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結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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102 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:39:09.95 ID:5PKNHSI4o
幼児達「「「「ありがとうカカシ先生!」」」」
一方通行「誰がカカシ先生だ! 気を付けて遊べよ! 次はねェからなガキどもが!」
結標「…………」
一方通行「待たせたな。行くぞ」ガチャリガチャリ
結標「……ねえ」
一方通行「何だ?」
結標「珍しいわね。自分からああいうことするなんて」
一方通行「……そォだな。自分でもそォ思う」
結標「じゃあ何でやったのよ?」
一方通行「知らねェよ。何かカラダが勝手に動きやがったンだよ、悪りィか」
結標「別に悪いなんて言ってないわ。むしろ良いことだと思うわよ」
一方通行「チッ、何か喉が乾きやがった。そこの自販機でコーヒー買ってくる」ガチャリガチャリ
結標「あっ、私も何か買おうかな」タッタッタ
-自販機の前-
一方通行「…………」
結標「ん? どうかしたの? 買わないの?」
一方通行「何だァ? このクソみてェな自動販売機はァ? ブラックコーヒーだけピンポイントに売れ切れてやがる」
結標「あら本当ね。もしかしたら貴方みたいな人が買い占めていったのかもしれないわね」
一方通行「ハァ? 俺はそンなことしねェよ。こンな複数の種類を全部買い占めるなンて無駄なことするわけねェ。普通はお気に入りを一つ決めて買い占めるモンだ」
結標「買い占めはするのね……」
一方通行「チッ、次の自販機行くぞォ……」ガチャリガチャリ
結標「あっ、ちょっと待ってよ!」タッタッタ
-次の自販機の前-
一方通行「は? またブラックコーヒーだけ売り切れだとォ!?」
結標「うわぁ、すごっ。よっぽどブラックコーヒーが好きなのね、これを買った人」
一方通行「クソが、次だァ!」ガチャリガチャリ
-次の次の自販機の前-
一方通行「オイッ!! またかクソ野郎がッ!!」ガンッガンッ
結標「ちょ、ちょっと自販機叩かないでよ! 防犯センサーに反応したらどうするのよ!?」
一方通行「何ですか何なンですかァ!? この三下みてェな展開ィ!? もしかして俺の右手に能力無効機能追加されてンじゃねェか!?」
結標「いや、もしそうなら貴方能力使えないでしょ」
103 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:39:50.59 ID:5PKNHSI4o
一方通行「……あァ、コーヒー飲みてェ」ガチャリガチャリ
結標「諦めて別の缶コーヒーを買えば? 微糖とか。おいしいわよ?」←さっきの自販機で買った
一方通行「そンな甘ったるいモン飲めるかってンだ。あれはコーヒーへの冒涜だ」
結標「それならコンビニで買ってくればいいんじゃない?」
一方通行「残念ながらここらへんにコンビニはねェ。あるとしたらもォ、オマエの目的地の銀行の近くにしかねェ。だったら大人しくまっすぐ目的地に向かったほうがイイ」
結標「そうね。そのほうが私も助かるし」
一方通行「あァーイライラするゥー」
結標「貴方ってそこまでカフェイン中毒者だったっけ?」
一方通行「いつもなら何てことねェ。だがこの飲みたいって時にねェのが腹が立つ」
ブルルルルルルルルルルン!!
結標「うん? 何かバイクか何かのエンジン音が近づいてくるわね」
一方通行「あァ?」
女性「きゃああああああああっ!! ひったくりよおおおおおおおおっ!!」
風紀委員「何だって!? 貴様ぁ!! まてえええええええっ!!」タッタッタ
ひったくり「ひゃっはああああああああっ!! 俺のバイクに追いつけるヤツはいねェぜええええええええええッ!!」ブルルルル
結標「うわっ、ひったくりだ。初めて見た」
一方通行「…………アハッ」カチッ
結標「あっ……」
ドンッ!! ガシャーン!! ドカッ!! バキッ!! ゴシャ!!
結標「うわぁ……」
104 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:40:59.59 ID:5PKNHSI4o
ひったくり「」
バイクだったもの「」プスプス
女性「ありがとうございました!!」
風紀委員「ご協力感謝します!」
一方通行「チッ、ストレス解消にもならねェな」ガチャリガチャリ
結標「無茶苦茶するわね。わざわざあんなにしなくてもいいんじゃないかしら?」
一方通行「アレくれェやらなきゃヤツに恐怖を植え付けられねェだろォが。二度と犯罪を起こそうなンて微塵も思わせねェくれェの恐怖をよォ」ニヤァ
結標「あはは……」
一方通行「……しかし、さっきから変なことばっか巻き込まれてる気がすンなァ」
結標「たしかにそうね。今思えば、川でおぼれているこどもを助ける、ひったくり犯に遭遇してそれをとっちめる、どちらもよく漫画とかで見る光景ね」
一方通行「あと欲しい飲み物が売り切れ続出してンのも、漫画とかにあるネタか?」
結標「うーん、飲み物に限らなければそういうのもあるかなー?」
一方通行「一体何が起こってンだ? まさかこれが全部ドッキリとかで、あとからプラカードを持った木原クンでも現れるンじゃねェか?」
結標「何で木原さん? まあでも、ドッキリ疑ってもしょうがないくらいには事件が集中しているわよね」
一方通行「何か嫌な予感しかしねェな。もしかしてさっきの悪寒はこの事態を察知してたからなのか?」
結標「ベクトル操作って未来予知もできるの?」
一方通行「できるわけねェだろ」
ポツン
一方通行「あン?」
ポツン、ポツン、ザアアアアアアアアアア!!
結標「ちょ、やだ雨!? しかも結構強い!!」
一方通行「今日の降水確率0%じゃなかったか?」
結標「うん、たしかそう。って言ってる場合じゃないわ。どこかで雨宿りしましょ!」
一方通行「ちょうどイイところに屋根付きのバス亭があるじゃねェか。あそこに行くぞ」カチッ
結標「了解!」シュン
105 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:42:12.88 ID:5PKNHSI4o
-屋根付きバス亭-
ザアアアアアアアアアアアアアア!!
一方通行「……しかしすげェ雨だな。ゲリラ豪雨ってヤツか?」
結標「うわぁ、結構濡れちゃったなあ……貴方は大丈夫?」
一方通行「能力使ったときに全部反射したから問題ねェ」
結標「相変わらずの便利能力ね」
一方通行「ところで結標。こういう事態も漫画によくあンのか?」
結標「こういう事態? 突然雨が降ってきて雨宿りするっていうの?」
一方通行「それ以外ねェだろ」
結標「そうね。定番って言ったら定番ね。特にラブコメとか……はっ!」
一方通行「あン? どォかしたか?」
結標「い、いや、何でもない!」
一方通行「?」
結標「うーん、あとラブコメで突然の雨と言ったら服が濡れて下着が透けるとか……って私濡れてるやばい!!」サッ
一方通行「何ハシャイでンだオマエ?」
結標「……よし! 大丈夫ね。よかったわ、透けにくい紺色のセーラー服で」
一方通行「くだらねェ。そンなどォでもイイことで取り乱してンじゃねェっつーの」
結標「何よ? 乙女にとっては重要なことなんですー!」
一方通行「…………ふっ」
結標「……ちょっと。何で鼻で笑ったのよ?」
一方通行「さあな」
結標「……知ってる? 漫画とかで主人公の男の子が女の子にデリカシーのないこと言うと、たいていその女の子にぶん殴られるっていう定番ネタがあるのよ?」つ軍用懐中電灯
ポツン……ポツン……
一方通行「……おっ、雨止ンだ。馬鹿やってねェで行くぞ」ガチャリガチャリ
結標「あっ、ちょっと待ちなさい! 話はまだ終わってないわよ!」タッタッタ
106 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:43:04.31 ID:5PKNHSI4o
-銀行までの道中-
一方通行「……クソが。また売り切れてやがる」←自販機8連敗中
結標「すごいわね。これはもう偶然で片付けられる現象じゃないわ。やっぱりドッキリなのかしら?」
一方通行「だとすると相当手の込ンだイタズラだよなァ? 今日、俺らがこっちの方面に寄り道するのを分かってねェとこンなこと出来ねェぞ?」
結標「そうよね。この寄り道だって私が急に言い出したことだし」
一方通行「こンな芸当ができる暇人……、やっぱり木原の野郎しか思い浮かばねェな」
結標「どんだけ木原さんを疑ってるのよ。ドッキリを受けた経験でもあるのかしら?」
一方通行「別に。ただこォいうことをやりそうで、俺らの行動を予測できるやつなンざ木原しかいねェ。ただの消去法だ」
結標「へー、やっぱり木原さんってすごいのねー」
一方通行「さっきの説明で何でそンな感想が浮かぶのか、理解出来ないねェ」
結標「いや何となく」
一方通行「馬鹿かオマエは」
結標「むっ、馬鹿って言ったほうが馬鹿なのよ!」
一方通行「じゃあオマエも馬鹿っつゥことだ。残念だったな」
結標「かわいくないわね……ん?」
幼児弟「おにいちゃーん、じゃあ蹴るよー!」
幼児兄「よしバッチコーイ!」
結標「……はぁ、いいわぁ。サッカーでもしてるのかしら?」ウットリ
一方通行「は? 何言ってンだオマエ?」
結標「やっぱり触れ合うならああいう純粋な子がいいわよねー。貴方みたいなのと触れ合っても癒されないもの」キラキラ
一方通行「……よく分からねェがアンチスキルに通報しといたほうがよさそうだな」スッ
結標「ちょ、貴方は何か勘違いしているわ! もしかして私が邪な心であの子たち見てるとでも思っているの!? 違うわよ!」
一方通行「いや、挨拶しただけで通報される時代ですし」
結標「何じゃその理不尽! ……あっ、ボールが道路に飛び出していった」
一方通行「……まさか」
幼児弟「ボールボール!」トテトテ
自動車『ブウウウウウウウン!!』
幼児弟「よし、ボールとった……ッ!?」
自動車『キキイイイイイイイイイイ!!』
ガシャアアアアアアアアアアアン!!
107 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:43:51.47 ID:5PKNHSI4o
バタン!
運転手「うわっ!? やっちまった!! だ、大丈夫か!? ……ってあれ?」
車『』プスプス
一方通行「ったくよォ、まず道路に出るときは右左確認してから出やがれ」
幼児弟「う、うん。ありがとお兄ちゃん……」
幼児兄「弟ー! だいじょうぶかー!」トットット
運転手「あれ? たしかにぶつかったよなあ? あれー? 何で俺の車だけ壊れてんの?」
一方通行「ほら、ガキども、さっさと行け。車には気を付けろよ」
幼児兄「ありがとお兄ちゃん!」トテトテ
幼児弟「ありがうございました!」チテチテ
一方通行「……オイ、運転手」
運転手「はいっ!?」
一方通行「オマエはただ運転ミスで壁に突っ込ンで自損した。俺やあのガキどもは関係ねェ。イイな?」
運転手「はいっ! ありがとうございましたぁ!」
一方通行「じゃあな。安全運転しろよ」ガチャリガチャリ
結標「…………」
一方通行「……なァ、これも漫画みてェな展開か?」
結標「よくわかったわね。その通りよ」
一方通行「また勝手にカラダが動きやがった。気付いたらあのガキを助けに行っていた」
結標「……もしかして貴方、ヒーローとかに憧れてたりしない?」
一方通行「ハァ? 何で俺がそンなモンに憧れなきゃいけねェンだ?」
結標「だってさっきからヒーローみたいなことばかりしてるじゃない。カラダが勝手に動くのも深層心理ではヒーローに憧れてるとかで……」
一方通行「馬鹿馬鹿しい。俺にはヒーローなンて似合わねェよ。薄汚れた悪党がお似合いだ」
結標「そう? そんなことはないと思うけど」
一方通行「オマエは何も分かってねェ」ガチャリガチャリ
結標「あっ、ちょっと待ってよ。……あっ、分かった照れてるんでしょ? 褒められ慣れてないから!」
一方通行「ホンっト俺のこと分かってねェよなオマエッ!」
―――
――
―
108 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:44:41.57 ID:5PKNHSI4o
同日 13:00
-第七学区・某銀行-
ウイーン
一方通行「……はァ、やっと着いたか」
結標「そうね。何だかいろいろあったから長かった感じがするわ」
一方通行「もォさすがにねェよな? 漫画にありがちな展開なンてな?」
結標「うん。今のところ思いつくものは、これと言ってないわね。大丈夫だと思うわ」
一方通行「だったらとっとと手続き済ませてこい」
結標「はいはーい」タッタッタ
一方通行「……はァ、コーヒー飲みてェ」
〜10分後〜
結標「お待たせー。手続きは終わったわ。三日後くらいに新しいのがウチに届くらしいわ」
一方通行「……おォ」
結標「……どうしたの? そんな深刻そうな顔して。もしかしてカフェイン切れ?」
一方通行「違う。いや、たしかにコーヒーは早く飲みてェがよォ」
結標「じゃあ何なのよ?」
一方通行「気付かねェか?」
結標「何が?」キョトン
一方通行「この銀行に来てる客の中に、明らかに客じゃないですよ、っつゥ気配を放ってるヤツがいる」
結標「そんな人がいるわけ? ……あっ、わかった! あそこのイスで飲み物飲みながらくつろいでるおじさん。たぶんあれは仕事をサボる目的でここにいるわ」
一方通行「違うな。アレはおそらく呼び出し待ちのヤツだ。さっき番号札を持ってたのを見た」
結標「……だったら誰なのよ? ストレートに答えを教えなさいよ、もったいぶっちゃってさ」
一方通行「銀行に来る客や従業員以外のヤツなンざ、ほかに一つしかねェだろォが」
結標「?」
強盗A「おらっ、銀行強盗だ!! お前ら静かにしろ!!」つ拳銃
強盗B「おらっ、このカバンのありったけの金詰めろコラ!!」つ拳銃
強盗C「おらっ、お前は人質だ!! 来いガキィ!!」つナイフ
幼女「うわーん!! ママー!!」
109 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:46:23.16 ID:5PKNHSI4o
結標「……ああ、たしかにあったわねこういう展開」
一方通行「これも漫画か?」
結標「うん、あったあった。バトルものはもちろん刑事ものに探偵もの」
一方通行「やはりそォか。つゥかオマエどンだけ漫画読ンでンだよ、幅広いジャンル読みすぎだろ」
結標「まあ広く浅く手を出してるつもりではあるわ。何かで面白いって情報が入ったらとりあえず読んでみるみたいな」
一方通行「オマエみたいな人間の為に、ステルスマーケティングっつゥのがあンだろうな」
結標「何よそれ?」
一方通行「何も考えねェ馬鹿を釣り上げる為の宣伝方法」
強盗A「おい!! そこのガキども何くっちゃべってんだ!! 黙ってさっさとそっちの壁際に集まりやがれ!!」
結標「ところでこれ、どうするつもり? ヒーローさん?」コソコソ
一方通行「別にあの人数を制圧するのに一秒とかからねェ。だが、あの人質と武器が面倒だ」コソコソ
結標「何で? 一秒とかからないなら大丈夫じゃない?」
一方通行「馬鹿かオマエ。その一秒でヤツらが牙を剥かねェとは限らねェだろうが」
結標「そうか。あの拳銃なんて下手に撃たれたら危ないわよね」
一方通行「そォいうわけだ。オマエも協力しろ」
結標「……わかった。あの武器と人質の女の子をこっちにアポートすればいいのよね?」
一方通行「ああ、まず俺が前に出てヤツらの注意を集める。その後俺が後頭部を掻く振りをして電極のスイッチを入れる。それがアポートの合図だ」
結標「……了解」ゴクリ
強盗B「早く金詰めろオラァン!!」
銀行員「…………」コソコソ
強盗A「ん? ちょ、お前何やってんだ!?」
銀行員「ひぃ!?」ピッ
ウイーン、ウイーン!! ガラララララララ!!
警備ロボA『ピピピ、ヒジョウジタイハッセイ。ヒジョウジタイハッセイ』
警備ロボB『ギンコウゴウトウヲカクニン。ギンコウゴウトウヲカクニン』
警備ロボC『タダチニセイアツシマス。タダチニセイアツシマス』
結標「わっ、入り口のシャッターが閉まって、警備ロボが出てきた!」
一方通行「チッ、余計なことを……!」ギリリ
強盗C「ひっ、クソが近づくなッ! このガキがどうなってもいいっつーのかよ!!」
幼女「ふええええええん!!」
一方通行「クソっ、作戦変更だ。合わせろ」カチッ
結標「えっ、ちょ、待ってどういう――」
110 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:47:31.26 ID:5PKNHSI4o
ガッシャーン!!
警備ロボABC「」プスプス
強盗A「へっ? 何だ? いきなり警備ロボが吹っ飛びやがった? 一体何が……?」アゼン
強盗B「さ、さあ?」アゼン
強盗C「おらもわからんだ」アゼン
銀行員「俺も俺も」アゼン
結標「うわぁ、何やってるのよアイツ……」アゼン
一方通行「今だァ!! 結標ェ!!」
結標「あっ、なるほど! そういうことね」スッ
シュン!
強盗A「……あれ? 俺の拳銃どこいった?」
強盗B「あっ、俺のもどっかいった」
強盗C「ひえっ、俺にいたっては人質のガキまで消えやがった!?」
結標「おじさんたち?」
強盗達「「「うん?」」」
結標「捜し物はこちらかしら?」つ拳銃×2+ナイフ
幼女「ありがとお姉ちゃん!」
強盗達「「「なっ、なにいいいいいいいいいいいっ!?」」」
一方通行「……さてと」ガチャリガチャリ
強盗A「うわっ、何だお前体白過ぎ、キッモ」
強盗B「何だこいつヒョロガリじゃねえか、弱そっ」
強盗C「目ェ赤っ! 徹夜明けかな?」
一方通行「……はァ、何つゥか」
一方通行「スクラップの時間だァ、クソ野郎どもが」カチッ
―――
――
―
111 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:49:04.69 ID:5PKNHSI4o
同日 13:30
-第七学区・某銀行-
ドンドン!! ガシャーン!!
黄泉川「突入!!」
ドタドタドタドタ
鉄装「う、うおおおおおおおおおっ……って、あれ?」
黄泉川「どうしたじゃん鉄装?」
鉄装「あ、あれー? 何かもう制圧されているんですけど……?」
黄泉川「なっ、そんな馬鹿なっ! さっき通報があったばっかりじゃんよ」
鉄装「いやっ、たしかにそうなんですけど……」
黄泉川「まあいいじゃん。とにかく強盗を確保!」
警備員達「「「了解!!」」」
銀行員「……あ、あのー」
黄泉川「あっ、ここの職員の方じゃん? 一体何があったじゃん?」
銀行員「いやー、さっきまでここいたんですけどねー、二人の学生さんが強盗たち見事に制圧してくれましてねー」
黄泉川「学生? ジャッジメントか?」
銀行員「いえ、そんな感じではなかったと思うんですか……」
鉄装「ちなみにどんな子たちだったんですか?」
銀行員「ええと、二人とも高校生だと思うんですが、一人は白髪で線の細い少年でしたね。それなのに銀行強盗を一発でノックアウトしてしまうくらい強くてねー」
黄泉川「……もう一人は?」
銀行員「赤髪でおさげの女の子でしたね。見た感じ能力はテレポーターじゃないかなー?」
黄泉川「……ちなみにその子、変な懐中電灯持ってなかったじゃん?」
銀行員「あっ、そうそう持ってました持ってました!」
鉄装「……黄泉川さん、もしかしてその二人組のこと知っているんですか?」
黄泉川「えっ、ま、まあ知ってるというか何というか……」アセッ
黄泉川(あいつら一体なにやってんじゃん……!)
112 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:50:41.89 ID:5PKNHSI4o
-通学路-
一方通行「……どォなってやがる。まさかコンビニでも売り切れてやがるなンてよォ」
結標「これはもう呪いね。さんざん自販機でスルーされたブラック以外の缶コーヒーの」
一方通行「わけのわからねェこと言ってンじゃねェ」
結標「……ふう、しかしお腹空いたわ、お昼とっくに過ぎてるし。さっきのコンビニで何か買っとけばよかったな」
一方通行「寄り道なンかせずに帰ってりゃ、今頃ソファの上で寝転ンでいただろうな」
結標「そうだ。どうせだからどこかでご飯食べていかない? このまま帰ったら二時とかになってそうだし」
一方通行「オマエなァ、さっきから漫画みてェな事件に巻き込まれてるっつゥ状況で、よくそンなことが言えンなァ」
結標「どうせ貴方が解決してくれるんでしょ? だから大丈夫よ」
一方通行「俺の手に余る事件が起きたらどォするつもりだ?」
結標「そのときは私が手伝ってあげるわよ。さっきみたいにね♪」
一方通行「チッ、お気楽なヤツだ――ッ!?」ブルッ
結標「うん? 今度はどうしたの?」
一方通行「……いや、さっきからカラダにまとわりついてた悪寒が急に消え去りやがった」
結標「ふーん、ってことはもう事件は起きないってこと? たしか悪寒がするって言ってからよね? 事件が起き始めたの」
一方通行「かもな。まあ、油断は出来ねェがな」
結標「じゃあ大丈夫でしょ。ファミレス行きましょファミレス!」
一方通行「……しょうがねェな。付き合ってやるよ」
結標「おっ、珍しく素直?」
一方通行「ファミレスのコーヒーはあンま飲む機会ねェからな。まだ飽きてねェ」
結標「はいはいそうですね飽きてないですねー」
一方通行「チッ、うっとォしィ言い方だな」
結標「じゃあ早く行きたいからテレポートで行きましょ? もちろん貴方も一緒に連れて行ってあげるわ」
一方通行「ハァ? オマエそンなのでテレポート使うンだったら最初から使えよ。そォしたらもっとスムーズに移動出来ただろォが」
結標「いやいやテレポートだって疲れるのよ? 結構演算複雑だし。貴方の能力と違ってポンポン使えるものじゃないのよ」
一方通行「制限時間ねェくせに何言ってやがンだ。それにオマエのテレポートより絶対ェ俺のベクトル操作のほうが演算複雑だぜ?」
結標「わかったわかった、そういう話はファミレスに着いたらゆっくり聞いてあげるから、ね? 早く行きましょ?」スッ
一方通行「覚えてろよオマエ」
シュン!!
