カルネアデス・プリズム(名探偵コナン×竜とそばかすの姫)

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1 :暗黒史作者 ◆FPyFXa6O.Q [saga]:2021/11/10(水) 19:29:08.39 ID:mpYq59rk0
スレタイ通りのクロスオーバー二次創作です。
両方観てる前提の内容になります。
「周辺作品」も絡むかも知れません。

R、ではないと思いますが、事件的にきつい描写があります。
味付け苦め、かも知れません。
しっかりオリキャラ入ります。

二次創作的アレンジ、と言う名のご都合主義、独自解釈、読解力不足
等々も散見される予感の下ではありますが。

それでは、スタートです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1636540148
2 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:34:00.54 ID:mpYq59rk0

==============================

 ×     ×

「敢ちゃん」

大和敢助は、上原由衣が運転する乗用車の後部座席でその声を聞く。
その間に由衣はハンドルを切って
幸い無人だった歩道に車を突っ込ませてハザードを点灯させた。

「長野県上田市、国道イチヨンサン号、俺の目の前で衝突事故。
俺は長野本部捜査一課の大和敢助警部だ。
ライトバンが急病を思わせる異常な進路変更を行って
反対車線の幼稚園バスに衝突………やばいっ!」

スマホに集中していた大和が更なる異変を感じて顔を上げる。

「衝突されて一度停止したバスが暴走、
近くを走行していたワンボックスカーが避けきれず衝突した。
現場への車の出入りを止めて、
PC(パトロールカー)と救急車の手配を頼む」

車を出た二人は、由衣が駆け出している間に
大和は前方を睨みつけながら110番通報を行っていた。
この時、長野県警捜査一課の大和敢助警部とその部下の上原由衣は、
長野県内各地で発生していた連続強盗事件の捜査本部に所属していた。
事件自体は被疑者が逮捕され、将来的な有罪も確実視されていたが、
諸般の事情で供述に基づく裏付け捜査と挨拶回りが多々必要な事となり、
二人はその一環として上田市内の関係先を訪問した帰りだった。
現場は片側二車線。由衣は北に向けて左車線で車を走らせていたが、
前方を南向きに走っていた左車線の営業車ライトバンが
猛スピードで反対車線に斜め走行を始めたために
とっさに避難した直後に事故以外の何物でも無い轟音を聞いていた。
大和が一番手近なライトバンに近づくと、
由衣が運転席の窓を掌で叩きながら叫んでいた。
3 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:36:56.92 ID:mpYq59rk0

「ロックされてるか?」

「はい」

由衣は言うが速いか、特殊警棒を振り出して助手席側に回った。
その間に、後続車だったタクシーが停車して
中から若い女性と運転手が駆け寄って来る。
由衣が特殊警棒の底を窓に叩き付け、割れた窓から助手席のロックを外した。
由衣はそのまま助手席に入り、運転席のロックも解除する。
タクシー客の女性がライトバンの運転席を開けるのを見て、
由衣はちょっと首を傾げる。
恐らく捜査資料だった筈だがどの顔写真だっただろうかと。

「もしもし、大丈夫ですか?」

運転席に体を入れた女性は、突っ伏した運転手の肩を叩きながら声を掛け、
服に掌を入れて胸、腹を触る。

「運転手さん、救急車を呼んで下さい。ライトバン三十代男性、
口は動いても、胸に触っても動きが感じられないと」

「分かりました」

「もしかして警察の方ですか?」

「ああ、そうだ」

「だったら………」

シートにスマホが置かれた運転席から、二つの公共施設の名前が聞こえた。

「こちらに協力の要請、出来ませんか?」

「何をだ?」
4 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:38:35.64 ID:mpYq59rk0

「AEDです。ここから運べば救急車よりも早く着くかも知れません。
一刻を争います」

「分かった、パトカーを向けられないか確認してみる。
上原は先にバスに行っててくれ」

「お願いします」

「分かりました」

タクシー運転手が走り去り、大和がスマホを操作する。

「医療関係者ですか?」

「いえ、家政婦です」

運転手を引っ張り出していた女性は、
背後から聞こえた大和の問いに答えながらその仕事の事を考える。
本来東京で働いていたのだが、
その、良くして貰っている派遣先から是非にと頼まれ、
追加料金と派遣元の許可を得て
こちらの別宅でのホームパーティーの手伝いを依頼されていた。
その中での、追加の買い物から
タクシーで戻ると言う豪気な仕事の最中だったのだが、
こうなってはなるべく早く連絡を入れて
後はなる様にしかならない、と腹をくくっていた。
5 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:42:57.74 ID:mpYq59rk0

「大和班長」

サイレンが聞こえ始める中、地面での心肺蘇生を背に見ながら
スマホをしまってバスに近づく大和に駆け寄って来る者がいた。

「陣内か」

駆け寄って来たのは制服警察官二人、
大和に声を掛けた陣内巡査部長とその部下の巡査達。
陣内は近くの交番に主任として勤務しているが、
地元に精通し熱心な職務で信望を得ている様は
若き顔役の片鱗と言える程で、一課の大和も一目置いていた。

