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【艦これ】龍田「私とあの人と……愛宕と高雄、とその他」

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478 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/23(土) 22:09:36.52 ID:iBFzAQjsO

< 良いことだと、いいねって >







龍田「えーと……別に持ってくるのはいいし飲ませてくれるなら喜んで靴でも舐めるけど」

明石「うそぉ……」

龍田「値段もそうだけどそもそも数が減り続けてるわけよ? こんな反応もしちゃうわ」

提督「よすよす。なんならほら、鍵束貸してやるから好きなの持ってこい」

愛宕「久々に見たわその趣味悪い鍵束。南京錠とか多種多様な鍵ジャラジャラしてるやつ」

明石「まぁ、一応これでも大湊を預かる身として金庫とか書庫とかの数は……それ工廠奥に前から鎮座してる金庫の鍵? 」

提督「え? あぁ、そうそう。貸そうか? 」

明石「い、いいいいやいやいやいや結構です。
あなたそれ中身見た瞬間封印決めてたやつじゃないですか要りませんよそんな呪物」

愛宕「えぇ……」

龍田「…………本格的にぶっ壊れてるじゃないこれ。明日は何が起こるっていうのよ」
479 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/23(土) 22:10:41.64 ID:VgAKtv3rO

< 面倒なことは全て投げ捨てて >






提督「まぁまぁ。悪いことじゃないさ。少なくとも俺にとっては」

愛宕「俺にとっては、っていうのが非常に重要なポイントね」

明石「龍田は全部諦めてお酒取りに行ったし……私も全部忘れようかな? 」

愛宕「一人くらい仲間でいてよぅ。……私にとっては? 」

提督「さぁね」

愛宕「んん……? 」

明石「うーん……ただの疲れと泥酔、そういうことにしたいポーカフェイスですねぇ……」
480 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/23(土) 22:12:16.29 ID:VgAKtv3rO

ありがとうございました
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/23(土) 22:14:41.19 ID:haSgW9qd0
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/24(日) 05:59:18.35 ID:Rs6vSg3Lo
おつ
483 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 22:57:12.14 ID:qfWSsQp60

< 大丈夫ではないのでお願いします、と言いたいところ >







提督「…………………………………………飲み過ぎたしなんかヤベーくらい頭痛い」

愛宕「えーと……そうねぇ…………あ」

提督「……うん? 」

愛宕「大丈夫? おっぱい揉む? 」

提督「……………………」

愛宕「……………………」

提督「……………………」

愛宕「……………………」

提督「……………………はぁ、もうそれでもいいや。
なんか流行とかキャラとかから離れてる気がするけど疲れて判断できない」

愛宕「……………………忘れて」
484 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 22:58:34.86 ID:qfWSsQp60

< 何にも分からなくても取り敢えず目の前にあれば >







提督「ん、いや、なんだ、普段ならノってた」

愛宕「あ、そう……」

提督「…………む」

愛宕「む? 」

提督「…………」

愛宕「…………? 」

提督「……ふへぇ……あったかい…………ふほぉ……」

愛宕「…………谷間に指突っ込むだけって斬新ね。
ねぇ、ホントに疲れてると思うの、もう一回寝たら? 」
485 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 22:59:37.29 ID:qfWSsQp60

< 朝日が眩しいのかあなたの笑顔が眩しいのか >








提督「あぁ……ずっと指遊ばせてられそう」

愛宕「んっ……ぁ、はっ……やめてよ、焦らすの」

提督「そういうわけじゃ……あーちゃん」

愛宕「んー……? 」

提督「結婚しよ? 」

愛宕「ん、いいけど……もうしてない? 」

提督「俺はしてないと思うよ」

愛宕「そ、じゃあ、する」

提督「そっか、ありがとう」

愛宕「いえいえ。……よろしくお願い致します、旦那様? 」
486 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:00:53.56 ID:qfWSsQp60

< 最悪っていうのはまぁ願望混じりの言葉だよねって >







山城「何よあなた、そんな青褪めた顔して」

扶桑「酒臭、いのはまぁ時々あるけどどうしたの? 」

龍田「……………………なんとなく全部分かった気がする。まぁ、推測の域だけど」

山城「はぁ……? 」

龍田「最悪……あぁ、この瞬間も最悪の底更新し続けてる気がする」

扶桑「???? 」
487 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:01:41.13 ID:qfWSsQp60

< 頭ぱんぱかぱーんレベルの混乱 >







愛宕「指輪……? 」

高雄「首輪ではなくて……? 」

提督「ちげぇよそんな趣味無い。
……悪いけど同じものにするつもりだから二人で話し合ってくれ」

愛宕「……」

高雄「……」

愛宕「…………マジ? 」

提督「マジ」

高雄「……………………」

愛宕「ちょっとフリーズしないでよお姉ちゃん……私だけ取り残されたみたいじゃないこれ」
488 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:02:14.19 ID:qfWSsQp60

< さすがにそこまで衝撃を受けるとまでは >







提督「なんならドレスも考えてほしかったんだけど」

愛宕「」

高雄「……………………ごめんなさい、ちょっと言っていることが分かりませんでした、少将閣下」

提督「だから指輪とドレス考えて、って。
申し訳無いが参列者は俺の親二人だけだし牧師の類いもいないぞ」

高雄「」

愛宕「」

高雄「」

愛宕「」

提督「…………………………………………酷い」
489 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:04:18.93 ID:qfWSsQp60

< 終わりの始まりには良い酒を >







明石「あぁ……そういう、ね……」

龍田「そうとしか考えられないでしょう?
昨日はなんだか状況に飲まれた上に楽しく酔わされて考えられなかったけど」

明石「確かに。……そっかぁ……うん、そういうことならまぁ、分かるかな」

龍田「別に今すぐこの状況が変わるわけではないと思うけど……」

明石「明確に何某かを終わらせようとはしてるんでしょうね、あの人」

龍田「遂に捨てられる準備が整った、ってことかしら」

明石「嫌な言い方」

龍田「でも一番的確でしょう? 」

明石「まぁ……」

山城「…………私も酔いたくなってきたから鍵貸しなさい」

龍田「はいどーぞ」

扶桑「そんな簡単に渡していいものじゃ……あぁ、私も要らないとは言ってないわ山城、私も行く」
490 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:05:39.68 ID:qfWSsQp60

< 逃避するには場所が足りません >







愛宕「いひゃい……ちゅねりゃないへ」

提督「気絶したような顔で黙るお前が悪い」

高雄「」

愛宕「いえ、いえ、いえいえ……私たちが悪いわけじゃないと思うんだけど」

提督「そうかな? 」

愛宕「そうかな? じゃないし……えーと、まぁ、指輪もドレスもどうにかはするわよ。
精々目玉が落ちない程度のお高いやつ用意して見た瞬間発情しない程度に綺麗なやつ用意するけど」

提督「そっか。どんとこい」

高雄「」

愛宕「あのね……や、でもお姉ちゃんはもう少しお姉さんらしくしなさい。たかおー? 」

高雄「いひゃい……ちゅねら…………夢の中でも顔の痛みはあるわよね。勿論それも含めて夢だもの」

愛宕「無理無いけどそうじゃないみたいなのよねぇ〜……」

提督「そうじゃないんですよお姉さん」

高雄「そんな他人事みたいね……嗚呼、他人事だった方がどれだけ楽か……」
491 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:08:25.66 ID:qfWSsQp60

< パンドラの底には云々() >







龍田「…………」

山城「…………」

扶桑「…………」

明石「…………」

龍田「…………」

山城「…………」

扶桑「…………」

江風「おは、よ……う? 遂にテートクが死ンだりしたのかこれ」

明石「おはようございます。そうじゃないですので安心して怖がっててください」

江風「はぁ……? 」

明石「…………我ながらこう、場違いな気がしますね。
まだここまでの瘴気を纏っていないって後ろ向きな理由だけど」
492 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:10:41.67 ID:qfWSsQp60

