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【安価・コンマ 】ロボットのパイロットとして生きる【オリジナル】

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942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/02/12(土) 20:50:32.74 ID:2oOwGv630
40+20−5=55 ゼウス−1

アトラスは続け様にミサイルを放つ。加えて先程と同じように投石も行ってきた。

とは言え、先程と違って今度は何をしてくるか分かっている。であれば、余裕も生まれる。

ADMは曲芸飛行の様な軌道を描きながら攻撃をかわし、一気にアトラスの背面に回り込む。そうして遂にミサイルの射出口を全て破壊した。

「クソッ!」

ゼウスの怒りを表すかの様に、アトラスが腕を振り回す。ADMはその場から素早く離脱すると、敵機の正面に回った。

「コレで決める!」

カズミの叫びと同時に、巨大な黒い拳がADM目がけて迫って来る。

それを紙一重で避けたADMはすれ違い様に、左腕のビームを破壊。

遂に、アトラスの全兵装が破壊された。

「クソッ!...まだだ、まだ最後の一手がある!」

そう呟いたゼウスはアトラスをエデンに向かって前進させる。

それを見たカズミは危険を感じ、急いでシエラ=レオネに連絡する。

「長官、アトラスの足と腕を!」

「分かった」

RLTHはメガレーザーランチャーの狙いをアトラスの腕に合わせる。

そうして放たれたレーザーはアトラスの右腕、次いで左腕を完全に、とまではいかないが少なくとも使用はできない程度に溶かした。

それでもアトラスは歩みを止めない。

次に、レーザーはアトラスの脚を狙う。

絶大な威力を誇るレーザーを浴び続けたアトラスの両脚が軋み始める。
そうしてアトラスがエデンの目の前まで到達した時にようやく両脚は動かなくなり、そのまま黒い巨体は光玉にもたれかかるようにして倒れた。
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/02/12(土) 20:54:03.67 ID:2oOwGv630
「や、やった...」

搭乗者の心境を表すかのように座り込むADMだったが、RLTHは違った。シエラ=レオネはまだ戦いが終わっていないことを知っていた。

RLTHがレーザーで溶かし、アトラスのコックピットをこじ開ける。シエラ=レオネもRLTHのハッチを開け、拳銃をゼウスに向ける。

「やはり生きていましたか、長官」

「ふっ、今の長官は君だろう?」

ゼウスの瞳はまだ死んでいなかった。彼はあるスイッチに視線を移す。

「長官、やめてください。それを押そうとするのなら、私は貴方を撃たなくてはならない」

「君も知っているだろう。私は決めたことは必ずやり切る主義だと。ハハハ...この目でクソッタレが死ぬのを見れないのは残念だが、まあいい」

彼が見ているのは人類の悪意を結集したようなスイッチだ。

そもそもアトラスの運用方法とはどのようなものだったのか?絶大な装甲と破壊力のある武装を活用して、敵の戦線に穴をこじ開けることか?或いは動く要塞として防衛線を構築することか?はたまたその巨体によって敵国の兵士や市民の戦意を奪うことか?

そのいずれも違う。アトラス運用の核心はその動力源、核融合炉にある。アトラスはその強靭な装甲によって守られた歩く爆弾として用いられる機体なのだ。つまり、敵国の都市や重要地点まで確実に到達し、その後核融合炉を自爆させる。その事によって敵戦力の壊滅、或いは放射能汚染によって敵国の土地そのものを殺すことが目的だ。

そんな悪意の塊であるスイッチを、ゼウスは躊躇いなく押そうとする。

その瞬間、銃口から火が噴き、アトラスのコックピット一面に血が飛び散った。

「さようなら、長官。貴方を...尊敬していました」

シエラ=レオネは伏し目がちにそう呟いた。

一方、カズミはADMのコックピット内で泣きながらエヴァを抱きしめていた。

「良かった、本当に...!」

「お姉ちゃん...」
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/02/12(土) 20:55:26.65 ID:2oOwGv630
すると、いつの間にかADMの前まで来ていたRLTHから通信が入る。

「カズミ、コックピットを開けろ」

カズミの額に冷や汗が流れる。

(開ける...しか、ないよね)

恐る恐るコックピットを開けると、そこには銃を構えたシエラ=レオネがいた。

「長官...私は──」

そう言いかけた声は銃声にかき消された。

発砲音が反響し、やがて静寂が訪れた時、カズミは自分が生きている事に気づいた。

「私の知る限り、ブルトニア国民の1人であるカズミ・アーディガンは既に死んでいる。...そして、特務機関の裏切り者も今、私が処刑した」

そう言うと彼女は拳銃をホルスターにしまった。

「長官...」

「幸い、お前はブルトニア人を殺さなかった。それに、ゼウスを止められたのはお前のおかげだ。それでチャラだ。エヴァは...いい。だが、ADMは渡していけ。それで良いな?」

↓3まで多数決
1 提案を受け入れる
2 提案を断る
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/12(土) 20:56:16.81 ID:e44zXBNso
1
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/12(土) 20:56:18.52 ID:5J4p5twj0
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/02/12(土) 21:50:56.78 ID:2oOwGv630
「分かりました。その...すいませんでした」