―――
――
―
113 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:53:08.59 ID:5PKNHSI4o
同日 同時刻
-第七学区・とあるビルの屋上-
上条「――いいぜ、テメェが何でも思い通りに出来るってなら、まずはその幻想をぶち殺す!」
バキン!!
魔術師「あべし!?」バタリ
上条「……ふう、やっと終わったか」
土御門「お疲れカミやーん!」
上条「これでよかったのか土御門?」
土御門「上出来上出来。これで術式は解除された。安心して日常生活を送ることが出来るぜい」
上条「ところで、こいつの行ってたすげえ魔術って、一体どんなヤツなんだ? 急にここに連れてこられたから聞いてなかったけど」
土御門「ああ、これは最近日本の魔術師によって作られた魔術でな。『またこの展開かよ前も同じの見たぞ?(テンプレストーリーズ)』っていう名前の魔術だ」
上条「……は? 何だって?」
土御門「だから『またこの展開かよ前も同じの見たぞ?(テンプレストーリーズ)』だ。要するに、漫画とかでよくあるような展開が実世界に及んでしまうっていう魔術なんだぜい」
上条「何か今まで見た魔術の中で一番しょぼそうな感じがするな」
土御門「ところがそうでもないぜい。世界の事象を捻じ曲げるなんて天使降臨レベルのパワーがないと出来ないからにゃー。夏休み中にあった『御使堕し(エンゼルフォール)』と同レベルだな」
上条「嘘くせー設定だな」
土御門「まあ、今回は簡易的な術式で、しかも照準もズレてたみたいだから、ハッキリとは言えないけどこの学園都市にいる誰か一人が、その影響を受けてたくらいで済んでるかもしれないにゃー」
上条「おいおい大丈夫なのかよ」
土御門「今のところとくに大きな事件が起きた、みたいなニュースが流れてないから大丈夫じゃないか?」
上条「楽観的だな。いいのかよそんなんで」
土御門「へーきへーき。まあ、いざとなったらカミやんがどうにかしてくれるだろ?」
上条「俺はそんな何でもできる人間じゃないっつーの。……ってか、さっきこの術式の照準がズレてたって言ってたよな? じゃあこいつは誰を狙ってどんな目的で魔術を使ったんだ?」
土御門「話によると、最近流行りの異世界転生ものに憧れて、自分を対象に魔術を使って異世界に行くつもりだったらしいぜい」
上条「あー、たしかに今じゃありがちな設定だな。つーか、そんなこと出来るなんてすげえ魔術だな……」
土御門「だから言っただろ? 『御使堕し(エンゼルフォール)』クラスだって」
上条「ああ、そりゃ納得だな」
114 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:55:49.62 ID:5PKNHSI4o
土御門「ま、とにかく助かったぜい。こいつの魔術を解除するには、魔術のプロフェッショナルが最低あと二人は必要だったからにゃー」
上条「しかし最近魔術師多くなってきたな。この前も学園都市の人間を全て雛人形にしてしまうとかいう魔術を使おうとするヤツとかいたし」
土御門「おう。実はカミやんが知らないところでも、結構魔術師がこの学園都市に侵入してるんだぜい」
上条「へー、まじかよ」
土御門「マジだぜい。例えばこの前のバレンタインの前日なんか、世界中のバレンタインを中止させる大型術式を使おうとするヤツなんかもいた。その時はたまたま一緒にいた魔術師と対応したが」
上条「何じゃそのくだらねえ魔術」
土御門「そいつも結構デカイ魔術だぜい。なんたって世界の行事を根本的に破壊する術式だからにゃー。仮に成功させられてたらどうなっていたか……」
上条「世界からバレンタインが消え去っちまってた……ってことか?」
土御門「そうそう。ま、こんな感じに魔術師が増えてきてて、オレだけで対応できるやつは対応してるけど、今回やひな祭りのやつみたいな強力な術式になると、どうもカミやん便りになってしまうんだにゃー」
上条「何で急に学園都市に攻め込んでくる魔術師が増え始めたんだ?」
土御門「さあな。だが何か大きな事件が起きる、その前触れじゃないかとオレは見ている」
上条「ふーん、大きな事件……」
土御門「そんなわけで現状オレ一人じゃなかなか厳しい状況ってわけだ。だからと言って、いつまでもカミやんに頼ってばかりじゃ悪いとも思っている」
上条「別に気にすんなよ。俺に出来ることがあるなら何でも言ってくれ」
土御門「サンキューカミやん。でもそうはいかない。だから、そんな状況を打破する対策を取ることにしたんだ。いたって単純な対策だけどにゃー」
上条「何だよそれ?」
土御門「ま、それはこれからのお楽しみってわけで……さて、腹も減ったし一緒に飯でも行こうぜい。もちろんカミやんのおごりでな」
上条「は? ふざけんな何で俺が……?」
土御門「さっき何でも言ってくれって言ったじゃないか。オレ今月ちょっと厳しいんだにゃー」
上条「俺だって厳しいんだよ! テメェに食い物おごれるほどの余裕なんてひとかけらもねえよ!」
土御門「えー? バイトしているんだろカミやーん?」
上条「そのうえで厳しいっつってんだよ、知ってて言ってるだろお前?」
土御門「オレラーメン食べたい!」
上条「おごらねえぞ? 絶対おごらねえからな?」
土御門「それは『押すなよ? 絶対に押すなよ?』的なやつかにゃー?」
上条「違うわ!!」
――――――
115 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/07/30(金) 22:58:53.06 ID:5PKNHSI4o
今更やけど1スレ目から見直そうって人いたらまとめサイトとかで見たほうが良いよ痛々しいレスしまくってるから
まあそもそもこのレスを見てるやつすらいるんか怪しいがね
次回『天草式』
116 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:28:45.47 ID:0ycj/yMOo
ゲームで忙しいンゴ
投下
117 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:29:21.40 ID:0ycj/yMOo
6.天草式
March Second Friday 15:00
-第七学区・とあるビルの屋上-
??1「……よし、ここまでは手筈通りなのよな」
??2「はい。魔術的な妨害と科学的な妨害、どちらも確認出来ません」
??1「じゃあ、あとは時間通りに目的地へたどり着くだけだ。この調子なら問題なく任務完了できそうなのよな」
??2「しかし油断は禁物です。ここは学園都市、言わば私たち魔術サイドから見れば天敵の本拠地。何があるかなんて私たちでは予想しきれませんよ」
??1「真面目だなー。大体そんなこと心配する必要、もうないと思うのよな」
??2「なぜですか?」
??1「そんなことが起きるっていうのなら、俺たちがここに侵入した時点で起きているとは思わないか?」
??2「……言われてみればそうですが」
??1「ということは、俺たちは歓迎されている、そうとも思わないか?」
??2「いや、その理屈はおかしいです」
??1「そうか、おかしかったか。ま、つまり何が言いたいのかというと、あんまり気を張りすぎているとすぐに参ってしまうぞ、ってことよな」
??2「ですが、油断をしていて隙だらけのところをグサリッ、なんてこと私は嫌ですよ?」
??1「誰も油断をしろとは言ってない。ほどほどに頑張ってろって言っているのよ」
??2「……はい。わかりました」
??1「それでいい。さて、それじゃあ再確認だ。一応、これは非公式で隠密な任務だ。現地人と接触するなとは言わないが、いざこざや騒ぎは絶対に起こさないこと」
??2「了解です」
??1「……ではそろそろ出発といくよな。時間に遅れてしまっていけないからな」
??2「はい」
ダッ!
―――
――
―
118 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:30:04.41 ID:0ycj/yMOo
同日 16:00
-とある高校・校門付近-
一方通行「さて、やっと学校が終わりやがった。さっさと帰って昼寝だな」
一方通行「……いや、まずコーヒーを一杯飲ンでからの昼寝だな」
上条「――おーい、一方通行ぁ!」タッタッタ
一方通行「あン?」
上条「あれ? 結標のヤツがいないな。どうしたんだ?」
一方通行「ヤツは吹寄や姫神と帰った。おかげで悠々自適と帰れるわけだ」
上条「ふーん」
一方通行「ところで俺に何か用か? わざわざアホみてェな大声上げながらこっちに来やがったンだ。それなりに重要な用に思えるが」
上条「えっ、そんなアホみたいに声出してたか?」
一方通行「そンな部分に食い付いてンじゃねェ。先に用を言え。それにオマエはアホみたいじゃなくアホだから問題ねェ」
上条「ひでえ言われようだな、まあいいや。一方通行、ちょっと買い物に付き合ってくんない?」
一方通行「買い物だァ? またおひとり様限定の特売か何かか?」
上条「そうそう。今日は何と豚ロースがタイムセールでお得なんだ! 何と300gで五円だぞ!? これはもう行くしかねえよな!」
一方通行「それ本当に豚肉なのか? クズどもの人肉でも売ってンじゃねェのか?」
上条「怖えこと言ってんじゃねえよ! あそこは信頼できる安心安全のスーパーなんですう!」
一方通行「知るか。どォでもイイわそンなモン」
上条「まあ、そういうことなんで買い物付き合ってくんね? 上条さんちの食卓の笑顔と財政の為にも」
一方通行「……はァ、まァどォせ暇だから構わねェが」
上条「さっすが一方通行様! ありがてえ!」
一方通行「ところで何か見返りがあンだろうな?」
上条「見返り……?」
一方通行「当たり前だろ。前回は家に上げてもらった上に、泊めてもらったっつー恩があったが今回は何もねェ。ただただ俺の帰宅時間を遅らせるだけのクソ作業っつーことになるわけだ」
上条「……つまり手伝う代わりに何かしろと?」
一方通行「当然だ」
上条「…………」
一方通行「…………」
119 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:30:42.68 ID:0ycj/yMOo
上条「……よし! だったら上条さんが肩たたきをしてやろう! 10分間! しっかり!」
一方通行「小学生からの親へのプレゼントかよ。いらねェよそンなモン、別のにしろ」
上条「じゃああれだ! 上条さんの超絶美術センスでお前の似顔絵を描いてやる!」
一方通行「だから小学生からの親へのプレゼントかっつってンだ! いらねェンだよそンなモン!」
上条「ええっと、じゃあ、じゃああれだ」アセアセ
一方通行「……はァ、面倒臭せェヤツだ。だったらアレだ、缶コーヒー一本奢れ。それで許してやる」
上条「なっ、缶コーヒー一本……だと?」
一方通行「ああ」
上条「おいおい缶コーヒーってあれだぞ。スーパーでも七十円くらいすんだぞ? キツイって」
一方通行「あァ? オマエ七十五円で豚肉が買えンだぞ? 安い買い物だろォよ……まァ、豚肉の相場知らねェから適当な発言だが」
上条「うーん、そうか。たしかにそう考えたら安いなー、って思ったけどそれって実質ただ働きじゃね? お前なら缶コーヒー一本買うくらい屁でもないだろし」
一方通行「……チッ、人がせっかく気ィ使ってやってるっつーのに水差しやがって。何でそォいうところだけ鈍感じゃねェンだオマエ?」
上条「鈍感? 俺が? 何で?」
一方通行「……はァ、だったら合理的な理由を一つ作ってやる。あれだ、よく言うだろ。他人の金で食うメシはうめェ、ってな。つまりそォいうことだ」
上条「よくわからんけど、お前がそれでいいんならそれで」
一方通行「……チッ、我ながら思うな。俺らしくねェことしてるってな」ボソッ
上条「ん? 何か言ったか?」
一方通行「死ねクソ野郎っつったンだよ」
上条「なんで!?」
一方通行「さァな」
上条「うーん、しかしおしいなあ」
一方通行「何の話だ?」
上条「ああ、もし結標が居たら三人分ゲットできたのになー、って思ってな」
一方通行「そォか。まァその場合は俺がその場に居ねェだろうから、結局二人分になるけどな」
上条「逃げる気まんまんかよ!」
一方通行「当たり前だ。誰があンな面倒臭せェ女とスーパーで買い物なンざするか」
上条「ひでえ言われようだな結標」
??1「……おっ、来たよな。おーい、上条当麻!」
??2「!!」ピクン
上条「えっ、た、建宮!? それに五和、だったっけ?」
建宮「久しぶりだな。イタリアの時以来よな」
五和「ご、ご無沙汰しております」ペコリ
一方通行(……何だこのクワガタ頭と地味女。一体何者だ……?)
120 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:31:33.15 ID:0ycj/yMOo
上条「あっ、紹介するよ。こっちの大男が建宮斎字。女の子のほうが五和だ」
建宮「君は上条当麻のお友達かな? 建宮だ。よろしく!」
五和「五和です。宜しくお願いいたします」
一方通行「……一方通行だ」
五和「あくせ……られーたさん?」
建宮「外国の方か? どこの国なのよ?」
一方通行「何で馬鹿どもは揃いも揃って同じリアクションしやがンだ?」
上条「いや、しょうがねえだろ。その通り名を名乗っている限りずっと同じようなことになるぞ」
建宮「通り名? あー、なるほどニックネームってことか。うんうんかっこいいニックネームよなアクセラレータって」
一方通行「馬鹿にしてンのか? このクワガタ野郎が」ギロッ
上条「落ち着けよ一方通行。そんな安い挑発、というかおちょくられただけで青筋立てるなっつうの」
五和「きょうこう……建宮さんもですよ。初対面の方にそんなちょっかいかけるのやめてください」
建宮「ちょっかいなんてとんでもない。ただ仲良くなろうとフレンドリーに接しているだけよな」
一方通行(……コイツ、土御門や青髪ピアスと同系統のヤツか。面倒臭せェ)
上条「ところで二人とも、何で学園都市に?」
建宮「ちょっと用があってな」
上条「用? お前らの言う用って言うと、何か嫌な予感しかしないんだけど……」
建宮「ああ、大丈夫なのよ。今回は事件があったから来た、ってわけじゃないからな。安心してくれて構わないのよな」
上条「そんなことを言われると、逆に安心できないのはなんでだろうな」
建宮「そりゃあれだけ事件に巻き込まれてたらそうもなるだろうよ」
上条「……てか用事はまだ終わってないんだろ? 俺となんかと喋ってていいのかよ?」
建宮「ああ。実は用事って言ってももう終わったようなもんなのよな。なあ五和?」
五和「は、はい。問題ないです」
建宮「だから時間が少し余ってな、どうせ学園都市に来たんだから、それならってことでお前に会いに来たってわけなのよ」
上条「へー、そうなのか」
建宮「ま、こっちが本命とか思っているヤツもいるのよな」
五和「ちょ、建宮さん!」
上条「?」
121 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:32:09.54 ID:0ycj/yMOo
建宮「ま、これでひと目お前に会えたんだから、あとは適当に観光でもして帰るとするよな」
上条「……ほう。つまり、お前らは今『暇』ってことだよな?」
建宮「特にすることがない、ってことが暇になるのならそうなのよな。何か他に用事あったっけ?」
五和「いえ。あとは学園都市から離脱するだけですが……」
上条「だったらさ、お前ら買い物に付き合ってくんない?」
五和「買い物、ですか?」
建宮「そりゃ別にいいけど何でなのよ? そんな人数が必要なくらい持ちきれない量の買い物をするのか?」
上条「違うんだ。実はスーパーで豚肉のタイムセールがあってな。何とお一人様限定で300g五円! それが欲しいんだ! たくさん!」
五和「……それ本当に豚肉なんでしょうか? いくら何でも安すぎるような気が……」
建宮「そんなもんにすがらなきゃいけないほどの財政状態なのか……?」
上条「…………まあな」ズーン
建宮「……あー、わかった手伝おう。学園都市のスーパーを観光するのも悪くないのよな」
上条「えっ、いいのか?」パァ
建宮「あ、ああ。別に行きたい所なんてないからな。なあ五和?」
五和「そうですね。私たちに手伝えることがあるのなら、是非」
上条「ありがてぇ……ありがてぇ……」
一方通行「……で、イイ加減話ィまとまったかァ?」
上条「うわっ、びっくりした! 急に喋りかけてくんなよ、つーかどうした? ずっと黙ってるなんて」
一方通行「悪りィが知らねェ人間、ましてや外部の人間を混じえて会話出来るよォな出来た人間じゃねェンだ俺ァ」
上条「別に気にしなくてもいいのに」
建宮「そうそう、気にしなくてもいいのよな」
五和「いや、私たちの立場的には気にしていただけるほうが助かると思うんですが……」
建宮「五和ぁ! お前ひどいやつなのよな」
五和「えっ、何で!?」
建宮「人見知りで輪の中になかなか入れなさそうな少年に救いの手を差し出す、それが俺たちのすべきことではないのか!」
五和「!」
一方通行「オイオイ何ですかこれはァ? 何で出会って五分も経ってねェよォな初対面のヤツに、いきなり人見知り判定されてやがンだァ?」
五和「……わかりました」
一方通行「あン?」
122 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:32:39.50 ID:0ycj/yMOo
五和「一方通行さん! さあこちらに来て一緒に談笑しましょう! 大丈夫です、心の殻は一人で破るものではありません、みんなで一緒に少しずつ割っていくものですから!」
一方通行「だから何で出会って五分のヤツにそンな励ましの言葉なンて泣けるセリフ吐かれなきゃいけねェンだ!」
上条「はっはっはっはっ!」
一方通行「何一人で大爆笑してンだこの三下はァ!?」
上条「えー? だってさ、さっきまで会話なんてできねえなんて言ってたくせに、普通に会話してんだもん。そりゃ笑うって」
一方通行「どこをどォ聞けば普通の会話に聞こえンだよ。耳が腐ってンのかオマエ」
建宮「……そういえば上条よお。さっき言ってたタイムセールってのは何時開始なんだ?」
上条「四時半だけど……ってやばい! こんなことしてる場合じゃねえ! 早く行っていいポジションを取らねば!」
五和「ポジション? 買い物に行くんですよね?」
上条「あれは買い物という名の戦いなんだ。五和も気を引き締めていったほうがいいぜ」
五和「わ、わかりました。頑張ります!」
一方通行「……つゥか上条よォ」
上条「何だよ?」
一方通行「この豚肉購入メンバーは今、ここにいる愉快でクソな二人組が増えたわけだろ?」
上条「クソではないと思うがまあそうだな」
一方通行「だったら俺、もォいらなくね?」
上条「何を言っているんだ一方通行ぁ! お前がいるだけで手に入る豚肉は1200g! 1kgを超える大台に乗ることが出来るんだぞ! その意味、わかるな!?」
一方通行「知るか」
上条「よおし、今日は豚肉を手に入れてぇ、しゃぶしゃぶパーティーだぁ!」
五和「しゃぶしゃぶですか……この時期でしたら菜の花とか春キャベツを入れるとおいしそうですね」
一方通行「オマエせっかく手に入れた大量の肉を一晩で消費するつもりかよ」
建宮「まあ上条さんちにはあのシスターさんがいるのよな」
一方通行「どのみち消える肉なら、豪華に消費してやろうって魂胆か……そンなだからすぐ財政が窮地に陥るンじゃねェのか」
上条「……うるせえな。いいからさっさと行きますよ。いざ行かん戦場へ!」
建宮「おーう!」
五和「お、おー!」
一方通行「何だこのノリ。ついていけねェ」
―――
――
―
123 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:33:45.60 ID:0ycj/yMOo
同日 16:30
-第七学区・とあるスーパー-
モブA「うおりゃあっ!! 邪魔をするなあっ!! 肉ぅうううう!!」
モブB「邪魔なのはあんたよ! うるさいしっ!!」
モブC「うるせえんだよ貴様らがあああっ!! ひゃっはああああっ!!」
ガシャーンガヤガヤガヤドパァン!!
上条「……くそっ、出遅れた!」
建宮「おーおー、こりゃすげえのよな」
五和「はい。言われた通り、本当に戦場のような迫力ですね」
上条「そうだ。蹴る殴るはもちろん、能力者による能力攻撃は当たり前。しかも店員でさえ、店に危害がなければいいよ、とさじを投げている。まさしくここは戦場だ」
上条「こんな戦場で豚肉を手に入れるなんて至難の――」
建宮「ほら、取ってきたのよ」つ豚肉
五和「同じくです」つ豚肉
上条「って早っ!? えっ、何が起こったの!? 俺が解説している最中に!?」
建宮「ま、戦場と言っても有象無象が勝手に暴れてるだけの、所詮はお遊びの場なのよな」
五和「人と人の間を気付かれないようにすり抜けて行けば、簡単に突破することができますよ」
上条「へーなるほどー。つまりこっそり近付いて、間をそーと抜けて、パパっと取れば楽勝っつーわけか」
建宮「そういうことなのよな。我らが天草式十字凄教にかかればこんなミッション、屁の河童なわけなのよ」
五和「ちょ、ちょっと建宮さん! ここでその名前は……!」
建宮「おっ、悪い悪い、つい口が滑ってしまったのよな」
五和「気をつけてください!」
上条「よーし、俺も同じようにしてゲットするぜ。まさしく忍のように……!」
五和「頑張ってください!」
建宮「骨は拾ってやるのよな」
上条「失敗する前提かよ! ……よし、行くぜ」ソー
モブD「おっ、何コソコソしてやがるウニ野郎!」
モブE「小僧! 俺と遊んでいこうぜ!?」ボキパキ
上条「oh……」
ドガッ、バキッ、メリッ、ガァン!!
