【まどマギ】小巻「見滝原中に転入したわ」【安価あり】

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427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/15(水) 00:27:59.89 ID:lQkCV12F0
1人で魔女連戦はキツいな・・・
織莉子に正気に戻れと怒鳴りながら1
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/15(水) 00:30:09.40 ID:cUDO/0CpO
GSでも疲労は回復出来ないんだっけ?
出来るなら疲労回復、出来ないなら4して1
429 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 00:34:08.35 ID:V0YB/3M00
-----------------------------
今回更新はここまで
次回は15日(水)19時くらいからの予定
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/15(水) 00:36:42.33 ID:lQkCV12F0
乙です。

小巻、孤軍奮闘してますがこのままだとヤバいですね。
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/15(水) 09:43:13.90 ID:SAAEFEwIO

よくみたら5で出来ると書いてあるな
5で疲労回復のあと↑↑に変更
432 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 20:05:09.63 ID:V0YB/3M00


 回復しなきゃやってられない。

 迫ってくる敵を最低限に対処しつつ、魔女の攻撃を盾で受けながら治療に集中する。


 まずは肉体の疲れと傷を治さないと。


小巻「いい加減正気に戻れ、美国!」

小巻「こっちは必死で戦ってんのよ! こんなヤツにいいようにされるなんて悔しくないの!?」


 近寄ってきてる使い魔を一体切り捨てると、再び走り出した。

 背を向け続ける魔女と、その間に立ちふさがるように首を生やした使い魔のほうめがけて。



 下1レスコンマ判定 戦況
0〜(劣勢) < 99(優勢)

+一桁0クリティカル(優勢時は自分)
+ゾロクリティカル(自分)
+補正 自[格闘Lv3]*3
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/15(水) 20:07:14.47 ID:vfDtj9BIO
434 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 21:08:48.49 ID:V0YB/3M00
優勢:56



 使い魔一体はさほど硬くはない。

 蛇のようにうねる動きと、次から次へと沸いて群れることが問題だった。


小巻「アンタ見てるといっつもそうよ……!」


 使い魔の湧くスピードが速い。魔女の妨害もある。

 魔女に刃が届く距離まで追いつく前には阻まれてしまう。


小巻「あたしはこのまま誰かにいいようにされて死ぬなんて絶対にイヤ」



 下1レスコンマ判定 戦況
0〜(劣勢) < 99(優勢)

+一桁0クリティカル(優勢時は自分)
+ゾロクリティカル(自分)
+補正 自[格闘Lv3]*3
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/15(水) 21:10:35.91 ID:wEkrphE9O
436 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 21:33:44.72 ID:V0YB/3M00


 魔女は移動しない。黒い地面に根を生やしたように座り込んだままだ。

 進むことができればいつかは届く。




*優勢:100(どちらを選んでも撃破できます)*
1短期決戦を仕掛ける(新しい技を考案)
2このまま粘り勝つ

 下2レス
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/15(水) 21:35:33.90 ID:ld2XKesVO
1
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/15(水) 21:36:45.84 ID:lQkCV12F0
ここは新しい技が出来る1で。
439 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 22:07:40.50 ID:V0YB/3M00


 持っているのと同じ斧をもう一つ増やす。

 気を抜けば自分が振り回される重量だ。いつもの全力以上に無茶はするだろうけど、とはいえ次も耐えて回復することはできる。

 幸い、グリーフシードはまだある。


 魔力を滾らせ、使い魔を切り裂いていく。足は止めない。

 魔女の背中から繰り出される攻撃を1つ斧を投げて破壊し、続けて斧を両手に持ち直して振り下ろした。



小巻「アンタもっ、死にたくなければ戦え――……!」



 ――――結界が消えた。

 現実であるそこにはあたりにグリーフシードが散らばっているのが見えて、そこにまた一つ落ちる音がした。

 こんなに倒してきたんだ――一瞬そんな感傷が沸いたけど、浸るほどの暇はくれなかった。


 いつのまにか、美国はあたしの後ろにいた。

 そして、近づいてくる。手の包丁を振り上げて。


小巻「っ……!」


 咄嗟にその腕を掴むと、包丁が落ちた。

 さっきまでの戦いとは違って、なんの力もない美国の手はそっと掴んだだけで止められた。むしろ無駄に傷つけてないかのほうが心配になる。


 もしかして優木のやつ、一般人に反撃された屈辱を根に持ってるわけ。そんで本命は魔女じゃなくて美国にあたしを殺させようと。

 まあ、あたしが魔女に負けるならそれでもよかったんだろうけど。

440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/15(水) 22:11:31.77 ID:lQkCV12F0
織莉子は本当に操られているのか、操られるのも織り込み済みなのかどっちかねぇ?
どっちにしろ自分の意思で契約したのなら小巻とは相容れないのは確定なんだが・・・
441 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 22:44:20.08 ID:V0YB/3M00


 でも、これこそ“慢心から生まれた隙”だ。また魔女を差し向けられていれば、戦いはまだ長引いていた。


小巻「残念だったわね。魔女にばっかり戦わせてるアンタと一緒にしないでくれる?」

沙々「……」


 すかさず美国をバリアで覆った。

 もう物騒なモノはなくなったのだから自殺もさせられない。素手じゃ暴れようにも何もできない。


小巻「アンタの作戦は失敗よ。もう人質もいなくなったのよ。これで安心してアンタをやれる!」


 優木に向き直る。今のあたしは鬼の形相をしていることだろう。

 あたしの友達や知り合いに手を出しただけじゃなく、あれだけのことをしでかしてきた奴だ。両断されたって文句は言えないはずだ。

 次の魔女結界が包んだが、どんな魔女だろうとどうでもいい。あたしの狙いは優木だけ――――!



小巻「ッ…………――――!?」



 瞬間、痛みが走り、生温かいものがこみ上げる。胸から『ナニカ』が飛び出てくるのが見えた。

 思考が追いつかない。こんなに早く使い魔だって沸かないはず。



 崩れ落ちていく身体をなんとか後ろを向けると、ぼやけかかった視界でこちらに向けて手をかざしている美国の姿が見えた。



――――
――――


――――――
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/15(水) 22:46:48.43 ID:lQkCV12F0
ああああああ・・・BAD ENDか、これは?
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/15(水) 22:49:31.85 ID:aHH5fa3RO
やっぱり織莉子はクズだったな
444 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 23:16:36.11 ID:V0YB/3M00
――――――



沙々「お疲れ様です」



 結界内が静まり返ると、優木沙々は手を叩いた。

 血を流し続ける“死体”に近寄っていく。


沙々「……包丁は注意を引くためのフェイク。私も武器持たせただけの一般人は近づけさせたりしませんって」

沙々「好意を利用しておびき出し、洗脳された“フリ”で行動を制限して疲弊させる。最後に人質助け出して安心したところに魔法でズドン」

沙々「さすがですね。私一人じゃここまで思いつきませんよ!」

織莉子「油断させるためとはいえ、貴女一人を悪者にしちゃったでしょう。嫌ではなかったの?」

沙々「あー、へいきへいき。悪者でもなんでも気にしませんって。おかげでいいもの見せてもらいましたし」

沙々「死んだ相手が自分をどう思ってたかなんて、一番どうでもいいことです」

織莉子「そう」


 織莉子は淡々と、軽く返した。


沙々「それより、あなたのほうこそ少しは躊躇ったりしなかったんですか? 織莉子さんの友人だったんでしょう?」

織莉子「……友人ではないわ。生かしておくデメリットが多すぎる。彼女から隠れるのにもそろそろ困っていたところだった」

沙々「最高です! 本当、織莉子さんって私より性格悪い!」


 冷たく感情の見えない顔をした織莉子とは対照的に、沙々は心底楽しそうに笑っていた。

445 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 23:54:39.56 ID:V0YB/3M00