< 世迷言も現実にしてしまえば愛の言葉に >







高雄「ふぅ……落ち着きました、取り敢えず」

提督「そうか」

愛宕「冷たい水飲んで落ち着くって本当に有効なのね〜」

高雄「そうね。……あなたは後で暫くほっぺつねらせなさいね」

愛宕「嫌でーす。あれは高雄が悪いと思いまーす」

提督「俺もそう思う」

高雄「あなたの所為じゃない。いきなり考え得る限りでも最大級を優に越す世迷言を宣うんですから」

提督「いや、そんなこと言うなよ……割と頑張ったんですよ僕」

高雄「それはそうでしょうけどね……」

愛宕「一言ぐらいあってしかるべきよねぇ〜……や、あったとしてもしかしたら必死で止めたりしたかもしれないけど」
493 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:13:27.17 ID:qfWSsQp60

< 特に酔う必要も無いという幸せ >







赤城「実に鮮やかな手並でしたねぇ……全ての配下に指輪を与えたいと思っていると思わせるところから始めて」

涼風「佐世保の本体にも、呉や舞鶴の隷下にもシンパを増やして」

赤城「決して自分が音頭を取っているようには思われないようにしながら、
決して自分が失敗したのだと思われないように立ち回って」

涼風「ここまで妥協したのだ、と言わんばかりに指輪四つと他人から見れば何の意味も無さそうな重婚もぎ取っていきやがった」

赤城「軍事力強化を目論む現場としては実にいつも通りの妥協でしたからね。
各地に数十個の指輪が与えられて終わったわけですから」

涼風「重婚、というかその紙切れだけが欲しかったのにな。
あたいには見えるよ、あと何年だか十何年で軍から消える三人が」

赤城「何年も保つかすら怪しいですよ。……ふぅ、涼風さん? 」

涼風「あん? あたいは何も協力してないよ。妨害もしてないけど」

赤城「信じられるものじゃあ……いえ、涼風さんの方こそ私のことなんて信頼はしてくれないでしょうけどねぇ……」
494 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:15:41.99 ID:qfWSsQp60

< 合法的に冷静になれるクスリって売ってないのかな? >






愛宕「で、えーと、なんだったかしら……親、二人、呼ぶ? サンレツ? 」

高雄「惨い烈士と書いて惨烈という熟語があるわね。
極めて惨たらしいというそのままの意味だけれど」

提督「参加して列するの参列のつもりなんだけど。いない方がよかった? 」

高雄「そうではなくてですね……」

愛宕「正気? 遂にあなたヤリ過ぎて狂ったの?
それともご両親二人とも世の中に反発する狂人の類いだったの? 」

提督「失礼な。……俺がしたいって思ったときにたまたま親が側にいたから話してみただけだよ」

愛宕「嘘吐き」

高雄「誰が信じるっていうんですそんなの」

提督「まぁ、そうか。……オーケー、分かったもう一回冷たい水飲もうか。
なんでこんな冗談だけで親の仇見るような目で見られるんだよ俺」
495 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:18:20.02 ID:qfWSsQp60

< クールタイムにはあと何年必要だろうか >







提督「全部話してきたんだ」

愛宕「……は? 」

提督「軍の広報が出してる強化外骨格だか義体だか分かんねぇのじゃなくてな、
” 艦娘 ”ってのがどんな存在でどういう運用をされているのかも」

高雄「それは海軍どころか世界にとって秘中の秘では」

提督「知らねぇよそんなもの。身寄りは自分の姉妹しかいない、倫理なんてものは自分たちがつくる。
そういうやつらに絆されて共に生きようと思ってしまったって伝えてきた」

愛宕「…………」

高雄「…………」

愛宕「…………帰省してきた一人息子が唐突にそんなことほざき始めるのを聞かされたご両親に同情すればいいの? 」

高雄「そんなものを一応は飲み込んで全て認めた狂気に恐怖した方がいいのでは? 」

提督「はいはい。…………煙草吸ってくるけど、二人で頬つねりあったりするなよ? 」
496 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/24(日) 23:18:48.32 ID:qfWSsQp60

ありがとうございました
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/24(日) 23:21:58.48 ID:u7wcUxPi0
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/25(月) 03:33:42.73 ID:EICy0vToO
499 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:27:17.06 ID:bObQwfC90

< 大体いつも通り一夜明けて >








雲龍「どうせ勝ちようがなかったじゃない。
別に今すぐ捨てられるわけでもないみたいだし」

天城「……」

雲龍「これはこれで女としては責任も感じずに楽しめるでしょう?
ただやりたいことだけして時々愛情分けてもらって」

天城「…………」

雲龍「えーと、ほら……おっぱいがただ大きいだけの女には到底勝ち得なかったってことね」

天城「…………」

雲龍「…………助けて葛城」

葛城「私にどうせえと……寧ろ雲龍姉ぇがいつも通りを演じられることに驚いてるよあなたの妹は」
500 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:28:16.69 ID:bObQwfC90

< おかしいとかおかしくないとかどうでもいいよね >







雲龍「ん……演じているわけでもないというかなんというか」

葛城「事実をそのまま飲み込めてるとでも言うわけ? 頭ピンクなおねーさまは」

雲龍「飲み込めてるというかいつこうなるかって話だったでしょう?
今更こんなことで取り乱す程浅い覚悟で好きになったわけじゃないもの」

天城「…………」

葛城「はい追い討ち入りましたー。……それマジで言ってる? 」

雲龍「別にショックを受けてすらいないとかどうでもいいと思ってるわけではないけれど、そうね」

葛城「それマジで言ってんなら……いやいや」

雲龍「うん? 」

葛城「マジモンの化け物みたいな精神してんね、って」

雲龍「そうかも。……なんならこの足でベッドに誘ってきてもいいくらいなんだけど、おかしい? 」
501 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:29:30.98 ID:bObQwfC90

< そうやって出直してくる人ならばこんなことには >







能代「あのですね……割とこう、ストレートに大惨事なんですけど」

提督「ん? ってもまぁいつかしらはこうなるんだから早い方が良かっただろうたぶん」

能代「随分な自意識過剰……って言いたいところですが」

提督「現にこうなってるもんな。別に何にも思ってないわけでも考えてないわけでもないよ、俺」

能代「そんな男を好きになったとは皆さんも思いたくないでしょうね」

提督「あぁ。…………そんなドライな目で正論吐かれたら好きになっちゃいそう」

能代「馬鹿。…………せめてもう少し、好色で最低で自分本位な、
本気っぽい顔を演じられるようになってから出直してきてくれます? 」
502 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:30:45.51 ID:bObQwfC90

< ただこの時を >







雲龍「百年を超えて寄り添うよりもただ一瞬の時を分かち合う方が良いことだってあるのよ。
負け惜しみだと思われても良い、実際にそうなのかもしれない、でも信じさせられてしまったの」

天城「……………………」

雲龍「別にいいのよ? あなたが脱落してくれればそれだけ一人分の時間が浮くわ」

葛城「まぁ、確かに」

雲龍「私は変わらずあの人を求めるし、捨てられても簡単には諦めない。
あなたがそこで死んでしまうならあなたの感情もその程度の強さだったってことね」

天城「……………………そうですね」

雲龍「はぁ。…………葛城」

葛城「だから無理だって……私に何ができるっていうのさ」

雲龍「私が煽ったんだから、鎮火? 」

葛城「鎮めちゃ駄目じゃない? …………でも頭おかしいハメ撮り送信してきたときより真っ当な理由で沈んでる気がしないでもない」
503 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:32:29.67 ID:bObQwfC90

