真希波・マリ・イラストリアス「あーあと30歳若かったらなぁ!!」碇シンジ「えっ?」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/10/05(火) 23:39:17.58 ID:IKZD7REdO
「姫のように他人に認めて欲しかったり、君のように人に従ったりしていると、いつかどこかで必ず壁にぶつかってしまうのさ」
「壁……?」
「挫折って言葉くらい聞いたことあるよね? そんで、大抵の少年少女は成長と共に壁を乗り越える術を身につけていくわけだけど、君たちはまだその方法を知らない。だから、このマリ姐さんの出番ってわけよ」

ドンッ! と、自慢の胸を叩いて大船感を演出するも、シンジくんは怪訝そうに訊ねた。

「具体的にはどうすればいいんですか?」
「そりゃ、ケースバイケースよ」
「……なんかノリで答えてません?」

失敬な。確かに貴重なシンジくんとのコミニケーションでテンションMAXだけどまったく考えなしってわけじゃない。人との会話において相手の受け答えを想定することは重要だがそれに囚われてはならない。共感を意識するあまり相手の言葉を拾いがちになったり、意図を読もうとするがあまりあらゆる発言が伏線や布石に感じてしまうようになったらそもそも会話自体を楽しめなくなってしまう。

「ワンコくん、もしかしてお姉さんのことを舐めてるのかにゃ?」
「別に舐めているつもりはないですけど、ちょっと胡散臭いなとは思ってます」

よーしよし。ならば、わからせてやろうか。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/10/05(火) 23:42:02.89 ID:IKZD7REdO
「ケースその1。姫の場合」

人差し指を1本立てつつ、講義を始める。

「結果を出すことでしか他者の信頼を勝ち取れないと考えている姫には、失敗した時こそ優しくしてあげるべし。分厚くて硬い壁を壊すのではなく、柔らかぁーく、ほぐすことで乗り越えさせるのもひとつの方法ってわけ」
「なるほど……マリさんって実は凄い人?」

いいねいいね、その目。今まさに鱗が剥がれ落ちたその瞬間。精神的優位が気持ちいい。

「ケースその2。ワンコくんの場合」

人差し指を2本立ててカウンセリング開始。

「言われたことを言われた通りにこなすことでしか人との繋がりを得られないと考えている少年には、一度好きにさせてみるべし」
「好きにさせろって……その結果、ニアサーや危うくフォース・インパクトだって僕は起こしかけたわけで……」
「それでも、君は独りにはならなかった」

自分で何かをやってみたことがない少年は当然後先考えることが出来ず、必然的に失敗へと至った。それでも彼の繋がりは保たれた。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/10/05(火) 23:43:39.45 ID:IKZD7REdO
「誰も君を見放さなかった。この意味がわかる? 君は、それを正確に理解してる?」

優しく訊ねると、シンジくんは首を振って。

「わかりません……どうして、僕なんか」
「人との繋がりはそんなに簡単に断ち切れるものじゃないってこと。君が思ってるよりもずっとずっと強くてしっかりと繋がっている」

碇シンジくんは世界を壊した張本人。
もちろんゲンドウくんを始めとした様々な思惑が絡んでいたことは間違いないけれど、それを踏まえても彼の犯した罪は重い。

赦されない罪はない。
果たしてそれは真実だろうか。
違うと思う。結局は気の持ちようだ。

大前提として、やったことは消えない。

赦された気がした。
赦して貰えたような気がする。
赦して貰うことを諦めた。

そうやって、自分の気持ちに整理をつける。
それこそが挫折を乗り越えるということだ。
碇シンジくん。罪は、自分にしか赦せない。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/10/05(火) 23:45:35.75 ID:IKZD7REdO
「てなわけで、少しは楽になったかにゃ?」
「どうかな……むしろ、考えることが増えたような気がするけど……でも、ありがとう」

考えたまえ。思う存分。気が済むまで。
そんで疲れたら、また諭してあげよう。
私が褒めたり、叱ったりしてあげよう。

「マリさん」
「んー? どした?」
「どうしてそんなに達観してるんですか?」

達観ねぇ。それはあまり嬉しくない言葉だ。

「結局、当事者じゃないのさ」

傍観者とはよく言ったもので、図法を突かれて咄嗟に保護者なんて言い張ったものの本質的には私という異分子が君たちチルドレンの立場ではないからこそ客観的で適切なアドバイスが出来るという仕組みだった。寂しい。

「あーあと30歳若かったらなぁ!!」
「えっ?」

やば。年増の年齢詐称女だとバレてしまう。

「いやぁ、最近妙にトイレが近くてさ」
「トイレ、ですか?」
「ほら、その証拠にもうびちゃびちゃ」
「フハッ!」

シンジくんがフハる変態さんで良かったー。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/10/05(火) 23:47:17.95 ID:IKZD7REdO
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

同じ阿保なら笑わにゃ損とばかりに哄笑しているとなんだか若返った気がした。そうそう、この感じ。これぞノリで生きてる感覚。

ユイさん。神の手助けなしにここまで来たよ。

「愉しかったね、シンジくん」
「うん……こんなに嗤ったの久しぶりだな」

嗤いすぎて目尻に浮かんだ涙を拭いながら、しみじみそんなことを呟くシンジくんか可愛くて、そして可哀想で思いきり抱きしめた。

「わっぷ! マ、マリさん……?」
「ねえ、シンジくん」
「な、なんですか……?」
「やっぱり君、良い匂いがする」

懐かしい匂い。ユイさんの匂いに癒される。

「……マリさんも」
「ん? なにか言ったかにゃ?」
「マリさんのおしっこも良い匂い、ですよ」
「にゃろ……変態ワンコめ」

まったく、子供の癖に何を言ってるんだか。
年甲斐もなく赤面した顔を見られないように自慢の胸で視界を塞ぐ。ドキドキするなぁ。

ぎゅっと抱きしめて良い匂いを鼻いっぱいに吸い込んで君を好きになれば私も当事者になれるだろうかなんてことを、真剣に考えた。


【瞬間、匂い、重ねて】


FIN
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/05(火) 23:54:27.21 ID:IKZD7REdO
すみません
>>3のコミニケーションはコミュニケーションの間違いです
確認不足で申し訳ありませんでした

最後までお読みくださり、ありがとうございました!
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/06(水) 18:31:09.52 ID:VPJJxERjO
まあお前だろうなとは
7.88 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)