 ……織莉子にはわかっていた。もしも『躊躇った』場合、沙々は本当に洗脳魔法をかけるつもりだったことも。

 提案した時点でもう引き返す選択肢なんて無いことは決まっていた。


沙々「これで邪魔者が一人減りました。それにあの面倒な巴マミまで引き込む気だなんて」

沙々「あの『偽の記憶』でどう引き込むのかはわかりませんが…… 魔法少女が魔女になるなんて、また悪趣味な作り話を思いつきますね?」

織莉子「もしも作り話じゃなかったとしたらどうする?」

沙々「……え?」


 沙々は思わず目を丸くする。織莉子はまだ真剣な表情をしていた。

 ……それから、織莉子はその表情を目の笑わない微笑みに変えた。


織莉子「冗談よ?」

沙々「で、ですよね? 織莉子さんはそんな顔で冗談を言うから冗談に聞こえないんですよ!」

織莉子「この戦いでも、魔法の効果を持続させるために貴女に傷をつけさせるわけにはいかなかった」

織莉子「これからもよろしく頼むわね」

沙々「はい! 私も織莉子さんのことは頼りにしてますからね!」


 笑みを交わす。一見すれば仲の良い二人に見えただろう。しかし、その笑顔の裏側に本当の絆はあるのだろうか。


 織莉子はゆったりとした動作で沙々の隣に――死体の前に立つ。

 そして、少し前までは力強く自分に呼びかけていたその姿を見下ろした。……目をそらさずに見ようと決めていた。


沙々「これどうします? 死体はいりませんよね?」

織莉子「ええ。処理は任せるわ」




織莉子「……これが私の『戦い』よ。貴女の守りたかったものも、きっと救ってあげるから」



――――――
――――――



★新技習得

両斧斬撃 :近接武器戦闘・両斧(魔力-5/1ターン)単純に手数を二倍にする。相当なパワーが必要になるため、長くは使えない。



―22日目終了―



小巻 魔力[死の絶望の淵]  状態:仮死
GS:0個

◆ステータス
[魔力コントロールLv3] [格闘Lv3]
446 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/15(水) 23:57:27.27 ID:V0YB/3M00
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今回更新はここまで
次回は18日(土)18時くらいからの予定
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/16(木) 00:01:19.78 ID:WOmgLN110
乙です。

小巻編でも織莉子はキュウベェ並みに通常営業でしたね・・・
主役が死んだ(?)まま話が続くのは初めてですかね?
このあとどうなるのか全然予想がつきませんね・・・
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/16(木) 00:29:14.68 ID:4fBan/leO

気になるところで終わったな
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/18(土) 20:36:23.21 ID:9Mo917DiO
来ないな
450 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/18(土) 21:02:51.28 ID:ckY+msPe0
――――――



 ――――人間は死んだらどうなるのか。みんな一度くらいは考えたことがあると思う。


 善人の魂は天国に上って幸せに暮らしながら現世を見守り、悪人は地獄に落ちて裁かれ苦しむのだという人もいる。

 霊魂になって漂うという人もいる。いつかどこかの誰かとして生まれ変わるのだという人もいる。

 そんなものはただの都合の良い妄想で、死んだら“無”……『魂』なんてどこにも残らず消えてなくなるという人もいる。


 『無』というのはある意味で優しい。死んだあとには悲しむことも苦しむこともないのだから。

 それならあたしは、無に向かっているのだろう。しかし、それはそんな生易しいものではなかった。


 人間性がガリガリと剥がれ落ちていくような、生きて存在していたはずの『自分自身』を形作るものがなくなっていく感覚。

 悪夢ほどはっきりとしていない、しかし魘されているような、その感覚はまさしく地獄よりも地獄というにふさわしかった。




 どうしてこんな目に遭う。何に向けてかもわからない憎悪すら向けたくなるほど。



 ……『どうして』。

 その問いとともに瞼の奥に浮かんだのは、死ぬ直前に見た『誰か』の姿だった。



――――――
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/18(土) 21:02:54.92 ID:56iq7w6C0
スレ主さん、用事か何かかな?
それともまた曜日間違えてるとか・・・?
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/18(土) 21:03:54.40 ID:56iq7w6C0
と思ったら来た!
わずか3秒差とは・・・w
453 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/18(土) 21:57:11.40 ID:ckY+msPe0
――――――
23日目




マミ「……ねぇキュゥべえ、どうして黙ってたの?」

QB「なんの話だい?」

マミ「ソウルジェムのことと魔女のこと。……どちらも私達の“魂”のことよ」


 いつもどおりふらりと姿を表したソレに疑問をぶつけてやれば、またいつもの悪びれない様子で答えた。


QB「キミたちが知らないほうがいいことだからだよ」

マミ「は……?」

QB「真実を知ったキミは、事実そうして態度を変えた。キミも知りたくなかったんだろう?」

QB「それなら、やっぱり聞かれない限りは話さないのが正解だということだよね」

マミ「勝手なこと言わないで。私はずっとあなたを信じてたのに……!」


 昨日からこうして詰め寄ってやりたい気持ちだったが、やってみてもそれで何かが出来るわけじゃなかった。

 ……私には何も出来ない。身体のことも、魔女のことも。

 ひしひしと感じられる無力さに涙が伝った。

454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/18(土) 22:24:00.44 ID:9Mo917DiO
このままだとマミは織莉子の駒になりそうだな
455 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/18(土) 23:01:34.99 ID:ckY+msPe0


QB「マミ、ここは学校だ。あまり声を荒げたりしたら不自然に思われるんじゃないのかい」

QB「……それと、杏子から伝言を預かっているよ。ボクが伝えにきたのはそのことだ」


 今聞くと思わなかった名前が聞こえて、ハッとする。


マミ「どうして今更?」

QB「それは本人に聞いてみるといい。これからこっちに来るようだからね」

マミ「まさか縄張り争いでもする気なの?」

QB「君たちに協力してもいいって言ってたよ」


 まさかこれも罠。……そう浮かんだが、どっちにしても来るというのだから対応しないわけにいかない。


 涙を拭う。

 今日は朝から足取りが重かった。

 ここまで来られたのは、積み上げてきた優等生としての習慣と、まだ『何も知らない』仲間がいるからに過ぎなかった。


 私は友達を一人失った。誰よりも深く信頼してた友達を。

 本人はそう思っていないかもしれない。でも私にとっては裏切られたも同然だった。


マミ「今日もお昼に話があるんだけど……」


 教室を訪ねてみる。探していた姿がそこには一人見当たらなかった。


キリカ「小巻なら今日きてないよ?」


456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/18(土) 23:05:51.89 ID:56iq7w6C0
翌日ってことは大分時間経ったね。
小巻、身体を処理されちゃったらもうどうにもならないんだよね・・・
457 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/18(土) 23:38:48.99 ID:ckY+msPe0
――――
――――



 帰り際にテレパシーを受けて示された場所に向かうと、そこには久しぶりに見る顔があった。

 それと、初めて見る小さな子もその傍に寄り添っていた。


マミ「……佐倉さん、今日は一体どういうこと?」

杏子「気が変わったっつってんだよ。協力してやってもいいってな」

キリカ「キミが『風見野の魔法少女』?」

杏子「そうだよ。そっちこそ、『小巻』はどうしたんだよ」


 どうしてその名前を知ってるのかと一瞬身構える。

 多分キュゥべえが教えたのだろう。


マミ「……浅古さんはおやすみよ」


 このこともずっと引っかかっていた。休みの連絡は来ていないらしい。

 どうにも嫌な予感がする。同じことは呉さんも感じてきているようだった。

 優木さんのこと、それから、私が見た光景が浮かぶ。


杏子「死んだか?」

マミ「滅多なことを言わないで。……協力してくれるっていうのが本気なら感謝はするわ。悪いけど、お話は手短にお願いするわね」

杏子「なんだよ。せっかく来てやったのに邪魔者扱いかよ」


 佐倉さんが機嫌悪そうにポケットの中から出したお菓子を貪る。

 すると、小さな子が佐倉さんを守るように私達の前に出た。


「ケンカしないでっ。キョーコは悪い魔法少女じゃないもん!」

458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/19(日) 00:01:04.30 ID:oy176i/j0
ゆまちゃんが一緒となると杏子も少し丸くなったのかな?
459 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/19(日) 00:22:17.44 ID:EF9zyLSb0


