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私「学校さぼってみた」
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61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 07:58:39.66 ID:vybebkbR0
幼馴染「てか、母ちゃんどうした? 寝たのか?」
私「出てった」
幼馴染「まじか」
私「うん。学校の先生してたんだけど」
私「すごいブラックで、パワハラもあったからね」
私「最後の方泣いて酒飲んでばかりだった」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 07:59:43.81 ID:vybebkbR0
私「どっかで彼氏でも作って幸せになってたらいいかな」
幼馴染「まじか…」
私「だから私引っ越すから」
幼馴染「え!!!」
幼馴染「じゃ、じゃあお前、もういじめとか、されなくて…」
私「…そういうことだけは知ってるんだ」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:01:27.63 ID:vybebkbR0
幼馴染「もう、あの変な友達とかに絡まれなくて、すむってことかよ」
私「まあ、そうなるね」
私(カースト上位の人達と、最初はつるんでたけど)
私(好みとか全部合わせてたらすごい疲れたんだよね)
私(家ではお母さんの機嫌伺って)
私(学校ではそんな友達もどきのご機嫌取り)
私(地獄だった)
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:02:53.62 ID:vybebkbR0
幼馴染「なあ、俺さ」
幼馴染「もう、生き物とか興味ねえから」
私「パンパスグラス持ってくるやつが何言ってるの」
幼馴染「髪も染めてタバコも吸ってる」
幼馴染「もう、ださくねえだろ? 変じゃねえだろ?」
私(誰もそうしろなんて言ってない)
幼馴染「やばい連中とも絡んでるし」
幼馴染「お前、そういう男が好きだろ?」
私(誰もそうしろなんて言ってない)
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:04:04.75 ID:vybebkbR0
私(尻尾を振ってる犬みたいなやつだ)
私(こいつは何も知らない)
私(こんな今に、たどり着きたくなかったな)
私「ねえ」
幼馴染「なんだよ」
私「オセロでもしよっか」
私(今だけは、そんなしがらみから)
私(少しでも抜け出したかった)
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:04:53.91 ID:vybebkbR0
幼馴染「負けてもなくなよ?」
私「泣かないから」
私「じゃんけんぽん」
幼馴染「おりゃ」
私「私の勝ち」
幼馴染「じゃあお前先攻な」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:05:45.72 ID:vybebkbR0
窓から差し込む月の光は
気まぐれに雲で隠れて
電気のついていない部屋を暗転させる。
オセロの白と黒は
夜の闇に溶けていった。
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:07:16.14 ID:vybebkbR0
私(勝ち負けなんてどっちでもいいな)
私(なんか、このままずっと続けばいいのに)
幼馴染「おい、そこひっくり返し忘れてるぞ」
私「わかってるよ。うるさいなあ」
私(まあわかってないけど)
私(たぶん酒で何もわかってないな私)
私(未成年が酒なんて飲むもんじゃない
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:13:41.93 ID:vybebkbR0
パチン
私「おいそこ、角とられちゃうでしょ」
幼馴染「そうだな」
私「手加減してるでしょ!」
幼馴染「してねえよ」
私「嘘だ、置きなおせ」
幼馴染「嫌だね」
ファンファンファン
私「なにこれ、パトカー?」
幼馴染「…みたいだな」
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:14:47.59 ID:vybebkbR0
私「こんな時間に物騒だね」
幼馴染「…そうだな」
ガラッ
私「ちょ、どこ行くの」
幼馴染「わり、帰るわ」
私「待って待って」
サッ
私「…まだオセロ終わってないのに」
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:15:48.18 ID:vybebkbR0
私「片付けもしてないじゃん」
ピンポーン
私「…こんな時間に誰…」
テクテク
ガチャ
警察「警察です。夜分遅くにすいません」
警察「この辺でちょっと人を探しておりまして」
私「…はあ」
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:16:44.03 ID:vybebkbR0
警察「…ていう感じで、心当たりは」
私「…まじすか」
ダッ
私「探してきます」
警察「ちょっ!」
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:17:48.53 ID:vybebkbR0
私(こんなに走るの久しぶり)
私(あいつが逃げそうなところ…)
私(あ、鍵かけ忘れた)
私(まあいや。今大切な物、家には何もないし)
私(あいつとのオセロの決着の方が大切だ)
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:19:26.09 ID:vybebkbR0
数十分後
私(たしかこの用水路、昔あいつと遊んでたな)
私(まさかここに)
チラッ
幼馴染「……」
私「何してんの」
幼馴染「寝てたんだよ」
ジタバタ
私「なにそれ」
幼馴染「亀だよ」
彼は、足首ほどの水位の用水路の中で
亀を抱きかかえて、頭から血を流していた。
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:20:26.59 ID:vybebkbR0
私「寝るならベッドで寝なよ」
幼馴染「ベッドで寝るのは子供のすることだよ」
私「大人もベッドで寝るわ」
私「オセロも途中で放り出しといてさ」
バチャッ
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:21:32.70 ID:vybebkbR0
彼の軽口に応えながら
用水路に裸足のままゆっくりと降りた。
私(つめたっ!)
