【安価】ようこそ実力主義の教室へ

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30 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 12:24:00.72 ID:H7FJ2cZ10
>>29
 >>15の案をもとに、
 66 → ワンランク上の76 → 補正プラス10で86

 学力:97(綾小路)
 身体能力:99(綾小路)
 直感・洞察力:91(坂柳)
 協調生:53(1年後半堀北)
 成長性:74(高)
 メンタル:86(龍園)

 とんでもないスペックになりましたね。
 この後、主人公の名前、性別、性格、容姿を決めていきます。下3まで募り、その後に多数決で決めたいと思います。
 (名前)
 (性別)
 (性格)
 (容姿)
 私に任せる、という場合はその旨の記載をお願いします。】
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/04(土) 12:43:04.61 ID:c9RVYPxjO
(名前)春宮 天音(はるみや あまね)
(性別)女性
(性格)明るく朗らかで前向き。頑張り屋で好奇心旺盛、色々と習得しようとする。
周りから頼られることが多く、それに応えようとする反面、周りの人に頼ることがやや苦手
(容姿)平均より少しだけ低めの身長、やや童顔気味だがスタイルは良い。
髪は亜麻色のセミロング。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 14:19:32.82 ID:R2vfZ0ix0
 (名前)坂上 隼人(さかがみ はやと)
 (性別)男
 (性格)物静かで理知的。常に優雅であろうと心がけており、そのための努力は欠かせない。異性に興味はあるが、免疫が皆無
 (容姿)長身で引き締まった体格。黒髪短髪
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 14:59:24.11 ID:O5spcVWB0
名前:炎 竜也(ほのお たつや)
性別:男
性格:粗暴でぶっきらぼうな言い分が目立つが内心は情や義に厚い熱血漢。自身の悪い部分を自覚しているが故に一匹狼で通していた
容姿:ボサボサの紅髪で目付きが悪いが顔つきは悪くない。喧嘩三昧を過ごしてきたので体つきは凄い
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 15:25:37.35 ID:g6WU5eR/O
この中だと3が好みかな
35 : ◆yOpAIxq5hk [sage]:2021/09/04(土) 16:58:03.48 ID:aDnh4+ZCO
>>31 >>32 >>33 ありがとうございました。
それでは多数決を行います。
>>31の場合は1、>>32の場合は2、>>33の場合は3と書いてください。先に2票獲得したキャラで進めていきます。
この下から多数決開始です。]
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 17:00:51.60 ID:R2vfZ0ix0
1
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 17:01:22.80 ID:j4TxrWwpO
1
38 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 17:09:52.71 ID:aDnh4+ZCO
>>37>>38
 1.>>31のキャラに確定です。
(名前)春宮 天音(はるみや あまね)
(性別)女性
(性格)明るく朗らかで前向き。頑張り屋で好奇心旺盛、色々と習得しようとする。
周りから頼られることが多く、それに応えようとする反面、周りの人に頼ることがやや苦手
(容姿)平均より少しだけ低めの身長、やや童顔気味だがスタイルは良い。
髪は亜麻色のセミロング。

>>32>>33のキャラも同じクラスか別のクラスで登場させようと思います。ありがとうございました。
それではこの後、導入部分から書いていきます。
今晩22時ごろに開始できると思います。
よろしくお願いします。】
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 17:19:54.99 ID:xnYkT9JMO
乙です

他のキャラも募集制?
それとも>>1さんの方で既に作成してます?
40 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 17:43:07.99 ID:aDnh4+ZCO
>>39
 何人か考えてはいますが、40人1クラスの4クラスためキャラは常に募集中です。よろしくお願いします。】
41 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 22:27:23.54 ID:aDnh4+ZCO
【遅れましたが、初めていきます。
 かなり大切なことを決め忘れていたので、本当に最初の部分だけになります。】
42 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 22:27:58.91 ID:aDnh4+ZCO
 窓を一枚隔てたその先に、わたしは見惚れていた。
 それほど速くもないバスは、ゆっくりと並木道を走る。道路の両脇には幾つもの桜の木。そして舞い散る無数の花びらはとても幻想的なものだと感じられた。

 ────次は、高度育成高等学校、高度育成高等学校…。

 そのアナウンスが車内に響くと、僅かな緊張感が漂うのが分かる。見渡す限り、赤いブレザーを羽織った若者ばかり。そう、わたしも含めて、車内の生徒はみんなこの春を以って高度育成高等学校の生徒になる新入生だ。
 今日のスケジュールは入学式と、教室でのオリエンテーション。お昼前には解散となり、そのまま学校から徒歩五分程度の距離にある学生寮に入寮することになる。特別緊張するようなことではない────とは、どうしても考えられない。これから初対面となるクラスメイトに対して好印象を植え付ける必要があるからだ。
43 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 22:28:30.28 ID:aDnh4+ZCO
 地元の小学校や中学校と異なり、わたしが入学するのは東京都内に建てられた超特権的な国立高校。卒業時の『特典』を目当てに、全国から多数の入学志願者がこの高校の門を叩くようだがその合格ラインは厳しい。

 一学年あたり、わずか百六十名。

 そんな学校にわたしの地元の知り合いは一人も居ない。いや、正確に言うと同級生は居なかった。もしかしたら今年二年に進級した先輩や、三年の先輩に地元が同じ人が居るかもしれない。少なくとも、推薦の話を貰ったときはそんな話は聞いていませんでしたが。
 ともかく、完全初対面の相手に好印象を持ってもらえるように今日は乗り切りたい────と、そんなことを考えながら、高校前の停留所でわたしは降りる。

「ふぅ……!」

 わたしは暖かくなってきた風を吸い込むように息を吸い、そしてゆっくりと吐く。緊張は無くならないけど、それでも十分に落ち着くことができた。
 あまり停留所で立ち止まっても仕方がない。わたしは正門を跨ぐ。見上げれば巨大な校舎が視界に入る。
 今日からここで三年間、わたしは様々なことを経験して勉強して、失敗もするだろう。でも、卒業の頃には、たくさんの友人に囲まれ、そしてたくさんの後輩に見送られるような人になればいいな、と。
 期待と不安。その二つが胸の奥に感じながら、『新入生はこちらです』と書かれた案内板に従って講堂へと向かう。
44 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 22:33:53.39 ID:aDnh4+ZCO
【春宮 天音のクラス決めを行います。
 この学校では優秀な生徒はAクラス、不出来な生徒はDクラスと振り分けされます。勉強ができる一方、運動もできず協調生も低い場合はDクラスにもなります。また、成績優秀、品行方正でも中学時代に長期欠席などがあればBクラスになる可能性もあります。
 天音はステータスだけ見れば十分すぎるほどにAクラスですが、安価で決めたいと思います。

安価下のコンマ1桁
1・7:Aクラス
2・9・0:Bクラス
3・5:Cクラス
4・6・8:Dクラス
また、今後ゾロ目が出た場合は、どこかで安価の引き直しができる権利をストックできるようにしていきたいと思います。】
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 22:46:56.28 ID:Ug24kWJo0
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 23:15:25.69 ID:r4BL1/1RO
この能力と性格でDクラス
これは十中八九、学園の思惑が関わってそう
47 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 23:25:00.03 ID:aDnh4+ZCO
>>45 8:Dクラス】

 講堂前に置かれた巨大なディスプレイには、クラス分けの名簿が映し出されていた。ぱっと見る限り、やはりわたしの地元の同級生の名前はない。
 ここで立ち止まって顔も知らないクラスメイトの名前を必死に覚えたところで仕方がないので、わたしはDクラスの案内板が置かれた辺りの座席に着く。特に指定はなかったため、両脇が空いている席にした。
 しばらく待つと、続々と席が埋まっていく。当然、わたしの両隣も埋まる。
 周りを見渡すと、講堂の隅の方では教師と思しき大人がやや慌ただしそうにしており、また壇上のマイク確認を行う上級生の姿も見え始める。
 講堂の上部に設置された時計は、九時五分前を指していた。あと五分後には入学式が開始して、色々な挨拶を終えた後、クラスへ移動となる。
 三年間、この辺りに居る人たちと切磋琢磨していくのかと想像に期待を膨らませ、わたしは待ち続けた。
48 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/04(土) 23:25:44.91 ID:aDnh4+ZCO

 何の変哲もない入学式が終了すると、新入生であるわたしたちはそれぞれ教室へと向かう。
 十時三十分からオリエンテーション開始と予告されており、それまでに着けば講堂で人混みがすくのを座って待つのも可能なようだ。
 しかしわたしは立ち上がり、人混みに流されるように校舎へと入り、そして一年Dクラスの教室の扉を開く。既に何人か席に着いていて、どこか落ち着きがないのは仕方がないことだと思う。
 席はあらかじめ決められており、なんとわたしの席は窓側の一番後ろだった。春宮の「は」は、単純に五十音順としたとき、どうしても廊下側になることが多かかった。しかしどうやらこの学校ではそんな常識にはとらわれない席決めが行われたらしい。
 この席はクラス全体が見渡せて、また窓の外も眺められる絶好のポイントだ。早くて一ヶ月後の五月頃には席替えの恐れもあるが、まぁそれはそれで楽しみだと思うようにしておこう。
 わたしが教室に到着してから十分も経つと、ほとんどのクラスメイトが席に着いていた。早速仲良くなったと思しき女子グループを視界に入れ、わたしも勇気を出して混ざりに行こうと考えていると、


【イベント安価です。
 コンマ1桁で判定します。
 奇数:「みんな、少しいいかな」
 偶数:「なぁ、あんた名前は?」
 0:担任の先生登場
 下の安価を採用します。】
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 23:28:32.95 ID:r4BL1/1RO
えい
50 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 00:02:52.85 ID:ZnAtS4a30
>>49 5:奇数:「みんな、少しいいかな」】

「みんな、少しいいかな」

 ちょうど真ん中辺りの席に座っていた男の子が立ち上がり、クラス中の注目を集める。彼はそのままゆっくりと教壇の方へ行き、電子黒板の前で振り向いた。
 爽やかな男の子だった。何か運動をしていたのか、程よく筋肉が付いているのが制服越しに分かる。

「先生が来るまであと十五分くらいあるよね。それまで、簡単に自己紹介でもどうかな」

 みんなが言い出せなかった、あるいはこの後のオリエンテーションの中で行われるであろう自己紹介を先に行おうと言い出した。
 クラスの一人が「いいね。やろうよ」と言う。
 その後、次々とその案に賛同する者が現れる。

「ありがとう、みんな。じゃあ早速だけど────」

 直後、パン、と机を叩く音がクラス中に響く。
 その音の発生源はわたしと同じく教室の一番後ろ、そしてわたしの対照的な位置にある廊下側の席だった。
51 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 00:03:24.57 ID:ZnAtS4a30

「……」

 派手目な髪色をした男の子が教室を出て行く。何も言わず、教壇に立つ男の子の言葉を遮って教室を出て行ったことから、とても悪い印象を持つ。
 クラス内からもそんな声がぽつぽつと上がる中、教壇に立つ男の子はこう続ける。

