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【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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1 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/01(水) 23:47:30.17 ID:FgCx/5jm0
【簡単なあらすじ】
――目標を達成できないとループが始まってしまう。
憧れのトレセン学園のトレーナーとなった主人公は、数奇な運命に囚われる。
ときに喜び、悲しみ、絶望し、挫折しながらも、主人公は進んでいく。
夢のURAファイナルズ、その頂点へと担当ウマ娘を導くために――。
第一ループ:スペシャルウィーク(メイクデビューで敗退、ループ)
第二ループ:ツインターボ(メイクデビューで敗退、ループ)
第三ループ:マヤノトップガン(メイクデビュー→京都JS→皐月賞→天皇賞・秋→有馬記念で敗退、ループ)
第四ループ:キンイロリョテイ(メイクデビュー→ホープフルステークス)いまここ
――――――――――――――――――――――――――
【注意】
・ウマ娘公式が定めたガイドラインに違反しない程度に書きます。
>モチーフとなる競走馬のファンの皆さまや、馬主さまおよび関係者の方々が不快に思われる表現
>ならびに競走馬またはキャラクターのイメージを著しく損なう表現は行わないよう
>ご配慮くださいますようお願いいたします。
(ウマ娘公式サイトより引用)
・新人トレーナーなので、キャラ性を網羅していません。ご容赦を。
・SS初心者です。不作法などあったらすみません。何かありましたらご指摘いただけると幸いです。
・安価は1〜3くらい先に飛ばす予定です。
・仮に安価が一日待っても来なかった場合、ある程度勝手に進行します。
・ウマ娘本編との設定に相違点が発生します。
・オリジナルキャラクターが登場します。
――――――――――――――――――――――――――
▼前スレ
・【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1623082140/
・【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」スペ「2スレ目です!」【安価】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1626797090/
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1630507649
2 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/03(金) 14:44:30.96 ID:Uuvyl2pU0
という訳でこちら新スレになります。
よろしくお願いいたします!
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/03(金) 14:56:28.86 ID:cZ/lrht80
よろしくお願いしまーす
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/03(金) 16:32:33.60 ID:VmPY+lv6O
マヤノは思えばほぼまるまる1スレ使ったんだな…
5 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/03(金) 17:30:47.78 ID:fa9tm0+ZO
マヤノは結構長い間走ってくれましたね。本当にありがとうという気持ちです。多分1ヶ月くらいは書いてた気がします(。
前スレ
>>1000
のSS化は区切りがいいところで投げます。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/03(金) 18:58:57.41 ID:PjZjfSoio
立ておつよろしくお願いします
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/04(土) 12:02:18.80 ID:Iw40TAg3O
不器用なのにトレーナーに対しての好意が隠しきれてないリョテイ可愛すぎんか?
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/04(土) 20:22:04.49 ID:bkXXm/Qf0
追いついたぁ!
立て乙です
俺の心のデジたんがもっと輝きまくれと囁きまくっている気がするぜ
9 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/04(土) 22:57:35.36 ID:cSqOSPlT0
――どれだけ歩いたかわからないくらいに、俺は顔をあげた。
日は傾いて、今にも水平線に落ちそうになっていた。
実に半日以上歩いていたことになる。気付いてみれば脚の疲労はピークに達していた。
どこかに一度腰を落ち着けるべきか。
周囲に目を配れば、そこにはいつぞやの切り株が存在した。
ここであれば十全に休むことが出来るだろう。……俺一人だけではなく、二人ほどは。
「……っ」
思い出のかけら。
極彩色の記憶のフラグメントは、記憶の引っかき傷を痛ませる。
そう言えばここでランチをとったこともあったっけ、とか。
ここで花火をしたっけ、とか。
ここで……想いを伝えたっけ、とか。
いろんなことを思い出して、その度に身体中を切り刻まれるかのような痛みが襲う。
我ながら馬鹿だと思う。本当はこんな痛みなんて、直ぐに昇華してしまうべきなのだろうに。
いい思い出だったと、割り切れればいいのに。
……それが、俺にはできていない。
10 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/04(土) 22:58:18.48 ID:cSqOSPlT0
――アンタ、さては迷子だろ?