それでも、水流に逆らいながら、一歩ずつ
彼に近づく。
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:22:50.64 ID:vybebkbR0
私「私さ」
幼馴染「なんだよ」
私「靴の紐はきちんと結んでいた方がいいと思う」
彼の前にたどり着き、しゃがみこむ。
びしょびしょでよれよれになった靴紐を握る。
私「あと、かかとも踏まない方がいいと思う」
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:24:12.40 ID:vybebkbR0
幼馴染「まじか」
幼馴染「お前、ちょっと悪い男子好きなんだと思ってた」
私「それ私がみんなに合わせてでっちあげたやつだから」
私「あと、オセロは本気できて」
幼馴染「だから手加減してねえって」
私「負けたら私が切れると思ったんでしょ」
幼馴染「思ってねえよ」
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:25:19.22 ID:vybebkbR0
ヌルヌルになった靴紐を
びしょ濡れの手で握り、結ぼうとする。
輪っかを作るのが水流で何度も駄目になる。
かじかみ、アルコールにやられた指先は、不格好にしか動かない。
私「あとさ」
幼馴染「なんだよ」
私「人は殺しちゃだめなんだよ」
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/12(月) 08:26:09.93 ID:vybebkbR0
続く
また明日。
ノシ
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/12(月) 08:54:43.89 ID:+vQjNr0DO
おつ
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/13(火) 07:27:07.86 ID:2p2LuwdCo
おつおつ
いい雰囲気だわ
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:31:13.18 ID:UQCEEq9P0
幼馴染「………」
私「もう、全部聞いたから」
私「金髪の中学生が、塾帰りの女子中学生さしたって」
幼馴染「……」
私「…なんか言ってよ」
幼馴染「……」
幼馴染「この亀、ミシシッピアカミミガメって言うんだよ」
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:32:34.72 ID:UQCEEq9P0
幼馴染「小さなころは、ミドリガメとかいう名前で」
幼馴染「昔はペットショップで売られてたんだけど」
幼馴染「異臭問題とか捨てられる問題とかもあって」
幼馴染「今は売られてない」
私「……へえ」
私「かわいそうだね」
私「家の近くにいたやつだわこいつ。今日見たよ」
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:33:33.19 ID:UQCEEq9P0
幼馴染「メスでも探してたんだろうな」
幼馴染「でも、あそこだとたぶん車に轢かれるから」
幼馴染「だから用水路に逃がそうかなって思って」
私「だから頭打ったんだ」
私「間抜けの極みじゃん」
幼馴染「うるせえよ」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:36:01.76 ID:UQCEEq9P0
彼は苦笑して、亀の甲羅をそっと撫でる。
私「生き物は卒業したとか言ってなかった?」
結びかけの靴ひもから手を離し、私も亀の甲羅に手を乗せる。
雲が月を再び隠す。
訪れた闇は、すべてを黒で包み込む。
世界の境界線が失われたみたいだった。
幼馴染「危ないところにいる生き物は放って置けねえよ」
幼馴染「みんなそんなもんだろ?」
私「あんたくらいだよ」
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:37:26.98 ID:UQCEEq9P0
私(ああ、なんかほっとする)
私(こいつ、なにも変わってないんだ)
私(好きなもののためなら、なんでもする)
私(何よりも尊くて、美しい)
私(それが、こいつなんだ)
なでなで
私「いやべちゃべちゃの手で撫でないでよ気持ち悪い」
幼馴染「泣いてた気がしたから」
私「泣いてないから」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:39:15.36 ID:UQCEEq9P0
私「私、変わっちゃったね」
幼馴染「何も変わってねえよ。大丈夫だ」
私(ああ、本当に泣きそうだ)
私(靴紐どこだろ)
私(まだ、結べてない)
私(いや、でも、結べなくてもいいのか)
私(結んだら、この夜が終わるかもしれないし)