「ごめん、もちろん強制じゃないよ。僕たちは初対面だし、こういうのが緊張するのは分かる。僕だって膝がガクガクだしね。良い高校デビューを目指して、正直今は無理してる。でも、それはほとんどのみんなが同じじゃないかな」

 電子黒板と教卓の間に立つ彼の足元は、全然震えていなかった。こういうことに慣れた生徒なのだろう。しかしクラス中の全員が彼のような慣れている生徒であるはずがない。一部の緊張しがちな生徒に目線を合わせているようだ。

「自己紹介をする上で噛んじゃうとか言葉が詰まっちゃうとか、そういうのには目を瞑ってさ、温かく自己紹介が出来れば良いなって思う」

 さらに一押しする発言に、続々と賛同の意見が上がる。しかしその一方で、付き合ってられないと言わんばかりに何名かの生徒が立ち上がり教室を出て行く。
 そしてわたしの前の女の子も立ち上がり、振り向いて教室後方の扉から出て行く。

「────」

 わたしは、選択を迫られる。
 一瞬すれ違ったときに見えた前の席の女の子の表情がやけに苦しそうだった。ただ自己紹介をするのが嫌なようには見えない。後を追って自己紹介タイムを抜け出すか、ただの体調不良であると判断してこのまま自己紹介を済ませるか。


【イベント安価です。
 1.後を追う
 2.このまま自己紹介に参加する
 下1が1か2の選択をお願いします。】
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/05(日) 00:09:51.35 ID:2CxcblIG0
1
53 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 00:47:42.10 ID:ZnAtS4a30
>>52 1.後を追う】

 放っておくことはできなかった。
 そもそもこの自己紹介の場は、あくまでも生徒の提案によって作られた機会に過ぎない。この後のオリエンテーション、あるいは明日からの授業のどこかで先生が場を設けてくれるかもしれない。そんな期待を抱きながら、わたしは席を立つ。
 また一人、自己紹介に参加しないことに対して教壇に立つ男の子は悲しそうな顔をした。教室の前方に固まっている女子グループからは「ノリわる〜い」という声も聞こえてきたが、今はそれどころではない。
 教室後方の扉を開き、左右を見渡す。自己紹介がくだらなくて抜け出した者がDクラスの教室のすぐ側で壁に寄りかかり、時間が過ぎるのを待っている。その他にも他クラスの生徒が廊下で話し込んでいるのが見えた。
 前の席の子の姿は見当たらなかった。
 いや、見えない場所に移動したと解釈するのが正しいか。彼女がこの扉から廊下に出てからほんの数秒。考えられるのは、Dクラス教室からかなり近い位置にある女子トイレ一択。わたしは至極当然の権利として、女子トイレの戸を引く。
54 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 00:48:13.84 ID:ZnAtS4a30

 彼女には申し訳ないが、さすが国公の高校というのが第一の感想だった。教室や廊下、講堂も確かに綺麗で最新の設備が整っていたが、やはりトイレもかなり清潔感があった────と、そんな場合ではなく、洗面台近くで壁に寄りかかる彼女を見る。
 苦しそうな表情は見間違いではなかったようだ。今も苦しそうに、深呼吸を何度かしている。顔は真っ青で、やや髪が顔に張り付くほど汗を滲ませている。

「あの、大丈夫ですか?」

 わたしは話しかけることにした。彼女が一瞬すれ違ったばかりのわたしのことを認識しているかは怪しいが、気にかけておくべきだと思ったからだ。

「ぇ……あ、は、はい。だいじょうぶ、です」

 そう答える彼女は手櫛で髪を整え、わたしの方を向く。ただ、その視線はわたしの視線と交わることはない。
 なるほど、と心の中で呟く。
 声色、視線、表情から察するに、これは極度の緊張による体調不良のようだ。しかしそれは並大抵のものでなく結構重度のようで、その心労は計り知れない。
55 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 00:48:47.93 ID:ZnAtS4a30

「わたしはDクラスの春宮天音です」

「あ、えと、はぁ。わたしは、D、クラスの…早見有紗、です。あ、その、もしかしてわたしの後を追ってきたかんじ、ですか……?」

「あ、いえっ。わたしはただ手を洗いに来ただけです!」

「……でも、ちょうど今は自己紹介の時間では?」

「自己紹介に参加するよりも、手を洗うことが重要だっただけですっ!」

 ほんの少し会話をして分かった。こういった子は自分のせいで他人に迷惑をかけることに対して非常に尾を引きずるタイプだ。具合の悪そうな彼女の後を追って自己紹介を抜け出してきたと知られたときには、早見さんがかなり負担を感じることは想像に固くない。
 わたしは適当に手を洗い、最後にもう一度確認を取る。

「ほんとうに大丈夫ですか?」

「あぁ、はい。わたし、昔からこんなんで…。もう少ししたら戻りますから、春宮さんは先に戻っていてください」

 そう言われては、これ以上の心配は無用だと判断した。余計な存在として認識されるのも避けたい。
 その後、軽く別れの挨拶をしてから教室に戻る。
 案の定、窓側の先頭から始まった自己紹介は廊下側の方へと進んでいた。十時三十分を目前に控えたところで戻ってきたわたしに向けられる視線は『クラスメイトとは馴れ合わない、時間は守る優等生』と語りかけてくるようだった。

【担任教師についてです。
 奇数:生徒に対して思いやりのある先生
 偶数:何事に対しても無気力な先生
 0:天音の血縁者
 下1のコンマ以下1桁で決めます。

 早見有紗:極度の緊張症を持つ少女。
      天音の前の席。
      信頼度:35(クラスメイト、少し好印象)
      有紗「優しそうな人だったな…」
 他のクラスメイトの初期信頼度が25に低下しました。】
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/05(日) 00:50:38.32 ID:4GmmlNyf0
57 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 00:58:34.97 ID:ZnAtS4a30
>>56 2:何事に対しても無気力な先生
 あまり進められませんでしたが、今回はここまでにします。
 安価にご協力いただいた方、読んでいただいた方、ありがとうございました。】
58 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 22:22:22.34 ID:ufA6Tnbd0
【再開します。】
59 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 22:22:56.40 ID:ufA6Tnbd0
>>57 2:何事に対しても無気力な先生】

 それから数分後、教室前方の扉が開く。
 出席簿を片手にした男性は、どこか覇気が欠けていた。清潔とは言い難いボサボサの髪、曲がった背中、新年度早々だというのにスーツに皺が寄っているなど、マイナス要素が散見される。
 どう見ても変質者。その共通認識を一年Dクラスの生徒は持つ。

「はぁ…」

 教卓に出席簿を置くなりそう発せられる言葉というか溜め息。わたしはその瞬間、この先の三年間がとても不安になった。言い方は悪いが、こんな先生で大丈夫なのか、と。
 それから項垂れるように先生はもう一度大きく溜め息を吐くと、ようやく顔を上げる。
 ある程度想定はできていたが無精髭が生えている。
 しかし顔は悪くないと思った。きちんと髪を切り、髭を剃って眉を整えれば十分に格好良い青年になりそうだ。見た目から察するに、年齢は三十代手前といったところか。背中が曲がっているせいで年老いて見えるが、肌に年齢が出ている。
60 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 22:23:35.91 ID:ufA6Tnbd0
 そんな風に観察をしていると、わたしは先生と目が合う。

「────」

 声が出そうになるのを抑える。
 睨まれた。ただ何か怨念を持って睨まれたのとは異なり、見定めるような視線。たった一瞥されただけで、わたしの全てを見透かすような目だった。
 気味が悪い。その一言に尽きる存在に、わたしは先生に対する認識を要注意人物として確定させる。

「えー、はい。それでは、まず皆さん。ご入学おめでとうございます。私は一年Dクラスの担任になりました伊藤弦と申します。えー、そうですね、この学校にはクラス替えがありません。つまり三年間、私がこのクラスの担任となります。えー、はい。よろしくお願いします」

 見た目通りの、覇気の無い挨拶。終いには「よろしくお願いします」と頭を下げたところで勢い余って教卓に頭をぶつける始末。ゴツン、と音を教室中に響かせると、クラスの反応は二つに分かれる。
61 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 22:24:10.93 ID:ufA6Tnbd0

「なに、この人…」

 静かに囁く者。

「せんせー、それってボケですか? ちょっと微妙じゃないっすか?」

 苦笑いを浮かべながら正直に声を上げる者。
 いずれにしても、一連の流れから担任の先生イコール『変な人』というイメージが早速定着したようだ。

「失礼しました。続けます。机の上に資料を置いておきました。皆さん、ありますでしょうか」

 机の上に置かれた大きめの封筒。その中には薄いパンフレットが二部入っていた。先生の合図のもと、パンフレットを取り出す。
 一部目は学校に関する資料、そしてもう一部はケヤキモールという商業施設に関するパンフレットだった。

「えー、ケヤキモールに関するパンフレットは、この後各自でご覧ください。この場では学校に関することをお話します」

 そのまま先生は続ける。
62 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 22:24:37.10 ID:ufA6Tnbd0

「まず、この学校には独自のルールがございます。皆さんもご存知の通り、全寮制で、在学中の三年間はこの敷地内から出ることができません。また、外部との連絡を一切取ることができません」

 あまり聞き馴染みが無いが、全国の高校を探せばどこか全寮制の学校もあるだろう。しかし学校の敷地から出られない、外部との連絡を取れないというのはハッキリ言って異常だ。
 勉強の進捗や友人のことを家族に会って話す、電話で話すことを禁じるルール。まるでこの学校で起こるあらゆる事象を口外しないようにするためのルール。
 事前にその話は聞いていたが、いざ改めて説明を受けると違和感しか感じない。

「ですが、ご安心ください。学校から徒歩数分の距離にあるケヤキモールには、あらゆる施設が揃っています。スーパー、服屋、カフェ、レストラン、映画館、カラオケ……あー、クリーニング屋などもです。基本的に手に入らないものはないでしょう。どうしても手に入らないものは学校に申請の上、およそ一週間ほどで通販を利用することもできます。……無いと思いますが」

 そこで「おおっ」と声が上がる。一部の生徒は早速、もう一つのケヤキモールの関するパンフレットを開き、近い席同士で勝手に盛り上がり始める。

「えー、買い物には学生証端末を使用します。皆さん、始業式の前に受け取ったと思います。電源を入れてください」

 始業式の講堂に着く前、出席確認を終えた生徒に対して渡された小型端末。指示があるまでは電源を入れないようにと念押しされていたが、今ようやく電源を入れる。
63 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 22:25:11.30 ID:ufA6Tnbd0
 数秒ほどで電源がつき、顔写真と学籍番号、氏名、生年月日、そして『100000PPt』の文字が浮かび上がる。

「この学校ではあらゆる物をポイントで買うことができます。ポイントは毎月1日に振り込まれることになっていて、1ポイント1円の価値になります。えー、入学を果たした皆さんには十万円分のポイントが振り込まれているというわけですね」