ふと、キンイロリョテイが吐いた言葉が脳裏によぎる。
その言葉を聞いた時は何のことだかわからなかったが、確かに今の状態は迷子に違いない、と思う。
自分の中で定めた、明確な目標に向かって走っているが――目標自体があやふやで胡乱なものだと気付いているから、どう走ればいいか分かっていない。
そして、その過程で生まれたモヤモヤだとか不安だとかを、こともあろうに担当ウマ娘にぶつけてしまっている。
迷子だ。しかもそれ以上に――馬鹿だ、と思う。
でも、しょうがないじゃないか。もう会えるかわからない相手を追い求めることの空虚さは誰にもわからない。
砂浜で落とした、ひとかけらのビーズを探すようなものだ。そこに可能性なんて存在するようでしない。
このループについての真実を解き明かせれば、あるいはとは思うけれど。
そこにもどうしようもない真実が待ち構えていそうで、恐ろしい。
俺は、確かに動けていない。マヤノのことに、ループのこと。板挟みになってしまっていて、余地がない。
物語よろしく、事態を解決するデウス・エクス・マキナなんて現れることはない。
11 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/04(土) 22:59:21.10 ID:cSqOSPlT0
「いっそのこと、忘れることが出来れば――」
「……此処に居ましたか」
振り返る。
そこには、木々をかき分けてこちらに歩いてくるウマ娘――シンボリルドルフの姿があった。
何故ここに、という考えの前に、彼女の制服についている土埃に気が付いた。
一時間や二時間では付くこともないだろう、土埃。まして完璧を地で行くシンボリルドルフにとっては、あり得ないそれ。
結果として推察した。――つまりシンボリルドルフは、俺を探していた。
「……探してたのか。でも悪いな、帰ってくれないか」
「そういうわけにはいきません。担当ウマ娘――キンイロリョテイとナイスネイチャが貴方のことを探していますから」
あんなことを言った後なんだから、探してくれなくてもいいのに。
俺は内心でごちる。
「……事情があるのは理解しています。ただ、貴方は――」
「――貴方はそれ以前にトレーナーです、か?」
「ええ」
いつも通りの済ました表情で宣うシンボリルドルフ。
吐き気がするほどの正論。今一番聞きたくない言葉だった。
「……トレーナーってのは、一人で感傷に浸ることすら許されないのか?」
「物事には程度というものがあります。……そして、貴方は程度を超えてしまった」
そうでなければ私は此処に居ない。――俺のことをまっすぐに見てくるシンボリルドルフを背に、俺は立ち上がる。
「そんなに心配かけてるなら、君が伝えてくれよ。――明日までには戻るって」
12 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/04(土) 23:02:33.02 ID:cSqOSPlT0
「……ふざけているのか?」
明確な怒気を感じて俺は振り返る。その一瞬のうちに距離を詰めたらしいシンボリルドルフは、俺の胸倉をつかみ上げていた。
炎が散るような、雷が奔るような。強い視線が俺を貫いて、目を逸らす。
「放せよ」
「――貴方がどんな気持ちでいるのか、私は知らない。だが、貴方を心配してくれている彼女たちに申し訳ないとは思わないのか?!」
「……それが君に何の関係がある」
「ないわけ無いだろう?! 君は自分が――自分がどれだけ大切に思われているのかを知らないのか!」
ウマ娘にとって、トレーナーは世界で一番の味方。
いつか、マヤノが教えてくれた言葉が脳裏によぎる。
「私はウマ娘全ての味方だ。だから彼女たちを悲しませることを良しとはしない、見逃せない。君がいなくなれば、傷付けば、それだけで胸を引き裂かれるような苦しみを覚えるウマ娘だって居る。君の絶望を共に抱えたいと願うウマ娘だって居る。君の全てを支えたいと奮起するウマ娘だって居る。その全てを君は、無為にするつもりか?!」
力強く握られていた拳が開かれる。俺は重力に従って地面に落ちて、そのまま膝をつく。
シンボリルドルフは屈んで俺の肩を支えて、切り株に座らせた。
そして、彼女は俺の顔を覗き込んだ。
先ほどまでは刃のように鋭利だった視線が、今は慈しむようなものに変わっていた。
13 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/04(土) 23:03:32.80 ID:cSqOSPlT0
「君の問題は……君そのものを否定してしまうほどのものだったのか……?」
その声はあまりに切実で。とても他人を見ているような気にはなれない。
まるで、どれだけ焦がれても手に掴むことが出来ないものを追うような――そう、まさしく……俺のようだった。
14 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/04(土) 23:05:11.50 ID:cSqOSPlT0
「シンボリルドルフ、君は――」
「私のことなんてどうでもいい。君は、君はどうしたいんだ? 何を為したいんだ?」
「……俺は」
喉元まで出かけた言葉を、飲み込む。
いかにループという事情を既に知っているシンボリルドルフとはいえ、おいそれと話すわけにはいかない。
それに、秘密を明かしてしまえば、劣化してしまいそうな気がして。
でも、それでも。
「……会いたい人がいるんだ」
なんだか、口を開かなきゃいけない気がした。
誰かに悩みを打ち明けて楽になりたいという気持ちがあったのかはわからない。
目の前の皇帝は、俺の全てを受け入れてくれそうだと感じた。
……前回だってそうだった。シンボリルドルフに対しての相談は、他の誰かに相談するときよりも……なんというか、楽だった。
心理的障害がない。そう、まるで……長年の付き合いがある友人のように。
「その人は俺のことを励ましてくれた。こんな俺のことを大事な人だと言ってくれた」
「……もう会えない、んだな」
シンボリルドルフはストレートに、そう言った。
「会いたくても、もう会えないんだな」
「……わからない。でも、会いたい。会えるなら――どれだけ狭い可能性にだって手を伸ばしたい」
シンボリルドルフは、真剣なまなざしで見つめていた。
じっと。俺のことを見定めるように。
「……いいだろう」
そして、まるで囁くように、小さな声で呟いた。
その言葉の意味が解らず、聞き返そうとしたその時――。
15 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/04(土) 23:08:29.62 ID:cSqOSPlT0
シンボリルドルフはふと、俺の手を握った。
「今からのことは、誰にも内緒だ。いいな?」
「……何をするつもりだ?」
「内緒だ。内緒に出来ないのであれば、今日のこの会話については忘れてもらおう」
「シンボリルドルフ、君は一体――?」
そう聞き返せば、シンボリルドルフは一瞬考えて――微笑んだ。
「私は――私も、誰かを思うことくらいはあるということだよ”トレーナーくん”」
――疑問を持つ暇もなかった。
一瞬の内に、俺は意識を刈り取られ――暗闇の中に落ちていく。
ただただ脳内には、彼女の最後の言葉がリフレインしていた。
16 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/04(土) 23:27:33.22 ID:cSqOSPlT0
――遠く、遠く。海鳴りが響いた。
目を開けば、そこは海だった。
海の真っ只中。
視線を下に向ければ、そこにも海が広がっていた。
俺は、謎の力で浮いているらしく、水面には影が落ちている。
周囲を見渡してみるけれど、そこには俺と海、そしてコバルトブルーの空。
皆無だった。
自然に四方を囲まれていて、音も一切聞こえてこない。
波も立っていない。全てが――静かだった。穏やかだった。
少しでも気を抜けば、それだけで眠ってしまいそうな。
いや、今にでも眠ってしまいそうな。
意識が遠のいて。
ふと、遠くの海面が割れて、そこから何かが顔をのぞかせた。
ヒトのようで、明らかに異質なそれ。
詳細はわからない。
ただ、その存在に――本能的に恐怖した。
あれは、俺が目にしていいようなものではない、と。
瞬間、俺の目はドロドロに”融けた”。
目は何を映すこともなく、しかしどこまでも心は穏やかだった。
”それ”をもう目にしなくてもいいのだと、安堵が先に立った。
そして、意識は閉じる。
意識が閉じる直前、何かが起こった気がしたが、何が起こったか判然としない。
それくらいに、俺の意識は朦朧としていた。
――――――――――――――――――――――――――
リミテッドイベント:追憶 開始
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/04(土) 23:47:19.00 ID:vn1AECqko
ルドルフはどこまで知ってるんだろうか……
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/04(土) 23:48:45.79 ID:c46DHy5i0
これルドルフが記憶持ちでマヤノと同等かそれ以上の好意をトレーナーに持ってたら救いが無さすぎるな…トレーナー覚えてないし
19 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 02:43:58.33 ID:v2+k5mIX0
地固めガチャが沼ったので今日はこれで更新終了です……。
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 02:53:58.54 ID:I2R+7qMN0
じょてぇ!