「自邏隊が先着して交通整理や報告を始めています」

陣内が言い、異常な蛇行運転を見せた幼稚園バスの横っ腹に
目の前の進路を塞がれたワンボックスカーが突き刺さった現場に向かう。
ワンボックスカーの運転席からサラリーマン風の男がよろよろと出て来た。

「おい、大丈夫か?」

「息、出来ないぐらい痛い、いだだっ」

警察手帳を見せる大和に、男が苦しそうに堪える。
大和が男の胸に軽く触れると悲鳴を上げた。

「肋骨みたいだな。無理に動くと内臓を傷つけかねない。
ゆっくり歩道に避難出来るか?」

敢助の言葉に頷いたサラリーマンが巡査の肩を借りて移動する。

「非常コックを探して下さい」

「あった」

バスの背面で由衣が言い、コックを見つけた陣内と共に背面非常口を開けた。
それと共に、数人の園児が泣きながらバスを飛び出す。
すれ違いにバスに入った由衣は、
思い出した様に次々と始まる号泣にたじろぎそうになる。
それは陣内も違うとは言えなかったが、
それでも彼の方が耐性がありそうで、二人で宥めながら先に進む。
6 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:45:47.66 ID:mpYq59rk0

「大丈夫ですかっ?」

由衣が、頭から血を流し
通路で椅子の縁にもたれて脱力していた若い女性に声をかけた。

「は、はい。私より子どもたち、園長を」

「おい、大丈夫かおいっ?」

若い女性が言い、陣内が先に園長らしき運転席の男性に声を掛けていた。

「これ、急ぐわね。運び出します。
リモコン台(警察署無線室)から消防に連絡お願いします」

意識の無い園長の状態を確認した由衣が言い、
陣内が携帯無線で交信を行う。

「大丈夫よ、大丈夫だからぶつからない様にあそこから外に出るの」

子どもの群れの後に若い女性がふらふらとバスから表に出るのと、
由衣と陣内が二人がかりで
体格のいい園長に肩を貸す形で降りて来たのはおよそ同じタイミングだった。

「よーし、あっちで待ってような。大丈夫ですかっ?」

由衣が園長の心肺蘇生を開始する一方で陣内が園児を歩道に促し、
バスを出た教師らしき女性を支える。

「子ども、まだ中に………」

「血、止めるか。目ぇ見えてねぇや
ちょっと聞くが持病とか無いな?」

額からだらだら垂れ流しの傷口に少し目を細め、
ゆっくり座らせながら陣内がハンカチで応急処置をする。

「行かないと………」

「ちょっと待て」

女性教師の瞼を開いた大和が言う。
7 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:47:15.60 ID:mpYq59rk0

「ちょっと、万歳してみてくれ、両腕だ」

「はい」

「腕、痛むか?」

「いえ、大丈夫です」

「大丈夫じゃねぇよ」

陣内がぽつりと言う。

「ゆっくり立って」

大和に言われ、立ち上がろうとした女性は即座に陣内に支えられる。

「散瞳と麻痺が左右逆に出てる、中の出血を疑うべきだ。
報告しつつ彼女を安全な場所に」

大和が指で自分の頭を突々きながら指示を出す。

「あっちに。こっち側は動きますか?」

「………おいっ!」

無線に報告しながら女性を支えて移動する陣内とすれ違い、
何者かが矢の様な勢いでバスの非常口に駆け込んだ。

「みんな、大丈夫よ。あそこから表に出るの」

大和がその後を追って非常口に差し掛かると、
中では一人の女性が中の園児に声を掛け、
複数の園児が非常口に押し寄せる。
8 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:49:47.92 ID:mpYq59rk0

「この子をお願い、脚を痛めてる」
「お、おう、もう大丈夫だ」

しゃくり上げながら女性に抱え上げられた園児が一旦非常口に降ろされ、
大和に声を掛けられてそちらに向けて顔を上げたその園児は
火が付いた様に泣き出した。

「よーし、よしよし、元気だ。ここにつかまれ。
あんたも早く出るんだ」

大和は、なんとかかんとか園児を脇に抱える様に外へと移動する。
そうしながら、中の女性を気に掛ける。
三十、或いは四十代の、痩せた体つきの何処か慌ただしい女性だった。

「1、2、3、4、5、6、7………」

「交代だっ! あなたは避難してっ!!」

大和と入れ違う様に非常口からバスに入った陣内は、
床に寝かせた園児を心肺蘇生している女性を発見していた。
その時、「逃げろ」、「避難しろ」と言う叫び、絶叫が一際高く聞こえた。