 思わず毒気が抜かれる。佐倉さんもそれは同じだったようで、『本題』を切り出した。


杏子「あー…… こいつはゆま。今日来たのはこいつのことで聞きたいことがあるからだ。協力ってのはその代わりにしてやってもいいかなってこと!」

マミ「この子のことで……?」

杏子「『織莉子』って名前を知ってるか?」

マミ「それがどう関係があるの?」

杏子「ゆまは昨日契約したんだよ。織莉子に言われてな。ソイツ、絶対なにか企んでやがる!」


 心当たりはもちろんあった。それに、あまり聞かない名前。


マミ「本当にそんなことを……?」

杏子「は!? それって、心当たりあるってことでいいんだな?」

マミ「え、ええ。心当たりだけなら。でも美国さんは――」

杏子「ソイツに会わせろ」

マミ「ちょっと、いきなり変なことする気じゃないでしょうね?」

杏子「そんなの返答次第だろ! 明らかに怪しいことしてんだぞ。肩持つほうが意味わかんねえ」

杏子「知り合いかしらないけどマミもさ、いいように口車に乗せられて騙されてんじゃないの?」

マミ「え……?」


 美国さんがそんなことをした理由はわからない。

 魔法少女だったってことも昨日まで知らなかった――いや、その理由は知ってる。話してくれた。

 でも、私の知らなかった美国さんの顔が見えた気がして、私は戸惑っていた。


――――――
460 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/19(日) 00:25:56.51 ID:EF9zyLSb0
-----------------------------
今回更新はここまで
次回は19日(日)19時くらいからの予定
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/19(日) 00:30:31.97 ID:oy176i/j0
乙です。

小巻の件、杏子も知らないとなるとどうなったのか不安ですね・・・
ひょっとして小糸が契約することになるのか?
462 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/19(日) 21:19:01.35 ID:EF9zyLSb0
――――――




キリカ(“美国”って、小巻と一緒にいた人だよね?)


 歩きながら考える。いつものようなパトロールをしてるわけではない。

 風見野の魔法少女――杏子たちとの話の途中から、どこか置いていかれたような気分だった。

 マミはその人のことを知ってるらしい。


 それから、小巻のことを除けば気になることはもうひとつだ。


キリカ(朝教室にきた時のマミ、目が赤くて泣いてたみたいだった。なにがあったんだろ?)


 小巻のことは今探してる。まずはどうにかして連絡がとれないかを試した。今のところ連絡はなし。

 マミは話に出てきた魔法少女『美国織莉子』にも連絡をとろうとしてたようだった。でもそっちからの連絡もなし。

 ……杏子はああ言ってたけど、そもそも味方なのかな?


キリカ「小巻の家は先生に聞けたしそこは行くとして、なんもわかんなかったら手分けして探す?」

マミ「……」

キリカ「……おーい?」


 マミは今日はこうやってたまにぼーっとしてる。


マミ「あ、あぁ、そうね。でも、一人になったら危険もあるわよ」

キリカ「それもそうだけど」

マミ「ねぇ、呉さん」

463 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/19(日) 22:09:38.37 ID:EF9zyLSb0


 マミの声のトーンはいやに真剣だった。


キリカ「ん?」

マミ「辛い事を知らずに死んでしまったら、それ以上は辛い思いをせずにすむのかしら」 


 その言葉に、さすがになんて返したらいいかもわからず。

 呆気にとられているうちにマミが慌てたように言った。


マミ「……なんでもないわ! ごめんなさいね、嫌なことばかり考えてしまうの」


 なんかよくないことがあったのはわかる。そのことでなんか隠してるっていうのも。


 小巻の家に行くと妹さんが出てきてくれたけど、やっぱり小巻はいなくて、昨日から帰ってないって言ってた。

 それからしばらくマミと一緒に探し回って、それでも見つけられずに今日は別れた。



 薄々思ってる。もう見つからないんじゃないかと。もし見つかったとしても――――……



「...!」



 もう『無事』ではないんじゃないかと。




「......――――!」


――――――
――――――
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/19(日) 22:15:06.91 ID:oy176i/j0
うーん・・・小巻どうなるんだ、これは?
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/19(日) 22:31:03.31 ID:mIb05u5RO
まどポのさやかBADにあった身体がゾンビ化してたら流石に嫌だな
そういやほむら全然出てこないな
466 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/19(日) 22:32:25.09 ID:EF9zyLSb0




 ……『誰か?』 違う。

 このまま全部忘れてなにも無くなるとか冗談じゃない。


 そんなの――!



小巻「『美国』…………!」



 あたしはまだここにいる。

 浅古小巻だ。消えてなくなったりしない。たとえ死んだってあたしはあたし。そんな簡単なこと見失ってたまるか。


 アイツ、なんで魔法なんか。キュゥべえ見えてないって嘘だったの?


 その名を呼んだ先には、あたしの手を掴む人がいた。


キリカ「私だよ! 今、美国って言ったの!? わっ、手冷た……!?」

キリカ「生きてるんだよね!? 救急車呼ぶからね!?」


 キリカはひどく焦った様子で呼びかけていた。

 ――――――“生きてる”?


 気づけばそのまま意識はブラックアウトして、また別の場所で目を覚ました。

467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/19(日) 22:36:13.91 ID:oy176i/j0
キリカが見つけてくれたのか!
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/19(日) 22:46:13.88 ID:mIb05u5RO
何て言うか、小巻のメンタルくそ堅いな
マミの豆腐メンタルとは大違いだな
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/19(日) 22:52:15.76 ID:oy176i/j0
>>あたしはまだここにいる。

なんか涼宮○○ヒみたいなセリフだな・・・小巻のCV平野綾で脳内保管できたわw
470 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/19(日) 23:35:13.05 ID:EF9zyLSb0


小巻「ここは……!?」


 白い天井。意識ははっきりとしていて傷もない。

 怪我を負ったことも優木との戦いも夢だったかのように、すっきりとした目覚めだった。


 ……そんな都合の良いことを考えて、思い直した。

 救急車呼ぶって言ってたから、ここは病院なんだろう。あたしたちなら傷を治す方法も考えられる。

 そうして現実に思考を戻した頃、泣きつく妹の姿が見えた。


小糸「お姉ちゃん! 生きててよかった! 死んじゃうかと思ったんだから!」

小巻「そ……そんな簡単に死なないわよ」

小糸「そんなこと……ないよ」


 弱くつぶやくような声が聞こえた気がして、首を傾げる。

 それから他にも周りに人がいることに気づいた。


キリカ「覚えてる? 路地裏のせまっこいトコから小巻の声が聞こえた気がして、見てみたら本当に小巻がいたんだから驚いたんだよ!」

小巻「路地裏?」

マミ「記憶にないなら、後からそこに運ばれたのかしらね。とにかく助かってよかったわよね」

キリカ「あれから目は覚まさないし、すっごい血まみれで身体は冷たくて、もうダメかと思ったんだから! もうなんともないの?」

マミ「……」


 マミはどこか目をそらすような素振りをした。よほど酷い怪我だったのだろうか。

 誰が治してくれたんだろう。


小糸「それとね、お姉ちゃん、実は私……」

小巻「え?」



 小糸が何かを言いたさそうに手を胸の位置まで挙げる。

 ――――……その指には、あたしたちにあるのと同じ指輪がはまっていた。



――――――
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/19(日) 23:45:48.53 ID:oy176i/j0
やっぱり小糸は契約したか・・・
マンガとは違う願いなのかな?
472 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/19(日) 23:59:15.63 ID:EF9zyLSb0
――――――