私(いやそんなわけはないんだけど)
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:40:35.61 ID:UQCEEq9P0
幼馴染「すげえ煙草今吸いたい」
私「あんなまずいのよく欲しがるね」
幼馴染「お前も吸ったのかよ」
私「ひどい味だった」
幼馴染「かっこつけるために吸ってたんだよ」
私「全然カッコよくないから」
私「こっちの方がいいよ」
ズボッ
幼馴染「からっ! まずっ!」
私「わさび飴だよ」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:41:51.59 ID:UQCEEq9P0
私「慣れたらおいしいらしいよ」
幼馴染「妹がこの飴好きだわ、たしか」
私「たぶん、今日会ったよ、妹さん」
私「いい子だね。芸術家タイプだ」
幼馴染「ただの生意気なクソガキだよ」
私「あんたによく似てる」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:43:17.10 ID:UQCEEq9P0
私「じゃあさ、話し戻すけど」
私「なんで殺したの?」
幼馴染「……」
私「なんでこういう時はだまるかなあ、めんどくさい」
私「あの子はたしかに嫌な奴だよ」
私「靴に画びょう入れてくるし、教科書やぶってくるし、給食に洗剤混ぜてくるし」
私(たぶん、きっかけなんてなんでもよかったんだろう)
私(いじめなんてそんなもんだ)
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:45:22.38 ID:UQCEEq9P0
私(テストで私だけが満点とってたりとか)
私(あの子の片思いの男子からチョコをもらったこととか)
私(うちの父親が不倫して母子家庭だったりとか)
私(まあ、とにかくなんでもよかったんだ)
私(お母さんが、職場でパワハラされてたから)
私(同じ道を歩まないために、色々合わせて、ギャルっぽくしたりとかがんばったんだけど)
私(全部裏目に出た)
幼馴染「……そうか」
私「言い訳くらいしろよ」
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:47:23.10 ID:UQCEEq9P0
私「人殺すんだよ?」
私「死体隠すとか、こっそりやるとかさ」
私「もっとやりようあるでしょ」
私「脅すつもりで包丁つきつけて」
私「軽いはずみで深く刺さったとか、そういうパターンでしょ?」
私「だとしても、人の命を奪ったのなんかに変わりはないしさ」
私(ああ、もう何が言いたいんだろ)
私(彼をこんな風にさせてしまったのは、誰のせいだ)
私(…私のせいか)
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:50:06.45 ID:UQCEEq9P0
私(彼を拒絶して、変に空回りしている私を見たこいつが)
私(こんなにこじらせてしまうなんて)
私(…まあ、頭がおかしいのはこいつなんだけどさ)
私「でも、殺しちゃだめなんだよ」
私(理論上の問題を突きつけるしかない)
私(彼をひっぱたくべきだんだろうけど)
私(靴紐がまだ結べてないから手が離せないし)
私(この人殺しとか言って、彼を軽蔑すべきなんだろうけど)
私(その代り今、こいつを抱きしめたいとか)
私(そういうことを考えている私は、こいつと同じくらい頭がおかしい)
私(たぶん、アルコールのせいだろう)
私(そういうことに、しておこう)
私
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:51:43.78 ID:UQCEEq9P0
タッタッタッ
警察の声「いました! 容疑者と女性、たぶん中学生くらいです!」
警察の声「確保します!」
若い警官は、私と彼と、亀をライトで照らす。
満月が注いでくれた、優しい魔法を打ち消すのには
その光は十分なくらいに眩しくて、冷たかった。
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:52:45.03 ID:UQCEEq9P0
彼はおとなしく両手を上げる。
亀は光におびえ、彼の膝から滑り落ちる。
私は何もできず、ただ下をうつむくだけだった。
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:53:43.12 ID:UQCEEq9P0
数年後
私「……ふわあ」
祖母「あんた、ベッドで寝なさいよ」
私は、祖母の家で暮らしていた。
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/13(火) 07:55:13.97 ID:UQCEEq9P0
続く。
また明日ノシ
>>81
>>82
読んでくれてありがとうございます!
