【安価】ようこそ実力主義の教室へ

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

383 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/05(火) 22:19:31.55 ID:x+YhKm2i0
>>381
 8:Cクラスの教室へ】

 教室に戻ると既に半数程度の人が戻っていた。
 聞こえてくる話題は、やはり特別試験について。
 ルールを理解していない者も多数いるようだった。

「ほら、みんな分かってない。難しすぎだって。投票とか干支ごと発表日が違うとかさぁ」

「みんな戻って来たら再説明するよ。全員の認識合わせと、念のため全グループで同じ説明をされたかの確認ね」

「ほんと助かる! 大好き」

 気軽に抱きついてくる宮野さんと戯れながら席に戻る。視線を廊下側の中央へと向けると、雨宮さんと眼鏡越しに視線が合う。
 干支通り12グループに分かれているため、わたしが介入できる場面は少ない。せめて雨宮さんのグループのメンバーくらいは把握しておきたいところだ。
 携帯で短くチャットを送ると、素早く返ってくる。
 他クラスの生徒は接点の無い人ばかりだが、このCクラスでは望月くんと一緒のグループのようだった。
 彼とは2週間前に少し話したくらいで、彼の力量と底は未だに知れていない。このクラスで唯一すべてが謎の人物だ。
 頼りにしすぎるのは危険かな、と考えていると全員が戻って来たようで、一色くんが先導してルールの再説明を行ってくれる。
384 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/05(火) 22:20:05.09 ID:x+YhKm2i0
 時折、わたしが自席から説明の補足をして一通りの説明を終える。

「〜と、以上が僕たちの受けた試験概要だ。僕たちの受けた説明と違っていた、というグループはあるかな?」

 反応は肯定するものだけだった。
 これで全グループが同じ試験を行うことの裏付けが取れる。
 あとクラスで出来ることと言えば、各グループの内訳メンバーと各クラスの人数を把握すること、そしてメリットもあればデメリットもある期日前投票を避けるように提案することか。
 元よりそのつもりだったのか一色くんが2つを行ってくれる。完璧な進行で、わたしが出る幕もない。こうしてクラスを引っ張って行ってくれると本当に助かる。

「ありがとう。これでメンバーの把握は出来た」

 一色くんは電子黒板に書かれたメンバー表を携帯で撮影し、その写真ををクラスチャットへと送ってくれる。
 他クラスへの流出の恐れもあるが、流出して困るようなものでもない。調べようと思えばすぐに調べがつくことだ。
 ぱっと見、グループ分けには法則性が無いように思える。1グループあたり2人〜4人と、人数はバラバラでも1人だけということは無いらしい。


【コンマ判定
 直感・洞察力:91(優秀) 補正あり
 4・8:気付かない
 その他:気付く(本当に些細なこと)
 ゾロ目:気付く+戦略を思いつく
 下1のコンマ1桁、もしくは2桁でお願いします。】
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/05(火) 22:28:10.38 ID:n26V5qzF0
386 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/05(火) 23:40:21.45 ID:x+YhKm2i0
>>385
 8:気付かない】

 ……うん、特におかしいところは無いかな!
 完全にランダムに決められたように見える。もちろんわたし達『ねずみ組』も、そこに集まった他クラスの生徒も含めて。
 ひとまず明朝の『王様』か『一般人』かの通達を待って、それから考えることにしよう。色々と手を回すのはその後でも余裕で間に合う。
 今のところ、わたしの希望としては『一般人』を希望する。
 まず自分が『王様』でないと嘘をつく必要が無いし、見抜かれるかどうかでドキドキするのが嫌だという至極真っ当な理由で。
 もちろん貰えるプライベートポイントはとても魅力ではあるけどね。
387 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/05(火) 23:40:58.03 ID:x+YhKm2i0

◇◇◇

「あ、神宮くん。待っててくれたの?」

「今日はこっちの方が早く終わったみたいだったからね。いつも待っててくれているんだから当然だよ」

 帰りのホームルーム後、教室の前で神宮くんを見つける。
 このまま生徒会室へ向かうのであればお礼を言うところだが、今日はとある理由で寄り道しなければならない。
 そのためわたしの口から出るのは謝罪だった。

「待っていてくれたところ申し訳ないんだけど、ちょっとこの後予定があってね? 本当にごめん!」

「あぁ、そうなんだ。全然いいよ。じゃあ先に行ってるね」

「ごめんねー」

 教室すぐ目の前の階段を降りていく神宮くんの背中を見送って、わたしは昇降口へと向かう。
 靴を履き替えて向かった先は特別棟の屋上。
 本日2度目の特別棟で、屋上に来るのも2週間近く前に続いて2回目だった。
388 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/05(火) 23:41:27.52 ID:x+YhKm2i0
 屋上へ出ると1人の上級生がしっかりと固定されたフェンス越しに、興味津々といった表情で地面を見下ろしていた。……部活動に励む生徒を上から観察しているのかもしれない。

「先輩、危ないですよ」

「ん。だいじょうぶだいじょーぶ。ここのフェンス、去年度末に設置し直してるからさ。ちょっとやそっとじゃ壊れないよ。試してみる?」

「遠慮しておきます。カメラもありますし」

「そうだねー。ちなみに校内に設置されているカメラを壊したりするとクラスポイントがマイナス200されるって噂だよ。今の3年生と2年生でやった人は居ないと思うけど、何年か前にやらかした人がいるんだって」

「覚えておきます」

 屋上へと唯一繋がる扉近くには、屋上全体を見渡すように260度ほど動き続けている監視カメラがある。
 もしあのカメラの目を掻い潜って悪さをするようなことがあればクラスポイントが減らされるようだ。
389 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/05(火) 23:42:12.73 ID:x+YhKm2i0
 先輩はフェンスに寄り掛かり、数メートルの距離まで近付いたわたしに微笑みかける。

「上手くやったみたいだね、天音ちゃん」

「はい、なんとかなりました」

「わたしは信じていたけどね? で、どうやったの? 平均91点だっけ? 超優秀じゃん」

「これです」

 鞄から取り出した自作の問題用紙を手渡す。
 ざっと目を通した後、乙葉先輩は首を傾げる。

「あれ、最後の問題って変わったのかな。 わたしの時と違うよ?」

「それ、わたしが作った問題用紙です。実際に出た問題はこっちです」

 続いて実際の中間テストの問題用紙を手渡すと、先輩は「あー、これこれ!」と元気よく頷く。

「えーっと、あれ? 聞き間違いじゃなければ、こっちは自作? すっごくよく出来てるじゃん! っていうか凄いしズルい!」

「先輩が意地悪して過去問題を渡してくれなかったので、真っ当に試験対策しただけです」

「……いや、まじかぁ。まさかこんな精度でテスト予想するなんて思わなかったもん」

「次は100%を狙います。今回は90%くらいでした」

「ずっるーい。いいなぁ。3年生の分も作ってよー」

「それは出来ません! 出来たのは1年生の範囲だからです」

「またまたぁ。もう天音ちゃんが3年生で学習するようなことを知っていても驚かないんだからねー」
390 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/05(火) 23:42:54.12 ID:x+YhKm2i0

 実際はその通りだけど、ここでは肯定も否定もせず話を逸らすことにする。

「ところで、1年生に特別試験の案内が出たことについて先輩はご存知ですか?」

「うん、知ってるよ。特別試験には生徒会も絡んでるからね。天音ちゃんと紫苑くんを『生徒会』のグループチャットに入れられないのはそれが理由。この試験が終わったら入れてあげられるよ。特別試験の監督も生徒会の仕事のひとつだからね」

 今回の特別試験には乙葉先輩たちも携わっているらしい。
 あれこれ聞いても答えて貰えるとは思っていないため、ここは何度か頷く程度で済ませておく。
 ここでグループ分け理由とか教えて貰えると楽だったんだけどなぁ。

「まぁ頑張って! 天音ちゃんなら出来るよ。ちなみにわたしの代でも同じ試験をやったからね。船の上で」

「船の上?」

「おっと。聞かなかったことにして?」

「……わかりました」

 と、口では言いつつ、とても気になる。
 船の上でわたし達と同じ試験をやった?
 いいなぁ、船かぁ。
 漁船からクルーズ船、さすがにイカダは船には含まれないか。でも船そのものに興味はある。学校でやるより船の上でやりたかったというのが正直なところ。

「そうだねぇ。じゃあそのお礼と、ちょっと意地悪しちゃったお礼として、答えられることは答えてあげる。とりあえず言ってみ?」

 おそらく今回の試験に関することはダメ。
 無難かつ気になることで言えば……。

【安価です。
 1.毎月、月初でも金欠の理由
 2.3年生のクラスポイント状況・リーダー格について
 3.2年生のクラスポイント状況・リーダー格について
 4.乙葉先輩から見た1年生について
 5.その他(質問出来る・出来ないは判断します)
 6.特に聞きたいことはない
 下1でお願いします。】
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/06(水) 13:03:46.02 ID:oZ/y3PLlO
4
392 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/06(水) 21:45:45.65 ID:c+PYG1Pd0
>>391
 4:乙葉先輩から見た1年生について】

 2粘性や3年生のことも気になるけど、今は目の前の試験の集中するという意味でも他級生から見た我々1年生の印象を訊いておくべきかもしれない。

「乙葉先輩的に、わたしを含めた1年生ってどんな感じですか? 客観的でも主観的でも良いので、教えていただけると嬉しいです」

「お、そんなことでいいの? じゃあ主観的に感じたことをAクラスから順に。まずはAクラスだけど、ここは例年通り優秀な生徒が揃ってると思うよ。勉強も運動も、素行も悪くない。だからこそAクラス配属なんだけどね」

 この学校では入学の段階で学力や身体能力を鑑みてA〜Dへとクラス配属をするらしい。
 必然とAクラスにはレベルの高い生徒が集まり、Dクラスには能力の低い生徒が集まるシステム。
 しかし一之宮くんや一色くん、宮野さんを始めとした大半の生徒において能力の低さは見られない。少なくとも去年の全国模試で2位を取った一之宮くんがDクラスの配属される理由はミスを疑うほどだ。
 考えられることは、単純に学力と身体能力以外でもクラス分けをする基準があること。乙葉先輩も言った通り、素行の悪さもその理由の一つだろう。
393 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/06(水) 21:46:42.87 ID:c+PYG1Pd0
 どうしてわたしがDクラスなのかは置いておいて、学力・身体能力・素行、その他の要素を見てAクラスが優秀であることは間違いない。

「特に気になる生徒は居ますか?」

「んー。あんまり1年生とは絡んでないからなぁ」

 腕を組んで首を左右に傾げた後、先輩は「強いて挙げるとすれば……」と話し始める。

「紫苑くんはもちろんとして、東雲さんは目立つ生徒だなと思ってるよ。あとは槇原さんもね」

 同じ生徒会役員でもある神宮紫苑くん、今日初めて目を合わせた東雲雪菜さん、数回寮のエレベーターで居合わせたことのある槇原由奈さん。
 確かに一際目立つ生徒だとわたしも見ていた。

「どんな学校でもクラスでも、リーダー的な存在って居るじゃない? この学校には無いけど、学級委員的なやつね。今挙げたのは学級委員的な立場の人」

「神宮くん以外とはあまり接点ありませんが、そんな感じはします」

「そっかそっか。だよねー、目立つよねぇ」

 うんうんと頷いた後、「次はBクラスね」と続きを話す。

「惜しくも生徒会役員になれなかった立石くん、超運動が出来ると噂の白城くん、笑顔の可愛い間宮さん」

 ここで特別試験のメンバー振り分けについて気が付く。
 先輩が挙げた6人の内、Aクラスの槇原さん以外が特別試験の『ねずみ組』に属していることを。
394 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/06(水) 21:47:18.13 ID:c+PYG1Pd0
 12のグループの内、自然と1つのグループに割り振られたとは考えにくい。Cクラスの一色くんや宮野さん、Dクラスの辻堂くんと西野さんもリーダー的立ち位置だ。
 あまりにも露骨に固まっている。
 これが故意に仕組まれたものだと認識するのにそう時間はかからなかった。