 そこは誰もいない突きあたりの廊下。

 佇むマミの傍にはキュゥべえがいた。



マミ「……ねえ、魔法少女は身体が傷ついても死ぬことはないんでしょう? 小糸さんが契約する必要はあったの?」

QB「そのことを小巻は知らない」

QB「あのまま運ばれてたら『死亡してる』と判断されただろうし、いずれは心のほうが耐えられなくなって魔女になる可能性もあったんじゃないかな」

QB「マミが浄化しておいて助かったね。もうかなり濁っていたみたいだったから」

マミ「……」

QB「納得できないかい? 君たちが望んだ通りに事は進んだじゃないか」

マミ「ええ。だって、誰もそのことを知って契約してないから」



 キュゥべえはそう言うマミのことを、まったく理解できなさそうに見上げていた。



―23日目終了―



小巻 魔力[100/100]  状態:正常
GS:0個

◆ステータス
[魔力コントロールLv3] [格闘Lv3]
473 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/20(月) 00:02:21.52 ID:PZyfwj1D0
----------------------------
今回更新はここまで
次回は20日(月)20時くらいからの予定
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/20(月) 00:23:50.28 ID:mVxpPc6Q0
乙です。

うーん、何が起こったのか・・・
紗々は小巻の身体の処理に失敗したのか、雑な処理をしたのかはたして・・・
475 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/20(月) 22:18:52.36 ID:RH/XRy7j0
――――――
24日目



 あのあとは駆けつけてきた両親に泣かれたり、味の薄いご飯を食べて、検査したり。

 あたしのことは、行方不明で意識を失っていたものの、これといった外傷はなく検査でも異常はなかった――っていう扱いだ。



 ――――昼には退院して、今に至る。

 契約しちゃったばっかりの小糸も含めて四人で話してた。



小巻「それじゃあやっぱり、美国は契約してたのね?」

マミ「ええ。本当は本人から話すって言ってたのだけど、まさかこんなことになるなんて……」


 風見野の魔法少女が協力するって言ってきたこと、小さな女の子の契約を美国がそそのかしたってのも聞いたけど、

 マミがこのことを知ってたのが一番の衝撃だった。


小巻「でもこれではっきりしたじゃない! 美国のとこには優木がいた」

小巻「何企んでんのかは知らないけど、それも全部アイツに操られてたんだわ!」

マミ「そうよね。じゃあやっぱり早く優木さんを見つけないと……」


「あれ? 昨日より一人増えてる。くたばってなかったのか」


 その時、この場にもう一つ声が響く。

 風見野の魔法少女も呼ぶとは言ってたけど。まさか。

476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/20(月) 22:25:47.65 ID:mVxpPc6Q0
あー、小巻は織莉子が沙々に操られてると思ってるのか。
これなら沙々倒した後の保険にもなるからなぁ・・・
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/20(月) 22:31:55.59 ID:mVxpPc6Q0
あれ、小巻は杏子を知ってるのはGS強盗にあったからか?
名前を聞いてもピンとこなかったのは杏子がその時の魔法少女だと一致しなかったからか?
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/20(月) 22:36:30.99 ID:1yTThfPLO
昨日杏子たちに会ってたのはマミとキリカだから増えたのは1人じゃなくて2人じゃね?
479 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/20(月) 23:04:27.23 ID:RH/XRy7j0


小巻「佐倉杏子ってコイツ?」

杏子「そうだよ」

小巻「アンタ、この前ヘンなこと言ってきた強盗じゃない!」

マミ「佐倉さん……悪い噂は聞いてたけど、どうしてそうやって人に迷惑かけるようなことするの?」

杏子「うるせーよ! もうあたしと何の関係もないくせに、今更説教すんな!」

小巻「それに、一人じゃなくて少なくとも二人でしょ? 小糸が契約したのは夜なんだから」


 そう言ってやると、佐倉は不遜に腕を組んだまま小糸をジーッと見た。

 小糸は縮こまるようにしてる。


小糸「……は、はじめまして」

杏子「地味過ぎて目に入ってなかったわ。……契約した? なんでだよ」

小糸「お姉ちゃんの怪我を治すために。本当に死ぬかもしれないとこだったんです。冗談でもあんなこと言わないで」


 縮こまりながらもはっきりそう言うと、佐倉は少したじろいで、それから不機嫌そうな表情をした。


杏子「……揃いも揃って他人のために契約しやがって」

ゆま「キョーコ! いじわるなこと言っちゃダメだよ!」

ゆま「それに、ゆまはキョーコを助けたこと後悔してないよ?」


 小さな女の子っていうのはこの子のことだろう。

480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/20(月) 23:08:08.22 ID:1yTThfPLO
上手いカバーリングだな
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/20(月) 23:17:25.36 ID:mVxpPc6Q0
杏子、やっぱりGS強盗やってたのか。
ゆまの契約内容は原作通りみたいだけど、小糸は変わってますね。
2人とも治癒能力系か・・・
482 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/21(火) 00:20:18.65 ID:LV+shFI+0


小巻「人のためにナントカとか、そういえば前も聞いたわ。いちいち人の契約した理由まで探ってケチつけるなんて女々しいやつ!」

杏子「ああ?」

小巻「言っとっけど、あたしは他人のために契約したわけじゃないからね!」

小巻「あたしのやりたいことを、あたしの力でやろうとしただけ! アンタに文句言われる筋合いないから!」

小巻「ていうか、みんなそんなもんじゃないの。誰かを大事だと思うのも、助けたいって思うのも、結局は自分の気持ちなんだから」


 いつだか、キュゥべえにあたしの考え方は変わってるって言われたっけ。

 あれ正直いまだに納得できないけど。……それとも、他の人は違うっての?


杏子「……そうかよ。ずっとそう思ってられるといいな」

ゆま「ゆまはこれからもずっと後悔しないよ!」

杏子「これから先のことなんてわかんないだろ?」


 佐倉はぶっきらぼうに言う。一体何がそんなに気に食わないんだろう。



 それから、さっき話した優木のことを佐倉たちにも言ってやると、改めてみんなで『打倒優木』を目標に決めた。

 あたしたちにとってはこれまでと変わらない。でも、これで心から全員が一致団結できた。

 風見野でも堂々と探せるようになったというのは大きい。人数も増えたし、こっちが有利にはなったはずだ。



小巻「そうと決まったら優木を追うわよ!」

キリカ「これだけいれば手分けもできるね」

ゆま「ゆまはキョーコと一緒がいいな」

杏子「わかったわかった」

マミ「私は美国さんのところをまた訪ねてみるわ。優木さんがまた接触してくるかもしれないし、安全は確保したいもの」



1あたしもそうする
2風見野に探しにいく

 下2レス
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/21(火) 00:41:38.71 ID:7FrLN+Hv0
ゆまに自己紹介してから1

ひとまず今日は美国のとこにマミとキリカ、小糸も一緒に行きましょう。
洗脳を解くためにあのすまし顔にグーパン叩きこんでも良いわよね?
操られていたとはいえ胸に風穴開けられて死にかけたんだから、こっちも1回くらいやりかえしても文句を言われる筋合いはないわよね?

風見野のほうは佐倉とゆまちゃんの2人の地元組みに任せるわ。
ゆまちゃん、佐倉が『また』やられたら助けてあげてね?


