【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】

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1 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:02:40.11 ID:H/R4DuwY0
【注意】
・「ウマ娘プリティダービー」と「みどりのマキバオー」のクロスSSです。
・誤字脱字、または設定が甘い等々あるかとは思いますが、何卒ご容赦をいただければ幸いです。

暇つぶしにご一読頂ければ幸いでございます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1628344959
2 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:04:32.17 ID:H/R4DuwY0
『今度はボクの番だ。だから見てて、マックイーン』
 
 もう無理だと思っていた。二度と走ることは叶わないと心のどこかで諦めかけていた。奇跡でも起こらない限り、と。

『奇跡は起きます。それを望み奮起する者の元に、必ず……きっと』

 かつてあなたに捧げた言葉。それをあなたは確かに証明してみせてくれた。
 
 歓声、歓喜、感動に包まれたターフの上で。
 十六万人もの観衆の前で。

 だから、今度はわたくしの番。

 ??あの日交わした、約束のために。
3 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:05:59.64 ID:H/R4DuwY0
「痛ってて、なんだここは?」
 
 一匹のネズミが地面いっぱいに敷き詰められた落ち葉の上から起き上がる。

 ズキズキと鈍痛が響く頭を摩りながら、ネズミは立ち上がり辺りを見渡す。

「なんでこんなトコで寝てたんだ? というか、どこだここは? いや、そもそも……」

 冬枯れのように葉の少なくなった木々の枝からは真っ青な空が見える。見知らぬ景色。ネズミは困惑したようにこう呟いた。

「俺は……誰だ?」
4 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:07:02.51 ID:H/R4DuwY0
 呟いた独り言がやけにうるさく感じる。それほどまでに静かな森の中。耳を澄ますと、後ろから乾いた落ち葉を踏みしめる音が聞こえてきた。

「なっ、なんだ!? まさか野犬か!?」

 そう言って振り向いたネズミの頭にズキンと鋭い痛みが走る。

(こんな場面、以前どっかで……)

「って、やべぇ! そんなことより早いとこ逃げねぇと!」
 
「あら? 服を着た……ネズミさん?」

 慌てて逃げようとしたネズミの前に現れたのは、ジャージ姿で足を庇うように引き摺りながらやってきた一人の少女。ただ、その容姿はネズミが知っている人間のそれとはやや異なっていた。頭の上にある長い耳。そして、艶やかな毛並みの整った尻尾。

「珍しいお客様ですわね」

 これが、ネズミと少女の初めての出会いだった。
5 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:08:16.64 ID:H/R4DuwY0
「な、なんだてめぇは!? 人間か? いや、その耳と尻尾はまるで馬じゃねぇか」

「まぁ珍しい。喋るネズミさんだなんて」

 好奇の眼差しを向けて手を伸ばしてきた少女に背を向け、ネズミは一目散に走った。

「あっ、お待ちになって!」

「へっ、捕まるかよ! あいつ以外に森の中で俺様の瞬足に追い付けた奴なんて??」
 
 遁走しながらそう言いかけた瞬間、ネズミの頭に再び鋭い痛みが走る。

(あいつ? あいつって、誰だ?)

 余計なことを考えず、今は逃げることが最優先。背後からはゆっくりだが落ち葉を踏み締める音が聞こえる。間違いなくこちらを追ってきている証拠だ。ネズミが更に加速するべく二足歩行から四足歩行へと移行したその時、大きく倒れ込むような音が聞こえた。

