」

学ランに袖を通していた路留が、掛けられた言葉に小さく頭を下げる。
168 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/03(木) 19:39:43.82 ID:/+5vj4Ud0

「じゃあ、後輩達にも国立目指して気合入ったトコ頼むぜ勝利の女神様」

「押っ忍」

路留は空手の自然体の構えで応じ、
親指を立てての相手の笑みに応じる様に人懐っこい笑みを見せた。
二人は知らなかった。
程近い所の木立の根本近くで、全身にドス黒いタイツが張り付いたかの如き
瘴気溢れるダークオーラに満ちた雰囲気の只中で
カッ、と、血走った目を見開きその視線を向けている者がいる事に。

==============================

今回はここまでです>>162-1000

続きは折を見て。
169 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 02:43:25.34 ID:czXWw4F90
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>168

ーーーーーーーー

「はぁい」

川沿いの散歩道で、
街路樹に背を預け帽子を斜に被ったイケメンに声を掛けられた、
そう思った二人のチアリーダーが、
手に手を取ってきゃっと飛び上がりそうになった。

「ボクは高校生探偵世良真純、幼馴染で同級生の工藤新一と………
ってのは冗談。ボクが高校生探偵で、工藤新一君とは、まあ、
同じ帝丹高校の友人って言うのは本当だけどね」

魅力的なスマイルと共に、真純がぽーっとなっている二人に接近する。

「そういう訳で、
今日そこの住民センターで起きた事件に就いて調べてるんだけど、
君達、港南高校のチアリーダーだよね?」

真純の問いに二人が頷く。二人は同じチアのコスチュームで、
一方がポニーテールのロングヘア、
もう一方がセミロングヘアをツインテールに結んでいた。

「ボク自身が事件の第一発見者なんだけど、
その時、そちらの学校の娘と一緒だったからね。
それで話を聞かせて貰おうと思ったんだけど」

「それってミチの事?」

ツインテールの娘が聞き返す。

「それはミチル君の事かい?」

そう言って、真純が微笑んだ。
170 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 02:46:03.62 ID:czXWw4F90

ーーーーーーーー

かくして、二人のチアリーダーと真純は、
真純と共に近くに設置されていたオープンカフェ風のテーブル席に移動する。

「じゃあ、君達二卵性双生児なんだ?」

「そ、似てないって普通に言われるし。
名前も、安直とは言わないけど解り易いでしょ」

そう言ったのは、双菜と言うツインテールの娘だった。

「でも、動画を見せてもらったけど息はぴったり、鍛錬の賜物だね。
君達も、それにミチル君もね」

「でしょ」

「有難う」

ニカッと笑う双菜に続き、一実と言うポニーテールの娘が言う。
成程、ここまででも比較的賑やかな双菜に対して、
一実は姉を思わせる落ち着きがあり、
生まれの順と名前と性格が素直に繋がっている様にも見えた。

「そういう訳で、事件当時の関係者、正確には近辺で誰が何処にいたかって言う
タイムテーブルをなるべく正確に把握したいんだけど、
取り敢えず、初士路留君って今日の応援で君達と一緒だったで合ってる?」

真純の問いに、二人はこくりと頷く。

「それで、君達とミチル君は一度住民センターの控室に集合して
君達が着替えて先に会場に向かった。
着替えが遅れたミチル君は部屋の鍵を受付に持って行って
後から合流する予定だった。これでいい?」

「いい」

真純のまとめに双菜が答える。
171 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 02:48:21.45 ID:czXWw4F90

「で、もしかして、
ミチル君って君達の学校でいわゆる王子様だったりする?」

「それで合ってる」

「格好いいから女子のファンも多いのは確かだけど」

真純の質問に双菜が笑みを含んで答え、一実がそれに続いた。

「彼女、身支度に時間がかかるって言ってたけど、
それってTシャツの下にサラシ巻いてるからかな?」

真純の問いに、二人は頷く。

「ここ何カ月かとかって小耳に挟んだんだけど」

「いや、それもっと前から。
そもそもミチ、小学の時の渾名が某サッカー漫画の応援団長だし。
って言うか、なんかの弾みで
そのコスプレで応援したのが大受けして今に至るって聞いたけど」

「うん。私達と応援始めたのは中学からだけど、
その時にはサラシ巻いて学ラン着てた」

双菜に続いて一実が言う。
172 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 02:50:29.61 ID:czXWw4F90

