他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「これが私たちの答えです」【安価進行】
Check
Tweet
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/10/09(土) 16:26:59.62 ID:QkaTF2IzO
どちらも選ばない
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/09(土) 16:27:54.71 ID:Upebbwqs0
(これは「5分間放置しろ」という意味では…?)
291 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:31:18.46 ID:uz0wsKDr0
(……私たちは、選んだ)
(選ばないという選択肢を、選んだ……!)
(誰一人としてこの五分間、スイッチに触れることはなかったんだ……!)
努「……は?」
努「何をしてる……おい、投票しろ! 投票をするんだ!」
灯織「すべて自分の思い通りになると思っているのなら、勘違いですよ社長」
努「な、なに……?」
灯織「プロデューサーは私たちに『必ず助けるから待っていてくれ』と言ったんです。私たちはプロデューサーとの間の絆を信じることにした……だから」
雛菜「たとえ一生かかっても、雛菜たちはそれまで結論なんか出さないよ〜〜〜〜〜♡」
努「な、なにを言っている……」
智代子「希望なんか絶対に選びませんからね! だって、別の人格だなんて入ってきちゃったらチョコアイドルって言う唯一無二の個性がみすみす死んじゃいますから!」
愛依「うちはちゃんと、うちのまんまで皆に会いたいから……それができない希望も絶望もマジでキョーミない!」
努「……くッ! それならこっちで票を操作するまで……!」
摩美々「えー、そんなことしちゃっていいんですかぁ? このコロシアイって全国に配信されてるんでしょー? まさか黒幕が票の操作なんて、公平じゃない真似しませんよねー?」
努「な……お、お前たち……! 本気で言っているのか……?」
灯織「本気も本気ですよ。絶対に私たちは投票なんかしません。『希望』だの『絶望』だの……あなたたちに巻き込まれるいわれもありませんので」
努「ふ、ふ、ふざけるなぁ! そんなこと、許されるわけないだろう! アイドル事務所を立ち上げてからずっと夢見て来た悲願があと少しで達成されるというのに、お前たちは私の夢を……夢を……!」
愛依「自分の夢のために他の人の命を弄ぶなんて、うち絶対許せないから!」
努「どれだけの時間と金を費やしたと思っている……! もはやこの計画は、私の人生そのものなんだぞ……!」
雛菜「散々雛菜たちの人生をかき乱しておいてよく言えましたよね〜〜〜〜!」
努「た、頼むッ! せめて誰か一人だけでも票を入れてくれれば、多数決で結論を出せる……!」
智代子「だったら一票も入れられませんね! わたしたちの絆の結束はそう簡単には敗れませんよ!」
292 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:32:40.72 ID:uz0wsKDr0
努「……なんてことだ」
努「私は、希望を追い求め……その希望に適うだけのアイドルを作り出そうと努めたばかりに……その希望をも凌駕する存在を作り出してしまったというのか」
努「……はは、プロデュース業としては一丁前じゃないか」
私たちの絆の結束を前に、天井社長は膝から崩れ落ちてしまった。
人の命と尊厳とを踏みにじる彼の計画は完全に瓦解したのである。
彼はそのまま朽ちた低木のように力なくうなだれたまま、私たちはスイッチを前にしてにらみつけるようにしていた。
今できるのは、プロデューサーからの助けを待つことのみ。
大丈夫、必ず助けは来る。
何度もお互い声を掛け合い、何分も、何十分も、もしかすると何時間も……
ずっとずっと待ち続け……その時は来た。
293 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:33:54.08 ID:uz0wsKDr0
『みんな、待たせた!』
294 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:35:06.21 ID:uz0wsKDr0
場内に響き渡る聞き馴染みのある声。
モニターに目を向けると見覚えのあるスーツの男性がそこには映っていた。
「「「「「プロデューサー!」」」」」
『ようやっと学園内設備にアクセスできた……大丈夫、その巨大な思い出しライトは無効化済みだ。投票してくれて構わないよ』
灯織「ありがとうございます、プロデューサー」
『いや、お礼を言うべきは俺の方だ。不安な中、よく俺のことを信じて待ち続けてくれたな』
摩美々「まぁ助けてくれなければデコピンだったのでー」
『ははっ、それじゃあ俺も九死に一生ってところか』
久方ぶりの再会と救出とに歓喜する私たち。
その声に呼び起こされてか、天井社長はよろよろとその身を起して、モニターに縋るようにしてプロデューサーに向き合った。
295 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:36:09.00 ID:uz0wsKDr0
努「よくも、よくもやってくれたな……私の計画をここまで台無しにしたことは何があろうとも許さん」
『……私も、自分自身許されるべきだとは思いません。あなたに近しい立場にいながら、あなたの狂気を感じ取ることができず、あろうことかアイドルたちを何人も失ってしまった。私もあなたと同じく大犯罪者ですよ』
努「お前……私の宿願を狂気だと……? どの立場からそんなことが言える……!」
『……同僚だからこそですよ』
その口調は、これまでに聞いたどのプロデューサーの言葉よりももの悲し気だった。
天井社長はそれに感化されてかどうか、額をモニターに付けたまま、ずりずりと地面に滑り落ちていった。
296 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:37:22.68 ID:uz0wsKDr0
灯織「さて、終わらせなくてはいけませんね」
愛依「もう……大丈夫、なんだよね。プロデューサーがしっかりライトは解除してくれたんだよね!」
智代子「うん!大丈夫だよ、だってあのプロデューサーさんなんだよ!」
摩美々「ま、できてなかったらそれこそデコピンなんでー」
雛菜「雛菜はコーヒーを百倍苦くしちゃおっかな〜!」
灯織「ふふっ、そうだね……それぐらいのことはしてもいいかも」
(……これで、本当に終わる)
(誰かに与えられたエンディングでない、本当のエンディング)
(自分の手で、仲間たちの手と共につかみ取った、どんな終わり方よりも美しいエンディング)
(……決してハッピーエンドじゃないけれど、これは一つの最適な終わり方)
(絆を頼りにした、トゥルーエンドは今この手の中に)
297 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:38:23.77 ID:uz0wsKDr0
灯織「それでは、お手元のスイッチで投票してください!」
智代子「わたしたちで!」
愛依「うちらで!」
雛菜「雛菜たちで〜!」
摩美々「摩美々たちでー」
灯織「私たちで! このコロシアイ合宿生活を終わりにしましょう!」
298 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:39:12.55 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
【VOTE】
〔希望〕〔希望〕〔希望〕
CONGRATULATIONS!!!!