「Cクラスは一色くん、宮野さん、倉敷さん、そしてそして何を隠そう天音ちゃん。みんなコミュニケーション能力高いよねー。単純にその観点で言えば、倉敷さんが一歩抜きん出てる感じはあるね。上級生にもいっぱい彼女と連絡先交換してる生徒いるし」

「……たしかに」

 倉敷春香さんは勉強も運動も出来て、かつコミュニケーション能力の高さが段違いだ。
 休日のケヤキモールで彼女が上級生や同級生と一緒にいるところを良く見かける。それに見かける度に一緒にいる人が違って、かつ遊んでいる最中でも偶然通りかかった他の生徒と話し込んでいる姿もある。
 6月が終わる頃には全校生徒の連絡先を集めるのでは、と思うほど交友関係を広めている。

「Dクラスは、認めたくないけど辻堂くんかな。特に勉強が凄く出来るわけでも運動が出来るわけでもないんだけど、視点が良いって言うのかな。観察する力とか発想力は学年でもトップクラスだと思う」

 フェンスに寄り掛かかった先輩は、その後むしゃくしゃしたような表情をする。

「でもでも、あの子ちょーぜつ問題児だからね! 天音ちゃんの知らないところで問題を2件起こして、生徒会に持ち込んでるんだから。ほんと迷惑な話だよ」

 4月末に起こした問題は少しだけ聞こえてきた。
 当時Cクラスだった生徒を大怪我させたとかで、Bクラスだった生徒の一人が自主退学する形で収まったという。その一件を引き金に、元BクラスはDクラスまで堕ちた。
395 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/06(水) 21:48:34.95 ID:c+PYG1Pd0

「と、こんなもんかな。わたしから見た1年生は」

「ありがとうございます。参考になりました」

「いいのいいの。ちょっと意地悪し過ぎた自覚はあるからね。……怒ってないよね?」

「もう怒ってないので大丈夫です!」

「ぁ、怒ってたんだ……」

 ほんの冗談混じりに話す。
 一方、良い話を聞けたというのは事実。
 あれくらいの意地悪に対しては大きい情報を貰えた。
 それにプライベートポイントを支払って問題用紙を手に入れる手段を未然に防いでくれたおかげで、お財布事情的には助かっている。むしろお礼をいうのはこちらの方だったかもしれない。

「特別試験がんばりなよー? で、勝ったら一緒にご飯食べよう! わたし予約しておきますから!」

 急に謙って敬語で話す先輩と戯れながら、生徒会室へと向かう。
 今回の特別試験で動向を注目するべきはAクラスの東雲さん、Dクラスの辻堂くんか。特に辻堂くんは何をしてくるか分からない。要注意人物だ。


【イベント安価
 奇数:東雲雪菜
 偶数:翌日
 下1のコンマ1桁でお願いします。
 2桁がゾロ目の場合は今後のコンマ判定やり直しのチャンスを1回獲得です。(現在0)】
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/06(水) 21:54:49.13 ID:VR5Xap3M0
397 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 22:04:12.30 ID:KFWSPOjR0
>>396
 3:東雲雪菜】

 生徒会の業務終了後、生徒会の鍵を職員室に返したところで神宮くんが何か話したげな様子をしていた。
 しばらく向こうから話してくるのを待つ心構えでいたが、昇降口で靴を履き替えたところでこちらから聞いてみることにした。

「わたしに何かお話?」

「ぁ……うん、実はね。凄いな、分かっちゃうんだ」

「結構バレバレだったよ? 『王様』になったら一発で分かっちゃうタイプだね」

「それは勘弁して欲しいな…」

 この1ヶ月間で神宮紫苑くんという生徒についてはクラスメイト以上に分析することが出来た。
 得意なこともなければ不得意なこともない、初対面で話した時に彼自身が言っていた通り普通を体現したような男の子だ。
 一見、能力の低い子かと思いきや、何でも普通程度にこなせてしまうのはとても羨ましい。わたしが不得意な調理や音楽もそつなく平均的にこなすのだろう。
 そんな彼が唯一苦手としていそうな事を見つけた。
 良くも悪くも嘘をつく、隠し事をするのが苦手なようだ。
398 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 22:04:43.95 ID:KFWSPOjR0
 もうこの段階からわたしを欺くための演技が始まっているとすれば本当によく出来ているけど、恐らくそれは考えすぎだ。

「実はね、Aクラスの東雲さんが春宮さんに会いたいみたいなんだ。この後、19時30分からなんだけど…」

「うん、大丈夫だよ。30分後だね」

 現在は19時前。今夜は夏帆先輩のお料理教室の日でなく、勉強会もひと段落着いた。
 ケヤキモールで少し買い物をしてゆっくり帰ろうと思っていたところのため、このお誘いを断る理由もない。それに話してみたかったというのもある。

「場所はケヤキモールの入り口。もう居るみたいだから、出来れば早めに着いて欲しいなって」

 それなら尚のこと早めに言い出して欲しかった。
 集合時間まで時間があるとはいえ、このまま律儀に30分も待たせる訳にはいかない。

「じゃあ行こっか」

「あ、ううん。僕は行かない……というか、行けないんだ。春宮さん一人で来て欲しいって」

「そっか、わかった。じゃあこれから行くって伝えて貰える? 5分、10分で着くと思うから」

「もちろん。東雲さんは分かる?」

「今日会ったばかりだからね。大丈夫だよ」

 クラスメイトの神宮くんを経由するにも関わらず、彼を外してわたしだけを呼んでいる。
 明日から始まる特別試験の事だとすれば、一緒に行った方が良さそうなものだけど…。
399 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 22:05:23.90 ID:KFWSPOjR0
 とりあえず向かってみることにし、神宮くんと別れてケヤキモールの方へと向かう。
 期待半分、怖さ半分といったところか。
 どちらにせよ、どんな話が出来るのか楽しみだ。
400 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 22:05:52.11 ID:KFWSPOjR0

◇◇◇

 東雲雪菜さんは良く目立つ。
 腰まで伸びた黒髪は手入れが行き届いていて、手足はスラっとガラスのように細く、儚げな雰囲気を纏っている。それでいて肌が真っ白なのだから、まるで和人形のような印象を受ける。
 そんな彼女が綺麗な佇まいでケヤキモールの出入り口から少し離れたところで待っていた。特に携帯を触ることも、星を眺めることもなくジッと。
 つい携帯を取り出して一枚撮影したい気持ちを抑えて近付き、声を掛ける。

「ごめんなさい、お待たせしましたか?」

「いいえ、待っておりません。本日は生徒会の業務後にも関わらずお越しいただきありがとうございます」

 恭しく一礼をされ、わたしもしどろもどろにお辞儀をする。ここまで謙られるとこちらも恐縮してしまう。

「お時間は取らせません。あちらでお話できますか」

 そう言って視線を向けたのはケヤキモール近くの休憩所だった。
 花壇に囲まれたそこは、ケヤキモールで購入したものをあの場所で飲食する生徒が多く見られるスポットだ。しかし今は時間帯もあって利用者が見られない。少し話すだけなら絶好の場所だろう。
401 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 22:06:23.85 ID:KFWSPOjR0
 わたしは頷き、休憩所へと移動する。
 3人掛けのベンチに1人分のスペースを開けて座ると、東雲さんが小さな口を開いて話し始める。

「春宮様とは一度お話させていただきたいと、失礼ながらずっと思っておりました。今回の特別試験にあたり、こうしてお話させていただく機会があって非常に喜ばしく思います」

「そ、そうですか。ところでその、敬語というのは……一応、同級生ですし。もう少し砕いてもよろしいのではないでしょうか」

 と、言っている自分も釣られて言葉が怪しくなる。
 これでは説得力がカケラも無い。
 彼女は一切表情を変えることなく、淡々と話す。
 感情が無いように、ただ義務的に。

「ご無理はなさらないで下さい。わたくしは、昔からこのような話し方なのです。ご不快に思われたのであれば、申し訳ありません」

「いえ、そういう訳ではありません……!」

 しっかりと頭を下げる東雲さんに頭を上げるよう促し、心を落ち着けるためにも座り直す。
 東雲さんってこんな感じの人なんだ…。
 かなり礼儀正しい人だとは聞いていたけど、ここまでとは想像していなかった。

「春宮様、単刀直入に本題を申し上げます。もしよろしければ、わたくしとご連絡先を交換していただけますでしょうか」

「連絡先? はい、もちろんですっ」

「ありがとうございます」

 携帯を取り出し、連絡先を交換する。
 要した時間は30秒にも満たなかった。
402 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 22:07:14.33 ID:KFWSPOjR0

「本日はお忙しい中、ご足労いただきありがとうございました。要件は以上となります」

「あ、もういいんですか?」

「はい。幸い、わたくし達は『ねずみ組』あと13時間もしないうちに通達があります。お話させていただく機会はこれから存分にございます」

 試験開始前から協定を結ぶよう提案があるかと身構えていただけに、連絡先を交換しただけでお開きというのはやや意表を突かれた結末だ。
 それでも連絡先を交換できたのは大きい。
 神宮くんに続き、東雲さんとも連絡が取れるようになった。これは『ねずみ組』における特別試験では良い方向に事を運べるだろう。

「改めまして、本日はお疲れのところありがとうございました。こうしてお話できて大変嬉しく存じます。明日より、またよしなにお願い致します」

「こちらこそありがとうございました。明日から2週間、一応敵同士ではありますが、お手柔らかにお願いします」

 立ち上がり、お互い深々と頭を下げる。
 内心、高校一年生でするようなことじゃないなと思いながらも、3秒、5秒と経過した頃に頭を上げる。
 目の前の東雲さんはわたしが戻って1秒後に頭を上げた。
 なんだかどちらが先に頭を上げるかで勝負をしていたような気もするが、おそらく彼女とは平行線の勝負になる気がする。無意識の内に頭を上げてしまった自分を責める必要は無い。
403 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 22:07:43.39 ID:KFWSPOjR0

「それでは、わたくしは寮に戻ります。春宮様もどうか夜道をお気を付けて。お誘いした身で申し上げにくいのですが、学校の敷地内とはいえ淑女が夜に外出するのは褒められた行為ではありませんからね」

「ご丁寧にありがとうございます。早めに帰宅することにします」

 東雲さんが受けてきた教育は、おそらく名家の子女のそれなのだろう。
 言葉遣いもそうだが、特に背筋の伸び方や歩き方がそれっぽかった。映画で観たことのある、頭の上に本やティーカップを乗せて歩いた経験とかありそう。ちょっと気になるため、明日以降に機会を伺って聞いてみよう。

「……買い物して帰ろ」

 まだそう遅い時間ではないけど、ああ言われてしまっては夜遊びも出来ない。するところもないけどね。
 帰ってご飯食べて、食後の運動として頭の上に本を乗せて歩いてみようと決心して休憩所から移動することにした。
404 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 22:08:24.47 ID:KFWSPOjR0

◇◇◇

 翌朝。特別試験開始の日。
 わたしは5月1日以来、早めに登校した。
 時刻は7時50分と、『ねずみ組』の通達を10分前に控えた頃に自席に着く。
 早めにきた理由は特に無いが、なんとなく心構えはしておきたかった。
 本当に厄介なことに、こういう時の10分の1の『王様』は割と引ける。おそらく10分の3くらいはあると思っている。しかも3割なんてほぼ50%みたいなものだし、悪い方の2分の1なんて引くに決まっている。
 つまり、わたしは『王様』になる自信があった。
 さてさて、一体どうなるものか……。

【コンマ判定で『王様』か『一般人』か決めます。
 単純に10分の1でやってもつまらないので、2分の1で『王様』とします。

 奇数:一般人
 偶数:王様
 ゾロ目:コンマ判定やり直し権利1回獲得
     当該コンマ判定は下1桁で決定
 下1のコンマ1桁でお願いします。】
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/07(木) 22:23:54.09 ID:8dPtq1Cq0
406 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 23:38:13.91 ID:KFWSPOjR0
>>405
 9:一般人】

 8時ちょうどに1通のメールが届く。

『厳正なる調整の結果、あなたの役職は『一般人』に決まりました。グループの一員として、自覚を持って行動し試験に臨んでください。また、ねずみ組の集合場所は特別棟の視聴覚室になります。』