 さっきまでは黙って話を聞いていた生徒も、流石にこの説明を受けて初めて動揺を見せる。

「せんせー、これ、まじですか?」

「はい、まじです。皆さんは才能のある若者。入学を果たした時点で、それだけの価値があるということです……と、学校のえらーい人が言っていました」

「……まじっすか」

 ケヤキモールのパンフレットには、有名ブランドの服屋が多数出店されている。一般的な高校生では手が出せないようなブランド品も、この学校に入学を果たした生徒であれば手にする権利はあるということか。
 なんとも胡散臭い。
 一学年あたり百六十人、三学年で四百八十人。毎月各自に十万円分も支払っているとすれば、いくら政府の息がかかった高校とはいえ出費が底知れない。
 本当に毎月一日に十万ポイントが支払われるのか。
 そんな疑問を抱きながら、寮の部屋割り振りや明日以降のスケジュールについて説明を受ける。
 そして十二時前に、解散となる。残念ながら、自己紹介の時間はなかった。しかしそれを幸いとばかりに、早速ケヤキモールへと向かう生徒が多数見受けられる。
 さて、わたしはどうするか。


【イベント安価です。
 1.ケヤキモールへ
 2.寮へ
 3.先生に話しかける
 下1の方、1〜3のいずれかを選択してください。】
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/05(日) 22:33:23.45 ID:eVrP9/570
1
65 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 23:11:47.53 ID:ufA6Tnbd0
>>64
 1.ケヤキモールへ】

 わたしもケヤキモールへ向かうことにした。ポイントについて気になることはあるが、まずはこの目でポイントを使用した購入を経験したいと考えたからだ。
 それに、この敷地内の唯一の娯楽施設にして、娯楽施設の究極系とも言える商業施設に興味を持ったのが大きい。寮に一般的な寝具や調理器具が揃っていると説明を受けたものの、おそらく快適な睡眠や凝った料理を作ろうとすればケヤキモール内の家具屋や家電量販店を利用することになるだろう。
 帰りの支度────は、不要だった。教科書はすべてタブレット端末にインストールされたモノを利用する。原則持ち帰り禁止とされていて、寮の部屋に設置されたパソコンもしくは学生証端末にて予習と復習を推奨されている。明日以降は、ノートのみ持ち帰りすれば良いらしい。
 ひとまず今日のところは、ほぼ手ぶらでケヤキモールへと向かうことができそうだ。
 気が付けばクラスの半数以上が教室を出ていて、数人が未だに信じられないという表情をして学生証端末とにらめっこをしていた。
66 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 23:12:13.30 ID:ufA6Tnbd0

 学校から徒歩数分。そんなつもりもなく桜の花を踏み、わたしはケヤキモールの入り口に到着した。入り口付近には案内板が設置されていて、各施設が何階のどのエリアにあるかを示している。
 色々と興味の惹かれるお店はあったが、まずは必要最低限の必需品の購入へと行動を移そう。
 まずは部屋着と外出用の服。着回しが可能なものを選択していく。今は暖かくなり始めた季節だが、今後夏や冬には相応の服を買う必要が出てくる。参考までにコートは二万ポイント近くした。買えなくはないが、そもそも冬ではないというのと、今はまだポイントを使いすぎることは無いと判断する。
 服、日用品、そして入学前にパンフレットだけで見た限りは殺風景な部屋を彩るための雑貨。総じて一万ポイントと少し。学生証端末を利用した決済はイメージ通りタッチで決済のようなものだった。
 一通りの買い物を終え、ケヤキモール内を歩いていると大型家具屋を見つける。
 店頭に置かれたベッドは気品を感じさせ、また快適な睡眠につけそうな魅力を放っている。参考までに値段を確認すると、およそ半年分のポイントが記載されている。とてもじゃないが買えるような金額ではない。一年間節約を続けて、ようやく購入できるかどうか。
 少し羨ましいと思いながら家具屋をスルーして、今度は食品売り場へと向かう。


【ステータス安価です。
 下1のコンマ反転させ、自炊能力に関するステータスを決めます。
00(下手)〜99(プロ並)
ゾロ目が出た場合は安価引き直しの権利をストックします。
00は下手でありながら引き直し可能なため、ここで引き直すことも可能です。
99は上手のため引き直す必要がなく、今後のコンマ判定で引き直す権利を使用することが可能です。

また、自炊能力が50以上で基本的に自炊することになり、49以下で惣菜購入や外食が続いて出費が多くなります。
食費については毎月月初に以下のようにポイントが減っていきます。
自炊する:マイナス15000
自炊しない:マイナス20000
成長性高のため、特訓を続ければ途中から自炊が可能にもなります。
現在の所持ポイント:87560ポイント

下1のコンマ反転でお願いします。】
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/05(日) 23:24:55.72 ID:4GmmlNyf0
高く
68 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/05(日) 23:49:02.97 ID:ufA6Tnbd0
>>67
 72 → 27 (低め)】

 自慢でも自虐でもないが、現状のわたしの料理の腕はお世辞にも高い方とは言えないだろう。なにせほとんど経験が無いからだ。親に甘えきった結果、こうして一人暮らしを始めると困る。
 料理は今後前向きに腕を上げていくとして、まずはお昼ご飯をどうしようかと迷う。食品売り場を歩いていると、お惣菜の良い香りでお腹が空く。お惣菜を購入して寮に戻って食べるか、入学と共に大金を手にしたことに少しばかり羽目を外してレストランで食事をするのも良いだろう。ぱっと見た限り、高級そうなお店は少なく、ファミレスが幾つか入っているようだった。ファミレスであれば少しの出費で済むだろう。
 少し迷った結果、ファミレスへ行くことにした。
 というのも、自炊から逃げた訳でも寮へ戻るのが面倒だと思ったからでもない。他の生徒の動向を伺いたかったのだ。今日は一年から三年までが午前中で授業が終わると聞いている。つまり、他の同級生や上級生のお金の使い方が見れるかもしれないかと考えたからだ。
 そうと決まれば早速食品売り場を出て、エスカレーターでレストラン街のある階へと進む。
 ケヤキモールは四階層になっていて、先ほどまでわたしが買い物をしていたのは一階と二階。三階には飲食街、四階には娯楽施設が入っているらしい。
 エスカレーターで登ること二階層。三階には多数の生徒が往来していた。それこそ本当に一年生から三年生までの生徒が何十人と。
 比較的、一人〇〇に抵抗がないわたしだが、こんな閉鎖された学校で一人ご飯をしているところを見られればすぐに噂が広まる。できれば隅の方の席が空いているファミレスに入りたいなと考えていると、

【イベント安価です。
 下1のコンマ一桁で決めます。
 奇数:「あ。君、一年Dクラスの子だよね」
 偶数:「あれ、もしかして一年生ちゃん?」
 0:怒鳴り声】
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/05(日) 23:54:11.85 ID:eVrP9/570
70 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/06(月) 07:09:06.53 ID:lLSm5UNm0
>>69
 5:奇数:「あ。君、一年Dクラスの子だよね」】

 真正面から数人のグループが目についた。
 そのうちの一人は、今朝Dクラスで自己紹介を提案していた男の子だった。早くも打ち解けたクラスメイトとランチのようだ。
 明日以降、本格的な友達づくりを始めるとして、今はまだお互い顔と名前が一致していないはずだ。ここは目的を優先させるためスルーが定石かな。
 心のどこかで少し気にしながらも通り過ぎようとしたとき────。

「あ。君、一年Dクラスの子だよね」

 そう話しかけられて、わたしはドキッとする。

「……あ、気のせい、だったかな?」

 頬を指でかく仕草を見せる彼。

「えっと、そうです。Dクラスの春宮です」

「あぁ、よかった。僕は一色颯。これからDクラスの人たちとご飯食べていくんだけど、もしよかったら春宮さんもどうかな」

 周囲への気配り上手な一色くんの周りには、男の子が二人人、女の子が二人いた。男女比率的にはわたしが入ることで三対三となる。
 ……特に、断る理由もないかな。
 顔と名前が一致しないって理由だけで話しかけるのは否定的だったけど、お互いに名乗った今はその必要もない。
 それに集団の方がお店に入りやすいし、各自の金銭感覚も少しだけ把握できる。また、当初の目的であった上級生の懐事情に関する情報集めも出来そうだ。


【イベント安価です。
 下1の安価で決めます。
 1.グループに混ざってランチ
 2.一人でランチ

 一晩明けてしまいましたが、ここまでにします。
 また今晩、続きをやりたいと思います。】
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/06(月) 08:01:14.79 ID:lZnO8yRZ0
1
72 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/06(月) 22:13:40.54 ID:bkAqMd9nO
【再開します。】
73 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/06(月) 22:14:20.00 ID:bkAqMd9nO
>>71
 1.グループに混ざってランチ】

 わたしは二つ返事で了承した。
 幸い、日用品などはケヤキモールの入り口近くのロッカーに預けていることもあって、一人だけ荷物いっぱいで浮くなんて事態を避けることができた。
 お店探しついでに、簡単に名乗り合う。
 男の子は一色くん、立花くん、篠崎くん。そして女の子は清水さんと木下さん。全員の顔と名前はすぐに覚えることができた。

「あ、ここいいんじゃない?」

 挨拶もそこそこに、清水さんが立ち止まる。視線の先には全国展開しているファミレスの看板があった。比較的田舎と言われるわたしの地元にも二店舗ほどあり、何度か利用したことがある。

「ここでいいかな、みんな」

「さんせー」

 反対意見が無いことを確認すると、率先して一色くんが席を取るため入店し、店員さんと話す。
 間もなくして案内された席は、入り口から近いところだった。少し騒がしいが、この場所ならお店の出入り口とレジが確認できる。わたしの目的を果たすのには適している席だ。
74 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/06(月) 22:14:48.71 ID:bkAqMd9nO

「失礼ですが、お客様は新入生の方でしょうか」

 席へ案内してくれた店員さんが、わたし達に問う。

「えぇ、そうです」

 一色くんが答えると、店員さんは「少々お待ちください」とい言い残して席を離れ、そして僅か五秒後にパンフレットを持って戻る。

「当店では、学生証端末にてご注文いただき、向こうのレジで学生証端末をかざしていただくことでお会計が可能です。ただ、この施設の中、すべてがこのような仕組みを導入しているわけではありませんのでご注意ください」

 テーブルに開かれたパンフレットには可愛らしいイラストと文字で、いま店員さんが言った一連の流れが記載されている。さらに、パンフレット裏側にはこの仕組みが導入されている店舗と、口頭でのオーダーの店舗情報が載っていた。
 店員さんにお礼を言い、学生証端末からケヤキモール専用アプリ、さらに店舗詳細情報からこのファミレスを選択する。するとメニュー表が現れる。

「ほんとハイテクってかんじだよねー」

「メニューを見せ合うのがないのはちょっと寂しい気もするけど、これはこれで便利だな。あぁ、そうだ。難癖をつけるとしたら、誰が何を頼んだのかが分からないってところか」

 たしかに、その難癖には一理あった。
75 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/06(月) 22:15:15.63 ID:bkAqMd9nO
 しかし冷静に考えると、各自の学生証端末から注文されているため何年何組の誰が注文したのかを店側が一元管理しているのではないだろうか。
 もしかすると「トマトパスタをご注文の春宮様」なんて、名指しで注文品が運ばれてくるかもしれない。
 それからしばらくの間、端末を片目にアレコレ言いながら各自が注文を終える。
 ここで話題はみんなの中学時代の話へ。