パッパラー!!!
-------------------------------------------------
299 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:40:03.80 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
【学級裁判 閉廷!】
-------------------------------------------------
300 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 16:44:35.99 ID:uz0wsKDr0
最後の学級裁判、これにて終了です。
演出の意図を皆さん汲み取っていただけて非常にありがたかったです。
絆の議論スクラムとかもう解答はそのままコピペでしかないので、お付き合いしていただけるか心配でした笑
また、
>>288
での投票タイムは、『投票しない意思表示』が為されればそれでOKだったのでそのまま進行いたしました。
やることとしては変わりませんしね。
さて、ここでしばらく休憩を挟ませていただきます。
学級裁判終了パート及びコロシアイ合宿生活の閉幕を20:30〜から投稿させていただこうと思います。
安価・コンマはもうございませんがどうか最後まで見届けていただけると幸いです。
それではいったんお疲れさまでした。
また後でお会いしましょう。
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/10/09(土) 16:50:32.93 ID:eC9rh4bLO
お疲れ様でした!!
学園外のみんな早く見たい!
302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/09(土) 17:23:02.60 ID:r2ZqYPeX0
乙です!
>>249
変える→帰る かな?
303 :
誤字申し訳ない……やっぱりありましたね
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:30:22.45 ID:uz0wsKDr0
____ゴルゴダの丘の果ては見えない。
304 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:31:27.53 ID:uz0wsKDr0
背に感じるその重みは一歩一歩と歩みを進めるたびに重量を増していくような気すらして、
その重さに負けて臓物を吐き出してしまいそうになったことも一度や二度ではない。
___いっそ押し潰されてしまった方が楽になるのだろうか?
……いや、そうではない。
背負い続けるからこそ、最後にはそれで命を落とすからこそ十字架は十字架足り得るのである。
その責務から外れるようでは贖罪などできるはずもない。
だから私はこの丘を登り続けることしか許されない、してはならないのである。
305 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:33:09.49 ID:uz0wsKDr0
彼女と出会ったのはほんの偶然だった。
当時の私はまだキャリアも浅く、仕事にやりがいを見出すことに必死になっていた。
自分から望んで飛び込んだ世界、そこはそれまで思っていたように透き通る場所ではなく、淀みの底から濁りのない水面を求めて泳ぎ続けるような場所。
なんとかこの心の拠り所となる場所を探し続ける日々だった。
そんな中で、彼女を見つけたのだ。
何気なく同僚の担当する事務所のアイドルが参加したオーディションの結果を見ている時だったか、
……今でもなぜ彼女があれほどまでに私の目を引いたのかはわからない。
ただ、邪な考えだったことは言うまでもないだろう。
私は彼女を見て、プロデュースしたい、つまりは【自分の道具にしたい】と思ったのだ。
彼女はまるでうだつの上がらない日々を送っていた。
女優の眩い光明に当てられた彼女は、夜灯に集う羽虫のように触れることもできない理想の傍で右往左往するばかり。
参加するオーディションというオーディションに次々に落ちていた。
____彼女なら、簡単に籠絡できると思ったのだろう。
私がスカウトするまでそう日数はなかったはずだ。
306 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:36:51.21 ID:uz0wsKDr0
そして私の目論見は正しかった。
女優になりたいという彼女の欲望を芸能界で活躍したいという欲望にすり替えて彼女をアイドルとして売り出した。
容姿はそれなりだったこともあり、レッスンでダンスを上達させれば見栄えはするものになった。
仕事も女優志望時代に比べると入ってくるようになり、彼女自身も途中までそれに納得していた様子だった。
だが、メッキはすぐに剥がれた。
彼女は元々、アイドルなんて存在には魅せられていなかった人間。
女優ではどうしようもないからアイドル、その妥協が歌唱力となって現れた。
執拗なレッスンでなんとか聴けるものにはした。
それでも他のアイドル連中に比べれば満足のいくものではなく、収録現場で雑音が聞こえてくることが増えた。
『これ、どこまで調整できる?』
『別に歌は普通なんだよな……』
『かわいいだけでもね……』
それが発端だったのかもしれない。ずっと従順だったはずの彼女が時折反発を見せるようになった。
______こんなの私じゃない
そう言って飛び出す彼女を見ると、「その通りだ」という言葉しか見つからなかった。。
女優志望がどこへやら、アイドルという妥協で押し込まれた場所で無理やりレッスンと仕事をさせられ、さらにはそこで小言を受ける。
そんなのやりたいはずもない。
307 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:39:11.80 ID:uz0wsKDr0
だから、時には彼女の好きなようにさせてやった。
ガス抜きでもさせてやれば満足するだろうと思った。
だが、彼女がガスを抜くことなどできなかった。
私の方針に沿わない形では、世の評価は全く得られなかったのである。
ガス抜きをするどころか、むしろそれに栓をするような結果を受け取って戻った彼女はこれまで以上に従順になった。
私が見ているのは彼女ではなく、彼女という容器に注ぎ込まれるアイドルのエッセンス。
だから彼女自身の足に合わせようなんてことは思いもせず、その靴に足を合わせるように指示をした。彼女はそれに従順に従った。
____私は、最後まで彼女のことを見ようとしなかった。
308 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:41:23.03 ID:uz0wsKDr0
突然、彼女が仕事の約束を破ってきた。
空港集合だというのに、いつまで経ってもその影はない。
焦燥に駆られた私は彼女の姿を探し回り、ようやく事務所近くの神社でその姿を見つけた。
仕事を放棄しようとした怒りもあったが、その様子を見ているとどうしても心配が沸いてならなかった。