< 欲しいものに拒まれても望むことをやめない >







龍田「ふぅ……」

山城「……」

扶桑「……」

龍田「…………」

山城「…………」

扶桑「…………」

龍田「…………これほど籠の鳥でよかったと思うことは永遠に無いでしょうね」

山城「ええ。……どうせ最初から一番にはなれなかったってすぐ諦められたもの」

扶桑「或いはそれが悲劇な気もするけれど。……お酒でも飲みに行きましょうか、あの人たちと」
504 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:38:52.62 ID:bObQwfC90

< それでも距離でいえば短い >






Littorio「うーん……意外といえば意外、そうではないといえばそうではないですね」

海風「? 」

Littorio「雲龍の正真正銘化け物染みたメンタルだとか、
龍田が最初から全部諦めてなお唯一人を欲しているだとか、
扶桑姉妹のように追い縋って哀願することに甘美を感じているだとか、
そういった極端なタイプを除外してみて」

海風「一番ダメージを受けていそうなのが天城さんだということが? 」

Littorio「ええ、Littorioは雲龍や龍田を混ぜたようなメンタルに近いですし、
最初から異国人として情欲に振り回される役も楽しんでいますけれど」

海風「残ったのが加賀さん天城さん明石さん、と考えるとまぁ確かに」

Littorio「実は普通の女の子というやつに一番近かったのは天城だったというオチ? 」

海風「かもしれませんね。……ここからなら月でも太陽でもどちらもひたすら遠い、みたいな差ですけど」
505 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:43:59.52 ID:bObQwfC90

< 舞い上がっているのか追い詰められているのか >






高雄「ふぅ……どうやらまだ私は夢を見ているようね」

愛宕「随分長いおねむねぇ〜」

高雄「……本気で指輪もドレスも決めるの? 」

愛宕「決めないの? 高雄がそれでいいなら私は喜んで一人で行くけど」

高雄「そうじゃなくて……あの人本当に正気だと思う? 」

愛宕「種明かしをされればまぁ理屈はついたかなって。
色々長い間、それこそ要港部にいたときから根回しし続けて、
そのときの材料まで恐喝に使って漸くここまでやれたって言われれば、ね? 」

高雄「…………」

愛宕「そこまでして手に入れたかった、って言われちゃったら私にはもう選択肢が無いもの」

高雄「そう、ね。…………強いあなたが羨ましい」

愛宕「馬鹿ね。高雄程冷静じゃいられないだけよ。……これを逃したらもう永遠に手に入らない、みたいな」
506 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:47:07.42 ID:bObQwfC90

< 未知なるものへの恐怖 >






愛宕「でもまぁ……それこそ冷静になったつもりになって考えてみると」

高雄「ええ」

愛宕「諸々のファンタジー要素だとか軍どころか世界の大嘘はまだ一応想像くらいできそうじゃない。
小説でも映画でもなんでもいいんだけど」

高雄「陰謀論の類いとしてはかなり人気にはなりそうよね」

愛宕「ええ。……サラッと姉妹二人娶る重婚飲み込んでるご両親って何者? 」

高雄「え、えー…………えー、と……」
507 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/25(月) 23:48:25.01 ID:bObQwfC90

ありがとうございました
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/25(月) 23:54:15.48 ID:/rM3FWyZ0
乙 連載が7周年目だが今が最高に面白い
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/26(火) 13:53:12.06 ID:I++J3AUnO
とうとうか……
510 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 22:54:09.67 ID:8Pj8QK230

< 鯖の味噌煮ランチとかだと魅力が半減する気もする >







雲龍「ようは全部言い換えでしかないと思うのよね、そういうのって」

葛城「うーん……」

雲龍「何とかランチセットって結局のところ何とか定食みたいなものでしょう?
正直なところオムライス定食でもラザニア定食でも中身は変わらないわ」

葛城「まぁ、そう言われると確かに? 」

雲龍「お洒落に言えば良くなると思ってるのよ皆」

葛城「まぁ……実だけを見ればそういう見方もできるかな」

雲龍「だからね? 逆説的に重いマゾ女というのも愛情の深くて懐の広い女に

葛城「、はなりません。……そんなこと宣うためにわざわざ割と沢山の企業とか女に喧嘩売ったの? 」
511 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 22:56:41.66 ID:8Pj8QK230

< 他人の庭が汚く見える >







雲龍「ま、別に私重いマゾ女でいいんだけど」

葛城「そんなんでもいいとかいう女にならなくてよかったよ私」

雲龍「本当そうね。私じゃない女がそんなこと言ってたら見下げ果てるわ」

葛城「あ、そう……そういうよく分からない精神構造怖くなってきたよ最近。
もうちょっと妹の精神衛生とか気にしてくれない? いや、割と本気で」
512 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:00:20.10 ID:8Pj8QK230

< 手に入らないからといってそれを壊してしまうなんてあり得ない >







高雄「横須賀を筆頭として各地の鎮守府や隷下の要港部に詰める戦力を底上げするみたいですね」

明石「ふぅん……」

高雄「勿論、その妥協に次ぐ妥協の始発に一人の男のくだらない目的が介在していたなんて誰も知りませんけれど」

明石「くだらないってことは無いでしょ。曲がりなりにもたった一つの理想叶える為に何年もかけて成し遂げたんだから」

高雄「塵も積もれば、というかなんというか」

明石「幸せ積み重ねてく過程経て成就させたんでしょうが。……本気で殺してやりたいくらいですよ、私」

高雄「あの人を? 」

明石「高雄さんたちを。……私、相手の女に向かうタイプだったみたいです。これ、つい先日気付いたんですけど」
513 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:05:56.49 ID:8Pj8QK230

< 平素と何も変わらない微笑みでせめてもの毒を >







愛宕「んふ……どうしたの? 」

天城「いえ……なんというか、思ったよりも普通ですね、と」

愛宕「鼻歌歌って相好崩しながら何も手に付かなかったりしていてほしかった? 」

天城「余計天城が惨めに……いえ、そうかもしれません。
それなら億が一ですけれど愛宕さんを殺して終わらせたかもしれません。
友人の生命を奪った罪に耐えかねて自死する、そんな理由も付け加えられますし」

愛宕「天城はそんなことしないわ」

天城「できなかった、だけなんですよ」

愛宕「いいじゃないそれで。……どうする? あの人、今なら罪悪感で大概のことはしてくれそうじゃない? 」

天城「いいえ、祝って差し上げますよ、心から。
それがせめて背中を預けられる数少ない友人への義理ですし、それに」

愛宕「ええ」

天城「それが、あなたたちを一番苦しめられるから。
……あの人はそんなもの最初から背負っていて、
高雄さんが孤高を貫けるヒトだから愛宕さんが一番辛いでしょう? 」

愛宕「…………ええ」
514 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:09:24.09 ID:8Pj8QK230

< それこそ最高の褒め言葉です >







加賀「ま、これでも祝う気持ちは本当にあるわ。よく、ここまで耐えたわねって」

愛宕「それはそれは。ありがとうございます? 」

加賀「どういたしまして。……どう? 」

愛宕「はい? 」

加賀「気分はどうなの、って。赤城さんや涼風は一応少し前から動きを把握していたみたいだけど、
あなたたちには気取られないように隠していたんでしょう? 」

愛宕「最高に幸せですね。全て一人でやり遂げる覚悟と成功って素晴らしいと思います」

加賀「……そう」

愛宕「ええ。そんなに想われているなんてそれだけで達してしまいそうなくらい幸せ」

加賀「そう。…………煽った私が言うのもなんだけど、いい性格してるわね」
515 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:10:23.43 ID:8Pj8QK230