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/13(火) 10:53:06.19 ID:EDBrMO4OO
おつおつ
テンポよくていいね
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:13:00.58 ID:/jrdr4ol0
私「また寝てたか」
私「何時?」
祖母「夜中の1時よ」
私「また中途覚醒か」
私「眠剤全然効かないなあ」
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:13:51.61 ID:/jrdr4ol0
私「夢見てた」
祖母「どんな夢?」
私「あいつの夢」
祖母「またかい」
私「オセロの続きしてた」
祖母「どっちが勝ったんだい?」
私「忘れた」
私「でもワイン飲んでた」
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:15:18.88 ID:/jrdr4ol0
私「どうせならあいつの分残して一緒に飲めばよかったな」
祖母「未成年が飲むもんじゃないでしょうが」
私「夢ならセーフ」
私「それよりさ、何度も考えちゃうんだよね」
祖母「うん」
私「あいつをさ、あのまま用水路から手を引いて」
私「逃げて、警察降り切ってたら」
私「どうなってたかな、とか」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:16:54.67 ID:/jrdr4ol0
祖母「あんたはどう思うの?」
私(この人はいつも答えより質問を返してくる)
私(時々難しい質問をしてくるから頭が痛くなる)
私「お母さんのくれた交通費使って、それで遠くに逃げて」
私「働いて…」
私「あ、でも仕事どうしよ」
私「キャバ嬢とか向いてるかな」
祖母「やめときな」
私「失礼な」
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:18:44.80 ID:/jrdr4ol0
私「そもそもさ、あいつとの関係悪くしたの、中学の時の一言じゃん?」
私「もっと私がましなこと言ってれば」
私「いやそもそも、私がギャルっぽい路線で架空の自分なんて作らなきゃ」
私「あいつがこじらせなかったかもしれないし」
私「いやそもそも最初からいじめられてなかったら」
私「あいつも暴走しなくて済んだかもしれないし」
私「いやそもそも」
祖母「そもそもが多いわねあんたは」
私「」
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:20:06.71 ID:/jrdr4ol0
祖母「楽になりたいのはわかるけど」
祖母「それ、続けてて楽になる?」
私「…もしもを考えてたら」
私「現実から逃げられるし」
私「こんな苦しみもいつかは終わるかもしれないじゃん」
祖母「なるほどね」
祖母「なんか飲むかい?」
私「コーヒーちょうだい」
祖母「はいはい」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:21:05.99 ID:/jrdr4ol0
祖母「余計眠れなくなるのに、あんたは変わってるわね」
私「別にいいでしょ」
ズズ
私「相変わらずまずいね!」
祖母「いれてもらっておいてよく言うねこの子は」
祖母「もうわかってて飲んでるだろ」
私「まあね」
私「ブラックも少しずつ慣れてきたんだよ」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:22:38.06 ID:/jrdr4ol0
祖母「一つききたいんだけど」
私「なに?」
祖母「彼は人の命を奪ってるわけだろ?」
祖母「そのところあんたはどう思ってるの?」
私(倫理的な正しさとか)
私(宗教的な正しさとか)
私(今それは重要じゃない)
私(私がどうとらえているか)
私「まあうん、なんていうか」
私「よくわかんないね」
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:23:24.44 ID:/jrdr4ol0