「一色くんと篠崎くんってスポーツとかやってたかんじ? なんか体格とかしっかりしてるよね」

「そうだね、一応バスケ部だったよ」

「一色もバスケやってたのか? 俺もやってたぜ」

 木下さんの問いに、一色くんが答えると、篠崎くんも同調する。残り一人の男子、立花くんはどこか居心地が悪そうにしている。
 こういった共通の話題が一部で生まれると、どうしても置いてきぼりにされやすい。少し話の方向性を変える必要がありそうだ。

「そういえばこの学校って部活動とかあるのかな?」

 わたしの発言に、周りは「おいおい」とつっこむ。

「春宮さん、先生の話聞いてなかったかんじ? 明日の放課後、体育館で先輩達が部活動の紹介するって言ってたじゃんよー」

「あれ、そうだっけ。ごめん、ポイントの話とかに夢中になって聞いてなかったかも」

 実際のところわたしがきちんと話を聞いていたかどうかはともかく、少し話題をずらすことに成功した。しかしこのままではバスケ部の話に進展してしまう可能性がある。もう少しずらす必要がありそうだ。


【イベント安価です。
 1.「みんなはどうしてこの学校に入学したの?」
 2.「みんなの趣味とか教えてよ」
 3.その他、聞けること
 下1の方お願いします。】
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/06(月) 23:04:13.74 ID:EuxfF9+D0
77 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/07(火) 20:26:23.06 ID:oo6gk2NrO
【昨晩は続きが出来ず申し訳ありませんでした。
 再開します。】
78 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/07(火) 20:26:56.92 ID:oo6gk2NrO
>>76
 1. 「みんなはどうしてこの学校に入学したの?」】

「ところでさ、みんなはどうしてこの学校に入学したの?」

 ふと、そんなことを聞いてみた。
 すると皆が皆、一瞬考え込むようにして、一つの結論を出す。

「まぁ、やっぱり『特典』目当て……だよねぇ」

 清水さんの発言に、篠崎くんと木下さんが頷く。
 一色くんと立花くんは「それもあるけど…」と考えていることが、表情から読み取れた。

「そっか、そうだよね。どこでも進学・就職できるっていうのは、この学校の特権だよね」

 そう、この学校への進学の話を聞いたとき、わたしはとても驚いた。
79 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/07(火) 20:27:26.98 ID:oo6gk2NrO
 それは『どんな学校でも企業でも、フリーパスで入学ないし入社ができる』というもの。例え学力が低くても有名私大に入ることは容易いと聞く。

「まぁ正直、半信半疑だったけどさ、なんか本気にしてもいいっつーか、もう疑う余地がないみたいな?」

 授業料としてお金を払うどころか、お金を貰えるというのは一般的な学校とは大きくかけ離れている。
 そんな常軌を逸した制度があるからこそ、裏口入学や裏口入社といった話も現実味を帯びてくる。
 そんな美味い話の裏には当然、

「────」

 あぁ、ダメだ。また考えすぎている。
 わたしは思考を止める。
 今はただ、この場を楽しんで友達を作らないと。
 あらゆる状況を想定した脳内シミュレートは数ヶ月前に卒業したはずだ。考えすぎると、またああなる。
 冷水で喉を潤すと同時に、熱くなった頭を冷やす。
 さらに胸の内で深呼吸をすると、だいぶ視界がクリアになったのが分かる。

「てかさ、春宮さんって────」

 清水さんが何かを話そうとしたタイミングで、注文した料理が運ばれてきた。案の定、名前を呼ばれて。
 一通りテーブルの上に料理が置かれると、清水さんは話を戻すことなく、幸せそうに食事を始めた。それほど重要な話ではなかったのだろう。
80 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/07(火) 20:28:04.44 ID:oo6gk2NrO
 それからしばらく、改めて中学生の頃の話に花を咲かせ、夕方前には解散となった。お会計方法は学生証端末をタッチするだけ。支払金額や残高は学生証端末の画面と、おそらく店員さん側の画面でしか分からないだろう。公の目に留まるような場所に所持ポイントなどが出るはずもなかった。
 もし上級生の所持ポイントが分かるようなことがあれば、そのときはわたしの『仮説』はほぼ正しいと確証を得られただろう。
 確認ができなかった以上、その仮説は仮説に過ぎない。
 しかしわたしは五人と連絡先を交換した。早くもクラスチャットおよびグループチャットに参加させてもらえたことは大きな収穫だろう。素直に嬉しかった。


【所持ポイントマイナス1200
 87560ppt → 86560ppt

 イベント安価です。
 1.本屋
  ポイントを消費して料理の本などが購入できます。ただ買うだけでは意味がなく、今後の自由時間で読むと料理の腕が上がったりします。
 2.寮へ
 3.学校へ
 下1でお願いします。

 それと、文章は読みにくいでしょうか。
 読みにくかった場合は書き方を変えます。】
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/07(火) 21:43:32.27 ID:vePKuw3rO
1
82 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/07(火) 22:29:48.07 ID:MB3dUsC60
>>81
 1.本屋】

 目的も無しにケヤキモールを徘徊していると、本屋を見つける。店先の案内版を見る限り、一般的な書店と大差ないラインナップが揃えられている。国内と海外向けの旅行誌が用意されているのは、敷地から出られない学生に対してのせめてもの情けなのか、皮肉なのか。
 ともあれ進学に伴い電子書籍へ完全シフトしなくて済むというのは助かる話だった。モノによるが、やはり紙媒体の方が本を読んでいる感がある。
 お気に入りの作家さんの新作が出ていないことは承知の上だが、自然と背表紙に書かれた作家名を目で追ってしまう。

「やっぱりないかぁ」

 つい独り言を吐いてしまう。
 かれこれ三年ほど新作が出ていない。何の告知も無しに出版することも考えられないが、どうしても心のどこかで期待し続けてしまっている。
 わたしはその後しばらく他の作家さんの小説を吟味した後、学術書や趣味に使えそうなコーナーを転々と見て回る。

【コンマ安価です。
 奇数:料理本を購入して寮へ
 偶数:イベント
 安価下のコンマ1桁でお願いします。】
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/07(火) 22:47:27.49 ID:vePKuw3rO
連取りありならこのコンマで
無しなら下で
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/07(火) 23:04:35.92 ID:sR6jp3oYO
ほい
85 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/07(火) 23:44:10.63 ID:MB3dUsC60
>>83
 9:料理本を購入して寮へ】

 一通り本を見漁って、わたしは料理の基本を学ぶためのノウハウ本を購入した。本当に基礎的な包丁の持ち方や野菜の切り方、それに簡単なレシピが幾つか載った薄い本だ。
 紙袋を片手に、ケヤキモールの入り口へと戻る。
 専用ロッカーに学生証端末をかざし、預けていた荷物を受け取って外に出る。寮までは五分程度。少し重たいが、ちょっとした運動程度にはなるだろう。
 桜の並木路を歩き、一年生用の寮へと着く。
 フロントに立っていた職員の方の指示に従い手続きを済ませる。ルームキーと寮での生活におけるルールブックを戴く。

「ありがとうございます。今日からよろしくお願いします」

 わたしはお礼を言い、日用品や本が入った袋を両手に持ち直し、エレベーターへ。Dクラスの女子の半分は11階らしい。
 偶然誰かと居合わせることもなく、すんなりと目的階に到着する。私の部屋は『1101号室』。エレベーターを出て廊下を一番右まで行ったところにある角部屋だ。また、近くには非常階段がある。
 ルームキーを部屋の扉に通すと、胸の高鳴りを感じる。今日から一人暮らしという高揚感。部屋にどんな物を置こうか想像が膨らむ。
86 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/07(火) 23:44:46.53 ID:MB3dUsC60
 扉を開け、玄関からじっくりと内装を観察した後、鍵を閉めて部屋へ。荷物を置いて早速部屋の中を見て回る。
 勉強机、パソコン、ベッド、冷蔵庫、ケトル、クローゼット、洗濯機、バスルーム。
 一通り見て周り、不足している物を思い浮かべる。

「一通りの調理器具と、電子レンジ……は、いらないかなぁ」

 寝て起きるだけならこのままでも問題なさそうだが、せっかくなら料理も出来るようになりたい。確かケヤキモールの一階にホームセンターがあったはず。明日にでも赴いて、購入を検討する必要がある。
 それからわたしは買ってきたものを袋から出し、とりあえず買い立ての部屋着に着替えることにした。本来なら一度洗濯をした方が良いかもしれないが、一番最初は仕方がない。

「と、よしっ」

 数分ほどでやることを終え、わたしはベッドの上で一息つく。
 今日はまずまずの一日だったのではないだろうか。
 色々と気になることが多く、つい考え込んでしまうところもあったが、何よりクラスメイトと連絡先を交換できたのは大きい。今もこうしているうちに、わたしの携帯は小刻みに震えている。クラスチャットがそこそこ盛り上がっているようだ。
 わたしは携帯をベッドの上に置き、窓際へと移動する。真っ白なカーテンを開けると、夕焼けに染まる学校が目についた。

『高度育成高等学校』

 その学校は、果たして入学できた時点で人生勝ち組を約束されるのか。

「……」

 それとも、と考えたところで思考を止める。
 結局、高校生となった今日も昔のわたしと似たような考えをずっとしていた。打算的な思考。それは捨てたはずなのに、無意識のうちに絡みついてきている。

「……ダメダメ、そんなの」

 損得勘定なしで、わたしはわたしの人生を歩む。
 欲を言えば、誰からも好かれる。
 そんな生徒を目指して。
 一歩一歩、確実にわたしの力をクラスへ貢献できるように頑張ろう。


【イベント安価です。
 7・0:外出
 その他:翌日学校
 下1のコンマ1桁でお願いします。】
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/08(水) 00:14:07.30 ID:BHo4RfVYO
88 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/08(水) 07:08:23.58 ID:CEGUFkD4O
>>87
 0:外出】

 改めて学校とケヤキモールのパンフレット、そして寮生活におけるルールを確認していると時刻は二十時を回っていた。
 ルール上、深夜帯に男子が女子の部屋のフロアに居ることは原則禁止されているものの、コンビニなどの外出は制限されていない。
 各階のエレベータードア付近、一階のフロント、寮出入り口、徒歩三分程度のコンビニ付近には監視カメラがある。学校の敷地内であることも考慮すると、まず滅多なことは起こらないだろう。深夜帯に高校生が一人で外出しても然程危険はないと思われる。