< 根底からこの場を覆し得る >








雲龍「あら、私にも呉れるのねその紛い物」

天城「……まぁ、これが問題無く作動すればあなたの気持ちは信じられますか」

扶桑「高次にある精神感応をより高める為に両者の想いを糧に相互補助を生み出す触媒、だったかしら」

明石「持ち運びを簡易にするためでもありますけど一応絆の証として指輪の形になってるわけですよ」

雲龍「笑っちゃうわねさすがに」

天城「それでも……これはある種天城たちのような存在だからこそ欲する形です。
二人きり信頼し合えるのなら寧ろ形が指輪である必要すらありません」

山城「そこはもう問題にするべきところじゃないわ。……ね? 」

提督「そうだな。いよいよ殿下が自分の終わりを考え始めたってことだ」

扶桑「なるほど。…………確かに、今更気持ちの持って行き場なんて考えている場合ではありませんね」
516 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:15:57.81 ID:8Pj8QK230

< 妹の立場で妹として以上に慕う、というプレイ >







鈴谷「ねぇ、妹、要らない? 今なら鈴谷のを一人あげるよ」

GZ「要らん。……しかしやはり妹とは特別な存在だと思うのだが」

時雨「やれやれ、これだからまともに妹のいないヒトは」

金剛「本当そうネー」

鈴谷「そうそう。実際に妹なんていてもあぁそうか、って思うだけだよ」

浜風「いえ……金剛さんと鈴谷さんはちょっと特殊だと思いますけど。妹さんそのものが」
517 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:19:56.78 ID:8Pj8QK230

< 身内になればまた一味違った >







鈴谷「まぁ、姉は姉で時々どうかなって思うときもあるけど」

時雨「まったくだね」

金剛「そこは私には分からないネー」

GZ「榛名や霧島に訊けば深く頷いてくれそうではあるな」

金剛「もうっ、比叡の悪口は許さないデース? 」

GZ「違うそうじゃない」

鈴谷「それはさっきの妹トーク編の内容だね」

時雨「まぁ……姉としてなら金剛の方が穏当な気は……いやいや」
518 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:26:26.91 ID:8Pj8QK230

< 導火線に精一杯息でも吹き掛けるかな? >







時雨「つまりさ、春雨が好きな提督っていうのは自分がいないときの提督なんだよね」

春雨「……そうだね」

時雨「ロリータ趣味でもなくて、ちょっとだけ薄い壁つくってなくて、対等に見てくれる」

春雨「……うん」

時雨「だけどもし仮にだよ? 春雨が人間でいう大体二十代後半くらいの見た目だとして」

春雨「? うん」

時雨「それでも提督のこと好きになったと思う? 」

春雨「当然でしょ? 精神年齢では別に幼いつもり無いんだけど」

時雨「そうだね。…………こういう潜在的な爆弾はあの女衒どうするつもりなんだろう」

春雨「?? 」
519 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:33:03.85 ID:8Pj8QK230

< 薄味とか濃い味とかそういう話ですらなくて >






愛宕「本日のメインはチーズカルビ煮込みでーす」

提督「おおう、また何か変化球できたな」

高雄「ですね」

江風「えぇ……」

Roma「なんでこんな専用っぽい鍋何個もあるの……」

愛宕「? 買ったからよ? 」

明石「設備は私が用意しましたよー」

Roma「それはそうでしょうけれどね……」

松風「……辛い」

旗風「? 甘くない? 」

松風「は? 」

旗風「?? 」

山城「辛味の旨みに敏感だということにしておくけれど……。
さすがに甘いと本気で思ってるならなんとかした方がいいと思うわ、本気で」
520 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:38:40.56 ID:8Pj8QK230

< 自分の感情に素直と言えないこともない >







天城「そういえば姉様と他愛無い話をしていたときに」

伊14「はい? 」

天城「イーゼルで殴り飛ばすわよ、なんて言われたんです」

伊14「あー、絵が趣味でしたっけ」

天城「絵“ も ”趣味なんです。……そういう冗談が言えるところに一瞬だけ変な憧憬を抱いたんですよ」

伊14「うーん……分からなくは、ない? 自分に縁の無いないもの持ってるヒトって凄く感じるもんね」

伊13「まぁ……そう、かも。普通、イーゼルなんて言葉、出ません」

天城「ええ。……それでよくよく考えるとあの為体の女相手に変な意味だとしても憧憬を抱く回数の方が多い自分に軽く眩暈を覚えまして」

伊14「……まぁ、才能は物凄くあるヒトだから」

伊13「……侮蔑したくなる、回数が多い、よりは……まぁ……? 」
521 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:43:04.24 ID:8Pj8QK230

< 施設ではなくて城だと思えばまぁ >







伊14「んふふふふ……でもそっか、絵筆とか沢山持ってるんだよね? 」

天城「そうですね。部屋にもありますけれど殆どの画材は専用の別室に」

伊13「お絵描き、部屋? 」

天城「ええ、汚しても良いお絵描き部屋と防音の楽器部屋を持ってますからね」

伊14「えぇ……」

天城「それからまぁ、逢瀬用の別荘みたいな部屋も。
共用の厨房よりも余程気合いを入れているであろう場所が」

伊13「えぇ……」

伊14「まぁ、必要は必要なんだろうけど……今更ながらに軍事施設ってなんだっけ……? 」
522 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:46:50.56 ID:8Pj8QK230

< 秘密の部屋 >







伊14「でもそっか、皆さん大体自分と姉妹だとかの部屋とは別にあの人呼べる部屋も維持してるんだ」

天城「ええ、お互い他人のそこには入らないのが不文律なのでどんな場所かは天城も知りませんが」

伊13「なる、ほど? 」

天城「時々通販だとかでものを頼んでいるのを見掛けたのに厨房に無いときだとかは間違い無くそのお部屋用ですよ」

伊14「なるほどねぇ……」

伊13「そっか……じゃあ、海風ちゃんが、頼んでた、あれは……そう……」

伊14「姉貴ぃ……? 」

天城「…………何を頼んでいたんです。そんな青褪める部分無かったでしょうこの流れに」
523 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:51:20.79 ID:8Pj8QK230

< いつかは通らなければならない道 >







雲龍「はーい、一人? 」

提督「ん? あぁ、なんか皆自分の部屋帰っちゃった」

雲龍「新婚予定の奥様お二人は? 」

提督「自分たちの部屋。俺はお呼びじゃないみたいだ」

雲龍「指輪と……本物の指輪とドレスでも選んでいるのかしらね」

提督「ッ……そう、かもな」

雲龍「この程度で後ろめたいような顔なんてしないで。余計惨めになる」

提督「悪い。…………ふぅ、何飲む? 今なら何でも、出すけど」
524 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:53:24.07 ID:8Pj8QK230

< 抑え付けたものの清算を >







雲龍「はぁ。…………抱いて、犯して」

提督「いいけどなんかあった? 」

雲龍「無いと思っているんなら……」

提督「うん」

雲龍「…………いえ、そんなのどうでもいいから、抱いて。
殺してくれてもいい、気持ち良く最中に逝かせてくれるのなら」

提督「…………」

雲龍「…………」

提督「…………」

雲龍「…………」

提督「…………」

雲龍「……っ…………き、分じゃないなら、い

提督「莫迦。……くっさいキッモいサイテーな札、使っていいかな」

雲龍「こば、っめるわけ……ヤ、見ないでよ馬鹿。泣きた、っく、なんて無いのに、馬鹿っ」

提督「ごめん。…………二人きりになれるところ、行こっか」
525 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/27(水) 23:56:58.34 ID:8Pj8QK230

< 似ているようで全く違うものを貰った、貰ってしまった >







山城「ふぅ……なんだかんだいって譲ってしまったわね、雲龍に」

明石「まぁ、想いの深さと抑圧していたモノの量がちょっとね。
想いで劣っているとは思いませんけど」

天城「ふふ、この紛い物の指輪、握り潰してやりたくなります」

扶桑「そのうち高雄たちが正真正銘本物のこれを嵌めているのを見なくてはならないものね」

山城「……ええ」

明石「……そう、ですね」

天城「…………ボディに、入りましたよ今の」

扶桑「…………あの、さすがに空気を読めていないとかそういうことを言われても困るのだけれど」
526 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 00:02:04.15 ID:4kco3VUp0