私「現実感ないというか、なんというかさ」
祖母「そうかい」
私「じゃ、散歩行くから」
祖母「はいはい、気を付けてね」
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:24:46.33 ID:/jrdr4ol0
最近買い替えたランニングシューズを履いて
私の深夜徘徊は始まった。
私(車全然走ってないな)
私(ど田舎最高)
私(風涼しい)
私(やさしさと切なさが混じった匂い)
ノソノソ
私(田舎特有の亀とか虫がめっちゃいるんだよね、こういうとき)
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:25:38.10 ID:/jrdr4ol0
ソッ
私「危ないから避けとくね」
私(彼のまねごとみないなことを続けてる)
私(恩返しも、お礼の言葉もない)
私(ただの、願掛けだ)
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:26:25.33 ID:/jrdr4ol0
私(コンビについた)
ウィン
私「37番1つ」
店員「未成年には売れないよ」
私「吸わないです。かっこつけるために買うんです」
店員「いや駄目なものは駄目だから」
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:27:17.63 ID:/jrdr4ol0
私「じゃあこれでいいです」
ソッ
店員「なんでわさび飴?」
店員「これ、美味しいかい?」
私「まずいです」
店員「だよね」
私「慣れればいけます」
店員「慣れがいるんだね」
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:28:31.76 ID:/jrdr4ol0
ウィン
店員「ありがとー」
ペロペロ
私「まずいなあ、相変わらずまずい」
私(お母さんの件も、あいつの件も、殺されちゃったいじめてきたあいつも)
私(私が最初からみんなと会わなきゃ、何も起こらなかったのかな)
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:31:09.97 ID:/jrdr4ol0
私(そしたら、こんなに苦しい夜を味わうことも)
私(まずいコーヒー飲んだり飴をなめたりすることも)
私(家に帰って膝を抱えて泣くこともなかっただろうに)
私(歩き続けて足が痛い)
私(なんか明るくなってきたし)
私(こんな夜、何度目だろう)
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:33:11.52 ID:/jrdr4ol0
私(…帰ろ…)
私(高校生活ももう終わり)
私(あいつ、元気にしてるのかな)
私(刑務所ってどんな感じなんだろう)
私(ていうか再会できるのか?)
私(ていうか再会したいのか? お互いに)
私(…なんて言えばいいんだろう)
私(言葉が何も見つからない)
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:34:49.62 ID:/jrdr4ol0
数日後
祖母「はい、はい、そうかい」
私(珍しいな、誰とあんなに長電話してるんだろ)
祖母「はいはい。伝えとくね」
祖母「それじゃあね」
ガチャン
私「誰と電話してたの?」
祖母「お母さんだよ」
私「ああ、お母さんか」
私「…は?」
私「え、ちょ、え!?」
私「生きてたんだ」
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:35:52.40 ID:/jrdr4ol0
二日後
私「えっと」
私「久しぶり」
母「背のびたね」
私「そこかい」
母がいたところは
精神障害の人達が住みこむグループホームだった
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/14(水) 08:37:23.22 ID:/jrdr4ol0
また明日
ノシ
>>99
ありがとうございます!
あとちょっとなのでお付き合いください!