おつ
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 03:03:50.70 ID:rSdcLHpQo
お疲れ様です……
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 08:09:51.99 ID:ZBF6Ujz/O
以前も書き込みし
たが、記憶持ち(ループうま娘)は作者がいまだ登場していないって明言しているよ
23 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 12:20:58.29 ID:v2+k5mIX0
恐らく前スレ
>>725
の回答内容が誤解を招いているようなので、改めて説明させていただきます
>▼ループが関係ないウマ娘について
>作中で明言していないので言及は控えます。後のお楽しみという事で何卒。
作中の一応の主人公であるトレーナーが【誰が”ループしているウマ娘か”】に気付かないと、作中で明言されたとは言えません。
如何に皆様にとっての明白なる真実であったとしても、このSSにとっては「いまだに明かされていない真実」の一つです。
よって、解答時点で登場しているか登場していないかをお答えすることは出来ず、存在を仄めかすことしかできません。
また、これに関して、
>>1
が「記憶を引き継いでいるウマ娘は登場していない」と明言した事実はございません。
引き続きお楽しみいただけると幸いです!
24 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/05(日) 13:02:09.02 ID:v2+k5mIX0
――ふと、目が覚めた。
小鳥のさえずりが耳に響いて、朝が来たのだとにわかに思う。
体を起こして目を開けば、そこは――俺の部屋だった。
ただ、何かがおかしかった。
調度品の類を設置していない質素な部屋だが、それでも私物はいくらか存在する。
……その私物が、どれも見たことがないものばかりだった。
「……一体何がどうなってるんだ?」
小さくつぶやいた言葉は、部屋に吸い込まれるようにして消える。
返答など返ってくるはずもなく、俺はため息交じりにベッドから立ち上がった。
カーテンを開けば、朝日が途端に差し込んでくる。
季節は……冬だろうか。僅かに朝露が凍り付いているし、気温も低い。
先ほどまで夏だったから、余計に今の光景に違和感を感じてしまう。
いつものように歯を磨き、顔を洗い、朝食を用意する。
食べ終われば歯を磨き、新聞を軽く眺めていつもの制服に着替える。
新聞によれば今日は1月の初めらしい。確かにふさわしい雰囲気だと思う。
「……とりあえず、トレーナー室に行くか」
形成された習慣は、簡単に無くなることはない。俺にとってはトレーナー室にまず向かうのは、極度に強く形成された習慣だといえる。
何せ体感何年もトレーナー室に通い詰めている。習慣づかない方がむしろおかしい。
少し滑りやすい石の絨毯を踏み鳴らして、外に出る。気温は低いが、日差しが強い為、そこまで寒くは感じない。
遠くからはウマ娘たちのトレーニングをする声が聞こえてきそうなものだが、新年早々という事もあって、全く聞こえてこない。
ただ静かな雰囲気が辺りに広がっていた。
……トレセン学園に入っても、外で受けた印象が変わることはなかった。
この時間帯なら、俺以外にもトレーナーが居るのだが、今日に限っては誰もいない。電気もついていない。まるで誰もがいなくなったかのように。
いよいよこの空間の異常に気付き始めた頃、俺はようやくトレーナー室にたどり着いた。
……何故か、この場所だけ電気がついていた。
普通なら警戒しそうなものだが、何故か特に感情は沸いてこなかった。
いつものトレーナー室の様子ではないが、それでも此処にはいるのは当然のこと。
形成された習慣は、簡単に無くなることはない。俺は自分の考えを思い出していた。
「入るか」
小さくつぶやいて、俺は扉に手を掛けた。そして、開く。
「……漸く来たね。待っていたよ、トレーナーくん」
25 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/05(日) 15:15:16.07 ID:v2+k5mIX0
「シンボリルドルフ」
「……驚いたかな。色々と怖い思いをさせてしまった。すまない」
シンボリルドルフはこちらに歩み寄り、硬直する俺の背中を押した。
何故ここに彼女が居るのかわからないが、それよりも気になることがあった。
「君が、君がこの光景を?」
「正しく言うのであれば、私ではないよ。何というか……ダウンロードされたファイルを使う感覚に近いかな」
なるほど、つまりアレ……海で見たヒト型のアレはシンボリルドルフが意図的に見せたものではない、と。
「……で、何故こんなことを?」
「ああ、流石に君の様子は見ていられなかったからね。一つの結果を見せようと思う」
「――結果?」
シンボリルドルフは頷いて、とりあえずと言うように俺に席を勧めた。
それなりに長くなる話なのだろう。素直にソファーに腰を落ち着ける。
「さて、まず前提について、だ。何故ループしてしまった世界から君の記憶が消えるか、見当はついているか?」
「……わからない」
「だろう、ね。だから、まずはそこについて説明しよう」
シンボリルドルフは手を組んで、しっかりとこちらの方を見据えた。
「――トレーナーくんは、”アポトーシス”という言葉を知っているか?」
「聞いたことはあるけど、それが……?」
「アポトーシス……トレーナーくんの知っている通り、プログラムされた細胞死のことだ」
なるほど、とは思う。ただ、その説明がなぜ今なされたのかが判然としない。
「つまり、だ。君の記憶は世界にとっての毒なんだよ、トレーナーくん」
「……毒? 俺の記憶を持っていると何の不都合があるんだ?」
「バタフライエフェクト。蝶の羽搏きがやがて嵐となる可能性もあるように、君の記憶が存在すると、後の世界に大きな影響を及ぼす可能性がある」
「だから、俺の記憶をループ時に消してる、ってことか」
