【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】

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675 : ◆FaqptSLluw [sage saga]:2024/07/01(月) 00:45:14.78 ID:MSnVTOqo0




「――ンだよ、やっぱり起きてるじゃねぇか」

「君のほうこそ。明日は大事な大事な天皇賞だぞ?」

「ンなことくらいわかってる。でも、なんだか今日は夜空が綺麗でさ。……アンタと話したくなったんだ」


 背中越しにそんなことをのたまったリョテイは、ようやくこちらを振り替える。

 月のように静かに煌めく、金色の瞳。夜のような長髪。華奢な手足は、ともすれば浮いて見えるほどに真っ白だった。

 幽霊のように妖しく、しかし存在感のある居ずまいの彼女は――今淡く笑った。

 普段とは違う笑い方に、少しドキリとするものの……流石に見惚れるわけにはいかないとかぶりを振る。

 どうやらそれすらも見抜かれているようで。


「……惚れたか?」

「正直キレイだとは思った」

「……ありがとよ」


 白い頬に、朱がさした。そうすれば、彼女がようやく血の通った生き物のように見えてくる。


「で、どうしたんだ、いきなり呼び出したりして」

「どうしたもこうしたも最初に話したろ。アンタと夜空が見たくなったって」

「方便か何かだと思った」

「このアタシが方便でこんなロマンあることを言うかって話だけどな、ソレ」


 変に納得した。確かにこれは……ロマンある展開だ。

 大きな戦いを前に、空を、月を見て語らう。うん、ロマンだ。


「だから、トレーナーサンよ。こっちに来て座ろうぜ」


 どかり、とベンチに座ったリョテイは、隣へ俺をいざなう。

 小さく息を吐きながら、リョテイのガス抜きと思えば安いもんかと自分を正当化。彼女の横へと座り込んだ。


「こんなに空が綺麗で星が瞬いてるとさ、アタシたちってちっぽけな存在だと思えてくるよな」

「気持ちはわからんでもないな」

「だろ? 月並みな言葉だけど、素がデカいと説得力がある」


 確かに、この夜空の美しさは月並みな言葉にも正当性を持たせてくれる。
676 : ◆FaqptSLluw [sage saga]:2024/07/01(月) 00:46:04.33 ID:MSnVTOqo0

「なぁ、トレーナー」

「なんだ?」

「――アタシも、星になれるかな」


 天を仰いで、手を伸ばす。星を掴んで、引きずりおろすみたいにだらりと手を下げた。

 実際は、その手には何も握られていない。当然だ。星は悠久の彼方から光を俺たちに届けている。

 ただ、リョテイの掴んだ掌の中には、何かがありそうな気がした。それが実態を伴うかは、ともかくとして。


「アタシはロマンの求道者だ。レースのさなかにロマンを求めて……その結果、星になってみたい」

「星に」

「ああ。きらきら光って、誰かの目標や目的になるような輝きに、だ」

「……それはロマンだな」

「だろ?」


 に、と笑うリョテイ。そこで俺は、先ほどリョテイが何を掴んだのかをようやく理解した。

 あこがれだ。彼女は、憧れを手にしたんだ。


「星が綺麗ですね、ってか」

「ん、知ってたか」

「その手の表現が好きだった時代があってな」

「ああ、忘れてたわ」


 こちらを見てけらけらと笑うリョテイに、俺は疑問の目を向けた。

 リョテイは俺の目を心外そうに見つめ返して、もう一回空を見上げて、うそぶいた。


「――アンタは、ロマンの嚮導者だってことを、よ」

「嚮導者、ねぇ」


 先に立つ人間かと言われれば、俺はきっと違う。

 けれど、リョテイがそう感じているのであれば、きっと俺はそうあらんと努力する意味がある。

 ……一歩踏み違えれば、中二病のイタい奴になりそうだけど。
677 : ◆FaqptSLluw [sage saga]:2024/07/01(月) 00:47:34.60 ID:MSnVTOqo0

