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【安価】ようこそ実力主義の教室へ
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439 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/13(水) 23:17:51.96 ID:XSDRzLvu0
7でゾロが出たんだが
440 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 00:34:33.98 ID:6fC21ecn0
【
>>438
7:1位
7でゾロ目のため? 満点で優勝になります。】
「優勝は、四条夏帆・春宮天音ペアーーっ!」
司会のお姉さんの甲高い声が響く。
スタッフの方に優勝商品の商品券1000円分が14枚、500円分が2枚、そして参加賞のドリンク交換券2枚を受け取る。
「やりましたね、先輩」
「あ、うん。……私、何もしてないんだけどね?」
「そんなことないです! 力を合わせた結果です!」
「いや、でも……」
ちょっと難しい問題もあったけど、わたし達の正解数は30と、申し分のない満点を叩き出した。
2位は錦山先輩・乙葉先輩ペア。26点。
3位は東雲さん・神宮くんペア。25点。
雑学に関する問題も多かったけど、学生で勉強するような内容も出題された。全学年を通してもほぼ公平に戦えるような出題形式だったと思う。
441 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 00:35:05.41 ID:6fC21ecn0
結果発表が終わると集まっていた人も捌けていく。
残ったのは入賞した3チームと数名の生徒の他、設営スタッフの方々だった。
「天音ちゃん、ちょっといい?」
「春宮様、少しお時間よろしいでしょうか」
乙葉先輩と東雲さんの両方から声を掛けられる。
只事ではない雰囲気は嫌でも伝わってくる。
「あー、まぁいいや。東雲さん、手短に先どうぞ」
「いいえ。後輩として、先輩に先をお譲りするのは当然というもの。わたくしの用は花菱様の後で構いません」
「なら遠慮なく。天音ちゃん、よく満点取れたね。最後の方の問題とか訳分からなかったんだけど?」
最後の方の問題。
ルベーグ積分とかその辺りの問題だったはず。
確かに最終問題の方は難易度が跳ね上がっていた。高校生で学習する範囲を超えている。解けなくて普通なんだと思う。
そんな問題を学生しか参加しないイベントで出す方もどうかと思うけど、今はそんなことどうでもいい。
わたしは万全を期して優勝するために手を抜かず正しく解答を導き出した。その結果、満点という結果を出せば、こうやって詰め寄られるのも当然の事だと思う。
「理系の教科には興味があって、むかし本で読んだことがあったんです。だから解けました。自信は半々といったところです」
「……ほんっと規格外。ずるいずるい! 勉強も出来て運動も超出来るとかさー」
頬を膨らませる乙葉先輩を押し退け、錦山先輩が近付いて、わたしにしか聞こえない小さな声で囁く。
442 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 00:35:40.73 ID:6fC21ecn0
「正直、ここまでとは思ってなかった。生徒会に誘ったりした身でこんなこと言えないが、変に目立ちすぎるなよ。敵は同級生だけじゃないんだからな」
「……はい、わかっています。ご忠告ありがとうございます」
「ま、俺たちはギリギリだったが2位を取れた。余裕でプラスだからな。本当に偶然、お前が参加したことで1位という名声と5000ポイント分の商品券を逃しただけだ!」
錦山先輩も結構気にしてそうだった。
ひとまず乙葉先輩達に参加賞のドリンク交換券をプレゼントすることで気を良くしてもらう。わたし達には15000ポイント分の商品券さえあればいい。
カフェの方へと向かっていく先輩方を見送り、改めて東雲さんと目が合う。
彼女は微笑み、その冷たく綺麗な瞳を向けたまま語りかけてくる。
「改めまして、お見事でした、春宮様。ひとつお伺いしたいことが」
「ありがとうございます。なんでしょうか」
「春宮様は、わたくしや、あの人のような……こっち側の人間じゃないですよね?」
「こっち側?」
あの人、と隠された人物が判明すれば考察の余地もあったが、こっちと言われてもどっちか分からない。
わたしは首を傾げ、おそらく違うと答える。
443 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 00:36:10.86 ID:6fC21ecn0
「そう……ですよね。失礼いたしました。貴女のことは見かけた覚えがありませんでしたので、お伺いするまでもありませんでした」
掴めない話に、わたしは「はぁ」と相槌を打つことしかできない。
東雲さんは一息つくと、改めていつも通り微笑んでくれる。
「四条様、春宮様、お時間を戴き感謝いたします。それではまた」
ご機嫌よう、とくるぶしまであるロングスカートの裾を摘んで、頭を下げる。
お嬢様然とした姿につい見惚れてしまいながらも、これで身の回りは落ち着いた。東雲さんの言っていることのほとんどは分からなかったけどね。
「まずはお昼ご飯にしましょうか」
「あ、うん。そう……ですね」
イベントが始まる前と後で、先輩がわたしを見る目が少し変わっていたような気がしたけれど、……うん。
それは多分、気のせいじゃなかったと思う。
444 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 00:36:37.32 ID:6fC21ecn0
◇◇◇
昼食を経て、貰った商品券を折半して夏服の購入資金へと充てる。ほんの2着も買えば、7500ポイント分の商品券は消えて自腹の域に達する。
自腹で15000ポイントほど追加で使用して、ひとまず直感で欲しいと思った夏服は揃え終わる。
それでもなお、わたしの手元には10万を超えるプライベートポイントが残っている。
もし特別試験で何十万というポイントが懐に入ってくれば、それはもう泣いて喜ぶと思う。
「結構買えましたね」
「はい、先輩が良いお店を知ってくださっていて大変助かりました!」
「それは良かったですっ」
急遽参戦したイベント終わりの微妙な表情は消え、先輩は笑顔で喜んでくれた。
わたし達はドリンク交換券こそ先輩にあげてしまったけれど、個室の喫茶店で休憩することにした。今日付き合っていただいたお礼も兼ねて。
「天音ちゃんは来たことあるんですね、ここ」
「同じクラスの友達と来ました。何回か」
雨宮さんは眼鏡を外せば超有名人。眼鏡を外していなくても身バレするかもしれないリスクと常に隣り合わせのため、一緒にお茶する時はこの個室の喫茶店を利用する。
そのため大体の気になるメニューは頼み尽くしてしまっている。新鮮味には欠けていたけど、美味しいと分かっているメニューがあると選ぶのも早い。
ドリンクと軽食を注文して、一息つく。
【安価です。
1.「先輩、困ってることありませんか?」
今朝の化野の件を遠回しに
2.「実は……今朝、化野先輩と会いました」
今朝の化野の件を直接
3.「この後、先輩のお部屋でお料理とか……」
4.「今、わたし達1年生は特別試験をやっているんですけど……」
5.「……先輩に悪いことしちゃいましたね」
クイズ大会の件
下1でお願いします。】
445 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/14(木) 09:01:29.27 ID:ehaAAVL/O
1
446 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 22:38:03.22 ID:6fC21ecn0
【
>>445
1:「先輩、困ってることありませんか?」】
注文していた品が届いた頃、わたしは今朝からずっと気になっていたことを遠回しに聞いてみることにした。
「先輩、困っていることありませんか……?」
「ん? 困ってること、ですか?」
首を傾げ、しばらく考える仕草を見せる。
うーん、うーん、と数秒間熟考した上で、夏帆先輩の表情が暗くなることはなかった。
「特にありませんね。強いて言えば、天音ちゃんが満点を取ってしまったせいで、少しばかりペアである私も目立ってしまったことでしょうか」
「う……それはすみませんでした」
思い返せば、最後の方の5問は大学生レベルと格段に難易度が跳ね上がっていた。乙葉先輩はその内の1問を解いて26点、東雲さんは手を付けずに25点を取ったのだと思う。
447 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 22:38:38.66 ID:6fC21ecn0
確かに満点を取るというのはやりすぎだったかもと反省はしている。
「謝ることではありません。私としても良い経験が出来ましたし、商品券も戴けましたからね。多少目立つくらいどうってことないです。……ただ、そうですね」
一転、表情を曇らせた先輩はアイスレモンティーで喉を潤した後、目を伏せて話し始める。
「天音ちゃんは今、特別試験の最中ですよね。各クラス3名程度が集まって『王様』を見つけ出すっていう、例の」
「はい。昨日から今月末まで、その試験が行われる予定です」
「……あんまりこういうことは話してはいけないのですが、特別試験というものは年に数回行われるもので、今回の試験が最後ではありません」
「乙葉先輩からそのようなことは聞いています。生徒会が特別試験の監督役もする、と」
「そうです。もちろん現在行われている特別試験にも生徒会が携わっています。と言っても、ルール説明の時にご覧になられたスライドの作成程度ですが」
視聴覚室で見たスライドを思い出す。
ねずみ、王様、一般人のイラスト。そして試験概要。
あれらの資料はわたしの知らないところで先輩方が作成していたようだった。
448 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 22:39:07.19 ID:6fC21ecn0
「今回の試験は1年生の間で行われているものですが、ものによっては全学年で競争する場合もあります。おそらく……というか、もう既に今後のスケジュールに全学年共通で競う特別試験が組み込まれています」
全学年で競う特別試験が行われる。
その予想自体はついていたけど、夏帆先輩の口ぶりからしてそう遠くはなさそう。来月か再来月か。夏休み前後あたりで実施されるかもしれない。
「試験の概要はまだご説明できませんが、その試験において天音ちゃんは……不利になるかもしれません」
「不利ですか?」
「はい。ルール上は出来る限り公平だと思います。ただ、天音ちゃんは運動部との戦い、そしてさっきのクイズ大会でも目立ち過ぎています。そのため、言い方は悪いですけど、まず第一に蹴落とす相手として認識されてしまっている可能性があります」
その可能性は考慮していなかった訳ではない。
今回の特別試験ではポイントの変動のみだけど、今後実施される試験によっては退学を賭けたクラス間の戦いになるかもしれない。
学力等で良い成績を収める他クラスの生徒を退学に追いやれば、その分だけ自クラスがAクラスとして卒業できる可能性は高まる。
今すぐとは言わないけど、秋頃にもなればその認識は全員が持つことになるかもしれない。
「それは1年生の皆さんだけに限りません。私たち2年生も、乙葉先輩たち3年生も天音ちゃんに対して攻撃的な姿勢で挑むかもしれません」
「……注意するべき人に心当たりがありますか?」
「はい。まず3年生はあまり心配が要らないと思います。あの学年はもう統治済みだと聞いていますから。1年生のことは天音ちゃん自身がよく分かっていると思いますので、私からは2年生のことを。1人だけ気をつけていただきたい人がいます」
暗い表情。
名前を聞くまでもなく、今朝の一件を経て彼の顔と名前は既に頭に浮かんでいた。
449 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 22:39:43.78 ID:6fC21ecn0
「化野伊吹くん───って言って、伝わらないですよね。2年Aクラスの男子生徒なのですが」
「いえ、分かります。全生徒の顔と名前は分かっているつもりです」
「え、あ、そ、そうなの? すごいですね…。と、そうではなく、現在2年生は1年間の戦いを経て、大きく2極化しています。1つは化野くんのグループ、そしてもう1つは新汰くんのグループです」
生徒会副会長の佐倉新汰先輩がもう1つのグループのリーダーをやっているとのことだった。
新汰先輩は端的に言って、正義感の塊のようなカッコいい男子生徒。知的な外見も込みで、おそらく女子人気は高いと思われる。わたしも例に漏れず、生徒会の仕事を手伝って貰ったりとかなり好印象を持っている。
「新汰くんは1年生の最初、Aクラスだったんです。そして化野くんはBクラスで、私もBクラスでした」
「え……あれ? 夏帆先輩って、」
「はい。1年生の末に行われた試験でAクラスとBクラスが入れ替わって、その後で私はAクラスから新汰くんの居るBクラスへ移動しています」
2000万ポイントを支払うことでクラス移動が出来る。
4月上旬に辻堂くんから聞かされていたことを半ば冗談として受け取っていたけど、実際にクラス移動をした人が目の前にいる。
その事実をもとに、化野先輩が夏帆先輩のことを『裏切り者』と言ったことについても少し理解できた気がした。
450 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/14(木) 22:40:33.59 ID:6fC21ecn0
「あ、すみません。少し話が逸れてしまいましたね。化野くんは、その、手段を選ばないというか、徹底主義というか。そう言ったところがあるので、気を付けてくださいというのが本題です。私の身の上話は忘れて下さい」
夏帆先輩は良い先輩としてわたしは認識している。
何が原因でクラス移動することになったのかは知らないけど、その大きな原因は化野先輩にあるのは想像に難くない。
新汰先輩の手助けをする訳では無いけど、夏帆先輩がこのまま『裏切り者』と呼ばれ続けることには納得がいかない。
今後実施予定の全学年で行われる特別試験。
その場では、きっと化野先輩と対決する機会がやってくると思う。辻堂くんに続いて摘んでおくべき人として、わたしは化野先輩を警戒することに決める。
【安価です。
1.「ご心配とご忠告ありがとうございます。今後は、出来る限り目立たないようにしますね」
2.「もう少しだけご辛抱いただけますか。特別試験できっとやり返して見せます」
3.「わたしに力になれそうなことがあればいつでも相談して下さいね。わたしだって相談しっぱなしなので」
下1でお願いします。】
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/10/15(金) 00:12:47.67 ID:mxmijazC0
あまりにも阿呆らしいので注意喚起します。
1、あんぐら本舗について
あの動画の内容はどう見ても炎上に便乗しただけのジョーク動画です。
現時点でゆるふわアンチはあんぐら本舗に釣られ、あの便乗動画が伸びるのを助けただけって状態です。
某ちゃんねるでは「伸びてもゆるふわが困らないあの動画にアンチが広告いくら突っ込むのか」って話題になってますよ。
頭を冷やしましょうよ。
常識的にクソ動画伸びても誰も困らないし、注意喚起も意味がないと思ってます。
私はちゃんと調べた上で「変なのにたかられたからそう言って逃げた」と判断して言ってますので、あしからず。
2、ゆるふわ分子生物学研究所について
冷静に考えればあれはゆるふわ分子生物学研究所の投稿者の評判を落としたい、評判を落としたい、迷惑かけたいという「赤の他人による犯行」だと思うのが普通です。
本人がそんな事するのだろうか?←この考えを元に常識的に突き止めれば、「別人による成りすまし」が第一候補です。
あと、擁護する人間がいるのは様々な意見を持つ人間がいるだから当然でしょう。
そういう意見をなぜ「荒らし」「異常」と断定するのか、そちらの方が恐ろしいです。
「ゆるふわの複垢か」はこのスレ住人だけにしか通じないミーム(意味わからんだろ、ググレカス)なんですよ、本当に。
そもそも同一人物だという証拠・説明・反論は一つも「ありません」、同一人物だという証拠が出ない時点で語るに落ちます。
投稿者が反応してない?→迷惑行為されたら大騒ぎして被害者ですと主張しないといけない法律があるので?