 どうやらわたしは『一般人』らしい。
 危惧していた『王様』にはならなかった。
 これで一安心して、これから2週間かけて『王様』探しに集中できる。

「……」

 通達メールを再度読み返していると、教室前方の扉が開く。
 望月くんだった。彼は一度わたしの方を見た後、自席に鞄を置いて、わたしの方へ向かってくる。

「おはよう、望月くん」

「うん、おはよう春宮さん。『ねずみ組』のメールは来た?」

「ついさっきね」

 『王様』でない以上、隠す意味は無いと、望月くんへ携帯の画面を向ける。
407 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 23:38:54.52 ID:KFWSPOjR0
 メールを読み終えると、彼は微笑んだ。

「そっか。王様にはなれなかったんだね」

「額の大きいポイントは欲しいけど、追われない身っていうのは楽だからラッキーだと思ってるよ」

 『王様』の場合、最大で貰えるポイントは200万。
 『一般人』の場合、最大で貰えるポイントは50万。
 その差は歴然で、誰もが出来ることなら200万ポイントを懐に入れたいと考えると思う。
 ただバレないように立ち回るリスク、信頼し合えると思ったグループ間で解答を一致させるための労力を考えると誰もが『王様』になりたくないと考える。
 わたしもその一人で、この結果には安心している。

「そうだね。特に『ねずみ組』は今日から8回も話し合う機会があるんだから、隠し通すことは他のグループよりも難しいはず。今頃、当人はヒヤヒヤしてるんじゃないかな」

「そうかもしれないねー」
408 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 23:39:41.57 ID:KFWSPOjR0

 『ねずみ組』の件は、宮野さんと一色くんと協力してどうにかするとして…。
 ちょうど望月くんとは、望月くんのグループの件で話したいと思っていたところだ。ちょうどいい。

「望月くんは『いのしし組』だっけ」

「よく知っていたね。そうだよ、僕たちは『いのしし』だ。最後の組になるね。つまりシンキングタイムはたった1日、たったの1回ということになる」

 干支における最後は『亥』。つまり『いのしし』。
 本日19日より干支順で毎朝8時にこうしてメールで通達されるため、『いのしし』は11日後の30日となる。その翌日は31日は投票日のため、話し合う機会は当日の6時間目しかない。
 『王様』になれば隠す機会が少なく有利に、『一般人』になれば見つけ出す機会が少なく不利となる。
 このDクラスからはわたしの友人である雨宮さんと、目の前の望月くんが選ばれている。そのどちらもが『王様』になる可能性を有しているとして、何か策を考えておいた方が良いか。
 と、そんなことを考えていると。

「僕たちの方は心配しないでいい」

 望月くんが窓の外を覗いてそう言った。
 先日、ドラマのシーンを再現するという黒歴史的な行為を行ったばかりだが、近頃放映されたドラマでこのようなシーンは無かった。完全なオリジナルか、演技では無い素か。
409 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/07(木) 23:40:12.48 ID:KFWSPOjR0
 なまじ先日の件が頭に残っていて、口から出る言葉が引っ張られそうになる。

「信じてもいいの?」

「もちろんだよ。こんなところで躓くわけにはいかない。それにさっき見せて貰ったメールで確信した。この試験はランダムではないってね」

 わたしもメールの冒頭が気になっていた。

『厳正なる調整の結果、あなたの役職は『一般人』に決まりました。』

 『厳正なる抽選』ではなく『厳正なる調整』。
 これは学校側が適当に選んだ場合は用いられない文言。何らかの意図があって選択をした。そう確信して相違ないはず。

「参考になったよ。ありがとう。また近々に話をさせてくれ。きっと君にとってプラスになるはずだよ」

「うん、楽しみにしてる」

 手を振って、彼は自席へ戻って行く。
 相変わらず普通に接しやすい男子生徒に見えて、力量を伺わせてこない。
 雨宮さんを任せられる人物なのか、少し吟味する必要がある。あと10日以内には『いのしし組』の方針も定めたいところだ。


【イベント安価
 奇数:食堂
 偶数:視聴覚室
 ゾロ目:コンマ判定やり直し権利1回獲得(現在0件)
     当該コンマ判定は下1桁で決定
 下1のコンマ1桁でお願いします。】
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/08(金) 01:36:19.41 ID:YcPkMFHbo
はう
411 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/08(金) 21:59:45.78 ID:XsHRxl5v0
>>410
 1:食堂】

 お昼休み、わたしは同じ『ねずみ組』の一色くんと宮野さんに誘われて学食に来ていた。
 テスト期間は教室でサンドイッチを食べる生活が続いていたため、こうして温かいご飯を食べられるのは嬉しい。
 高揚感いっぱいに券売機で和食Aセットを選択して受付で食事を受け取った後、3人で空いていた席に座る。

「先輩たちは我関せずってかんじだよねー」

 宮野さんの言葉通り、上級生が固まる席から『特別試験』という単語は聞こえてこない。
 また休み時間に聞いた話では、それぞれ水泳部とバスケットボール部の先輩に話を聞いてみたそうだけど、有力な情報は得られなかったらしい。学校側が下級生への試験対策の告げ口を禁じているものだと想像がつく。

「ちなみに生徒会的にはどうなの?」

「頑張って、って応援はして貰えたよ。先輩たちの時はどうだったとかはノータッチ」

「だよねぇー。ま、なんとかするしかないか」

 幸か不幸か、『ねずみ組』の『王様』はCクラスのメンバーから選出されている。
412 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/08(金) 22:00:17.93 ID:XsHRxl5v0
 つまりわたし達はこの3人の中で協力をし合い、『王様』であることを隠し通せばいい。あるいは、嘘をついて『一般人』のわたしへ期日前に投票させるか。そのための作戦はいくらでも湧いて出てくる。

「とりあえず6時間目の授業で話し合いだね。誰が『王様』なのか、見つけられるように頑張ろう」

 クラス内でも学食でも、『王様』であることを明かして貰った時はノーリアクションを貫いている。
 クラス内で誰が『王様』なのかを周知することは、即ち話し合いの場を持たずとも敗北を意味する。そのため『王様』のメールの文面を見せて貰ったとき、内心では「おお」と思いながらも、「8回の話し合いの場で見つけれるように頑張ろう」と前向きな発言をしておいた。
 今のところ『ねずみ組』の『王様』が誰かを知るのはわたし達3人のみ。なんとか隠し通して全員で投票期日を迎えたい。


【コンマ判定
 奇数:Aクラス
 偶数:Dクラス
 下1のコンマ1桁でお願いします。】
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/08(金) 22:39:52.30 ID:C3KmwCt90
414 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/09(土) 22:36:47.30 ID:kNZzxQKH0
>>413
 0:Dクラス】

「てかさ、そろそろ久しぶりに水泳部来てよー。麻倉部長も春宮さんは大歓迎って言ってるしさー」

「試験終わったらお邪魔するね」

 特別試験の話題を中断し、楽しく雑談しながらの昼食を終えようとした時、背中にぞくりとした視線を感じる。
 これは、あれだね。
 思い当たる節に、心の中で重い溜め息を吐いて振り向くと、例によって彼がそこに居た。今回は3人の取り巻き付きで。

「よう天音。どうだった?」

「どうもしません。わたしが『王様』でしたよ。結果3もしくは4をお望みなら、早く投票してください」

「なるほど『一般人』だったか」

 ち。
 生まれて初めて舌打ちをした。もちろん心の中で。
415 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/09(土) 22:37:17.46 ID:kNZzxQKH0
 彼と関わるくらいなら早めに試験を終わらせたい。
 特に今回の場合、『ねずみ組』の『王様』がCクラスに居るため、結果4の投票期日前の投票で解答が誤っていた場合が最も望ましい。


 結果4:13日後の投票日の前日、つまり12日後までに『王様』を突き止めて解答を行い誤った場合、『王様』は50万プライベートポイントを獲得し、解答者のクラスから“50”クラスポイントを貰える


 無事投票日を迎える結果1もしくは2よりも貰えるプライベートポイントは少ないものの、クラスポイントを貰えるのは大きい。
 50クラスポイントは5000プライベートポイント相当。つまりクラス40人全員でその恩恵を受けることが出来れば、それだけで20万円プライベートポイントと大きな額になる。

「辻堂くん、春宮さんとは試験の話をしに来たのかな?」

「お前には関係ねぇよ、黙ってろ一色」

「そういうわけには─────」

 向かいに座っていた一色くんが彼を退かせようとしてくれたけど、あえなく一蹴されてしまう。
 これ以上の口論になる前に、わたしは一色くんと目を合わせて制止させる。
416 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/09(土) 22:37:56.71 ID:kNZzxQKH0

「クク。随分と手懐けてるようだな、天音。その調子で1000万頼むぜ? 少々出遅れたが、俺たちも予定通り1000万稼ぐ。今回の特別試験は稼ぎ時だからなぁ」

「その話には乗りません。で、何のご用ですか?」

「知らない仲じゃないんだ。見かけたら話しかけるのは当然だろ?」

 入学して2日目、早見さんとケヤキモールでお茶していたところで割り込んで来たのは何処の誰だったか。
 その話を振るとまた長くなるため、席を立つ。

「そろそろ教室に戻ろっか」

 一色くんと宮野さんの方へ向かって、そう言うと彼らは頷いてくれて、済んだ食器が乗ったおぼんを手に取る。

「てめぇ、無視してんじゃねーよ」

 取り巻きの一人、宇垣くんがわたしの肩を掴む。
 避けるのも振り解くのも容易に出来たが、あえて掴まることでこの場を去るための正当な理由が出来た。

「一度だけ言います。はなして」

「……ッ」

 視線を逸らし、肩を掴んでいた手が退く。
 改めておぼんを手に取り、返却口へと向かう。

「せっかく一緒の組になったんだ。少々外野がうるさいが、じっくり楽しもうぜ?」

 後ろの方からそんな声が聞こえた。
 わたしがDクラスと繋がっている、と根も葉もない噂が出回る前に手を打った方が良さそうだ。
 差し当たってはこの特別試験でDクラスに対して完全勝利を収めたいところ。その中でも『ねずみ組』の勝敗は譲れない。
 5月1日から中間テストのため頑張ったつもりだったけど、もう少しだけ頑張る必要がありそうだなぁ。
417 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/09(土) 22:38:33.28 ID:kNZzxQKH0

◇◇◇

 6時間目の学級活動の時間。
 昨日の説明にあった通り、わたしと一色くんと宮野さんの『ねずみ組』は今日から試験開始となる。
 話し合いの場である特別棟の視聴覚室へ赴き、授業開始の合図と共に周囲の様子を伺う。
 昨日と同じ席にみんな座っていた。そしてみんな周りの出方を伺っているらしく、30秒が経過した頃、この張り詰めた空気に耐えきれないとばかりにBクラスの白城くんが立ち上がる。

「まずは自己紹介か? つっても学年の中でも有名人ばっかだからなぁ。お互い名前くらいは知ってるよな?」

「いいえ。わたくしは白城様のご意見に賛成です。ここは改めて自己紹介と致しましょう」

 Aクラスの東雲さんが白城くんの意見に賛同する。
 そしてAクラス神宮くん、Bクラス立石くんと続々賛同の声が上がり始める。当然、わたしたちCクラスも賛同した。
418 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/09(土) 22:39:06.54 ID:kNZzxQKH0
 興味なさげにしていたDクラスの辻堂くん以外は賛同する形となり、簡単に挨拶をしていく。と言っても出身中学や趣味特技などは話さず、所属クラスと氏名を名乗るだけで淡々と進められた。

「あとは辻堂様だけになりますが」

「今更必要か? 東雲」

「わたくしのことは苗字でお呼びになるのですね。春宮様のことを下のお名前で呼んでいらっしゃるのは何か理由があるのでしょうか?」

「そいつは気に入ったからだ。だが、お前は違う」

「それは失礼いたしました。わたくし自身、思い上がっていたようです。確かに春宮様はとても優秀ですものね。手駒にしたいという気持ちは分かります」

「生憎だが、俺が先約を入れてるんだ。その後にして貰おうか?」

 どうしてかAクラス東雲さんとDクラス辻堂くんがわたしのことで言い争っていた。
 わたしのことで争うのはやめて、という台詞はこういう時に用いられるのだろうか。
 そもそも、わたしは現在のCクラスのみんなとAクラスに上がりたいと思っているため、そのどちらの願いも承諾できないのだけどね。
 しばらく他の誰も2人の間に割り込めずにいると、必然と矢は私の方へと向かってくる。