というのも、私は一度彼女にプレゼントを渡して拒絶されていた。
特に他意があったわけでもない、ただその日がちょうどクリスマスだったというだけ。
それなのに異常なまでの拒絶を示した彼女の心から、
荒びを感じてならなかった私は宥めることに必死で、プレゼントを今度こそ受け取ってもらおうとそれを差し出した。
……今思えばそれが彼女の背中を最後に押した要因だったのだろう。
私が彼女のために渡したのは新品の【ダンスシューズ】。
『足に合わせるんじゃない靴に合わせるんだ』
『こんなの私じゃない』
おそらく彼女の脳裏には過負荷、自己同一性の喪失、将来の展望への不安……そういったものが一度に想起されたのだろう。
箱を開けた瞬間の彼女の表情を私は未だに忘れることができない。
309 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:42:49.80 ID:uz0wsKDr0
『只今速報が入りました。アイドルとして現在も活動中だった八雲なみさんがホテル内で死亡しているのが確認されました。警察は自殺と見て捜査を進めている模様です。繰り返します________』
310 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:45:29.74 ID:uz0wsKDr0
あの神社で泣き崩れてしまった彼女をいくら宥めても仕事に戻れるような状態にはならず、そのままホテルに送り届けた。その日の晩のことだった。
私は彼女を最期の最期、その瞬間までアイドルとしての器に無理やり押し込んでそのまま潰してしまったのだ。
そこに『八雲なみ』という人間の姿はない、あるのは空虚な幻想のみ。
思えば私が見た彼女の人間らしい姿は、あのプレゼントの箱を開けた瞬間の表情ぐらいのものだっただろう。
私にはアイドルをプロデュースすることができなかった。
いくら磨きあげても、人間というものは根底では変わり得ない。弱い心があれば、いずれそれが必ず災いを呼び込む。
彼女にも、夢の続きを見せてやりたかった。
飢えていた私は彼女のプロデュースを自分のやりがいのために消費していたところもあったが、いつからか彼女と共に上へと上り詰めることを夢見ていたのも事実。
私は、その道を途中で自らの手によって折ってしまった。
彼女は私を恨んでいるだろう、憎しんでいるだろう、殺したいと思っているだろう。
だからそれを全て十字架として背負うことにした。
かつてアイドルを使い潰した人間として、新たに贖罪のために生き、必ずや彼女の夢を俺が叶えることで代行する。
それが私に唯一できる彼女への餞だ。
だから、なんとしても頂点に立てるアイドルを作りたかった。人の心を動かせるアイドルを生み出したかった。
311 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:46:28.19 ID:uz0wsKDr0
______絶望を乗り越えられるアイドルを、見たかった。
312 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:47:50.40 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
努「なぜだ……なぜお前たちは私の『希望』を選ばない……!」
投票タイムの直後、社長は声を荒げながら台を叩き、私たちのことを恨めしそうに睨みつけた。全て決着がついたのちの『希望』の投票。
私たちは社長の提示した退廃的な『希望』ではなく、自分たちの絆の延長にあった『希望』を選んだ。その結末は、見ての通り。
灯織「……私たちは、もう自分たちの足で歩いていける。あなたにそのための靴を用意してもらわなくても結構ですから」
摩美々「そういうことですねー、過保護はもうカンベンってことでー」
努「お前たちは、あの『才能』の器になれる、受け皿になれる、希望になれる……! それだけ稀有な存在なのに、なぜ自分自身の可能性に抗うんだ……!」
灯織「今のあなたに、私たちの可能性を問われるいわれは無いと思います」
摩美々「アイドルプロダクションの社長が一番アイドルの可能性を信じてなかったって笑い種にも程があるでしょー」
313 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:50:42.49 ID:uz0wsKDr0
努「……お前たちがそのまま外の世界に出て何になる? コロシアイを生き残ったお前たちの手元に残る絆、それは他の連中を犠牲にした上での絆だ」
努「なんの『才能』を持たずままこの学園を飛び出て、お前たちに未来があるとでも思っているのか?」
雛菜「未来、未来……それって本当にいります〜?」
努「……なんだと?」
雛菜「未来って誰かに用意してもらうものでもなくて、自分で作っていくものじゃないですか〜」
愛依「うちらには絆がある、一緒に未来を作れる仲間がいるってことだしね!」
智代子「確かに社長さんの言うとおり、いまのわたしたちには何の『才能』もないかもしれないですけど……でも、わたしたちにはここを生き抜いただけの『個性』がありますから!」
努「……馬鹿馬鹿しい」
努「お前たちが選んだのはただの『逃避』だ。『希望』も『絶望』も、そのどちらでもない凡庸で最悪の元の生活に戻るだけ。世界に対しても、自分に対しても不義理を働くのみ」
努「このコロシアイの成果に、見合っていない」
雛菜「その論理はおかしいですよね〜? 雛菜たちは元々社長の暴走がなければコロシアイなんかしてないわけですし〜、それを棚に上げて雛菜たちのことを悪く言えると思うんですか〜?」
努「それはお前たちが蒙昧が為に、己が責務を理解していないからだ。お前たちがアイドルとして頂点を目指すと言うのなら、それに見合うだけの犠牲を払わねばならない」
314 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:52:56.73 ID:uz0wsKDr0
_____ダメだ、この人はもう……
努「自分自身を喪失しながらでも、夢は追うものだろう?」
……取り返しのつかないところで、ネジが外れてしまっている。
315 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:54:54.85 ID:uz0wsKDr0
努「犠牲なき者に輝きなどあり得ない、ただ自分の実力だけで勝ち上がれるほど優しい世界など存在しない……存在してはいけないんだ」
努「そうでなくては私の選んだ道が、この背中に縋り続ける彼女が間違っていたことになる」
努「お前たちが、お前たちのままでいていい道理などないのだよ……」
摩美々「言ってること、まるで要領を得ないんですケド」
智代子「なんだか怖いよ……社長さん、元々あんな風じゃなかったのに」
変わってしまった社長の大立ち回りを見て絶句する私たち。
この人を止めることはできなかったのだろうかという後悔と共に、いい知れない厭悪の念も湧き上がる。
この体がそんな二つの感情で揺れ動き始めたその時。