いい加減このスレ住民の行動パターンが全体的に常識で考えておかしいって気付け!
ところで、便乗したジョーク動画に皆さんは便乗動画に広告でいくら支払ったんでしょうか?
あんぐらさんもあの動画でクリ奨稼げてよかったでしょうし、委員会さん達の懐のダメージを慮ると実に乙ですけど。
452 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/15(金) 12:54:55.23 ID:kKwyyIja0
【再安価します。
1.「ご心配とご忠告ありがとうございます。今後は、出来る限り目立たないようにしますね」
2.「もう少しだけご辛抱いただけますか。特別試験できっとやり返して見せます」
3.「わたしに力になれそうなことがあればいつでも相談して下さいね。わたしだって相談しっぱなしなので」
下1でお願いします。】
453 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/15(金) 12:58:58.95 ID:xtq3++W4O
3
454 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/15(金) 23:02:52.24 ID:kKwyyIja0
【
>>453
3:「わたしに力になれそうなことがあればいつでも相談して下さいね。わたしだって相談しっぱなしなので」】
化野先輩とは学年が違うこともあって関わる機会も少ないと予想できるけど、それでも全く無関係でいられる訳ではない。
特別試験終了後の6月以降は2年生の情勢についても注視する必要がありそうね。
ということを踏まえて、わたしから夏帆先輩に向けて言えることは一つ。
「わたしに力になれそうなことがあればいつでも相談して下さいね。わたしだって生徒会のお仕事やお料理で相談しっぱなしなので」
本当なら「化野先輩のことはわたしに任せて下さい」と気の利いたことを言えたら良かったのだけど、現時点で化野先輩の実力は知れず。それに対抗勢力の新汰先輩の邪魔はしたくない。
相談して下さい、と言うことが今の精一杯だった。
夏帆先輩は遠慮がちに手を振って見せる。
「え、いいよいいよっ。私だってもう十分お世話になってるんだから……! でも、うん。その気持ちは凄く嬉しい。ありがとう」
先輩後輩という隔たりがある以上、素直になんでも相談とは行かないんだと思う。けど、本当に困ったときにわたしくらいは味方になってあげたい。
どうか、相談できる相手がいることを気に留めて貰えるよう、わたしはそれ以上は言わず、心の中で強く願った。
455 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/15(金) 23:03:23.58 ID:kKwyyIja0
◇◇◇
四条先輩と過ごした土曜日、そして学校の図書室で過ごした日曜日を経て迎えた月曜日。
『うさぎ組』の通達がある日であり、お昼休みが始まると同時にCクラスの加藤治孝くんが『王様』であることを一色くんから聞く。
試験開始から4日目にして、Cクラスから2名の『王様』が出た。これを幸と取るか不幸と取るかはクラスの指針にもよる。
『王様』が選択される仕組みを探りたければ早めに通達されることに越したことはない。一方、早めに通達されるということはボロが出る機会が増えるということでもある。それは投票期日前の投票が発生する可能性が高まることを意味する。
「この事、他の誰かは知ってる?」
「治孝くんと僕と、春宮さんの3人だよ。ちなみにメールも見せて貰ったから間違いはないと思う」
「うん、わかった。ありがとう」
一色くんにお礼を言って、わたしは自席で改めて試験通達メールを確認する。
『厳正なる調整の結果、あなたの役職は『一般人』に決まりました。グループの一員として、自覚を持って行動し試験に臨んでください。また、ねずみ組の集合場所は特別棟の視聴覚室になります。』
やはりキーとなるのは『厳正なる調整の結果』。
むやみやたらに「ここの組は〜、この人!」と適当に『王様』を決めていることは無いと思う。
現在判明している『王様』はCクラスから2名。共通点は挙げればキリがないけど、そのどれもが確証に欠ける。
456 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/15(金) 23:03:51.48 ID:kKwyyIja0
Cクラスから3名の『王様』が判明するのを待って共通点をよく考える、というのも1つの手段だけど、試験最終日の前日に通達となる『いのしし組』で判明した場合はかなり出遅れることになる。
どうしても他クラスの『王様』事情を知る必要がある。
それを探るためには6時間目の会合で集めて貰った情報を取りまとめる……くらいしかない。表情は読み取れない、なんとなくこんな事を話したという情報だけで突き止めることは可能か。
「……むりかなぁ」
つい独り言を呟いてしまう。
直接会って話せれば糸口も見つけられるかもしれないけど、人伝に聞いて判断するのは難しい。
となると、思いつくのは賄賂か。
プライベートポイントを100万ポイントあげるから貴方のクラスの『王様』を1人教えて、とか。ルール上、そういったことをダメだとは定められていない。
もちろんそれ相応の額を集めるためには他の生徒に協力をお願いしないといけない訳だけど。
【安価です。
1.「ああは言ったけど、Dクラスは論外として、AクラスかBクラスとは協力関係を築けないかな……?」
2.「そもそもグループ分けされている時点で、わたしが出来ることは少ない。他のグループのことはみんなに任せて、わたしは『ねずみ組』のことだけに集中しよう」
3.「……少し様子を見ようか」
下1でお願いします。】
457 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/16(土) 11:53:37.92 ID:9ODptJOYO
か
458 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/16(土) 11:54:15.42 ID:9ODptJOYO
誤爆した、2
459 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/16(土) 22:05:46.07 ID:rVtfeCjyO
【
>>458
2:「そもそもグループ分けされている時点で、わたしが出来ることは少ない。他のグループのことはみんなに任せて、わたしは『ねずみ組』のことだけに集中しよう」】
……うん。やっぱりダメだ。
グループ分けされている時点で、わたしが出来ることは少ない。他のグループのことはみんなに任せて、わたしは『ねずみ組』のことだけに集中しよう。
そもそも生徒のシンキング能力を培うための試験だからね。わたし個人で超シンキングして『厳選な調整』を暴くことは他のみんなのためにもならない。
真っ当に試験をこなすことにしよう。
「よしっ」
そうと決まれば残り1週間半ほどの間、日々『ねずみ組』内で行われるゲームで『王様』を負けないようにしてあげることが、わたしに出来る最善の策。
そう心の中で吹っ切れさせたことで、気負っていた物の重みから解放されて軽くなる。
今日は生徒会の仕事の後、水泳部に顔を出してみようかななんて考えながら、お昼休みを過ごす。
【
>>423
、
>>424
の安価で『ねずみ組』のゲームによって『王様』が暴かれることはないと確定しているため、2回の自由行動を経て試験結果となります。
1.人と会う
1.早見有紗(前の席の女子生徒)
2.宮野真依(クラスをまとめる水泳部の女子生徒)
3.一之宮重孝(隣の席の勉強が出来る男子生徒)
4.一色颯(クラスをまとめる男子生徒)
5.神宮紫苑(Aクラスの男子生徒)
6.花菱乙葉(信頼のできる…? 3年生の女子生徒)
7.如月深雪(信頼のできる3年生の女子生徒)
8.四条夏帆(信頼のできる2年生の女子生徒・選択に応じて料理スキルアップ)
9.佐倉新汰(信頼のできる2年生の男子生徒)
10. 雨宮春香(信頼のできるクラスメイト・選択に応じて音楽スキルアップ
11.東雲雪菜(Aクラスの女子生徒)
2.寮で1人で過ごす(料理の本を読む、自己学習など)
3.ケヤキモールへ(コンマ判定で出会う人を決定)
1.人と会う場合は「1-10」のようにお願いします。 ? 下1でお願いします。】
460 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/19(火) 11:19:25.91 ID:sJpxJ/D5O
3
461 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/19(火) 22:36:21.83 ID:3LS8jgiI0
【
>>460
3:ケヤキモールヘ(コンマ判定で出会う人を決定)】
5月25日、木曜日。
今朝は『うま組』の通達があり、Cクラスから最後の『王様』が出たことを一色くん経由で聞いた放課後。
生徒会の業務を終え、わたしはケヤキモールヘと赴く。
購入予定の物があった訳ではないけど、見て回るのは自由でタダだから損することはない。
注意するべきは『期間限定』のワードに惹かれないこと。つい購買意欲の低い物も購入してしまうのはわたしの悪い癖なのかもしれない。
先週末に服は一通り見たため、本屋、文房具屋、ホームセンターとそれぞれ滞在時間5分程度で徘徊する。
周囲の学生はほとんどが私服に着替え、夕食どきということもあってレストラン街の方へと向かっていく姿が多く見られる。
「……外食かぁ」
比較的最近は自炊に凝っているため、夕食としてレストランを利用したのはほぼ1ヶ月前となる。
幸いポイントには困っていないし、これからお米を炊くのは少し億劫だなと少し思っていたところ。
たまには外食をしても良いかもしれない。
踵を返して、わたしもレストランがある方へと向かう。
【コンマ判定。
1・8:乙葉
2・0:神宮・東雲
3・6:化野
4・7:夏帆・新太
5・9:雨宮
ゾロ目:先生
下1のコンマ1桁でお願いします。】
462 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/19(火) 23:04:21.99 ID:Gxjlq+vZ0
あ
463 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/20(水) 00:30:55.62 ID:mJbNyI7e0
【
>>462
ゾロ目(99):先生】
レストラン街へと向かう途中、シワの寄った背広姿を見つける。他の誰でもない担任の伊藤先生だった。
校舎の中であればもう見慣れたものだけど、校舎の外で見かけると心配や不安、そして恥ずかしいという余計な感情まで湧き出てくる。
「……」
話しかけるか迷っている内にケヤキモール内のレストラン街に到着する。奇しくもここまでの道のりが一緒だったため、自然と背中を追うような形になってしまった。
一度周囲のお店を見渡して心に決める。
よし。特別先生に用がある訳でもないし、業務後にまで生徒に付き合わせるのは憚られるため先生を尾行するような真似はやめよう。
さっと外食を済ませて、部屋で勉強したりテレビを見たりしようと意気込んだとき、目の前に黒い影が現れた。
「っ、せ、先生……!」
他の誰でもない伊藤先生だった。
ずっとこちらには背中を見せていたはずだけど、振り向いた際にわたしに気が付いたのか。
464 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/20(水) 00:31:32.81 ID:mJbNyI7e0
なんであれ、結構驚いた。
「えっと、なにか……?」
「いえ、春宮さんの視線を感じたものですので。何か用があるのかな、と思ったのですが」