「ずっと前から、か」

「そうだね。まあ、昔は何処の美少年ってスレンダーだったけど、
今はグラドルって言うか月曜日のって言うかAV?観た事ないけど」

「幻滅した?」

「まさか、おっぱいイケメンの溜息とか最高かよ」

「双菜。でも、それは本当。
言っとくけど前から御椀型でスタイルは良かったからね路留。
で、今年、学年変わってからだね。なんかもう鏡餅をパンケーキにする勢いで
脂汗流してぎゅうぎゅう締めてるから私達もそれやめなって言って」

「いやヒト姉ぇも言ってる事酷いから。
それで、インナーでなんとか出来るんじゃないって言ったんだけど、
様式美だとかなんとか意味不明な供述するからさ」

「だから、最近だと最初に私達が手伝って
無駄に動かない程度に締めてる感じ」

取り敢えず一実が話す現状に真純が小さく頷く。

「あの様子だと、仮に彼女が変装してその特徴を隠すなら、
一旦解いて隙間に挟んでるタオルを抜いて、
それでぺったんこになる特殊な下着でも装着してから、
それから又下着を脱いで元に戻すって事が必要になるかな?
もしくは全体的に何か詰め込んで肥満体に化けるか」

「あー、無理無理」

真純の言葉に双菜が手を振って否定する。
173 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 03:36:20.06 ID:czXWw4F90

「うん、私も無理だと思う」

そう言って、一実がスマホを示す。
表示されたのはグループSNSだった。
一実が指した所には、

ごめん、ちょっとそっち行けなくなった

傷害事件に巻き込まれた。通りすがりだけど事情聴取は避けられない

大丈夫、僕が怪我した訳じゃないから

と言うメッセージが表示されている。

「これ打った時、路留一人でいたのかな?」

一実が問う。

「いや、これがリアルタイムならボクらと一緒にいたし、
時刻的にも実際に事件に遭遇してから発信してるね」

「まずあのサラシ巻きを一人で再現するのも難しいと思うけど、
私達が先に行ってから世良さん達に会う迄の間に
世良さんが言った事を実行するだけでもかなり無理、
その前のメールとかで私達が先に行った時間大体時間解るし。
ましてその間になんか事件を起こすとか」

「成程、確かにそれは無理そうだ。
それからもう一つ、彼女は君達に好かれてるみたいだね」

「勿論」

真純の言葉に双菜が即答した。
174 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 03:37:54.44 ID:czXWw4F90

「いい娘だよ、路留は」

続いて答えたのは一実だった。

「頭が良くて気持ちが優しくて、ね。
事件の事調べるのはいいけど、
路留に妙な事をするならあなたは港南高校を敵に回す。
それは現実だって覚えておいた方がいいよ」

「分かったよ」

一実の言葉に、真純は肩を竦めるのを控えて真面目に答えた。
一実の隣では、お調子者に見える双菜も真面目な顔で真純を見ていた。

ーーーーーーーー

散歩道の街路樹に背中を預けていたコナンは、
ひゅっと放られた探偵バッジを右手で受け取った。

「なんか、参考になった?」

「取り敢えず、確実に潰せるラインを
一つ一つ抑える材料にはなった、って所かな?」

真純の問いにコナンが答える。

「確かに」

真純が口を開いた。

「女子同士の方が話し易い事ではあったかな。それは君の計画通りだ」

「まあね」
175 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 03:39:06.68 ID:czXWw4F90

ーーーーーーーー

西多摩市内の救急病院観察室に、
渡辺瑠果と共に東京に来ていた高校吹奏楽部の面々が集まっていた。

「ルカちゃん、どう?」

その集団の中で先頭となった生徒が、
顔の絆創膏も生々しくベッドに座る渡辺瑠果に声を掛ける。

「うん、痕は残らないだろうって先生が」

「良かったぁ」

仲のいい友人から問われた瑠果の答えに、
声を掛けた女子生徒を初めとした吹奏楽部の面々が安堵を見せる。

「でもさぁ」

部員の一人が言う。

「警察って、全員に聞いてる形式的な質問とか本当に言うんだね」

「そうそう、階段の所であの学ランの娘と一緒じゃなかったら
ちょっとヤバかったかもね」

「え?」

「だってさぁ、控室でルカちゃんやられたんだよ。
東京で容疑者になりそうな知り合いとか当面私達しかいないじゃん」

「あー、なーる」

「でもさぁ、じゃあ、なんだったんだろうね」

「ねぇ」

最後の方は皆がごにょごにょ言い出した所で、
口を開いた瑠果に皆が注目する。
176 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 03:41:06.01 ID:czXWw4F90