484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/21(火) 00:51:48.58 ID:ok6PFZ1NO

てっきり杏子は織莉子の家に突撃すると思ったけどしないのか?
485 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/21(火) 00:58:13.50 ID:LV+shFI+0
----------------------------
今回更新はここまで
次回は23日(木)18時くらいからの予定です
486 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/23(木) 20:21:16.55 ID:dfLwgn6j0


小巻「あたしもそうする。アイツ、美国につきまとってるみたいだしね。知り合いのあたしたちがついててやるのが一番でしょ」

小巻「で、もしまた襲ってくんなら顔面にパンチ入れて目を覚まさせてやる!」

小巻「こっちは胸に風穴空けられて、小糸まであたしのために契約することになったんだから!」

マミ「そ…… そうね。まぁ出来るだけ穏便にいきましょう? 洗脳魔法の仕組みもわからないんだもの」

小巻「ま、当然優先すべきは優木をぶっ飛ばすことよ。アイツさえやっつければ全部解決するんだしね」

杏子「……そうだな。優木を見つけたらなんでゆまを契約させたのかも聞いといてくれ。くだらない理由だったらその場でシメとけ」



 その言葉にみんなが頷いて、それぞれ分かれていく。

 土地に慣れてる佐倉とゆまには風見野を、キリカと小糸には見滝原と風見野両方で怪しいとこを調べて探ってもらうようにしてる。



 そして、あたしとマミは美国の家へと向かった。もちろん事前に連絡なんかはしてない。



小巻「美国! いたら出てきなさい!」


 いつか以上に乱暴にインターホンを押しながら叫ぶと、ほどなくして扉が開く。



マミ「……いきなりでごめんなさいね。今お一人?」

小巻「てか単刀直入に言うわ! 優木はここにいない? あたしたちはアンタを守りにきてやったの。優木を懲らしめるついでにね」

織莉子「守る……?」

小巻「自覚もないわけ? そんなんだからあんなヤツに付け込まれるのよ。アンタどこまでわかってんの?」

小巻「話したいからあがっていい? ていうかあがるわよ。今は緊急事態なの」


 美国は今のところ襲ってくる様子はない。

 洗脳魔法といっても、術者が傍にいない状態でどこまで制御がきくものなのか。


 突然豹変する可能性もないわけじゃないから、一応警戒はしておく。

 でも契約してるってわかってればもうやられてあげるわけない。こっちにはマミだっているんだ。


織莉子「……ええ。入って」


487 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/23(木) 21:12:26.31 ID:dfLwgn6j0


 こんな時でものんきにお茶を淹れてるのを見ると、緊急事態って言葉が伝わってんのかわからなくなる。

 でも、その姿を眺めている分にはいつもの美国と変わらなくて、少しほっとした。


小巻「アンタさ、契約してるんでしょ?」


 紅茶も入って腰を落ち着けると、話の続きを再開した。


 今は指輪があることも隠していない。当たり前のように着いているそれに目がいった。

 あたしの前ではわざわざ取ったり見られないようにしてたんだろうか。


小巻「なんで隠してたのよ。わざわざ小細工までして」

織莉子「……小巻さん、すごく反対してたじゃない。魔法少女になること」

小巻「なっちゃってるものはしょうがないでしょ! そんなこと責めたりしないわよ!」

小巻「いたずらバレそうになって隠してる子供か!? アンタ意外と幼稚なとこあるわよね! あたしはアンタの親かっての!」


 本当になんで隠そうとなんてしたんだ。もっと早く気づけてればよかった。

 そしたら一緒に動けたし、一緒に戦えたかもしれない。


 美国は何か言いたそうにひくりと眉を動かした。……けど、一瞬見えた怒気は次には消え去って戻ってた。いつもの澄まし顔に。


小巻「一人でいるからああいうことになるのよ」

マミ「優木沙々について、知っていることがあったら教えてくれないかしら? 覚えていれば、出会った時のこととか」

小巻「あたしと優木が戦ってる時のこととかね」


 美国はしばらく考えるように沈黙を続ける。

 それから静かに口を開いた。


織莉子「……覚えていないわ」

小巻「何も?」

織莉子「優木沙々さんについて小巻さんから聞かせてもらったのは覚えているのだけど、それ以上は何も」

織莉子「でも最近、ボーっとしていた時があった気がするの」


 じゃあ、その時が操られてた時なんだろう。

 操られてる間やその前後についても、丸ごと記憶を消されてるなら聞いても意味がない。



1なんとか思い出せない?
2心を強く持て、と言う
3この街の魔法少女について話す
4自由安価

 下2レス
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/23(木) 21:19:57.19 ID:/fY8uTCsO
1
追加でゆまの契約についても問い詰める
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/23(木) 21:42:31.91 ID:mIIelpSK0


とにかく一発殴らせろと言う。
そのあと怒りか逆に冷静になって織莉子が本当に覚えていないというのが演技ではないかと疑念を持つ。

あー、もうイラつく!
あんたは覚えてないみたいだけど、こっちはあんたに後ろからなんかされて胸に風穴開けられたのよ!
おかげで小糸も契約するはめになっちゃったし、とにかく一発殴らせなさい!
壊れたテレビも叩けば直るんだから、あんたの記憶もショックで思い出すかもしれないしあたしも溜飲下がって一石二鳥よ!

こいつ記憶がないっていうの本当なのかしら?
仮に洗脳されてる間は記憶がないっていうの、あまりに都合よすぎるのよね・・・
あたしに契約したこと黙ってたのも何か変よね?
490 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/23(木) 22:43:48.20 ID:dfLwgn6j0


小巻「一風見野のほうに行ってたことも知らないのよね?」

織莉子「ええ…… 風見野に?」

小巻「優木と一緒に行ってたらしいのよ。聞いた話ではね。なんとか思い出せない?」

織莉子「そう言われても…………」


 再び考え込む美国。


 自覚がないのは良いことなんだろうか。知り合いを殺させて罪悪感煽るとか、もし出来るなら優木がいかにも好きそうだし。

 ともかく、やってたことを責めるなら優木本人だ。罪はアイツに償ってもらう。


 もしくは。


マミ『浅古さん、どう思う?』

小巻『……どうって』

マミ『今の状態は素かしらね? それとも、今も操られていてこの話も演技だった……ということも考えられなくはないけど』


 マミからテレパシーが飛んでくる。……紅茶を淹れるのんきな姿は素に見えたけど。

 洗脳魔法について詳しくわからないから、どのくらいのことが出来るのか疑ったらキリがなかった。

 ぶん殴って解決するならそれでもいいけど、あたしにぶん殴られた魔女や使い魔が正気に戻らないんだから、結局優木をなんとかしなきゃ解けなさそうだ。


マミ『さっきの話が本当なら、行動を操るだけじゃなくて記憶も操作したりできるみたいね。今のところはそう考えておきましょう』


 すると、ずっと沈黙してた美国がやっと口を開いた。


織莉子「……やっぱり、わからないわ」

小巻「ここまで収穫なしかー。あとは優木が来るかどうか待つしかしかないわね。優木はいつから接触していたのかしら?」

マミ「確実なのは一昨日よね。それ以前は……」

小巻「そうだわ、その前からぼーっとしてた日があったんじゃなかったっけ? そのことは覚えてんの?」

491 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/23(木) 23:27:35.38 ID:dfLwgn6j0


織莉子「あぁ…… マミさんを心配させてしまった時のこと?」

マミ「そうそう、それから美国さんが魔法少女だってことを聞いて…… あの時はこうなるとは思ってなかったわね」

織莉子「そうね。小巻さんにも私から話そうと思っていたのに、こんな形で知られてしまうなんて思ってなかったわ」


 これは操られてのことではない、だろう。

 せっかく美国のことは他の魔法少女に知られてなかったのに、マミに明かされちゃったら悪いこと企むにはメリットがない。はず。


織莉子「紅茶のおかわり淹れてきましょうか? まだ居るんでしょう?」

マミ「あら、ありがとう。気を使わせてしまって。頼むわね」

小巻「もう、ホント気が抜けるわね! まあ美味しいからいいけどさ」



 ……こっちは気を張ってんのに。疑ってんのがバカバカしく思えてきた。まさかこれもアイツの作戦だったりしない?