「……あぁ、すみません。つい見つけたので目で追ってしまっただけです。申し訳ありません」
見られている気がする、という感覚には覚えがあるため先生がわたしに気が付いたことに違和感はない。
わたしは素直に白状して頭を下げる。
「そうでしたか。頭を下げる必要はありません。そうだ、春宮さんは夕食の予定は決まっていますか?」
「夕食ですか? 決まっていませんけど……」
「もしよろしければご一緒にいかがですか」
この流れはもしや、と胸の奥に感じた直後、それはそっくりそのまま伊藤先生の口から提案されることになる。
先生と夕食かぁ。
全然嫌ではない。むしろ少し話してみたいなと思っていたため、この機会は絶好と言える。
断る理由もないし、わたしは頷くことにした。どうして誘っていただいたのかは不安で未知だけれど。
465 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/20(水) 00:32:01.34 ID:mJbNyI7e0
「はい、ご相伴にあずかります」
「よかったです。食べたいものはありますか?」
「そうですね……今晩は中華の気分です」
「ではあそこにしましょうか」
先生の視線が向かって左側の3件先にある中華料理屋に向けられる。外装からして「中華!」って雰囲気のあるお店で好印象。
入ったことはないけど、風の噂では麻婆豆腐がとても辛いという話だったような。少し興味があるため挑戦してみても良いかもしれない。
先生に着いていく形でお店に入り、奥の方の席へ案内して貰う。
席の仕切りが高く、近くには窓も無いため他のお客さんから注目されることもない。先生と生徒の逢瀬にはちょうど良い席と言える。
「お好きなものをどうぞ。私が全部出します」
「はい、ご馳走になります」
ここで断るのは厚意を無碍にするような気がしたので、素直に甘えることにした。
……1度くらいは「わたしも払います」というやり取りをしておいた方が良かったかもしれないと今になって少し後悔している。
466 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/20(水) 00:32:29.71 ID:mJbNyI7e0
注文を終え、お冷で喉を潤した後、少し沈黙が訪れたので気になっていたことを直接聞いてみることにした。
「えっと、どうしてわたしと夕食を? いえ、とてもありがたいのですがっ」
「普段の素行が良く、先日の中間テスト対策でも色々と動いていただけたようだったのでそのお礼です。現在Cクラスの皆さんがAクラスに上がってくれれば、私の査定も上がりますからね」
「あ、そういう……」
「それと直接お話したいこともあったので」
先生から直々にお話。
個人面談はそう珍しいものではない。進路相談を始め、学業について相談する機会は幾らでもある。その分、教師という職業は多忙のように思える。
「話したいこと、とは?」
「春宮さんはどうして自分が最初Dクラスに配属されたか見当がついていますか?」
「……」
学校側からしてみればDクラスとは、その学年における『不良品』や『ガラクタ』といった意味合いが強いらしい。従って学年の中でも成績の低い生徒が集まる傾向にある。
正直、勉強と運動は出来る方だと自覚はしているため、たびたび「どうしてわたしがDクラスに?」と考えたことはある。
その結論として、
【コンマ判定
直感・洞察力:91(優秀) 補正高
4・9:見当がついていない
その他:見当がついている
下1のコンマ1桁でお願いします。
ゾロ目の場合は見当がついています。】
467 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/20(水) 08:30:23.49 ID:yXbXHEYto
う
468 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/20(水) 22:00:00.11 ID:mJbNyI7e0
【
>>467
9:見当がついていない】
その結論として、わたしは解を出せなかった。
強いて挙げるとすれば特殊なクラス配属制度を採用している学校側のミスが考えられるけど、同時にそれは確実にあり得ない話だと断言できる。
つまり仮定すら持っていない状態。テストで言うところの空欄で提出してバツを付けられる状態にある。
わたしは頭を小さく横に振る。
「いえ、わかりません」
久しぶりに「わからない」と発言した気がする。
知らないことは罪だと教育を受けてきた身として、人一倍勉強に努めてきたつもりだけど、こうして改めて口にすると胸を圧迫する何かがあった。
そんなことを知る由もない先生は「そうですか」と何の抑揚も無い声で相槌を打って、
「……」
「……」
あれ、会話が途切れてしまった。
てっきり簡単に教えて貰えると思っていたのに。
469 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/20(水) 22:00:27.02 ID:mJbNyI7e0
「えと、その理由について訊いたら教えていただけるんですか?」
「えぇ構いませんよ。口止めされていることではありませんので。ただ、春宮さんは本当にそれで良いですか?」
「……意外と、意地悪なんですね」
意味ありげに言われてしまうと躊躇ってしまう。
今のわたしはこの件について仮定も持たないまま答えを訊こうとしている。言ってしまえば、答えを丸写しして宿題をやるのと同義。
果たしてそれは自分のためになるのか。せめて一度自分なりに答えを書いてから答え合わせをするべきなのではないか。
改めて訊けばすぐに教えて貰えるだけに、わたしは揺れる。
【安価です
1.「そうですね。もう少し自分で考えてみることにします。改めて、別の機会で答え合わせをさせてください」
2.「……やっぱりわからないです。答えを教えていただけますか?」
下1でお願い致します。】
470 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/21(木) 00:00:00.90 ID:ncSgBFWS0
1
471 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/21(木) 22:16:28.31 ID:LNbq3Udw0
【
>>470
1:「そうですね。もう少し自分で考えてみることにします。改めて、別の機会で答え合わせをさせてください」】
それでもわたしは考えることを放棄できなかった。
昔読んだ本にこんなことが書いてあった。
『人間から知性を除けば、そこには獣性のみ残る』
当時のわたしには理解し難い一文だったけど、今ならほんの少しだけ理解できるような気がする。主に獣性という部分が本当によく分からないけれどね。
「もう少し自分で考えてみることにします。改めて、別の機会で答え合わせをさせてください」
「そうですか」
先生は短く頷くと、ちょうど運ばれてきた料理をテーブルに置くためお冷のグラスを退ける。
ひとつひとつかなりのボリュームがあり、2人にしては多かったかもしれない。
しかしいずれも美味しいことが確定している印象。特に真っ赤な麻婆豆腐は見た目通り辛そうだけど、香辛料の香りが堪らない。
「いただきます」
「……お気になさらず、お好きなだけどうぞ」
わたしは中華丼、先生は天津飯を主食とし、その他に麻婆豆腐、青椒肉絲、回鍋肉、酢豚、棒棒鶏、春巻きと、代表的な料理はそれぞれ小皿に取り分ける方式となっている。
472 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/21(木) 22:17:01.50 ID:LNbq3Udw0
お言葉に甘えて好きなものを好きなだけ小皿に取り、改めて先生に向かって「いただきます」と言ってから口に運び始める。
「美味しいです!」
「それは良かったです。私が学生の頃は別の中華料理屋だったんですけどね。最近、居抜きで今のお店が入ったそうです」
「へー……あれ、先生が学生の頃? 先生もこの学校の出身なんですか?」
「言ってませんでしたか?」
先生とまともに話す機会も今が初めて。
入学式当日の挨拶でもそんなことを聞いた覚えもない。
「初耳です。参考までにどのクラスで卒業したか教えていただくことは出来ますか?」
「調べれば分かることですからね。特に生徒会に入っていれば、その辺りも容易でしょう」
確かに卒業生の名簿は生徒会準備室に保管されていたはず。在校生徒名簿の隣の棚だったかな。必要性が低かったため、見るのを後回しにしていた。
「Aクラスで卒業しました。入学のときから卒業のときまで、不動でしたね」
「あ、それはすごいですね! 今の一年生でも結構肉薄しているのに…」
現在Aクラスとの差は250クラスポイント程度。
今回、もしくは今後数回の特別試験の結果次第ではすぐにでも入れ替わる可能性がある。
不動のAクラスであり続けたということは、優秀なリーダー的立ち位置の人が居たんだと思う。
473 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/21(木) 22:17:45.82 ID:LNbq3Udw0
「まだこれからですからね。頑張ってください」
「はい。先生の査定のためにも。奢っていただいた分は査定でお返しします」
「それは頼もしいです」
そう言って、いかにも辛そうな麻婆豆腐を口に含んで、顔色ひとつ変えずに嚥下する先生。
わたしは最初だけ数回むせてしまい、口元を手で覆ったとはいえみっともないところを見せてしまった。
それから意外にも話題は尽きることなく、無事に2人で食べきることが出来た。デザートに杏仁豆腐まで戴いて、幸せの極みに至る。
なお、この夕食以降、わたしは食事のたびに辛いものを求めるようになる。もちろんこのときのわたしはそんなことを露知らずにいるのだった。
【特別試験終了まで 自由行動 残り1回
1.人と会う
1.早見有紗(前の席の女子生徒)
2.宮野真依(クラスをまとめる水泳部の女子生徒)
3.一之宮重孝(隣の席の勉強が出来る男子生徒)
4.一色颯(クラスをまとめる男子生徒)
5.神宮紫苑(Aクラスの男子生徒)
6.花菱乙葉(信頼のできる…? 3年生の女子生徒)
7.如月深雪(信頼のできる3年生の女子生徒)
8.四条夏帆(信頼のできる2年生の女子生徒・選択に応じて料理スキルアップ)
9.佐倉新汰(信頼のできる2年生の男子生徒)
10. 雨宮春香(信頼のできるクラスメイト・選択に応じて音楽スキルアップ
11.東雲雪菜(Aクラスの女子生徒)
2.寮で1人で過ごす(料理の本を読む、自己学習など)
3.ケヤキモールへ(コンマ判定で出会う人を決定)
1.人と会う場合は「1-10」のようにお願いします。 ? 下1でお願いします。】
474 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/21(木) 23:09:13.27 ID:ncSgBFWS0
2
475 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/22(金) 22:20:16.77 ID:/NaFHEJy0
【
>>474
2:寮で1人で過ごす(料理の本を読む、自己学習など)】
特別試験もいよいよ数日と迫った休日。
わたしは午前中を部屋の掃除に費やし、午後は勉強机に備え付けられた椅子に座って外を眺めて過ごしていた。
ここから見える景色はいつ見ても変わらない。
綺麗な校舎と部活棟。あいにく、グラウンドで部活動に励む生徒の姿は校舎が邪魔をして見ることが出来なかった。
「……」
ダメだ。何かしよう。
このままでは気が付いたら夕方、夜なんてこともありえる。
ただ、なにをしたものか……。
【安価です。
学力:97(超優秀)
身体能力:99(超優秀)
直感・洞察力:91(優秀)
協調性:53(普通)
成長性:74(高)
メンタル:86(高)
料理:39(まぁまぁ?)