上条「」ピクピク
五和「だ、大丈夫ですか!?」
建宮「ま、何の心得のないうえものすごーく不幸な上条当麻が俺たちと同じように出来るわけないのよな」
124 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:34:20.46 ID:0ycj/yMOo
一方通行「……おォおォ相変わらず馬鹿みてェにハシャイでンなァ、ここにいる連中は」ガチャリガチャリ
建宮「おっ、やっと来たか。随分と遅かったのよな」
一方通行「見ての通りの杖突だからな。当然だ」
建宮「おっと、そいつは失礼」
一方通行「で、今どォいう状況だ?」
五和「はい。私と建宮さんは目的のものは入手出来ました。しかし、上条さんは……」
上条「……我が人生に一片の悔いなし」
一方通行「いや悔いれよ。安物の豚肉欲しさに終える人生だぞ」
建宮「そういうわけで、あと必要な数は二つってわけなのよな」
五和「どうしましょうか? また私たちで取りに行きます?」
一方通行「いやイイ。俺が行く」ガチャリガチャリ
五和「えっ、そ、そんな無茶です! そんな身体であの中に割って入って豚肉を取ろうなんて!」
建宮「そうなのよな。ここは俺たちに任せて先に行くのよな」
五和「こんな状況でボケないでください建宮さん! てか、先ってどこに行けばいいんですか!」
建宮「いやーつい」
一方通行「まァ俺のことが心配だっつゥ考えを持ってンなら今すぐそれを捨てろ。この程度の状況、一つも問題ねェ」ガチャリガチャリ
五和「で、でも……」
一方通行「それにもォ一度、俺直々が再教育してやらねェといけねェからな」
五和「再教育? 一体どういう……?」
一方通行「せっかく俺が安心安全かつ友好的な買い物のやり方を教育してやったっつゥのによォ、たった一カ月でその恩を忘れて暴れまわってるなンて涙が出る話じゃねェか」カチッ
五和「……言っている意味がちょっと――ッ!?」ゾクッ
建宮「ッ!? コイツッ!?」ゾクッ
モブA「邪魔だ邪魔だ――うおっ!?」ゾクッ
モブB「これは私の肉よ――ひぃっ!?」ゾクッ
モブC「全部ぅ!! 破壊してや――あがっ!?」ゾク
一方通行「あはっぎゃはっ! 相変わらず面白れェことやってンじゃねェかオマエらァ!」
125 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:34:52.99 ID:0ycj/yMOo
モブD「あ、あの白い髪に赤い目、何かよくわからん機械の杖……間違いない、ヤツだ……!」ガタガタ
モブE「バレンタイン前日に颯爽と現れて、圧倒的なチカラでこの場を支配した化け物……!」ブルブル
モブA「や、ヤツは『バレンタインイブの白い悪魔』……! う、うわあああっ!?」ガタッ
モブB「う、嘘よ……あれは夢だったと思ってたのに……」ガクブル
モブC「うわああああああママあああああああああ!!」ドンドンッ
一方通行「さァて、補習の時間だァ。安心しろォ、1分間で分かるよォに丁寧に教育してやっからよォ」ニヤァ
〜1分後〜
モブA「はい順番でーす! 順番を守ってお肉をお取りくださーい!
モブB「やっぱり買い物は平和じゃないとね。こんなすがすがしい気持ち久しぶりだわ……」
モブC「やっぱり平和が一番だよなぁ……」
一方通行「……終わったぞ」つ豚肉×2
上条「お、おう。また何か恐ろしいことやったのか……」
一方通行「至って普通のことを言っただけだ。静かに皆様のご迷惑のかからないように買い物しましょう、っつゥ当たり前のことをなァ」
建宮「これはお見事なのよな。あれだけの連中を凄みと口だけで鎮圧するなんて、そう易々とできることじゃないのよな」
五和「…………」
一方通行「さて、用は済ンだンだ。さっさと帰る……いや、ちょっと帰り道に飲む用のコーヒーでも買って来る」ガチャリガチャリ
上条「お、おう」
五和「……あの、上条さん」
上条「何だ?」
五和「あの人、一体何者なんですか? 一般人があんな肌に突き刺さるような殺意、普通は出せませんよ?」
上条「あはは、まああれだ。只者じゃないって思ってくれれば大丈夫だ」
建宮「見た目からすでに只者じゃないのよな」
上条「いや、それはお前が言うなよ」
五和「……ふふっ」
建宮「あっ、何笑っている五和! お前だってたまにアレな恰好しているときあるのよな!」
五和「なっ、いや、あれたまたまあのときに最適な服の組み合わせがあれだっただけだからしょうがなくで、いつもあんなわけでは……!」
上条「アレな恰好ってどんなだよ?」
建宮「ああ、上半身の裸の上にブラウス一枚で――」
五和「ちょ、やめっ、ストップ!! ストップ教皇代理いいぃぃっ!!」
―――
――
―
126 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:35:38.40 ID:0ycj/yMOo
同日 17:00
-第七学区・とある公園-
上条「ほい、自販機で買ってきた飲み物だ。今回のお礼……になるかわからないけどな」スッ
建宮「おっ、ありがたくいただくのよな」
五和「ありがとうございます!」
一方通行「わざわざ自販機の高い飲み物買ってくれるなンて、優しさあふれるお礼だよなァ」
上条「ぐっ、つーかお前絶対のその缶コーヒーいらねーだろ! 何だそのレジ袋に入った大量の缶コーヒーはッ!?」
一方通行「あン? いるとかいらねェじゃねェンだよ。対価を得るにはそれ相応の対価っつゥモンが必ず存在する。ただで肉が手に入ると思うなよ」
上条「ぐぬぬぬ……くそー、スーパーでお礼の飲み物買い忘れるなんて……不幸だ」
一方通行「それはただの不注意だ」
上条「くっ、……そういや二人はいつまで学園都市にいるつもりなんだ?」
五和「時間もいいくらいですし、そろそろ離脱しようかと」
建宮「用事はもうないからな」
上条「……ところでお前らの用事って結局何だったんだ?」
建宮「うーん、まあもちろん秘密、禁足事項ってやつなのよな」
五和「すみません、私たちから話すことは出来ないことなんです」
上条「いや、別に謝ることはねえよ。ただ気になったから聞いた世間話みたいなものだし」
一方通行「……よくわからねェが、それは部外者である俺がこの場にいるから喋れねェのか?」
五和「いえ、……いや、それもたしかにあるんですが、もともとこれはまだお話することができない情報なので」
上条「一体何が起きるってんだ……? この学園都市に……!」
建宮「そんな身構える必要はないのよな。それを防ぐための任務ってわけだ」
上条「よくわかんねーけどあんま無茶はすんなよ? 何かあったら神裂が悲しむぞ」
建宮「へっ、それはお前もな、って言って欲しいのか?」
上条「何で俺? まあいいや、悪いけどちょっとトイレ行ってくるから、俺の荷物見ててくれないか?」
五和「わかりました。いってらっしゃい」
建宮「ほいほーい、それじゃあ荷物は命をかけて守るのよな」
上条「そんなもんに命かけんなよ。じゃ、行ってくるよ」タッタッタ
五和「…………」
建宮「…………」
一方通行「……オイ、上条がいねェ間にオマエらに聞きたいことがあンだが?」
建宮「何なのよ、そんな改まって」
一方通行「オマエら一体何者だ?」
127 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:36:05.89 ID:0ycj/yMOo
五和「……それはどういう質問なのでしょうか?」
一方通行「別に他意はねェ。そのまンまの意味だよ」
建宮「学園都市の外から来た正義のエージェント! なんて答えても、許してはくれなさそうなのよな」
一方通行「ソイツは今まで聞いた会話の内容からして何となく察しはついている。正義かどォかは知らねェがな」
五和「それ以上、何を答えればいいのでしょうか?」
一方通行「俺が聞きてェのはそンなどォでもイイことじゃねェ。俺が聞きてェのはオマエら自身のことだ」
建宮「そいつはどういう意味だ? 俺たちの個人情報でも聞きたいか? 五和のスリーサイズとかか?」
五和「えっ、何でそんなもの知っているんですか建宮さん!? いつ!? いつその情報を入手したんですか!?」ググッ
建宮「いやー冗談冗談建宮さんは何にも知らないのよな。だから首を絞めるのはやめてくれ……」
五和「だったらそんな笑えない冗談やめてください!」
一方通行「……この学園都市には超能力っていうチカラがある」
建宮「おっ?」
一方通行「薬品投与や頭に電極ぶっ刺して電気を流したりして、その末に得られる能力だ。まァ全員が全員満足にチカラを手に入れられるわけじゃねェがな」
一方通行「俺はそォいう能力者と何もやってない一般人。そいつらの感じ? 雰囲気? 何かそォいうので何となくわかる」
一方通行「あくまで何となくだから、そういう専門の能力者や機械、そういうモンに比べりゃ正解率は低いが、俺ン中ではそれなりに信用できる感覚だと思っている」
一方通行「その感覚がよォ、教えてくれてンだよ。オマエらが超能力者でもただの一般人でもない、何か別の存在だってことをよ」
五和「ッ」
建宮「ほう。その当てもない感覚で俺らをそういう別の存在だと決めつけてるというのか?」
一方通行「ああ」
建宮「……でもそれってあれよな? ここで俺らは別に普通の一般人です、って答えればどうなるんだ?」
一方通行「別にどォもならねェよ。ただそォですか、としか俺は言わねェ。深堀をするつもりも毛頭ねェ」
建宮「じゃ、そういうことで」
一方通行「うっとォしいヤツだな」
建宮「出会って一時間ちょっとで、そんなこと聞いてくるヤツよりはうっとおしくはないと思うのよな」
一方通行「チッ」
五和「……あの」
一方通行「何だ?」
五和「その感覚ってやつはどういうのなんですか? どういう感覚があなたの中で引っかかったんですか?」
一方通行「……答えづらい質問だな。あくまで感覚だから言葉にしづらいが……そォだな。例えるならオマエらは一般人過ぎる、っつゥ感覚だな」
五和「一般人過ぎる……? それって一般人ってことじゃないですか?」
一方通行「ああそォだ。だが一般人っつってもなァ、そいつらは一人一人違う考えを持ち、違うことをやっているから、千差万別の色がある。無理やりの言葉だが赤いヤツや青いヤツみたいな感じだな」
一方通行「だが、オマエらから感じるのは無色透明な一般人、まるで作られた一般人像を演じている、そォいう風に感じた」
一方通行「だから、オマエらはただ一般人を演じるための何かをやって、今ここに立っている、っつーように考えて、質問したっつゥわけだ」
五和「…………」
一方通行「ま、そりゃそンな顔するだろォよ。わかるよォに説明してるつもり皆無だからな」
建宮(……ほう、そんなことまでわかるのか。さすがは上条当麻の知り合いなだけあるのよな)
128 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:37:08.86 ID:0ycj/yMOo
〜10分後〜
一方通行「……そォいや上条のヤツ遅せェな」
建宮「たしかにそうだな。ウンコか?」
五和「……下品ですよ建宮さん」ジトッ
建宮「えっ、ウンコって下品なのか一方通行少年?」
一方通行「知るか」
建宮「冷たいのよな。……あっ、もしかしたらアレかもしれんのよな」
五和「アレ、とは?」
建宮「五和の隠れたエロスに気付いてそれを慰めよ――」
ドゴッ!!
五和「だから下品ですっ!! というかセクハラですよ!!」
建宮「ぐ、ぐおっ……は、鼻が……」ズキンズキン
一方通行「アホくさ」
〜さらに10分後〜
一方通行「……まだ帰ってこねェのか。本当に遅せェな」
建宮「あっ、これはアレだろアレ!」
五和「……また下品なネタですか?」ジトッ
建宮「違う違う。これは真面目な話だ」
一方通行「何だ? 言ってみろ」
建宮「上条当麻は不幸だろ? たぶんあいつあれだ、トイレで大をしてて紙がないことに気付いて、動けなくなっているのかもしれないのよな」
一方通行「……たしかにそれはありえるな」
建宮「だろ?」
五和「……でも、その場合救援要請をしてくるのではないでしょうか? 携帯電話とか持っているのですよね?」
一方通行「ちなみに携帯だが、上条の置いて行った鞄の中に入っているな」
建宮「二重の不幸だったってわけなのよな」
一方通行「そォと決まったら公園のトイレに向かうぞ。たしか外れのほうに一軒あったはずだ」ガチャリガチャリ
建宮「待ってろー上条当麻! 俺たちが神の救いの加護を与えに行くのよなー、紙だけに」
五和「……神を馬鹿にしてないですか教皇代理」
建宮「いやいや冗談なのよな。みんなを笑わせるためのゴッドジョークなのよな」
一方通行「つまんねェダジャレにカミサマを巻き込ンじゃねェよ」
―――
――
―
129 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:38:03.05 ID:0ycj/yMOo
-第七学区・とある公園外れのトイレ-
建宮「おーい、上条当麻ー! 助けに来たぞー!」
シーン
建宮「……あら? 返事がないのよな」
一方通行「つゥか、誰もトイレを使ってねェな。……ン? 何だこりゃ? やけに床が濡れンなァ」
建宮「うーむ、これは外したか? ほかに近くでトイレとかあるか?」
一方通行「コンビニとか行きゃあるだろォが、わざわざここを差し置いて行こうなンて思う距離にはねェ」
建宮「それにコンビニだったら、紙がなくても店員さんが気付いてくれるのよな」
五和「……念のために女子トイレも見てみましたが、誰もいませんでした」
建宮「五和。もし女子トイレにいたらどうしてたのよ?」
五和「ええっと、とりあえず謝ってここを後にします」
一方通行「そこは普通に通報しとけよ」
建宮「てか、トイレにいないとしたら一体どこに行ったんだ?」
一方通行「さァな。アレじゃねェか、誘拐とかでもされたンじゃねェのか」
五和「そ、それは本当ですか!?」
一方通行「真面目かオマエ。冗談に決まってンだろ」
建宮「まあでもあながち間違いじゃないかもな」
一方通行「どォいうことだ?」
建宮「アレよ。上条当麻が大好きなゲイストーカー的なヤツが一人のときを見計らって……みたいな?」
一方通行「そンなレアケースあるわけねェだろ。まだあの右手を研究したい研究者が、みたいな方がまだ現実味がある」
建宮「ははははっ、たしかにそうなのよな。まあそんなことあるわけ――」
五和「たっ、大変です!! 今すぐ助けに行かないと!!」クワッ
130 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:38:59.50 ID:0ycj/yMOo
建宮「……あのー、五和さん?」
五和「私は東の方面を探します! 建宮さんは北、一方通行さんは西の方を頼みます! 何かあればすぐに連絡をします! ではっ」ダッ
一方通行「……何だアイツ。あンな冗談を真に受けて……もしかして馬鹿か?」
建宮「あー、あれだ。恋は盲目、みたいな。ぶっちゃけると五和は上条当麻のことが好きなのよな」
一方通行「そォか。どこに上条が行ったかどうかの手がかりもないくせに、よくも分からず路地裏の方へ走っていくという馬鹿みたいな行為は、その恋のせいだと?」
建宮「しょうゆうこと」
一方通行「相変わらず手広いこったあの三下は」
上条「――おーいっ! みんなー!」タッタッタ
一方通行「あァ?」
上条「わりーわりー。遅くなっちまった」
建宮「うん? お前トイレに行ってたんだよな? 随分と時間がかかったのよな?」
上条「あー、ちょっと不幸があってな」
一方通行「不幸だ? やっぱ紙でも切れてたのか?」
上条「いやー、最初にここのトイレ来たら清掃中になっててさあ。次に近くのコンビニのトイレ行ってみたら行列が出来ててな。それを何回繰り返してたら遅くなっちまった」
建宮「そいつは災難だったのよな」
一方通行「……どォりでトイレの床がびしょ濡れになっていたわけだ」
上条「いやー、危なかったぜ。危うくこの歳になってウンコ漏らすところだったよ」
建宮「ほら、やっぱりウンコって普通に使うのよ。全然下品じゃないのよな」
一方通行「そりゃ野郎だけの会話に下品もクソもねェからな」
上条「? そういや五和がいないじゃん。どこ行ったんだ?」
一方・建宮「「あ……」」
―――
――
―
131 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:39:49.04 ID:0ycj/yMOo
同日 同時刻
-第七学区・路地裏-
タッタッタ
五和「くっ、まさか私たちがいながらあの人に危害を及ばせてしまうなんて」
五和「しかし、逆に私たちがいてよかった。必ず助け出してみせます、上条さん!」
ドン!
五和「ッ!? すみません! 大丈夫ですか!?」
スキルアウトA「痛ってえ!? 何だあ!?」
スキルアウトB「ん? 何だこの娘、結構かわいいじゃん」
スキルアウトC「ねえねえお姉ちゃんお暇? ちょっとお兄さんたちと遊ばない?」
五和「ごめんなさい、私ちょっと急いでて」
スキルアウトA「は? 人にぶつかっといてそれはないじゃん」
スキルアウトB「そーそー。こういうのは誠意を持った謝罪じゃないとねー」
スキルアウトC「誠意を持った謝罪と言ったらもう、あれしかないよねー」クイクイ
五和(くっ、この人たちが俗に言うスキルアウトというヤツらでしょうか? やっかいな連中と関わってしまいました……)
五和「本当に申し訳ございませんでした。申し訳ないのですが、私は本当に急いでて、急がないと私……」
スキルアウトB「そんなこと言ってー、本当はそんなに急いでないんでしょー?」
スキルアウトC「ちょっとだけ遊ぼうよー、そんな時間取らせないからさー」
スキルアウトA「つーかよお、人にぶつかっといてごめんなさいで済むわけねーだろうが! あいたたたぶつかったところが急に痛み出したー」
スキルアウトC「そいつはまずいなぁ。これはもう責任を取ってもらうしかなさそうですなぁ」ニヤニヤ
五和(ど、どうする私? 今なら誰も見ていない。ならば、一瞬で制圧すれば……いや、もし誰かに見られていたら)
建宮『騒ぎやいざこざは起こさないこと』
五和(だ、だったら逃げる……駄目だ、この人たち場慣れしてる。いつの間にか退路が断たれている……くっ、どうすれば)
スキルアウトA「おいおいどーしたぁ? 急に黙り込んでさあ!」
スキルアウトB「それってあれじゃん? つまりオッケーってことでしょ?」
スキルアウトC「そうかそうか。ならさっそく」ワキワキ
五和(……やるしか、ないのか……!?)キッ
??「――何だあ? この渋滞は?」
132 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:40:32.51 ID:0ycj/yMOo
五和(ッ!? だ、誰ッ……!?」
スキルアウトA「あん? 何だこのチビ?」
スキルアウトB「もしかして、俺たちと一緒に遊びたくなっちゃったかなー? おチビちゃん?」
スキルアウトC「いやいやすまねえなあ。テメェじゃまだ早すぎると思うぜチビ助」
??「……おいおい、何勘違いしてくれちゃってんだテメェら? 私は何でこんな人気のないはずの路地裏で、人が通れないような渋滞が起きてるんだって聞いてんだ」ピキピキ
スキルアウトA「ああんっ!? なに調子に乗ってんだクソチビィ!? ガキは手を出されねーと思って調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
スキルアウトB「わるいねーチビちゃん。俺たちもあまり優しくないんだよねー」
スキルアウトC「つーわけだ。チビガキは少女漫画でも読んで発情してなぁっ!」
??「…………あン?」ピキピキ
五和(殺気ッ!? でもこの殺気って……ッ!?)
黒夜「チビチビうるせェンだよクソ野郎どもがァ!! 私には黒夜海鳥っつゥ名前があンだよ、あァン!?」ゴパァ
ドガガガガガガガガン!!
スキルアウト達「」プスプス
五和「…………」
黒夜「あっ、そこのおねーさん大丈夫? 何もされなかった?」
五和「は、はい。ありがとうございました」
黒夜「駄目だよー? こんな薄暗い路地裏に女の子が一人で通ったら。今みたいなクソ野郎どもが涎垂らしながら群れてきちゃうよ」
五和「す、すみません。気を付けます」
黒夜「ほんと危なかったねー。私が来なかったら今頃おねーさん、トラウマ確定の4Pが繰り広げられてたかもねえ。三穴責めも余裕だねー」
五和(……な、何なのこの子? 見た目は小学生なのに、何て下劣な発言、それに……強い……ッ)
黒夜「あ、あと一つ、お姉さんに忠告しとかなきゃいけないことがあるんだよねー」
五和「な、何でしょうか……?」
黒夜「お姉さん。外の人間でしょ?」
五和「ッ!? ……ど、どうしてそれを」
黒夜「わかっちゃうんだよねー、そういうのはニオイでさあ。まあ外部の人間ならなおさら言っとかなきゃいけないんだよね」
五和「…………」スッ
黒夜「……殺意っていうのはさあ、もっとちゃんと隠しとかないといけないよ? この学園都市ではさ」
133 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:41:22.87 ID:0ycj/yMOo
五和「さ、殺意……ッ!? な、何のことでしょうか」
黒夜「殺意っていうのはね、ちゃんと隠さないとすーぐ出てきちゃうんだよね。ちょっとこいつ死なないかな、なんて思ったらすぐ出ちゃう」
黒夜「お姉さんさっきの三人組のこと、少しでも殺ってしまおうって思わなかった?」
五和「……い、いえ、そんなこと」
黒夜「あれー? おかしいなあー、たしかに感じたんだけどなー。お姉さんから明確な瞬殺してやろう、っていう意思がさ」
五和「…………」
黒夜「ま、いいや。じゃ、私は行くとするよ。お姉さんもこんな汚い裏通りなんて歩かずに、ちゃんとキラキラした表通りを歩きなよ」
五和「は、はい。ありがとうございます」
黒夜「あ、あともう一ついい?」
五和「……何でしょうか?」
黒夜「そのショルダーバッグの中に隠してる槍、もーちょっと上手に隠した方がいいんじゃないかなー?」
五和「なっ……!?」
黒夜「次会うときは、助ける側と助けられる側じゃなくて、殺す側と殺される側になってることを祈ってるよ、強そうなお姉さん? じゃねー」テクテク
五和「…………」ダラッ
五和(な、何なんですかあの子……? あんな小さな身体で、鋭い殺意で、全てを見通してて……)
ピピピピッ! ピピピピッ!