確かに、存在するはずのないものに関しての記憶があれば、人々は世界に対して懐疑的になることもあるだろう。
それは緩やかな衰退を意味する。古今東西、懐疑が深まった組織体は腐り落ちるのが常だ。
「じゃあ、何故担当ウマ娘やその周辺には記憶が残っている?」
「それは良く解らないな。ただ、忘れさせると逆に不都合が発生する場合もある、という事なのかもしれない」
「……つまり、俺が消えた時、記憶が補完されることはなくそのまま”消える”ということか」
シンボリルドルフは頷く。
つまり、例えば俺が消えたことによって、俺の関わったところが虫食いのように消え落ちてしまう。
要所要所ならそう問題ではないのかもしれないが、かかわりが深い――毎日のようにともに居た存在であれば、虫食いは無視できないほどに大きくなる。
人間やウマ娘を虫食いになぞらえて一つの本に例えるなら、あまりに大きな虫食いはページだけではなく、本全体の損傷に繋がる。
だから、それを消さないことを選択する。それが脳の機能なのか、それともそれ以外の何かによる効果なのかはわからないが……。
一定の理解が深まり、俺はふと疑問に思った。
「――何故君はそれを知っている、シンボリルドルフ」
「答えを急かないでくれ、私だって君との時間を楽しみたいんだ、トレーナーくん」
切なげに微笑むシンボリルドルフ。いつにもまして弱弱しいその表情に、何故だか胸が締め付けられるような気持ちになった。
「ここまでは前提の話。ここからは、選び取ることのできる結果の話だ」
26 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/05(日) 15:37:45.57 ID:v2+k5mIX0
「簡潔に言おう。君が選び取れる”結末”はたったの一つだけだ」
「……URA優勝、か」
「ああ。逆にそれ以外では逃れられない。……たとえ、命を断とうとも、ね」
命を絶つ。
確かに一度考えたことはあるが、まさか死ぬことを選んでもまた戻されるとは……。
シンボリルドルフは、にわかに言葉を詰まらせて……そして続けた。
「ただ、結末を迎えるにあたって、そこまでの過程は選び取ることが出来る」
「……過程か。その方法さえ知れば、俺はまた……会うことが出来るんだな」
「……。残念だが、そうではない。だが、それに限りなく近い」
どういうことだ、と聞こうとする。しかし、声が出ない。
見れば、トレーナー室は崩壊を始めていた。
「……どうやら、もう時間のようだ」
「――!」
「トレーナーくん、君がもしそれを望むのであれば、会いたい人の下に出向いてたった一言、こう言えば良い――おはよう、とね」
進み行く崩壊の最中、ふとシンボリルドルフは立ち上がる。
背を向けて立ち去っていく彼女。その背中は……とても寂し気で。
でも声を掛けることが出来ない。許されない。
まるで喉を麻縄で縛られたかのように、息しか漏れ出ない。
「マヤノトップガンによろしく」
――その一言を最後に、世界は閉じた。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 17:10:40.03 ID:IDTZierhO
会長…
28 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/05(日) 18:31:04.20 ID:v2+k5mIX0
「……良い夢は見れましたか」
「シンボリルドルフ、君は一体――」
「”あちら”で何があったかはわかりません。ただ、その様子だと……手段を得られたようですね」
視線の先に映るシンボリルドルフは、小さく微笑んだ。
……こうしてみると、あちらで出会ったシンボリルドルフとは表情が随分と違う。
あちらは……何というか、とても悲しげで、儚いものだった。
「詳しい説明が必要ですか」
「……頼んでいいか」
俺がそう言えば、シンボリルドルフは静かに頷く。
さら、と。細い指が俺の髪を撫でて――ふと、今の状況に考えが及んだ。
そういえば、森の真っただ中にこんな柔らかい枕があっただろうか。
ついでに言えば――何故シンボリルドルフの顔が、空を仰いでいるはずの俺の正面にあるのか。
そして気付く。端的に言えば俺は――彼女に膝枕をされていた。
「……すまん、今気づいた」
「いえ、気にしないでください。私がそうしたくて、そうしたんですから」
俺が立ち上がれば、シンボリルドルフは少しだけ残念そうに耳を伏せた。
とはいえ、いつまでも彼女の膝に寝ていることは出来ない。それはなんとなく……マヤノに怒られる気がしたからだ。
「……さて、何から説明しましょう」
「じゃあ、前提として聞いておきたい」
「はい、何でしょうか」
29 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/05(日) 18:33:02.30 ID:v2+k5mIX0
「――シンボリルドルフ、君は……もともと、俺が担当してたウマ娘だろ」
そう言えば、シンボリルドルフは小さく微笑む。
はいともいいえとも言わない。だが、その反応が何よりの証拠だと言えた。
「そうか、そうだよな。考えてみれば――”俺が初めてループした時、育成に失敗したウマ娘が居る”はずなんだ」
「……」
「ついでに言えば、君は――ループした記憶を明確に引き継いでいる。そうだな?」
「……そうだ」
小さく答えるシンボリルドルフの口調は、もともとのそれに戻っていた。
観念したのだろうか、それとも心境の変化があったのだろうか。
ともかく、その確認が取れたのであれば、まず聞きたいことは一つ。
「なぜ俺は君の記憶を失っていた?」
「……正直に言うと、あまり気持ちのいい話ではないよ」
「気にはなるが、君が話しづらいならそれでもいい」
俺の言葉に、シンボリルドルフは首を振る。
「私が、ではない。君にとって気持ちのいい話ではない、ということだ」
「俺にとって……。構わない、教えてくれ」
「――自殺だよ」
……なんとなく予想は付いていた。自意識世界の内側でシンボリルドルフが言った「命を絶とうとも」という一言。
あれは、実際に人の死を見ていなければ出ない一言だ。
「……想像以上に、堪えてないな」