「な、なんだ? もしかしてぶっ倒れやがったのか?」

 おそるおそる戻ってみると。先程出会ったウマの特徴を有した少女は左足を押さえ、整った顔を悲痛に歪めながら地面に疼くまっていた。

「な、なぁ嬢ちゃん、あんたもしかして足を痛めてんのか?」

「これくらい……どうってことありませんわ」

「その苦しみ方は普通じゃねぇだろ。ちょいと待ってろ。今誰か呼んできてやる」
6 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:10:24.39 ID:H/R4DuwY0
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7 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:12:11.23 ID:H/R4DuwY0
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8 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:18:51.86 ID:H/R4DuwY0
何故か書き込みがundefinedとなってしまい続きがあげられないのですが、理由をご存知の方いらっしゃいますか?
9 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:31:03.28 ID:H/R4DuwY0
 見知らぬ森をネズミは駆ける。どこに何があるかも分からない。しかし、少女が来た方向へ向かって進めば開けた場所に出るかも知れない。依然と何も思い出せないネズミだったが、こうして自分の足で走ることが何故だか妙に懐かしいと思える不思議な感覚を覚えながら進んでいると、目の前に大きな屋敷が見えた。立派な門の前には、眼鏡を掛けた燕尾服の老紳士が立っている。

「お嬢様! お嬢様!」

 彼がお嬢様と呼ぶ人物こそ、さっきの少女のことだと察したネズミは老紳士の前に立ち止まり、小さな体をいっぱいに使いながら身振り手振りを交え大声で叫んだ。
 
「おい、じいさん! あんたの探してる娘はあの森ん中で倒れてるぞ! って、聞いてんのかコラ!!」

 いくらネズミが声を枯さんばかりに叫べども、老紳士は足元には一瞥もくれない。まるでネズミの声は聞こえていないかのように。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/08/07(土) 23:31:19.67 ID:JOELr5XK0
改行と文字数が一定以上だと、そうなってしまうので
レスを分ければよい
11 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:32:10.41 ID:H/R4DuwY0
「チクショウ! なんだってんだ!」

 ネズミは苛立ちから小石を思い切り蹴り上げた。すると、その小石は高く飛び上がると放物線を描いて老紳士の頭に当たったのだ。老紳士は小石の当たった頭を摩りながら上空を見上げている。どうやら、頭上から石が降ってきたのだと思っている様子だった。

 それを見たネズミはあることに気付いた。何故かはわからないが、自分の存在はこの老紳士には認識されていないということ。これでは助けを呼ぶことなど到底不可能である。しかし、先程の老紳士の反応を見たネズミはまだ打つ手が残されていると悟り、急いで来た道を戻り少女の元へと向かった。

 しばらく走ると、少女はまだそこにいた。何度か立ちあがろうとしては倒れたのだろう。長い髪や尻尾、着ているジャージは土や落ち葉で先程よりも汚れていた。ネズミは少女の頭に登ると右耳に付いたリボンを外して耳元でこう呟いた。

「悪いな、ちょいとこいつを借りてくぜ。直ぐ戻って来るからよ」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/07(土) 23:33:30.77 ID:H/R4DuwY0
>>10
解決しました、ありがとうございます。
13 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:34:35.27 ID:H/R4DuwY0
 緑色のリボンを咥えたネズミは、再度老紳士のいた屋敷の方へと向かって走った。

「おぉ! これはもしやお嬢様の……」

ネズミは老紳士の前でヒラヒラと少女のリボンを振って見せた。予想通り、物に関しては認識出来るようだ。これ幸いとネズミはリボンを咥えたまま再び少女の元へと向かって走る。老紳士の目には、まるでリボンが風に吹かれて飛ばされているように映っているのだろう。ネズミの思惑通り、老紳士はリボンを追って付いて来た。老紳士が倒れた少女を見つけたのは、それから数分後の事だった。
14 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:35:27.71 ID:H/R4DuwY0
 翌朝、鳥の鳴き声でネズミは目覚めた。
 
「ふぁ〜あ、よく寝たぜ」

 昨日出会った少女が倒れた場所の近くにあった一本の老木。そこの根元付近に出来た樹洞の中に落ち葉を敷き詰めた簡易的なベッドだったが、なかなかに寝心地は良かった。何よりも春先の寒さを和らげてくれたのは毛布の代わりに包まっていた緑色のリボン。結局あの後少女は老紳士が呼んだ多勢の人間に運ばれて行き、誰もこのリボンには目もくれなかったのだ。仕方なくネズミが預かり、今に至っている。