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/14(水) 08:49:31.81 ID:cbdyRMPso
おつ
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:38:53.39 ID:7EChUdLz0
私「お母さん太った?」
母「薬の副作用でね」
私「へえ…」
私(…来るまで何言おうか考えてたはずなんだけど)
私(いざ会うと何も出てこないもんだな)
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:40:31.78 ID:7EChUdLz0
母「あのさ」
母「先に言っとくけど」
母「私が出ていったことはさ」
母「あんたがそれまでに何をしていようと、何も変わらなかったから」
母「たぶん、何があろうと、この『今』になってたと思う」
私「…なるほど」
私(めっちゃ謝ってくるかと思ってた)
私(まあ、これくらい堂々としてくれていた方が楽だけど)
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:41:17.33 ID:7EChUdLz0
私「あのさ」
私「私、中学のころめっちゃいじめられてたんだよね」
母「へえ」
母「自分の話するの、珍しいね」
私(確かに、久しぶりかも)
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:42:37.96 ID:7EChUdLz0
私「お母さんが自分であろうとして」
私「職場で闘い続けて」
私「結果パワハラじゃん?」
私「だから私は自分を殺してみたの」
私「お母さんみたいに、苦しい未来にならないかなって」
母「結果は?」
私「最初はうまくいってたけど」
私「結局だめだった」
私「いじめられフェロモンみたいなの、あるのかな?」
母「さあ、私にはわかんないな」
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:44:10.73 ID:7EChUdLz0
母「親子そろって難儀なものね」
私「ほんとにね」
私「転校してからはなくなったよ? 平和だったし」
母「そっかそっか」
母「案外環境によるよねー」
母「私も自殺未遂して、入院して、ここ入って」
母「今は作業所みたいなところでクッキー焼いてるけど」
母「超楽しいよ」
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:45:14.15 ID:7EChUdLz0
私「クッキーか」
私「おいしそうだね」
母「めっちゃおいしい」
母「あと職員さんもメンバーさんもやさしいからね」
私「なるほど」
私「でもさ、学校の先生大変だったかもしれないけど」
私「慕ってくれてた生徒、いたんじゃない?」
母「あー」
母「一人いたかな」
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:46:12.07 ID:7EChUdLz0
母「でも余裕ない状況でひどいこと言っちゃったから」
母「たぶん嫌われてるな」
母「まあ、もう二度と会うことはないだろうけど」
私「お母さん、なんか変わったね」
母「そう?」
私「生まれ変わったみたい」
母「そりゃよかった」
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:47:41.59 ID:7EChUdLz0
私「一人になると色々考えるんだ」
私「世界にもし、私一人しか人間がいなかったら」
私「傷つくことも、傷つけられることもなくなるのかなってさ」
母「そんなの嫌」
私「ほう」
母「だって、作業所のイケメンさんに会えなくなるじゃん」
母「誰かと焼き鳥とビールを楽しめない人生って意味ある?」
私「それって施設の職員さん報告していいやつ?」
母「絶対やめて」
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:48:35.53 ID:7EChUdLz0
母「ま、あんたも元気そうでよかったよ」
母「卒業したらどうすんの?」
私「急に親っぽいこと聞くね」
母「親だからね」
私「私ね」
私「幼稚園の先生になる」
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:49:39.68 ID:7EChUdLz0
母「へえ」
母「そうなんだ」
母「いいじゃん」
私「子ども嫌いじゃないなって、思ったからさ」
私「がんばってみる」
母「応援するよ。がんばってね」
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:50:54.08 ID:7EChUdLz0
私(お母さんがこんなことになるなんて、予想してなかったけど)
私(もっと別のより良い未来があったかもとか、思ったけれど)
私(だけど、その過去があるから)
私(クッキー焼いて)
私(イケメンともあえて)
私(まあ、楽しい人生歩めてるのか)
私(それならそれでありか)
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:51:48.64 ID:7EChUdLz0
母「でね、そのイケメンさんなんだけどー」
私(私も、彼と一緒に笑う未来がほしかったな)
私(それを捨てたのは、あいつなのか)
私(それとも私なのか)
母「聞いてる?」
私「聞いてる聞いてる」
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:52:50.81 ID:7EChUdLz0
数年後
園長「仕事お疲れ」
私「疲れました」
私「幼稚園って大変ですね」
園長「大変よー」
私「まあ、やりがいはありますけどね」
園長「あらたくましい」
園長「ところであなた、どうして幼稚園の先生になったの?」
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:54:37.32 ID:7EChUdLz0