五和「!?」ビクッ
五和「……な、何だ教皇代理からの電話か」ピッ
五和「五和です」
建宮『おっ、五和。今すぐ戻ってこーい、上条当麻が見つかったのよな』
五和「そ、そうですか。それはよかったです。すぐに戻ります」
建宮『うん? なーんか五和、声が震えてないか?』
五和「えっ、そ、そうですか? 自分じゃわかりません」
建宮『ほほう。もしやあれだろ? 上条当麻がヤバイことになってるのを勝手に想像してガクブル震えてたな? さーすが恋する乙女なのよな』
五和「す、すみません。気を付けます」
建宮『……わかった。すぐに戻ってこい。戻り次第学園都市を出るぞ』
五和「了解です。では……」ピッ
五和「……ふう」
五和(今回のことは、建宮さんには黙っておこう)
五和(何だか嫌な予感がする。もし、これを話したら何だかとんでもないことが起こりそう……そんな予感がする)
五和(……これが学園都市)
五和「……絶対に、負けない……!」ダッ
―――
――
―
134 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:42:02.09 ID:0ycj/yMOo
同日 18:00
-第七学区・とある公園-
建宮「ほいじゃ、今日はこれで帰るとするのよな」
上条「おう。肉の件ありがとな。助かったぜ」
建宮「あれくらいで礼を言ってくれるならお安いもんなのよな。まあ、インデックスと楽しいしゃぶしゃぶパーティーになるといいな」
上条「……ははっ、そうだな」
五和「…………」
一方通行「……オイ、五和っつったか」
五和「は、はい」
一方通行「オマエ、上条を探しに行ってから随分としおらしくなったじゃねェか。何かあったか?」
五和「い、いえ。特に何も……」
一方通行「そォか……」
建宮「それじゃあまた会おう!」
五和「失礼します」
上条「……行っちゃったな。嵐のように現れて、嵐のように去っていく、ってこういうことなんだろうな」
一方通行「は? 何か違うンじゃねェ?」
上条「えっ、違う?」
一方通行「俺からすれば、何事もなかったかのように現れて、何かクソみてェなモン抱え込ンで去って行ったよォに見える」
上条「? ……つまり、どういうことだ?」
一方通行「チッ、気にすンな。じゃあ俺も帰るぞ」ガチャリガチャリ
上条「おう、肉の件サンキューな。またな一方通行!」タッタッタ
一方通行「…………面倒臭せェ」
――――――
135 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/06(金) 22:44:45.45 ID:0ycj/yMOo
こんなところで天草式の人たち出してていうのもあれやがしばらく再登場しない、というかこのスレ内ではもう登場しません!w
というか再登場まで書くための気力保つのかよってくらい先やで
次回『ホワイトデー準備』
136 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:00:29.97 ID:d6Ws/u/Ao
まだ読んでる人いたのか・・・(困惑)
投下
137 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:01:18.75 ID:d6Ws/u/Ao
7.ホワイトデー準備
March Second Thursday 14:00
-黄泉川家・リビング-
テレビ『――さあて、今日も始まりました。今日もお得な情報いっぱいでお送りいたします』
一方通行「…………」ボー
テレビ『――何と、あの『脳を活性化させる一二の栄養素が入った能力上昇パン』に新作が登場!! その名は『脳を活性化させる一八の未元物質が入った能力上昇パン』です!! これで皆さんもレベル5!!』
一方通行「…………」ボー
テレビ『――最近流行りの健康法です!! その名も窒素健康法です!! 何かこれを行うと超健康になれると噂です』
一方通行「…………」ボー
テレビ『――某ラーメン屋の『大盛ラーメン一時間20キロ完食チャレンジ』とかいう無理ゲーがついにクリアされました。何とクリアしたのは中学生くらいの少女でしゅうどうふ――』
一方通行「…………」ボー
テレビ『――来週はいよいよホワイトデー。モテモテだったキミは準備は出来てるかなー? できてないキミにオススメの――』
一方通行「……ホワイトデーか」
138 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:02:41.43 ID:d6Ws/u/Ao
同日 14:30
-黄泉川家・芳川の部屋-
一方通行「――つゥわけで、ホワイトデーってどォすりゃイインだ?」
芳川「……はぁ。まあ答えてあげてもいいんけど、一つ質問いい?」
一方通行「何だ?」
芳川「何でホワイトデーのことを私に聞くのよ? キミには上条君とか男の子のお友達がいるのでしょ? そっちに聞くのが普通じゃないかしら?」
一方通行「あァ? あンな馬鹿どもに聞いてどォするっつゥンだ。第一こンなモンで相談しよォモンなら絶対ェ舐めた態度取りやがる」
芳川「要するに、お友達に相談するのが恥ずかしいのね」
一方通行「そォじゃねェ。面倒臭せェことは避けるのは普通の考えだろォが」
芳川「はいはい、わかったわかったわ。で、何で私がその相談相手になったのかしら?」
一方通行「たまたまオマエだけがこの家に居たから」
芳川「……じゃあもし淡希が居た場合、そっちに行ってたのかしら?」
一方通行「そォなるな。まァでも、アイツは記憶喪失だからロクな情報引き出せねェかもしれねェな」
芳川「…………」
一方通行「どォした?」
芳川「いえ、私に相談しに来てよかったわね、って思って」
一方通行「……どォいう意味だ?」
芳川「さあね。で、ホワイトデーの何が聞きたいのかしら?」
一方通行「ホワイトデーで何をすりゃイイのかが分からねェ。いや、何となくプレゼントを送りゃイイのは分かるが……」
芳川「そこまでわかってるなら話が早いわね。バレンタインデーにもらったものに対するお返しがするのがホワイトデー。別名、お菓子会社の陰謀」
一方通行「面倒臭せェことしてくれやがったなァお菓子会社」
芳川「というか、キミはてっきりホワイトデーのこと知ってると思ってたのだけど」
一方通行「あァ?」
芳川「だってバレンタインで私がお返しをキミに要求した時、何の違和感もなく会話してたじゃない?」
一方通行「あー、アレはお返しなンて要求するなンざがめついヤツだな、って思っての発言だ。ホワイトデーのホの字も頭になかった」
芳川「あ、そう。まあいいわ、ということで私のお返しは学舎の園のあの店のチョコレートセットで」
一方通行「だから男の俺に入手困難なモン要求すンなっつーの」
139 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:03:37.20 ID:d6Ws/u/Ao
芳川「……そうだ。これ知ってるかしら? ホワイトデーのお返しはバレンタインの金額の三倍の値っていうの」ニヤッ
一方通行「そうなのか。面倒臭せェルールだな、手作りのヤツとかどォ調べりゃイインだよ価格」
芳川「ちなみにあの店のチョコレートセットは私のコンビニで買ったヤツに比べれば、三倍どころか十倍くらい違うわ」
一方通行「どンだけ安物だったンだよオマエのチョコ」
芳川「いや、そこはあの店のチョコレートセットの金額が高い、ってリアクションするところよ」
一方通行「知るか」
芳川「というわけだから、あの店のチョコレートセットを買えばほとんど文句は言われないと思うわ」
一方通行「そォか。ソイツはイイこと聞いた。そこでまとめて買えばラクでイイ」
芳川「あっ、あとホワイトデーにはこんなルールがあるのよ」
一方通行「まだあンのか」
芳川「渡すお菓子の種類によって意味があるのよ。キャンディだったら『あなたが好き』、マシュマロだったら『あなたが嫌い』、クッキーだったら『友達でいましょう』。ほかにもあるけどこれがメインね」
一方通行「へー、本当に面倒臭せェイベントだなァ、ホワイトデー」
芳川「例えばだけど、淡希にキミからキャンディとか渡したら面白くなりそうだと思わない?」
一方通行「ハァ? そンなことしたら俺が結標のこと好きみてェなことにならねェか? 何が面白れェンだよ?」
芳川「淡希のリアクションとか。どんなリアクションするのか気にならない?」
一方通行「蔑まれながら飴玉を床にばらまかれて終わりだ。何も面白くねェよ。オマエからしたら面白いのかもしれねェが」
芳川「………はぁ」
一方通行「何だそのため息」
芳川「別に。ちなみにだけど、チョコレートは特に意味なんてないからキミみたいな人にはピッタリなプレゼントだと思うわ」
一方通行「……そォか。よォするに俺はクソ高いチョコレートをまとめ買いすりゃイイわけだな」
芳川「キミがそれでいいと思うならそうね」
一方通行「何か引っかかる言い方だな。まァイイ、俺の好きなよォにやる。もともと俺の問題だしな」
芳川「そう」
一方通行「ま、とりあえず礼は言っておく。……その、アリガトよ」
芳川「そんなツンデレありがとうはいらないわ。だからあの店のチョコレートセットが欲しいわ」
一方通行「どンだけ食いてェンだよあの店のチョコレート」
―――
――
―
140 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:04:17.97 ID:d6Ws/u/Ao
同日 15:00
-黄泉川家・リビング-
一方通行「オイオイ、どォいうことだ。芳川の言うあの店っつゥのはおそらくコイツだろォが、通販を取り扱ってねェだと?」
一方通行「……つゥか、学舎の園の菓子屋がほとンど通販に対応してねェのかよ。男はどォやったらこの中の菓子を食えるンだよ」
一方通行「チッ、頼みたくねェがヤツを使うしかねェか」つ携帯電話
-第七学区・とある公園-
美琴「――ちぇいさっー!!」グルッ
ドゴッ!! ガコッ
美琴「……よし! ヤシの実サイダーゲット! 今日は何だかいいことありそうね」
<ハナテココロニキザンダユメモミライサエオキザリニシ-テ♪
美琴「ん? 電話……? げっ!?」ピッ
美琴「もしもし?」
一方通行『今さっき「げっ」っつゥ声が聞こえたのは気のせいか?』
美琴「き、気のせいじゃない? ところで何か用? わざわざアンタが電話してくるなんて珍しいわね」
一方通行『オマエにちょっと頼みてェことがあってな』
美琴「頼みたいこと?」
一方通行『ああ。これはオマエにしか頼めェことだ』
美琴「な、何よそんな改まって……」
一方通行『学舎の園の中にチョコレートで有名なあの店があるだろ』
美琴「……あー、たぶんあの店ね。それがどうかした?」
一方通行『ちょっとそこの店でチョコレートのセット買ってきてくれねェか? 二十セットくらい』
美琴「……何? もしかして私をパシリか何かにしようとしてる?」
一方通行『そォいうわけじゃねェよ。ちゃンと金は払う。何なら少し色を付けてもイイ』
美琴「大体、何で私がそんなことしなきゃいけないのよ? 自分で買いに行きなさいよ」
一方通行『それが出来りゃやってるっつゥの。学舎の園に男子禁制とかいうクソみたいなルールがなけりゃいくらでも行ってやるよ』
美琴「……! だったら良い案があるじゃない!」
一方通行『……オマエの言いたいことは大方予想できるが何だ? 言ってみろ』
美琴「アンタ、もう一回女装、やってみる?」キラキラ
―――
――
―
141 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:05:06.11 ID:d6Ws/u/Ao
March Second Wednesday 17:30 〜ホワイトデー前日〜
-第七学区・学舎の園入口-
美琴「よし、じゃあ行くとしますか。ね、百合子ちゃん?」
一方通行(以下女装)「オマエは……ホント楽しそォだよなァ!? クソがッ!!」
美琴「そりゃそうよ。楽しくなけりゃ、アンタなんかを学舎の園の中へ入れる手伝いなんかしないっての」
一方通行「チッ、覚えてろよクソガキ……」
美琴「はいはい、それじゃあ早く入りましょ? 時間もそんなにないし」
一方通行「つーか今度は大丈夫なンだろうな?」
美琴「何が?」
一方通行「招待状だ。前みたいにまた仮の招待状で、ID求められても困るンだが」
美琴「大丈夫よ。ちゃんとVIP待遇のきっちりした招待状よ。ほら」スッ
一方通行「……本当に大丈夫なンだろうな、これで」
美琴「少しは信用しなさいよ。まあ、たしかに前のは本当に悪いとは思ってはいるけど……あ、そうだ。何なら一緒に入場してあげましょうか? それなら安心でしょ」
一方通行「付いてくる、っつゥ救済の案を挙げるってことは、何か不安要素があるっつゥ心理が働いてるからだ。違うか?」
美琴「……よーし、じゃあ行きましょー!」
一方通行「図星か。信用を得たいなら用意周到に、不安要素を全て潰さなきゃなァ」カチッ
-学舎の園・入口ゲート-
係員「――次の方どうぞ。あっ、御坂さん」
美琴「ど、どうもです」
係員「わざわざこっち側通らなくてもいいのに」
美琴「あ、あははちょっといろいろありましてね」ピッ
係員「? はい、次の方」
一方通行「……鈴科百合子だ。常盤台二年の御坂美琴、よォするにさっき通ったヤツの招待で来ました(以下姫神ボイス)」
係員「あ、御坂さんのお友達ね」
美琴「あはは、そ、そうですー」
係員「それじゃあ招待状を出してください」
一方通行「はい」スッ
係員「…………」
一方通行「…………」
美琴「…………」ゴクリンコ
係員「……はい、通ってだいじょうぶよ」ウイーン
一方通行「アリガトウございます」ガチャリガチャリ
美琴「……ふぅ」
係員「……あっ、そうだ鈴科さん?」
一方通行「あァ?」
美琴「!?」ビクッ
係員「次来るときはちゃんと制服で来た方がいいわよ? この中で私服って結構目立つから」
一方通行「はい。気を付けまァす」ガチャリガチャリ
142 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:06:01.07 ID:d6Ws/u/Ao
-学舎の園・エントランス-
美琴「……はぁ、何だかすっごくドキドキしたわ」
一方通行「やっぱり確証がなかったンだな。そのリアクションを察するに」
美琴「う、うるさいわね。だって私招待なんてされたことないし」
一方通行「そりゃそォだな。だが仕組みくらいは知る機会ぐらいあると思うがな」
美琴「ぐっ……」
一方通行「まァイイ。で、目的地のあの店っつゥのはどこにある?」
美琴「ああええっと、たしか製菓店が集まってるエリアの結構奥側よ」
一方通行「そりゃまた面倒な立地だこった」
美琴「裏の方にひっそり建っている、みたいな感じだし。もしかしたら初めてじゃ見つかり辛いところにあるかもしれないわね」
一方通行「クソみてェな店ェ選びやがって芳川の野郎め……」
美琴「ま、そこんとこは安心しなさい。学舎の園の店は全部この頭の中に入ってるわ。隅から隅まで案内できるから、美琴センセーに任せなさい」
一方通行「そンなモン頭に入れるスペースがあンなら、招待状の仕組みの一つくらい入れとけっつゥ話だよな」
美琴「まだ言うか。アンタって意外と陰険でねちっこいのね」
一方通行「意外でもねェだろ。見た目通りのクソ野郎だろ?」
ピーンポーンパーンポーン♪
一方通行「あン? 何だこりゃ」
美琴「この音楽は呼び出しの放送ね」
放送『――常盤台中学二年御坂美琴さん。至急、常盤台中学第三能力開発室へ来てください。繰り返します――』
一方通行「……オマエ、何か呼び出し食らってンぞ」
美琴「私? 何で?」
一方通行「教室の窓ガラスでも割ったのか?」
美琴「割るか! てか割ったら素直にすぐ謝りに行くっての」
一方通行「自販機に蹴り入れてジュースパクってるヤツの言葉だ。信用ならねェ」
美琴「いや、だからアレは自販機のほうが悪いのよ! 私の万札を飲み込んだんだから!」
一方通行「どォでもイイが早く行った方がイインじゃねェのか? 至急って言ってただろ」
美琴「そうね。じゃあぱぱっと行ってくるから、ちょろっと待っててちょうだい」
一方通行「待たねェよ。どれだけ時間がかかるのか分からねェからな。先に店行っておく。何ならさっさと買い物を済ませてここから離脱する」
美琴「あっ、じゃあもし店にたどり着いたら私の名前を出してちょうだい。私の名前で二十セット予約しといたから」
一方通行「ほォ、オマエにしては気ィ利かせてンじゃねェか」
美琴「感謝しなさいよー、普通に行っても買えないんだからねー、あのチョコを二十セットなんてね」
一方通行「アリガトよ。それはそォと早く行って説教されて来た方がイインじゃねェか?」
美琴「だから私何もやった記憶ないって……、それじゃ行ってくる!」ダッ
一方通行「元気なヤツだ。さて、俺も行くか……いや、まだ行けねェよォだな」
一方通行「――隠れてねェで出てきたらどォだ? 第五位」
143 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:06:50.14 ID:d6Ws/u/Ao
食蜂「……あらぁ、やっぱり気付かれちゃってたぁ? さすがの索敵力ねぇ第一位さん?」
一方通行「何の用だ? 俺は今から買い物しなきゃいけねェから忙しいンだよ」
食蜂「明日のホワイトデーの買い物かしら? 女装してまでこんなところに来るなんてアナタも大変ねぇ」
一方通行「そォいうわけだ。俺は急いでいるから行かせてもらうぞ」
食蜂「何だかつれないわねぇ、せっかくお邪魔虫さんがいなくなってくれたのだから、ちょっとだけお茶でもしない?」
一方通行「……さっきの放送はオマエの差し金か?」
食蜂「そうよぉ。たぶん御坂さんはあと一時間くらい戻ってこれないと思うから、少しくらい付き合ってくれてもいいんじゃない?」
一方通行「関係ねェ。ヤツが居ようが居まいが俺は買い物して帰るだけだ。オマエの存在を介入させる隙間なンてねェよ」
食蜂「そう、それは残念ねぇ。せっかく面白そうな話題を持ってきたっていうのにぃ」
一方通行「面白そうな話題だァ?」
食蜂「うん。アナタなら絶対に食い付くと思うわぁ」
一方通行「……言ってみろ」
食蜂「学舎の園にある隠れたコーヒーの店の話、とか」
一方通行「……くっだらねェ。そンなモンに食い付くわけねェだろ。大体、そンなモン知ったところで俺じゃ通えねェだろ」
食蜂「今女装して絶賛学舎の園に侵入している人のセリフじゃないと思うのよねぇ」
一方通行「今回も緊急事態だからやっているに過ぎねェ。そう何回もこンなことするかよ」
食蜂「うーん、だったらこの話題はどうかしらぁ?」
食蜂「学舎の園の絶景、パンチラスポット! とか?」
一方通行「……おォーおォーすげェすげェ、どっかのピアス付けたエセ関西人が聞いたら頭から飛び込ンで食い付きそうな話題だなァ」
食蜂「これならアナタも食い付くんじゃなぁい? 私の情報網からアナタがロリコンだってことはわかっているわぁ」
一方通行「何だその信憑性皆無の情報網はァ? 俺はロリコンなンかじゃねェっつゥの」
食蜂「えぇー? でもそんなこと言ってるけど実はー?」
一方通行「違うっつってンだろォがクソガキがッ! 大体よォ、仮に俺がロリコンだとしてもそンな情報もらっところでさっきと同じ理由で意味ねェだろォが」
食蜂「だから同じように女装してウォッチングすればいいんじゃないかしら?」
一方通行「生憎だが、俺は女装してガキのスカートの中覗き見るよォなクソ野郎じゃねェンだ。話にならねェよ」
食蜂「そう、ならばこれはどうかしらぁ」
一方通行「もうやめろ。いくらオマエが話題を出したところで俺が食い付くわ――」
食蜂「結標さんの記憶喪失について、とかどうかしら?」ニヤリ
一方通行「…………」ピクッ
食蜂「あっ、やっとまともな反応を見せてくれた。これに関しては興味深々のようねぇ」
一方通行「オマエ、アイツに一体何をするつもりだ?」
食蜂「話が飛躍してるわよぉ。別に私は彼女をどうにかしようなんて思ってないわぁ。ただ、彼女に関してちょっとお話がしたいなぁ、って思っただけだゾ☆」
一方通行「……イイだろ。案内しろ、その茶会の会場によォ」ギロッ
食蜂「ウフフ、そうこなくっちゃ♪」
―――
――
―
144 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:08:37.07 ID:d6Ws/u/Ao
同日 18:00
-学舎の園・とある喫茶店-
ウエイトレス「――こちらエクレアとミルクティー、こちらがアイスコーヒーになります」ゴトッ
食蜂「ありがとう」
ウエイトレス「ではごゆっくり」
一方通行「…………」ズズズ
食蜂「あらぁ? ストロー使わないのぉ? 変な飲み方ねぇ」
一方通行「……そォいや、前に超電磁砲にも同じこと言われたな。これで別に問題ねェだろ」
食蜂「景観に配慮されてない飲み方だと思うのだけど」
一方通行「知るかよ。つゥか、そンなどォでもイイこと喋る為にこンなところに来たわけじゃねェだろ。さっさと話を進めやがれ」
食蜂「もぉ、せっかちねぇ。まあたしかにグダグダして御坂さんが戻ってきたら嫌だしぃ、急ぐに越したことないのよねぇ」
一方通行「ついでにそのうっとォしい喋り方もどォにかしてくれると助かるンだが」
食蜂「それは無理な話なんですケド。これが私の自然体で居られる喋り方なんだゾ☆」
一方通行「だったら敬語で話せ。年上は敬えよクソガキ」
食蜂「アナタが言うな、って言った方がいいのかしら?」
一方通行「チッ、話ィ始めろ」
食蜂「そうねぇ、じゃあまず手始めに、結標さんとは仲良くやってる?」
一方通行「仲が良いの定義が何だか知らねェが、別に何の問題もなく過ごしてるとは思っている」
食蜂「そ。なら、楽しい? その生活」
一方通行「……俺に相応しくねェモンだとは思うが」
食蜂「ふーん、つまり楽しいってことかなぁ? いいわねぇー楽しくて」
一方通行「何勝手なこと言ってンだオマエ」
食蜂「じゃあ楽しくないわけぇ?」
一方通行「…………」
食蜂「駄目よぉ、そんな遠回しな言い方でどっちつかずの答えを出して、話を逸らしても私にはアナタの考えてることが手に取るように分かるのよぉ?」
一方通行「チッ、分かったところで何だってンだ」
食蜂「別にぃ。あっ、一応言っておくけど特に言いふらしたりしないわぁ。言いふらしたところで何も面白くないのよねぇ」
一方通行「そォかよ。そりゃ残念だったな面白くなくて」
食蜂「じゃあそんな楽しい楽しい生活を送っている一方通行に質問です」
食蜂「いつまでこの『偽り』の生活を送っていくつもりなのかしらぁ?」
145 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:09:34.25 ID:d6Ws/u/Ao
一方通行「……どォいう意味だ?」
食蜂「そのままの意味よぉ。アナタのこの日常はいずれ破綻することは確定しているわぁ。なのに流されるままこの日常に甘んじているアナタは一体、いつまでこれを続けるつもりのかなぁ? っていうコト♪」
一方通行「破綻する、だと?」
食蜂「ふふっ、本当は分かってるクセに、そうやって分からないフリをする。そうやって守っているのよね、アナタ自身を」
食蜂「だったらそんなアナタにきっちり説明してあげるわぁ。アナタの逃げ場をなくしてあげる」
一方通行「…………」
食蜂「まず、その話をするには結標さんの記憶喪失について説明しないとね」
一方通行「アイツの記憶喪失、だと?」
食蜂「そう。そもそも記憶喪失っていうのは三つのパターンがあるのよぉ。一つは元ある人格から記憶が消え去るパターン、まあこれが一番よくあるヤツよねぇ」
食蜂「例を言うならお酒の飲みすぎで昨晩の記憶がない、みたいなのがそうよねぇ。もっともポピュラーな記憶喪失かも」
食蜂「ちなみに、このパターンなら何かしらの刺激が脳に走ったら、もしかしたら記憶が蘇る可能性があるかもしれないわぁ」
一方通行「……二つ目は?」
食蜂「二つ目は記憶が跡形もなく破壊されるパターン。これはそのままの意味よぉ。脳に記憶そのものが跡形もなく消滅していまうのよ」
食蜂「身近な実例が思いつかないから省くけど、この場合は文字通り破壊されたことになるから、どんな刺激があろうと記憶が戻ることは決してないわぁ」
食蜂「これは滅多なことじゃ起きないから、一番珍しいパターンだと思う。ま、私の超能力を使えばそんなのも余裕なんですケドね」
一方通行「オマエそンなことやってンのかよ。趣味の悪りィヤツだ」
食蜂「出来ると言っただけでやったことがあるとは言ってないわよぉ。それに別に命を取るわけじゃないんだから、それくらいいいんじゃないかしらぁ?」
一方通行「人にとっては記憶は命と同価値足りえる場合だってある。やってることは人殺しに等しいぞ」
食蜂「それはアナタには言われたくないんですケドぉ」
一方通行「チッ、そォだったな。で、最後の三つ目は何なンだよ」
食蜂「最後の三つ目、これは結標さんに当てはまる症状よぉ」
一方通行「結標の?」
食蜂「三つ目は元の人格が記憶の奥底に押し込まれて、代わりの人格が意識を乗っ取る、っていうパターンよ」
食蜂「よく聞く事例だと、カッとすると周りが見えなくなって暴れだして、そのあと『自分はいったい何をやったんだ?』みたいな人いるじゃない? あれも一種の記憶喪失ってワケ」
食蜂「結標さんはそのロングバージョンってことになるのかしらぁ? 元の人格が記憶の引き出しの奥底に押し込まれて、代わりに今の人格が結標さんを演じているのよぉ」
146 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:10:20.36 ID:d6Ws/u/Ao
一方通行「…………」
食蜂「さて、ここまで説明すれば私の言いたいことが嫌でも分かってくるんじゃないかしらぁ?」
一方通行「……そォだな。要するにアレだろ。アイツの記憶喪失が治った場合、半年前の人格、今のアイツとはまったく関係のない結標になっているっつゥことだろ?」
食蜂「そうよぉ。ちなみにこの三つ目パターンの記憶喪失っていうのは、一つ目のやつと同じでちょっとしたことで記憶が戻ってくるかもしれないわぁ」
一方通行「つまり、もしかしたら明日記憶が戻っているかもしれないし、一年後に戻ってくるかもしれない、そォいうことか?」
食蜂「まあ、その記憶が戻るトリガーが何かによるかな。それが普段の彼女にまったく関係ないものなら戻らないし、身近だけど出会ってないものならすぐにでも戻る可能性があるしぃ」
一方通行「……で、こんなところでわざわざそんな記憶喪失の説明会開いて、一体オマエは何が言いたいンだよ?」
食蜂「それ、本気で言ってるワケ? だとすると本当にアナタは理解力のない間抜けな人間ってことになるのよねぇ」
一方通行「何だと?」
食蜂「分かってないのなら教えてあげる。彼女が記憶を失ったのは去年の九月一四日。原因はアナタ、一方通行との交戦での頭部へのダメージ」
食蜂「つまり、半年前の結標さんからしたら、アナタは同じ家に住む居候同士でもなければ同じ高校に通うクラスメイトでもない」
食蜂「ただの、自分に危害を加えた『恐怖』の対象でしかない」
一方通行「……ああ。たしかに俺はあの時アイツと接触し、明確にオマエを倒すと宣言し、圧倒的なチカラで叩き潰した」
一方通行「そンなヤツがいきなり目の前に現れて、恐怖を覚えねェほうがおかしい」
食蜂「よかったわぁ、ちゃんと理解してくれてるのねぇ。だったら、改めて聞かせてもらうわぁ」
食蜂「アナタはいつまでこの偽りの中を過ごしていくつもりなのかしらぁ? いくらアナタが今の彼女と思い出を作っていっても、たった一つのきっかけで全てが壊れてしまう」
食蜂「そんな辛い結末が待っている物語を、アナタはまだ紡いでいこうと言うのかしら」
一方通行「…………」
食蜂「……そう。それがアナタの答えなのねぇ。ふふっ、カッコイイじゃなぁい?」
一方通行「ッ!? オマエ俺の思考を……!」
食蜂「ただその考えは逃げに過ぎないわぁ。与えられた選択肢を選ぶことなく保留にして、自分で答えを出そうとしない受け身な考え」
食蜂「まあでも、アナタがそれで良いと思っているなら、それもある意味一つの答えかもしれないしねぇ」
一方通行「…………」
食蜂「さて、これでお開きとしましょうかしらぁ? そろそろ御坂さんが来てもおかしくない時間だしぃ」
一方通行「……そォだな。これ以上オマエと話すことなンてねェ」
食蜂「あ、そうそう。最後に一ついい?」
一方通行「あン?」
食蜂「もし結標さんの記憶が戻ってしまって、アナタが前の結標さんのほうがいいなぁ、なんて思ったりしたら私に言ってちょうだい。私の能力を使って――」
ガシッ!