316 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:56:04.78 ID:uz0wsKDr0
『社長!』
モニターが再度点り、プロデューサーが姿を表す。
先ほど私たちを救い上げた時とは異なり、その表情には痛烈な想いがにじみ出ていた。口元はきつく結ばれ、その目元にも力がこもっている。
『……私ははじめ、自分自身の実力に自信がありませんでした。アイドルのプロデュース業は完全に未経験、どこから手をつけたものかと始業早々に頭を悩ませたものです』
『でも、あなたが私を助けてくれた。“期待している”と一言をかけてくれた。私はその一言に応えようと必死にここまでやってきたんです』
『あの時のあなたは……偽りだったんですか……?!』
私たちよりも、プロデューサーの方がより近いところで社長を見てきたんだ。
その声は憤り、悲痛がこもり……モニター越しなのに私たちの肌を震わせた。
感情のままの音声がそこになんの遜色ない形で存在していた。
317 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:57:47.66 ID:uz0wsKDr0
努「偽り、か……あれが本心でなかったら、確かに偽りかもしれないな」
『社長……?』
努「並一通りのアイドルのプロデュース業などに、私は興味も期待も寄せてはいなかったさ」
『……』
努「だが、私はお前には期待をしていた」
『え……?』
努「お前なら、或いは……私の二の轍を踏まずとも、私の夢を、希望を、叶えられるかもしれない……お前に旧友の影を重ねていたんだろうな」
『……あなたは』
努「どうして、信じて待ってやれなかったんだろうな」
それは社長が最後に見せた、ありのままの感情だった。私たちがあの事務所で見てきた社長と変わりない、生きたままの表情。
その最後の最後に見た顔を、一生忘れることはできないだろう。自責とも、後悔とも、自嘲とも違う。あれはもっと刹那的な……贖罪のための表情だった。
318 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 20:59:36.80 ID:uz0wsKDr0
そして、社長の言う『希望』の全てを突っぱねた私たちに社長は諦観の眼差しを向けると、
ヨロヨロとした足取りでモノクマの元いた席……があった場所へと歩いていった。
そしてそこで身をかがめ、なにかを持ち上げる。
愛依「そ、それ……おしおきのスイッチじゃん……」
智代子「う、嘘……?! た、確かにわたしたち最終的には希望に入れましたけど……!」
努「安心しろ、これは私のとってのケジメだ」
摩美々「それってつまり……社長が死ぬってことじゃあ……!?」
灯織「ま、待ってください!! 私たちは別にあなたに死んでいただきたいわけではなく……ただ……!」
努「ふん、分かっている。これはお前たちの意思とはなんら関係ない、私自身が背負い込んだ十字架の代償だ」
摩美々「はぁ……?」
努「責任を取ると言うことだ。私がこれまで追ってきた影との因果を断ち切り、自分自身の肩にのしかかる重荷を払う」
努「お前たちも言ったとおり、私はチーム・ダンガンロンパの意思とは外れる形、完全な独断でここにいる。この希望ヶ峰学園の建築費、運営費、組織に対する懲戒……事務所を売ったところで足りるものでもない」
努「生きていたところで待っているのは、希望も絶望もない破滅だ」
灯織「で、でも……生きていれば、必ず……」
努「散りゆく老体から、心ばかしの助言をしてやろう。アイドルとは夢を追う存在ではあるが、夢を叶える存在ではない」
努「……いや、夢など叶わないからこそ夢なのかもしれないな」
『社長……』
319 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:01:33.97 ID:uz0wsKDr0
努「……さて、そろそろ終わりにしようか。なにも残されていない、空虚な人間に別れの時間などは別段いらないだろう」
灯織「待ってください……何も残っていないなんて……私たちと過ごした時間、私たちのために費やしてくれたものがあるじゃないですか……例え形がなくとも、それが……」
努「やめてくれ、そんなもので引き止められると思っているのなら思い違いも甚だしい」
灯織「……っ!」
努「私は今、死を目の前にして安堵すらしているんだ。これで漸く、終止符が打てる。背負い続けた十字架を下ろすことができるとな」
『社長の言う十字架とは以前社長自らが担当していたアイドルのことですよね……』
努「なんだ、知られていたのか。……情けない話だろう?」
『だとしても、その人が社長にこんな死を望んでいるとは到底思えないですよ……!!』
努「そうだろうな、だからこれは逃避なんだ」
努「背負い続けた重責に、私は押し潰されてしまった。……もう、背負いたくないんだよ」
『そ、そんな……』
320 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:03:12.96 ID:uz0wsKDr0
努「さて、時間を取られてしまったが……今度こそ幕引きだ。お前たちを苦しめ続けた悪夢も今ここで終わる」
努「そして、希望も絶望もない停滞だけの日々が今再び幕を開けるのだ」
努「絆をよすがにして生きていくと言うのなら、それを私は地獄の底から見定めることにしよう」
努「それが私の生き様、そして死に様を否定するようなものだとしても……な」
321 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:04:08.41 ID:uz0wsKDr0
努「______おしおきタイムだ」
322 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:06:37.34 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
CONGRATURTIONS‼︎
アマイしゃちょうがクロにきまりました
おしおきをかいしします
-------------------------------------------------
323 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:13:34.15 ID:uz0wsKDr0
彼が右手を伸ばしたのは、一際輝く三角形に並んだ星々。
黄色の輝きがなんとも眩く、見ている私たちの心を暖かくしてくれます。
でも、じっと見ているうちに……その星々は突然散り散りになってしまいました。
その横にあった、紫色の5つの星。
星々が形作る星座も美しく、見ていると頭の中で無限に物語を作ることができそうです。
でも、そのうちの一つの星。寂しやがりな星が徐々に徐々に残りの四つから離れていき……やがてその全てが淡く消えてしまいました。
今度見つけたのはオレンジのギラギラとした光を放つ五つの星。
代償様々な大きさの星は見ているだけで走り出したくなるような元気をもらえますね。
でも、その星の光がそれぞれ大きくなるにつれて……やがて星々としてのまとまりを失っていくのでした……