私(進路希望を書いた時)
私(思いだしたのはあの秋の風とわさびの味だった)
私「よく、好きなこと仕事にしろとか、いうじゃないですか」
私「でも、嫌じゃないことも仕事にするのも」
私「選択肢かなって」
園長「なるほどね」
園長「いいじゃない」
園長「いい仕事だと思うわよ」
園長「誰かの未来を作っている感じだからね」
私「たしかに」
私「園長先生かっこいいですね」
園長「それほどでも」
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:56:14.53 ID:7EChUdLz0
私(毎日毎日)
私(ご立派に私は園児たちに『指導』をする)
私(まあそれが仕事なんだけど)
私(まだ自分の中身が子どもに感じる)
私(なんか、大人ごっこをしてるみたい)
数日後
園児「うわああああん!」
私「うわ、めっちゃ泣いてる」
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:57:06.01 ID:7EChUdLz0
私「どしたの、何かあった?」
園児「うわああああん!」
ヒョコッ
私(なんか握ってる)
私(あ、ニホントカゲだ)
私「怖かったの?」
園児「みんなに、きもちわるいっていわれた」
私「あら」
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:58:05.19 ID:7EChUdLz0
園児「これ、ニホントカゲなのに、かっこいいのに」
私「知ってる知ってる」
私「大人になったらシッポが青から茶色に変わるよね」
私「メスの方が背中に線が残りやすくて…」
園児「せんせい、すごいね」
私「…受け売りだよ」
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 07:59:20.89 ID:7EChUdLz0
園児「いきものが、すきなの、だめなの? きもちわるいの?」
私「素敵だよ」
園児「すてき?」
私「うん、素敵だよ」
私(自信を持って、明るい声で励ますのが)
私(プロの仕事だ)
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 08:00:37.40 ID:7EChUdLz0
私「誰に言われてもさ」
私「気にしなくていいし」
私「無視していいから」
私「素敵なことだよ」
私「いつまでも大切にしていいと思うし」
私「大人になっても、好きなままでいていいからね」
私「みんなきみが羨ましいだけだよ」
思いつくままの、賞賛の言葉を
何度も何度も、そう伝える
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 08:01:42.48 ID:7EChUdLz0
なでなで
私「?」
私「なんでなでるの?」
園児「せんせい、ないてるかなって」
私「あはは」
私「ないてないよ」
ポロポロ
私「人の痛みに気づけるんだね」
私「そういうところも素敵だよ」
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 08:04:14.50 ID:7EChUdLz0
水をためたコップに穴が開いたみたいに
涙がボタボタと落ち続ける。
滴り落ちる涙が、エプロンを伝い
トカゲを持つ彼の手のひらにぽたりと落ちた。
涙を拭いたら、自分が泣いていることを
認めるみたいで、なにもできなかった。
「ごめん、ごめんね」
言葉が出ると、声が涙と共に上ずってしまう。
素敵だよと伝えても
言えども言えども言い足りない。
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 08:06:14.13 ID:7EChUdLz0
私(もうこの子泣いてないじゃん)
私(私しか泣いてないし)
私(なにがプロよ)
私(プロ失格じゃん)
私(前を向くのがつらい)
私(下を向いた方が楽だ)
なでなで
園児「せんせい?」
私「ごめん、ごめんね」
男児は、私の涙が止まるまで
いつまでも私の頭を撫で続けた。
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/15(木) 08:06:48.75 ID:7EChUdLz0
次回、最終回
>>119
読んでくれてありがとうございます!
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/15(木) 08:11:28.45 ID:+1/k3Lieo
おつおつ
つれぇわ
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:19:27.15 ID:VFIUyyC70
私(結局早上がりしてしまった)
私(まああの子、別に私が泣いたこと言いふらしてはないみたいだし)
私(なんとかプロとしての体裁は保たれたか)
私(…情けない姿見せちゃったなあ)
私(よし、決めた)
私「今日はワインを飲もう」
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:20:26.66 ID:VFIUyyC70
店員「ありがとうございましたー」
私(結局一番高いワインを買ってしまった)
私(どんな味なんだろう)
私(ワインなんて、あの日の夜以来だ)
私(今でも、あいつの手の感触も、温度も)
私(覚えてる)
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:21:15.28 ID:VFIUyyC70
ガチャ
私「ただいまー」
私「って、一人暮らしだけど言ってみる」
私「さて、つまみでも探すか」
ごそごそ
ドカッ
私「段ボール邪魔だなあ」
私「引っ越しの片付けまだ全然終われない」
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:22:14.18 ID:VFIUyyC70
私「せめてこの段ボールだけでも開けてからワイン飲むか」