一方通行「…………」ギロッ
食蜂「あらぁ、女の子の胸ぐら掴むなんていけな――」
一方通行「人の記憶を玩具扱いしてンじゃねェぞ。クソガキが」
食蜂「ふふっ、冗談よぉ。そんな怖い顔なんかしちゃダメだゾ☆」
一方通行「……チッ」パッ
147 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:11:22.32 ID:d6Ws/u/Ao
<ありがとうございましたー!
一方通行「……オイ、最後に一ついいか?」
食蜂「何かしらぁ?」
一方通行「オマエは何のために俺と接触したンだ? オマエの今日の行動が何一つ解せねェ」
食蜂「最後って言うから何かと思ったらそんなことなのねぇ。ふふっ、気になるぅ?」
一方通行「別に」
食蜂「ええっー、何その素っ気ない答え? アナタから聞いてきたことでしょー?」
一方通行「どォせオマエは真面目に答えねェだろォが」
食蜂「そんな決めつけはひどいゾ☆ ま、その通りなんだケド」
一方通行「だろォよ。答える気がねェならさっさと消えろ」
食蜂「はいはーい! あっ、でも一つだけ教えてあげるわぁ。私がなぜこんな場をセッティングしたのか。それは――」
食蜂「――――同情よ」
一方通行「……どォいう意味だ?」
食蜂「それじゃあごきげんよう、鈴科百合子さん☆」タッタッタ
一方通行「……チッ、無駄な時間食っちまった。行くか」
美琴「……ちょっと待ちなさい」
一方通行「……居たのか超電磁砲」
美琴「まあね。あんな性悪女の時間稼ぎなんて、ちょちょいと終わらせてやったわ」
一方通行「その余った時間で覗き見かァ? いい趣味なこった」
美琴「勘違いしないでよね。私が来たのはついさっきだし、別にアンタたちの会話なんて一言たりとも聞いてないわよ」
一方通行「そォかよ」
美琴「で、何話してたのよ? って聞いても教えてはくれないでしょうけど」
一方通行「わかってンじゃねェか。その理解の良さに敬意を表して教えてやる。どォでもイイよォな世間話だ」
美琴「嘘くさ。世間話ならそんな顔して喫茶店出てこないっつーの」
一方通行「元からこンな顔だ」
美琴「そうですかい。じゃ、アンタもそんな時間もないと思うし、ちゃっちゃと用事済ませちゃいましょうよ」
一方通行「……ああ」
―――
――
―
148 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:12:00.49 ID:d6Ws/u/Ao
同日 19;00
-第七学区・とある公園-
一方通行「……はァ、やっとあのクソみてェな格好から開放された(以下一方ボイス)」
美琴「まーた捨てちゃったのね、勿体無い。まだ入る機会があるかもしれないんだから、どうせなら取っとけばいいのに」
一方通行「ねェよそンな機会。金輪際」
美琴「それってフラグってやつ?」
一方通行「ねェよ。チッ、しかしチョコレートでも二○セットもあったら流石に重ェな」ガチャリガチャリ
美琴「そりゃそうよ。というか一体何で買って……もしかして明日のホワイトデーのためとか?」
一方通行「まあな」
美琴「へー、アンタって意外とモテるのねー」
一方通行「不本意だがな」
美琴「……そのもらったバレンタインって全部、まさかの本命?」
一方通行「ンなわけねェだろォが。顔も知らねェ頭ン中がピンクな一部のヤツらを除けば、全部義理だ」
美琴「そんなヤツらのためにわざわざお返しを用意するなんて、マメなやつ」
一方通行「は? 返さなくイイのか? これ」
美琴「当たり前じゃない。わけのわからない人からもらったものに対して、お返ししてやる義理なんてないじゃない」
一方通行「言われてみりゃそォだな」
美琴「アンタ今までのホワイトデーって、もしかして律儀に全部返してたわけ?」
一方通行「いや返してねェ。つゥか、今までバレンタインやホワイトデーなンかをするよォな世界で生きていなかったからな。もらったことねェからそンな概念すらねェよ」
美琴「だから女装してまでたっかいチョコレート買うなんて迷走してるのね」
一方通行「値段の三倍ルールに対応するには、これくらいの金額のチョコレートが必要だろォが」
美琴「どこの誰だかが勝手に決めたルールに騙されてどうするのよ。大切なのは気持ちよ気持ち」
一方通行「芳川め……クソみてェな情報握らせやがって」
美琴「で、その話を聞いてアンタはどうするわけ? その大量のチョコレートセット」
一方通行「あァ? まァ買ってしまったモンは仕方がねェよ。とりあえずもらった分は全部返す」
美琴「律儀ね。返さなくても誰も文句は言わないだろうに。何というか、似合わないわね」
一方通行「ホント、何やってンだろォな、俺は……」
美琴「でも、血みどろの殺し合いなんかをやっているときよりはよっぽどマシよ」
一方通行「…………」
149 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:12:43.90 ID:d6Ws/u/Ao
美琴「じゃ、私行くわ。打ち止めによろしく言っといてね」
一方通行「何でアイツの名前が出てくンだ?」
美琴「どうせ打ち止めの分もその中に入っているんでしょ?」
一方通行「……ああ」
美琴「あっ、あとアンタ性悪女に何言われたか知らないけどさ、気にしないほうがいいわよ。アイツは適当なこと言って人を困らせて楽しんでるだけだから」
一方通行「適当、か……」
美琴「とにかく、アイツの言ったことをいちいち気に留めてちゃダメよ? ストレスで白髪増えるわよ」
一方通行「もともと白髪だっつゥの。つーかオマエ、もしかして俺を励ましてるつもりか?」
美琴「べ、別にそんなことしてないわよ。ただ食蜂と会ってからのアンタは何か変だから。うまく言葉には出来ないけど」
一方通行「そォかよ」
美琴「ま、アンタが変だろうと私には関係ないし、何でもいいんだけど」
一方通行「だったら放っておけよ」
美琴「じゃ、今度こそ行くわ」
一方通行「ああ、アリガトよ。わざわざ付き合ってもらってよ」
美琴「………‥」
一方通行「? どォした?」
美琴「やっぱ変よ。アンタから『ありがとう』の言葉が出るなんて」
一方通行「オマエ叩き潰すぞ」
―――
――
―
150 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:13:37.68 ID:d6Ws/u/Ao
同日 20:00
-黄泉川家・リビング-
ガラララ
一方通行「帰った」
結標「あら、おかえりなさい。随分と遅かったのね。晩ご飯冷めてるわよ」
一方通行「おォ。他のヤツらは?」
結標「黄泉川さんと打ち止めちゃんはお風呂に行ってて、芳川さんは部屋にいると思うけど」
一方通行「そうかよ」
結標「ところでどこ行ってたのよ? 貴方がこんな時間まで出歩くなんてよっぽどよね」
一方通行「別に。オマエには関係ねェよ」
結標「そう言われると気になっちゃうのよね。その荷物は何? 随分と大きな紙袋だけど」
一方通行「それもオマエには関係ねェ」
結標「……あっ、もしかしてあれ? エッチな本的な……?」
一方通行「そンなモンこンなデカイ紙袋一杯に買うわけねェだろォが」
結標「実はコレクションをする趣味があったりして」
一方通行「ねェよ。つゥか、俺の部屋入ったことあるよなオマエ?」
結標「押入れの中は見たことないわ」
一方通行「はァ、馬鹿なこと言ってンなよ。部屋に荷物置いてくる」
結標「ごゆっくりー」
一方通行「その言葉の意味、あえて聞かねェようにする」ガチャリガチャリ
『いつまでこの『偽り』の生活を送っていくつもりなのかしらぁ?』
一方通行「……結標」
結標「何?」
一方通行「いや……何でもねェ」ガチャリガチャリ
結標「? 変なの」
――――――
151 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/13(金) 22:15:15.53 ID:d6Ws/u/Ao
食蜂さんがもし馬鹿なこと言ってたらそれはワイが馬鹿なだけだからゆるして・・・
次回『ホワイトデー』
152 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 21:57:23.65 ID:9mCcFctro
今回ちょっと長め
投下
153 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 21:58:11.72 ID:9mCcFctro
8.ホワイトデー
March Second Thursday 07:30
-とある高校・昇降口-
シーン
一方通行「ふァー、ねっむ。……よし、この時間帯ならまだ人は少ねェ。絶好のチャンスってヤツだ」
一方通行「バレンタインの時、俺の靴箱にモノぶち込みやがったヤツは全員で十人」
一方通行「一年が四人、二年が二人、三年が一人。残りは送り主不明のヤツ、コイツらと卒業して居なくなった三年はどォしようもねェから放っておく」
一方通行「返せるヤツ全員の靴箱の位置は既に確認済。靴箱に入れてきたンだから、靴箱に返してやるのが礼儀っつゥモンだよなァ」
一方通行「靴箱にチョコレートを入れる動作は三つ。開ける、入れる、閉める」
一方通行「これを普通にやったら時間を食ってしまい、他人に見られる危険性が高まってしまう。だが……」
一方通行「この俺のベクトル操作を使えば、そンな動作を七回繰り返すくれェ簡単なンだよッ! 一瞬で終わらせてやるぜェ!」カチッ
バッ!
ダダン! ダダン! ダダン! ダダン! ダダン! ダダン! ダダン!
モブ生徒A「うわっ、何だっ!? この変な物音は!?」
モブ生徒B「うるさっ! 靴箱叩いて遊んでるのかしら?」
モブ生徒C「一体誰がこんなことを………」
一方通行「……ケッ、ミッションコンプリートってヤツだ。クソったれ」カチッ
―――
――
―
154 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 21:58:47.15 ID:9mCcFctro
同日 07:50
-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-
上条「じゃ、学校行ってくるよ」
禁書「うん! いってらっしゃいとうま!」
上条「あ、そうだ。これを渡すのを忘れてた」ゴソゴソ
禁書「えっ、何かくれるの?」
上条「おう。こいつだ」スッ
禁書「……何それ? クッキー?」
上条「そうだ。上条さんお手製のクッキーだぜ」
禁書「なるほど。昨日とうまがコソコソ作ってたのはこれだったんだね」
上条「コソコソって言うなよ」
禁書「ところで何でいきなりクッキーをくれるなんてことしてくれるの? 別に今日はバースデイでも何でもないんだよ」
上条「あー、お前らには馴染みがないかもしれないけど、今日はホワイトデーっつって、バレンタインのお返しをする日なんだ」
禁書「へー、ホワイトデーそういうことだったんだ。てれびで見たけどよくわからなかったんだよ」
上条「つーわけで、こいつはバレンタインに対するお返しだ。インデックス、チョコレートありがとな」スッ
禁書「うん、どういたしまして。そしてありがとうなんだよ! よし、早速いただいて」
上条「お前さっき朝飯食ったばっかだろ!」
-第七学区・通学路-
上条「ふんふーん♪ この時間なら遅刻なんてまずないだろ。やっぱ早起きって素晴らしーい!」
舞夏「うーい、上条当麻ー!」ウイーン
上条「よお舞夏。こんな時間にこんなところにいるなんて、もしかして上条さんのホワイトデー目当てか?」
舞夏「別にそんなつもりはなかったけど、もらえるものならもらっとくぞー」
上条「何だ違うのか。まあいいや。ほらっ、上条さん特製のクッキーだぜ」
舞夏「ありがとなー。へー、手作りなのか。これはまた何で?」
上条「市販されてるホワイトデー仕様のお菓子って高いんだよなー。それなら自作したほうが安上がりっつーことでの手作りクッキーってわけ」
舞夏「ふーん、てっきり私に対抗意識を燃やしてたのかと」
上条「お前に対抗意識燃やしても勝ち目まったくねーよ。ワンパンだよワンパン」
舞夏「それじゃあ私は行くとするぞ。上条当麻も勉強頑張れなー」ウイーン
上条「うーい、お前もなー」
―――
――
―
155 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:00:04.26 ID:9mCcFctro
同日 09:00
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
ガラララ
ヴェーラ「おはようございます」
ナンシー「おはようございまーす!」
数多「おう、お前ら二人ちょっと来い」
ナンシー「はい?」
ヴェーラ「何でしょうか」
数多「ほら、お前らにこいつをくれてやる」スッ
ナンシー「……あっ、これってもしかしてホワイトデーのプレゼントじゃないですか?」
ヴェーラ「いいんですか? こんなものをいただいて」
数多「いいんだよ。人の厚意は素直に受け取っとけ」
ナンシー「あ、ありがとうございます社長!」
ヴェーラ「ありがたく頂戴します」
円周「ふーん、今日はホワイトデーなのかあ」
ピンポーン
円周「おっ、打ち止めちゃんかな?」タッタッタ
ガチャ
打ち止め「おはようございまーす! ってミサカはミサカは元気いっぱいに挨拶をしてみたり!」
円周「うおおはぁようっ!! 打ち止めちゃん!」
数多「朝っぱらからうるせぇぞガキども」
芳川「おはようございます木原さん。今日もよろしくお願いします」
数多「どうもでーす。あっ、そうだ。芳川さんこいつを」スッ
芳川「あら、もしかしてこれホワイトデーの?」
数多「ええ。あといつ会えるかわからないんで、黄泉川さんの分も渡しといてくれませんか?」スッ
芳川「わかりました。わざわざありがとうございます」
数多「いえいえ」
156 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:00:41.95 ID:9mCcFctro
打ち止め「……ねえねえキハラ?」
数多「あん?」
打ち止め「ミサカの分のプレゼントは? ってミサカはミサカは手のひらを差し出して要求してみる」
数多「えっ、お前からバレンタインもらったっけか?」
打ち止め「あげたよぉ! ミサカ渾身のスーパースウィートチョコレートを! ってミサカはミサカはバレンタイン当日とのことを思い出しながら熱弁してみたり」
数多「……あー、そういやもらってたなぁ。あのゲロ甘いヤツ」
打ち止め「その表現には納得いかないけどちゃんと思い出してくれたんだね、ってミサカはミサカはそっと胸を撫で下ろしてみる」
打ち止め「というわけでプレゼントを寄越せー! ってミサカはミサカは再度要求してみたり!」
数多「チッ、だったらこれでいいだろ。ほら、チョコボールだ。しかも銀のエンゼルが当たってるレアモンだぞ」
打ち止め「えっ、何ですでにエンゼルの有無がわかってるの? ってこれ食べ残しじゃん! こんなのいらないよ、ってミサカはミサカは抗議してみる」
数多「我慢しろ」
打ち止め「ううっ、あんまりだー、ってミサカはミサカはチョコボールを食べながらしょぼくれてみたり」ショボーン
数多「…………」
円周「うわぁ、いい歳こいたおっさんが幼女を泣かせたー。全世界のロリコンを敵に回したね」
数多「……チッ、しょうがねーな。ほらよっ、やるよ」スッ
打ち止め「えっ? くれるの……?」
円周「って、あげるんかあい!」
数多「いつまでもくよくよされてもうっとおしいからな」
打ち止め「あ、ありがとうキハラぁ! ってミサカはミサカは満開の笑顔でお礼を言ってみたり!」
円周「てか、用意してたのに渡すのを渋るなんて意地悪なおじさんだねー」
数多「違げえよ。こいつはもともと近所のババァに渡す用のヤツだったもんだ」
円周「……あー、あの犬飼ってるおばさん?」
数多「そうだ。別にあのババァには渡さなくても問題はねえだろうと判断したまでだ」
円周「数多おじちゃんは熟女より幼女を取ったってわけかー」
数多「語弊のある言い方はやめろクソガキ」
打ち止め「うんまーい!! ってミサカはミサカは思わぬチョコレートの美味しさに感想を叫んでみたり」
数多「うるせぇ!」
円周「ところで数多おじちゃん。私もチョコレートあげたよね? 私のホワイトデーは?」
数多「お前からは何ももらってねーなぁ。たしかポリバケツさんにあげたんじゃなかったか?」
円周「あっ、そうだった。ポリバケツさーん、ホワイトデーのお返しちょうだあい」テクテク
数多「アホか」
―――
――
―
157 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:01:28.11 ID:9mCcFctro
同日 09:40 〜一時間目-ニ時間目間休み時間〜
-とある高校・一年七組教室-
吹寄「――で、あたしたちに話って何よアクセラ」
姫神「まあ。だいたい予想はつくけど」
結標「そうなの?」
一方通行「おォ、オマエらに渡すモンがある。ホワイトデーのお返しっつゥヤツだ」スッ
結標「あっ、なるほど。昨日の大荷物はそれだったのね。道理で隠そうとするわけだ」
吹寄「へー、まさかアクセラが自分からそういうことするなんてね。珍しいというからしくないというか」
一方通行「うるせェな。黙って受け取ることも出来ねェのか」
姫神「ありがとアクセラ君。……ん? こ。これは……!」
結標「どうしたの姫神さん?」
姫神「二人とも。このチョコレートよく見て」
吹寄「えっ、何なの……、ッ!? こ、これはあの有名な店のチョコレートセット!?」
結標「ええっ!? 有名な店って世界で学舎の園にしか出店してないっていうあのッ!?」
姫神「間違いない。雑誌とかでよく見るあのパッケージ。まったく同じ……!」
吹寄「開店後10分で売り切れで、何か政界の要人とか某国の王族などのVIPにしか予約とかすることが出来ないとか、いろいろ聞いたことあるわ!」
一方通行(へェ。そンなすげェモンだったンだな。つか、それを20セット予約できる超電磁砲は一体何者だ? あっ、レベル5の第三位か)
結標「あ、貴方一体どうやってこんなすごいものを……?」
一方通行「あ、ああ。常盤台に通ってる知り合いに買ってきてもらった」
姫神「なるほど。さすがレベル5第一位。人脈も広いのね」
吹寄「一生縁のないものだと思ってたけど、まさかそんなものを食べられるなんて……アクセラありがと!」ニコッ
一方通行(オイオイ吹寄のあンな笑顔初めて見たぞ。何なンだこの店のチョコレートセット……!)