まるでどこか別の道を選んだかのように、軌道が分かれて消えていくのです。
次に見たのは桃色の星々。
大きな輝きが、姉妹のように愛らしい一対の星を暖かく包みます。蕩けるような魅力が、見ているだけでも伝わってきます。
でも、どうしたことでしょう。突然大きな星と小さな星の一つがぶつかり合い、いがみ合い……薄桃色の閃光の中に消えて行ってしまいました。
324 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:16:08.38 ID:uz0wsKDr0
すみませんコピペ順序間違えました……
>>323
はスルーでお願いします。
星々は集まり、連なり、夜空を彩ります。
その星々に古くから人々は魅せられてきました。
星々に自分たちを投影し、そこから物語を作り出し、毎晩訪れる恐ろしい暗闇を希望に満ちた明るいものにしようとしてきたのです。
さあ、天体観測を始めましょうか。
この高く聳え立つ塔の上でこそ見える星々があるはずです。
-------------------------------------------------
W.I.N.G
〜Worst Inmoral Nasty Genocide〜
超社会人級の絶望 天井努処刑執行
-------------------------------------------------
天井さんは望遠鏡を構えるでもなく、ただありのままの立ち姿で夜空に向き合っていました。
彼のとってはそれで十分、だって彼がこれまでやってきた仕事は無限の暗闇に光を添えるようなものでしたから。
夜空に散らばる星を見つけることなど容易なことです。
325 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:17:01.96 ID:uz0wsKDr0
彼が右手を伸ばしたのは、一際輝く三角形に並んだ星々。
黄色の輝きがなんとも眩く、見ている私たちの心を暖かくしてくれます。
でも、じっと見ているうちに……その星々は突然散り散りになってしまいました。
その横にあった、紫色の5つの星。
星々が形作る星座も美しく、見ていると頭の中で無限に物語を作ることができそうです。
でも、そのうちの一つの星。寂しやがりな星が徐々に徐々に残りの四つから離れていき……やがてその全てが淡く消えてしまいました。
今度見つけたのはオレンジのギラギラとした光を放つ五つの星。
代償様々な大きさの星は見ているだけで走り出したくなるような元気をもらえますね。
でも、その星の光がそれぞれ大きくなるにつれて……やがて星々としてのまとまりを失っていくのでした……
まるでどこか別の道を選んだかのように、軌道が分かれて消えていくのです。
次に見たのは桃色の星々。
大きな輝きが、姉妹のように愛らしい一対の星を暖かく包みます。蕩けるような魅力が、見ているだけでも伝わってきます。
でも、どうしたことでしょう。突然大きな星と小さな星の一つがぶつかり合い、いがみ合い……薄桃色の閃光の中に消えて行ってしまいました。
326 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:18:25.34 ID:uz0wsKDr0
彼の視界に飛び込んできたのは赤の星々。
彷徨う光は行雲流水といった様子で、それぞれの軌道を描きつつも、その軌道は交差を繰り返し、だんだんと近づいていきます。
……でも、最終的にその光が重なることはなく、軌道はそれたままにどこか遠くへ行ってしまいました。
水色の星々は不思議な淡さを持っていました。
他の星々よりも強固な繋がりがあるように見えますが、その淡さ故にすぐに消えてしまいそうな節もある。
見ている者に抱かせる予感は……当たってしまいました。その四つの繋がりは強固なままに、我々の前からだけ、その姿を消してしまうのです。
残ったのは、僅か二つの星。
緑色の二つの星は付かず離れずの距離感、輝きは増したり小さくなったりを繰り返し……どちらが大きいともありません。
ですが、その引力は、結びつきにまでは昇華せず。そのまま道は分かたれてしまったのか……消えてしまいました。
一通り観測を終えた彼は自嘲気味にため息をつきました。
その手には何も残っていない、後ろを振り返っても彼が歩んできた道には何もない。
全てを失った彼は力なくそこに座り込み、天を仰ぐ。
327 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:19:58.96 ID:uz0wsKDr0
その時、微かに彼の視界の中で輝く一つの星がありました。
危うく、儚く、点滅する光。
_____それはかつて、彼がその光を奪ってしまったはずの星。
気づけば彼は走り出していました。
必死にその光に向かって手を伸ばしながら、塔の上から足を踏み外しても雲を蹴って走り続けます。
その背中に生えた翼が彼をどこまでも連れて行き、やがてその輝く一つの星に……届いた。
彼はその輝きを胸に抱きしめます。
失ったはずの輝きを前にして、年柄でもない涙を大粒で流しながら、その光の持つ熱を噛みしめます。
……ああ、また会えた。
328 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:21:06.95 ID:uz0wsKDr0
でも、その熱は今の彼には過ぎた暖かさだったのかもしれません。
全てを捨て去ることを選んだ彼の背中には本当の翼など生えているはずがありませんから。
蠟でできた翼は熱に溶かされ、やがて翼の形すら保てなくなり……落下。
重力に抗うことはできず、真っ逆さま。
掴んだはずの光も手からこぼれ落ちて……
落ちて落ちて
墜ちて墜ちて
堕ちて堕ちて
……グシャ
仕方ありません。
彼は夜空を彩る輝きを生み出す役目を担っていたにもかかわらず、誰よりもその輝きを信じていなかったのですから。
世界を包む、美しき光はあまりにも暖かすぎたのです。
329 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:22:49.24 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
_____すべてが、終わった。
330 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:23:58.30 ID:uz0wsKDr0
社長の凄惨な死を目の前で目撃した。
あれほどまでの悪虐を尽くした、希望と絶望の亡者は自身で積み上げた“夢”と“栄光”とから転落して、死んだ。
血が通っていないような発言を繰り返していた彼も、その死は人としてあるべき熱をその身に帯びていた。
熱く、燃え盛るような血しぶきがあたり一帯の床をキャンバスに赤黒く染め上げる、死。
何も思わないはずはない。
これ以上なく最悪な裏切りではあったものの、社長自身が私たちにとって恩人の一人であったことは今更否定のしようもないのだから。
死と終わりとを噛み締めるように、その一部始終を見届けると、その傍に何か落ちていることに気がついた。
彼の死がトリガーとなって姿を表したであろうそれ。