私「アリクサー、テレビつけて」
アリクサ「かしこまりました」
ピッ
司会「それでは、続いてのゲストは」
私「これで少しにぎやかになる」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:23:12.62 ID:VFIUyyC70
ごそごそ
私「あ、オセロだ」
私「…これ、たしか強力マグネットだったから」
私「あいつとのゲームの途中のままか」
私「……」
私「よし、やるか」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:24:22.08 ID:VFIUyyC70
トポポポポ
私「よし、ワインもついだ」
私「オセロもおいた」
私「完璧だ」
私「さて」
私「どう置こうか」
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:25:14.20 ID:VFIUyyC70
私「…このままあいつの誘いに乗って、角を取ってみたらどうなるだろう」
パチン
私「あ」
私「これだとあいつに角とられるのか」
私「うわ、あいつやべえ」
私「手加減どころじゃないじゃん。これあいつの作戦だったんだ」
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:26:14.50 ID:VFIUyyC70
私「待てよ、じゃあここにおいて…」
パチン
私「それからここに…」
パチン
司会「今日はお越しいただきありがとうございました」
司会「空き家ペンキアートを始めたきっかけは?」
?「そうですね、きっかけは兄の逮捕ですかね」
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:27:51.34 ID:VFIUyyC70
コマを置くたび、私は彼の立場に立ち、思考する。
一つ置くたび、パチンと乾いた音が部屋に響く。
司会「兄の逮捕?」
?「ええ、ちょっとした事件を起こしまして」
?「おかげで学校に私もいきにくくなったので」
?「ひたすら空き家にペンキで落書きしてました」
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:30:14.42 ID:VFIUyyC70
数分後
私「…………」
私「終わったああああああ!」
ゴロンゴロン
私(あいつに再会したときに言う言葉は決まった)
私「34対30。私の勝ちだよ」
私(きっと、あいつ悔しがるだろうなあ)
私(指さして笑ってやろ)
私(あいつ、絶対もう1回やるぞとか言うけど)
私(絶対乗ってやらね)
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:32:21.54 ID:VFIUyyC70
司会「なるほど、色々大変だったんですね」
司会「それでは、今週末の展示会の名前について」
?「はい、私がどうしても伝えたい言葉を名前にしました」
?「あの人に、届いたらいいんですけど」
にやにや笑いながら
寝転んだままワイングラスを口へと運ぶ。
苦さと甘さが適度に入り混じった味が広がり
これ以上にない幸福感で満たされた私は
誰かに乾杯するように、グラスを掲げた。
私「大人最高!!」
?「で、その名前は」
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:33:45.47 ID:VFIUyyC70
数日後
「もしもしおかあさん?」
「週末暇?」
「なんかさ、面白い展示会やってるんだって」
「一緒に行こうよ」
「たしか、その展示会の名前は」
【わたしのくつは よごれていない】
おしまい
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/07/16(金) 07:36:04.66 ID:VFIUyyC70
ここまで読んでいただきありがとうございました。
久しぶりのオリジナルSSで書いてて楽しかったです。
愛って尊いものな一方で、空回りしてしまうと大変なことになってしまいがちだよねみたいな
そんなテーマで書いてみました。
またどこかでお会いできたらと思います。
それでは!
ノシ
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/16(金) 11:21:42.56 ID:/XMsnMqIO
うまく言葉にできないがいい終わりだ
おつおつ
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/16(金) 12:02:30.60 ID:UycVwyB/O
>>157
ありがとうございます!
私自身もこの話がどういう話なのかいまひとつうまく表現できませんけど、雰囲気だけでも感じてもらえたら何よりです。
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/16(金) 13:49:37.74 ID:+AGAZsgGo
また書いて
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2021/07/16(金) 15:37:55.03 ID:UycVwyB/O
>>159
そう言ってもらえて何よりです!
過去作ですが良ければ
私「死ぬなら凍死がいい」
http://142ch.blog90.fc2.com/blog-entry-13447.html
僕「僕はカラスなんだ」
http://esusokuhou.blog.jp/archives/26741266.html
姫「イケメンの王子と結婚したい」
https://h616r825.livedoor.blog/archives/55853469.html
ピークォド「動物保護プラットフォームにクワイエットがいる」 MGS
http://elephant.2chblog.jp/archives/52141395.html
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