「これからどうするかねぇ。つっても、何をするにしても記憶がねえってんじゃまるでお話に……」

 独り言を遮ったのは大きな腹の音。もちろん、捕食者や外敵のものではない。自分自身のものだ。そこでようやく自分が昨日から何も食べていないことに気づいた。

「俺はあくまでこいつを返しに行くだけだ。その過程であわよくば食い物を、なんてやましい考えなんてこれっぽっちもだな……」

 ネズミは徐に立ち上がり体に付着した落ち葉や土を払い落とすと、昨日足を運んだ大きな屋敷の方角へ向かって歩き始めた。
15 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:36:20.55 ID:H/R4DuwY0
 木漏れ日の差し込む窓辺。吹き込んだ風がカーテンを優しく揺らしている。キャンバスを前に座っている少女の芦毛の髪と尻尾もまた同様にそよいでいた。

「せめて気を紛らわせるために筆を執ってはみたものの、やっぱり慣れませんわね。早く慣れないといけませんのに……」

 呟いた独り言さえうるさく感じてしまうほど静かな朝。頭の上にある少女の耳は、小鳥の囀りを捉えてぴこぴこと動いていた。この療養所では学園のような喧騒は聞こえない。友の笑い声も、蹄鉄が大地を蹴る音も。少女は何気なく自分の右耳をそっと右手で触れた。

「あぁ、そうでしたわ」

 普段から身に付けていたリボンは昨日紛失してしまった。いつもそこにあるものがないという感覚は、慣れるまでが苦労する。いつしか忘れ、それが無いことが当たり前になるまでが。

「…………」

 たかがリボン一つ。替えなんていくらでも利く。しかし少女は、その失くしたリボンに掛け替えのない自分の夢を重ねていた。俯きながら少女はそっと自分の左足を摩った。
16 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:37:58.97 ID:H/R4DuwY0
「なんて顔してやがるんだよ、イイ女が台無しじゃねぇか」

「だっ、誰ですの?!」

 不意に聞こえた声に少女は驚いて顔を上げる。すると、半分開いた窓に小さい何かが立っていた。少女は、メジロマックイーンはその何かに見覚えがあった。

「あなたは……昨日のネズミさん?」

「おうよ、昨日ぶりだな嬢ちゃん」

 ネズミはそう言うと、ぴょんと身軽にキャンバスの上へと飛び乗った。

「ほらよ、昨日借りたまま返しそびれちまったリボンだ。落ち葉や砂埃でちょいと汚れちゃいるが、洗えばまだ使えるだろ」

「わざわざこれを届けに?」

「まぁな。んでよ、その駄賃ってわけじゃないんだけどあのリンゴくれねーかな。描かねぇんだろ?」

 真っ白なキャンバスを覗き込んだネズミはそう言うと、テーブルに乗ったリンゴを指差した。マックイーンがデッサンの為に持ってきたものだ。
17 : ◆Nsqe9nXw7g :2021/08/07(土) 23:38:49.72 ID:H/R4DuwY0
「えぇ、構いませんわ。あなたには昨日の御恩もありますから」

 快諾を得たネズミはキャンバスから一足飛びでテーブルへと移動すると、自分の体より大きなリンゴをひょいと持ち上げた。

「へへっ、ありがとよ。そういや、昨日はなんであんなところに一人で歩いて来たんだ? 見たところ足を怪我しているみてぇじゃねぇか。昨日も左足庇いながら歩いていたよな?」

「…………」

 ネズミの質問にマックイーンは俯いたまま何も喋ろうとはしなかった。

「まっ、何でも良いけど無茶は感心しねーな。安静にしてねーと治るもんも治らねーぞ」

「安静にしたところでこの足はもう治らない。医者からもそう言われていますの。酷使さえしなければ、日常生活には問題はないと主治医から言われてはいます」

「なんだ。なら良いじゃねーの。無理せずのんびり普通の生活をしていれば良いなら何の問題もないじゃねーか」

「普通の生活さえしていれば良い。もう、走らないでさえいれば。ですが……」
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