「この事で鈴ちゃんを責める事だけはやめて欲しいの。
それ、私がずつないき」

「分かってる」

ぴたりと止まって聞いていた部員の中から、
先頭にいた娘が真面目に頷いて答えた。

「憎いのは犯人、それだけだからね」

「有難う」

瑠果が言った所で、部員達は病院だから抑え気味に、
それでも隠せない慌ただしい気配を察する。

「ルカちゃん」

廊下からの声を聞いて、瑠果は両手の指で頬の絆創膏に触れ、
挙動不審に左右を見回す。
そして、正面の友人と目が合い、友人は小さく頷き瑠果も頷き返す。

「どうぞー」

その友人が応答し、観察室に千頭慎次郎が入室するのを潮に、
吹奏楽部の面々は静かに部屋から移動した。

ーーーーーーーー

コナンは、大会の会場近くから
再び控室等がある住民センターに向けて歩みを進める。

住民センターの北側は森になっており、
普通にセンターに入るならば道沿いに南側の玄関から入る事になるが、
センター北側程ではないにせよ、そちらに向かうルートも
半ば林の中の様な森林公園の散歩道がルートの多くを占めている。

実際にコナンのスマホにも蘭から報せが入っているが、
大会も終わりここ、事件の現場周辺に居座るには余り時間が無い。
それまでにすぱっと解決するには、未だ頭の中で組み立てるピースが足りない。
コナンは、一度頭をバリバリ掻いてから、ここまでの時系列、見聞きした事、
先程真純を通じて聞き出した情報を頭の中で整理し直す。
177 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/12(土) 03:42:27.07 ID:czXWw4F90

「………だとすると………」

「あの学ラン女よ」

低いが迫力のある声を聞き、コナンは顔を上げながらたじろぎそうになる。
そんなコナンの前方に、灰原哀が木陰からぬっと姿を現していた。

「灰原」

「あの学ラン女の、特に交友関係を徹底的に洗うべきね」

「ミチルのか?」

「第一発見者を疑うのはセオリーでしょう。
例え直接犯人じゃなくても何等かの関わりが出て来るかも知れないわ。
だから、あの学ラン女の交友関係人間関係を
徹底的に念入りに入念に洗い直して、
あのおっ学ラン女の周辺に不穏な人間関係が存在していないかどうかを
塵一つ逃さず徹底的に調べ尽くす必要があるわね」

江戸川コナンは、灰原哀とはそれなりに深い人間関係と言える間柄である。

哀はコナンの現在の身の上にも深く関わっている上に、
文字通り命懸けの修羅場その他、本来は高校生探偵であるコナンの
甚だしくドラマチックな場面を共にする機会も矢鱈多く、
それは、コナンにとっては、
体感として二十余年にも匹敵しようかと言う濃度を伴う
壮絶な人生経験を共にして来たと言う事だった。

そうした経緯を踏まえた所、まあ、平常運転の対応で大丈夫だろうと、
そう結論づける事が出来る程度には、江戸川コナンは
今の灰原哀の目の下の隈と三白眼が意味する所を理解していた。

==============================

今回はここまでです>>169-1000

続きは折を見て。
178 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/24(木) 02:14:32.69 ID:de+UqY4w0

山頂の絶景、堪能しました。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>177

ーーーーーーーー

「姉キ、上がったよ」

「ええ」

夜、風呂上りにダイニングで水分を補給していた園子は、
通りかかった姉の綾子に声を掛けた。

「お休み」

「お休みなさい」

綾子と挨拶を交わし、自分の部屋に戻った園子は、
そのまま後ろ向きにベッドに倒れ込んだ。

「あー、しんど」

スポーツの応援に出かけて
事件に巻き込まれて帰って来た疲労感を改めて反芻した園子は、
手を伸ばしたスマホの表示に気付いてタップする。
程なく、スマホに電話が着信した。

「もしもし、世良ちゃん?」

「園子君。遅くに悪いんだけど今ちょっといい?」

「いいよ」

「今日の事件、多分新一君もコナン君を介して噛んで来ると思うんだ」

「だろうねぇ」
179 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/24(木) 02:16:19.29 ID:de+UqY4w0