「よしっ」

 わたしはコンビニへ行くことにした。
 ケヤキモールは一部を除いて二十時閉館。スーパーもその内の一つだ。コンビニの方が高くつくのは想像に難くないが、今後もし部活動に所属する場合は放課後の練習などでスーパーの営業時間に間に合わない可能性がある。
 そういったやむを得ない場合にコンビニを利用する機会も少なくないだろう。事前にある程度の物価を知っておけば、週末に食品を買い込むこともできる。
 軽装に着替えて部屋を出る。エレベーターまで若干距離はあるものの、角部屋だったのはなんとなく得した気分だ。
89 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/08(水) 07:09:16.94 ID:CEGUFkD4O
 程なくしてエレベーターに乗り込み、一階へ。
 フロントのお姉さんはいなかった。しかしその分、至るところに設置された監視カメラが目についた。
 特に気にせず外へ出るとひんやりとした風に包まれる。日中は暖かかったとはいえ、夜は冷える。コンビニついでの散歩も程々に、わたしは歩き始める。
 道中、数人の同級生と思しき人とすれ違う。
 特に話しかけることも話しかけられることもなく、目的地であるコンビニへと辿り着く。コンビニの前には部活動終わりの上級生が数人屯していた。
 コンビニの中は内装も販売品も地元のものとほぼ変わりなかった。強いて言えば、少し日用品の幅が広いことか。ケヤキモールの営業時間に間に合わなかった生徒のため準備されているものだろう。
 売られている物、値段を見て回る。
 想定通りの値段に近しい。割高になることも学割が効いていることもないようだった」

「────」

 しかし一点、気になるものを見つける。
 コンビニの奥の方に置かれた、商品が入ったカゴ。
 そこには貼り紙でこう書いてある。

『このワゴンの商品 無料 一ヶ月 3つまで』

 賞味期限が近そうな食品の他、洗剤や消臭スプレーなどが置かれている。食品はともかく、洗剤や消臭スプレーはコンビニの中に普通に売られている。
 わざわざ同じ商品を同じコンビニの中で有料と無料に区分けしているのは何か理由があるのか。
 このことは気に留めておく程度とし、特に欲しいものも無かったためコンビニを出る。収穫品はゼロだったが、二つ知ることができた。
 一つ目は、コンビニはやはりスーパーよりも高い。
 二つ目は、無料配布の商品。
 今後のコンビニ生活には十分に役立つ情報だろう。

【イベント安価です。
 4・6:「一年Dクラスの春宮だな」
 その他:翌日
 安価下のコンマ一桁でお願いします。
 
 続きは今晩にします。ありがとうございました。
 文章が見づらいなどありましたら書き方を変えます。】
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/08(水) 07:37:12.26 ID:yoLBrh0C0
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/08(水) 22:47:37.09 ID:gI0bR3+/o
今日はあるのかな
92 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:45:43.08 ID:gvlgOaLx0
【かなり遅くなりましたが、再開します。
 続きは今晩にしたいと考えています。】
93 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:46:18.15 ID:gvlgOaLx0
>>90
 6:「一年Dクラスの春宮だな」 】

 思いがけない収穫を頭の引き出しに詰め込んでコンビニを出ようとしたところで、わたしは立ち止まる。
 先ほどまでコンビニの前で屯していた上級生の数人が店内へ視線を向けていたからだ。
 それに、その内の一人は携帯で通話しているようだった。
 しばらくドア越しに様子を伺っていると、コンビニのドアが開く。上級生の一人がわたしの目の前へ。

「一年Dクラスの春宮だな? 春宮だよな」

「は、はい。そうですけど…」

 身長は百八十センチに届くかという男子生徒に見下ろされ、言葉が詰まる。やや上擦った声色で応答すると、彼は外で通話をしている生徒へアイコンタクトを送った。

「少しいいか? 時間は取らせない。いいよな」

 独特の言い回しをする先輩に連れられて店の外へ。
 店外にも監視カメラが設置されているため、大ごとにはならないだろう。ならないといいな。
94 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:46:43.35 ID:gvlgOaLx0
 少し不安な気持ちを抱えながら、聞いてみる。

「あの、なにかご用でしょうか」

「お前に会いたがってる人がいる。ここで待ってな」

 状況から察するに、件の人物は上級生で間違いない。さすがにたった一日で上級生を顎でつかうような一年生は現れないだろう。
 それから何度か小まめに連絡を取る先輩方を横目に、わたしは携帯を弄る。と言ってもクラスチャットに目を通すだけ。為人は文章に如実に現れる。まだ顔と名前が一致しているわけではないが、一部生徒の名前に対して、どういう人物かのイメージを持つことができた。
 そんなことをして店先で待つこと十分。
 学校の方から男女一組の生徒が姿を見せる。
 どちらも制服で、手には茶封筒を抱えている。
 わたしはその内の一人、男子生徒の方を知っていた。

「おう、待たせたな。……あ? ただ待たせてたのか?」

「は、はい。待ってろと、言われていたので…」

「馬鹿野郎。可愛い後輩ちゃんにコーヒーの一本くらい奢ってやるのが先輩ってもんだろ。なぁ?」

 男性の方────半日前、入学式で生徒会長の挨拶を務めていた人物────確か名前は、錦山暁人。やや粗暴な言動のまま、わたしに声をかけてきた先輩を小突く。
95 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:47:10.23 ID:gvlgOaLx0
 一方でわたしは反応に困った。「なぁ?」と言われても、同意はしにくい。

「お前らはもう行っていいぞ。乙葉、ちょっと離れたところで待ってろ。あー、そうだ。この前、遣いに行かせたときのポイントが余ってたよな? それでコーヒー買ってきてくれ。なぁ、アイスとホットどっちが好みだ?」

「……ホットでお願いします」

「だそうだ。俺はアイスな」

 マイペースに話す生徒会長の発言に、乙葉と呼ばれた女子生徒は深妙な面持ちで会長へ近付く。

「もう残ってないけど」

「……は? いや、あの時のポイントが残ってるとかどうでも良くてさ、とりあえず立て替えてくれよ。後で倍にして返すからさ」

「いや、だからもうポイント無いんだって」

 その発言に、会長は額に手を当てて空を仰ぐ。
 しばらく訪れる静寂の間。
 それを破ったのは、呆れたような表情をする会長だった。

「お前、三年生になったらちゃんと節約するって言ったじゃん。まだ四月の一週目だぜ? 一週間も経たずに今月のポイント全部使ったのか?」

「うん、そうだけど」

「……もういいや。ほら、端末出せ」

 手慣れた手つきでお互いが学生証端末を操作する。
 なるほど、ああやってポイントを他人に与えることもできるのか。目の前のケースは特殊のようだが、今後何かの役に立つかもしれない。覚えておこう。
96 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:47:41.92 ID:gvlgOaLx0
 乙葉先輩は満面の笑みでコンビニへと消える。
 そして数分後、ホットコーヒーとコーヒー味のアイスを買ってきた。わたしは理解が追いつかず、ホットコーヒーを受け取るのを躊躇う。

「どうしたんだよ天音。あぁこれか? アイスコーヒーつっても、俺はこのコーヒー味のアイスが好きなんだよ。あいつが間違ってるわけでも、嫌がらせをしようとしたわけでもねぇ。むしろ飲み物の方を買ってきたら叱っていたところだ」

 その言葉を聞いて、安心する。
 仲の良い二人だからこそ成り立つお遣いのようだ。
 わたしはホットコーヒーを受け取って会長と乙葉先輩の両方にお礼を言う。乙葉先輩が「いいのいいの、コイツ、結構貯め込んでるから」と言うと、お菓子とジュースが入った袋を持ってわたし達から距離を取る。
 アイスの袋を開けて早速齧り付いた会長はわたしと目を合わせることなく話し始める。

「平塚邦彦。知ってるよな?」

 ドクン、とわたしの心臓が大きく跳ねるのが分かった。決して表情には出ていないと思うが、そんなことよりもどうして会長の口からその名前が出たのかが気になる。

「中三の頃、あいつが俺の中学に転校してきた。たまたま部活動で知り合って、二ヶ月程度だったがよく話をしてくれた。好きなこと、嫌いなこと、家族のこと、それから幼馴染の春宮天音という少女のことを」

「……」
97 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:48:12.12 ID:gvlgOaLx0

 わたしは俯いて話を聞く。

「神童って呼ばれていたみたいだな」

「……そんなんじゃ、ありません」

「小学生とはいえテストでは常に満点、誰よりも早くチャリンコに乗れて、逆上がりも、縄跳びも出来たそうじゃねぇか。文武両道、完全無欠の優等生って聞いたぜ」

 俯いたところで会長の話が途切れることはない。
 わたしの過去を穿り出すように淡々と告げる。

「ただ頭が良い奴だけならいくらでも居る。ただ身体を動かす事が得意なやつならいくらでもいる。ただお前は、随分と頭がキレるらしいな。大人が考えた謎解きを数秒で解いて学校の行事を潰したとか────」

「……」

「いや、悪りぃ。悪気はないんだ。俺は面白いと思ったぜ。難しい問題を考えられない大人が悪いってな。まぁ難しくしすぎても他の子供が解けないわけだが」

 そんなこともあった。
 いつしか記憶から抹消しようとしていた記憶。

「まぁ何はともあれ、お前はスゴイ奴らしいな。そんなお前がこの学校に入学するって聞いて、俺はつい一晩かけて笑っちまった。運命なんてこれっぽっちも信じていなかったが、噂の天才と会うことが出来たんだからな」

「……話はそれだけでしょうか」

「いいや、ここからが本題だ。邦彦から言伝を預かっている」

 その言葉にわたしは顔を上げる。
98 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:48:43.51 ID:gvlgOaLx0
 喧嘩別れしてしまった彼からの伝言。
 それはやはり、わたしを責めることだろうか。
 決して逃れることのできない嫌な記憶が蘇る。

「あー、いいか? こんな風に代弁するってのは、なかなか気恥ずかしいが、仕方ねぇ。男の約束だ」

 会長は頬を指で掻くようにした後、こう続ける。

「あの時はごめん。僕が間違っていた。天音ちゃんはクラスの赤点ラインを下げるためにわざとミスしてくれていたんだね。僕は実力を出さない君に対して、色々と暴言を吐いてしまった。本当にごめん────ってな。多分、一言一句間違ってねぇ」

「……っ」

 胸が張り裂けそう、とはよく言ったものだ。
 まさにそれを体感している。
 どんな意図があるにしても実力を出さず、まずまずな点数を取り続けるのは一部からしてみれば嫌味と認識されても無理はない。
 ただそれだけならまだ良かったかもしれない。
 しかしわたしはその後、言い返してしまった。
 そもそもこんな簡単なテストで満点を取れない方がおかしい、と。
 その言葉の痛さ、重さを理解したときには、すべてが手遅れだった。程なくして邦彦くんは地元を離れた。それから何人もの友人がわたしと接することを辞め、わたしは一人ぼっちになる。
99 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:49:10.52 ID:gvlgOaLx0
 その後は、単純だった。
 わたしのことを知っている人が少ない場所で、とにかく他人に好かれるよう努力をした。幸い、物事を分析することが得意だったわたしが他人を気遣い、そして好かれるようになるのは簡単なことだった。
 いつしか形成された春宮天音という少女の偶像。

 明るく朗らかで前向き、頑張り屋で好奇心旺盛、様々なことに興味を示して習得しようとする。周りから頼られる事が好きな少女。

 それがわたしが思い描くわたしという人だった。
 演じる。演じ続ける。そして。
 いつしか昔の自分を思い出せなくなる。
 本来のわたしとは、なんだったのか。
 そんな喪失感から逃れるため、中学卒業を機に新たな自分形成のため、わたしはその考えを改めることにした。周囲を分析せず、思うように行動する。打算的じゃない、感情的な自分を作り出すために。
 ところが高校生活初日にして分析を繰り返し、この学校の仕組みを汲み取ろうとし、何気ない日常の中でクラスメイトの性格を把握しようとしている。