< 泣いていないとは露程も思えない >







明石「それにしても……ふふ、指輪を貰ってこんなに沈む女って他にいます? 」

山城「いないわね。勿論問題無く作動したことには嫌でも喜ばされたけど」

天城「これだけ想い合っていてなお自分がナンバーワンでは無いことに打ちのめされますけれどね」

扶桑「人間の精神って深いというか強いというか、怖いと思ったわ」

明石「ただの重婚とかならクズの権力者が……とか思うところですけどねぇ……」

山城「これで合計八人? 少なくとも八人の女を一定以上は同時に愛するってドン引きよね」

扶桑「そんな男を愛してしまえる私たちもある意味では恐怖の対象かしら」

天城「真っ当な人間から見ればきっと。…………今頃姉様はどんな涙を流しているのでしょうね」
527 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 00:02:33.54 ID:4kco3VUp0

ありがとうございました
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/28(木) 00:05:48.57 ID:8O9wygtr0
529 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/04/28(木) 02:43:21.35 ID:xhThQAmo0
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530 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:29:14.30 ID:w7hoRbF20

< 寝起きに、ふと >






雲龍「……………………Zzz」

提督「ん……」

雲龍「…………ん……………………Zzz」

提督「…………」

雲龍「……………………」

提督「…………」

雲龍「……………………」

提督「…………」

雲龍「……………………」

提督「…………」

雲龍「……………………」

提督「…………痛い、雲龍。頸筋なんて噛んでも、楽しくはなれないよ」
531 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:32:37.41 ID:w7hoRbF20

< 朝日が眩しいから、背けているのです >






雲龍「もしかすると化け物具合が進行してヴァンパイアになってるかも、って思って」

提督「そんなわけ」

雲龍「それか、あなたの血を啜れば支配できるかと思って」

提督「そんな、わけ。……支配、したいの? 」

雲龍「されたいの。本音を言えば、あなたの唯一無二になれるなら立場は何でもいい」

提督「…………」

雲龍「ふふ……最低な顔」

提督「…………」

雲龍「嗚呼……最低、本当に、最低。あなたの苦しそうな顔見て安心するなんて、最高に最低ね」
532 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:36:22.42 ID:w7hoRbF20

< 一夜明け、団居は果てる >







雲龍「ん……ごめんなさいね、面倒な女で」

提督「別に。女の子は皆面倒なものだから」

雲龍「それはそれは……さすが女衒様ね」

提督「でも、それを面倒だと思わないのがいい男の条件だよ」

雲龍「よくそんな巫山戯たことノータイムで言えるわね」

提督「本音だからね。……気分、どう? 」

雲龍「いつも通り、ってところ。良くも悪くもないわ」

提督「そ……ありがとう」

雲龍「何が? 」

提督「俺なんかと一緒にいてくれて。……何、食べたい? 」

雲龍「助手席で風を受けたい気分」

提督「風食べたいとか霞食ってる仙人かな。……ん、シャワー浴びて、着替えてきて」
533 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:37:21.52 ID:w7hoRbF20

< “ くらい ” >







山城「あぁ……なんだか今日も気分が悪いわ」

龍田「何故でしょうねぇ〜」

扶桑「分かり切ったことって案外と頭の隅にしか居場所無いものね」

山城「ええ。……本当に気分、悪いわ。朝から愛車にもたれ掛かって女待つ男見た所為で」

龍田「あら〜」

扶桑「それはそれは」

山城「ふぅ…………最悪、もう何もかも失ったくらいに、悪いわ」
534 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:38:30.89 ID:w7hoRbF20

< 帰らなければいけない場所があるから >








提督「こんな適当に流して帰ってくるのでいいの? 」

雲龍「あら、このままどこまでも逃げてくれるっていうの? 」

提督「悪いな。……悪い」

雲龍「ふふ……いいの、これで。気分悪いからそれを拭いたくて抱かれて、
その朝に自分の身の程整理してるだけだから」

提督「…………」

雲龍「…………」

提督「…………」

雲龍「…………」

提督「…………」

雲龍「…………佳い、風ね。ええ、このまま終われるなら、何も要らないくらいには」
535 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:39:12.88 ID:w7hoRbF20

< たまには真面目な話をしろとか言われたので >







Pola「実はベジタリアンになろうと思ったことあるんですよ〜。
ヴィーガンとかいうお笑いじゃなくてブレッサリアンくらいの」

時雨「はぁ? 」

Pola「Polaたちって人理から乖離した化け物じゃないですか〜。
だからそもそもこの世の何かを消費するのが罪を重ねることなんじゃないかって」

時雨「全く同意はできないけど、そうかい」

Pola「酸素だとかはまぁ仕方無いとして、
何にも食べなくても一応は生きていけるじゃないですか」

時雨「戦闘はかなり厳しいし精神的に死にそうだけどね」

Pola「そうそう〜。……何でやめたと思います? 」

時雨「不毛さに気付いたんだろう? 」

Pola「ベジタリアンの発祥ってね、大英帝国なんです」

時雨「HAHAHA! そりゃあ続けてられないね! …………とでも言えばいいのかい? 馬鹿なの? 」
536 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:41:00.59 ID:w7hoRbF20

< いや、真面目にやってる人を否定したいとは想いませんけれど >







WS「でもあなたワインだけでどうにかなりそうだしリキッダリアンくらいならできるのじゃなくて? 」

Pola「こう見えてPolaそれなりにお料理好きなんですけど〜……」

時雨「そもそも僕はそのブレッサリアンだとかリキッダリアンがよく分からないけどね」

WS「どうでもいいことですよ」

Pola「ですよ〜」

あきつ丸「ハンッ、身体に悪いから食べないなら兎も角動物が可哀想で食べない?
いっそお前が死ねば全て終わるだろうが間抜け」

鈴谷「そもそも感謝して食べる、が一番まともだと思うけどねー。まぁ、鈴谷野菜カレーも結構食べるけど」

GZ「まったくだな。……全てカレーに結び付けるのはどうかとは思うが」
537 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:42:14.87 ID:w7hoRbF20

< それはどんな出逢いになるのだろうか >







海風「星座別ラッキーコスメってなんなんだろうね」

江風「や、知らないけど」

海風「一応十一月二十七日って星座的には射手座なんだけどさ」

江風「うン」

海風「ラッキーアイテムがゴールドのアイシャドウって何の冗談なんだろうね、って」

江風「それ使うとどうなるわけ? その占い的な何かに従うと」

海風「“ 突然の友人からの紹介やお誘いで素晴らしい出逢いがあるでしょう ”だって」

江風「うーン……」

龍田「ん……おはよ」

海風「…………」

江風「…………」

龍田「? なぁに、私が何かした……? 」
538 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:43:08.37 ID:w7hoRbF20

< 愛してくれるならwin-win? >







海風「えーと……私と龍田さんって、友人ですか? 」

龍田「そんなこと訊かれたら普通傷付くと思うんだけど……まぁ、友人でいいんじゃない? 」

海風「私に誰かを紹介するってなったらどんな人選んでくれます? 」

龍田「ごめんなさいね、本当に意味が分からないんだけど……」

江風「占い擬きネタで喋ってるだけだからテキトーに返してくれればいいよ」

龍田「ふぅん? ……そうねぇ〜」

海風「ええ」

龍田「…………ふふ、あの人を優に超えるガタイのサディストと一途なロリコンどっちがいい? 」

江風「ンなのどっちも願い下

海風「サディストさんで。どうせ私壊れませんし」

江風「あ、姉貴ィ……? 」
539 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:43:51.72 ID:w7hoRbF20