「なぁリョテイ。君は想像したことがあるか? 君が天皇賞・秋に出たときの歓声を」

「したこたねぇな。想像すらしたことない」

「だろうと思った。じゃあそれもロマンの一つだな」

「……どういうことだよ」


 空から視線をこちらに戻して、リョテイは聞く。

 何だ、そんなこともわからないのか? と俺はわざと煽り口調で返して――リョテイに問いかけた。


「リョテイ。君は天皇賞・秋のパドックで大歓声を浴びるだろう」

「かもな。それが何のロマンだっていうんだよ」

「――君の勝ち方次第では、パドックの何倍もの歓声を、君は浴びることになる」


 それはとても気持ちがいいことだってことは、リョテイも知っているはずだ。

 さぁ、想像してみろ。君が抱くべきロマンを。君の描くべき、冒険譚のヤマを。


「――」


 夜空に浮かぶ月のような瞳が、いっそう煌めきを増していた。

 まるで、満天の星星を従えたかのような、輝きだった。

 夜のような墨染めの長髪が、期待に揺れ動いていた。

 まるで、夜を切り裂いてしまうかのような、情熱があった。

 浮いて白く見える肌は、今や紅潮して熟れていた。

 まるで、幽霊が人になったかのように、生気があふれ出ていた。

 恋をしている。恋をしているかのような表情だった。


「――ああ、良いな、それ」


 嫋やかだった指先が、何かを求めて空をさまよったかと思えば――強く握られる。

 再び、そこには憧れを掴んでいた。そうに違いない。


「勝つぜ、アタシは」

「勝てるよ、君は」


 熱に浮かされる様に、俺たちは拳をぶつけて振り返る。

 言葉はいらなかった。それぞれが自分の気持ちを高めるために、あるいは明日へぶつけるために。

 種火は、薪は、もう胸の中にくべられていた。
678 : ◆FaqptSLluw [sage saga]:2024/07/01(月) 00:48:03.94 ID:MSnVTOqo0

――天皇賞・秋まで、あと0ターン。
679 : ◆FaqptSLluw [sage saga]:2024/07/01(月) 00:50:05.59 ID:MSnVTOqo0
今日はここまで。
次回、天皇賞・秋――
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/01(月) 02:25:54.85 ID:hDVBvzEKo
おつおつ
このドキドキをまた経験できるとは……待ってて良かった!
681 :いぬ ◆FaqptSLluw [saga]:2024/07/01(月) 21:21:18.23 ID:MSnVTOqo0

 空を見上げれば、そこには鉛色が広がっていた。

 前日の予報では快晴だったが、突如として雨雲が立ち込めたらしい。

 先ほどまで秋晴れだった分、立ち込めた雨雲に不吉さを感じずにはいられなかった。


「よく眠れたか、リョテイ」


 不吉なことなんてない、と。俺は浮かんだ考えを振り払うようにリョテイへと話しかける。

 俺の言葉に振り返ったリョテイは、俺の顔を見るなり怪訝な顔を浮かべる。


「……アンタ、寝てないのか?」

「結局寝れなくてさ」

「それはアタシがそうあるべきだったろ。まったく……それでアタシの走りを見逃しでもしてみろ、殺すからな」

「それはないよ。君の走りを見届けるのは、俺のつとめだからね」


 はん、と鼻を鳴らしてそっぽを向くリョテイ。耳としっぽがきちんと動いているので、気を悪くしたわけではなさそうだ。


「にしても、晴れるって予報だったのにな」

「ああ。まさかこんな天気になるとは」

「……まぁ、バ場が重くなれば有利になるのはアタシだ。そうなるかはわからないが、そうならなくても勝ってみせるぜ?」

「君ならできる。根拠は……そうだな、俺の直感だ」

「そこは嘘でも時間だとかなんとか言えよ。締まらねぇな」


 俺に話の締まりをよくする能力なんてないこと、知ってるくせに。

 そっぽを向いた背中越しに声をかけると、これまたはんと鼻を鳴らして返答。

 ……本当は、俺がリョテイの方の力を抜こうとしたんだけど、逆に俺が助けられることになってしまった。


「……勝てよ、リョテイ」


――――――――――

下1〜3:コンマ判定

高低によって分岐します。合計値で計算。

〜100
〜200
〜300

※連取りは都合上3分間隔で可能なものとします。
682 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2024/07/01(月) 21:23:54.76 ID:MSnVTOqo0
※勝敗に関連する安価ではありません。安価は下。
※用意のため、本日の更新はここまでです。
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/01(月) 21:25:34.56 ID:spf5m6fdo
おつおつ
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/01(月) 22:42:17.62 ID:sYHtCtUG0
乙!
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/03(水) 00:11:30.84 ID:c79P/Ug5o
乙です
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/08/22(木) 21:41:12.75 ID:OphUxpnTo
おつ。復活してたとは!!
続きまってます!!
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