「なら良かった。……トレーナーくんが自殺した後、私以外の全ての人々から記憶が消え去った」
君を含めてね。と言外に込められた一言だった。
「結果として、私は記憶を把持したまま此処に至る……というわけだ」
「そうか……。なあ、一つ聞いてもいいか?」
「いくらでも」
「……俺は、上手くやれたか?」
30 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 18:39:36.77 ID:v2+k5mIX0
「正直、凄腕とは言えず、私が色々教えることもあったよ」
「……そうだよな」
「でも」
彼女はまるで懐かしむように、空の果てに視線を送る。
そこに何かがあるのか、あるいはそれが彼女なりのジンクスなのか……。
ただ、なんとなく……なんとなく、その所作に「懐かしい」と感じてしまった。
「――でも、私にとっては一番の味方だったよ」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 18:54:16.08 ID:rSdcLHpQo
(ここで1スレ目
>>1-2
が生きて来るのか……!)
32 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 19:30:39.95 ID:v2+k5mIX0
月明かりが、淡く二人を照らす。
何処までも静かだった森は、今は僅かに風を吹かせて、心地が良い穏やかさ。
切り株に座っていた俺は、ふとこちらを見つめる視線に気づいて、手招きする。
「いつまでも立ちっぱなしじゃなんだ、座ったらどうだ」
「……お言葉に甘えるよ」
小さく歩み寄って、遠慮がちに腰を下ろす。
いくら切り株が大きいとはいえ、大の大人が座っていればそこそこに狭い。
シンボリルドルフと背中を合わせて座るような形になってしまう。
一瞬「立ってしまったほうが良かったんじゃなかろうか」とは思ったが、しかし立ってしまえばシンボリルドルフも立ってしまうだろう。
少し恥ずかしいし、マヤノには悪いが……少しだけこのままでいよう。
「なぁ、トレーナーくん」
ふと、シンボリルドルフが声を掛けてきた。
どうした、と背中越しに返すと、尻尾が僅かに揺れた。
「世間一般から見て、私たちはどう考えても他人だ」
「そうだな」
「公の場ではそれなりの態度で振舞わなければならない」
「……そうだな」
シンボリルドルフと俺は、どれだけ記憶があったとしても他人だ。
他人同士が唐突に親密にしていれば、何かを疑う人も増えるし、面倒も増える。
まして生徒会長ならば余計に。
……論理も、直感も。シンボリルドルフがなぜこんなことを突然に言い始めたのかを理解していた。
だから。
「なぁ、トレーナーくん」
33 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 19:32:04.78 ID:v2+k5mIX0
「――よく頑張ったな、シンボリルドルフ」
立ち上がって、彼女の頭を撫でた。
そうするべきだと、体が覚えていたから。
しょっちゅうではないけれど、なんとなくこうしてきた気がするから。
「我慢しなくていい。気付けなくて、ごめんな」
「……」
俯いて、ぐ、と拳を握る。
「……今だけは、今だけは私のことを、ルナと呼んでくれないか……」
小さく、そうつぶやく声は震えていて。
溜まらなく、それがむなしくて、悲しかった。
自身が、そして俺がループしたと知った時、シンボリルドルフはどれだけ歓喜したことだろうか。
……そして、自分のところに来てくれなかったことに、どれだけの絶望を覚えただろうか。
世界で一番の味方が、味方でなくなってしまって。……またループして、またループして。
どれだけの年月を、暗い気持ちのまま過ごしてきたのだろうか。
そして、遂にやってきた機会でも……たったひとつの、一度きりの願いだけで満足しようとしている。
それが、たまらなく……むなしくて、悔しかった。
「ルナ、俺は決めたよ――理事長に直訴して、チームメンバーに君を加えて見せる」
「……!」
「約束しただろ、君をチームメンバーに誘うって」
今年の初め、俺は確かにルナからそのように聞いていた。
思い返せば約束ではなくお願いだった気もするが、だが――その言葉は絶対に嘘ではない。
でなければ。
「本当に、いいのか……?」
こんな、縋るような瞳は、しない。
「君にとって、俺はただ記憶を共有しただけの人間かもしれないけれど――それでも良ければ。それに、君がチームメンバーになれば、俺たちはもはや他人ではなくなるからな」
「トレーナー、くん」
「他人でなくなれば、チームメイトを愛称で呼ぶ必要も出てくる。君との時間も作ることが出来る……。話し足りないかもしれない君の話を、満足に聞くことも出来る」
だから。
「だから、来てくれ、ルナ」
「……ああ、私も、君と共に……また歩みたい!」
差し出した手。
それをとる手。
ぎゅっと掴んで……そして、唐突に引っ張られた。
前のめりになる俺を、ルナは優しく抱きしめた。
34 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 19:32:52.14 ID:v2+k5mIX0
「夢みたいだ、トレーナーくん。……君と、また共に覇道を歩めるなんて思ってもいなかった」
「現実だ、目を覚ましてくれ」
「……そうだ」
ふと、ルナが抱擁を解いて、思い出したかのように手を引く。
突然歩きだしたルナに声を掛ける暇もなく、俺はその場から動くしかなかった。
そうして辿り着いたのは、森の奥にある祠。……なにかを象った像のような印象も受ける。
「君の手に入れている力の一部は、私の知るところにある」
「……じゃあ、この祠に案内した意味は」
「――ああ、君の中にある効果不明の力の一つ、【分岐する業】。今からその力を使ってみようじゃないか」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 19:38:58.80 ID:c0RN/mN6O
スゴいことになってきた