< 続ける意味は特にありませんが >







江風「あのさぁ……」

海風「だって占いネタに被せてノってくれたんだからこっちもノらないと」

龍田「ふふ……本当に紹介してあげましょうか? 」

海風「構いませんよ? 私にメリットがあるなら」

江風「メリットって姉貴さ」

龍田「うーん……あの人の先輩に当たる筈だけどそれなりに実家はお金持ちみたいだし財界方面には強いわねぇ」

海風「なるほど。つまりその人を釣ればあの人には役立つんですね? 」

龍田「そうかも」

江風「だから、あのさ……」
540 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:44:43.62 ID:w7hoRbF20

< 皮肉(直球) >







龍田「まぁ、その人一応子沢山の愛妻家って評判ではあるからよっぽど上手くやらないと駄目かもね」

海風「へぇ」

江風「そういう評判があるくせにサディスト呼ばわりってなンなンだよ」

龍田「子沢山が正妻一人の胎からとは言ってないし愛する妻が一人目とも言ってないわ」

海風「なるほど」

江風「えぇ……」
541 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:46:42.53 ID:w7hoRbF20

< ゆったりと楽しむ様を横目に見つつ >







愛宕「今日はサバしゃぶでーす」

提督「いぇーい……なぁ」

愛宕「何? 」

提督「サバしゃぶはいいよ、好きだよ俺」

愛宕「そうよね」

提督「遂には旅館で見るような固形燃料で一人一鍋なのもいいよ」

愛宕「ええ」

提督「何故加賀と赤城は普通の土鍋なんだ、それなら全員普通に鍋でやればいいだろうが」

愛宕「だって誰かが勝手に沢山買ったのに放置してたし私も一回使ってみたかったんだもん」

提督「あ、そう……じゃああいつらの分にも」

愛宕「本気で? 」

提督「や……やー…………いいわ、俺が馬鹿だった、忘れてくれ」
542 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:49:13.08 ID:w7hoRbF20

< 結果 >






加賀「素晴らしいわ、ありがとう愛宕」

愛宕「別に。私もやってみたかっただけですし」

赤城「でもこれ本当にいいシステムですね。誰も損をしません」

加賀「お皿だとかは全部私たちが綺麗にするわ」

赤城「そうですね。それくらいはせめて」

愛宕「はーい」

明石「おいし。…………鍋は個々人でも大皿が別にあるんだから結局はこの二人の独擅場なのでは? 」

愛宕「……」

提督「……言うな」
543 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:50:30.70 ID:w7hoRbF20

< わんわんはお休み >







江風「姉貴ー」

海風「なに? 」

江風「暇だしフリスビーしようぜ」

海風「いいけど……結構海風の吹き凄いよ? 別に駄洒落じゃなくてさ」

江風「そこはほら、身体励起して超人フリスビーにしよう」

海風「まぁ、面白そうだからいいけど。他に誰か呼






提督「だりぃ……高雄、煙草いいか? 」

高雄「別に許可なんて要りませんよ。一本か二本で戻ってくるなら休憩くらいしてきてください」






江風「うン? 」

海風「…………私、着替えてくるね? 先行ってて」

江風「あ、あぁ。…………どうせ巫山戯たミニとか履いてくるンだろうなぁ。外れたら全裸で踊ってやる」
544 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:51:14.26 ID:w7hoRbF20

< 末路 >







龍田「どうぞ? 」

海風「どうぞ」

提督「どうぞ」

江風「…………」

高雄「寧ろはしたなくならないようにトレーニングウェアでしたね。
……それはそうと早く戻らないと、怒りますよ? 」
545 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:53:44.93 ID:w7hoRbF20

< 結末 >







提督「ってもな高雄。江風の全裸ダンス見たくねぇの? 」

高雄「別に。興味ありません」

江風「それはそれで妙に傷付くな。……しねぇからな? 冗談の範疇だろ? 」

海風「なんだつまんない」

龍田「本当つまらないわねぇ〜」

提督「代わりに海風がしてもいいよ? 」

海風「あなたのメスにされたのは私の意志ですけどあなたの玩具になって無様を見せる理由はありません」

提督「お、おう……」

高雄「それこそ冗談の範疇ですね。……そろそろ戻らないとあなたに踊らせますから、さっさと戻りますよ、ほら」
546 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:54:51.48 ID:w7hoRbF20

< だからといって太いとは言わないが >







雲龍「さっき小耳に挟んだのだけれど」

提督「うん? 今、仕事中、オーライ? 決裁事項、溜まってる、高雄、おこ、オーライ? 」

雲龍「オーライオーライ。……痩せてると騎乗位で骨が当たって痛いって本当? 」

提督「知らん。以上」

雲龍「知らないの? 」

提督「知らないの」

雲龍「本当に? 」

提督「あぁん? 」

雲龍「ねぇ、聞いた? 私たちって痩せてはいないのね、高雄」

高雄「みたいですね」

提督「…………あぁん? 」
547 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:55:44.93 ID:w7hoRbF20

< ラベルの向きが云々持ち方が云々 >







江風「そーいや旗風とか松風って着任したときの飲み会でさ」

旗風「? 」

江風「ボトル持って回ったよな」

旗風「一応普通のことじゃないの? 新参者なわけですし」

松風「ビール瓶を持って行ったら代わりにウイスキーボトル持たされるのはどうかと思ったけどね」

伊13「? 普通、じゃない? 」

伊14「やー、かなり特殊だと思うけどねぇ……」
548 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:57:47.67 ID:w7hoRbF20

< 後輩のことを考えないというのはある意味先輩らしくある気もする >







松風「まぁ、司令がウイスキー好きなのはこの際いいよ。
曲がりなりにも警備府任されてる少将だし多少の勝手だって許される」

初月「加賀さんや天城さんには冷酒を注ぎLittorioさんにはワインを注ぎ叢雲にはブランデーを注ぎ」

涼月「それだけでもおかしいのに雲龍さんなんて横に置いてる缶チューハイ注がせてきましたよね」

雲龍「うん? 単にあなたが無理矢理注いできただけじゃない」

涼月「ビールは要らないわざわざボトル持ってこさせるのは悪いとかなんとか言ってたじゃないですか」

雲龍「無理に注がなくていいのに」

涼月「今ならまぁあなたがそういうヒトだって分かってはいますけれどね……」

初月「目線も寄越さないで胡乱な目をした真顔の先輩に下手なことはできないじゃないか」

雲龍「そう……私これもう要らないの。食べない? 」

初月「貰うよ。…………大皿とはいえ殆ど食べた様には見えない皿を渡されてもさ、
普通は嫌がらせか試されてるかそういう風に思うんだ。ちょっとは分かってくれない? 」
549 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 21:59:08.87 ID:w7hoRbF20

< 全て気の赴くままに >








雲龍「でも私今はローストビーフよりスライスレモンの方が食べたいから」

初月「スライスレモンなんて無いじゃないか」

雲龍「いいのよ。つまり何も食べなければいい」

涼月「はぁ……」

天城「姉様……また迷惑かけているんですか? 」

雲龍「かけられに来るのが悪いわ」

天城「かけているのを否定してほしいところですけれどね。……そちらも食べますか? スライスレモン」

初月「まぁ……うん」

松風「あー、あればいただきます」

涼月「わっ、私が用意してきますからっ」

天城「いえいえ……姉様」

雲龍「? 」

天城「天城も酸味のあるもの欲しいのでカットしてきていただけます? 」

雲龍「ん……席だけ、残しておいてね」

天城「ええ」

松風「…………行動原理が全く分からないんだけどどうなってるのかなあれは」
550 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 22:01:39.78 ID:w7hoRbF20

< 何もかもいつも通りのようでいて、けれど >







天城「そんなもの無いんですよ。
姉様が明確に考えているのはあの人のことと加賀さんのことだけくらいであとはもうコロコロ変わる何かだけですから」

松風「……社会不適合者にも程がある」

天城「自分だけなら何も要らないけれど誰かが欲しいと頼んでくればやる。それだけのことです」

松風「それだけって言われてもね」

天城「愛してくれとは言わないけれど欲してくれれば捧げる、そういう女なら天城も楽だったのですけれど」

松風「あ、あぁ、そう……」

初月「いきなり重い話なんてしないでくれるかな。
……いや、ヘラヘラされても困るのは確かだけど」
551 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 22:03:56.00 ID:w7hoRbF20