錆びついたような鉄色の装置にはわざとらしくも図々しく、その中央には大きな赤いボタンが取り付けられている。
その上にはラベリング、そのテープには「脱出ボタン」と明記されていた______
331 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:25:31.64 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
「……ここですね」
私たちは、玄関ホールに集まっていた。
「いよいよ脱出……う〜ん! なんだか緊張しちゃうよ〜!」
社長のおしおき終了後、エレベーターの扉が自動で開いた。
生体認証が行われていたのか、彼がもともと所属していた“チームダンガンロンパ”という組織による制御なのか、はたまたプロデューサーによるハッキングだったのか。そのいずれにしろ、私たちには『もうここにいる必要はない』というメッセージであったことは間違いない。
すぐに目を見合わせエレベーターに乗り込み、地の底から私たちは這い出てた。
「本当に開くんかな……これ」
愛依さんが手の甲で扉をたたくと、無機質な音があたり一帯に響き渡った。
ほかに反応は一切なし、この学園と日常との隔絶とを体現しているようだ。本当に、この扉が開くのだろうか。そんな疑問を抱かずにはいられない。
332 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:26:42.43 ID:uz0wsKDr0
「開かなかったらいよいよここに骨を埋めなきゃじゃーん」
「え、縁起でもないこと言わないでよ摩美々ちゃん!?」
重厚な鉄の扉は相変わらずその口を閉じており、来るものを拒む。周りに取り付けられた防衛設備、その銃口もまた私たちに向けられている。
「そのスイッチ、押したらこの銃がバーン! ってなるかもね〜」
「こっちはもっと縁起でもない?!」
雛菜は冗談めかして笑うけど、そういう可能性も、全くないわけではない。
なんたって、ここは希望ヶ峰学園……その存在だって仮初で、すべてが嘘と不条理とで埋め尽くされている。
黒幕を倒して大団円、その構図を不条理で破壊してきても何らおかしくはない。
「もし出られなくてもプロデューサーが助けてくれるし〜!」
「雛菜ちゃんは楽観的だなぁ……」
「え〜? でもそうじゃない〜?」
……でも、もうそんな不条理、怖くなんかない。
生きるか死ぬかなんて、もはや非日常でもない、ただの(非)日常なんだから。
そんな私たちにしたのは、ほかでもない社長なのがまた皮肉だ。
333 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:27:46.49 ID:uz0wsKDr0
「他でもないプロデューサーが宣言したんですからねー、むしろ助けに来なかったら嘘つきって事で針千本飲ましちゃえばいいんじゃないかなぁ」
「は、ハリセンボン?! ……って生で食べられんの?!」
「そっちじゃないし、そっちだとしてもかなり拷問じゃないー……?」
それに、皆さんと一緒にいれば怯えるような暇がそもそも無いから。
一緒にいるだけで自然と緊張がほぐれて、口角が上がり、胸のあたりが暖かくなる。
脱出を前にして、私たちに委縮するようなそぶりはまるでなく、むしろ学校の休み時間のような安らぎすら感じていた。
「ねえみんな! 外に出たら何がしたい?!」
そんな中、チョコが突然に切り出した。お昼休みにお菓子をつまみながらする雑談のような始まり方で、未来と夢とを彼女は語る。
「何、急にー……」
「えへへ、せっかくなら外の世界に……元居た世界に戻る前に、夢のある話がしたいなと思いまして……」
「あは〜! 楽しそ〜!」
すぐに全員がその頭に思い思いの未来を描いた。それは、私も。
この学園に来る前に浸っていた日常のその延長線上にある【未来】、この学園で得たものを交えたうえでの【未来】。
334 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:28:46.27 ID:uz0wsKDr0
「はいはい! うちは今度こそみんなと一緒にちゃんとキャンプがしたい!」
最初に語ったのは、愛依さんだった。
それは無邪気で、退屈しない、最高の【あるはずだった未来】。
「雛菜たちも合宿はちゃんとやったらしいけど、記憶ないもんね〜」
「だったら焼きマシュマロがやりたいな! みんなで焚き火してその火で炙ると……あぁ〜! 想像しただけで頬が蕩けちゃいそうだよ〜!」
「もう……チョコ、大袈裟すぎるよ」
「チョコちゃんチョコちゃん、そのマシュマロをクッキーで挟んじゃって……スモアにしちゃうのはどう?!」
「愛依ちゃん……青天の霹靂というやつだよ!」ガシィッ
「なんの握手なわけー?」
奪われてしまった記憶の中に、確かに存在していたはずの過去。
それを私たちは取り戻す、自分たちの手で新たに刻むことによって。
失われたものと全く同じものは帰ってこないけど、それを埋めて補うことはできるから。
一つずつでも、ゆっくりでもいい。失われた記憶のピースを、埋めていくんだ。
335 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:29:44.65 ID:uz0wsKDr0
「あ、灯織ちゃんとも話したんだけど〜、雛菜はユアクマカフェにみんなで行きたいな〜!」
次に語ったのは、雛菜。
それはこの学園で変わった彼女だから描ける、親睦のためにある【友好の未来】。
「……! 雛菜!」
「それ、雛菜の趣味なだけじゃないー?」
「それはそれでアリなんじゃん? みんなの好きとか嫌いとか、うちもっと知りたい!」
「うんうん! 前にテレビで見たけどユアクマパンケーキも美味しそうだったし、わたしも賛成だよ!」
「また食べる話してるー……」
「摩美々さん、ダメでしょうか……」
「……別に、ダメとは言ってないし……」
「やは〜〜〜♡ それじゃあ摩美々ちゃんには店員さんの格好もしてもらっちゃおっかな〜! 雛菜、前にお仕事したから店長さんにお話し通せるし〜」
「前言てっかーい」
かつて彼女との間に存在していた隔たり。
いや、それはそんなに大層なものではなかったんだろう。
私たちはこの学園で過ごすうちに、いつしかそれを無視する図々しさを手にしていた。
でも、その図々しさは生きていくための大切な道具だ。
私たちはもう、その線を越えることができる。
仲間を心の底から信じる、その一線を。
336 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:31:26.44 ID:uz0wsKDr0
「わたしはー……」
「みなさま、胃薬のごよーいをー」
「まだ何も言ってないよ摩美々ちゃん?!」
「えー、でもどうせ食べ歩きとかでしょー?」
「違う、違うよ! ……あのね、せっかくならみんなでカラオケに行きたいなって」
次に語ったのはチョコ。
それはこの学園で失ったものを失ったままで終わらせない、【継承の未来】。
「あは〜?」
「咲耶ちゃんが亡くなっちゃう前に音楽会を開いてくれようとしてたでしょ? それを引き継ぎたいなって……この学園生活で犠牲になったみんなとの思い出、記憶……ユニットの曲を歌う事で胸に刻みたいなって」