上条「……あのー」
吹寄「何よ? 大した用じゃないなら後にしてくれる?」
上条「あのですね。一方通行のチート級のプレゼントで盛り上がってるところで本当に申し訳ないんですが、私めもホワイトデーのプレゼントなるものを持ってきてましてね」
結標「えっ、そうなんだ。何持ってきたのかしら?」
上条「本当みすぼらしくて申し訳ないのですが、手作りのクッキーのようなものを持ってきましてね、はい」
吹寄「クッキーのようなものって何よ。クッキーじゃないのそれ?」
上条「いえ、紛れもなくクッキーでございます、ははぁー」
一方通行「何だこの流れ」
姫神「……上条君」
上条「はい、何でしょうか?」
姫神「私。上条君がこんなものを作ってくれてきたなんて。とっても嬉しいわ」ニコッ
上条「……お、おう。こちらこそもらってくれてほんとありがとう」
158 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:02:12.22 ID:9mCcFctro
吹寄「……ふむ、しかし」
一方通行のプレゼント←三人とも同じチョコレート
上条当麻のプレゼント←三人とも同じクッキー
吹寄「……もっと空気読めないのかしら?」
上条「えっ、何が!?」
一方通行「さァ?」
吹寄(だいたいこっちは本命チョコレートを渡してるっていうのに、全員同じって……)チラッ
結標(一方通行からのプレゼントかぁ、すごく嬉しい!)キラキラ
姫神(上条君からの手作りクッキー……!)キラキラ
吹寄「……はぁ、まあいっか。本人たちがそれでいいなら」
上条「何だったんだ一体?」
一方通行「知るかよ」
土御門「おっ、みんなして集まって何してるんだ? もしかしてホワイトデープレゼント会でもやってるのかにゃー」
青ピ「女性陣の皆さん! この愛の貴公子青髪ピアスが、最高のホワイトデープレゼントをお渡しまっしょう!」
吹寄「……いや、あなたたちには何も求めてないから。別にいらないから」
青ピ「ひどい吹寄さん! せっかく用意してきたって言うのに!」
吹寄「どうせロクなもんじゃないでしょうに」
青ピ「まあまあそんなことを言わずに。どうぞこれを!」スッ
吹寄「……何これ? 大量のウエハースチョコ? 何よこの謎チョイス」
青ピ「ああ、食玩のカードが入ってるヤツ。大人買いしたらいっぱい余っちゃってなあ。まだまだ一杯あるでえー」スッスッ
吹寄「あたしはゴミ回収係じゃないわ! そんなプレゼントじゃ愛の貴公子の名前が泣くわよ!」
青ピ「いや、別に愛の貴公子じゃないですし……」
吹寄「自分で言った言葉は最後まで責任を持ちなさい!」
土御門「ちなみにぶっちゃけるとオレ、今日のホワイトデー何も用意して来てないんだぜい。すまん」
吹寄「別にいらないけど、それはそれでムカつくわね」
土御門「オレのホワイトデーは舞夏に全力だからにゃー。他に回す金なぞないっ!」
一方通行「ああそォだ。ちょっとイイか土御門」
土御門「何だ?」
一方通行「コイツをオマエの妹に渡しといてくれ。俺もバレンタインの日一応もらってたからな」スッ
土御門「…………」
一方通行「あン? どォした」
159 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:03:37.66 ID:9mCcFctro
土御門「――キエエエエエエエエエエエエイッ!!」ドガッ
上条「あっ、一方通行の超高級チョコレートが叩きつけられた! もったいなっ!」
吹寄「えっ、そこ!?」
一方通行「何をしやがるンだ土御門ォ?」
土御門「貴様ぁ、オレと舞夏の恋路を邪魔するつもりか。一方通行、貴様は今からオレの敵だ」
一方通行「へっ、上等だァ。この俺をどォにか出来ると思ってンのかァ? 三下がァ!」
上条「あっ、そういえば俺、さっき舞夏にクッキー渡したわ」
土御門「おらぁ!!」ドゴッ
上条「ぐほっ!? な、何しやがる!」
土御門「オマエラ・コロス・スベテ・マイカノ・タメ」
吹寄「いい加減にしろ」
ゴッ
土御門「ひでぶっ」ガタッ
青ピ「おおっ、さすが一年七組のドン。つっちーを一撃で沈めるなんて……」
吹寄「誰がドンよ!?」
結標「あら、青髪君じゃない。どうしたのその大量のウエハースチョコ」
姫神「どうせまた。食玩か何かのやつ」
青ピ「正解! どうや二人とも? 一袋くらいいる?」スッ
姫神「いらない」
結標「私も今日はいいわ」
青ピ「なんやつれないなー。ボクのホワイトデーは誰も受け取ってくれへんわ。寂しいホワイトデーやでー」
吹寄「そんなこと言うくらいだったら、もっとまともなもの持ってきなさいよ」
青ピ「まあでも、あんなモテすぎてお返しが大変、ってなるくらいなら実際はこれくらいがええんやろうな。ムカつくけど」
結標「えっ?」
姫神「どういう――」
160 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:04:23.87 ID:9mCcFctro
一方通行「オイ。この前のバレンタインの返しだ。大人しく受け取れ念動使い」スッ
念動使い「えっ、私にくれるの? 別にいいのに……ってこれあの店のチョコレートセットじゃない!? うわっ、やばっ!? すごっ!」
女子生徒A「うわーいいなぁー、あたしもアクセラ君にチョコあげればよかったー」
女子生徒B「私にも一個食べさせてよ」
念動使い「やなこった。ありがとねアクセラ君!」
一方通行「……おォ」
上条「バレンタインありがとな。これお返し」スッ
女子生徒C「あっ、クッキーじゃん。ありがと上条」
上条「これホワイトデーのお返しな。受け取ってくれ」スッ
女子生徒D「えー、別にお返しなんていいのにー」
上条「上条さんお手製のクッキーを受け取ってくれ」
女子生徒E「これ手作り? 上条君こんなの作れたんだすごーい」
結標「…………」←同じチョコレート
姫神「…………」←同じクッキー
結標・姫神「「よく見たらこれ全部同じヤツ!?」」
吹寄「今さらっ!?」
―――
――
―
161 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:05:14.58 ID:9mCcFctro
同日 10:00
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
円周「――数多おじちゃーん、例の物が出来たよー」
数多「やっと完成したか。遅せーぞ」
円周「えー、これでも超特急で作ったんだけどなあ」
数多「あれぐらい五分で作れ」
円周「カップうどんじゃないんだからさあ」
打ち止め「ところでエンシュウ。一体何が出来たの、ってミサカはミサカはテレビを間近で凝視しながら質問してみたり」ジー
数多「そんな近くで見てっと目が悪くなるぞ」
円周「うーん、まあ見てからのお楽しみと言うか……」
打ち止め「えっ、そんなに面白いものなの!? ってミサカはミサカは興味を持ちつつ興奮を覚えてみたり」
円周「うん。すごく面白かったよ。勉強にもなったし」
打ち止め「うぇー、勉強するのか。それは嫌だなぁ、ってミサカはミサカは渋い顔をしてみる」
円周「別にそういうのじゃないんだけどなあ。で、数多おじちゃん。あれいつやるの?」
数多「今から」
円周「おー、さすが数多おじちゃん行動が早い」
打ち止め「何か面白そうだからミサカも行くー! ってミサカはミサカはテレビを消して立ち上がってみたり」ピッ
ヴェーラ「社長、どちらへ?」
数多「ちょっとホワイトデーのプレゼント渡してくる」
ナンシー「えっ、さっきの会話ホワイトデーのプレゼントの話だったの? まったく予想つかなかったんだけど……」
数多「暇ならお前らも見に来るか? 面白れーモンが見れるかもしれねーよ」
ナンシー「……じゃ、じゃあ行こうかなー」
ヴェーラ「ちょっとナンシー。あなたまだ仕事がたくさん残ってるでしょ」
ナンシー「いいじゃないちょっとくらい。休憩よ休憩」
ヴェーラ「……もう!」
ナンシー「とか言いながらヴェーラも付いて来ようとするのね」
ヴェーラ「私は良いのよ。ナンシーと違って仕事早いから」
ナンシー「嫌味な言い方ね」
162 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:06:13.75 ID:9mCcFctro
-ファミリーサイド・屋上-
ヴェーラ「……なにこれ?」
打ち止め「うおおっ、かっこいい! ってミサカはミサカは率直な感想を述べてみる」
ナンシー「あっ、懐かしい。これペットボトルロケットじゃない? 子供の頃作って飛ばしたことあるわ」
数多「それはそんなしょうもねえモンじゃねえよ。こいつは超小型の巡航ミサイルだ」
ヴェーラ「…………えっ、なんて言いました?」
数多「だから超小型の巡航ミサイルだっつってんだろ」
打ち止め「おおっ、ミサイルってあれだよね? びゅーんって飛んでどかーんってなるやつ、ってミサカはミサカは擬音を駆使して説明してみたり」
円周「違うよ。ばしゅーんからのぼぉん! だよ」
数多「どっちでもいいわ。それよりきちんと機能すんだろうなこれ?」
円周「うん。数多おじちゃんの言う通りに出力、角度、座標設定etc。完璧にこなしましたあ!」
打ち止め「へー、エンシュウってこんなものを作れるんだー、ってミサカはミサカは素直に尊敬してみたり」
円周「作るっていうかただ設定しただけだよ。誰でも出来る簡単な作業だねー」
ヴェーラ「……ところで、このミサイルとホワイトデーに一体何の関係が……?」
数多「ああ。それを今から見せてやる。まずはこいつを使う」つ お得用マシュマロ一袋
ナンシー「マシュマロ? たしかホワイトデーでは『あなたのことが嫌い』の意味をもつお菓子でしたっけ?」
数多「そうだ。こいつをミサイルに括り付ける」スッ
数多「そして発射」ポチッ
ピシューン!
打ち止め「うわーマシュマロが飛んで行っちゃった。勿体無いなぁ、ってミサカはミサカは指を加えてみたり」
ヴェーラ「ところであのミサイルはどこに飛んでいったのですか?」
数多「ああ、お前ら木原病理ってヤツ覚えてるか?」
ナンシー「バレンタインの日に来られた木原一族の方でしたっけ? あの窓ガラスを割らずに窓ガラスを割って侵入してきた」
ヴェーラ「そっちは乱数さんでしょ。車椅子に乗ってた女性の方よ。で、その人がどうかしたのですか?」
数多「あの糞女バレンタインの日に、未元物質チョコレートとかいう産業廃棄物を渡しに来ただろ? まあ受け取ってはねーけど」
数多「だがあの女の中ではその時点でバレンタイン成立=ホワイトデーのお返しがもらえると思ってやがるから、必ずまたここに現れるはず」
数多「だからその前に先手を打った、ってわけだ」
ヴェーラ「……つまり、あのマシュマロ(ミサイル)は今その木原病理さんのところへ向かって飛んでると?」
数多「おう。アイツの住んでるマンションのベランダの窓、そこに直撃するように設定してある」
163 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:06:46.09 ID:9mCcFctro
<ドッゴーン
円周「あっ、着弾したみたいだね。予定通り」
数多「よし、それじゃあ撤収ぅー。ナンシー、ヴェーラ。そこの玩具片付けとけ」
ヴェーラ「あっ、はい」
ナンシー「何か今頃向こうではテロリストとか何とかで騒ぎになってそう……」
ピピピピッ! ピピピピピッ!
数多「あん? ……チッ、電話か」ピッ
数多「もしもし」
??『どうも数多クーン! 最高のホワイトデーのプレゼント、ありがとうございましたー!』
数多「やっぱこの程度じゃ死なねえか。木原病理よぉ」
病理『私、焼きマシュマロというものを初めて食べたのですが、なかなかいけますねー』
数多「そりゃ喜んでくれて何よりだ。次の機会があったら、ガトリングレールガンの弾をマシュマロ替えてブチ込んでやるから楽しみにしてな」
病理『おー、それはそれは素晴らしいですねー。来年を楽しみにしてまーす。ではではー』ピッ
数多「…………」
ヴェーラ「…………」
ナンシー「…………」ゴクリンコ
数多「さーて、仕事に戻るぞー」スタスタ
円周「打ち止めちゃん、今日は何して遊ぶ?」テクテク
打ち止め「うーん、そうだ! 今日は強くてニューゲームの人生ゲームをやろう、ってミサカはミサカは画期的なアイデアを繰り出してみたり」トテチテ
ヴェ・ナン((な、何事もなく帰っていったあああああああああっ!?))
―――
――
―
164 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:07:34.22 ID:9mCcFctro
同日 13:00
-第七学区・とあるファミレス-
ワイワイガヤガヤ
浜面「えー、本日はご多忙の中お集まりいただき――」
フレンダ「――結局、サバが最高の食材というのは揺るぎない事実な訳!」フンス
滝壺「何でふれんだはこんなに興奮しているの?」
麦野「この前連れて行ってあげたレストランのコース料理で出た、魚料理のサバのムニエルが相当お気に召したみたい」
絹旗「えっ、そんなところ行ったんですか!? ずるいです、私も超行きたかったです!」
浜面「……あのー」
麦野「はあ? 誘ったけど、アンタは映画見に行くとか言って断ったじゃない」
フレンダ「ま、でもああいうレストランはお子様にはまだ早いって訳よ。ファミレスでじゅーぶんじゅーぶん」フフン
絹旗「その程度のことでマウントを取っているつもりでいる人が行けるなら、超大人な私でも行けると思うんですが」
フレンダ「うん? それはどういう意味かな絹旗ちゃーん?」
滝壺「大丈夫。そんなふれんだを私は応援している」
浜面「ちょっとすんませーん! 話、聞いてもらってもいいですかねー!」
麦野「何だよさっきからうるせえなあ浜面ァ」
浜面「いえ、本当に申し訳ないですが、少しお時間をいただきたく」
絹旗「何というか、敬語で喋る浜面って超少しキモいですね」
浜面「少しキモいのか超キモいのかハッキリしろよ!」
フレンダ「あっ、私のメロンソーダなくなってる。ちょっと浜面行ってきて」
浜面「お、おうちょっと行って……って人が話をしようって時に雑用頼むなよ!」
滝壺「大丈夫。私はノリツッコミに勤しんでいるそんなはまづらを応援してる」
浜面「しなくていいから話を聞いてくれ……」
165 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:08:04.38 ID:9mCcFctro
麦野「で、話って何よ? まあどうせホワイトデーのお返しがある、みたいなありがちなヤツだろうけどな」
浜面「えっ、何でバレてるの!? 俺のサプライズっ!?」
フレンダ「そりゃ今日は三月十四日。ホワイトデーの日にアンタがキモい挙動を取ってたら、そりゃもうね」
絹旗「で、浜面は何を持ってきたんですか? まあ、超期待なんてできませんけど」
浜面「え、ええっと……なけなしの金で買ったデパートのそこそこの菓子屋の菓子詰め合わせ」スッ
麦野「うわっ、ふっつー」
絹旗「まあでも、浜面にしては超努力したほうではないでしょうか?」
フレンダ「ま、所詮は浜面って訳よ」
浜面「すぎのこ村を買ってきたヤツに言われたかねえよ!」
フレンダ「何ぃー? すぎのこ村を馬鹿にしたなぁ? あれ見つけるのすっごく苦労したんだからね!」
浜面「ウケ狙いでそんなもん買おうとするからだろ!」
フレンダ「称賛もされないしウケもしないものよりは遥かにマシって訳よ」
麦野「いや、お前のすぎのこ村もそんなウケてはないよ?」
フレンダ「しょ、しょんなー!?」
浜面「く、クソ……たしかに俺のは面白みもねえただのお菓子の詰め合わせだ。駄目だ、勝てねえ……」
絹旗「えっ、今のでどこか負ける要素ありましたか? 何でこんなに超悔しがっているんですか?」
滝壺「大丈夫だよはまづら」
浜面「た、滝壺……」
滝壺「面白くないものでも大事なのは気持ちだから。どんなに面白くないものでも気持ちがこもっていれば大丈夫だから」ニコッ
浜面「何か一番ひでえっ!?」
麦野「まあいいや。食後のデザートっつうことで食ってやるか」
絹旗「へー、マカロンとか入ってますよ。さすがそこそこの店の詰め合わせ」
フレンダ「まあそこそこ美味しいね。悪くはないって訳よ」
滝壺「普通だね。ありがとうはまづら」
浜面(ぐっ、案の定ボロクソに言われているがそれは別に構わねえ。俺の狙いはただ一つ……!)
滝壺「……ん? なにこれ?」つ飴玉
166 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:08:36.73 ID:9mCcFctro
浜面(き、来た……! 俺があとから入れた、駄菓子屋で買った飴玉だ……!)
フレンダ(なっ、あ、あれはキャンディー!? ホワイトデーでの意味は『あなたが好きです』!)
絹旗(私や麦野、フレンダの分には入っていない……? ってことはまさか浜面!)
麦野(……チッ、ヘタレ野郎かと思ってたけど結構攻めるじゃん。さーて、どうなるのか……?)
滝壺「……はまづら。これ……」
浜面「た、滝壺! こ、このキャンディーが俺のきも――」
滝壺「このお菓子の詰め合わせの内容物じゃないよね? 異物混入ってやつだよ。お店に連絡しといた方がいいよ」
浜面「えっ、あ、うん。そうだな」
絹旗「…………」
フレンダ「…………」
麦野「…………」
滝壺「……? どうしたの三人とも? 私の顔に何か付いてる?」
絹旗「……いえ、何でも。ぷぷっ」
フレンダ「ふふふふ何でもないって訳よ」
麦野「くくく、べ、別に……ふっ」
浜面「」
滝壺「?」
―――
――
―
167 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:09:29.01 ID:9mCcFctro
同日 14:00
-第七学区・とあるホテルの一室(グループの隠れ家)-
ピー、ガチャン
黒夜「うーす、って誰もいるわけないか」
黒夜「ま、集合時間の二時間以上前だからそりゃなあ」
黒夜「そんな時間に来て何やってんだ私は」
黒夜「…………」
黒夜「時間もまだあるし、昼寝でもして暇でも潰すか」ゴロン
黒夜「…………」
黒夜(そういや今日ってホワイトデー、だったよなぁ)
黒夜(ひと月前のバレンタインで私は番外個体のヤツに嵌められて、海原のクソ野郎にイタズラという名目で手作りチョコレートなんかを渡すなんてことがあったが)
黒夜(あのクソ野郎は果たして私にお返しなんてものをしてくれんだろうか?)
黒夜(いや、別に期待なんてしてないし、欲しいとも思ってないんだけど)
黒夜(ただこっちだけ痛手を負って、向こうだけ何もないっつーのもおかしな話だよな)
ガチャ
黒夜(……よし、何も用意してなかったらヤツのドタマをかち割ってやる。いや、でも待てよ)
黒夜(そんなことをしたら、まるで私がお返しが欲しいヤツのように見えないか?)
黒夜(いやいやいらねえよそんなモン! ただくれなかったらムカつく、それだけだ!)
黒夜(でももしかしたらめっちゃ良いものもらえたりして……って何考えてんだ私!)