< 怖い先輩って程でもないという自己申告 >







伊14「まぁ、でも龍田さんとか山城さんに注がなくてよかったのはね」

伊13「楽、だった、かな? 」

瑞穂「同期といえば同期ですものねここだと」

扶桑「あの二人ってお酒の好みに五月蝿いものね」

伊14「…………本気で言った? 」

伊13「ボケ……うぅん、本気、かも」

瑞穂「扶桑さんですからねぇ……」

扶桑「?? 」
552 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 22:04:56.42 ID:w7hoRbF20

< 無礼講という永遠の罠 >







江風「ン……まぁ、何が言いたいかっていうとさ」

海風「うん」

江風「江風たちが着任したときって人数少なかったからか別に注ぎに行かなかったし楽だったよなって」

海風「そ、うだね、うん」

瑞穂「……そうですね」







明石「飲まされ過ぎて寝落ちしたヒトたちのお陰ですよね、ちょっと自重するようになったの」

加賀「あれがアルハラっていうんだってはっきり分かったから。尊い犠牲だったわ」

赤城「私の場合何故か注ぎに行く前に注ぎに来られたんですけど……」
553 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 22:06:20.44 ID:w7hoRbF20

< 私とあなたの楽しい明日があれば >








提督「……………………」

愛宕「んふ……何? 今更プロポーズ後悔してるの? 」

提督「んなわけあるか。……愛宕大尉」

愛宕「はっ」

提督「これより語るは我が秘中の秘だが、守れるかな」

愛宕「当然。閣下のお言葉、私の最期まで胸に秘めることに何の躊躇いも御座いません」

提督「そうか。…………あーちゃん」

愛宕「ん、なぁに? 」

提督「好き、ごめん、ありがとう。明日も隣にいてほしい、ごめん。殺してくれていい」

愛宕「はっ、閣下の隣は私の唯一の居場所でありますからして……__さん」

提督「うん? 」

愛宕「莫迦? 今更言葉遊びで試さないでくれる? 」

提督「ごめん。…………で、明日も隣にいてくれるの? 」

愛宕「ごめんなさい、もしかするとあなたの上に跨ってるかも」

提督「……ばーか」
554 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/28(木) 22:06:47.20 ID:w7hoRbF20

ありがとうございました
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/28(木) 22:09:21.60 ID:8O9wygtr0
556 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:23:45.23 ID:g40hzCq20

< 罪を憎んでヒトに驚く >








あきつ丸「」

鈴谷「」

時雨「」

あきつ丸「」

鈴谷「」

時雨「」

あきつ丸「…………」

鈴谷「…………」

時雨「…………艦娘のロリコンってさ、捕まるものなんだね。ビックリしたよ本当」
557 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:25:43.46 ID:g40hzCq20

< 慰める体で >







あきつ丸「…………度し難いであります」

鈴谷「うん…………マジに冗談じゃないの? 」

あきつ丸「人間・海軍・政府との関係上すぐに釈放されはしたが……佐世保に飛ばされるらしい」

鈴谷「えぇ……」

時雨「……なにそれ」

あきつ丸「こうくるともう何も信じられないでありますね」

時雨「本当そうだね」

鈴谷「はぁ。…………でもどうせ始まるんだろうなー、誰が被害者だったのか探し出す嫌な流れ」

あきつ丸「……」

時雨「……だろうね」
558 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:26:45.31 ID:g40hzCq20

< さて何が? >







天城「載るんです」

雲龍「載るわよね」

天城「ええ、載りますよね」

雲龍「載るわ。というか今も」

天城「…………」

雲龍「…………」

天城「…………」

雲龍「…………」

天城「…………姉様に同意されたのは兎も角ですね、勝手に載るんですよ、テーブルに」
559 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:28:23.97 ID:g40hzCq20

< 寂寥と懐古と >







提督「ん……あいつは、まったく」

提督「…………」

提督「…………」

提督「…………」

提督「…………」

提督「…………この場合、お返しは三人分でやらなきゃなんねぇのかなぁ」







愛宕「? あれ、何してるの? 」

高雄「どこで聞き付けたのかBismarckさんから来たお祝いを眺めてるの」

愛宕「ふぅん……? 」

高雄「あんな顔をされては……あぁ、本物の指輪と求婚を受けてもこんなに妬くなんて、なんて、酷い」
560 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:29:11.52 ID:g40hzCq20

< 過去の二人にしか分からない、分からせない >








愛宕「というかあれ、何? 懐中時計? 」

高雄「ええ、しかも螺鈿細工の一点物」

愛宕「どこにそんな伝手があるのよあの麗人」

高雄「さぁ? ……そんなものよく探してきたものですね、って言ったら」

愛宕「うん」

高雄「“ 御目出度う ” って達筆な漢字でそれだけ書かれたメッセージカードを無言で見せられたわ」

愛宕「それはそれは……それはそれはとしか返せる言葉が無いわねぇ……」
561 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:32:03.02 ID:g40hzCq20

< 今が大切とは言うものの >







愛宕「でもまぁ……寄り添って時を刻め、ってことなのかしら」

高雄「たぶん」

愛宕「これで刃物なんて贈られてたら宣戦布告にも思えるけど」

高雄「或いは自分との関係や感傷を断ち切れ、とも思えるけれど……そうね」

愛宕「うーん……」

高雄「……」

愛宕「…………何、返せばいいのかしら」

高雄「返すの? 」

愛宕「私たちが返さなくてもあの人は絶対に返すじゃない。
連名じゃないんなら完璧に勝ち逃げ許すだけだわ」

高雄「……そうね」

愛宕「…………」

高雄「…………」

愛宕「どうしたらいいのかなぁ……絶対に勝てない、過去に生きる美化された女相手に、ねぇ〜……」
562 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:32:35.51 ID:g40hzCq20

< 啜る音は天高く >







加賀「ふぅ……今年初素麺、良きものでした」

赤城「薬味の数も、良きものでした」

瑞穂「……そうですね」

葛城「……お中元用素麺みたいなサイズの箱が沢山倉庫にあるってさぁ」

能代「あんなにあったら化粧箱の意味も薄れるでしょうに……」
563 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:37:32.27 ID:g40hzCq20

< まぁ、好きなもの入れたらいいと思うよ >







提督「やっぱ錦糸玉子だなぁ。さすが俺、美味い」

加賀「基本中の基本としてネギには拘りました」

赤城「梅干しも拘りましたよ」

天城「天城は胡麻を」

扶桑「私は大葉を」

海風「おろし生姜は江風にやらせました」

叢雲「わんこ蕎麦じゃあ無いんだから……。
あぁ、素麺そのものはしっかり選んで積み重ねた年数分の絶妙な茹で加減にしたつもりだけど」

松風「いちいちこんな大所帯で分担用意する程のものだったかなぁ……や、素麺嫌いとかじゃなくてさ」
564 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:38:11.86 ID:g40hzCq20

< 眠さ故のコミュ障 >







提督「ラブホテルとプラモデルってさ」

高雄「はい? 」

提督「響き似てるよな」

高雄「ラウドネスの方が近くありません? 」

提督「そうかな?……真顔で即答されるとちょっとなぁ。くっだらない冗談だよこれ」
565 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:40:17.60 ID:g40hzCq20

< 大変に怨嗟の籠ったお言葉 >







高雄「なんだか眠いし、ちょっとまともに頭動いてないんですよ」

提督「寝てくれば? 」

高雄「誰があなたを監視すると? 」

提督「せめてサポートと言ってほしいね。……そんなに信用無い? 」

高雄「ありません、欠片も、微塵も、一筋の光すらも」

提督「あ、そう……」
566 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:44:35.34 ID:g40hzCq20