音楽:22(下手)
所持ポイント:112540
所持している本:料理
1.料理の本を読む
2.その他の本を購入して読む
1.学力アップ 2000ポイント
2.身体能力アップ 2500ポイント
3.直感・洞察力アップ 2000ポイント
4.音楽センスアップ 1500ポイント
それぞれ安価で1〜3ポイント上昇します。
2の場合は「2-1」のようにお願いします。
下1でお願いします。】
476 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/22(金) 23:08:28.71 ID:q+DX96t10
1
477 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/24(日) 21:00:41.95 ID:tOhkUR4E0
【
>>476
1:料理の本を読む】
引き出しの中から入学式当日に購入していた料理に関する本を取り出す。
そういえば序盤の包丁の持ち方講座あたりを読んだきり、その先を読んでいなかった。
ちょうどいい機会だし、今日はこの本を最後まで読み進めることにしよう。1日を過ごすには物足りないページ数だけど、じっくり読み進めていけば夕方頃までは楽しめそうだ。
【コンマ判定
成長性:74(高) 補正あり
1・2・3:料理1アップ
4・5・6:料理2アップ
7・8・9・0:料理3アップ
2桁ゾロ目:料理5アップ
下1のコンマ1桁でお願いします。】
478 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/24(日) 21:18:25.70 ID:+ROC6Tew0
あ
479 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/24(日) 22:46:31.97 ID:tOhkUR4E0
【
>>478
0:料理3アップ
料理39 → 42 】
5月29日、月曜日の夜。
わたしはクラスメイトから連絡を貰ってケヤキモール内のカラオケまで来ていた。
誘い文句は内密に話をしたいとのこと。
言及はされていなかったけど、おそらく歌うことはないんだと思う。暇を見つけては雨宮さんから音楽のことは教わっていても、まだまだ歌唱力は平均を大きく下回っている自覚はある。
時刻は21時を回ったところ。明日も学校ということもあって、寮からカラオケまで人とすれ違う機会も少なかった。ただ、23時まで営業しているカラオケは全ての部屋が満室だった。
わたしは事前にチャットで聞いていた部屋番号を店員さんに話すと、数秒後にはどうぞと案内される。
「……」
どうか、変なことにはなりませんように。
心の中でそうやって気休め程度のお祈りをしてから扉を数回ノックする。
「どうぞ」とは聞こえてこない。というか、聞こえてきたら困る。防音がしっかりされていないと、以前ここを利用したときのわたしのお粗末な歌声が衆人に聞かれていることとなってしまう。
480 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/24(日) 22:47:00.88 ID:tOhkUR4E0
扉はすぐ、向こうの方から開かれた。
「ごめんね、わざわざ」
「ううん、いいの。でも珍しいね」
「そうかな? あ、何か頼みたいものがあったら注文して。そこのタブレットから出来るから。僕はさっき注文したから大丈夫」
そう言って、望月くんが腰を下ろしたソファの向かいにわたしも座る。
彼は数十分は前に来ていたらしく、アイスコーヒーがもう氷の溶け水でかなり薄まっていた。次の飲み物も頼んでいたようなので、わたしはアイスティーを注文してタブレットを閉じる。
ここは基本的にドリンクバー形式を取っているものの、サービス料を支払えば持ってきて貰うことも出来るらしい。1杯につき100プライベートポイントというのは、少々高額な気もする。
「僕の話はすぐに済む。せっかくだから少し歌っていってもいいけど?」
「明日も学校だから、早めに本題に入ってくれると嬉しいかな」
そこだけは譲れない、と学校を免罪符にして本題に入ることを促す。
彼は肩をすくめるような仕草をした後、薄まったコーヒー風味の水をストローで飲み干してから話し始める。
481 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/24(日) 22:47:28.12 ID:tOhkUR4E0
「じゃあ率直に聞くことにする。Cクラスの『王様』を教えて欲しい」
望月くんが特別試験そのものにあまり興味がないだろうな、とは思っていた。しかしそんな折、彼の属する最後の干支『いのしし組』の通達を明日に控えたこのタイミングで呼ばれたということから、もしやと予想はしていた。
わたしとしては教えることにそれほど抵抗がある訳ではない。もしかしたらCクラスの『王様』3人の共通点を見つけ出し、他クラスの『王様』を見つけてくれるかもしれない。
ただ、それは他クラスにCクラスの『王様』がバレるかもしれないという危険も同時に発生する。もし望月くんが他クラスに100万プライベートポイントで買収されていた場合など、可能性はわずかに存在している。
「ええっと、素直に聞いてくれたから、わたしも素直に訊かせて。信用してもいいの?」
「そこは理由を尋ねるところじゃないかな。ただ、その質問に答えるとすれば、信用してくれていい。僕の『いのしし組』の勝利は約束しよう」
「Cクラスの『王様』がいるグループについては勝利の約束は出来ない訳だね」
「そうなるね。ただ、条件次第では確実にCクラスを1つ昇格させることは出来る」
昇格。
それはつまり、CクラスからBクラスへと、Aクラスに近付くことを指す。
482 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/24(日) 22:48:02.88 ID:tOhkUR4E0
5月1日の時点でクラスポイントは拮抗していた。
Bクラス:719ポイント
Cクラス:710ポイント
日々の生活態度でクラスポイントが減算されることを知らされた今、両クラスで大きく減算されている可能性はほとんど無い。
差が縮まる、差を引き離すという意味では、先の中間テストの結果が大きく反映される。おそらく全教科の平均点でクラスポイントが上昇されると予想でき、わたしたちCクラスの平均は91点のため、800クラスポイントを越すことになる。
ただ5月はまだ終わっていない。
今日、明日、明後日のうちに生活態度が悪ければマイナスとなるし、何よりも特別試験の結果次第では大きくクラスポイントを下げることになる。結果次第ではDクラスまで陥落とはいかないまでも、現在のAクラスやBクラスと大きく引き離される可能性は十分にある。
そんな中で、彼は条件次第で確実にBクラスまで上げる算段があると言う。
「えっと、まずはその方法から教えて貰える?」
「簡単だよ。投票期日前の投票で誤った『王様』を選択させる。Bクラスの人に投票させれば100ポイントずつ離れていくだろ?」
さらりと言ったけど、結果4の難易度は高い。
結果4:役職『王様』以外の者が投票期日よりも前に解答を行い不正解だった場合、役職『王様』には50万プライベートポイントを支給し、解答者が所属するクラスのクラスポイント“50”が役職『王様』が所属するクラスのクラスポイントへ移動する。
483 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/24(日) 22:48:34.18 ID:tOhkUR4E0
投票期日は明後日。投票期日前の投票は明日の19時までとなっている。それまでに他クラスへ偽の『王様』情報を流し、信じ込ませて投票させる。
どう考えても今からでは間に合う気がしない。
「半日もあれば投票させることは容易い。君には無理でも、僕なら出来る。乗る気になってくれたかな?」
「……うん、そこまでは分かった。あとは条件だね」
実際、どんな手段を用いて彼が結果4に導くかは教えて貰えそうにない。今のところ半信半疑といった状況だけど、クラスメイトとして信用したいという気持ちと、確信している目を見てしまっては信用する方へ意識が傾いてしまう。
彼は運ばれてきたアイスコーヒーを飲んでから、ふぅと意を決したように深呼吸をしてから話し始める。
「雨宮さんと遊びにいけるように手を回して欲しい」
「………………………んん?」
雨宮さん?
雨宮綾香さんは、Cクラスのクラスメイトで、今は活動を停止している女優『白石詩波』その人で、今回の特別試験では望月くんと同じ『いのしし組』でもある。
と、そこまで振り返って、1つもしやと頭の隅に仮定が生まれる。
目の前の望月くんは、結構ドラマや映画といった創作物が好きらしい。5月1日に彼と2人きりの教室で猿芝居をしたのは記憶に新しいし、たまに聞こえてくる望月くんが他の男の子と話している様子ではドラマや映画に関する話が多かったと思う。
484 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/24(日) 22:49:03.60 ID:tOhkUR4E0
つまり彼は、雨宮さんが『白石詩波』だと気が付いて─────。
「素人の目は誤魔化せても、僕の目は誤魔化せない」
そんなドラマの中だけみたいな台詞。
なんの恥ずかし気もなく発する。
「もちろん僕と彼女2人きりという訳じゃない。それは彼女に対して恐れ多い。僕の大切な人と、春宮さんも同行して貰えればそれでいい」
これまで望月くんに対しては、実力を秘めている超実力者というイメージがあったけれど、そんなイメージは今晩で瓦解した。
まぁ確かに、売れっ子女優であり売れっ子アイドルと休日を過ごしてみたいという気持ちは分からなくもないけどね。
この事について話を詰める前に、一点だけ確認しておかなければならない。わたしがうっかり口を滑らせたという事にはならないように。
「一応だけど、確認させて貰えるかな。雨宮さんのことは─────」
「白石詩波だろう? 入学式の日から気付いてるよ」
彼がもう知っていることについては確認は取れた。
ただ厄介なことに、彼が今の時点で疑惑の段階だった場合、わたしが認めてしまった時点でそれは確信に変わってしまう。
何にしても、雨宮さんの居ない場所でこの交換条件を飲むのは憚られる。
「ごめん、その条件は飲めない」
わたし1人で解決できることや、敢えて区別するなら一般人とのデートのセッティングをする協力であればわたしも即決できた。ただ雨宮さんの場合はそうもいかず、これ以上はボロが出てしまいそうになるため話を切り上げることにする。
485 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/24(日) 22:49:29.75 ID:tOhkUR4E0
「わかった。君の心境、立場も理解できる。気が早かったお詫びと言ってはなんだけど、今回の試験では『いのしし組』を勝利させた上で、CクラスをBクラスに上げる。その条件で、改めて再考して欲しい」
「うん、それなら─────」
って、つい話に流されてしまっていたけど、そもそもCクラスの『王様』3人のことを話すとまでは約束していない。かなり教える方に偏ってはいるけどね?
それに、本当にBクラスに上がることが出来れば、現在のCクラス全体の士気が高まる。より一層、テスト対策などに力を入れてくれるかもしれない。
危惧するべきは望月くんがBクラスやDクラスに『王様』の情報をリークして当てられてしまうケース……だけど、もし本当に雨宮さんとのお出掛けを望んでいるのであれば一生の亀裂を生み出しかねない。彼が裏切った場合のデメリットはとても大きい。
つまり信用する、というのが正しい選択か……?