 美国が席を外してるうちに携帯を確認する。

 すると、ちょうど画面に電話の着信が現れた。どうやら有事の最中らしく、ほぼ一方的に伝えたいことを喋っていった。


マミ「浅古さん、今のは?」

小巻「マミ、やったわよ! 小糸たちが優木を見つけて、途中で佐倉たちとも合流して追ってるって!」

マミ「本当に良い報せね。随分と逃げるのが得意なようだけど、こうなったらもう逃げ続けられないでしょう」


 優木は結界ごと逃げてるらしい。大まかな現在地はわかった。

 今までみすみす逃走を許してきたけど、二つの縄張りを敵に回したのは大きい。

 あとはまた他の街に移られる前に懲らしめてやらないと。


織莉子「私達はどうするの?」



1ここで待機
2家を出る

 下2レス
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/23(木) 23:30:23.71 ID:mIIelpSK0
ここは2かな?
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/23(木) 23:37:14.27 ID:/fY8uTCsO
2
494 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/24(金) 00:12:27.01 ID:4rBbK3G+0


 もし優木と会ったら美国も戦う気なんだろうか。

 洗脳の影響が残ってるのかもよくわからないから警戒してたってのに。


小巻「アンタも戦えるの?」

織莉子「私も魔法少女よ。こんな時に何もしないのは……」

小巻「足手まといになったりしない? それが心配なのよ!」

マミ「でも、私達が行くなら置いていくわけにはいかないわよね。私達は美国さんを守りに来たんだから」


 マミがあたしのほうを見る。どっちに決めてもいいってことだろう。

 向こうも仲間が揃ってるけど、今度は絶対に逃したくない。


小巻「あいにく、こんな時に紅茶飲んでゆっくりしてる場合じゃないって考えはあたしも同じ!」

マミ「ええ、じゃあ行きましょう」



 あたしたちも追うことに決める。美国の家を後にした。


495 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/24(金) 00:16:59.71 ID:4rBbK3G+0
---------------------------
今回更新はここまで
次回は25日(土)18時くらいからの予定
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/24(金) 00:20:17.49 ID:EICCYKRK0
乙です。

次回は沙々戦ですね。
6人+織莉子が味方?なので魔女がわんさか出てきても何とかなる、のか??
沙々はなんで小巻の身体の処理をずさんにやったのか理由が気になりますね。
497 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/24(金) 00:43:18.08 ID:4rBbK3G+0
---------------------------------------------------------------
単純な答えになりますが、沙々が身体の真実を知らないからですね
事件になることはどうでもいいと思ってるので適当に目につかなさそうなところに捨てました
別編でもキリカを倒したと思ったまま放置でしたし…あんなかんじです
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/25(土) 17:51:11.05 ID:dxam8/qR0
>>497

なるほど、そういう事でしたか。
沙々は死んだはずの小巻が現れたらどんな顔するのやら。
499 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/25(土) 19:01:40.29 ID:BYuvvzXY0
――――――
――――――



 その頃、優木沙々は冷や汗を浮かべていた。



沙々(…………――どうしてこうなった)



 自身の操る魔女の結界の中で。



沙々(織莉子が味方についてから状況はよくなった! 何が目的かは知らないけど、アイツの力は役に立ったし望んだことは全部うまくいった!)

沙々(あのブルジョアみてーな屋敷も隠れ家としては気に入ってた。……用済みになったら適当に奪っちまおうかなって思ってたくらいには)


 ただし、その時はこないだろうとも思っていた。

 魔法少女の味方なんて考えたこともなかったけど、織莉子はそのくらい、沙々にとっては都合が良かった。

 この先立ちはだかるものがなくなろうとも、傍に置いといて損はない存在――くらいには信頼してた。洗脳魔法があるから、というのも理由にはあるのだが。


沙々(そうだ。風見野にはもう『敵』はいなかったはずだったんだ)


 嫌われることはどうでもいい。

 『憎まれっ子世にはばかる』なんて言葉もあるくらいだ。誰に嫌われようと憎まれようとやりたいようにやったもん勝ちなんだ。

 どうせ手出しできないんだから――。


沙々(なのに、なぜ……)



 結界の最奥にある扉が強引に破られる音が響く。



杏子「観念しろっ、テメー! 逃げ続けられると思うなよ!」

ゆま「おいつめたよ!」


 自分と同類だと思っていた風見野の魔法少女。そして、手出し出来ないはずの。


キリカ「ついに会えたね?」

小糸「この人が優木沙々……!」



沙々(なぜ、こうなった――――!!)



――――――
500 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/25(土) 19:43:30.68 ID:BYuvvzXY0
――――――



マミ「……!?」


 示された場所へ向かう途中、マミがどこかハッとしたように足を止める。


小巻「何っ? どうかしたの?」

織莉子「……マミさん、具合でも?」

マミ「い、いえ…… 私は何も…………」


 そんなマミを二人で覗きこむ。

 すると、マミはその視線を振り切るように再び強く否定してみせた。


マミ「な、なんでもないのよ! そんなことより、ほら、今は急がないと……!」



 戸惑ったけれど、みんなはもう戦ってるかもしれない。

 急いだほうがいいのはそのとおりだ。



 ――――……あたしたちが着いた頃には、すでに優木は追い詰められた後だった。


 結界は消え、ヌンチャクのように分かれた槍の柄でぐるぐる巻きに捕らえられ、みんなから囲まれるようにして武器を突きつけられている。

 ここまでされては反撃の機会もないだろう。しかし、優木は予想外とでもいったような顔をしていた。


沙々「……な、なんのつもりですかね? これは。これから拷問でもするつもりなんですか?」

杏子「望むならそうしてやってもいいけど?」

沙々「そそんなことはひとことも! ……冗談ですよう冗談! 謝れば許してくれるなら謝りますって! ね? ホント悪かったですからぁ〜もう魔女育てたりしません〜」

501 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/25(土) 20:10:23.64 ID:BYuvvzXY0


 なんか調子のいいことをほざいてた。

 謝れば許す気があってみんながこうしているとでも思ったらしい。


小巻「今更そんなことよく言うわね! 許されると思ってるの!? 大勢の命をうばっておいて!」

小巻「それにね、あたしだってアンタに二度も大迷惑かけられて死にかけたんだから!」

小巻「ああそうね、あたしからも一発は殴んないと気がすまないわ! このままみんなに倒されたからめでたしじゃあたしの気がおさまらないわよ!」

沙々「きゃああぁっ」


 拘束されたままの優木にずかずかと近寄ると、とりあえず二発ぶん殴っといた。

 気の抜けるような媚びた悲鳴があがったが、まったく心は痛まなかった。


杏子「あたしは魔女のことはどうでもいいんだよ。どんだけ犠牲が出ようが知らないし、責めるつもりもない。小巻のこともあたしには関係ない」

沙々「じゃあどうして……?」

杏子「なんでゆまを契約させようとした。“織莉子”を使って」


 佐倉が詰め寄る。しかし優木はそれに言葉を返す前に、あたしの後ろにいる存在を見た。……美国のほうを。


沙々「あ、あ……!? 織莉子さん! 助けてください! こいつらを殺せええええええええええ!!!」

杏子「!?」


 全員が身構えた。やっぱり連れてくるのは間違いだったのかもしれない。

 美国のほうにも警戒が移る。しかし、美国が動くことはなかった。


織莉子「……残念、もう魔法は解けているみたいね」


 みんなの隣で、美国も優木に向けて手をかざした。

502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/25(土) 20:41:50.64 ID:dxam8/qR0
うーむ、ここでみんなを油断させておいて裏切るのか?
それとも沙々を口封じするかな?
503 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/25(土) 21:08:05.01 ID:BYuvvzXY0


沙々「テッ……――メェェェェェ! よくも! よくも!!」

沙々「お前のせいなんだろ! 織莉子おおおぉぉ! お前がしくじったから……!!」


 優木は美国に向けて呪詛を吐き出す。


織莉子「何を言っているの……?」

小巻「相手にしちゃダメよ。駒を上手く操れなかった責任を押し付けようとしてんでしょ」

沙々「違う! 私は最初から織莉子に洗脳なんてしてない!」

小巻「この前と言ってることが違うわよ」

沙々「それも織莉子の作戦だったんだ! そうすれば浅古小巻を簡単に殺せるって!」

小巻「……」

沙々「契約……、誰か契約したんだな? 知らないヤツが増えてる。願いで生き返らせたんだろ? あの時は確実に心臓を破って殺してた」

沙々「結局作戦は失敗だった……織莉子は約立たずだ」


 言ってることが支離滅裂で呆れ返った。こいつ、どうしても全部美国のせいにでもしたいってこと?