「当人の春宮様にお伺いしましょう。春宮様はAクラスとDクラス、どちらに着きますか?」

 この試験はクラス間の戦いとなる。
 そのため自分の所属しているCクラス以外に着くつもりはないけど……。
 ただ、考え方を変えてみるとこの返答は重要になる。
 もしここでAクラスに着くと言っておけば、Aクラスと協力関係が築けるかもしれない。一方、Dクラスに着くと言っておけば敵の懐に入り込めるかもしれない。
 どう答えるのも抵抗感があるけど、ここは…。

【安価です。
 1.「どちらかと言うと、東雲さんのAクラスかなぁ」
 2.「間をとってBクラス……的な?」
 3.「わたしはCクラス以外の味方にはなりません」
 4.「……どうしてもって言うならDクラスに着いてもいいよ?」
 下1でお願いします。】
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/10(日) 22:10:42.01 ID:3NV237qco
悩みますね
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/10(日) 22:12:29.61 ID:3NV237qco
3で
421 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/11(月) 22:19:19.30 ID:ZiOBOz660
>>420
 3.「わたしはCクラス以外の味方にはなりません」】

 ……ううん、これについては最初から決まっている。
 今回の特別試験はクラス対抗。どこかのクラスと協力する必要は無い。というより、下手に信用して足元を掬われる結果になったとき目も当てられない。
 Cクラスの完全敗北を避けるためにも、ここはフラットな意見を貫こう。

「わたしはCクラス以外の味方にはなりません」

「……失礼いたしました。同級生になって2ヶ月も経たず、正式に顔を合わせて1日2日で信頼関係なんて築けるはずがありませんでした。ましてやクラス対抗となれば、尚更ですね」

「ま、当然だな」

「……」

 Aクラスの東雲さんが丁寧に腰を折って謝罪、Bクラスの立石くんが大きく頷き、Dクラスの辻堂くんが内心で舌打ちするようにと各々反応を見せる。
 ひとまずわたし関連の話は落ち着き、東雲さんと辻堂くんの言い合いも一段落ついた。
 辻堂くんの自己紹介もこの一連の流れで有耶無耶となったが、自己紹介そのものの必要性が低かったため気にする必要はない。
422 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/11(月) 22:19:53.14 ID:ZiOBOz660
 さて、この後は……。

「正直に『王様』は手を挙げてください、と言っても挙げるはずありませんよね。メールを見せ合うというのもつまらないですし、ここはゲームで過ごすことにしましょう」

 気を取り直した東雲さんが明るく提案する。
 『王様』を抱えるCクラスとしても、特別試験について話し合うよりもゲームをしていた方がボロが出る心配が少ない。
 辻堂くん以外の合意のもと、神宮くんが学校に対してトランプやジェンガを持ってくるようにメールで伝える。
 5分後、視聴覚室へやって来た教師と思しき大人からその2つを受け取ると、早速どちらで何をして遊ぶか話し合いが始まる。

「ただ普通にやってもつまらないので、何か賭けませんか?」

「……そうだな。じゃあ1日1戦、最下位が正直に『王様』か『一般人』を言うってのはどうだ?」

「それは素晴らしいアイデアです。話し合いの場は今回も含めて8回。この場には12人いるので、毎回最下位が異なれば3分の2の正体が分かる訳ですね」

 この場合『王様』を最下位以外にするため、わざと負けるという選択肢も出てくる。
 しかしわざと負けるということはCクラスに『王様』が居ると安易に伝えるようなもの。そうなればわたし以外の2人の内、2分の1で『王様』を言い当てられてしまう。
 かと言って、もう乗り気なみんなを引き止めることも出来ず。『王様』を抱えるクラスは何かと気を遣い過ぎなければならない。この先の2週間、胃が痛くなる日々が続きそうだった。
423 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/11(月) 22:21:06.53 ID:ZiOBOz660

【今後4回の行動で以下@〜Bを達成する必要があります。
 ゾロ目の場合は行動1回獲得です。
 @『ねずみ組』の『王様』について隠匿(コンマ判定1回 暴かれる可能性あり)
 A他クラスの『王様』について調査(コンマ判定 最低2回、最大3回)
 B雨宮綾香・望月慎也の『いのしし組』について対策を話し合う(A完了後、1回実行の必要あり)
 C試験外で人と会う(優先度低)

 まず@『ねずみ組』の『王様』が暴かれないことについてコンマ判定を行います。
 コンマ1桁が4・9以外で暴かれることがありません(下1桁が4もしくは9でもゾロ目の場合は隠匿成功)。
 下1でお願いします。】
 
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/11(月) 22:58:59.12 ID:gMqbKiM50
425 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/12(火) 01:27:43.85 ID:FVjXptvb0
>>424
 2:『ねずみ組』の『王様』について隠匿成功】

 5月19日、特別試験初日の勝負はBクラス間宮志穂さんがババ抜きで負けたことで決着が付く。
 当然、彼女は『一般人』だった。
 少し誤算だった事として、口頭による自己申告と携帯に届いた通達メールの2つで念入りに確認という流れを彼女が作ってしまった。従って、次回以降も当然の流れとして通達メールを見せる事になる。
 当然と言えば当然の流れだけど、これは『王様』を抱えるわたし達としては口頭での嘘で誤魔化せないというデメリットがある。なんとしてでも残り7回ある会合の場であの人を負けさせる訳にはいかなくなった。
 ひとまずは今日、無事に乗り切れたことを喜ぶべきなのかもしれない。明日と明後日は休日だし、特別試験のことは忘れて遊んだり休んだりしよう。

「そうと決まれば…」

「ん、なんか言った?」

「あ、ううん。なんでも。疲れたねー」

 今日はまだ生徒会の仕事も残っているけど、作業量としてはそれほどでもない。
 一方、特別試験の監督役も生徒会の仕事の内だと言っていた先輩方は、今思い返してみると最近慌ただしかったように思える。この特別試験に向けて準備を進めていたのだろうか。
 わたしも生徒会の一員として、今回の特別試験が終わった後でその業務に就くことになる。監督役として各学年で行われる試験内容について知れるのは役職特権として喜ぶべきことのはず。
 今回はプライベートポイントやクラスポイントの変動だけだけど、中間テストで赤点を取ったら退学と言い始める学校のため、特別試験においても成績が振るわなかった生徒は退学という処置もあるかもしれない。その対策が事前に練られるのはとても良い。
 明日以降の休日と得した気分を胸に、わたし達は教室に戻る。
426 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/12(火) 01:28:15.42 ID:FVjXptvb0

【5月20日(土) うし組 通達の日
 うし組の通達の日ではありますが、休日のため会合の場はありません。
 行動回数の消化なしで自由行動を行います。

 1.人と会う
   1.早見有紗(前の席の女子生徒)
   2.宮野真依(クラスをまとめる水泳部の女子生徒)
   3.一之宮重孝(隣の席の勉強が出来る男子生徒)
   4.一色颯(クラスをまとめる男子生徒)
   5.神宮紫苑(Aクラスの男子生徒)
   6.花菱乙葉(信頼のできる…? 3年生の女子生徒)
   7.如月深雪(信頼のできる3年生の女子生徒)
   8.四条夏帆(信頼のできる3年生の女子生徒・選択に応じて料理スキルアップ)
   9.雨宮春香(信頼のできるクラスメイト・選択に応じて音楽スキルアップ)
  10.東雲雪菜(Aクラスの女子生徒)
 2.寮で1人で過ごす(料理の本を読む、自己学習など)
 3.ケヤキモールへ(安価で出会う人を決定)

 1.人と会う場合は「1-10」のようにお願いします。
 下1でお願いします。】
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/12(火) 09:01:52.91 ID:2erpX6as0
1-8
428 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/12(火) 23:21:52.80 ID:FVjXptvb0
>>427
 1-8:四条夏帆(信頼のできる2年生の女子生徒・選択に応じて料理スキルアップ)】

 5月20日、土曜日。特別試験2日目。
 一色くんから『うし組』の『王様』がCクラスには居ない報告を受けたのが30分前。わたしは9時50分に私服に着替えて2年生の寮の前で夏帆先輩を待っていた。
 中間テストを終え、ケヤキモールで羽を伸ばそうとする先輩方とすれ違い、目が会う度に会釈をしていると、いつ間にか手元には5つの飴玉が握られていた。

「……」

 これは可愛がって貰えている認識でも良いのかな?
 なんだか3年生の間ではわたしは厄介者として扱われているようなので、こうして貰えると嬉しい。
 日向から日陰へと移動して携帯でネットニュースを見ていると、

「お。お前、1年の春宮だろ?」

「そう…ですけど。えっと、化野先輩、ですよね?」

 身長180cmはありそうな2年生の男子生徒、化野伊吹先輩に声を掛けられる。
 下ろせばやや長い黒髪をオールバックにして、背の高さが際立つお洒落な服を着ている姿はとても様になっている。
429 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/12(火) 23:22:25.76 ID:FVjXptvb0
 化野先輩は一度大きく頷き、

「誰かと待ち合わせか?」

「5分後に四条先輩と待ち合わせをしています」

「あー、あの女か」

 先輩の顔が曇り、視線は遠いところへ向けられる。
 その表情から読み取れるものは色々あるけど、少なくとも好意的な意識は欠片も存在していない。残ったのは憤りや妬みといった負の感情だった。
 申し訳ないけど、この人とは長話をするだけ損だと自分の中ですぐさま折り合いを付ける。

「すみません、ついさっき連絡があって、5分後に別の場所で集合になったので失礼します」

 頭を下げてその場を立ち去る。
 一歩、二歩とケヤキモールとは逆の方向に進んだとき、先輩方の声が聞こえてくる。少し離れた場所で待っていた同級生と合流したようだ。

「今の、例の1年ですよね?」

「あぁ。あの裏切り者と待ち合わせしてるんだとよ」

「……チッ。あの女とですか」

「生徒会繋がりだろうよ。新汰の手駒かもなぁ」

 わざとわたしに聞かせてるのか? って思うほどの声量で話す声はしっかりと聞こえて来た。
 話に出て来た『裏切り者』とは、話の流れからして夏帆先輩のことで間違いない。

「……」

 この学校の仕組み上、『裏切り者』と呼ばれることは少なくないと思う。
 例えば今回の特別試験においても、わたしが『ねずみ組』の『王様』を他クラスに密告すれば、それはもう『裏切り者』となる。
 夏帆先輩がどのような経緯でそう呼ばれることになったのかは分からないけど、ひとまず話半分で耳にしたという程度に留めておこう。
430 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/12(火) 23:22:54.18 ID:FVjXptvb0

◇◇◇

 化野先輩達がケヤキモールの方へ向かったことを確認して、わたしは改めて2年生の寮の前へ赴く。
 すると夏帆先輩はもう待っていて、笑顔で手を振って来た。
 わたしは頭を軽く下げて近付く。

「すみません、お待たせしましたか?」

「いいえ、大丈夫ですよ。私も今さっき来たところですから」

 柔らかく微笑んでくれる先輩と合流して、わたし達もケヤキモールへ向かう。
 今日の予定はノープラン。昨日の生徒会の仕事終わりに誘って、二つ返事でオーケーを貰えたところ。
 何をしようか……。


【安価です。
 1.家で料理
 2.映画館
 3.ショッピング
 4.カフェ
 下1でお願いします。】
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/13(水) 07:36:50.68 ID:IYdT+m1Oo
3
432 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/13(水) 22:21:19.41 ID:vXrKmZ+x0
>>431
 3:ショッピング】

 ケヤキモールへの道中でふと、夏服を所持していないことに気が付く。
 ここに来てから購入した私服といえば春物ばかり。着こなしによっては夏でも使えないこともないけど、特にポイントに困っていることもないし、それに年頃の女性としても少ない衣類を年中着回し続けるのにも抵抗があった。
 夏物の服を揃えたいという希望はすぐに承諾して貰えた。