「────」

 もう変われない。
 わたしが知るわたしは、打算的な思考をする人間であること。何事にも損益をもとに行動する狡いヤツ。
 胸の奥で溜め息を吐く。
 ともあれ、今は会長の前だ。これ以上なにも喋らず黙っているのは迷惑になる。

「ありがとうございました。邦彦くんの言伝はしっかりと聞きました」

「そうかい。ならいいんだけどよ」

 話が終わりそうな気配を感じ取った乙葉先輩が近付いてくる。手に持つジュースは早くも空になりそうだった。
100 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:49:55.33 ID:gvlgOaLx0

「おわった感じ?」

「ま、そんなとこだ。じゃあな天音。何かあったら相談に乗ってやるよ。年下ながら、邦彦には世話になったからな。その恩をお前に返してやる」

 頼もしい言葉を残して立ち去る背中へ頭を下げる。深々と、五秒、十秒、三十秒、一分と続く。
 ぐちゃぐちゃだった頭の中がなんとなく整理される頃にわたしが顔を上げると、そこには乙葉先輩が居た。
 会長は少し遠くでこちらを伺っている。
 それにしても近い。もう少しで顔と顔が触れる距離だ。

「あの、乙葉先輩?」

「んー、肌綺麗だね。化粧水なに使ってるの? いや、やっぱり年齢の問題かな。まだ十六歳だもんね。あれ、十五歳と数ヶ月だっけ? まぁいいや」

 マイペースに話す乙葉先輩。

「なんであれ、天音ちゃんはまだまだ若いよ。あっくんは君のことを随分と認めているようだけど、わたしからしてみれば君なんてウチの近所に居た子供よりもずっと子供だよ。自分が分かってない。生まれたての赤ちゃんでも君よりは────ん、それは違うか」

 意外と核心を突いてくる先輩にわたしは動揺する。

「新しい環境で、新しい友達と本来の自分を探してみる、あるいは形成してみるっていうのも高校生活の醍醐味なんじゃないかな。幸い、この学校は全寮制で一人暮らしだから、自分を見つめる機会は多いと思う。例えば、料理が出来ない自分をどうにかしていくとかね」

「────はい。ありがとうございます、先輩」

「お、いい顔になったね。うんうん、お姉さん的には、そっちの顔の方がずっと好きだなー」

「先輩のおかげで自分を見つけられそうです。大真面目に自分を見失っていたので助かりました」

「何かあればわたしとあっくんを頼ってねっ! わたしは相談係、あっくんはポイント係だから」
101 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 00:50:28.30 ID:gvlgOaLx0

 わたしは乙葉先輩と連絡先を交換する。
 ついでに、乙葉先輩経由で錦山会長の連絡先も勝手に教えてもらった。
 何かあれば、頼れるかもしれない。

「おやすみ、天音ちゃん」

「おやすみなさい、乙葉先輩」

 こうしてわたしと錦山会長、乙葉先輩は別れる。
 コンビニの前に残ったわたしは、深呼吸をする。

「……よしっ!」

 わたしは寮への道を辿る。
 その足に迷いはなく、春宮天音という女子生徒のイチから始まる人格形成の第一歩のように真っ直ぐだったと思う。


【長くなりましたがこれで高校生活一日が終了です。
 最初から>>31で戴いた性格にしたかったのですが、ステータスが高すぎる都合上、分析しすぎる描写が増えてしまいました。
 今後、様々な試験や友人と交流して>>31で戴いた性格に回帰できるよう人格形成していきたいと考えています。
 この後は小刻みに行動をしていきます。
 続きは今晩にします。
 遅くなりすみませんでした。お疲れ様でした。

 所持ポイント:86560ppt
 早見有紗:信頼度35(クラスメイト、少し好印象)
 一色颯 :信頼度40(クラスメイト、話しやすい)
 立花  :信頼度38 (クラスメイト、話しやすい)
 篠崎  :信頼度38 (クラスメイト、話しやすい)
 清水  :信頼度38 (クラスメイト、話しやすい)
 木下  :信頼度38 (クラスメイト、話しやすい)
 錦山暁人:信頼度50(生徒会長、かなり信頼できる)
 奄美乙葉:信頼度50(先輩、かなり信頼できる)】
102 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 22:29:29.74 ID:Sjq7SYBPO
【再開します。】
103 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 22:29:56.23 ID:Sjq7SYBPO
 高度育成高等学校に入学して二日目。
 朝のホームルームでは、今日の放課後に体育館で部活動説明会が行われる旨の連絡を受ける。
 説明会そのものの参加は任意、さらに入部も任意。
 つまり興味本位で立ち寄っても強制的に加入という運びにはならないようだ。
 先生曰く、部活動に所属している生徒はおよそ半数。さらにその中から籍を置いているだけで練習に参加しない幽霊部員を除くと、四割程度になるらしい。

「どうする? 行ってみる?」

「まぁ行くだけならいいんじゃない?」

「でもさー、昨日行けなかったカフェ、席埋まっちゃいそうじゃない?」

「だねー。んー、じゃあ参加しない方向で」

 一人の女子生徒がカフェ優先宣言をすると、次々に同意の声が上がる。
 その一方で教室の隅の方、特に男子生徒が固まっているエリアでは前向きな意見が上がる。高校でもサッカー、せっかくなら弓道をやってみたい、男は黙ってバスケだろ、など。

「えー、それではホームルームを終わります。それでは皆さん、この後から授業になりますので、えー、先生の言うことを聞くようにー、お願いしますー」

 やはり覇気の無い伊藤先生がホームルームの終わりを宣言すると同時に、わたしの携帯が震える。
 昨日一色くんに招待を受けたグループチャットだった。内容は部活動説明会に参加するかどうか。
 少し迷った後、わたしは午前中には決めるとメッセージを入れて、授業に備えて携帯の電源を切る。


【イベント安価です。
 奇数:「春宮さん、食堂行かない?」
 偶数:「早見さん、よかったら食堂行かない?」
 0:「春宮天音はいるか?」
 下1のコンマ1桁でお願いします】
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/09(木) 22:36:50.25 ID:WhoOBbsW0
105 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 23:40:40.48 ID:Sjq7SYBPO
>>104
 5:「春宮さん、食堂行かない?」】

 午前中の授業が終わった。
 そのすべての授業でタブレットを利用した授業の取り進め方、また先生個人の授業方針についての説明が大半を占めていて、実際の講義は明日からになりそうだった。
 一部、そんな説明だけの授業が退屈だと言わんばかりに眠そうにする生徒も見受けられた。
 そんなこんなで訪れたお昼休み。
 わたしはお弁当を持ってきていない。
 今朝コンビニに寄ってくることもできたが、せっかくなら学校の売店か学食を利用してみたいと考えていたため、あえてそうしなかった。
 昨日少しだけ話をした前の席の女の子、早見さんを誘おうと思ったが机の上に手作りのお弁当を広げていた。わざわざ学食で一緒に食べようとは言い出しづらく、素早く売店で買って戻ってこようと考えた。
 席を立ち、教室の扉へと向かう途中、

「あ、春宮さんも学食いくかんじ? 一緒に行こうよ」

 昨日ランチをした清水さんがそう誘ってくれた。
 一瞬だけ早見さんとのランチのため断ろうとも考えたが、その誘いを無下にすることは出来なかった。
 付け加えると、早見さんの席を覗くともうお弁当箱を片付け始めていた。もともと量が少なかったのか、食べるスピードが早いのか。それは明日以降、一緒にお昼ご飯を食べれば分かることだろう。

「うん、行こっか」

 わたしは頷き、清水さんと教室を出る。すると昨日のメンバーが一色くん以外は揃っていた。

「一色くんは他の人とランチだってさ」

「あ、そうなんだ」

 どうやら一色くんが所属しているグループは幾つかあるらしく、満遍なくクラスメイトと仲良くなりたいと考えているようだ。
 わたしもそうなりたいと考えながら、清水さんたちと肩を並べて食堂への道を歩む。
106 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 23:41:15.68 ID:Sjq7SYBPO

◇◇◇

 食堂はおよそ三百人程度が余裕を持って座ることのできる席が用意されていた。
 お昼休みが始まって十分ほど。意外にも席は半分以上は空いているようだった。
 食堂前の食券機周辺で昼食を吟味する。

「ねぇ、あのスーパーデラックスウルトラ定食ってやつ、すごくない?」

 木下さんの視線を追うと、確かにそういった名称のメニューがあった。
 写真を見る限り、とんかつ、唐揚げ、牛肉コロッケ、カニクリームコロッケ、ハムカツ、海老とかぼちゃの天ぷら、それに三人前ほどはありそうな炒飯。
 とんでもない物が売られていた。
 こんなものを注文する人がいるのか? と様子を伺っていると、いわゆるノリで注文する生徒が極稀にいるらしい。現に目の前で何人かが友達同士のノリで購入している姿が確認できた。

「……あれはないなぁ」

 わたしが呟くと、他のみんなも同意したように頷く。
107 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/09(木) 23:41:45.29 ID:Sjq7SYBPO
 それからは頭を切り替え、自分が何を食べたいのかを探る。日替わりランチの中も数種類あり、なかなか決め手に欠ける。ここはいっそのこと前に並んだ人が注文したものと同じものを注文する手を考える。
 スーパーデラックスウルトラ定食を直前で注文されたときは和食の日替わりランチBにしよう。
 そう考えながら食券機に並ぶ。
 食券機は全部で三台。ほんの数十秒で自分の前の番がやってくる。さて、わたしの本日の昼食は、っと。

「……」

 食券機の一番右下のボタン。それは『山菜定食』。
 並んでいる人を遠目に眺めていたときから薄々その存在には気付いていたが、何か裏があるんじゃないかと疑ってかかっていた。
 山菜定食は無償で食べることのできる定食。
 写真が無いため量の想像はつかないが、ひとつだけ確かなことがある。それは注文した人の雰囲気。
 どこか悲壮なオーラを漂わせた彼らは、溜め息を吐くようにして山菜定食のボタンを押していた。
 昨晩のコンビニで見つけた無償の品々、そして目の前にある無償の定食。これらから考えられることはかなり限定的となる。
 ともあれわたしの昼食は決定した。

「え、春宮さん、本当にそれ?」

「うん。なんとなくこれにしようかなって」

「……まさか春宮さんが初日でポイントを使い果たすなんて思ってなかったよ」

「違うからっ。ほんの興味本位だからね?」

 わたしが選んだのはスーパーデラックスウルトラ定食────もちろんそれではなく、山菜定食。
 それから数分後、わたしは受付で定食を受け取り、席に着く。改めて定食を眺めるが、特に不可思議なところはない。良く炒められた山菜に、決して少なくない白米とお味噌汁、そして少量の漬物。これだけあれば十分だと思わせるほど良く出来ていた。
 周りの視線はやや冷たいものだったが、わたしはポイントを消費することなくお昼を終える。
 味の感想は、リピートしたいと思えるほどだった。