「...ああ。では上まで行くぞ」

「はい」

シエラ=レオネが自らの機体に戻っていくのを見届けて、カズミはエヴァの方を見た。

「じゃあ、行こっか!」

「うん!」

2機のPEMがその場から離脱するのを見て、エデンは呟いた。

『こうなった、か。喜ぶのは彼女たちに任せるとして、私は...亡くなった子らに少しでも安らぎが在らん事を祈るとしましょう』

こうして、大勢の預かり知らぬところで、人類の命運を決する戦いは終わりを告げた。
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/02/12(土) 21:55:21.07 ID:2oOwGv630
今回の一件を経て、特務機関はその目的を大きく変えることとなった。彼らの目的は外部あるいは内部からの脅威を排除する事から、エデンの監視及び調査、そして来る他の惑星生命体に対処する組織へと変貌した。
彼らはカズミとエヴァを秘密裏に監視しているが、ADMもなく、彼ら自身既にオリジナルとも言えるエデンと接触しているためエヴァに興味が向くことはそうそうないだろう。

グラジオット大統領は特務機関からの報告を受けて、エデンの存在を最重要機密に指定、他国に決して秘密が漏れない様にし、ひとまずエデンを生かす事に決めた。彼は自分ならばエデンを上手くコントロールできると踏んだのだ。それが人類にとって良かったのか、悪かったのか、今はまだ分からない。

一方で、エデンの存在を知っているカナアンとの情勢は急速に悪化し、ブルトニアとカナアンの間での戦争が近いとも噂されている。これと関連してガザレムの関係者の間で不穏な動きがあるとの報告もあり、争いの種は絶えない。

ガーディアンオブエデンはリーダーのゼウスを失った事によって瓦解しかけたが、若年ながらも誠実なライによって立て直された。彼女がリーダーになってからはテロ行為は減少した。紛争地域での人命救助や、メルクリウス採掘によって住む場所や仕事を失った人々にそれらを供給するなど、賛否両論はありつつもその存在感は増している。

一方、カスケードはガーディアンオブエデンとの関係を解消。今でも居場所を求めて紛争地域を渡り歩いている姿が確認されている。

サノスは特務機関の監視つきではあるが解放され、今でも友人を探している。ガザレムに友人がいるという情報を得て、今はガザレム各地を回っている。

ミツキが経営するバウエル・インダストリは、政府から極一部の信頼できる上層部に対してエデンの情報が開示され、調査、研究に参画。そこで得た技術を流用して作られたトンデモ兵器が世界に度々混乱の種を撒く事になる。

カズミの両親は念のため、ブルトニアの影響力が薄い東方大陸に移住。老後を優雅に暮らしている。

アルトは今でもジャーナリストとして世界を飛び回っている。ガザレムの復興を報道を通して支援し続けた事で世界に知られるようになる。

カズミは両親と共に東方大陸に移住。親や家族のいない子供たちを支援するNGOに所属した。死んだ事になっている為、表で称賛される事はなかったが、助けられ、支えられた子供たちによって後に彼女の理念を継ぐ財団が設立された。

そしてエヴァはカズミと共に東方大陸へ移った。そして学校に通い、友人を作り、さまざまな事を学んでいる。
949 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/02/12(土) 21:56:42.32 ID:2oOwGv630
「ねえ、これ覚えてる?」

砂浜に座り込むカズミが、隣にいるエヴァにとある写真を見せた。

「もちろん!ヒューシャルの観覧車でしょ!」

「そうそう!...懐かしいな〜。はあ...アダムにも今のエヴァの姿を見せてあげたかったな」

「...きっと見てるよ」

「そう、だね。ところで、エヴァは学校を卒業したらどうするの?進学?就職?」

「んー...ワガママ言ってもいい?」

「どうしよっかな〜。なーんて、冗談!良いよ、言ってみて!」

「お姉ちゃんと世界を回りたいな」

「なるほど...。じゃあ、約束ね!」

「お姉ちゃん...うん!」

そうして笑ったエヴァの赤い瞳は、どんなものよりも眩しく光っていた。

──END──
950 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/02/12(土) 21:57:20.74 ID:2oOwGv630
という事で完結です。
反省点は色々ありますね。折角いただいた案を活かしきれてないとか、展開が雑、というかそこに至るまでの描写が雑というか。心情描写も足りない気がするし。
とはいえ楽しくできたことは確かです。少しでも皆さんも楽しんでいただけていたのであれば嬉しいです。
では、お付き合いくださりありがとうございました。
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/12(土) 21:57:24.50 ID:5J4p5twj0
カスケードは最強の一角っぽかったが結局戦わなかったな
952 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/12(土) 21:59:13.55 ID:5J4p5twj0
お疲れ様でした、楽しかった。設定の畳み方、風呂敷の拡げ方が凄く上手かった
953 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/12(土) 22:04:02.19 ID:QLVH/c9M0

東方大陸を舞台にしなかったのとか凄いと思う。まぁ勢力案とかで出てたら使ってたかもしれないが、無闇に行動範囲を広げず安価全部上手に調理して着地させたの本当凄い
954 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/12(土) 22:05:05.42 ID:e44zXBNso
お疲れ様です
安価でありながらカズミの成長物としてとても良くできていたと思う
1スレに収める進行もお見事
楽しかっです!ありがとうございました!
955 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/12(土) 22:26:05.01 ID:SVMv/0CD0
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/13(日) 11:54:08.77 ID:25h5+4Mb0
>>ミツキが経営するバウエル・インダストリは、政府から極一部の信頼できる上層部に対してエデンの情報が開示され、調査、研究に参画
言う程信頼できるやろか……
957 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/21(月) 07:26:33.08 ID:SHUxHxf6o
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