黒夜(これじゃまるで私がプレゼントをすごく欲しいみたいな――)
海原「おや黒夜じゃないですか。珍しいですね、こんなに早く来ているなんて」
168 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:10:44.75 ID:9mCcFctro
黒夜「っておわっ!? う、海原ァ!? いつの間に現れやがったッ!?」
海原「今さっきですが。どうしたのですかそんなに取り乱して」
黒夜「な、何でもねーよ。アンタこそどうしたんだよ、こんな集合時間二時間以上前から来やがって」
海原「自分は特に異常がなければこれくらいの時間には来ていますが。ご存知ではなかったでしょうか?」
黒夜「んことなんて知るわけないだろ」
海原「まあ、いつも集合時間ギリギリに来ている黒夜には知るすべはありませんか」
黒夜「喧嘩売ってんのか?」
海原「そんな売ってもつまらないものなど、売る道理はありませんね」ガサゴソ
黒夜「うっとおしいヤツ。……何こそこそやっているのさ?」
海原「番外個体さんのお菓子のストックがここにはなかったはずなので、補充をしているんですよ」
黒夜「チッ、あのクソ女なんかの為にご苦労なことで。何が良いんだかあんなヤツ」
海原「彼女はそういう存在ではありませんよ。自分が守りたい人の、その周りの世界の中の一欠片。ただそれだけです」
海原「まあ、あの人から見たら彼女のことなんて毛先ほども知らない存在でしょうけどね」クスッ
黒夜「ふーん、そっか。でもさぁ、あの女を守ることとあの女のパシリになることは全然違うと思うんだけど、そこんとこどうよ?」
海原「パシリとは失礼ですね。これは彼女を守ることの一環としてお菓子等を買っているだけです」
黒夜「あー、そう。ま、別にどうでもいいんだけどね」
海原「……そうだ。貴女にちょっと用があるのを忘れていました」
黒夜「何だよ?」
海原「先月貴女からバレンタインのチョコレートをいただいたので、ホワイトデーのお返しを渡そうと」
黒夜「ふぇっ!?」
海原「えーと、確かこの辺に……」ゴソゴソ
黒夜「い、いや私そんなつもりで渡したんじゃねーっての! ありゃイタズラだから! だからそういうの求めてないから!」
海原「いえ、イタズラであれ何であれ、もらったものに対してお返しはしないと」ガサガサ
黒夜「だからいらねェっつゥの! 話聞けェ海原ァ!」
海原「……あっ、ありました。どうぞこちらを」スッ
つ5円チョコ
黒夜「……なにこれ?」
海原「ふふっ、しょせん貴女程度ではこの程度のものがお似合いだと思い、用意させていただきました。どうぞごゆっくりお召し上がりください」ニッコリ
黒夜「…………」
海原「おや、あまりにも感激しすぎて声も出ませんか?」ニヤリ
黒夜「…………び」
海原「び?」
169 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:12:04.16 ID:9mCcFctro
黒夜「びえええええええええええん!! 何で私ばっかこんな扱いなんだああああっ!! あんまりだああああああああああっ!!」
海原「なっ!? 何ですかこれは、マジ泣き……!?」
黒夜「リーダーに性的な目で見られ、ビリビリ女に玩具にされて、その上に海原にまで弄ばれてええええええええっ!!」
海原「え、えっと……、本気なんですかこれ?」
番外個体「うわぁー、何か女の子を泣かせてやがるクソ野郎がいるー。まじひくわー」
海原「み、番外個体さん!? い、いつから……!?」
番外個体「さて問題。ミサカはいつから居たでしょうか? 『1.最初から 2.はじめから 3.スタートから』。どれでしょーか?」
海原「全部最初からじゃないですか! 一体どこに隠れていたんです!?」
番外個体「ずっとお風呂場でスタンバってました」
海原「また貴女は何かイタズラをしようと……」
番外個体「それがミサカの存在意義でもあるしね♪」
海原「なんですかその陰湿な存在意義は」
番外個体「ま、女の子泣かすようなヤツには言われたくないけどにゃーん?」
海原「……はぁ。それについては誤解があるんですよ。いや、誤解と言うのとも違う気がするんですけど。まあ自分が悪いことには変わりないんですが」
番外個体「ほうほう。このクソ野郎確定の状況を打破できるような理由があると?」
海原「打破できるかはわかりませんがね」
黒夜「ひぐっ、ひぐっ、もうやだこのグループ。みんなして私をイジメやがって」
海原「黒夜。ちょっとよろしいでしょうか?」
黒夜「……ひっぐ、なにさ?」
海原「今貴女に渡したヤツはあれです、冗談です」
黒夜「……冗談?」
170 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:12:55.94 ID:9mCcFctro
海原「はい。ちょっと面白いかなと思ってやってみたんですが、まさかマジ泣きされるとは思わなくて……申し訳ないです」
黒夜「……ふ、ふざけンじゃねェ! 何が冗談だ、何が面白いだ、ふざけンなッ!」
海原「だから、お詫びと言っては…‥いえ、違いますね。これは詫びではないです。貴女に最初から渡そうと決めていたものです」
海原「都合のいいことを言っている自覚はありますが、受け取ってはいただけないでしょうか黒夜?」スッ
黒夜「これが……本当のやつ?」
海原「はい……」
黒夜「……チッ、うっとォしィ野郎だ。しょ、しょうがねェから受け取ってやるよ」スッ
海原「ありがとうございます」
番外個体「うわっ、ちょろっ」
黒夜「な、何か言ったかなァ? 番外個体クゥン?」グスン
番外個体「そんな涙目で睨まれても怖くないんだけど。やっぱかわいいねークロにゃんは♪」
黒夜「ぐっ、今回ばかりは言い返す言葉がねェ」
番外個体「あ、そうだ。海原ー、ミサカの分のホワイトデーはぁ?」
海原「もちろん用意してありますよ。自分のあらゆる人脈を使って手に入れた、あの店のチョコレートセットを!」
番外個体「あれ? ミサカには5円チョコくれないの? 面白愉快で泣けるサプライズはないわけー?」
海原「番外個体さんにそんなことするわけないじゃないですか。そんな面白くもないサプライズ」
黒夜「……は? 何言ってンだオマエ。何で私にやってそのクソ女にはやらねェンだよコラ」
海原「いえ、番外個体さんにはその分野ではかないませんからね。それにバレてるドッキリをやるほど自分も愚かではありませんよ」ニッコリ
黒夜「た、たしかにそォだけど、何か納得いかねェ!」
番外個体「あの店のチョコうめー」モグモグ
―――
――
―
171 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:13:30.81 ID:9mCcFctro
同日 15:00
-第七学区・スクール隠れ家-
砂皿「…………」カチャカチャ
誉望「……ところで砂皿さん?」
砂皿「…………」カチャカチャ
誉望「砂皿さん?」
砂皿「…………」カチャッ
誉望「ちょっと無視ないでくださいよ。相変わらず愛想がないっスね」
砂皿「……何だ? 気が散るから手短に話せ」
誉望「おっ、悪口言ったら反応してくれた」
砂皿「貴様が五月蝿いから返事をしただけだ」
誉望「はいはいそーっスね。えっと今日ホワイトデーじゃないっスか?」
砂皿「それがどうした?」
誉望「砂皿さん彼女さんへお返ししたんスか? あの外にいる、えっと……ステファニーさんでしたっけ?」
砂皿「……だからあれはそういうものではないと言っているだろう」
誉望「またまたー、隠さなくてもいいのにー。本当は付き合ってるんでしょー?」
砂皿「くどいぞ」
ガチャ
海美「お疲れー。楽しそうに何を話しているのかしら?」
誉望「あっ、お疲れっス。砂皿さんが彼女さんにホワイトデーのお返ししたのかなー、って話してたんス」
海美「ああ、ステファニー・ゴージャスパレスさんに? それは気になるわね」
砂皿「だから違うと言っている」
誉望「往生際が悪いっスよー。素直にゲロっちまった方が楽なんじゃないですか?」
砂皿「今ここで撃ち殺してやろうか。ゼロ距離なら貴様でも防げまい」スッ
誉望「あははー、冗談冗談ホワイトデージョークっすよ」
海美「教えてくださいよー砂皿さーん!」キッ
砂皿「ッ、能力者め、そんなものを使っても貴様に話す口など持たん」
海美「もう、強情ね。まあ別にいいけど」
172 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:14:07.98 ID:9mCcFctro
誉望「あっ、そうだ。これどうぞ心理定規さん」スッ
海美「あら、これってホワイトデーの? ありがとう誉望君」
誉望「いえいえ。大したもんじゃないですけど」
海美「……たしかに。私の渡したやつの金額を三倍した数字よりは安そうよね」
誉望「えっ!?」
海美「冗談よ。ありがと、うれしいわ」ニコッ
誉望「あはは……」
砂皿「…………」
海美「ん? 何か言いたそうな顔ね、砂皿」
砂皿「受け取れ能力者」ポイッ
海美「っと。あら、まさかあなたからお返しがもらえるとは思わなかったわ」
砂皿「ただの社交辞令だ。それ以上の意味はない」
海美「そうね。それ以上の意味は私たちにとっては必要ないしね。まあでも……」
誉望「でも? どうかしたんすか?」
海美「私にお返しをしたということは、必然的に彼女にはお返しをしたということになるわね」
砂皿「!?」
誉望「おおっ! たしかに!」
海美「砂皿―ステファニーの心理距離は友達以上恋人未満の数値だったわ。ただの他人の私に渡してそんな彼女に渡さない理由がないものね」
砂皿「勝手なことを言うな。能力者め」カチャ
海美「私を撃つつもり砂皿さん?」キッ
砂皿「くっ……!」
海美「……ところで垣根はここには来てないのかしら?」
誉望「そうですね。今日はここにずっといましたけど見てませんよ」
海美「そう。あの野郎もしかして日付変わるまで逃げるつもりかしら。電話にも出ないし」
誉望「やっぱ垣根さんにもバレンタインあげたんスね。しかし垣根さんのホワイトデーのプレゼントってすごそうっスよね。あの店のチョコレートセットとかめっちゃ買ってきそう」
海美「それくらいのをくれないと私絶対に許さないから」
誉望「一体何があったんスか……?」
海美「別に。ガキの相手は疲れるってだけ」
誉望「?」
チャララー♪
173 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:14:42.24 ID:9mCcFctro
海美「電話? あら、噂をすれば何とやら」
誉望「垣根さんスか?」
海美「そう……もしもし?」ピッ
垣根『よお心理定規。何か用か電話なんかしてきて』
海美「別に用なんかないわ。暇つぶしに電話しただけ」
垣根『そんな理由で俺に電話してきてんじゃねえっつーの』
海美「あらごめんなさい。いっつも暇そうにしてたから、今日もてっきり暇なんだと思ってたわ」
垣根『喧嘩売ってんのか?』
海美「別に」
垣根『チッ、まあいい。ところでお前、今日の夜空いてるか?』
海美「唐突ね。特に用事はないけど? どうかしたのかしら、私に用事?」
垣根『えっと、あれだ。お前今夜一緒に飯でも食わね? よかったらだけど』
海美「……えっ? 今何て言った?」
垣根『だから飯食わねえかっつってんだよ。何回も言わせんなよ面倒臭せえ』
海美「いえごめんなさい。あなたがそんな食事のお誘いなんてしてくるなんて思わなかったら。一体どういう風の吹き回しかしら?」
垣根『チッ、つまんねえ詮索はするな。イエスかノー、それだけ答えろっつーの』
海美「そうね。特に何もすることないからいいわよ」
垣根『……そうか。それじゃあ第三学区のスクールのアジトに六時半に集合っつーことで。じゃあな』ピッ
海美「えっ、ちょ、どこの何の店に……って切りやがったわね。せっかちなヤツ」
誉望「どうかしたんスか?」
海美「垣根に夕食のお誘いを受けたわ。どこの何の店に食べに行くのかは教えられずに切られたけど」
誉望「へー、そうなんスか」
海美「ま、どうせあれよ? 焼肉食べたいけど一人じゃ入れないし、一緒に行く友達もいないから私に泣きついてきたに決まってるわ」
誉望「ふーん」
海美「そーいうわけだから、来たばかりで悪いけど私帰るわね? じゃ、あとよろしくね」
誉望「よろしくされても、別に今日も何もないでしょうけどねー」
海美「そんなことを言ってると、別の暗部組織に襲撃されちゃうかもしれないよ?」
誉望「不吉なこと言わんでくださいスよ……」
海美「じゃ、お疲れ様ー」
ガチャ
誉望「……砂皿さん」
砂皿「何だ?」カチャカチャ
誉望「さっきの話、あれって絶対垣根さんのホワイトデーのお返しの食事ですよね?」
砂皿「知るか。子供の色恋沙汰など興味ない」
誉望「ちぇー、さすが彼女持ちで大人な砂皿さんは言うことが違うスよねー」
砂皿「だからアイツは違うと言っている」
―――
――
―
174 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:15:15.76 ID:9mCcFctro
同日 16:00
-とある高校・一年七組教室-
小萌「――というわけで、今日のホームルームは終わります」
青ピ「気をつけ、礼」
<ありがとうございましたー
結標「ふぅ、今日も終わったわね。帰りましょ一方通行」
一方通行「ちょっと待ってろ。少し用があるヤツがいる」
結標「用、って誰に?」
一方通行「見てりゃわかる」ガチャリガチャリ
女子生徒A「せんせさよならー」
女子生徒B「さよならー!」
小萌「はい、さようならー」
一方通行「……オイ、月詠」
小萌「はい? 何ですかアクセラちゃん?」
一方通行「ホワイトデーだ。何も言わずに受け取れ」スッ
小萌「えっ、もしかしてアクセラちゃん、わざわざ用意してくれたんですかー? 先生のために」
一方通行「何も言うなっつっただろォが。別にオマエの為にじゃねェよ。ついでだついで」
小萌「ってこれって有名なあの店のやつじゃないですかー!? せ、先生はそんなつもりでバレンタインを渡したつもりはないのですよー!」
一方通行「うぜェ。いらねェならゴミ箱にでも放り込ンでろ」
小萌「むむむむ、わかりました。ありがとうございますアクセラちゃん」ニコッ
一方通行「チッ、ぐだぐだ言わずにさっさと受け取れっつゥンだ」
上条「あっ、小萌せんせー! 俺のプレゼントも受け取ってくれー!」タッタッタ
小萌「上条ちゃんまで持ってきてくれたのですか? もー、そんなつもりで配ったんじゃないのにー」
上条「一方通行に比べたらしょぼいけど、上条さんの真心がこもった手作りクッキーなんで是非受け取ってくだせえ」
小萌「プレゼントに豪華もしょぼいもないんですよー。大事なのは気持ちなのですー。だから大丈夫ですよ、上条ちゃんの気持ちは気持ちはきちんと伝わりました」
上条「うわっ、そうまじまじと言われると何か照れくせーな」
小萌「上条ちゃんありがとうございました」ニコッ
結標「…………」
一方通行「終わったぞ。帰るか」
結標「まさか小萌先生の分まで用意してるなんて……一体何が貴方をそこまで駆り立てたのよ?」
一方通行「さァな。俺にも分かンねェ」
結標「……もしかして熱でもあるんじゃ……?」
一方通行「ねェよ、そンなモン」
―――
――
―
175 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:17:44.94 ID:9mCcFctro
同日 17:00
-黄泉川家・リビング-
ガララ
一方通行「帰ったぞ」
結標「ただいまー」
打ち止め「あっ、アクセラレータにアワキお姉ちゃん! おかえりなさい、ってミサカはミサカは迎えの挨拶をしてみたり」
円周「二人ともおかえりー。そしてお邪魔してます」ピコピコ
一方通行「本当に邪魔だな。さっさと隣へ帰れ」
円周「やだよーだ。今イイところなんだから」ピコピコ
結標「何やってるの? ゲーム?」
打ち止め「うん! 学園都市クエストがいつまで経ってもクリアーできないから、エンシュウにやってもらってるの、ってミサカはミサカは説明してみる」
円周「そうそう。今さっきラスボスのアクセラお兄ちゃんを倒してクリアーしたところだよ」
結標「えっ、クリアーしたの? すごいわねー、いくら戦っても勝てなかったのに……」
一方通行「は? 俺がいつ負けたっつゥンだよ。ふざけたこと言ってやがるとぶち殺すぞガキが」
打ち止め「やだなーゲームの話だよー。そんな本気にしないでよ、ってミサカはミサカは振り上げた右腕を引っ込めることを勧めてみたり」
一方通行「ンだァ? ゲームの話だと? このゲームはクソゲーだな。全然原作再現出来てねェ」
円周「えっ、でも結構負けてるじゃんアクセラお兄ちゃん。当麻お兄ちゃんに数多おじちゃんに。あと、スキー場で一回第二位にやられてるし」
一方通行「随分と物知りだなァ、褒めてやるからこっちこい。頭撫でてやるからよォ」カチッ
円周「頭を撫でるのに何で電極のスイッチを入れてるの?」
結標「へー、貴方って上条君と戦ったことあるんだ。喧嘩か何か?」
一方通行「……まァ、そンなところだ」
打ち止め「あとヨミカワにも負けてるよねー。よくゲンコツ食らって伸びてるし、ってミサカはミサカは自分が食らった記憶を思い出して頭を押さえてみたり」
一方通行「アレはこっちがやられてやってンだよ。本気でやれば余裕でやれるし」
円周「でも電極スイッチ入れた時点で負けみたいなものだよねー」
結標「で、結局どうやって倒したの? ゲームの一方通行」
円周「簡単だよー。まず木原一族の仲間になります。木原神拳を取得します。アクセラお兄ちゃんをボコボコにします。以上」
一方通行「それは真っ当なクリアーの仕方なのか?」
円周「ゲームに実装されている時点で、それは正規の仕様なのだあ」
打ち止め「すごかったよねー木原神拳最終奥義。ダメージが9999でカンストしてたし、ってミサカはミサカはあの時の衝撃を思い出しながら語ってみる」
一方通行「絶対ェ正規の方法じゃねェ。チーターっつゥヤツじゃねェのか」
円周「オフラインゲームだからセーフ」
176 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:18:32.79 ID:9mCcFctro
打ち止め「ところでアクセラレータ、ってミサカはミサカは唐突に呼びかけてみる」
一方通行「あン? ホント唐突だな」
打ち止め「ミサカ、ホワイトデーのお返しのプレゼントが欲しいんだけど、ってミサカはミサカは手のひら差し出して要求してみる」
一方通行「ああ、そォか忘れてた。ほらよ」スッ
打ち止め「えっ!? ……何で?」
一方通行「何でって、ホワイトデーだからだろ。つゥか、オマエが要求してきたンじゃねェか、何でそこで疑問を持ちやがる」
打ち止め「いや、だって素直にあなたがプレゼントを渡してくるなんて、今まで前例のないことだから、ってミサカはミサカは動揺を隠しきれなくなりながらも説明してみる」
結標「まあたしかにそうよね。ツンデレ一方通行らしくない行動よね」
一方通行「いつから俺はツンデレとかいう訳の分からねェモンになったってンだ」
円周「まあそれは最初からとしか……いや、待てよ。もしかしたら小学生の頃は素直で純粋な少年だったかもしれない……!」
結標「素直で純粋な一方通行……」
一方通行(ショタ)『ボク淡希お姉ちゃんのこと大好きー!! 一緒にベクトル操作の実験しよー!!』
結標「……素晴らしい!」グッ
一方通行「何勝手に一人で盛り上がってンだオマエ。残念ながら小学生の頃から俺はこンなだよ」
打ち止め「へー、そうなんだ。何か想像できないなーあなたがミサカと同じくらい小さいころなんて、ってミサカはミサカは想像力のなさに歯噛みしてみたり」
円周「でもあれだよね。小学生の頃からこんなってことは、あれから全然成長出来てな――」
ゴッ!