「……」
「摩美々ちゃん……? どうしたん、そんな口をあんぐり開けて……」
「いや、殊の外チョコの口からまともな案が出ちゃったからぁ……」
「わたしは初めからまともだよ?!」
「でも、すっごくいいアイデアだよね〜! 雛菜、円香先輩のソロ曲歌っちゃお〜! 円香先輩が生きてた時は、歌うと不機嫌になられちゃってたし〜」
「あはは、なんだかイメージできるなぁ」
もう彼女たちは帰ってこない。
どんな手を尽くそうとも、彼女たちの体温も、声も、呼吸も感じることはできない。
でも、確かに感じられることは残っている。
私たちの中に残り続ける彼女たちの“存在”。
そして、生も死も乗り越えてつながる絆。
私たちは、未来に彼女たちを連れていくことができる。
……ともに歩むことができる。
337 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:33:13.06 ID:uz0wsKDr0
「ま、ずっと外に出てなかったしショッピングぐらいはやりたいかなぁ」
「あはは、長いこと外出てなかったしトレンドも変わってるかもしんないね!」
「それもだしー、みんなを摩美々のセンスでコーデしてあげたくてー」
次に語ったのは、摩美々さん。
それは常にみんなを引っ張ってきた彼女だからこそ許される我儘で自由奔放な、【共にある未来】。
「ここにいる間ろくにおしゃれもなにも無かったから、いい加減皆の格好にも見飽きちゃったんだよねー」
「確かに! うちら同じ格好の着替えしかなかったもんねー!」
「摩美々ちゃんのコーデなら大歓迎だよ! 摩美々ちゃんのセンスの服、前から興味あったんだー!」
「わ、私も……あまり着ない服が着れるかと思うと楽しみです……!」
「あは〜? それじゃみんなでお互いに着せあいっこしようよ〜!」
「えー……? ……ま、いいですケド」
「やった! それじゃあ決まりだね! 今からいっぱい勉強しておかなくちゃだ!」
「もぅ……チョコ、張り切りすぎだよ」
人間は、人と関わるうちに相互に影響を与え行く。
色と色とが混ざり合って、変化が起きて、また新しい色になる。
この世に二つとて同じ色はないし、色がずっと同じままでとどまることもない。
千変万化、流伝無窮。
私たちは、変わり続ける。新しい色を求め続けて、新しい輝きを、求め続けて。
338 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:34:27.38 ID:uz0wsKDr0
「で、灯織はどうなのー」
「え……わ、私ですか……?」
そして、最後に語るのは私。
私が描きたい未来は、一つしかない。
「うん! 灯織ちゃんが何したいかわたしも聴きたいな!」
「えっと……そうですね……」
「それなら、私はまた……ライブのステージに立ちたいです」
「ライブの……ステージ……」
「天井社長の言葉、勿論その全てに賛同するわけではないんです。この合宿生活で私たちが失ったものは余りに多くて、重たい……もうこれまでの私たちではない。でも、私たちがこの合宿生活で大切なものを得たことも事実だと思うんです。自分自身の成長も僅かながらありますが、それよりも大切なのは……」
「絆、だよねー」
「……はい。この合宿生活で生き抜いてきた私たちの間に生まれた結束はこれまで以上……ユニットだから、同じ事務所だから……そういうものを抜きにして。心の底から、繋がっているといえる」
この学園で過ごす前の日常があったからこそ、この学園で過ごしてきたからこそ、描く価値のある唯一絶対の、最高の未来。
「そして、この合宿生活で犠牲になった皆さんの気持ちは、私たちがステージまで持っていく義務を背負っていると思うんです。同じ夢を追い続けた者として、彼女たちのためにも現実にしないと」
……【絆の先にある未来】。
339 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:35:47.89 ID:uz0wsKDr0
ずっと見たかった未来を口にした。
それは共に時間を過ごした誰しもが考えていた未来で、だからこそ。
「……灯織」
「摩美々さん……」
「もっと別のないのー?」
「えっ」
「アハハ、摩美々ちゃん……それって、叶えてトーゼンだからっしょ? ちゃんとそこまで言わないと」
皆さんはそれを口にした私が少しおかしかったらしい。
俄かに笑い声が上がって、私たちは顔を見合わせた。
そこに悲痛さはかけらほどもない、友達同士に向けあう笑顔だけがそこに在る。
「またみんなでライブする……わたしも元からそのつもりだよ、灯織ちゃん!」
「だって雛菜たちってば、アイドルなんだもんね〜!」
「……ふふっ、そうですね。私たちは、アイドル……他の誰に道を決められたわけでもない、私たち自身でこの道を選んだ」
「だからこの道をどこまでも突き進みましょう」
「【絆】があれば、怖くないですから」
「……ホント、灯織ってばクサすぎだよー」
「ふふ、やっぱりそうですよね」
「……でも、悪くないと思うよー。真乃も、めぐるも……みんな、きっと喜んでくれるんじゃないかなぁ」
ふと後ろを振り返った。
この学園には、皆さんの亡骸がなおも収められている。
それを持ち出すことは私たちにはできないし、どうあがいてもここでお別れだ。
でも、さっきチョコが言った通り、彼女たち自身の思いは今も受け継いでいる。
そういう意味では、私が今口にした未来は、彼女たちの思いに少しでも応えられているんじゃないのかな。
そう思うと、なんだかうれしかった。
340 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:36:58.56 ID:uz0wsKDr0
穏やかな休み時間の雑談は一たびの盛り上がりを見せ、そして再び現実に。
今改めて背筋を正して、その固く閉ざされた扉に向き合った。
____これで本当に終わり。そして、ここからすべてが始まる。
「よーし、学園を出てからの目標も決まった事ですし、そろそろ行きますか!」
「だね、善はナントカって言うし!」
「灯織ちゃん、準備はいい〜?」
「うん、このボタンを押せば、出られるんですよね」
「灯織のタイミングで押してくれていいからねー」
私は皆さんから信頼されて託されたボタンに目を落とした。
これを押せば、それは成る。
扉は開いて、この合宿生活はその幕を下ろす。
____大きく深呼吸した。
「……それでは、いきます」
341 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:38:17.97 ID:uz0wsKDr0
_______私たちには仲間がいる、【絆】がある。
希望や絶望なんて漠然としたものじゃなくて、確かにここに在る“つながり”。
これがある限り、歩み続けることに恐怖なんてしない。
絆自体には、何の力もない。
卵を砕くことも、紙を破くことすらもできない。
でも、絆は確かに存在する。
私たちの胸の中で燃えているそれが、【絆】だ。
私たちの手が掴んでいるそれが、【絆】だ。
私たちの口が紡いでいるそれが、【絆】だ。
私たちの行く道を照らしているそれが、【絆】だ。