「とりあえず見て回ってみましょうか」

「はい!」

 ケヤキモールには何十というブランドのお店が並んでいる。店頭に置いていない物でも通販を利用すれば最短2日で届く。
 本格的な夏を前に、一式揃えるのは今からでも十分に間に合う。今全てを揃える必要もなく、気に入った物だけを必要なだけ買うことにしよう。
433 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/13(水) 22:21:46.59 ID:vXrKmZ+x0
 そう意気込んでお店を次々と回る。

「落ち着いたお洋服の方がお好きですよね?」

「そうですね。派手目なのはあまり経験が無いです」

「似合うと思いますけどねぇ。演劇部に色々な衣装がありますので、利用してみては如何ですか?」

「演劇部に? でもそれって舞台用ですよね?」

「1つ上の先輩にコスプレって言うんですか? そういった衣装が好きな方が居て、卒業のときメイドさんの服とか寄贈していましたよ」

「……わたしには似合いませんっ」

「そんなことないですよ! 絶対に似合います!」

 と言ったやり取りをしながら。
 メイド服かぁ。演劇には興味あるけれど、少しだけ抵抗感があるのは特に変なことじゃ無いと思う。
 タイミングを見つけて衣装を見るだけでもお邪魔してみようと考えていると、気になった広告を見つける。

「先輩、これ」

「あ、クイズ大会? 四半期に1回くらいやってるイベントですね」

 ペアで参加、参加費は2000プライベートポイント。
 全30問によって構成されるクイズで点数を競い、1位〜3位まで順位に応じた額の商品券が配布される。また、参加賞としてモール内のカフェで使用可能なドリンク交換券が貰えるらしい。
434 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/13(水) 22:22:21.49 ID:vXrKmZ+x0

「先輩は出たことありますか?」

「ううん、私こういうの得意じゃないから。雑学とかが中心に出たかな。そういうのに自信がある人なら、多分学年関係なく良い線狙えると思うよ?」

 参加費は2000ポイント。
 1位を取れば15000ポイント分の商品券。
 2位を取れば10000ポイント分の商品券。
 3位を取れば5000ポイント分の商品券。
 その点だけでも十分に魅力的。
 それに参加賞のドリンク交換券だけでも1000ポイント分は還元される。つまり入賞できなくてもマイナス1000ポイントほど。参加しても痛手は小さい。
 ……やってみようかな?


【安価です。
 1.「先輩、一緒にやってみませんか?」
 2.「わたしもちょっと自信ないので、やめておきましょうか」
 下1でお願いします。】
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/13(水) 22:25:55.30 ID:NNJsY/gs0
1
436 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/13(水) 23:11:06.60 ID:vXrKmZ+x0
>>435
 1.「先輩、一緒にやってみませんか?」】

「先輩、一緒にやってみませんか?」

「えぇっ?」

 興味半分、夏服を購入するための資金の足しにもなりそうという理由で、わたしは提案する。
 先輩は自信なさそうにしながらも、コクリと小さく頷いてくれた。

「でもでも、本当に私、力になれないよ?」

「大丈夫です。気楽にやりましょう! わたしも戦力になれるかは不安なので」

 と口でいいつつ、わたしは胸の奥にギラギラとした気持ちを昂らせる。
 他の参加者には申し訳ないけど、勉学はもちろんのこと、雑学に関しても自信がある。わたし達が優勝する。そして超お得に買い物をしてみせる……!

「申し込みに行きましょうか」

「天音ちゃん? ちょっと目が怖いですよ……?」

 先輩の手を引いて会場へ赴く。
 1000ポイントずつ支払い、受付を済ませる。
 イベント開始時刻は12時。周囲の生徒の数からして、かなりの出場組数になりそう。ただ参加する人数を気にしても仕方がない。敵となる人の姿を気に留めても意味がない。
 受付を済ませたわたし達は、改めて夏服の物色に出る。

437 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/13(水) 23:11:39.92 ID:vXrKmZ+x0

◇◇◇

「あれあれ。夏帆ちゃんと天音ちゃんだー。ふふふ、何してるかは聞かないよ? でも分かるよね?」

 11時50分。
 改めてイベント会場を訪れたわたし達は、乙葉先輩に出会う。表面上はいつもと変わらず微笑んでいるけど、あの人は常にポイント不足に悩んでいるらしい。つまり負けろと遠回しに言ってきていることは明白だった。
 優勝する気満々だったけど、その気も削がれる。
 近くには錦山先輩の姿もある。おそらく乙葉先輩のペアなのだろう。
 その他に気になる人と言えば、ユキ先輩と内山先輩、東雲さんと神宮くん、立石くんと白城くん、一色くんと宮野さんなど、見覚えの凄くある生徒がたくさん見受けられる。『ねずみ組』の生徒が良く目につくのは仕方がないことだと思う。

「ちなみに去年度の優勝は乙葉先輩のところですね。あの人、クイズとか凄く得意ですから」

 わざわざ本人が忠告してくれたってことは、要注意の一グループとして数えて貰っている認識でも良いのだろうか。
 それはともかく、手を抜くつもりはない。
 偶然を装い、勝ってしまうという結果は仕方がないことだと思う。別に中間テストで意地悪されたことの意趣返しという程でもなく。

「あ、そろそろですね」

「勝ちましょう! 先輩!」

 実際のところ、入賞は半分くらいの確率で出来るとして、1位を取ることはかなり難しそう。
 出来れば優勝をしたいところだけど……!


【コンマ判定
 学力:97(超優秀) 補正あり
 5・7:1位
 3・9:2位
 1・8・0:3位
 その他:4位
 下1のコンマ1桁でお願いします。
 コンマ2桁がゾロ目の場合は1位です。】
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/13(水) 23:16:52.77 ID:XSDRzLvu0
それ
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/13(水) 23:17:51.96 ID:XSDRzLvu0
7でゾロが出たんだが
440 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 00:34:33.98 ID:6fC21ecn0
>>438
 7:1位
 7でゾロ目のため? 満点で優勝になります。】

「優勝は、四条夏帆・春宮天音ペアーーっ!」

 司会のお姉さんの甲高い声が響く。
 スタッフの方に優勝商品の商品券1000円分が14枚、500円分が2枚、そして参加賞のドリンク交換券2枚を受け取る。

「やりましたね、先輩」

「あ、うん。……私、何もしてないんだけどね?」

「そんなことないです! 力を合わせた結果です!」

「いや、でも……」

 ちょっと難しい問題もあったけど、わたし達の正解数は30と、申し分のない満点を叩き出した。
 2位は錦山先輩・乙葉先輩ペア。26点。
 3位は東雲さん・神宮くんペア。25点。
 雑学に関する問題も多かったけど、学生で勉強するような内容も出題された。全学年を通してもほぼ公平に戦えるような出題形式だったと思う。
441 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 00:35:05.41 ID:6fC21ecn0
 結果発表が終わると集まっていた人も捌けていく。
 残ったのは入賞した3チームと数名の生徒の他、設営スタッフの方々だった。

「天音ちゃん、ちょっといい?」
「春宮様、少しお時間よろしいでしょうか」

 乙葉先輩と東雲さんの両方から声を掛けられる。
 只事ではない雰囲気は嫌でも伝わってくる。

「あー、まぁいいや。東雲さん、手短に先どうぞ」

「いいえ。後輩として、先輩に先をお譲りするのは当然というもの。わたくしの用は花菱様の後で構いません」

「なら遠慮なく。天音ちゃん、よく満点取れたね。最後の方の問題とか訳分からなかったんだけど?」

 最後の方の問題。
 ルベーグ積分とかその辺りの問題だったはず。
 確かに最終問題の方は難易度が跳ね上がっていた。高校生で学習する範囲を超えている。解けなくて普通なんだと思う。
 そんな問題を学生しか参加しないイベントで出す方もどうかと思うけど、今はそんなことどうでもいい。
 わたしは万全を期して優勝するために手を抜かず正しく解答を導き出した。その結果、満点という結果を出せば、こうやって詰め寄られるのも当然の事だと思う。

「理系の教科には興味があって、むかし本で読んだことがあったんです。だから解けました。自信は半々といったところです」

「……ほんっと規格外。ずるいずるい! 勉強も出来て運動も超出来るとかさー」

 頬を膨らませる乙葉先輩を押し退け、錦山先輩が近付いて、わたしにしか聞こえない小さな声で囁く。
442 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 00:35:40.73 ID:6fC21ecn0

「正直、ここまでとは思ってなかった。生徒会に誘ったりした身でこんなこと言えないが、変に目立ちすぎるなよ。敵は同級生だけじゃないんだからな」

「……はい、わかっています。ご忠告ありがとうございます」

「ま、俺たちはギリギリだったが2位を取れた。余裕でプラスだからな。本当に偶然、お前が参加したことで1位という名声と5000ポイント分の商品券を逃しただけだ!」

 錦山先輩も結構気にしてそうだった。
 ひとまず乙葉先輩達に参加賞のドリンク交換券をプレゼントすることで気を良くしてもらう。わたし達には15000ポイント分の商品券さえあればいい。
 カフェの方へと向かっていく先輩方を見送り、改めて東雲さんと目が合う。
 彼女は微笑み、その冷たく綺麗な瞳を向けたまま語りかけてくる。

「改めまして、お見事でした、春宮様。ひとつお伺いしたいことが」

「ありがとうございます。なんでしょうか」

「春宮様は、わたくしや、あの人のような……こっち側の人間じゃないですよね?」

「こっち側?」

 あの人、と隠された人物が判明すれば考察の余地もあったが、こっちと言われてもどっちか分からない。
 わたしは首を傾げ、おそらく違うと答える。
443 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 00:36:10.86 ID:6fC21ecn0

「そう……ですよね。失礼いたしました。貴女のことは見かけた覚えがありませんでしたので、お伺いするまでもありませんでした」

 掴めない話に、わたしは「はぁ」と相槌を打つことしかできない。
 東雲さんは一息つくと、改めていつも通り微笑んでくれる。

「四条様、春宮様、お時間を戴き感謝いたします。それではまた」

 ご機嫌よう、とくるぶしまであるロングスカートの裾を摘んで、頭を下げる。
 お嬢様然とした姿につい見惚れてしまいながらも、これで身の回りは落ち着いた。東雲さんの言っていることのほとんどは分からなかったけどね。

「まずはお昼ご飯にしましょうか」

「あ、うん。そう……ですね」

 イベントが始まる前と後で、先輩がわたしを見る目が少し変わっていたような気がしたけれど、……うん。
 それは多分、気のせいじゃなかったと思う。


444 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 00:36:37.32 ID:6fC21ecn0

◇◇◇

 昼食を経て、貰った商品券を折半して夏服の購入資金へと充てる。ほんの2着も買えば、7500ポイント分の商品券は消えて自腹の域に達する。
 自腹で15000ポイントほど追加で使用して、ひとまず直感で欲しいと思った夏服は揃え終わる。
 それでもなお、わたしの手元には10万を超えるプライベートポイントが残っている。
 もし特別試験で何十万というポイントが懐に入ってくれば、それはもう泣いて喜ぶと思う。

「結構買えましたね」

「はい、先輩が良いお店を知ってくださっていて大変助かりました!」

「それは良かったですっ」

 急遽参戦したイベント終わりの微妙な表情は消え、先輩は笑顔で喜んでくれた。
 わたし達はドリンク交換券こそ先輩にあげてしまったけれど、個室の喫茶店で休憩することにした。今日付き合っていただいたお礼も兼ねて。

「天音ちゃんは来たことあるんですね、ここ」

「同じクラスの友達と来ました。何回か」

 雨宮さんは眼鏡を外せば超有名人。眼鏡を外していなくても身バレするかもしれないリスクと常に隣り合わせのため、一緒にお茶する時はこの個室の喫茶店を利用する。
 そのため大体の気になるメニューは頼み尽くしてしまっている。新鮮味には欠けていたけど、美味しいと分かっているメニューがあると選ぶのも早い。
 ドリンクと軽食を注文して、一息つく。