36 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 19:50:44.54 ID:v2+k5mIX0
「……基本的に、用途不明のスキルはループそのものに影響するものが多い」
「とすれば、このスキルは……」
「その通り、ループにつき一度しか使用することが出来ない」
ルナはそう言いながらも、祠の埃を払っていく。
すると、そこに納められていたナニカがうすぼんやりとその姿を現した。
「……トライデント?」
「ああ、どうやらこれは、何かの信仰の証明だったらしい」
「信仰、ねぇ」
「……君は、自意識世界に潜る前に、何か恐ろしく言語化不可能な何かに遭遇しなかったか」
そう言われて思い出すのは、あの異形。
姿かたちこそ人に似ているが、それだけだ。
それ以上の形容は出来ない。何というか……言葉にすることさえ許されていないかのように。
「あれは、神だ」
「……すまん、えらく高尚な単語が聞えてみたいだからもう一度お願いしていいか?」
「神だ」
聞き違えではなかったらしい。
「……なるほど。ひとまずはアレが神様だと信じる。それとあの空間に何の関係が?」
「ループの元凶は恐らく、あの神にまつわるなにかだろう。そうでなければ、この島で妙なことが起こることに説明がつかない」
「……妙なこと?」
「この島を探索すると、スキルのかけらを習得することがないか?」
言われてみると、確かにその通りだった。
スキルが進化しなければ気付くこともなかっただろうが、気付いた今ならわかる。
マヤノとここ辺りを散策するだけで、スキルのヒントが降ってきていた。
「あの空間……海だったんじゃないか?」
「ああ、その通りだ」
「妙なことが起こるという事は、妙な力場があるという事だ。妙な力場があるという事は、この場が何らかの影響下にあるという事だ。スキルはその副産物。そしてそれを示すのが――」
「このトライデント、ということか」
ご名答、とシンボリルドルフは答える。
「正体はわからない以上、このことについてのこれ以上の詮索は無駄だ。大事なのは――この祠が君のスキルを呼び起こすのに必要なもの、ということだ」
「まるでわからないが、とりあえずスキルが発動できることは理解した。どうしたらいい?」
「簡単だ、拝むだけでいい」
それだけなら、発動しないにしても軽く拝むだけ。
あの恐ろしいものが神様なら、あんなものに祈りを捧げることも少し憚られるが、しかしこのループにはどうしても勝たなければならない。
正しく神頼み。物は試しと、手を合わせて――俺は途端に気絶した。
――――――――――――――――――――――――――
37 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 19:54:59.50 ID:v2+k5mIX0
▼トレーナースキル【分岐する業】が発動します。
▼今までの探索で獲得したスキルヒントを全て習得します。
――――――――――――――――――――――――――
・スキルヒント[直線回復〇]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[好転一息]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[読解力]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[大局観]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[コーナー回復〇]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[円弧のマエストロ]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[善後策]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[プランX]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[直線加速]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[一陣の風]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[上昇気流]Lv1を獲得した。
・スキルヒント[業脚]Lv1を獲得した。
――――――――――――――――――――――――――
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 19:56:23.94 ID:I2R+7qMN0
なんだ…何が起きているんだ…!?
39 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/05(日) 20:05:20.37 ID:v2+k5mIX0
というわけで今日はここ辺りで一旦。
1スレ目から小さく小さく要素自体は盛り込んでました。お時間ある方は是非探してみるのもありかもしれません。
というわけで、改めて注意を。
・ウマ娘本編との設定に相違点が発生します。
ご了承くださると幸いです。
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 20:06:41.54 ID:c0RN/mN6O
三女神と関係あるのかな
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 20:16:06.84 ID:rSdcLHpQo
おつです
思ってたより更に会長との関係が親密だったわ、これはルナモード全開でしたねぇ!
……本編で会長悪役ルート進まなくて良かった……
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 21:26:22.52 ID:1HsB9YdfO
…ルナ呼びまで許してるほどに関係深かったって事は…
この会長どのタイミングで負けたんだ…?