< あの人好きなことになると早口になるよね >







提督「ってもびっくりした。高雄LOUDNESSなんて知ってるんだ」

高雄「はい? 基本的な英単語では? 」

提督「うん? 」

天城「ここは天城がご説明しましょう。LOUDNESSは1981年に結成されたバンドでーーーー






雲龍「あぁ……メタルだとかロック好きだものね、あの子」

高雄「そういう問題なんでしょうかあれ……まだ聞いてると思いますよあの人。グループ自体は知ってるのに」
567 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:45:43.15 ID:g40hzCq20

< 起こったというか起こしたというか勃たされるというか >







愛宕「まぁ、実際に起こったことで言えばおねショタ? ってやつなわけで」

提督「そうかもしれんけど」

愛宕「八十超えのお婆ちゃんと三十代まだまだ若者の恋愛なわけで」

提督「……そうかもしれんけど」

愛宕「なんなら粘膜接触が奇跡な年齢差なわけで」

提督「…………そうかもしれんけど」

愛宕「しかも求めてくるのが若者の方なわけで」

提督「そうかもしれないけどさ。…………お前は俺にどうしてほしいんだよ、マジで」
568 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:49:35.07 ID:g40hzCq20

< 確定させなければ、まだ…… >







愛宕「あ、でもこんなこと言ってて思ったんだけど」

提督「あん? 」

愛宕「高機能な体重計だとかであるじゃない、体脂肪率どころか骨年齢とか出すの」

提督「体組成計のことかそれ」

愛宕「たぶんそれ。……私たちの組成でちゃんと出ると思う?
体内年齢だとかってエラー出たりしそうじゃない? 」

提督「……」

愛宕「……」

提督「…………忘れよ? なんか凄いブルーになる気がする」

愛宕「はっきりさせたいなら買うか明石に訊……分かった、ごめんなさい、私が悪かったからそんな顔しないで? 」
569 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:50:57.94 ID:g40hzCq20

< 甘美なる汚泥 >







雲龍「ところで全員飲み込めるの? 」

提督「あん? 」

雲龍「口に出したら、飲んでくれるの? 」

提督「あのね君……」

雲龍「何? 」

提督「まぁ、酔ってる所為にすればいいか……全員ではないよ。飲めない子もいる」

雲龍「やっぱりいるのね。正直私も望んではやりたくないわ」

提督「そりゃまぁそ

瑞穂「意外なこと言いますね。大概の体液は汚液であればある程悦んで啜りそうなのに」

雲龍「表現……望んでいないことをやらされるのがいいのよ、分かる?
でも、最初から望んでいては、駄目なの。分からない? 」

瑞穂「はぁ? 」

提督「……」

天城「……はぁ」
570 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:51:30.78 ID:g40hzCq20

< 流れというかなんというか >







雲龍「本当は嫌なことを嫌なのに嬉々として嫌々楽しく愉悦を堪えてやるって難しいのよ? 」

天城「そもそも普通そんな難解なことはできないと思いますけれど」

瑞穂「というかできなくていいですよね」

雲龍「あなた、飲めないの? 」

天城「割と嫌ではないですから飲め……いえ、別に変な意味ではありませんが」
571 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:52:28.15 ID:g40hzCq20

< 穿って逆から混ぜっ返して >







雲龍「嘆かわしいわ。親愛なる妹様がクズの情夫に精飲漬けにされていただなんて」

提督「してねぇよなんなんだよお前ら」

天城「“ ら ”ではありませんけれど……そもそも割と最近まで本当に嫌でしたよ」

雲龍「なるほど。つまり最近精飲の良さに目覚めたってことね」

天城「…………」

提督「そこで黙るってことはお前……や、何にも俺の責任は無いと思うが? なぁ? 」

瑞穂「……ノーコメントで」
572 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:54:58.93 ID:g40hzCq20

< フィッティングそのものはスタッフさんにお任せ >







愛宕「どう? 」

提督「や、別に行くのはいいよ、今まででも普通のショップは着いていってるからな」

愛宕「じゃあいいわね」

提督「ん…………オーダーメイドのブラ買うのに男、いるか? 」

高雄「えーっと……まぁ、デザインを決めるとき、とか? 」
573 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:56:09.13 ID:g40hzCq20

< こう、ある種コスセの相談に近いかもしれなくもない >







高雄「とは流れで言っえみたものの……そもそも男の視点でブラのデザイン決めるってどうなの? 」

愛宕「いいじゃないもう夫婦なんだから」

高雄「夫婦だからってランジェまで決めるようなものじゃないでしょう」

提督「まぁ、サプライズも大事だしな」

愛宕「なるほど」

高雄「そんなことを言いたいのじゃなくてですね……」
574 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:57:21.77 ID:g40hzCq20

< 何を言ってもたぶん結末はあまり変わらない >







愛宕「全く女を武器にしないっていうのは難しいかもしれないけど」

高雄「ええ」

愛宕「殆どしないような子が一人もいないのは嘆かわしいかもしれないわね」

雲龍「確かに腐り切ってジメジメウジウジしているのしかいないわね」

高雄「それが好みなんだから仕方無いでしょう? それこそ雲龍さん風に言えば

愛宕「調教された? 」

高雄「そう、それ」

雲龍「私風ってあなたたちね」

提督「てーか自分の身体つき自覚してない無邪気な子も……。
や、その藪蛇狙い撃ち抜きましたみたいな得意顔おかしくない? 」
575 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 21:58:36.22 ID:g40hzCq20

< わざと上滑りさせてスライドさせる会話が楽しいのです >







提督「つーか俺は多少自覚しつつもそれ以外にもっと大切なことがあってそっちに夢中な子を振り向かせたいんだが」

山城「また気持ち悪いこと宣ってる」

提督「魂の叫びに対して宣うとは殺生な」

山城「随分と薄汚い汚穢に塗れた叫びなのね」

龍田「魂が汚れているもの」

提督「知ってるだろう? 」

山城「そうね」

龍田「まったくね」

提督「な? 」

高雄「な? じゃないですよ……あなたたち本当に誰か一人はツッコミに回らないと意味が分からなくなるわ」
576 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 22:02:31.21 ID:g40hzCq20

< 絶妙な温度感 >






提督「頭おかしいんじゃないの」

龍田「あなた程ではないわねぇ〜。重婚を政府に認めさせるって何なの? 」

山城「オンリーワンになりたかった女の戯言は兎も角、そうね」

龍田「戯言? これから私が奪い取れば重婚解消で私も幸せになるんだけど? 」

提督「それを目の前で言われてもだな……」

山城「ま、私は婢女でも玩具でもいいから」

提督「あのな……」







高雄「…………」

雲龍「? 妬いてるの? 」

高雄「仲の良さにも心底楽しそうな顔にもずっと妬いていますけれど……あんなのに妬いている自分が信じられなくて」

雲龍「……そうね」
577 : ◆5z7C0EoTrg [saga]:2022/04/29(金) 22:07:30.59 ID:g40hzCq20

< 結局のところ人の世は勝ち負けなのです >






愛宕「高雄? 決めたわ、私。あなたが反対するなら別に拘らないけど」

高雄「? 」

愛宕「あれよ、Bismarckに贈る、お返し」

高雄「あぁ……何? 」

愛宕「招待状。あの人と私たちと、あの人のご両親しかいない式に、呼びましょう」

高雄「…………それは」

愛宕「歪みに歪んで壊れ切った私たちが限界まで頑張って選んだ人にしか共有させられない舞台に、呼んであげるの」

高雄「…………」

愛宕「それに、これは勝利宣言と同時の宣戦布告。
私たちの明日を祝ってもらわなきゃ、あの人も彼女も今から逃げられなくなる」

高雄「…………」

愛宕「ふふ……嗚呼、簡単な話だったわね。最高のお返しが、最高に醜い女の敵意になるなんて」
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