【安価です
1.正しい『王様』を教える(協力関係)
2.誤った『王様』を教える(敵対関係)
3.教えない(やや敵対関係)
下1でお願いします。】
486 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/26(火) 20:41:40.77 ID:8Hvwm+jMo
1
487 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/28(木) 12:20:23.08 ID:uYjGEDJrO
【
>>486
1:正しい『王様』を教える】
昔の自分らしく、自分の損益だけで物事を考える。
どうするのが一番わたし自身の利益になるのか。
どうなるのが一番わたし自身の損失になるのか。
散らかっていた思考が消え、結論だけが残る。
「わかった。その条件でいい。ただし雨宮さんの保証は出来ないからね。その場合は、また別途わたしに出来ることを考えてくれると嬉しいかな」
「もちろんそのつもりだよ」
短く答える望月くん。
雨宮さんを誘えなかったとき、わたしに振られる対価はどの程度のものか。考えられるものとして、毎月数万のプライベートポイントの要求、生徒会役員という立場を利用した悪事、今後の特別試験で無条件にわたしが彼に協力する、など。そのあたりか
悪事の片棒を担ぐのだけはしっかり拒否しないといけないとして、これで話はまとまった。
「それじゃあ改めて。まず、春宮さんが僕にCクラスの『王様』を教える。そして僕は、僕の『いのしし組』を勝たせた上で、結果的にCクラスをBクラスに上げる。もしその2つが達成された場合、春宮さんが雨宮さんを誘う。これでいいかな?」
「うん、それでいいよ。ただし、わたしに出来るのは普通に誘うまで。強制は出来ないし、強制もさせない」
おそらくわたしは数日後、雨宮さんにこの場で起こったことを素直に話すことになる。
第一声と表情で判断しよう。
少しでも嫌そうな素振りを見せれば、やんわりと誘えなかった旨を望月くんに伝えることとする。その場合、わたしが振れ幅の想像がつかない損失を被ることになるけど、結果的に良かったとは思えるはず。
「取引成立だ。早速だけど教えて貰おうかな。Cクラスの『王様』を」
ぐいっと身を寄せてくる望月くん。
わたしは─────。
【コンマ判定
直感・洞察力:91(優秀) 補正あり
1・2・3・5・7・9・0:「待って」
4・8:「1人目は─────」
下1のコンマ1桁でお願いします。
2桁がゾロ目の場合は「待って」になります。
続きは今晩にします。】
488 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/28(木) 12:37:50.20 ID:qgJs+JAK0
今度こそ
489 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/28(木) 22:30:17.54 ID:Tcd2BeMpO
【
>>488
0:「待って」
待って、とは言いませんでした。
申し訳ありません。】
わたしは、テーブルの下から携帯を取り出して画面の方を望月くんに見せつける。
「教える前に、まずはこの事を話さないとだよね」
携帯の画面上部には『望月弘人』と、下部には『通話を切る』マークが表示されている。
この画面は他でもない、電話の画面。
5分ほど前から掛け続けているものの、テーブルに裏返しにして置かれた彼の携帯は着信音を鳴らすことも、バイブレーションで着信を報せることもしていない。
この事が指し示すのは、彼の携帯の充電が切れているか、通話中のどちらか。更に、このカラオケでは携帯の充電器の貸し出しを無料で行っていることから、自ずと答えは一つになる。
「見せなくていい。わたしが見るから」
彼はテーブルに置かれた携帯に手を伸ばそうとするが、その前にわたしが静止する。
490 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/28(木) 22:30:45.46 ID:Tcd2BeMpO
彼と繋がっている人物を探る手間が省けた。このままわたしが彼の携帯を手に取り、画面を見れば誰と通話中であるかはその場の証拠として押さえられる。
「詰めが甘いけど、及第点だ」
携帯を手に取った瞬間、彼はそう口にした。
決定的な証拠である携帯の画面を見る、あるいはその言葉の真意を頭で理解する前に─────。
「入ってきていいよ」
彼の一言の後、間も無くしてカラオケルームの部屋が第三者によって開かれる。
「どうやら機転も効くご様子。これは益々、わたくし共と一緒に来ていただく必要性が高まったのでは?」
そう問いかける第三者。
一歩、そして二歩と踏み出して部屋に入ると、扉を閉めた上で彼女は長いスカートの裾を摘んで恭しく挨拶をして見せる。
「こんばんは、春宮さま。兄が失礼をしたようで、妹としてまず謝罪を。大変失礼いたしました。お戯れが過ぎたようですね」
情報の多さに、わたしの頭は一瞬だけ澱む。
兄? 妹? そして、この人は─────。
491 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/28(木) 22:31:16.72 ID:Tcd2BeMpO
「……えっと、兄弟なの? 東雲さんと?」
「生憎、血は繋がっていないけどね」
望月くんが頷いて肯定したことで、段々と理解も及んでいく。
つまり、1年Cクラスの望月弘人は、1年Aクラスの東雲雪菜と血の繋がっていない兄妹ということ。
これはこの学校に入って、それこそ雨宮さんの正体を知ったことの次に衝撃を受けた。
「兄様。ここはやはり、他の者から携帯を借り受けるべきだったのでは? こうなることは予想できていたでしょうに」
「それはそれでつまらないだろう?」
望月くんの隣に腰をかけた東雲さんは兄妹で距離の近い話をし始める。
話の内容は理解できる。
わたしが電話を掛けることを予め察して、他の人から携帯を借りて東雲さんと通話中にしておく。その後、わたしは先の流れに沿って望月くんの携帯を取り上げたものの、通話の履歴は一切見つからなかった─────なんてオチの未来もあり得たということらしい。
詰めが甘いと言われたことにも納得がいく。
「というわけで、こんなかんじだ。これから先、妹共々よろしく頼むよ。で、Cクラスの『王様』の件だけど。聞かせて貰えるかな?」
492 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/28(木) 22:31:42.12 ID:Tcd2BeMpO
1人はクラスメイトである味方。
もう1人はAクラスの、いわば敵の存在。
しかも同じ『ねずみ組』なのだから、これから話すCクラスの『王様』を語れば、それは彼女が期日前投票が出来てしまう。
やや気が乗らないけれど、どちらにせよ目の前の兄妹は両クラスの『王様』を共有していたと思う。
全12名の『王様』の内、半数の6名が分かってしまえば、『王様』として選ばれる法則も想像がつくはず。
「今さら断ることも出来ないしね。話すよ」
と言ったものの、話が違うと断ることは出来たと思う。
素直に話そうと思ったのは、やはり彼らが兄妹であると知れた情報の方が大きかった。今後の特別試験において、望月くん経由で絶対的なAクラスとの共闘が出来るかもしれない。
「まずは1人目だけど─────」
わたしは正確なCクラスの『王様』を語る。
偽の『王様』をでっち上げるという選択肢もあったけど、その場合に敵が多くなり過ぎる。それだけは避けなければならないと理解が及ぶまで一瞬だった。
【コンマ判定
奇数:その後の夜
偶数:翌朝
ゾロ目の場合は再安価の権利を獲得し、今回の安価は下1桁に準じます。
下1のコンマ1桁でお願いします。】
493 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/28(木) 22:42:33.68 ID:oRA62cm50
あ
494 :
以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします
[sage]:2021/10/29(金) 02:30:32.08 ID:EuStPG2u0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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495 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/29(金) 22:00:16.81 ID:5KhXMOCj0
【
>>493
8:翌日】
昨晩の衝撃は今でも鮮明に思い出せる。
いやぁ……そっかぁ。居るところには居るもんだね。
そういった第三者の視点でしか語れないところがもどかしいけれど、それ以上もそれ以下でもなく、彼らは血の繋がっていない兄妹という事実だけが確かにある。
ここでふと考えてみると、この世には兄妹同然に育ってきたから義理の兄妹なんてものから、兄妹の契りを盃で交わすこともあると言う。
最も、後者は兄妹というより、強面の叔父様が兄弟の盃を交わすイメージの方が強いけれど。
結局、気になるのは彼らの出自について。
5月1日の朝にお兄さんの方から余計な詮索はするなと釘刺されていても、気になってしまう。あの2人はどういった経緯で兄妹に至ったのか。
と、そんなことを考えながら校門を通り過ぎたところで、目の前に聳え立つ巨大な校舎の目立つところに設置されている時計が目に入る。
「……あ」
短針が8を、長針は12を指している。
5月30日の朝8時。
1年生の間でのみ実施されている特別試験の通達最終日。干支の最後、『いのしし組』の発表当日。
496 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/29(金) 22:00:51.98 ID:5KhXMOCj0
我らがCクラスからは雨宮さんと、話題に尽きない望月くんが該当する。
今ごろ通達のメールが届いた頃だろうか。
いずれにしても、わたしが他グループへ関与をしない(出来ない)と心に決めたことは記憶に新しい。
立ち止まって考えていても仕方がない。このまま教室へ─────その時だった。
鞄を伝って手が振動を感知する。歩いていたら気付かなかった程度の振動。他でもない、携帯がメッセージを報せてくれている。
このタイミングであること、周囲に生徒の影が少ないことから、わたしは少し逸れた場所で携帯を取り出して通知を確認する。
送り主は学校からだった。
『いのしし組の試験が終了しました。
いのしし組の方は以後試験へ参加する必要はありません。
他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動してください。
なお、6時間目の学級活動の時間は教室で自習となります。』
目を疑う内容だった。
『いのしし組』の特別試験は、通達より1分も経たずに強制的に幕を閉じた。
終わらせたのは、他でもない昨晩に勝利宣言をした望月くんを除いて他に居ないと思う。
497 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/29(金) 22:01:18.75 ID:5KhXMOCj0
◇◇◇
教室に到着すると、望月くんは自席で文庫本のページを捲っていた。
他に生徒の姿は見られず、今日も彼は一番乗りのようだ。
「おはよう。望月くん」
「おはよう、春宮さん。昨晩はありがとう。おかげで余計なリスクを取らずに試験を終えることができた」
やっぱり彼だったらしい。
通達のタイミングとほぼ同時に期日前投票を終わらせてしまうなんて……。一緒の組になった人たちは、たった一度の会話の機会も得られずに試験が終了してしまったのだから不完全燃焼だと思う。
……あ、もしかしてリスクってそういうこと?
「君としても、雨宮さんが話さなければならない機会は潰しておきたいだろう? 話すということは、その分だけ彼女の正体がバレることに繋がるからね」
「寛大なご配慮ありがとう」
ファンとして、なのか。
その殊勝な意気込みは賞賛に値する。
なまじわたしがこの試験をほぼ放棄しているだけに、とても立派なように思えてしまう。
「この試験の結果は決まった。安心していい、僕たちの完全勝利だ」
僕たち。
おそらく東雲さんの居るAクラスも含まれているのだろう。
少なくともわたしたちCクラスが大きくクラスポイントを削がれる、という事象を避けられただけ良しとするべきか。
いや、まだ結果も出ていないから分からないけどね。もしかしたら『王様』の法則を読み違えて大敗北という結果もあり得る。
改めて文庫本へ視線を落とした彼を他所に、わたしは自席に着いた。
498 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/29(金) 22:01:54.31 ID:5KhXMOCj0
◇◇◇
「天音、お前も一枚噛んでるのか?」
6時間目の視聴覚室。
入室してまず第一声が奥の方の席から浴びせられる。
一応まだ休み時間のため議論を行う義務はないけれど、彼を放っておくとややこしいことになるため答えておくことにした。
「わたしは知らないよ」
「……」
訝しげな視線を向けられながらも、わたしはここ2週間近く通い続けている視聴覚室の中でもお決まりになった席に着く。
結局、こうして6時間目を迎えられたのは、わたしたち『ねずみ組』と他5組の合計6組。
残りの組については各授業と授業の間の休み時間に今朝の『いのしし組』同様に通達があった。内容は寸分違わず、試験が終了した報せ。
おそらくAクラスとCクラスの『王様』がそれぞれ所属する組が残ったんだと思う。現に、Cクラスの『王様』が所属する組はまだ試験が終わっていない。
「どうやらわたくし達が最後のようですね」
昨晩ぶりに東雲さんを視認する。
499 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/29(金) 22:02:22.89 ID:5KhXMOCj0
相変わらずの毅然とした表情。多少の誇らしい表情を浮かべていてもおかしくないと思ったけれど、そういうところは流石だと思った。
「東雲。お前がやったのか?」
「さぁ。なんのことでしょう」
涼しい声色で答える東雲さんに、辻堂くんは何を思うのか。
いずれにしても立て続けに発生した期日前投票は、どこかのクラスが集中的に行っていると想像がついているはず。そして試験が終わっていないのは残り6クラスのため、どこかのクラスが手を取り合っていることまで分かっているかもしれない。
500 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/29(金) 22:03:00.39 ID:5KhXMOCj0
◇◇◇
6時間目の開始を告げるチャイムが鳴り響く。
そして6時間目の終了を告げるチャイムもまた、きっちり50分後に鳴り響いた。
本日『ねずみ組』で行われた議論は以前と変わらずトランプゲームを経て、ジェンガへと移行する。ジェンガでは悔しくもわたしが負けて2度目の『一般人』告白をして幕を下ろす。
12日間に渡って行われたゲームでは、無事にCクラスの『王様』を隠し通すことができた。唯一にして一番の難所を乗り越えられ、わたしは内心でホッとする。
「名残惜しくはありますが、これで。また特別試験でご一緒になった時は、よろしくお願い致します」
東雲さんの退室に倣い、続々と視聴覚室を出て行く『ねずみ組』の面々。最後まで窓の外を向き続ける辻堂くんが気になったけれど、今回の試験はこれまでだと思う。
立役者はともかく、AクラスとCクラスの2人勝ち。
クラスポイントもプライベートポイントも大きく加算されて万々歳。そしてわたしには一つミッションが課せられることになる。せっかくなら雨宮さんから良い返事を貰えると良いんだけどね。
【コンマ判定
奇数:夕方(生徒会室)
偶数:夜(自室)
0:夜(外)
ゾロ目:夜(学校)
下1のコンマ1桁でお願いします。】
501 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/29(金) 22:08:55.35 ID:vZIzh2Sq0
あ
502 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/29(金) 23:29:33.20 ID:5KhXMOCj0
【
>>501
5:夕方(生徒会室)】
「天音ちゃんはどう?」
「そうですね……」
無人島にひとつだけ持ち込めるとしたら何を持っていくかという話題で、生徒会室は盛り上がっていた。
サバイバルナイフ、浄水器、釣り竿、マッチ、虫眼鏡と様々なモノが挙がった末に、わたしに振られる。
無人島に持ち込めるとしたら…。
考えたことがあるようで無かった。
服は着て行くモノだから当然として、先に挙がったサバイバルナイフやマッチは必須というレベルで重宝しそう。
……でも、強いて言うなら、やっぱり。
「日焼け止めですかね」
「逆に一周半まわって面白い! そうだよね、日焼け止めは必要だよねー。特に夏だと陽射しが気になるもんね」
乙葉先輩や夏帆先輩といった女性陣が頷く中、男性陣は「そうかぁ?」といった表情。
本当に無人で鏡さえ存在しない島であれば日焼けしても気にならないのかもしれないけど、肌荒れは直接精神を削ってきそう。遠くない未来に自死を選ぶ道も用意されているほどに。
503 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/29(金) 23:30:04.34 ID:5KhXMOCj0
「というか、どうしてこんな話を?」
「……まぁ、なんとなく? 学生なら一回はこういう話をしておかないとね。定番の話題ってヤツだよ」
「そういうものなんですね」
挙動不審な乙葉先輩の動向からは色々読み取れる。
しかし無人島。無人島かぁ。
特別試験で50万円〜200万円相当のプライベートポイントを配ろうとしている超特権的なこの学校といえど、流石に無人島は所有していない……よね?