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 21:40:14.53 ID:ki1lvuw20
マヤノとこうなる前のトレーナーと会長はどこまで深い仲だったんだろうな…
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 21:49:14.82 ID:ki1lvuw20
ところであんなこと言って会長と膝枕とかハグしてるトレーナーをチームメンバーが目の当たりにしたら大変なことですよこれ
45 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/06(月) 00:13:24.67 ID:FCb8NHh60
――海を漂うような、浮遊感を伴った微睡から、ふと覚める。
今日はこんなことばっかりだな、なんて簡単に思っていたら――唐突に頭上から降ってきた大声に思わず飛び起きた。
そして、俺はそれと頭をぶつけてしまった――。
「テメ、倒れたと思って飛んできたらこの仕打ちたぁ……随分なご挨拶じゃねーか、お?」
「……キンイロリョテイ」
「おう、アンタの愛しの担当ウマ娘だ。で、何か言い残すことは?」
言い残すこと……。
「墓は作らなくてもいいぞ」
「そう言うことを言ってんじゃ……アンタ、そう言う冗談言うタイプだったか?」
「……もともと言うタイプだった、って話だよ」
俺のその言葉に、キンイロリョテイは苦虫を噛み潰したかのような渋面を浮かべた。
そして俺から少し距離をとって、体をかき抱いた。
「なんだよ、アンタ誰だよ……。突然変わって気持ちわりぃな……」
「……憑き物が落ちたような心地だ」
「ま、顔つきはだいぶマシになったようだな。昨日とか一昨日のアンタと比べたら大違いだ」
からからと笑うキンイロリョテイは、どう見ても心の底から愉快そうに笑っている。
昨日の問答があったから、少しはこう、なんというか、ごたつくんじゃないかな、なんて思っていたけれど。
すると、そんな俺の表情の機微を読み取ったのだろう。
キンイロリョテイは俺の眠っているベッドに腰を下ろし、いいたいことは分かるぜ、と起点を作る。
46 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/06(月) 00:17:02.07 ID:FCb8NHh60
「そりゃ私もまだモヤモヤしてんだ。結局アンタがどうしたいのかさっぱりわからねぇ」
「……言うつもりもなかったからな」
「そうかい、でももう十分だ。仔細は会長さんに教えてもらったからな」
「……」
驚いた。まさかルナの方から彼女たちに説明がなされるとは。
「驚いたって顔してんな。もうすでに事情を知ってるからってアレか? それとも――アンタの事実を知ったうえで、変わらずに接してることにか?」
「はっきり言えば、後者だな」
「なるほど、アンタは担当ウマ娘以前に、自分の存在の価値について理解が足りてねぇみたいだな」
そう言いながら、キンイロリョテイは棒状の機械を取り出す。
……多分、ボイスレコーダー。普段からそんなものを仕込んでいることに驚きを隠せない……が。
そんな俺の驚きをよそに、キンイロリョテイは再生ボタンを押してしまう。
『トレーナーさんは確かに隠し事をしてて、多分その隠し事のせいで動きが制限されてるって思うんですよ、アタシ』
『それで、ほら。やっぱりアタシたちって担当ウマ娘じゃないですか。だったら、さあ』
『――分かち合いたい、そう思っちゃうんですよね〜……』
ナイスネイチャの声だ。いつの録音なのだろうか。
波が寄せる音が聞こえるところを見ると、最近であることは確かだけど……。
「アンタは気付いてないかもしれないが、私たちもただ”私たちのトレーナーだから”ってアンタに従ってるわけじゃねーんだよ。アンタは自分が思っている以上に……その、なんだ。し、慕われてんだよ」
「……俺を?」
「気付いてないとでも思ってんのか。いつも遅くまでトレーナー室で仕事してるの知ってんだぞ。私たちのトレーニングメニューとか、いろんな調整とかしてくれてるの、気付いてるぜ」
だから余計に許せなかった、と。続けられた言葉に、申し訳なさ以前に――喜びを覚えていた。
てっきり認められていないとばかり思っていた。
俺が彼女にあんな言葉を吐かれたのは、内心俺のことを嫌っているからだと思っていた。
でも、違った。
心配だったから、彼女は怒った。
「本当はアンタから話してほしかったけど、事情が事情だからしょうがないと思ってる。これで隠し事もナシだろ? だったらアンタを邪険にする理由もねーよ」
「……キンイロリョテイ」
「勘違いするなよ、あくまでアンタをトレーナーとして真に認めたってだけだ! それに……浪漫を一緒に追い掛けるんだろ。私がアンタのこと認めずに負けたら、悔しいじゃねーか」
「……お前、案外かわいいよな」
「……あ?」
ぽろりと漏らせば、まるで水を打ったように静かになるキンイロリョテイ。
次の瞬間、彼女は劣化の形相を一瞬浮かべて、そっぽを向いてしまった。
「そう言うやり口で会長さんのことも丸め込んだのかよ、スケコマシ」
「……いや、別にシンボリルドルフは」
「”は”ってことは他の誰かは丸め込んだってコトだな」
逃げ場がない。否定したところでなんやかんやいわれるだろうし、かといって肯定してしまえばそこでおしまいだ。
辟易としながらも、俺はなおも顔をこちらに向けないキンイロリョテイを見る。
「……明日、来いよ」
「ああ」
「遅刻したら絶対に許さないから」
「ああ」
「じゃあな、ケダモノトレーナー!」
そう言いながら、勢いよく去っていくキンイロリョテイ。
言葉は苛烈で、否定的。
でも、どうしてだろう。
何故だか、キンイロリョテイの尻尾は……大きく揺れていた。
47 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/06(月) 00:19:46.06 ID:FCb8NHh60
――――――――――――――――――――――――――
リミテッドイベント:追憶 終了
リミテッドイベント:常識とは破られるために存在する。 開始
リミテッドイベント:回顧 発生
――――――――――――――――――――――――――
※リミテッドイベント:回顧は特定イベントをクリアすると無条件で開始します。
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/06(月) 00:47:34.11 ID:6YekUpA30
かーわーいーいー
ラーメンもトロフィーもいっぱい食わせちゃるけぇのお
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/06(月) 01:30:23.72 ID:bVwmy86r0
今日の更新は終わりかと思ってたら本当に今日の更新が終わりなだけだった
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/06(月) 08:09:18.65 ID:7NTkCRx/O
ネイチャの方だったと予想したがはずれたよ!