【安価です。
 1.「先輩、困ってることありませんか?」
  今朝の化野の件を遠回しに
 2.「実は……今朝、化野先輩と会いました」
  今朝の化野の件を直接
 3.「この後、先輩のお部屋でお料理とか……」
 4.「今、わたし達1年生は特別試験をやっているんですけど……」
 5.「……先輩に悪いことしちゃいましたね」
  クイズ大会の件
 下1でお願いします。】
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/14(木) 09:01:29.27 ID:ehaAAVL/O
1
446 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 22:38:03.22 ID:6fC21ecn0
>>445
 1:「先輩、困ってることありませんか?」】

 注文していた品が届いた頃、わたしは今朝からずっと気になっていたことを遠回しに聞いてみることにした。

「先輩、困っていることありませんか……?」

「ん? 困ってること、ですか?」

 首を傾げ、しばらく考える仕草を見せる。
 うーん、うーん、と数秒間熟考した上で、夏帆先輩の表情が暗くなることはなかった。

「特にありませんね。強いて言えば、天音ちゃんが満点を取ってしまったせいで、少しばかりペアである私も目立ってしまったことでしょうか」

「う……それはすみませんでした」

 思い返せば、最後の方の5問は大学生レベルと格段に難易度が跳ね上がっていた。乙葉先輩はその内の1問を解いて26点、東雲さんは手を付けずに25点を取ったのだと思う。
447 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 22:38:38.66 ID:6fC21ecn0
 確かに満点を取るというのはやりすぎだったかもと反省はしている。

「謝ることではありません。私としても良い経験が出来ましたし、商品券も戴けましたからね。多少目立つくらいどうってことないです。……ただ、そうですね」

 一転、表情を曇らせた先輩はアイスレモンティーで喉を潤した後、目を伏せて話し始める。

「天音ちゃんは今、特別試験の最中ですよね。各クラス3名程度が集まって『王様』を見つけ出すっていう、例の」

「はい。昨日から今月末まで、その試験が行われる予定です」

「……あんまりこういうことは話してはいけないのですが、特別試験というものは年に数回行われるもので、今回の試験が最後ではありません」

「乙葉先輩からそのようなことは聞いています。生徒会が特別試験の監督役もする、と」

「そうです。もちろん現在行われている特別試験にも生徒会が携わっています。と言っても、ルール説明の時にご覧になられたスライドの作成程度ですが」

 視聴覚室で見たスライドを思い出す。
 ねずみ、王様、一般人のイラスト。そして試験概要。
 あれらの資料はわたしの知らないところで先輩方が作成していたようだった。
448 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 22:39:07.19 ID:6fC21ecn0

「今回の試験は1年生の間で行われているものですが、ものによっては全学年で競争する場合もあります。おそらく……というか、もう既に今後のスケジュールに全学年共通で競う特別試験が組み込まれています」

 全学年で競う特別試験が行われる。
 その予想自体はついていたけど、夏帆先輩の口ぶりからしてそう遠くはなさそう。来月か再来月か。夏休み前後あたりで実施されるかもしれない。

「試験の概要はまだご説明できませんが、その試験において天音ちゃんは……不利になるかもしれません」

「不利ですか?」

「はい。ルール上は出来る限り公平だと思います。ただ、天音ちゃんは運動部との戦い、そしてさっきのクイズ大会でも目立ち過ぎています。そのため、言い方は悪いですけど、まず第一に蹴落とす相手として認識されてしまっている可能性があります」

 その可能性は考慮していなかった訳ではない。
 今回の特別試験ではポイントの変動のみだけど、今後実施される試験によっては退学を賭けたクラス間の戦いになるかもしれない。
 学力等で良い成績を収める他クラスの生徒を退学に追いやれば、その分だけ自クラスがAクラスとして卒業できる可能性は高まる。
 今すぐとは言わないけど、秋頃にもなればその認識は全員が持つことになるかもしれない。

「それは1年生の皆さんだけに限りません。私たち2年生も、乙葉先輩たち3年生も天音ちゃんに対して攻撃的な姿勢で挑むかもしれません」

「……注意するべき人に心当たりがありますか?」

「はい。まず3年生はあまり心配が要らないと思います。あの学年はもう統治済みだと聞いていますから。1年生のことは天音ちゃん自身がよく分かっていると思いますので、私からは2年生のことを。1人だけ気をつけていただきたい人がいます」

 暗い表情。
 名前を聞くまでもなく、今朝の一件を経て彼の顔と名前は既に頭に浮かんでいた。
449 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 22:39:43.78 ID:6fC21ecn0

「化野伊吹くん───って言って、伝わらないですよね。2年Aクラスの男子生徒なのですが」

「いえ、分かります。全生徒の顔と名前は分かっているつもりです」

「え、あ、そ、そうなの? すごいですね…。と、そうではなく、現在2年生は1年間の戦いを経て、大きく2極化しています。1つは化野くんのグループ、そしてもう1つは新汰くんのグループです」

 生徒会副会長の佐倉新汰先輩がもう1つのグループのリーダーをやっているとのことだった。
 新汰先輩は端的に言って、正義感の塊のようなカッコいい男子生徒。知的な外見も込みで、おそらく女子人気は高いと思われる。わたしも例に漏れず、生徒会の仕事を手伝って貰ったりとかなり好印象を持っている。

「新汰くんは1年生の最初、Aクラスだったんです。そして化野くんはBクラスで、私もBクラスでした」

「え……あれ? 夏帆先輩って、」

「はい。1年生の末に行われた試験でAクラスとBクラスが入れ替わって、その後で私はAクラスから新汰くんの居るBクラスへ移動しています」

 2000万ポイントを支払うことでクラス移動が出来る。
 4月上旬に辻堂くんから聞かされていたことを半ば冗談として受け取っていたけど、実際にクラス移動をした人が目の前にいる。
 その事実をもとに、化野先輩が夏帆先輩のことを『裏切り者』と言ったことについても少し理解できた気がした。
450 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/14(木) 22:40:33.59 ID:6fC21ecn0

「あ、すみません。少し話が逸れてしまいましたね。化野くんは、その、手段を選ばないというか、徹底主義というか。そう言ったところがあるので、気を付けてくださいというのが本題です。私の身の上話は忘れて下さい」

 夏帆先輩は良い先輩としてわたしは認識している。
 何が原因でクラス移動することになったのかは知らないけど、その大きな原因は化野先輩にあるのは想像に難くない。
 新汰先輩の手助けをする訳では無いけど、夏帆先輩がこのまま『裏切り者』と呼ばれ続けることには納得がいかない。
 今後実施予定の全学年で行われる特別試験。
 その場では、きっと化野先輩と対決する機会がやってくると思う。辻堂くんに続いて摘んでおくべき人として、わたしは化野先輩を警戒することに決める。


【安価です。
 1.「ご心配とご忠告ありがとうございます。今後は、出来る限り目立たないようにしますね」
 2.「もう少しだけご辛抱いただけますか。特別試験できっとやり返して見せます」
 3.「わたしに力になれそうなことがあればいつでも相談して下さいね。わたしだって相談しっぱなしなので」
 下1でお願いします。】
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/15(金) 00:12:47.67 ID:mxmijazC0
あまりにも阿呆らしいので注意喚起します。

1、あんぐら本舗について
あの動画の内容はどう見ても炎上に便乗しただけのジョーク動画です。
現時点でゆるふわアンチはあんぐら本舗に釣られ、あの便乗動画が伸びるのを助けただけって状態です。
某ちゃんねるでは「伸びてもゆるふわが困らないあの動画にアンチが広告いくら突っ込むのか」って話題になってますよ。
頭を冷やしましょうよ。
常識的にクソ動画伸びても誰も困らないし、注意喚起も意味がないと思ってます。
私はちゃんと調べた上で「変なのにたかられたからそう言って逃げた」と判断して言ってますので、あしからず。

2、ゆるふわ分子生物学研究所について

冷静に考えればあれはゆるふわ分子生物学研究所の投稿者の評判を落としたい、評判を落としたい、迷惑かけたいという「赤の他人による犯行」だと思うのが普通です。
本人がそんな事するのだろうか?←この考えを元に常識的に突き止めれば、「別人による成りすまし」が第一候補です。
あと、擁護する人間がいるのは様々な意見を持つ人間がいるだから当然でしょう。
そういう意見をなぜ「荒らし」「異常」と断定するのか、そちらの方が恐ろしいです。
「ゆるふわの複垢か」はこのスレ住人だけにしか通じないミーム(意味わからんだろ、ググレカス)なんですよ、本当に。
そもそも同一人物だという証拠・説明・反論は一つも「ありません」、同一人物だという証拠が出ない時点で語るに落ちます。
投稿者が反応してない?→迷惑行為されたら大騒ぎして被害者ですと主張しないといけない法律があるので?
いい加減このスレ住民の行動パターンが全体的に常識で考えておかしいって気付け!

ところで、便乗したジョーク動画に皆さんは便乗動画に広告でいくら支払ったんでしょうか?
あんぐらさんもあの動画でクリ奨稼げてよかったでしょうし、委員会さん達の懐のダメージを慮ると実に乙ですけど。
452 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/15(金) 12:54:55.23 ID:kKwyyIja0
【再安価します。
 1.「ご心配とご忠告ありがとうございます。今後は、出来る限り目立たないようにしますね」
 2.「もう少しだけご辛抱いただけますか。特別試験できっとやり返して見せます」
 3.「わたしに力になれそうなことがあればいつでも相談して下さいね。わたしだって相談しっぱなしなので」
 下1でお願いします。】
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/15(金) 12:58:58.95 ID:xtq3++W4O
3
454 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/15(金) 23:02:52.24 ID:kKwyyIja0
>>453
 3:「わたしに力になれそうなことがあればいつでも相談して下さいね。わたしだって相談しっぱなしなので」】

 化野先輩とは学年が違うこともあって関わる機会も少ないと予想できるけど、それでも全く無関係でいられる訳ではない。
 特別試験終了後の6月以降は2年生の情勢についても注視する必要がありそうね。
 ということを踏まえて、わたしから夏帆先輩に向けて言えることは一つ。

「わたしに力になれそうなことがあればいつでも相談して下さいね。わたしだって生徒会のお仕事やお料理で相談しっぱなしなので」

 本当なら「化野先輩のことはわたしに任せて下さい」と気の利いたことを言えたら良かったのだけど、現時点で化野先輩の実力は知れず。それに対抗勢力の新汰先輩の邪魔はしたくない。
 相談して下さい、と言うことが今の精一杯だった。
 夏帆先輩は遠慮がちに手を振って見せる。

「え、いいよいいよっ。私だってもう十分お世話になってるんだから……! でも、うん。その気持ちは凄く嬉しい。ありがとう」

 先輩後輩という隔たりがある以上、素直になんでも相談とは行かないんだと思う。けど、本当に困ったときにわたしくらいは味方になってあげたい。
 どうか、相談できる相手がいることを気に留めて貰えるよう、わたしはそれ以上は言わず、心の中で強く願った。

455 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/15(金) 23:03:23.58 ID:kKwyyIja0

◇◇◇

 四条先輩と過ごした土曜日、そして学校の図書室で過ごした日曜日を経て迎えた月曜日。
 『うさぎ組』の通達がある日であり、お昼休みが始まると同時にCクラスの加藤治孝くんが『王様』であることを一色くんから聞く。
 試験開始から4日目にして、Cクラスから2名の『王様』が出た。これを幸と取るか不幸と取るかはクラスの指針にもよる。
 『王様』が選択される仕組みを探りたければ早めに通達されることに越したことはない。一方、早めに通達されるということはボロが出る機会が増えるということでもある。それは投票期日前の投票が発生する可能性が高まることを意味する。

「この事、他の誰かは知ってる?」

「治孝くんと僕と、春宮さんの3人だよ。ちなみにメールも見せて貰ったから間違いはないと思う」

「うん、わかった。ありがとう」

 一色くんにお礼を言って、わたしは自席で改めて試験通達メールを確認する。

『厳正なる調整の結果、あなたの役職は『一般人』に決まりました。グループの一員として、自覚を持って行動し試験に臨んでください。また、ねずみ組の集合場所は特別棟の視聴覚室になります。』