【イベント安価です。
 奇数:部活動説明会
 偶数:「春宮、少しいいか」
 下1のコンマ1桁でお願いします。】
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/09(木) 23:48:21.12 ID:9OLtblpD0
109 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/10(金) 07:45:08.98 ID:DUud2CeQ0
>>108
 2:「春宮、少しいいか」】

 午後の授業も授業方針に関する説明で終わった。
 やや退屈だと感じながらも、タブレットを用いた授業には興味がある。明日以降の授業を楽しみにしながら迎えた帰りのホームルーム。
 先生からはほんの数言だけ、簡潔に締め括られる。

「それではこの後、あそこでアレをするみたいなので、ご興味がある方は行かれてみてはいかがでしょうか。それじゃあ今日は終わります。おつかれさまでしたー。さようならー」

 朝のホームルームを聞き逃していれば、今の発言の内容を一切理解することができなかっただろう。
 適当な先生だなぁ。そんなことを思いながら帰り支度────ほぼ使用しなかったノートを詰めるだけの作業────をして、席を立ち上がろうとしたとき、

「春宮、少しいいか」

 隣の席の男の子からそう話しかけられる。
 確か名前は一之宮重孝。
 黒髪の短髪に眼鏡、知的な印象の男子生徒だ。
 生活態度そのものはかなり真面目で、昨日のポイント配布時や今朝のホームルームでは静観を貫き、今朝わたしが登校すると彼は一人で自習をしていた。
110 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/10(金) 07:45:34.73 ID:DUud2CeQ0
 そんな彼が何か用があるらしく、わたしは頷く。

「うん、大丈夫だよ」

「悪いな。手短に済ます」

 眼鏡の位置を直す動きを見せた後、彼は話す。

「人違いだったら申し訳ないんだが、去年の夏に全国模試を受けなかったか?」

「ん、あぁ、うん。受けたよ」

 中学校の担任の先生に勧められて受験したのを覚えている。半ば強制的な空気もあり、わたしは受験した。

「……やはりそうか。あの時は見事だった。俺は数学の最後の問題だけ解けなかった」

「相似の問題、だっけ」

「そうだ。ちょうど授業で習っている最中の模試で出題された、というのは言い訳にしかならないか。現に春宮は全教科で満点を取ったんだからな」

「わたしの学校では習い終わった後だったからだよ」

 一年間を通して学習する範囲こそ定められているものの、授業の進行度は学校によって、担当する教師によって異なる。中には生徒が真面目に授業を受けず、なかなか進められないというクラスもあるだろう。
111 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/10(金) 07:46:45.95 ID:DUud2CeQ0
 そんな中であの模試の最後に出た問題は、ちょうどわたしのクラスで学習が終わった直後だった。

 『もともと知っていた』というのは抜きにしても、単純に習い終わっているかどうかは試験の明暗を大きく分ける。

 そして彼の存在を改めて認識する。
 一之宮重孝。そうだ。
 全国模試で二位が同率数名いた中の一人。
 奇しくもあの試験で僅差に名前を連ねていた生徒。

「もしよければ今度一緒に勉強をしないか?」

「わたしと?」

「あぁ。他人の勉強方法を取り入れてみるのも自分のためと判断した。もちろん嫌なら構わないし、そうだな、茶を飲みながらでも良い。費用は俺が出そう」

 思いがけない申し出に、わたしは一秒という短い時間の中で決断する。迷うまでもない。

「もちろんいいよ。わたしも一之宮くんの勉強方法を知りたいし。ただ、対等な関係で互いにポイントの損得を考えない上でなら、という条件だけど」

 カフェでの勉強などの時、奢ることは無し。
 それがわたしの提示する条件だった。
 あくまでも対等な関係を持ち、互いに高め合う。その先に生まれるのは信頼関係そのものだろう。

「なるほど、了解した。それで構わない」

 ふっと笑みを見せると、彼は右手を差し出す。
 わたしはその手を取り、協力関係を結んだ。


【イベント安価です。
 1.部活動説明会へ
 2.早見有紗を誘ってケヤキモールへ
 3.一之宮重孝とケヤキモール(カフェ)へ
 4.寮へ
 下1でお願いします。

 一晩明けてしまいましたが、一旦ここまでにします。
 今晩は21時頃に開始します。】
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/10(金) 11:31:15.40 ID:xe2yVbsy0
2
113 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/10(金) 21:06:54.86 ID:i4SyU8OG0
【再開します。】
114 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/10(金) 21:07:21.15 ID:i4SyU8OG0
>>112
 2.早見有紗を誘ってケヤキモールへ】

 思いがけない巡り合わせを果たしたわたしは、一之宮くんの後ろ姿を目で追った後、前方の席の子の様子を伺う。

 思いがけない巡り合わせを果たしたわたしたちは、今日のところは件の勉強会開催を見送る方針に定めた。その理由は、今すぐやる必要がないから。単純に入学早々、お互い身の回りを整えるため忙しいだろうと判断した。
 教室を出て行く一之宮くんを見送った後、わたしは前の席に座って帰りの支度をする早見さんに話しかける。

「早見さんは部活動説明会に行くの?」

 背後から声をかけても驚かせるだけだと思い、前の方へ回り込んだが結果は変わらなかった。ビクッと肩を震わせてわたしの方を恐る恐る見る。
 昨日ほんの少し話しただけの関係。
115 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/10(金) 21:07:53.50 ID:i4SyU8OG0
undefined
116 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/10(金) 21:08:42.83 ID:i4SyU8OG0
【おそらく文字数超過です。】

 とはいえ同じクラスで席も近く、一応同じ性別だ。そこまで警戒されていないと踏んでいたが、この様子では極度の人見知りらしい。自分以外の三十九人の前で自己紹介するのはともかく、こうやって喋ることにも抵抗感を示されると悪いことをした気持ちになる。

「ぁ……えっと、わたしは、行かない、です」

 俯き気味に、かなり小さい声で話す。

「そうなんだ。わたしも行かないつもりでね、もしよかったらなんだけど────」

 ここでようやく早見さんの目とわたしの目が交錯する。彼女は怯えているようだった。何に怯えているのかは分からないが、環境が大きく変わったのもその一因だろう。親元を離れての一人寮暮らし。そこまで大袈裟ではないものの、物寂しさを感じることはある。
 だからこそ、ここで「なんでもない。またね」と言ってしまえば、しばらく彼女は救われない。可能であれば「一緒に帰ろう」とか「寄り道して行こう」と言ってくれると嬉しいが、今の段階でそれを求めるのは酷だろう。

「もしよかったらさ、ケヤキモールに一緒に行かない? 昨日買い忘れた物があって……あぁ、もちろん、早見さんの買い物にも付き合うから」

「……わたしと、ですか?」

「うん。ダメ、かな?」

「いえ……はい、わたしは特に買う物もないので、春宮さんのお買い物に付き添います」

 多少の難色を見せるかと思ったが、思いのほか真っ直ぐに良い方向へ話が進んだ。これが大人数での買い物となればまた話は変わってくるかもしれないが、今日のところは二人で出掛けることで様子を見よう。
117 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/10(金) 21:09:12.80 ID:i4SyU8OG0

「うん、ありがとう。じゃあ早速、これからでも大丈夫かな? 一回、寮に戻った方がいい?」

「できればこのまま、でもよろしいですか?」

「もちろんだよ。そっちの方が楽だからね」

 わたしは軽い鞄を持ち、早見さんと歩き出す。
 早くも周囲ではグループが出来始めている。
 高校生活最初の一週間が卒業までの三年間を左右すると言っても過言ではない。出来るだけ正攻法で彼女の心の壁を取り除く、あるいは心に刺さった針を抜かなければ手遅れになることは容易に想像がつく。

 それにしても、本当にすんなりと快諾してくれた。
 極度の人見知りというのは、わたしの思い込みだったのだろうか。それとも、他人すべてに怯えているわけではないのか。
 それは、そう遠くない未来に分かることだろう。

【イベント安価です。
 1.映画館
 2.カフェ
 3.ファミレス

 また、コンマ一桁でも判定を行います。
 4・8・0:追加イベント
 下1でお願いします。】
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/10(金) 21:32:30.58 ID:bsz9PU1M0
2
119 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:10:44.01 ID:OCYa+xYb0
>>118
 2.カフェ
 コンマ1桁が8のためイベント発生です。】

 買い忘れたものと言っても、学校で使用する文房具を少々。ポイントとしては七百ポイント、時間にして十五分程度で済んだ。
 本屋と一体化された文房具屋を出て、人通りの少ないところで改めてお礼を言う。

「今日はありがとう。助かったよ」

「わたしは特に、何もしていませんから……」

 文房具屋では常に絶妙な距離を保っていて、傍から見ればそれぞれが別の目的を持っての来店そのものだっただろう。わたしと早見さんの間には絶対的な見えない壁が存在する。それがやや厚いと言ったところか。

「もし良かったらお礼をさせて貰えないかな。何もしていくても、わたしとしてはすごく助かった訳だし、これくらいはさせて貰えると嬉しいな。あんまり高いものはアレだけど、お茶くらいなら是非」

 二度目の接触としてはまずまず話せた方だと思うが、このまま手放してしまうのは少し勿体ない。
120 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:11:12.87 ID:OCYa+xYb0
 もし明日、早見さんとの時間を作れなかったら当初のスケジュールが崩れる。ここは彼女と二人きりの時間を作るべきだろうと判断した。

「そんな、お礼なんて…」

 わたしと目が合うと、すぐに逸らされる。
 とはいえ言葉で強く否定されたわけでもない。ここはもう少しだけ引っ張れば引き込めそうだった。

「いいからいいから。ね、どこのカフェにする?」

 やや強引に手を取り、歩き始める。
 一回フロアには幾つかのカフェが入っており、座席数も巨大ショッピングモールのフードコート以上にある。座って話せそうなのは大前提だとして、早見さんの好みを知るきっかけにもなる。

 「……じゃ、じゃあ、あそこでも、いいですか?」

 少し引き攣った表情で一つのお店を指さす。
 ラインナップとしては他のカフェとも大差ないものの、独自にフルーツスムージーを売りにしているようで数人の列ができていた。
121 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:11:51.97 ID:OCYa+xYb0
 二人でその列に並び、学生証端末でメニューを確認する。今回は店頭注文の運びになるが、先に席を取って学生証端末で注文後に受け取りだけを行う手段もよく利用されているようだ。

「わたしは決めたけど、早見さんは?」

「ぁ……えと、これを…」

 わたしに見せてきた端末の画面には苺のスムージーが表示されていた。苺を選んだ理由の一つとして他の果物よりも十ポイントから九十ポイントほど安かったからという理由はおそらく含まれているだろう。
 その後七分程度でスムージーを受け取り、ちょうど窓際の四人席が空いたためそこに向き合う形で座る。他にもかなり四人席は空いているため、非常識とはならないと判断する。

「ありがとうございます…」

 席に着くなり、彼女は頭を下げる。
 わたしは「これはお礼だから、遠慮しないで」と言って、さっそく『桃のスムージー』にありつく。
 口に含んだ瞬間からみずみずしい桃の果肉を味わうことができ、程良い甘さが頭をクリアにさせる。
122 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:12:17.74 ID:OCYa+xYb0
 わたしが飲んだのを確認した後、早見さんも一口。
 かなり美味しかったのか、表情に出ている。