後1000スレのターボの話は、まだかなー
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/06(月) 19:08:09.09 ID:GOgWdWxUO
私はトレーニング中にうっかりルナと呼びかけてルで詰まってルドルフと誤魔化すトレーナーが見たい
52 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/07(火) 00:48:16.44 ID:svMVbXxA0
トレーナー「なんだかあの後だと会いづらい気がするんだが、どうだろう……?」
トレーナー「でもまぁ、トレーニングはしなければならないし、ナイスネイチャにも心配を掛けたから謝りに行かないといけないし」
トレーナー「……キンイロリョテイ、機嫌を直しているといいんだがな」
―――――――――――――――――――――――――――――――
[黄金探しの放浪者]キンイロリョテイ
スピード:470(C)
スタミナ:204(E)
パワー :215(E)
根性 :142(F)
賢さ :79(G+)
やる気 :絶好調
―――――――――――――――――――――――――――――――
下1
トレーニング/休憩/探索/メインイベント進行/その他(良識の範囲内で自由に)
※あと1ターンで夏合宿が終了します。
※ホープフルステークスまであと3ターン(当ターン含む)
―――――――――――――――――――――――――――――――
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/07(火) 00:49:04.75 ID:PLktrBeDo
トレーニング
54 :
◆FaqptSLluw
[saga]:2021/09/07(火) 01:00:42.10 ID:svMVbXxA0
トレーナー「……」
リョテイ「……」
ネイチャ「……」
リョテイ「おい、何か話せよ」
トレーナー「……いや、話しづらいな、と思って」
リョテイ「そりゃアンタが無言だったら怖いだろ、成人男性だぞ、アンタ」
トレーナー「それだけじゃない気もするけど……」
ネイチャ「……。随分とトレーナーさんは、態度が軟化しましたね?」
トレーナー「憑き物が落ちたからな。……ネイチャにも心配かけた」
ネイチャ「いいってことよ。ま、いつかきちんと戻ってくるって思ってましたけどね」
トレーナー「……ありがとう。今度からは君たちとも苦楽を分かち合っていきたいと思っている」
ネイチャ「……」
ネイチャ「リョテイさん、あの」
ネイチャ「少し話が」
リョテイ「……トレーニング、やろうぜ」
ネイチャ「リョテイさん」
リョテイ「トレーニング! やろうぜ!!」
トレーナー「……説明はしておけよ、キンイロリョテイ……」
―――――――――――――――――――――――――――――――
[黄金探しの放浪者]キンイロリョテイ
スピード:470(C)
スタミナ:204(E)
パワー :215(E)
根性 :142(F)
賢さ :79(G+)
やる気 :絶好調
―――――――――――――――――――――――――――――――
下1 トレーニングの種類
スピード/スタミナ/パワー/根性/賢さ
下2〜3 トレーニングの効果量
※[サポートカード:スペシャルウィーク]アクティブ。根性の上昇値に固定値を追加。
※ゾロ目は追加ロール。
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/07(火) 01:04:11.35 ID:ZPFYLM+b0
早押しクイズ大会の時間だ!オラァ!!
かしこさ
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/07(火) 01:06:03.82 ID:27Ouq+CH0
は
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/07(火) 01:20:29.66 ID:OlYjS6b50
もいっこカンッ
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/07(火) 01:20:33.76 ID:vEFSp0OEo
おほー
59 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/07(火) 01:25:54.04 ID:svMVbXxA0
おや……
下1 トレーニングの効果量(追加ロール)
※ゾロ目の場合は追加ロール
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/07(火) 01:29:12.52 ID:evNuAkqe0
おや、リョテイの賢さのようすが…?
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/08(水) 00:56:50.70 ID:+BdNSM8u0
やっとこさ追い付いた。
安価結果良さそうで集計が楽しみだ。
62 :
◆FaqptSLluw
[sage saga]:2021/09/08(水) 01:19:33.92 ID:/atYQeCk0
リョテイ「頭の良さってなんなんだろうな」
ネイチャ「……勉強のし過ぎで、リョテイさんがついに壊れてしまった」
トレーナー「なんだか哲学めいたことを呟き始めてるな……」
リョテイ「いきることってなんだろう」
トレーナー「なんだかこのまま放っておくとまずい気がするんだけど、どう思う?」
ネイチャ「同感」
トレーナー「……おーい、キンイロリョテイ」
リョテイ「空の美しさは仮初のものなのか」
トレーナー「おーい……」」
リョテイ「諸君、我々は失敗した」
トレーナー「それはいろんな意味で悲しくなるからやめろ……」
トレーナー「にしても、どうしたら戻ってくるんだろうな……?」
ネイチャ「時の流れに身をまかせるしかないですね……こりゃ……」
リョテイ「幸運を。死にゆく者より敬礼を」
トレーナー「いったいどうしちまったんだ、キンイロリョテイ……」
―――――――――――――――――――――――――――
▼キンイロリョテイの賢さが上昇した。
賢さ:79(G+)+{(82+66+52)×1.25}×1.1=275(E+)
―――――――――――――――――――――――――――
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/08(水) 01:26:02.49 ID:wcCOPtaU0
275は上昇値だから元の賢さと足さないといかんのとちゃうか?
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/08(水) 01:35:03.68 ID:Hj3RVH1q0
リョテイに賢さを吸い取られたのか
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