無人島レンタルなんて素敵なビジネスがあるのならいざ知らず。流石に持ち物として保持していることは無いと思う。
「ちなみに乙葉先輩は何を持っていきたいですか? 携帯は無しで。使えませんから」
「それくらい分かるって。私的にはぁ、天音ちゃんかな。食べられる葉っぱとか知ってそうだし、猛暑日でも島とか海を駆け回って食糧探してくれそうだし」
「先輩、わたしのことそんな風に見てたんですね…」
「わ、違う! 違うって! 今のは冗談だから! いや天音ちゃんなら本当に出来そうだけど!」
実際問題、それが出来るかと言われたら……。
【コンマ判定
学力:97(超優秀) 補正あり
身体能力:99(超優秀) 補正あり
1・3・7:超余裕だと思う
2・5・9:余裕だと思う
4・8・0:……なんとか出来ると思う
6:絶対に無理。無人島とか無理ですから。
ゾロ目:超超余裕だと思う(島経験あり)
下1でお願いします。】
504 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/29(金) 23:43:09.43 ID:PXdBxgr50
ふん
505 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/30(土) 23:07:45.09 ID:sIx2y35x0
【
>>504
3:超余裕だと思う】
うん、出来るとは思っている。
経験こそ無いものの知識だけは充分にあるし、山や海で動き回り続けられる自信もある。現実は思っているほど甘くはないんだろうけどね。
それでもわたしの取り柄を活かせることに違いはない。
ただ、その自信はこの場で高らかに発せるほどではない。ここは無難にこう言っておくことにしよう。
「そんなことないですって」
「またまたぁ」
それから数分間、無人島に関する話題が続くいた。
結局、わたしについては「さすがに天音ちゃんといえど無人島は厳しいかぁ」という評価で落ち着く。思った通り無難なところで話が済んだと思う。
「私としては宇宙の方が良いんだけどさぁ」
さっきまで無人島の話をしていた人が大きく上空の話をし始めたところで、生徒会室の扉がノックされる。
506 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/30(土) 23:08:15.02 ID:sIx2y35x0
「なに? また部費の相談とか? 追い返して来る」
もはや恒例となった乙葉先輩を誰も止めることはしない。
本当に追い返した末に、ユキ先輩、夏帆先輩が話をきちんと聞きに行くからだった。各部の部長もそのことを知っての上のようなので、今さら気にする必要はない。
「はいはーい」
意気込んで扉を開けた乙葉先輩は、
「……おおっと」
扉の向こうに居た人物を想定していなかったらしく、少し大袈裟に驚いたようにして、その人物を生徒会室へ招き入れる。
「失礼いたします。1年Aクラスの東雲と申します」
入り口で綺麗にお辞儀をして見せた東雲さんは錦山会長、乙葉先輩、と視線を合わせて行く。
このことに一番驚いたのは同じクラスの神宮くんだった。
「どうしたの、東雲さん」
「少々、生徒会の皆様にご相談がありまして。神宮さまはお気になさらず、業務を行なっていて下さい」
「お前、クラスメイトに様付けで呼ばれてんの?」
「いえ、これは……!」
うっちー先輩こと内山先輩が面白そうに茶化している内に、東雲さんは錦山会長の目の前まで迫っていた。
507 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/30(土) 23:08:45.79 ID:sIx2y35x0
手にはホチキス止めされた数枚の印刷物がある。
「こちらを。企画書になります」
「は、企画書?」
この学校をより良いものにしていくための嘆願書ではなく、企画書。文字やイラストが綺麗に敷き詰められた一見良さそうな資料に見える。
ただ、ここは生徒会室であって会議室ではない。
会長はパラパラと企画書とやらを捲り、
「えーっと。企画書だな、これは。で、なにこれ」
読んでも分からなかったようで、再度尋ねる。
気になったのか乙葉先輩やユキ先輩、内山先輩、新汰先輩がその企画書を覗きに行く。
「簡潔に申しますと、6月2週目の日曜日に特別棟の教室を利用したいのです。担任の教師に確認を取り、五万ポイントで貸していただくことについては承認を得ました。しかし条件として生徒会に許可を取らなければならない、と」
「へー、よく出来てるじゃん。良いんじゃない?」
乙葉先輩を始め、うんうんと頷く先輩方。
そこまでいくと断然と興味が湧いて来る。
「ありがとうございます。参加するのはわたくしを含めて四名。そうですよね、春宮さま」
「え、あぁ、うん。あの件ね」
昨晩話した望月くんとの件。
彼が言っていた同席者とは、薄々予感はしていたけど東雲さんのことだったらしい。確かに大切な人と言っていたからその通りだ。
それにしても教室を借りて何をするつもりなのだろう。わたしは会長席に近付き、覗き見る。
「わたくし共は教室をお借りして『夏祭り』なるものをやってみたく考えております。もちろん安全には最大限の注意を払うつもりですし、花火は致しません。小さな小さな文化祭とお考えいただければ」
言っていた通り、企画書には『夏祭り』の出店によくあるようなお店の名前が並んでいる。
焼きそば、たこ焼き、わたがし、スーパーボールすくい、射的、その他。
508 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/10/30(土) 23:09:19.47 ID:sIx2y35x0
とても興味を惹かれるような内容だけど……これを雨宮さんとしたいと言うの?
「そうだな。断るつもりもない。ただし、天音以外に生徒会から一名を同席させろ。それなら俺たちから言うことは何もない」
「えー、いいじゃん。せっかくならみんなで参加しようよ! 暇な人は自由参加ってことでさー」
「申し訳ありませんが、人数が増えすぎると少々不都合があるのです。ご迷惑をおかけしますが、ご理解いただければ幸いです。ただ、一名であれば許容範囲内です」
「だそうだ。残念だったな、乙葉」
「やりたいやりたい! 参加したい!」
「春宮さま、どなたか一名を選んでいただけますか。同席させるということは、あの事を知るということ。充分にご考慮した上で、お決めいただければ」
今さらまだ雨宮さんのことを誘えていないとは言い出し辛いものの、ひとまずこの場は誰かを選ぶことにしよう。
【安価です。
まだ全然交流が無い人は省きます。
それぞれの白石詩波(雨宮春香)についてのイメージです。
1.錦山暁人「白石詩波? あぁ、乙葉が好きなアイドルだっけ? あ、女優? あんまり興味ねぇな」
2.花菱乙葉「え、ウタちゃんじゃん。すっご。私、めっちゃファンだよ! 同じ学校だったなんて!」
3.如月深雪「ん、あれ、白石詩波? 同じ学校だったのか? そうかそうか、なんて言うか、こういうこともあるもんなんだな」
3.四条夏帆「えぇ!? あの白石詩波っ? すご……なんていうか、恐れ多いですね……」
4.神宮紫苑「白石詩波……? あの? 同じ学年だったなんて驚きだな…」
下1でお願いします。
白石詩波が参加できるかどうかはコンマ判定を今後行います。高確率で参加にするつもりではいます。】
509 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/31(日) 21:54:13.12 ID:ewVeamiwO
3 四条
510 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:16:40.60 ID:FvWwTJodO
【長く出来ず申し訳ありませんでした。
再開します。】
511 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:17:21.46 ID:FvWwTJodO
【
>>509
3:四条夏帆
3番2つありましたね。申し訳ありません。】
すぐに結論は出る。
「夏帆先輩、お願いできますか?」
「あ、私ですか? はい、もちろん構いませんよ」
「ま、妥当なとこだな」
錦山会長が汲んでくれた通り、夏帆先輩には何と言っても調理の腕がある。もしかしたら絶品の一品を作ってくれるかもしれないという淡い期待と、万が一の防災に備えることが出来そうなところが他の人より優れていた。
表立って言えない事として、雨宮さんの秘密を守ってくれそうな人として筆頭に挙げられるのもポイント高い。
「えー、ずーるーいー、わたしもわたしもー」
「今回の企画のために購入した製品はしばらく保管予定です。もしご希望がございましたら無料でお貸ししますので、そのときはぜひ生徒会の皆様で」
「ぁ、そう? ふふふ、なら今回はいいかなー」
乙葉先輩以外の生徒会役員全員が「おぉ」と感嘆を漏らす。東雲さんは早くも乙葉先輩の扱い方を理解したようだった。
512 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:17:58.63 ID:FvWwTJodO
「それでは四条様、当日はよろしくお願い致します。もちろんタダでとは言いません。ここは言い値で1日を譲ってください─────と言いたいところですが、恥を承知で限度額について先にお話させてください」
「いえ、いいですいいです。私は居るだけですから」
「そう仰らずに。来たる日に備え、プライベートポイントを少しでも多く持っておくことは決して無駄ではないでしょう。佐倉様はどう思われますか?」
「ん、俺か?」
東雲さんが指名したのは2年生の佐倉新汰先輩。
ここでどうして新汰先輩が? という疑問は一瞬で自己解決に至る。
プライベートポイントの使い道は、わたしの知らない常軌を逸したカタチで多岐に渡ると考えられる。
2000万ポイントでクラス移動が良い例。
試してはいないけれど、もしかしたら筆記試験の点数さえもプライベートポイントで買うことが出来てしまうかもしれないし、1年生と2年生の教室のフロアを交換なんてことも出来てしまうかもしれない。
夏帆先輩のクラス移動に用いられたポイントの出どころは検討もつかない。しかし今、確実に言えることとして、新汰先輩のクラスは潤沢なプライベートポイントの保有はしていない。
つまり偶然にも舞い降りたプライベートポイントの入手機会は願ってもない絶好の機会。
下級生に心配されると言う恥さえ呑み込んでしまえば断る理由はひとつも見つからなかった。
513 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:18:24.23 ID:FvWwTJodO
「ひとつだけ確認させてくれ。どうして俺なんだ?」
「二年生は佐倉様と化野様の両局に分かれて、今もなお牽制し合っていると風の噂で耳にしました。それならば少しでも軍資金が多い方が良いのでは、と考えた次第です。余計なお世話であれば申し訳ありません」
「……なるほど。それは正しいな。悔しいが正しい」
どうやら東雲さんは夏帆先輩のクラス移動によりポイントが枯渇していることは知らない様子。まぁ、本当に出どころが不明のため、実際枯渇しているのかは分からないけれど。
「気持ちはありがたいが、下級生に心配される程じゃない。夏帆がいいと言うなら受け取るつもりはない」
「承知いたしました。元より無くなる予定のポイントですので、もし当日までにお気持ちが変わるようでしたらご遠慮なくお声掛けください」
実際、新汰先輩にポイントが必要だったかどうかは表情から読み取ることは出来ない。内心を窺わせないところは流石だと思った。
それから数言だけ錦山会長と言葉を交わした東雲さんは生徒会室を後にする。最後の最後で視線が合い、「あの件はお願いしますね」と目で訴えられる。
約束は可能な限り守るつもり。ただし、本当に今回の特別試験で望月くんの属する『いのしし組』の勝利、そして結果的にCクラスがBクラスに上がることが出来れば、の話だけれど。
514 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:18:51.46 ID:FvWwTJodO
◇◇◇
6月1日の朝6時前。
わたしはいつもよりほんの少しだけ早く起床する。
覚醒しきっていない頭が真っ先に命令したことは、学生証端末を手に取って起動することだった。
氏名、顔写真、学籍番号が表示されていく中、一際大きく目立つように表示される保有ポイント。昨晩と比べてどのくらい増えているかでおおよその特別試験の結果に見当がつく。
『161540ポイント』
増えたのは69000ポイント。
1ポイントにつき1円の価値があるため、一介の高校生へのお小遣いとしては充分だとしても。
先月と比べて2000ポイントほど減っているのはやっぱり特別試験による影響が大きいんだと思う。中間テストで平均91点という好成績を収めても尚、結果としてわたしたちは先月より20クラスポイントを失った。
ここでようやくわたしはこの学校における特別試験の重要性について理解する。ただ単に勉強が出来る、運動が出来るだけではダメなのだと。
はたして次の試験では何が求められるのか。
それさえ予めに分かっていればクラスで結束してその能力の底上げを図れるものだけど、それは今の段階では知り得ないこと。
幸い、生徒会では特別試験の監督も行うようなので、他学年や全学年で行われる試験を知れるのは大きい。数回かこなしていく内に法則性、あるいはわたしが2年生へ進級したときに有効活用できるかもしれない。
515 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:19:17.73 ID:FvWwTJodO