「本格的な授業は明日からだね」

「そう、ですね…。今日は説明だけでしたから、実際には明日からになるんだと思います」

「タブレットを使った授業なんて、わたしの通っていた中学校では露ほども話に上がらなかったからさ。新鮮な気持ちだよ」

「……そうですか」

 一転、やや暗い空気を漂わせる。
 わたしの言葉に反応してのものか。だとすれば『中学校』というワードが高確率で引っかかる。
 彼女が機械に疎ければ『タブレット』そのものに対して嫌悪感を抱いている可能性もあるが、携帯と学生証端末の操作に困っているようには見えなかったため、それは除外しても良いだろう。
 今は距離を縮めることが大事だ。
 別の話題で話し込むことにしよう。

「そういえば早見さんはさ────」

 話を切り替えようとしたとき、向こうの方からやってくる生徒に視線を取られる。
 身長は百七十五センチ程度、銀色の髪色が特徴的で制服を着崩した男子生徒。公共の場を我が物顔で歩くその姿は、傲慢な態度そのものだ。事実、彼の周辺からは人が避けるように消えていく。
123 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:12:44.68 ID:OCYa+xYb0
 そんな彼が向かってくるのは、こちら側。
 とてつもなく嫌な予感がした直後のことだった。

「お前が春宮か?」

「……何かご用でしょうか?」

 突如として割り込んできた柄の悪い男子生徒に、早見さんは視線を逸らすため俯く。
 まずい、本当に悪いことをした。
 彼女との距離を縮める目的はさておき、誰だってこんな状況に巻き込まれれば嫌な思いはするだろう。
 後で精いっぱい無関係である弁解をするのは当然として、明日以降の予定の見直しが必要になりそうだ。

「なに、大した用じゃねぇよ」

 彼はわたしを押すように、わたし側のシート席へ入り込んできた。必然と窓側へと移動となり、彼が座ることで退路が絶たれる。
 何の話をするか想像もつかないが、わたしに用があるなら、これ以上早見さんを同席させても良いことは無いだろう。

「彼女は関係ないですよね?」

「あぁ。好きにしろ」

 ここで彼を無視して帰るよう促すことが悪い方向に進まないとも限らない。何がなんでも早見さんに害が及ぶことは避けたかった。

「ごめん、絶対に埋め合わせするから」

 わたしがそう言うと、早見さんは心配そうな顔をしながらもコクリと頷き、スムージーが入ったカップだけを持って席を立つ。
124 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:13:12.37 ID:OCYa+xYb0
 それからすぐに彼は話を切り出す。

「俺のクラスへ来い、春宮」

「────?」

 言っている意味が理解できず、わたしは返答に困る。
 休み時間の度にクラスへ遊びに行く、という意味ではもちろんないだろう。

「なんだ、知らないのか? ポイントを使えばクラスの移動が出来るそうだぜ。その額は、二千万。それだけ払えばAクラスにもDクラスにも移動ができるらしい」

「二千万って、本気で言ってるんですか?」

 色々とツッコミどころはあったが、特にポイントの部分には興味を惹かれる。二千万ポイントを貯めることはまず不可能。
 そして貯めた先のクラス替えという制度は、何を示すのか。
 なんであれこの男子生徒は、わたしよりもずっと学校のポイント制について足を踏み入れているようだ。

「あぁ、本気だとも。一人当たりに毎月振り込まれるポイントは────と、念のため確認だが、気付いているよな? この仕組みくらいは」

 わたしは頷くことも首を振ることもしなかった。
 コンビニに用意された無料の品、学食の無料定食。
 この二つが用意されている時点で、昨日立てた『仮定』はほぼ確証へと切り替わっていた。
125 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:13:39.02 ID:OCYa+xYb0
 まず間違いなく毎月一日に全生徒へ『十万ポイント』が支給されていれば、それらを利用する生徒はほぼ皆無と言ってもいいだろう。しかし今の話を聞いて、もし二千万ポイントを貯めるための節約の一環として無料配布のモノが用意されているとすれば────いや、あるいはその両方のためか。
 どちらにせよ興味深い話のため続きを聞くことに。

「続けてください」

「ふ。まぁいい。一人あたり、およそ十万ポイント支給だとしよう。一クラス四十人で四百万。二千万を目指せば最低でも半年は必要なわけだが、それは現実的じゃない。なら二クラスで協力した場合はどうだ。半年で各クラスが二千四百万。それから一千万ずつを出し合う。そうすれば二千万だ」

 その理論でいけば僅か三ヶ月で二千万に届く。
 あえて半年と言ったのは、裏があるのだろう。
 ここでわたしは根本的な問題を提示する。

「そのクラス替えが本当に出来るのか知りませんけど、自分以外の生徒が他のクラスへ移るためにポイントを譲渡するとは思えません」

「譲渡する、じゃねぇ。搾取するんだよ。弱みを握って脅すでも、徹底的な管理体制でも方法は任せる。毎月一定以上のポイントを自分に振り込ませろ。そうすれば一千万なんてすぐだ」

 頭が痛くなってくる。
126 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:14:08.03 ID:OCYa+xYb0
 そんなことできるはずがない。

「だいたい、わたしが協力するとでも?」

「するさ。お前は俺に協力する。そして一千万を貯めるために尽力する。晴れて半年後には、俺と同じクラスになれるってわけだ」

「話になりませんね。わたしに協力する意思はありません。わたしを揺すりたいなら、それ相応の対価があるべきでは? 例えば、四千万ポイントとか」

 一クラス一千万ずつ貯めてわたしが彼のクラスへ移動、そして四千万ポイントを受け取れるのなら一考の余地はある。もちろんすんなりとはいかないだろうが、それだけのポイントがあればわたしは元のクラスへ戻れるからだ。
 だが実際、四千万ポイントを貯めるなんてほぼ不可能な話。こんなふざけた提案に対して、雲を掴むような話を持ち出せば彼も引っ込むと考えた。
 しかし彼は口元を釣り上げ、笑みを浮かべる。

「逆に聞くが、四千万でいいのか? お前には最初の一千万を含めて五千万を払っても価値があると思っている。いや、七千万か八千万か。それくらい払ってもいいだろう」

「じゃあ一億です。それ以外は自分を売れません」

「なるほどな。こうしよう。こうなるとお互いが譲らず青天井だ。一ヶ月後、改めて聞きにくる。そのときにお前が提示した額を払うことにしよう。もちろん三ヶ月やそこらじゃ不可能な話だが、きっとお前にとって悪い話じゃない」

 一ヶ月後、またこの人と話すと考えると憂鬱だが、ここは大人しく従っておくべきだろう。
 わたしが頷くのを確認すると、彼は身を引く。
 塞がれていた席が通れるようになり、わたしは鞄と緩くなったスムージーのカップを手に取り立ち上がる。

「最後に一つ聞かせてください。どうしてわたしに声をかけたんですか?」

「価値があるって言っただろ。それ以上でもそれ以下でもねぇよ」

 そう言って彼は立ち去る。
 周りの視線を痛いほど浴びながら、わたしは早見さんの鞄を持って後を追う。
127 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:14:37.92 ID:OCYa+xYb0

◇◇◇

 寮のフロントで早見さんの部屋番号を尋ねると、割とすぐに教えてくれた。クラスメイトであることを最初に伝えたのが大きかったんだと思う。
 この寮ではインターホンが二種類ある。
 一つ目は、玄関である一階のインターホン。
 二つ目は、部屋前のインターホン。
 例えば他学年の生徒が訪れるときなどは、まず玄関のインターホンを鳴らした後、玄関に入るためのロックを解除して貰う必要がある。その後、エレベーターを使って目的の部屋の前でインターホンを再度鳴らすといった二段構えだ。
 部屋番号を聞いた以上、直接部屋の前まで行ってインターホンを鳴らすことはできた。しかしそれでは驚かせてしまうだろうと考え、わたしは玄関から彼女の部屋を呼び出す。
 間もなくして応答があった。

『────春宮、さん?』

「うん、さっきはごめんね」

 呼び出し機に併設されたカメラからわたしのことを視認した早見さんは、安堵したような声を漏らす。

『いえ、あの、待ってていただけますか? すぐに降ります』

 わたしは頷く。
 それから三分ほどで、まだ制服姿の早見さんはエレベーターを使って降りてくる。
128 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:15:08.69 ID:OCYa+xYb0
 ロビーで待っていたわたしと合流すると、手に持っていた鞄に目をやる。

「あ、すみません…。鞄を持たせてしまって…」

「ううん、いいのいいの。こっちこそごめんね。ちょっと絡まれちゃって」

「大丈夫……でしたか?」

「一方的に話をされただけだから大丈夫だよ。本当にくだらない話を長々とね」

 心配させないため、わたしは大して取り合わなかったと言っておく。
 実際のところ、あの人には興味ないものの、クラス替えという制度やクラスメイトのポイント管理という話には興味があった。
 わたしはもちろんそんなことはしない。ただ、一年Dクラスの中からそういうことをしようとする生徒が出てきても不思議じゃない。そしてそれを実行に移すとなれば、かなり早い段階で行動に移すのが定石だろう。
 そう、例えば明日にでも『今後のことを考えて僕が、私がみんなのポイントの一部を管理する』などと言い出す人が現れてもおかしくない。

「あの、ごめんなさい。先生を呼ぶべきでしたよね」

「ううん、あの場所には監視カメラもあったし、あの人もそういったことはしなかったと思う。先生を読んだところで話をしているだけっていうのがオチだよ」

 この学校の敷地には至るところに監視カメラが設置されている。ケヤキモールは大型ショッピングモールそのもののため、監視カメラがあるのは普通だと言える。
 しかし学校はどうか。
 教室や廊下など、至るところに設置されている。
129 : ◆yOpAIxq5hk [saga]:2021/09/11(土) 11:15:48.60 ID:OCYa+xYb0
 もし校内で暴力沙汰を起こせば監視カメラの映像を頼りに停学、あるいは退学も免れない。
 そういったことを抑止するための監視カメラだと考えれば理解できるが、一つ不可解なことはそのカメラが絶妙に隠されていること。じっくりと視認しなければ気が付かないほど微小なカメラが幾つかあった。
 気になる点は無尽蔵だが、それは追々考えるとして今は早見さんのことに集中しよう。

「ほんっとうに今日はごめん。もしよかったら明日とか明後日とか、時間を作って貰うことは出来ないかな」

「……わたしでいいんですか?」

「もちろんだよ。早見さんさえ良ければ、だけどね」

 逸らされていた視線が元に戻ると、早見さんは頷いた。

「明日はちょっと……。でも明後日なら、はい」

「わかった。じゃあ明後日ね」

 明後日、改めてケヤキモールに出掛ける約束をして、わたしと早見さんは一緒のエレベーターで戻る。
 早見さんが十階、わたしが十一階だ。
 途中の階で止まることなく十階に着き、早見さんと別れる。その後すぐでわたしもエレベーターを降りて、自室へと向かった。


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