「それで、先に聞いておきたいんだけど、
新一君とミチル君って知り合いかい?」

「うん、知らない仲じゃないわよ」

「じゃあ、さっさと聞くけど、
二人の間に男女としての感情はあるのかな?」

「無いね。今日もそうだったけどミチル君は蘭をからかう方だし、
新一君もミチル君の事は苦手っぽいし」

「苦手?」

「なんて言うのかな?嫌いって訳じゃないよ、
異性の友達にしては仲がいい方だと思う。
ミチル君、自分で空手道場育ちって言ってるくらいだから
変な意味じゃなくて男慣れしてるし、
その辺はサッカー小僧だった新一君とも馬が合うんだけど」

「体育会系が問題無いなら、後は高度な頭脳戦かな?」

「そゆ事。元々、ミチル君と仲良くなったの蘭が先だからね」

「それは空手の?」

「うん。道場は別だったんだけど、
小学校の、まだ全然小さい頃に一緒になる機会があって、
その時にミチル君が蘭の空手の型を褒めてくれたって。
それから時々話す様になって、
組手や試合で意識する事も増えたったって」

「ふうん、それで蘭君から新一君にかな?」

「うん。あいつ、一応自制はしてるけど、
自分の好きな事を喋り出したら止まらなくなる悪癖があってね。
まあホームズの事なんだけど。
小学校何年生の時か、空手の大会の帰りにスイッチ入っちゃって、
蘭がいい加減うんざりしてた時に
横からするっと話を引き取ってくれたのがミチル君だったって」
180 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/24(木) 02:18:46.01 ID:de+UqY4w0

「じゃあ、彼女もシャーロキアンなんだ?」

「本人はクリスティー派って言ってるみたいだけどね。
知識も洞察もそこらの自称シャーロキアンが裸足で逃げ出すって。
新一君がそう言うんだから相当なものよ」

「それは大変だ。成程ねぇ、確かにちょっと想像はつくよ」

「でしょ。今日ガキんちょ見てても思ったんだけど、
新一君も頭が切れる分ちょっと小生意気な所あるじゃない。
だから逆にミチル君にはちょっと気後れしてたって言うか」

「新一君もなまじ頭が切れるだけに、
同じ年頃で賢いと認める女の子が相手だと勝手が解らなかったのかな。
お子様だと特にね」

「それかもね。
新一君が高校生探偵とか言って抜群に頭が切れるのは私も見てきたけど、
実際ミチル君も頭が良くて、新一君と一緒でもその点負けてなかったから。
流石に本物の事件に巻き込まれたってのは、
ミチル君に関しては今回が初めてかも知れないけど」

「とは言え、見てる限り本物の事件でも随分と腹が据わってるよ彼女。
頭の回転も速いし精神年齢も高めなのかな」

「あれで苦労人だからねぇミチル君。よく気が付いて優しくて、
私も蘭もそれ見て来たからね。
人懐っこくって何処か捕まえ所が無くて、
それで世良ちゃんと張るくらいのイケメン女子だから
そこも魅力って言えば魅力なんだけど
新一君なんかから見るとその辺ちょっとかもね」

「謎を謎のままにしておくのは居心地が悪いホームズ・フリークか」

「まあ、それでも新一君とも仲はいいんだけどさ」
181 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/04/24(木) 02:21:41.27 ID:de+UqY4w0

「そっか。まあ、覚えておくよ。
当面、今日の事件で動くのは毛利探偵じゃなければコナン君だろうけどね」

「ガキんちょかぁー、今回何気に結構ヤバイ犯人でしょ。
危ない事になんなきゃいいんだけど」

「ああ、それはボクも気を付けて見てるよ」

「お願いね。世良ちゃんと蘭が側にいたら百人力だから、
あんな女の敵、もし遭遇したらぎったんぎったんにしてやってよ」

「まあ、危ない事にならない内に解決する事を祈るよ。お休み」

「お休み」

ーーーーーーーー

降谷零警部は、セーフハウスに入るとパソコンを起ち上げ、
ネット回線に繋がっていない事を改めて確認してから記憶媒体を接続する。

「聴き取りの大半は弁護士自身が行ったもの」

呟きながら、降谷はイヤホンを装着して音声ファイルの一つにアクセスする。

「では、先生には私がインタビューをします」

「お願い。他人から聞かれて思い出す事もあるから」

降谷は、少しの間録音された二人の会話を聞き取る。

「回顧録作成を兼ねたclosed case file」

==============================

今回はここまでです>>178-1000

続きは折を見て。
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