「ちっくしょう………」

ほんの何秒かの後、立ち上がった陣内は周囲の状況を確認する。
取り敢えずバスは横転しており、
洒落にならない臭気と熱気が今でも伝わって来る。

「おい、大丈夫かっ!?」

窓の上に立つ形となった陣内は、椅子の背もたれを避けて探索する。
そして、窓であった床に倒れる先程の女性の背中を見つけ、
その女性と女性に抱き締められた園児の取り敢えずの生存を確認した。
9 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:51:56.85 ID:mpYq59rk0

「急がないと本気でヤバイぞ」

「はい。動ける?」

「痛い、痛い痛い」

女性に声を掛けられた男児が、荒い息を吐いて蹲った。

「痛いのか? 立てないのか?」

陣内の問いに園児は立ち上がろうとするが、すぐに体をくの字に折った。

「この子をお願いします」

「分かった、あんたも急げよ」

「はい」

園児を横抱きに運びながら、後ろに視線を向けて陣内は息を飲む。
後ろを進む女性は、頭からも指先からも血を滴らせ、
天井だった壁に手を着きながら懸命に進んでいる。
陣内は大急ぎでバスの外に出て、
到着していた救急隊に園児を託して振り返る。

「危ないっ!!」

バスの非常口に飛び込もうとした陣内に、
炎上するワンボックスカーからの火線を見た部下が飛び付いた。

ーーーーーーーー

上田市内の救急病院観察室で、上原由衣は大和敢助と再会していた。

「敢………大和警部、こちらだったんですね」

「ああ、バスの爆発で吹っ飛ばされたからな。
こぶが出来た程度で中身は異常は無かった。
で、結局どうなった?」

「死者一名、それ以外は命に別状ありません。
ライトバンの運転手の診断は心筋梗塞、
午前中から腹部の違和感があったそうです」
10 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 19:55:30.89 ID:mpYq59rk0

「放散痛か」

「恐らく。只、胃炎の持病もあったため薬を飲んで済ませていた所、
運転中に急激に悪化して意識を喪失したと。
バスの運転手はライトバンの衝突後少しの間覚醒していた様ですが、
恐らくその時点で硬膜外を含む内出血の多発外傷で
正常な判断が出来る状況ではなかっただろうと。
第一の衝突でバスの中が半ばパニックとなり、
既に重傷を負っていた園長と幼稚園教諭が混乱の中で
結果として中途半端な運転操作を行って被害が拡大した様だと」

「誰も責められない、って奴か」

「バスの中で亡くなった女性は、
バス転倒時の外傷で動けなくなり、そのまま爆発に巻き込まれて焼死、
正確には一酸化炭素中毒が死因になったものと」

「分かった」

「………今日一日は検査入院。赤馬の呼吸器系は後から来る事もあるから、
くれぐれも無理に出て来る様な真似はするな、と、上からもきついお達しよ」

「………ああ、分かったよ」

ーーーーーーーー

この日の勤務を終えた陣内巡査部長は、線香をあげた仏間に座り込んでいた。

「六分、七分の勝ちを以てよしとする、か。
又、三分に当たっちまったよ。ばあちゃん」
11 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 20:00:07.17 ID:mpYq59rk0

 ×     ×

その日の夕方過ぎ、
東京都米花町内の喫茶店「ポアロ」には、黒ずくめの女が訪れていた。

「おすすめは?」

「グラタンは如何でしょう。
鰈のいいのが入りましたよ」

「あー、いいわね。いただくわ。
後、オレンジジュースも」

「かしこまりました」

「ポアロ」の働き者安室透が、栗山緑からオーダーを取って調理を開始する。

「ご愁傷様です」

「うん」

ウエイトレス榎本梓がちょっと奥から戻って来て、
先程安室からも聞いた梓の挨拶に緑が頷いた。

「お待たせいたしました」

「これこれ♪」

焼きあがったグラタンが希望通りドリンクと共に用意され、
相好を崩した緑が早速取り掛かった。

「BAD END」

「おや」

グラタンを半分ほど腹に収めて呟いた緑の言葉に、
安室がカウンターから反応した。
12 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2021/11/10(水) 20:01:39.68 ID:mpYq59rk0

「ああ、グラタンはいつも通り美味しいわよ。
仕事柄、詳しい事は言えないんだけどね。
先生も私も随分手を尽くした仕事で結果がBAD END。
しかも、理由が全然関係ない只々ありふれたハードラック。
それでぷっつり終わりなんだからやり切れない」

「お疲れ様です」

「うん」

安室の労いに緑が返答し、緑は食事に戻る。

「御馳走様」

手を合わせた緑が、カウンターに紙袋を置く。

「お土産。今度これで何か作ってもらおうかしら。
文字通り馬力がつく奴」

緑の言葉に、紙袋を持ち上げた安室が中身を取り出す。

「生食用ですか」

「ええ」

「明日来ていただけるなら、タルタルステーキ等どうでしょう?」

「いいわね。明日のランチにそれお願い。今夜はこれから一仕事」

「これからですか?」

緑の言葉に梓が聞き返す。
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