どれほど険しい壁が聳え立とうとも、どれだけ大きな溝が開いていようとも、どれだけ天が荒れていようとも……
絆がある限り、私たちの進む道の障害にはなり得ない。
たとえ見苦しくとも、泥臭くなろうとも、私たちは諦めない。仲間の手を取り、仲間に手を差し伸べ……
_______私たちの“目的地”を、目指し続ける。
342 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:39:05.11 ID:uz0wsKDr0
「行こう」
343 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:40:05.98 ID:uz0wsKDr0
____扉から、光が差し込んできた。
344 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:41:08.75 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
EPILOGUE 光のdestination
END
-------------------------------------------------
345 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:41:52.18 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
【コロシアイ合宿生活をクリアしました!】
【モノクマメダル55枚を獲得しました!】
【CHAPTER06クリア報酬としてアイテム『イースターエッグ』を手に入れました!】
〔コロシアイ合宿生活を生き抜いた証。私たちの歩む道に、希望も絶望も必要ない。ただ仲間たちと、絆を信じて歩み続けるのみ〕
-------------------------------------------------
346 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:45:27.86 ID:uz0wsKDr0
「……うーわ」
347 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:46:21.98 ID:uz0wsKDr0
「なにこのキャラクター、ぜんっっぜん可愛くない」
「そもそもネーミングが安直すぎ、モノクロのクマだからモノクマって……センスないのを誤魔化すにしても杜撰すぎじゃないです?」
「ていうか、そもそものコンセプトからしておかしいじゃないですかー!」
「アイドル同士のコロシアイ、だなんて……そんな設定突飛すぎてパンチですって!」
「デスゲームとかそんなのもう時代遅れですよ、おじさんくさすぎます……」
「……もういいですか? 行きますよ?」
348 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:47:01.56 ID:uz0wsKDr0
「そろそろ美琴さんとレッスンの時間なので!」
349 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:47:56.41 ID:uz0wsKDr0
-------------------------------------------------
To be continued…?
-------------------------------------------------
350 :
◆zbOQ645F4s
[saga]:2021/10/09(土) 21:50:40.55 ID:uz0wsKDr0
というわけで今年の2月から約8か月に及んで続けてきたシャニマス×ダンガンロンパのお話は一旦ここでおしまいになります。
私自身初めての安価進行の長編SSということでストーリーや進行で多々拙い点がありお見苦しい場面があったと思います。
それでもなんとか完走できたのは参加していただけた皆さんあってこそです、本当にありがとうございました!
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/09(土) 21:59:45.19 ID:cKcIg8Sd0
お疲れさまでした
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/10/09(土) 22:03:41.96 ID:jyWukDEY0
ありがとうございました
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/09(土) 22:04:48.00 ID:FiSb4AUJO
お疲れ様でした!
最後まで面白かったです!
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/10/09(土) 22:15:06.14 ID:iL5AHmL80
お疲れ様でした!
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/09(土) 22:43:17.77 ID:MrbKOpJ+O
おつかれさまでした!
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/09(土) 22:59:23.43 ID:tvuMcEuz0
8か月間お疲れ様でした!
これからも応援しています!!
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/09(土) 23:09:10.21 ID:vtAO4zyF0
本当にお疲れ様でした、ありがとうございます
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/10/10(日) 01:56:22.44 ID:x5y8vXl80
おつかれさまでした!
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/10(日) 21:10:52.76 ID:e0DKXjixo
乙乙です
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/04/12(火) 18:52:56.61 ID:NEOTe81+0
今更だが公式のエイプリルフールも探偵とは驚いた
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/05/06(金) 17:57:19.97 ID:rYV+b3N9O
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
252.43 KB
Speed:0.3
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
新着レスを表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)