 優木が卑劣なヤツだということはみんなよく知ってる。耳を貸す人はいなかった。


 それに、小糸はキュゥべえからあたしが『大怪我』を負ったことを聞いて契約したと言っていた。

 ……やっぱり支離滅裂だ。路地裏でキリカが発見した時のことも覚えてる。死んでる人間が一瞬でも目を覚ますはずがないんだから。


杏子「もうどっちでもいいから答えろ! なんでゆまを契約させた!?」

沙々「知るか! 知ってたとしてもお前にゃ教えねえよ!」

杏子「そうかよ。……じゃあ死ね」



 佐倉は問い詰めても答えを得られないと判断したのか、優木に深々と槍を突き刺した。

 ――――……こうして思っていたよりあっさりと、すっきりとしない後味を残しつつ、見滝原と風見野を騒がせていた事件は幕を閉じたのだった。

504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/25(土) 21:17:25.23 ID:dxam8/qR0
織莉子は洗脳されてたフリをして沙々を口風じか。
あ、これ小巻と一緒でSG壊してないから死んでない?まぁ、沙々本人が『死んだ』と思ってたらそのままなんだけど・・・
さっきマミが何か気づいたのは織莉子以外で魔法少女の真実を知ってるから、下手したらここで魔女化の事実が暴露されると考えたからかな?
505 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/25(土) 22:05:41.23 ID:BYuvvzXY0


 向けていた武器を下ろし、優木に目を向ける人、そらす人。

 まだ周りを囲んだままそれぞれの反応を返していた。


 あたしは覚悟してた。多分、みんなもそうだと思う。もはや優木は魔法少女以外には裁けない存在だったから。

 でも、契約したばっかりの小糸とかゆまとかにまで、いきなりこんな光景を見せたくはなかったとも思う。


マミ「……この後どうするの?」

小巻「このままにしといてあげましょうよ。死んだ後くらい、誰かに気づいてもらえたっていいんじゃないの」

キリカ「優木にやられた人は行方不明だったのに。恵まれてるね」

小巻「魔女にだって食べるものくらい選ぶ権利あるでしょ。コイツと同じことはしたくもない」

杏子「あたしはなんでもいい」


 佐倉は機嫌が悪そうだった。優木から聞きたいことを聞けなかったからだろう。

 それから、美国をほうを見た。


小糸「美国さんを疑ってるの……? さっきの話を聞いたから?」

杏子「いや。でもあたしは信じてもいないからな」

織莉子「……それは仕方ありませんわ。初対面ですもの」

ゆま「キョーコ……」


 佐倉はまだ美国のことを睨めつけている。

 対して、美国は……優木のことを睨んでいるかのように見えた。 睨む? いつも何言われてもふわふわと澄ましてる美国が?


小巻「はい、やめやめ! もう帰りましょ! こんなとこにずっといたら気分悪くなるわ!」

マミ「……ええ」

織莉子「……」


506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/25(土) 22:20:12.43 ID:dxam8/qR0
この織莉子がいつも通り(?)の織莉子なら、沙々の事を使えなかった駒として怒りを感じてるのかな?
あと小巻もいい加減織莉子を疑ったほうが良いと思うぞ。
507 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/25(土) 22:49:34.14 ID:BYuvvzXY0
――――――
――――――



 ――――みんなが日常へと帰っていった、かのように見えた後のことだった。

 人目にもつかず、誰もいなくなったその場所に再び一人の影が訪れていた。



織莉子「わかっていたの。貴女も小さい時から私とお父様の周りにいた人たちとよく似てるって」


 濁った宝石がかかとで踏み潰される。

 小さな破片が床に散らばった。


織莉子「上辺だけの好意に、手のひらを返したような悪意」

織莉子「だからこそ私も『私』でいられた。上辺でも悪くはない付き合いだったわよ。でもね」


 破片の上にもう一度強く踏み降ろした。


織莉子「…………貴女のほうが役立たずよ、優木沙々」

織莉子「願いで生き返らせたと言ってたけれど……違う。魂を残さなければ『万が一』の事態は起きなかったのに」


 ジリ、と音を立てて破片が更に小さくなっていく。


織莉子「本気で私を駒にした気でいたの? 私が【“操らなければ”指示を出さなければ】何もできなかった駒のくせに」


 結局のところ、『洗脳の魔法』すらもただの道具でしかない。

 使い手が真に操る側とは限らない。



 織莉子が優木との『別れ』を済ませた頃、もう一つの影がここに向かっていた。



マミ(あの時『見た』と思っていたもの…… あれは違う。あんなことはなかった。でも、だったらどうして……)

マミ(あの後キュゥべえと話した記憶は嘘じゃない。あのことは本当だっていうの)


マミ(偽の記憶を植え付ける魔法。あれは優木さんの魔法だわ。でも、優木さんはソウルジェムのことを知らないようだった)

508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/25(土) 23:06:46.92 ID:dxam8/qR0
ああ、やっぱり織莉子は織莉子だったか。
万が一が起きたことで織莉子の予知はあすみ編の時みたいにガバガバだよなぁ・・・

マミもおそらく織莉子が魔女化のことを話した時、洗脳されてなかったと気づいたっぽいね。
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/25(土) 23:14:04.32 ID:HJoCQMrGO
織莉子ってやっぱり馬鹿だよなぁ
万が一が起こりうるなら自分で最後までやりゃあいいのに他人が失敗したらそいつのせいとか小物すぎる
世界を救うためとかいいながら予知に振り回されてるピエロじゃん
510 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/25(土) 23:34:30.76 ID:BYuvvzXY0


マミ「美国……さん」

織莉子「あら、ごきげんよう」


 その場に現れたマミを、織莉子は物腰柔らかく迎え入れた。

 しかし、そんな上品な挨拶も優雅とは思えないほどにその背景は生々しい。足元に散らばった破片も相まって、マミは何かを確信する。


マミ「やっぱり、美国さんは知っていたのね」

織莉子「少し後始末をしようと思って。……『万が一』のことがあっては困るものね」

マミ「じゃあ、優木さんの言ってたことは…………」

織莉子「本当よ」

マミ「……そうだったのね」


 マミは衝撃を受けたものの、そう静かに答えていた。

 心の中で処理できないことが多すぎて、怒ることにも悲しむことにももう疲れてしまっていた。


マミ「じゃあ、美国さんは私に何を伝えたかったの?」

マミ「優木さんに『ソウルジェムが魂で、そこから魔女が生まれるのをこの目で見た』という偽の記憶を植え付けさせる……なんて遠回しな方法を取ってまで」

織莉子「そこまでわかっているのね。それなら話が早いわ」

マミ「……やっぱり何かあるのね?」

織莉子「私の目的について、聞いてほしいの。ソウルジェムの真実はそれを理解するために必要だった」

織莉子「当然、グリーフシードなんかじゃないわよ。真実を知った貴女にはその重要性もわかるでしょうけど、それは手段であって目的ではない」

織莉子「マミさん、私の力になるって言ってくれたわよね」



 織莉子が精神的に追い詰められていた時のこと。

 織莉子がマミを『協力者にしたい』と思い始めたのはその時からだった。



織莉子「今度こそ……―――― 貴女とはきっと、今以上にいい関係になれると思うの」




―24日目終了―



小巻 魔力[100/100]  状態:正常
GS:0個

◆ステータス
[魔力コントロールLv3] [格闘Lv3]
511 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/25(土) 23:39:03.58 ID:BYuvvzXY0
----------------
今回更新はここまで
織莉子さんはまあ、ストレスが溜まってるんですよ…八つ当たり出来る相手もいないし繕わなきゃいけない場面が多くって

次回は26日(日)18時くらいからの予定
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/25(土) 23:45:04.61 ID:dxam8/qR0
乙です。

結局織莉子は自分の考えに賛同してくれるイエスマンが側に居てほしいだけなんですよね。
ストレスが溜まってるとはいえ視野狭窄におちいってるだけなんだよなぁ・・・
小巻もめんどくさい性格とはいえ、ちゃんと織莉子に手を差し伸べたのにその手を取らなかったわけで。
あすみがこき下ろすのもわかるよ、ほんと。
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/25(土) 23:53:10.24 ID:HJoCQMrGO