 やはりキーとなるのは『厳正なる調整の結果』。
 むやみやたらに「ここの組は〜、この人!」と適当に『王様』を決めていることは無いと思う。
 現在判明している『王様』はCクラスから2名。共通点は挙げればキリがないけど、そのどれもが確証に欠ける。
456 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/15(金) 23:03:51.48 ID:kKwyyIja0
 Cクラスから3名の『王様』が判明するのを待って共通点をよく考える、というのも1つの手段だけど、試験最終日の前日に通達となる『いのしし組』で判明した場合はかなり出遅れることになる。
 どうしても他クラスの『王様』事情を知る必要がある。
 それを探るためには6時間目の会合で集めて貰った情報を取りまとめる……くらいしかない。表情は読み取れない、なんとなくこんな事を話したという情報だけで突き止めることは可能か。

「……むりかなぁ」

 つい独り言を呟いてしまう。
 直接会って話せれば糸口も見つけられるかもしれないけど、人伝に聞いて判断するのは難しい。
 となると、思いつくのは賄賂か。
 プライベートポイントを100万ポイントあげるから貴方のクラスの『王様』を1人教えて、とか。ルール上、そういったことをダメだとは定められていない。
 もちろんそれ相応の額を集めるためには他の生徒に協力をお願いしないといけない訳だけど。


【安価です。
 1.「ああは言ったけど、Dクラスは論外として、AクラスかBクラスとは協力関係を築けないかな……?」
 2.「そもそもグループ分けされている時点で、わたしが出来ることは少ない。他のグループのことはみんなに任せて、わたしは『ねずみ組』のことだけに集中しよう」
 3.「……少し様子を見ようか」
 下1でお願いします。】
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/16(土) 11:53:37.92 ID:9ODptJOYO
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/16(土) 11:54:15.42 ID:9ODptJOYO
誤爆した、2
459 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/16(土) 22:05:46.07 ID:rVtfeCjyO
>>458
 2:「そもそもグループ分けされている時点で、わたしが出来ることは少ない。他のグループのことはみんなに任せて、わたしは『ねずみ組』のことだけに集中しよう」】

 ……うん。やっぱりダメだ。
 グループ分けされている時点で、わたしが出来ることは少ない。他のグループのことはみんなに任せて、わたしは『ねずみ組』のことだけに集中しよう。
 そもそも生徒のシンキング能力を培うための試験だからね。わたし個人で超シンキングして『厳選な調整』を暴くことは他のみんなのためにもならない。
 真っ当に試験をこなすことにしよう。

「よしっ」

 そうと決まれば残り1週間半ほどの間、日々『ねずみ組』内で行われるゲームで『王様』を負けないようにしてあげることが、わたしに出来る最善の策。
 そう心の中で吹っ切れさせたことで、気負っていた物の重みから解放されて軽くなる。
 今日は生徒会の仕事の後、水泳部に顔を出してみようかななんて考えながら、お昼休みを過ごす。


>>423>>424の安価で『ねずみ組』のゲームによって『王様』が暴かれることはないと確定しているため、2回の自由行動を経て試験結果となります。

 1.人と会う
   1.早見有紗(前の席の女子生徒)
   2.宮野真依(クラスをまとめる水泳部の女子生徒)
   3.一之宮重孝(隣の席の勉強が出来る男子生徒)
   4.一色颯(クラスをまとめる男子生徒)
   5.神宮紫苑(Aクラスの男子生徒)
   6.花菱乙葉(信頼のできる…? 3年生の女子生徒)
   7.如月深雪(信頼のできる3年生の女子生徒)
   8.四条夏帆(信頼のできる2年生の女子生徒・選択に応じて料理スキルアップ)
   9.佐倉新汰(信頼のできる2年生の男子生徒)
  10. 雨宮春香(信頼のできるクラスメイト・選択に応じて音楽スキルアップ
  11.東雲雪菜(Aクラスの女子生徒)
 2.寮で1人で過ごす(料理の本を読む、自己学習など)
 3.ケヤキモールへ(コンマ判定で出会う人を決定)

 1.人と会う場合は「1-10」のようにお願いします。 ? 下1でお願いします。】
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/19(火) 11:19:25.91 ID:sJpxJ/D5O
3
461 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/19(火) 22:36:21.83 ID:3LS8jgiI0
>>460
 3:ケヤキモールヘ(コンマ判定で出会う人を決定)】

 5月25日、木曜日。
 今朝は『うま組』の通達があり、Cクラスから最後の『王様』が出たことを一色くん経由で聞いた放課後。
 生徒会の業務を終え、わたしはケヤキモールヘと赴く。
 購入予定の物があった訳ではないけど、見て回るのは自由でタダだから損することはない。
 注意するべきは『期間限定』のワードに惹かれないこと。つい購買意欲の低い物も購入してしまうのはわたしの悪い癖なのかもしれない。
 先週末に服は一通り見たため、本屋、文房具屋、ホームセンターとそれぞれ滞在時間5分程度で徘徊する。
 周囲の学生はほとんどが私服に着替え、夕食どきということもあってレストラン街の方へと向かっていく姿が多く見られる。

「……外食かぁ」

 比較的最近は自炊に凝っているため、夕食としてレストランを利用したのはほぼ1ヶ月前となる。
 幸いポイントには困っていないし、これからお米を炊くのは少し億劫だなと少し思っていたところ。
 たまには外食をしても良いかもしれない。
 踵を返して、わたしもレストランがある方へと向かう。


【コンマ判定。
 1・8:乙葉
 2・0:神宮・東雲
 3・6:化野
 4・7:夏帆・新太
 5・9:雨宮
 ゾロ目:先生
 下1のコンマ1桁でお願いします。】
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/19(火) 23:04:21.99 ID:Gxjlq+vZ0
463 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/20(水) 00:30:55.62 ID:mJbNyI7e0
>>462
 ゾロ目(99):先生】

 レストラン街へと向かう途中、シワの寄った背広姿を見つける。他の誰でもない担任の伊藤先生だった。
 校舎の中であればもう見慣れたものだけど、校舎の外で見かけると心配や不安、そして恥ずかしいという余計な感情まで湧き出てくる。

「……」

 話しかけるか迷っている内にケヤキモール内のレストラン街に到着する。奇しくもここまでの道のりが一緒だったため、自然と背中を追うような形になってしまった。
 一度周囲のお店を見渡して心に決める。
 よし。特別先生に用がある訳でもないし、業務後にまで生徒に付き合わせるのは憚られるため先生を尾行するような真似はやめよう。
 さっと外食を済ませて、部屋で勉強したりテレビを見たりしようと意気込んだとき、目の前に黒い影が現れた。

「っ、せ、先生……!」

 他の誰でもない伊藤先生だった。
 ずっとこちらには背中を見せていたはずだけど、振り向いた際にわたしに気が付いたのか。
464 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/20(水) 00:31:32.81 ID:mJbNyI7e0
 なんであれ、結構驚いた。

「えっと、なにか……?」

「いえ、春宮さんの視線を感じたものですので。何か用があるのかな、と思ったのですが」

「……あぁ、すみません。つい見つけたので目で追ってしまっただけです。申し訳ありません」

 見られている気がする、という感覚には覚えがあるため先生がわたしに気が付いたことに違和感はない。
 わたしは素直に白状して頭を下げる。

「そうでしたか。頭を下げる必要はありません。そうだ、春宮さんは夕食の予定は決まっていますか?」

「夕食ですか? 決まっていませんけど……」

「もしよろしければご一緒にいかがですか」

 この流れはもしや、と胸の奥に感じた直後、それはそっくりそのまま伊藤先生の口から提案されることになる。
 先生と夕食かぁ。
 全然嫌ではない。むしろ少し話してみたいなと思っていたため、この機会は絶好と言える。
 断る理由もないし、わたしは頷くことにした。どうして誘っていただいたのかは不安で未知だけれど。
465 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/20(水) 00:32:01.34 ID:mJbNyI7e0

「はい、ご相伴にあずかります」

「よかったです。食べたいものはありますか?」

「そうですね……今晩は中華の気分です」

「ではあそこにしましょうか」

 先生の視線が向かって左側の3件先にある中華料理屋に向けられる。外装からして「中華!」って雰囲気のあるお店で好印象。
 入ったことはないけど、風の噂では麻婆豆腐がとても辛いという話だったような。少し興味があるため挑戦してみても良いかもしれない。
 先生に着いていく形でお店に入り、奥の方の席へ案内して貰う。
 席の仕切りが高く、近くには窓も無いため他のお客さんから注目されることもない。先生と生徒の逢瀬にはちょうど良い席と言える。

「お好きなものをどうぞ。私が全部出します」

「はい、ご馳走になります」

 ここで断るのは厚意を無碍にするような気がしたので、素直に甘えることにした。
 ……1度くらいは「わたしも払います」というやり取りをしておいた方が良かったかもしれないと今になって少し後悔している。
466 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/20(水) 00:32:29.71 ID:mJbNyI7e0
 注文を終え、お冷で喉を潤した後、少し沈黙が訪れたので気になっていたことを直接聞いてみることにした。

「えっと、どうしてわたしと夕食を? いえ、とてもありがたいのですがっ」

「普段の素行が良く、先日の中間テスト対策でも色々と動いていただけたようだったのでそのお礼です。現在Cクラスの皆さんがAクラスに上がってくれれば、私の査定も上がりますからね」

「あ、そういう……」

「それと直接お話したいこともあったので」

 先生から直々にお話。
 個人面談はそう珍しいものではない。進路相談を始め、学業について相談する機会は幾らでもある。その分、教師という職業は多忙のように思える。

「話したいこと、とは?」

「春宮さんはどうして自分が最初Dクラスに配属されたか見当がついていますか?」

「……」

 学校側からしてみればDクラスとは、その学年における『不良品』や『ガラクタ』といった意味合いが強いらしい。従って学年の中でも成績の低い生徒が集まる傾向にある。
 正直、勉強と運動は出来る方だと自覚はしているため、たびたび「どうしてわたしがDクラスに?」と考えたことはある。
 その結論として、


【コンマ判定
 直感・洞察力:91(優秀) 補正高
 4・9:見当がついていない
 その他:見当がついている
 下1のコンマ1桁でお願いします。
 ゾロ目の場合は見当がついています。】
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/20(水) 08:30:23.49 ID:yXbXHEYto
468 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/20(水) 22:00:00.11 ID:mJbNyI7e0
>>467
 9:見当がついていない】

 その結論として、わたしは解を出せなかった。
 強いて挙げるとすれば特殊なクラス配属制度を採用している学校側のミスが考えられるけど、同時にそれは確実にあり得ない話だと断言できる。
 つまり仮定すら持っていない状態。テストで言うところの空欄で提出してバツを付けられる状態にある。
 わたしは頭を小さく横に振る。

「いえ、わかりません」

 久しぶりに「わからない」と発言した気がする。
 知らないことは罪だと教育を受けてきた身として、人一倍勉強に努めてきたつもりだけど、こうして改めて口にすると胸を圧迫する何かがあった。
 そんなことを知る由もない先生は「そうですか」と何の抑揚も無い声で相槌を打って、

「……」

「……」

 あれ、会話が途切れてしまった。
 てっきり簡単に教えて貰えると思っていたのに。
469 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/20(水) 22:00:27.02 ID:mJbNyI7e0

「えと、その理由について訊いたら教えていただけるんですか?」

「えぇ構いませんよ。口止めされていることではありませんので。ただ、春宮さんは本当にそれで良いですか?」

「……意外と、意地悪なんですね」

 意味ありげに言われてしまうと躊躇ってしまう。
 今のわたしはこの件について仮定も持たないまま答えを訊こうとしている。言ってしまえば、答えを丸写しして宿題をやるのと同義。
 果たしてそれは自分のためになるのか。せめて一度自分なりに答えを書いてから答え合わせをするべきなのではないか。
 改めて訊けばすぐに教えて貰えるだけに、わたしは揺れる。


【安価です
 1.「そうですね。もう少し自分で考えてみることにします。改めて、別の機会で答え合わせをさせてください」
 2.「……やっぱりわからないです。答えを教えていただけますか?」
 下1でお願い致します。】
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/21(木) 00:00:00.90 ID:ncSgBFWS0
1
471 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/21(木) 22:16:28.31 ID:LNbq3Udw0
>>470
 1:「そうですね。もう少し自分で考えてみることにします。改めて、別の機会で答え合わせをさせてください」】