「よーっし」
気持ちを切り替える。
ややマイナスイメージだったマイナス20ポイントの現実を反転させて、20ポイントで済んで良かったと。Cクラスのボロ負けで500クラスポイントを切る可能性だってあり得たかもしれない。
実のところは望月くんと東雲さんにもう少しだけ便宜を図って貰いたいところだったけど、その分の対価を考えるとこの結果は重畳と言える。
「上出来、上出来っ」と気持ちを振り切って前向きに朝の支度を行う。部屋を出るには少し早すぎる時間だけど、朝のお散歩をするでも教室で自習するでも時間の使い道はいくらでもある。
516 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:19:55.08 ID:FvWwTJodO
◇◇◇
午前8時に学校からメールが届く。
まだ誰も登校していない教室の隅の方、自席でそのメールを開く。
題名は『特別試験 結果』。
本文には淡白にそれぞれの組の結果が並んでいる。
????-
子(鼠):投票日に誤解答をしたクラス有のため結果2
丑(牛):投票日前に正解をしたクラス有のため結果3
寅(虎):投票日に誤解答をしたクラス有のため結果2
卯(兎):投票日に誤解答をしたクラス有のため結果2
辰(竜):投票日に誤解答をしたクラス有のため結果2
巳(蛇):投票日に誤解答をしたクラス有のため結果2
午(馬):投票日前に正解をしたクラス有のため結果3
未(羊):投票日前に正解をしたクラス有のため結果3
申(猿):投票日前に正解をしたクラス有のため結果3
酉(鳥):投票日に誤解答をしたクラス有のため結果2
戌(犬):投票日前に正解をしたクラス有のため結果3
亥(猪):投票日前に正解をしたクラス有のため結果3
????-
これはまた、かなり結果が二分化されたと言える。
結果1〜4まであったゴールの内、実現したのは半数の2つ。結果1と結果4を導き出した組は無かった。
517 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:20:22.84 ID:FvWwTJodO
投票日:5月31日
結果1:投票日に全員の解答先が『王様』であった場合
結果2:投票日に誰か1人でも誤った解答をした場合
結果3:投票日前に『王様』が所属していないクラスの『一般人』が『王様』を解答して正解した場合
結果4:投票日前に『王様』が所属していないクラスの『一般人』が『王様』を解答して誤っていた場合
端的にまとめるとこんなルールだった。
結果2もしくは3のどちらかで締め括られるのは分かりやすくて良い。
『いのしし組』は望月くんが言い当てて、それ以外の結果3となっている5組については東雲さんの手引きでAクラスが言い当てたと考えられる。そして、それ以外の組は無事に投票日を迎えて正解できなかった。ただそれだけのこと。
そして結果2と3には莫大な報酬も待ち構えている。
結果2:『王様』は200万プライベートポイントを獲得し、誤った人が所属するのクラスから“30”クラスポイントを貰える(クラスポイント移動の重複は無し)
結果3:解答者は50万プライベートポイントを獲得し、『王様』が所属するクラスから“50”クラスポイントを貰える
プライベートポイントは言わずもがな。特に結果2は200万円分のポイントが一括で手に入ることになる。結果3の50万プライベートポイントでも大層な額。
しかし今後のクラスの発展を考えるなら、気にするべきはクラスポイントの移動について。
クラスポイントとは、毎月1日にそのクラスに所属する全員のプライベートポイントに直結する。50クラスポイントはプライベートポイント換算で5000ポイント、1クラス40人のためそれだけで20万プライベートポイントとなる。減らさなければ継続して毎月貰えるため、単純計算で10ヶ月失わなければ200万プライベートポイントまで届く。
518 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:20:56.34 ID:FvWwTJodO
特に結果2のクラスポイントの移動についても気にしなければならないところだけれど、すべては後の祭り。今さら気にしても仕方がない。
今回の特別試験を経て、お題目であった『シンキング能力』を培うことが出来たのかは怪しいところ。『王様』の法則性を導き出した望月くんと東雲さんが一番よくシンキングしていたかもしれない。
519 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:21:41.09 ID:FvWwTJodO
◇◇◇
「それではこれより、本日時点の各クラスのポイントを発表します。こちらを」
どちらかと言えば「ずーん」とした擬音が似合うマイナス思考だったクラスメイトは電子黒板へ注目する。
伊藤先生は避けるように教壇を降りて、リモコンを数回操作すると各クラスのクラスポイントが発表される。
Aクラス:1391ポイント
Bクラス:540ポイント (Cクラスへ降格)
Cクラス:690ポイント (Bクラスへ昇格)
Dクラス:0ポイント (マイナス185ポイント
まず第一に望月くんの公約通り、CクラスはBクラスへの昇格を果たした。よかったよかった。
で、そんなことよりも。
「なんだよ、1300って……」
「1300っていうか、1400だし……。倍だよね、ウチらの」
Bクラスに上がれたことを喜ぶ気配は無い。
誰もがわたし達Bクラスと2倍の差をつけているAクラスへ注目している。今朝の結果通達メールの内容からは汲み取れなかった明確な勝敗の結果がそこには如実に表されている。
520 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:22:18.57 ID:FvWwTJodO
誰がどう見てもAクラスが大勝したのは明らかだった。
安堵できる点として、高校生活が始まってまだ2ヶ月目であること。今後の特別試験やテストの点数次第では逆転の余地は幾らでもある。
悲しむべき、危惧すべきこととして、圧倒的な差に向上心が失われてしまうこと。2倍の差はとてつもなく大きい。単純にAクラスは毎月14万円分のポイントを得ているというのも羨ましいと考えてしまう。
「本日より皆さんはBクラスになります。今後も頑張ってください。それではホームルームを終わります」
労いの言葉も無しに颯爽と立ち去っていく伊藤先生。
もしかしたら今後のクラスの方針を立てるための早めに退いてくれたのかもしれない。考えすぎかな?
クラスのリーダー格である一色くんが率先して教壇に立つと、ざっとクラスを見渡して発言を始める。
「みんな、ひとまずBクラスに上がれたことを喜ぶべきだ。確かにAクラスとはとても大きく引き離されてしまった。だが、まだ3ヶ月目だ。挽回─────いや、巻き返す機会は幾らでもあるだろう」
「だ、だよな? そもそもDから2ヶ月でBまで上がった訳だし……」
「そうだよね! ウチら頑張ったもん!」
一色くんの言葉に呼応するようにクラスの至るところから声が挙がる。どれも前向きな思考によるもの。非常に良い傾向だった。
521 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/10(水) 23:22:55.41 ID:FvWwTJodO
しかしそんな中でひとつ。
「とは言うけどさぁ、その確証はあるの? もしかしたら特別試験なんてのはアレ1回きりだったかもしれないよね」
そう発言したのは秋山さん。
あまり率先して発言するようなタイプではなかったけど、今回ばかりは何か思うところがあったのかもしれない。
「……確かに、特別な試験は1回きりという線も捨てきれない。Aクラスがテストで点数を落とすということも考えにくい。そうなればポイント差を縮める手段は普段の素行のみ……ということになるね」
既に次の試験に向けて生徒会は動き出していることをわたしだけが知っている。
次はもっと頑張ろう! と声高らかに言いたいところだけれど、それは同時に生徒会役員という肩書きが許さない。うっかりでも口を滑らせれば生徒会を退くだけでは済まないかもしれない。
わたしの方を何人かがチラチラと見てきているだけに心苦しい。
「今は考えても仕方がない。僕たちは頑張った。それで納得するべきだ。どうかな、本来なら中間テスト終わりにやりたかったけど特別試験で延期になっていたお疲れ様会を週末に開くっていうのは」
「おぉ、いいなっ」
「さんせーっ!」
一色くんの言葉はどんよりとしていたBクラスに良く働いた。
改めて、今は喜ぶべき。先延ばしになっていたお疲れ様会を開くには絶好の機会だと思う。
わたしも都合が合えばぜひ参加したいと思う。
【コンマ判定
奇数:イベント
偶数:夜(雨宮綾香と約束の件について)
ゾロ目:「春宮天音はいるか?」
下1でお願いします。】
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/10(水) 23:43:20.92 ID:SGxOoThr0
あ
523 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/11(木) 07:35:47.94 ID:5hWlcGYzO
【
>>522
2:夜(雨宮綾香と約束の件について)】
6月1日の夜、雨宮さんを部屋に招き入れる。
例の件は置いておいて、中間テスト対策から一ヶ月足らずでわたしと雨宮さんの距離はかなり縮まった。今ではこうして週に数回、一緒に夜ご飯を食べる機会も自然と儲けられるほどに。
「あれ、さっき帰ってきたかんじ?」
「ちょっと生徒会の仕事がね。ほら、月初だし」
「へぇー、大変ね。作るの代わろうか?」
「ううん、いいの。また先輩に教えて貰った料理を試したいから」
本当につい3分ほど前にわたし自身も帰ってきたこともあって着替える暇も無かった。
わたしの料理スキルアップに向けて付き合って貰っているため、空腹のままお待たせする訳にはいかない。
524 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/11(木) 07:36:19.83 ID:5hWlcGYzO
すぐに部屋着に着替えたわたしは夏帆先輩から戴いたエプロンに袖を通して台所に立つ。雨宮さんからの視線が少し気になるけど、調理を開始しよう。
「にしてもさぁ、『いのしし組』はなんか一瞬で終わっちゃったよ。私としては喋る機会が全く無くて助かったんだけどね?」
「あぁ、特別試験のアレね」
特別試験12日目の『いのしし組』の通達があった日。
同じく『いのしし組』の望月くんが通達の時刻に合わせて期日前投票を行った結果、誰が『王様』かを話し合う機会すら貰えずに試験が終了したあの件。
思っていた通り、雨宮さんとしては助かっていたらしい。発言をすれば注目されること間違いなし。眼鏡を掛けていても有名人の風貌は隠し切れる訳ではない。
「ね、春宮さんはそれについて何か知らない? というかCクラスにも『王様』が何人か居たんでしょう? 何百万ってプライベートポイントを貰えて憎たらしいとは言わないけどさ、羨ましいって気持ちはあるよね」
夕食後にしっかりと話そうと思っていたけど、意外なことに結構早い段階でそれに触れることになった。
ここで変に誤魔化しても悪印象なだけか……。
【安価です。
1.素直に特別試験であったこと全てを話す
2.事情は話さず、6月中旬の休日を空けてもらうように話す
3.一旦、別の話題に切り替える
下1でお願いします。】
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/11(木) 15:30:18.45 ID:d6/hW9VWO
1
526 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/11(木) 23:47:02.44 ID:yneQpvKSO
【
>>525
1:素直に特別試験であったこと全てを話す】
調理が煮込みの段階に入ったところで雨宮さんが寛ぐ居間へ紅茶の入ったマグカップを持って移動する。
先ほどまでバラエティ番組の音が背中の方から聞こえていたけれど、今はCM中らしい。車のCMには興味が無いらしく、持ち込んでいた雑誌を捲っている。
「で、さっきの話の続きだけど」
「うん。聞かせて聞かせて」
話を切り出すと雨宮さんは雑誌を閉じて話を聞く態勢に入ってくれた。
紅茶で一息ついた後で、特別試験の裏で行われていた情報戦擬きのあらましを順を追って説明し始める。
「事態が動き始めたのは11日目の夜。『いのしし組』の通達の前日だね。わたしは望月くんに誘われてケヤキモールのカラオケに行った」
「歌えないのに?」
「そこは関係ないからっ。あそこは監視カメラとか無いからさ、そういう話をするのにちょうど良いみたいだよ」
「そういう話って? 告白されたの?」
「……わざとでしょ」
「ごめんごめん、特別試験の話だよね。その話するって言ってたもんね」
527 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/11(木) 23:47:41.89 ID:yneQpvKSO
からかってくる雨宮さんは楽しそうにする。
それこそカメラを構えれば良い画になりそう。
ただわたしの私物では携帯のカメラ機能しかない。せっかくならもっと高画質なカメラで記録に残したいところなのに残念。
気を取り直して話を戻す。
「望月くんには特別試験でキーになる『王様』が誰かを見つける算段がついていたみたいでね。手始めにCクラスの『王様』を教えて欲しいって言ってきた」
「で、教えちゃったんだ」