またマミは織莉子の駒になるのか
2人とも寂しがりやの癖に虚勢を張るからある意味似た者同士か?
514 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/26(日) 21:25:33.54 ID:q8Fp/QRZ0
――――――
25日目



「浅古さん、退院おめでとう!」

「小巻! 色々大変だったって聞いたよ! でもなんともなくてよかったー」


 教室に入るとクラスメイトから次々に声をかけられた。

 行方不明とか入院とか、そこそこ話題にもなってたようだ。


 歓迎も落ちついてHRがはじまるのを待っていると、昨日のことを思い出す。


 ずっとみんなで追っていて、あたしにとっても因縁の相手だった優木をついに倒せたこと。

 でも、それよりも――あの時解散する間際に見た美国の表情がどこか胸に引っかかっていた。



 昼休みになると、久しぶりに丸々自由な時間になる。

 最近はマミたちと集まったり、放課後も優木への対策として固まってパトロールするようになっていた。

 風見野の魔法少女――佐倉たちと団結出来てたのも優木のことがあったからだ。解決した今、これからどうするのか。



小巻(そういえば、暁美にも昨日のことは一応メールとしいたほうがいいのかしら……)


 携帯を取り出して少し悩んだ。返信は一度も返ってきたことはないし、あの件のことでは関わりもしなかった。

 興味がないってのは言ってたし、わざわざ手間を掛けてやる必要なんてあるんだろうかと思ってしまう。


小巻(いいわ、一度は話してたんだから解決したってことくらいは送ってやる。でも向こうがあんな態度ならこっちも一言だけで済ませるわよ!)



 結局、『優木のことは解決した』とそれだけの文章を送った。これに対してもどうせ何も返ってこないんだろう。

515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/26(日) 22:26:14.75 ID:mEFmsa7x0
久しぶりにクーほむの出番あるかな?
516 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/26(日) 22:52:14.24 ID:q8Fp/QRZ0


 ヤケクソ気味にメールを送ってから、これからのことを考える。

 もう固まってパトロールする必要はない。とはいってもやっぱり小糸のことは気になった。

 あたしが契約して、特に学校が離れてからは放課後に一緒に何かをすることってほとんどなくなってた。


 パトロールなんかでも、誘ってあげたらよろこぶだろうか。


 ……でも同時に、ふいに『変身したところが見たい!』なんて言ってた姿も浮かんできた。

 昨日はみんないたから仕方なかったけど、パトロールするにも魔法少女の衣装で一緒に戦うと思うとちょっと気が重くなる。


小巻(本当、なんであんな格好しなくちゃいけないのかしらね。あれさえなければ迷うことなんてないのに!)

小巻(みんなは今日はどうするのかしら?)



1マミに声をかけにいく
2キリカに声をかけにいく
3小糸をパトロールに誘う
4美国に予定を聞いてみる
5キュゥべえに佐倉たちのことを聞く
6自由安価

 下2レス
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/26(日) 23:01:41.60 ID:mEFmsa7x0
6
小糸をパトロールに誘う前に昨日一緒だったキリカにも一緒に行かないかと誘う。
あとキュウベェにも小糸の戦い方について助言が欲しいので付いてきてと呼ぶ。
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/26(日) 23:11:03.97 ID:WQ/TuOBfO

追加でマミも魔女狩りに誘う
あと合同訓練を再提案する
519 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/26(日) 23:40:47.57 ID:q8Fp/QRZ0


 ここ最近ずっと一緒に行動してた仲間だ。

 気になって、マミのところに声をかけにいってみる。


 今日のことを聞いてみると、マミは少し曖昧な口調で答えた。


マミ「私は今日は……」

小巻「何? 用事?」

マミ「そうね。少し」

小巻「わかった。もう変なヤツもいないんだし、都合が合う時でいいわ」


 マミの態度はどこかよそよそしく感じる。何か違和感があるような。


小巻「それってさ、なんか嫌な用事なわけ?」

マミ「どうして?」

小巻「なんとなくよ! しいていうなら、元気がなさそうに見えたから」

マミ「そういうわけじゃないわよ。心配かけたならごめんなさいね」


 昨日まではどうだっただろう?

 その様子は『大丈夫』と言い続ける美国とも被る気がした。

520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/26(日) 23:55:32.61 ID:WQ/TuOBfO
昨日何を聞いたかわからんがマミはまだ動揺中か
521 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/27(月) 00:27:24.34 ID:ZOWYk2gV0



 教室に戻ってから、キリカにも声をかけてみる。



キリカ「私はとくに予定ないよ。パトロール……いく?」


 こっちはこっちで曖昧な答え方だった。


小巻「なによ、言っておいて乗り気じゃないわけ?」

キリカ「いや、なんかついに優木も倒したし気が抜けたっていうの?」

小巻「そんなこと言ってると魔女にやられるかもしれないわよ。まだまだ魔女は沸いて出るんだから燃え尽きてらんないわよ」

キリカ「それはそうだけどさあ……」


 キリカのは単にやる気の問題のようだった。

 そんな漠然とした目的じゃ納得しきれないっていうのか。


小巻「じゃあ、小糸のこと一緒に見てよ。今日は小糸も誘うから。昨日は一緒にいたでしょ?」

小巻「……あたしも家族としてはこれでも心配なの。あたしのために契約させることになって。今までは小糸に心配させてたけど、その気持ちも少しわかったっていうか」

キリカ「なりたてだし家族だもんね」

小巻「後輩もいるなら少しはやる気出たりしない?」

キリカ「まあ、少しかな。私も前よりは魔女と戦うの嫌じゃないしさ」


 ……悩んだけど、小糸も誘うことにした。

 渋る理由が衣装のせいってのもよく考えたらバカバカしい。なんか負けた気がする。



――――
――――
522 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/27(月) 00:34:14.61 ID:ZOWYk2gV0
------------------------
ここまで
次回更新は27日(月)20時くらいからの予定
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/27(月) 00:37:24.57 ID:Aa/CoeIX0
乙です。

うーん、マミさんはこのまま織莉子の言われるまま協力者になってしまうのか・・・
小巻は織莉子に疑念を持っても核心に至らないとそのまま信じたままみたいですね。
面倒見の良いツンデレってなかなか厄介だなぁ・・・
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/09/27(月) 23:27:04.43 ID:Aa/CoeIX0
今日はもう来ないかな?
525 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/27(月) 23:27:44.82 ID:ZOWYk2gV0
-------------
今日は時間がとれなかった…
次回は29日(水)20時くらいからの予定
526 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/09/29(水) 20:36:22.95 ID:Q6sH27gI0


 放課後、キリカと学校を出て街を歩き始めた。

 小糸が白女からこっちに来るまでにはもう少し時間がかかる。その間にも少し回れそうだ。


 パトロールの途中に、こんな話を聞いた。


キリカ「マミ、この前からなんかおかしいんだよね。たまに考え込んで上の空になってるっていうか」

小巻「この前から?」

キリカ「ちょうど小巻がいなくなったあたりだったかなぁ。朝うちの教室きた時、泣いてたんじゃないかって目してたし」


 この話は今日の違和感とも関係があるはず。

 あたしが倒れてた間に何かあったのか。ただ、それが『何か』はキリカにも想像がつかないようだった。


小巻「個人的なこと?」

キリカ「私にはわかんないよ」

小巻「聞き出すしかないわね。余計なお世話かもしれないけど、泣くほどって相当よ」


 さっそく明日やることの一つが決まった。


キリカ「……小巻は頼もしいね」

小巻「そう?」

キリカ「普通人と向き合おうとするのは勇気がいるから」

小巻「なによ、人を普通じゃないみたいに」

キリカ「えーっ。そういう意味で言ったんじゃないけど…… いや、うん、そうかもしれない」

小巻「は?」

キリカ「小巻見てると、やっぱ私とは違うなって思うとこあるから。私はそんなに強くなれないし」



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