 それでもわたしは考えることを放棄できなかった。
 昔読んだ本にこんなことが書いてあった。

 『人間から知性を除けば、そこには獣性のみ残る』

 当時のわたしには理解し難い一文だったけど、今ならほんの少しだけ理解できるような気がする。主に獣性という部分が本当によく分からないけれどね。

「もう少し自分で考えてみることにします。改めて、別の機会で答え合わせをさせてください」

「そうですか」

 先生は短く頷くと、ちょうど運ばれてきた料理をテーブルに置くためお冷のグラスを退ける。
 ひとつひとつかなりのボリュームがあり、2人にしては多かったかもしれない。
 しかしいずれも美味しいことが確定している印象。特に真っ赤な麻婆豆腐は見た目通り辛そうだけど、香辛料の香りが堪らない。

「いただきます」

「……お気になさらず、お好きなだけどうぞ」

 わたしは中華丼、先生は天津飯を主食とし、その他に麻婆豆腐、青椒肉絲、回鍋肉、酢豚、棒棒鶏、春巻きと、代表的な料理はそれぞれ小皿に取り分ける方式となっている。
472 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/21(木) 22:17:01.50 ID:LNbq3Udw0
 お言葉に甘えて好きなものを好きなだけ小皿に取り、改めて先生に向かって「いただきます」と言ってから口に運び始める。

「美味しいです!」

「それは良かったです。私が学生の頃は別の中華料理屋だったんですけどね。最近、居抜きで今のお店が入ったそうです」

「へー……あれ、先生が学生の頃? 先生もこの学校の出身なんですか?」

「言ってませんでしたか?」

 先生とまともに話す機会も今が初めて。
 入学式当日の挨拶でもそんなことを聞いた覚えもない。

「初耳です。参考までにどのクラスで卒業したか教えていただくことは出来ますか?」

「調べれば分かることですからね。特に生徒会に入っていれば、その辺りも容易でしょう」

 確かに卒業生の名簿は生徒会準備室に保管されていたはず。在校生徒名簿の隣の棚だったかな。必要性が低かったため、見るのを後回しにしていた。

「Aクラスで卒業しました。入学のときから卒業のときまで、不動でしたね」

「あ、それはすごいですね! 今の一年生でも結構肉薄しているのに…」

 現在Aクラスとの差は250クラスポイント程度。
 今回、もしくは今後数回の特別試験の結果次第ではすぐにでも入れ替わる可能性がある。
 不動のAクラスであり続けたということは、優秀なリーダー的立ち位置の人が居たんだと思う。
473 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/21(木) 22:17:45.82 ID:LNbq3Udw0

「まだこれからですからね。頑張ってください」

「はい。先生の査定のためにも。奢っていただいた分は査定でお返しします」

「それは頼もしいです」

 そう言って、いかにも辛そうな麻婆豆腐を口に含んで、顔色ひとつ変えずに嚥下する先生。
 わたしは最初だけ数回むせてしまい、口元を手で覆ったとはいえみっともないところを見せてしまった。
 それから意外にも話題は尽きることなく、無事に2人で食べきることが出来た。デザートに杏仁豆腐まで戴いて、幸せの極みに至る。
 なお、この夕食以降、わたしは食事のたびに辛いものを求めるようになる。もちろんこのときのわたしはそんなことを露知らずにいるのだった。


【特別試験終了まで 自由行動 残り1回
 1.人と会う
   1.早見有紗(前の席の女子生徒)
   2.宮野真依(クラスをまとめる水泳部の女子生徒)
   3.一之宮重孝(隣の席の勉強が出来る男子生徒)
   4.一色颯(クラスをまとめる男子生徒)
   5.神宮紫苑(Aクラスの男子生徒)
   6.花菱乙葉(信頼のできる…? 3年生の女子生徒)
   7.如月深雪(信頼のできる3年生の女子生徒)
   8.四条夏帆(信頼のできる2年生の女子生徒・選択に応じて料理スキルアップ)
   9.佐倉新汰(信頼のできる2年生の男子生徒)
  10. 雨宮春香(信頼のできるクラスメイト・選択に応じて音楽スキルアップ
  11.東雲雪菜(Aクラスの女子生徒)
 2.寮で1人で過ごす(料理の本を読む、自己学習など)
 3.ケヤキモールへ(コンマ判定で出会う人を決定)

 1.人と会う場合は「1-10」のようにお願いします。 ? 下1でお願いします。】
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/21(木) 23:09:13.27 ID:ncSgBFWS0
2
475 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/22(金) 22:20:16.77 ID:/NaFHEJy0
>>474
 2:寮で1人で過ごす(料理の本を読む、自己学習など)】

 特別試験もいよいよ数日と迫った休日。
 わたしは午前中を部屋の掃除に費やし、午後は勉強机に備え付けられた椅子に座って外を眺めて過ごしていた。
 ここから見える景色はいつ見ても変わらない。
 綺麗な校舎と部活棟。あいにく、グラウンドで部活動に励む生徒の姿は校舎が邪魔をして見ることが出来なかった。

「……」

 ダメだ。何かしよう。
 このままでは気が付いたら夕方、夜なんてこともありえる。
 ただ、なにをしたものか……。


【安価です。
 学力:97(超優秀)
 身体能力:99(超優秀)
 直感・洞察力:91(優秀)
 協調性:53(普通)
 成長性:74(高)
 メンタル:86(高)
 料理:39(まぁまぁ?)
 音楽:22(下手)
 所持ポイント:112540
 所持している本:料理

 1.料理の本を読む
 2.その他の本を購入して読む
  1.学力アップ 2000ポイント
  2.身体能力アップ 2500ポイント
  3.直感・洞察力アップ 2000ポイント
  4.音楽センスアップ 1500ポイント
 それぞれ安価で1〜3ポイント上昇します。
 2の場合は「2-1」のようにお願いします。
 下1でお願いします。】
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/22(金) 23:08:28.71 ID:q+DX96t10
1
477 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/24(日) 21:00:41.95 ID:tOhkUR4E0
>>476
 1:料理の本を読む】

 引き出しの中から入学式当日に購入していた料理に関する本を取り出す。
 そういえば序盤の包丁の持ち方講座あたりを読んだきり、その先を読んでいなかった。
 ちょうどいい機会だし、今日はこの本を最後まで読み進めることにしよう。1日を過ごすには物足りないページ数だけど、じっくり読み進めていけば夕方頃までは楽しめそうだ。
 

【コンマ判定
 成長性:74(高) 補正あり
 1・2・3:料理1アップ
 4・5・6:料理2アップ
 7・8・9・0:料理3アップ
 2桁ゾロ目:料理5アップ
 下1のコンマ1桁でお願いします。】
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/24(日) 21:18:25.70 ID:+ROC6Tew0
479 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/24(日) 22:46:31.97 ID:tOhkUR4E0
>>478
 0:料理3アップ
 料理39 → 42 】

 5月29日、月曜日の夜。
 わたしはクラスメイトから連絡を貰ってケヤキモール内のカラオケまで来ていた。
 誘い文句は内密に話をしたいとのこと。
 言及はされていなかったけど、おそらく歌うことはないんだと思う。暇を見つけては雨宮さんから音楽のことは教わっていても、まだまだ歌唱力は平均を大きく下回っている自覚はある。
 時刻は21時を回ったところ。明日も学校ということもあって、寮からカラオケまで人とすれ違う機会も少なかった。ただ、23時まで営業しているカラオケは全ての部屋が満室だった。
 わたしは事前にチャットで聞いていた部屋番号を店員さんに話すと、数秒後にはどうぞと案内される。

「……」

 どうか、変なことにはなりませんように。
 心の中でそうやって気休め程度のお祈りをしてから扉を数回ノックする。
 「どうぞ」とは聞こえてこない。というか、聞こえてきたら困る。防音がしっかりされていないと、以前ここを利用したときのわたしのお粗末な歌声が衆人に聞かれていることとなってしまう。
480 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/24(日) 22:47:00.88 ID:tOhkUR4E0
 扉はすぐ、向こうの方から開かれた。

「ごめんね、わざわざ」

「ううん、いいの。でも珍しいね」

「そうかな? あ、何か頼みたいものがあったら注文して。そこのタブレットから出来るから。僕はさっき注文したから大丈夫」

 そう言って、望月くんが腰を下ろしたソファの向かいにわたしも座る。
 彼は数十分は前に来ていたらしく、アイスコーヒーがもう氷の溶け水でかなり薄まっていた。次の飲み物も頼んでいたようなので、わたしはアイスティーを注文してタブレットを閉じる。
 ここは基本的にドリンクバー形式を取っているものの、サービス料を支払えば持ってきて貰うことも出来るらしい。1杯につき100プライベートポイントというのは、少々高額な気もする。

「僕の話はすぐに済む。せっかくだから少し歌っていってもいいけど?」

「明日も学校だから、早めに本題に入ってくれると嬉しいかな」

 そこだけは譲れない、と学校を免罪符にして本題に入ることを促す。
 彼は肩をすくめるような仕草をした後、薄まったコーヒー風味の水をストローで飲み干してから話し始める。
481 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/24(日) 22:47:28.12 ID:tOhkUR4E0

「じゃあ率直に聞くことにする。Cクラスの『王様』を教えて欲しい」

 望月くんが特別試験そのものにあまり興味がないだろうな、とは思っていた。しかしそんな折、彼の属する最後の干支『いのしし組』の通達を明日に控えたこのタイミングで呼ばれたということから、もしやと予想はしていた。
 わたしとしては教えることにそれほど抵抗がある訳ではない。もしかしたらCクラスの『王様』3人の共通点を見つけ出し、他クラスの『王様』を見つけてくれるかもしれない。
 ただ、それは他クラスにCクラスの『王様』がバレるかもしれないという危険も同時に発生する。もし望月くんが他クラスに100万プライベートポイントで買収されていた場合など、可能性はわずかに存在している。

「ええっと、素直に聞いてくれたから、わたしも素直に訊かせて。信用してもいいの?」

「そこは理由を尋ねるところじゃないかな。ただ、その質問に答えるとすれば、信用してくれていい。僕の『いのしし組』の勝利は約束しよう」

「Cクラスの『王様』がいるグループについては勝利の約束は出来ない訳だね」

「そうなるね。ただ、条件次第では確実にCクラスを1つ昇格させることは出来る」

 昇格。
 それはつまり、CクラスからBクラスへと、Aクラスに近付くことを指す。
482 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/10/24(日) 22:48:02.88 ID:tOhkUR4E0
 5月1日の時点でクラスポイントは拮抗していた。

Bクラス:719ポイント
Cクラス:710ポイント

 日々の生活態度でクラスポイントが減算されることを知らされた今、両クラスで大きく減算されている可能性はほとんど無い。
 差が縮まる、差を引き離すという意味では、先の中間テストの結果が大きく反映される。おそらく全教科の平均点でクラスポイントが上昇されると予想でき、わたしたちCクラスの平均は91点のため、800クラスポイントを越すことになる。
 ただ5月はまだ終わっていない。
 今日、明日、明後日のうちに生活態度が悪ければマイナスとなるし、何よりも特別試験の結果次第では大きくクラスポイントを下げることになる。結果次第ではDクラスまで陥落とはいかないまでも、現在のAクラスやBクラスと大きく引き離される可能性は十分にある。
 そんな中で、彼は条件次第で確実にBクラスまで上げる算段があると言う。

「えっと、まずはその方法から教えて貰える?」

「簡単だよ。投票期日前の投票で誤った『王様』を選択させる。Bクラスの人に投票させれば100ポイントずつ離れていくだろ?」

 さらりと言ったけど、結果4の難易度は高い。


結果4:役職『王様』以外の者が投票期日よりも前に解答を行い不正解だった場合、役職『王様』には50万プライベートポイントを支給し、解答者が所属するクラスのクラスポイント“50”が役職『王様』が所属するクラスのクラスポイントへ移動する。
522.78 KB Speed:0.5   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)