「大きなポイントも動くからね。ここで何十万、何百万ってポイントを手に入れておくのは有効だと思った。普段の生活的にも、今後の試験対策としても」
「……うん、そうだね。ポイントは持っておいて損はないよね。でも、結局大きく勝ったのってAクラスだよね? 望月くんの算段ってのが間違ってたってコト?」
「ううん、そうでは無いみたい。わたしがCクラスの『王様』を教えたのは2人。望月くんと、Aクラスの東雲さん……って言って、わかる?」
「東雲さん? えっと、えっとぉ……あぁ、あの日本人形みたいな綺麗な子? なんか言葉遣いとか綺麗だよね。何回かすれ違ったことはあるよ。よく印象に残ってる」
「そう、その人。それでね、望月くんとその東雲さんが兄妹らしいの」
「兄妹? 兄妹って、あの? へぇー、そっかぁ。確かに言われてみれば似てるような……気もするね、うん」
528 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/11(木) 23:48:11.93 ID:yneQpvKSO
実際のところは血の繋がっていない兄妹らしいけれど、それはわたしの口から話すべきではない。
ちなみにあの2人は、わたしから見ると似ていない。ただ血の繋がりについて伏せられていれば、きっとわたしも「言われてみれば似てるような」と同じ感想を抱いていたと思う。
「それで望月くんは一つの条件を出して、『いのしし組』では完全勝利を約束してくれた。その他の組については何も取り決めていなかったから、今朝のようなポイント差になったのは当然の結果だね」
「いや、そこ冷静に言うところ? 教えていなければ『いのしし組』も含めてもう少し他クラスとの差が均等になっていたんじゃない?」
「それは……うん。否定は出来ない。ごめん」
確かに『いのしし組』では完全勝利を収められたけれど、結果的にはAクラス以外がクラスポイントを落とす形になった。無論、わたしたち元Cクラスも含めて。
……うん、わたしの所為かもしれない。
あの2人の関係を知って冷静でなかったのは事実。
そして、よく思い返してみれば今回の件はわたしにとってメリットが小さかった。『いのしし組』の完全勝利の代償として、クラスポイントの均衡と雨宮さんの件を引き受けているのだから。
胸の奥にモヤモヤとした感情が滲み出る。
ただ約束は約束。こればかりは可能な限り果たす努力をしよう。
「『いのしし組』の試験についてだけどね。あの日、8時の通達からすぐに試験終了の連絡が来たでしょ? あれって望月くんが即投票したみたいなの」
「あー、そっか。そこに繋がるワケね。それで私たちだけ話し合いの場が無かったと。嬉しいような残念なような。で、当たってたんだ」
「うん。今朝に正解報酬の50万ポイントが支給されている画像が送られてきたよ」
「ふーん、そっか。ま、良かったんじゃない? 負けもせず勝てもせずってかんじだったけど、Bクラスに上がれたワケだし」
「そうだね、そこは喜ぶべきだと思う。今朝、一色くんが言っていたみたいにね。……それでね、望月くんのことなんだけど」
529 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/11(木) 23:48:43.56 ID:yneQpvKSO
話が一区切りついたと思っていたためか、雨宮さんは「まだあるんだ」と相槌を打ってから、きちんと聞く態勢に戻ってくれた。
「雨宮さんのこと気付いてるっぽいの。というか、確信を持ってるみたいだった」
「─────そっか、うん。それで?」
「ええと、雨宮さんと一緒に遊びたいって」
「ふぅん。遊ぶ、ねぇ」
わたしは雨宮さんの表情で即結するつもりだった。
もし嫌そうな顔をしたら即、望月くんと企画書を持ち込んでくれた東雲さんには悪いけど、この件は断ると。
しかし実際に彼女の表情を見て、わたしは決めかねていた。
それは喜怒哀楽のどれにも属さない表情。人の表情から心理を見抜くことについては人一倍の自信があったけれど改めなければならない。あるいは、女優として活躍する彼女が表情を作ることに慣れているのか。
どちらにせよ、わたしは言葉で尋ねる手段を選ぶ。
「それで、これが企画書……」
「企画?」
東雲さんから預かった企画書を机の上に出すと、雨宮さんはパラパラとめくり始める。
たった数秒で目を通した雨宮さんは、
【コンマ判定
4:なんとも言えない表情をした。(断る)
それ以外・ゾロ目:口元を釣り上げて微笑んだ。(承諾)
下1のコンマ1桁でお願いします。】
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/12(金) 00:38:17.48 ID:42Hwc8hk0
あ
531 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/12(金) 01:32:32.02 ID:upz9k2xEO
【
>>530
8:口元を釣り上げて微笑んだ。(承諾)】
雨宮さんは、口元を釣り上げて微笑んだ。
「うん、面白そう。私からいいよって伝えればいいの?」
「あ、いいんだ? 一応、断れるよ?」
「ううん、私も夏祭り的なの体験してみたかったからちょうど良い……というか、半年くらい前の雑誌の取材で夏祭りに行ってみたいって答えたことがあってね。多分、それを見てくれたんだと思う。じゃなかったら逆に突拍子もなくて面白い人だって」
どうして6月中旬という微妙なタイミングで夏祭り?という疑問はようやく解消される。
雨宮さん自身がそうしたいと言ったことがあるのならそれが正解なんだと思う。
確かにこの閉鎖された学校では縁日に参加することは出来ない。もしかしたらケヤキモール周辺で屋台を出してくれるかもと期待する程度。ファンとして夢を叶えてあげたいという気持ちが伝わってくる。やや重たいと感じるのはさておき。
532 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/12(金) 01:33:01.04 ID:upz9k2xEO
「これって私と望月くんの2人きり?」
「ううん、雨宮さんと望月くんと東雲さんと、わたしと2年の生徒会の先輩の5人。特別棟の空き教室で屋台を開くに当たって、生徒会の承認とか諸々でね。信用のできる先輩を呼ぶからそこは安心してもいいよ」
「なら安心ね。ちなみに、これはアレよね。『白石詩波』として参加しろってコトよね」
「そう……だと思う。2人とも結構好きみたいだから」
「うん、なら話が早くて助かるわ。どうせいつまでも隠し通せるなんて思ってもいなかったし、私が『白石詩波』を忘れないための練習にもなるしね」
曰く、今正体がバレるのはダサいらしい。
正体を晒すだけで校内が騒然とすることは容易に想像がつく。そんな中で赤点候補だったというのが雨宮さんとして恥辱で仕方がないみたい。どうせバレるならせめて欠点が無い学生としてバレたいと。
芸能活動休止にもあった通り、現在彼女は勉学に励んでいる。おそらくこのままいけば半年後には学年の中でも前3割には入れると思う。バレるならその辺り以降がベストかもしれない。
「じゃあ、わたしから連絡しておくね」
「おっけー、おねがーい」
手元の携帯で望月くんと東雲さんの両方に例の件で承諾を得られたことを伝える。
すると両方から返事はすぐに返ってきた。
533 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/12(金) 01:33:38.87 ID:upz9k2xEO
ただ、その返事の方法が歪だった。
「ん、どうしたの? 予定変更?」
「……ううん、そうじゃなくって」
わたしはつい数分前とはガラッと一部が変わった学生証端末を雨宮さんに見せる。
『1160900ポイント』
桁が1つ増えていた。
50万と50万、合わせて100万プライベートポイントがわたしへと振り込まれる。もちろん振り込み元は例の2人。示し合わせたのか、あるいは偶然か。どちらにせよとてつもなく大きな臨時収入となった。もちろん話を聞いてから返すことを前提としている。
「いいじゃん、貰っておきなよ。私を口説いたってコトでさ」
「そういうわけには……」
せめて半々にするとか……いやいや、それでも多すぎる。わたしはただ誘ったに過ぎないのに。
「とりあえず持っておきなよ。そんな大金、なかなか手に入らないでしょ? この学校もまだ分からない部分が多いし、ポイントは持っておいて損はないって」
そのいずれもが正論で、わたしは頷く。
100万かぁ。今日は特別試験の報酬も含めて、大きなポイントが動いた日だと思う。今朝のポイント支給だけでもかなり持て余しそうだったのにこんなに貰ってしまって。何かに使える機会があればいいんだけど…。
とりあえず明日は両名に直接話を聞いてみよう。おそらく有耶無耶に流されるんだろうけど。
ということで、無事に雨宮さんを誘えた。
わたし自身も夏祭り的なものには興味津々のため、この機会はぜひ楽しませていただこう。
534 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/12(金) 01:34:23.01 ID:upz9k2xEO
【今日はここまでにします。
かなり今更ですが、春宮天音の家族構成について安価で決めます。
1・8:父母、兄、天音の4人(全員存命) 暖かい家庭
2・9:父母、姉、天音の4人(父母故人) ギリギリ暖かい家庭
3・6:血の繋がった家族は知らない。孤児院育ち
4・0:父母、妹、天音の4人(全員存命) 冷たく厳しい家庭
5・7:父母、天音の3人(母故人)冷たく厳しい家庭
ゾロ目:超高等教育特別施設育ち
下1のコンマ1桁(ゾロ目の場合は2桁)でお願いします。】
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/12(金) 02:11:43.92 ID:42Hwc8hk0
乙
536 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/13(土) 23:06:50.69 ID:mGptKTHrO
【
>>535
2:父母、姉、天音の4人(父母故人) ギリギリ暖かい家庭】
翌日、1時間目の学級活動の時間では学校開発のアプリを携帯端末へインストールする機会があった。
どのようなアプリなのかはインストールをしてからということなので、各自が教科書代わりのタブレット端末へ映し出されたマニュアルを読みながら作業を進めていく。
インストールが終わると、携帯には『OAA』という名称で新しいアプリが追加されていた。マニュアルやホームページでもこの名は数回見かけている。何かの略だと想定されるが、その全貌は起動してみなければ分からない。
「ここまではよろしいですか。躓いている者は挙手を」
QRコードで読み取った学校ホームページからダウンロードのボタンをタップするだけという簡単な作業に手間取る生徒は居なかった。先生は頷くと、
「それでは『OAA』というアプリを起動して下さい。起動後、学生証端末をカメラで読み取ることでログインが完了します」
『OAA』を起動すると、先生の言った通り自動的に携帯のカメラ機能が立ち上がる。学生証端末をかざし、数秒待つとわたしの顔写真と氏名が現れる。
右下の本人認証というボタンをタップすると、すぐ1学年〜3学年までのクラスが表示された画面が現れた。
537 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/13(土) 23:07:28.44 ID:mGptKTHrO
「皆さんに今インストールして戴いたのは、通称『OAA』と呼ばれるアプリです。正式名称は『Over All Ability』。学生の能力を学校側が客観的に見て数値、アルファベット化したものです。手始めに『1学年』の『Bクラス』を選択して下さい」
『1学年』をタップすると『Aクラス』〜『Dクラス』までのプルダウンリストが現れる。さらに『Bクラス』をタップするとクラスメイト40名分の氏名がずらっと並ぶ。
早速、自分の名前をタップしている生徒も周りには居るみたい。わたしも客観的な評価が気になったため、期待と不安を半々に抱えながら『春宮 天音』の名前を選択する。
??-
1-B 春宮 天音(はるみや あまね)
学力 95(A+)
身体能力 93(A)
機転思考力 81(A-)
社会貢献性 86(A)
総合力 89(A)
??-
538 :
◆yOpAIxq5hk
[saga]:2021/11/13(土) 23:08:05.67 ID:mGptKTHrO
4項目+4項目の総合点が表示される。
これは……いいのかな。Aの上にSとかあるのなら是非狙いたいところだけど。
「うっわ、春宮さんすっごい。全部Aじゃん」
教室前方の方からそんな一言が発せられる。
その言葉には少し恥ずかしいものがあったけれど、ひとつ「そうか」と気が付くことがあった。
このアプリには1年生〜3年生までの全生徒の能力値が登録されている。生徒会の仕事を利用した生徒名簿では氏名と顔写真、所属クラスしか分からなかった。このアプリを使えば誰がどの分野を得意としているかが丸わかりとなる。
そうと決まれば早速─────。
「人の評価を見るのは自由ですが、先に説明を。早く済めば残りの時間は見ていただいて構いませんので、もう少しだけお静かに」
先生の指摘に手先の操作が止まる。
このアプリは今後ずっと携帯に残り続ける。今すぐに確認しなければならないことではない。話を聞きながら目でインプットしていくことも可能だけど、ここは聞くことだけに集中しよう。
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