円周「おごごごごごごごごご、これ絶対つむじ増えたっ……! つむじが二つでダブルサイクロン……!」
一方通行「つーわけでオマエにはホワイトデーのプレゼントはきちンと渡した。だからこれ以上変なモン要求してくンじゃねェぞ」
打ち止め「うんそうだね。何はともあれあなたからのプレゼントは素直にうれしいかも。ありがとうアクセラレータ、ってミサカはミサカは笑顔でお礼を言ってみたり!」ニッコリ
一方通行「……おォ、大事に食えよ」
打ち止め「了解、ってミサカはミサカはさっそく包装紙を破いて開封作業に入ってみたり」
一方通行「言ったそばから雑に扱いやがって……」
円周「ねえねえアクセラお兄ちゃん」
一方通行「何だ」
円周「私の分がまだなんだけど」
一方通行「あるわけねェだろ。オマエからは何にも受け取ってねェンだからよォ」
円周「あれー? おかしいなあ? たしか私はずなんだけどなあ? あれー?」
一方通行「オマエの薬品入りチョコレートはきっちりオマエに突き返してやっただろうが」
円周「……そういえばそうだった! くそう、何で薬品なんて混ぜちゃったんだろうひと月前の私」
一方通行「知るか」
円周「ちっ、こうなってしまったら仕方がない。『木原』的にここは撤退するぜ」スタタタ
一方通行「おォ。そのまま帰って二度と来ンな」
結標「ばいばーい。また遊びにおいでー」ノシ
打ち止め「じゃあまた明日ー! ってミサカはミサカは手を振って見送ってみたり」ノシ
―――
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177 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:19:03.30 ID:9mCcFctro
同日 17:10
-第七学区・とある公園-
美琴「…………遅い!」
美琴(まったく、珍しくアイツからの呼び出しだっていうのに何で時間に遅刻するかな)
美琴(でも、今日の呼び出しってことはアレよね。ほ、ホワイトデーの……)
美琴(……も、もももしかしたら、もしかしたらって展開あったりして……な、なんて)
上条「おーい、御坂ー!」タッタッタ
美琴「なっ、アンタちょっと遅いわよ! 10分遅刻よ10分!」
上条「わりーわりー。ちょっといろいろあって」
美琴「アンタが決めた時間なんだから、そういう不足の事態を含めて時間を決めなさいよ」
上条「いやー、こっちもこれからバイトとかあるから、この時間しかないって思ってさ。すまねえ」
美琴「もう! まあいいわ、30分のとか1時間の大遅刻とか、挙句の果てには約束すっぽかすなんてことなかっただけマシよ」
上条「ははは、そんなことないって言えないのが情けねえ……」
美琴「で、よよ用事って何よ。私をこんなところに呼び出して」
上条「ああ。お前バレンタインの時にチョコくれたじゃん。だから、そのお返しにプレゼント渡そうと思ってな」
美琴「えっ、あ、そう。そうだったんだ。そういや今日ホワイトデーだったわねー、忘れてたわー」アセッ
上条「そうなのか。そういうイベントを忘れるくらい忙しかったんだな御坂。悪いなそんな時に呼び出したりして」
美琴「い、いや別にそんなことないわよ。気にしないでいいって」
上条「そうか。だったら喰らえ、上条さんお手製スペシャルデリシャスファンタスティックただのクッキーだ!」スッ
美琴「……要するにただのクッキーってわけよね。いろいろ言ったけど」
上条「そうです。超高級チョコレートとかじゃなくてすみません」
美琴「べ、別にいいわよそういうのは金額じゃないし。というかアンタクッキーとか作れたのね、意外」
上条「上条さんほどの料理スキルがあれば、レシピを片手にクッキーを作ることなど造作のないことだぜ」
美琴「それって別に大した自慢にはならないんじゃない?」
上条「ま、まあな」
美琴「ふーん、まあいいわ。ありがと、ありがたくいただくわ」
上条「おう。じゃあ俺バイトあるから行くわ。またな御坂」タッタッタ
美琴「あ、うん。また……」
美琴「…………」
178 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:19:37.50 ID:9mCcFctro
同日 同時
-柵川中学女子寮・佐天涙子の部屋-
佐天「……ふむふむなるほど。テレポーターは三次元から十一次元へ物体を特殊変換する能力、つまり別次元に干渉できる能力である」
佐天「つまり、並行世界や異世界に物質を転移することが出来てもおかしくはない。またはその逆もまた然りである。
佐天「こういった理論を実証するための研究が密かに行われているという噂」
佐天「ふーん、何かすごそう! 今度白井さんに教えてあげよう、と」
チャララー♪
佐天「はい、もしもし」
美琴『あっ、佐天さんこんにちは。ちょっと電話いい?』
佐天「いいですよー、どうかしました?」
美琴『さっきアイツにホワイトデーのプレゼントってことで、手作りクッキーもらったんだけど』
佐天「ああ上条さんにですか? へー、そうなんですか。それは良かったですねー」
美琴『それが素直に良かったと言えるかどうか微妙なのよ』
佐天「どういうこと……あっ、たしかクッキーって」
美琴『そうなのよ。ホワイトデーでクッキーの意味って『友達でいましょう』じゃない? これってやっぱりそういうことなのかな……』グスン
佐天「あー、えーと、その……、た、たぶん大丈夫じゃないですか?」
美琴『……何で?』
佐天「たぶんですけど、上条さんはそういうつもりで渡したんじゃないと思います。今から名探偵涙子がバリバリの推理をしながら説明します」
美琴『お、お願いします!』
佐天「まず、上条さんがホワイトデーのクッキーの意味を知っているかどうか、それは正直どっちの可能性もあります。なのでこれは置いておきます」
美琴『置いておくんだ……』
佐天「まず御坂さんから聞いてた話からの推測です。上条さんは大変モテモテな人です。事実バレンタインデーにたくさんのプレゼントをもらっていました」
美琴『う、うん。全部義理ってアイツは言ってたけど……』
佐天「いえ、おそらくそれは勘違い。間違いなく本命も混じっているでしょう。まあ、その話は今とは関係ないので置いておきます」
美琴『置いておくなら何で話すの……?』
佐天「いやー、何と言うかいたずらごころっていうかなんというか」
美琴『もう! こっちは真面目に話してるのよ!』
179 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:20:11.82 ID:9mCcFctro
佐天「えへへごめんなさいごめんなさい(御坂さんをからかうのは面白いけどこれ以上はやめとこ)。では続きを」
佐天「大量のバレンタインプレゼントをもらったということは、必然的にホワイトデーに大量のお返しをしないといけないことになります」
佐天「別に返さなくてもいいんですけど、御坂さんから聞いた感じでは上条さんは律儀に返しそうな人だから、間違いなくそういう事態になるでしょう」
佐天「そして上条さんは結構家計が厳しい家庭の方です」
美琴『そうね、いつもスーパーの特売特売言ってるし、バイトしてるらしいし』
佐天「そんな上条さんに大量のホワイトデーのプレゼントを買う余裕はないはず。そこで上条さんは考えました」
佐天「お菓子が買えないなら作ればいいじゃない、と」
佐天「普通に買ったら少し割高になるものでも、業務用のスーパーとかで材料を買い込んで大量生産すれば安上がりになります」
佐天「しかもクッキーは、作る手間もそんなに面倒臭くなく簡単なので、大量生産にはうってつけのお菓子です」
美琴『な、なるほど……』
佐天「ほかにも手作りできるお菓子の種類はありますが、難易度、メジャーさ、それらを考えればクッキーがベスト!」
佐天「だから上条さんはホワイトデーにクッキーを作ることを強いられていた、つまりそんなホワイトデーのお菓子の意味なんて考えてる暇はなかったはずです」
美琴『…………』
佐天「そういうわけなんで、大丈夫ですよ御坂さん。そんな心配なんて無用です」
美琴『……あの、佐天さん?』
佐天「なんでしょう?」
美琴『どのみち大量生産されたクッキーってことは、結局そういう義理的な意味になるんじゃ……』
佐天「…………」
美琴『…………』
佐天「だ、大丈夫ですよ御坂さん! おそらく上条さんはホワイトデーのお返しを全部クッキーで済ませてる=本命の相手なんていないはずなので、まだまだチャンスはありますよ!!」
美琴『い、一体それはどういう推理で導き出された答えなの……!?』
佐天「……め、名探偵涙子ちゃんの勘、ですかね?」
美琴『駄目じゃない!!』
―――
――
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180 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:20:49.49 ID:9mCcFctro
同日 17:30
-第七学区・ファミリーサイド付近のコンビニ-
ウイーン
御坂妹「ありがとうございました、とミサカは感謝の挨拶をします」
芳川「ありがとうございましたー」
御坂妹「…………」ソワソワ
芳川「ふふっ」
御坂妹「何ですか? いきなり意味深な笑みを浮かべて、とミサカは怪訝な表情を浮かべます」
芳川「そろそろ彼が来るから、一見無表情な貴女でも内心ウキウキワクワクなんだろうなあ、とか思ってたら面白くて」
御坂妹「勝手に人の心を妄想して笑うのはやめていただきたいのですが、とミサカは注意を促します」
芳川「あら、間違ってた?」
御坂妹「そうですね。正確にはドキドキワクワクです、とミサカは訂正します」
芳川「大して変わらないじゃない。ちなみにだけど私は今ウキウキワクワクしてるわよ。割と」
御坂妹「あなたのことなど知りませんよ。というかなぜです? とミサカは問いかけます」
芳川「ホワイトデーに踊らされてる人からイイものがもらえるかもしれないからよ」
御坂妹「?」
ウイーン
上条「とあっ! よし、ギリギリセーフッ!」ダッ
御坂妹「……何か一カ月前も同じような光景を見たような、とミサカはデジャヴを感じ困惑します」
芳川「というかいい加減遅刻しそうだからって、正面入り口から入ってくるのやめたら? お客様が居たら失礼よ」
上条「あははすみませんつい」
御坂妹「そもそもギリギリセーフでたどり着いても、仕事の準備ができてなければアウトなのでは、とミサカは正論を述べてみます」
上条「ぐっ、たしかに」
181 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:21:50.91 ID:9mCcFctro
芳川「何でもいいけどとりあえず準備してきたら?」
上条「う、うっす。……あっ、そうだ、二人に渡すものがあるんだけど」
芳川「おっ、お待ちかねのホワイトデーのプレゼントよ」
上条「へっ? そんな期待しても大したもん出ないすよ?」
芳川「別に私はそうでもないんだけどね……ねえ?」
御坂妹「なぜこっちを見るんですか、とミサカは横目で睨みつけます」
上条「まあいいや。俺が作ったクッキーなんすけど。本当に大したもんじゃなくてすんません」スッ
芳川「いえいえ、そんな気にしなくて大丈夫よ。嬉しいわありがとう」
上条「ほら、御坂妹も」スッ
御坂妹「あ、ありがとうございます、とミサカは受け取りながらお礼を言います」
芳川「しかし、男の子でわざわざ手作りするなんて珍しいわね。お料理が好きなのかしら?」
上条「いえ、単純に金無しなんで安上がりのもんで済ましてるだけですよ」
芳川「なるほど。手作りせざるを得ない状況になるくらいもらっているわけか。さすが、ね?」
御坂妹「だからなぜミサカを見るのですか、とミサカは再度問いかけます」
芳川「別に意味はないわ」ニヤニヤ
御坂妹「ぐっ……」
上条「じゃあ着替えて準備してきまーす」テクテク
上条(しかし、結局雲川先輩やイギリスの連中には渡せなかったなぁ)
上条(まあイギリスの連中がここに来ることなんて稀だからしょうがないとしても、雲川先輩くらいは運良く会えるかと思ったけど)
上条(……よくよく考えたら、上条さんに運良くなんてことあるわけなかったな。こんなことなら卒業式の時に連絡先聞いとけばよかったなー)
―――
――
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182 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:22:29.29 ID:9mCcFctro
同日 18:30
-第三学区・スクール隠れ家-
海美「さて、そろそろ時間かしらね」←私服
海美「一体何を食べに行くっていうのかしらね? というかこれ垣根の奢りよね? 何かそういうところケチ臭そうだから割り勘とか言ってきそう……」
海美「サイフここに置いといてやろうかしら」
〜10分後〜
海美「……遅い。あれ? 待ち合わせ時間六時半よね? もう10分も過ぎているのだけど」
海美「もしかして六時半ってあれ? 明日の朝六時半って意味? いや、でもたしか今夜って言ってたはず……」
ガチャ
垣根「おぃーす。待たせたな」
海美「……ふう、よかったわ」
垣根「あん? 何の話だ?」
海美「ええ、私が時間を間違えたわけじゃなくてあなたが無様に遅刻した、ってことがわかったからよかった、って話よ」
垣根「誰が無様だとテメェ」
海美「……ていうか、ちょっといいかしら?」
垣根「何だよ」
海美「あなたの私服ってそんなフォーマルな感じの服装だったっけ?」
垣根「いや違うけど。今日の為に買った」
海美「今日の為? あなた一体今夜どんな店に行くつもりなのかしら?」
垣根「まあ見てのお楽しみっつーところだ。それじゃあ行くぞ」スタスタ
海美「え、ええ」
183 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:22:57.41 ID:9mCcFctro
-第三学区・とある高級ホテル前-
海美「……こ、ここって」
垣根「そう。学園都市の中でもトップクラスの、いわゆる最高級ホテルっつーヤツだ。その最上階にあるフレンチレストラン、そこが今日のメシ食う場所だ」
海美「ちょ、ちょっと聞いてないわよこんなところでご飯を食べるなんて!」
垣根「あん? 言ってなかったっけ?」
海美「言ってなかったわよ! こ、ここに来ることがわかってたら、こんなみすぼらしい格好してこなかったわよ!」
垣根「てか何で今日はオフの格好してんだお前? いっつもキャバ嬢が来てそうなドレス着てんのに」
海美「あれはあくまで仕事着よ。普段から着てるわけじゃないし。だいたい今日は焼き肉とかファミレスとかそういうしょっぼい店に行くと思ったから、こういう服装で来たわけだし」
垣根「誰も焼き肉やファミレスなんて行くって言ってないだろ」
海美「さっきも言ったけど高級レストランに行くなんて一言も聞いてないからね」
垣根「まあいいや。それじゃそろそろ時間だ、行くぞ」
海美「よくないわよ。ちょっと一度戻って着替えてくるわ。こんなみすぼらしい格好で店に入りたくないわ」
垣根「知るか。予約の時間が来るっつってんだろ。そんな戻ってる時間はねえ」
海美「嫌よ」
垣根「……ったく、しょうがねえなぁ」ファサッ
海美「こんなところで能力を使って何をする気? もしかして私の家まで送ってくれるのかしら?」
垣根「そんな面倒なことするか。お前、気を付けしろ気を付け」
海美「? こう?」
垣根「……数値はこんなところか。行くぜ、未元物質(ダークマター)物質化、ドレス」
キュイーン
海美「こ、これは……」←白ドレス着用
垣根「よし、我ながら上出来だな。色は味気ねえ白だが、これなら別に浮かねえだろ」
海美「…………」
垣根「どうした? もしかして気に入らねえって言うつもりじゃねえだろうな? その場合全裸で入店コースっていうもっとみすぼらしいことになるけどよお」
海美「いえ、そういうわけじゃないわ」
垣根「じゃあ何だってんだよ」
海美「ただ素敵なドレスね、って思っただけよ」
垣根「……お、おう。そりゃそうだ、誰が作ったと思ってやがる。つーか時間が来てんだ、こんなところでゴチャゴチャ言ってねえで行くぞ」
海美「そうね」クスッ
184 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:23:29.28 ID:9mCcFctro
-第三学区・とある高級ホテル最上階フレンチレストラン-
ウェイター「――二名でご予約の垣根様ですね。こちらの席へどうぞ」
垣根「おう」
海美(うわっ、ほんとにこのレストランで食事をするのね。まるで夢でも見てるようだわ……)
垣根「どうした? 顔強張ってんぞ? 緊張してんのか柄にもねぇ」
海美「まあね。この店に来るのは初めてだし」
垣根「援交してるときにパパに連れてきてくれるみたいなことなかったのかよ」
海美「援交じゃないし、援交言うなし。たしかにこういうレストランに連れてきてくれる人は居たけど、このレベルのヤツは初めてよ」
垣根「……へー」
海美「だいたいこんな場所で下品な発言やめてくれない?」
垣根「じゃあ何て言えばいいんだよ? パパ活?」
海美「意味的にはそっちのほうが合って……だから、そういう発言をやめなさいと言ってるの」
垣根「へいへい」
ウェイター「こちらが席になります」
海美「!!」
垣根「ほう、こいつは絶景ってヤツだな」
ウェイター「どうぞお掛けください」スッ
海美「すごい、ここって窓際の特等席じゃない!?」
垣根「当たり前だ。俺に相応しい席っつったらここしかねえだろうが」
海美「相応しいかどうかは知らないけど、……へえ、いい夜景ね。ビルの窓からの光がたくさんでまるで星空みたい……」
垣根「この光一つ一つにちんけでカスみたいなヤツらがせこせこ働いてると考えると、笑えて来るよな」
海美「……台無しよ」ハァ
―――
――
―
185 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:24:00.17 ID:9mCcFctro
同日 19:00
-黄泉川家・リビング-
ガラララ
芳川「ただいま」
打ち止め「おかえりなさい! ってミサカはミサカは出迎えの挨拶してみたり」
結標「おかえりなさい。さっき連絡あったんですけど黄泉川さん今日アンチスキルの仕事で、遅くなるらしいですね」
芳川「ええ、私のほうにも連絡がきたわ。だからこれを買ってきたわ」スッ
打ち止め「おお、コンビニのお弁当だ! ってミサカはミサカはレジ袋の中身に興味津々になってみる」
芳川「別に大したもの入っていないわよ。ただの弁当におにぎりくらい」
打ち止め「こんな時間にコンビニ弁当を食べるだなんて新鮮かも」
結標「そうかもね。いつもはちゃんと黄泉川さんが作ってくれるし、遅くなってたら出前頼んでたものね」
芳川「悪かったわね。安物のコンビニご飯で」
結標「いえ、別にそんなことを言ってるわけじゃ」
ガラララ
一方通行「コーヒーコーヒーっと、あン? 帰ってやがったのか芳川」
芳川「帰ってたのよ一方通行」
打ち止め「今日の晩ご飯はコンビニの弁当だよ、ってミサカはミサカは報告してみる」
一方通行「どォでもイイ」
打ち止め「どれが食べたい? 唐揚げ弁当とかのり弁とかあるけど、ってミサカはミサカはあなたの言葉を無視して話を進めてみる」
一方通行「オマエらで適当に食ってろ。余ったのもらう」
結標「無欲ね。というより選ぶのが面倒臭いとか言うつもりかしら?」
一方通行「御名答」
186 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:24:51.10 ID:9mCcFctro
芳川「だったらこのサラダを残しておきましょ。そうすれば野菜分の足りてない彼にはいい栄養補給になるんじゃない?」
一方通行「ふざけンなァ! そンなモン買ってきてンじゃねェぞ芳川ァ! 嫌がらせかコラ」
芳川「何でもいいって言ったのはキミじゃない? 自分の言葉には責任を持ちなさい」
一方通行「クソったれが」
結標「安心して一方通行。それ私が選ぼうとしてたやつだから」
芳川「駄目よ淡希甘やかしちゃ。こういうヤツには厳しくしてやらないと付け上がるだけよ」
結標「いや、私は普通にこれが食べたいだけなんですが……」
一方通行「そォいうわけだ。無様な作戦失敗だな芳川ァ」
芳川「こんなこともあろうかと野菜スティックなるものを買ってきているのだけど」スッ
一方通行「よし、せっかくだから俺はこの唐揚げ弁当を選ぶぜ」スッ
結標「えらくあっさり選んだわね……」
打ち止め「のり弁に入ってる磯辺揚げうまー、ってミサカはミサカはちくわを頬張りながらコメントしてみる」モグモグ
一方通行「……そォだ。芳川、これ受け取れェ」ポイ
芳川「よっと。あら、随分と手荒なホワイトデーじゃない?」パシッ
一方通行「オマエ俺を騙しやがったな? 三倍返しが絶対みてェなこと抜かしやがって」
芳川「誰も絶対とは言っていないわ? キミが勝手にそう解釈して動いただけじゃない?」
一方通行「チッ」
結標「……なるほど。やけに今日の一方通行は準備がいいなあって思っていたけど、芳川さんが裏で動いていたのね」
芳川「人聞きの悪いこと言うわね。ただ彼が私にホワイトデーとは何なのかを尋ねてきたから答えてあげたに過ぎないわ」
一方通行「オマエに聞いたのは最大の失敗だったわけだなァ。反省しねェとな」
結標「うわっ、反省するって言葉がここまで似合わないヤツっているのかしら?」
一方通行「頭ァ叩き割るぞオマエ」
芳川「ま、とにかくありがとね一方通行。ありがたくこのチョコレートセットはもらっていくわ」
一方通行「覚えてろよクソババァ」
芳川「はいはい」
―――
――
―
187 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:25:50.50 ID:9mCcFctro
同日 20:30
-第三学区・とある高級ホテル最上階フレンチレストラン-
垣根「ふぅ、なかなかうまかったな。さっきの肉料理」
海美「それはそうよ。どれだけランクの高い店だと思っているわけ」
垣根「まあでも量は少なかったな。もうちょっと欲しかった」
海美「何というか、その発想が貧乏人臭いわね。ここはそういう店じゃないのよ? わかってる?」
垣根「うっせーな、わかってるっつうの。ただ素直な感想を言っただけじゃねえか」
海美「思っていてもそれは言わないようにするのがマナーよ」
垣根「チッ、面倒臭せー店だなおい」
海美「……それで、何であなたは今日、その面倒臭い店で食事をしようなんて言い出したのかしら?」
垣根「あん? ああ、あれだよ。まず食事をしようって誘ったのは、これがホワイトデーのお返しっつーことだからだ」
海美「えっ、これがホワイトデーのお返しだったの?」
垣根「つか気付かなかったのかよお前」
海美「……言われてみれば、ここまでの行動すべて何をとってもあなたらしくない行い、たしかに気付くポイントはあったわね」
垣根「お前何か失礼なこと言ってんだろ?」
海美「別に。というか何でお返しが食事なわけ? 普通にプレゼントをくれればよかったんじゃない?」
垣根「はあ? お前、俺を誰だと思ってやがる。垣根帝督だぞ? 俺に常識的なホワイトデーなんて似合わねえ。っつーわけで食事に誘ったっつーわけだ」
海美「なるほどね。で、わざわざここを選んだ理由は?」
垣根「ま、それはあとで教えてやるよ。……そろそろだな」
海美「何?」
垣根「サプライズってヤツだ。窓の外を見やがれ」
海美「サプライズをサプライズって言ってやったら意味ないんじゃない?」
垣根「いいから見ろっつーに」
海美「はいはい、……!? こ、これは……!」
モブA「お、おい見てみろよ窓の外。何か巨大な真っ白な花火が上がっているぞ?」
モブB「てかあれって花火なの? 全然消える様子がないんですけど……?」
モブC「すごい……いろいろな形に次々と変化していく」
モブD「どういう原理なんだあれ?」
188 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:26:36.54 ID:9mCcFctro
海美「…………」
垣根「俺の未元物質(ダークマター)に常識は通用しねえ」
海美「あの花火、あなたの仕業?」
垣根「当たり前だ。あんな芸当俺以外じゃ出来ねえよ」
海美「相変わらず趣味が悪いわね。真っ白な花火なんて華やかさの欠片もないわ」
垣根「悪かったな」
海美「……でも」
垣根「あ?」
海美「綺麗ね……とっても」
垣根「……へっ。テメェも十分趣味悪りいじゃねえか」
海美「誰かさんといつも一緒にいるおかげでね」
垣根「人のせいにするなっつーの」
ウェイター「失礼いたします。こちらデセールになります。あの店のチョコレートを使用した、『ブロンディ・オ・ショコラノワール・エ・ショコラブラン』です」スッ
海美「あら、すごいわね。あの店のチョコレートを使っているなんて、さすがね」
ウェイター「こちらのチョコレートは垣根様よりお持ち込みいただいたものです」
垣根「おい余計なこと言ってんじゃねえよ」
ウェイター「申し訳ございません。出過ぎた真似をいたしました」
海美「へー、あなたがわざわざ、ねえ」ニヤニヤ
垣根「チッ、そんな顔で見んなうっとおしい」
ウェイター「ではごゆっくり」
189 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:27:09.76 ID:9mCcFctro
同日 21:00
-第三学区・とある高級ホテル前-
垣根「……ふぅ、やっぱ何か食った気がしねえな」
海美「あれくらいでちょうどよかったわよ。だいたいああいう店はお腹一杯にするのが目的じゃないわ」
垣根「コスパが悪いっつーヤツだな」
海美「……やっぱりあなたには似合わないわね、ああいう店は」
垣根「チッ、まあもう来ることもねえから別にいいけどよお」
海美「そういえばまだ聞いてなかったわね。何でこの店を選んだのかを」
垣根「ああそうだ。これを言っとかなきゃ俺のホワイトデーは終わらねえんだった」キリ
海美「な、何よいきなりそんな真面目な顔して……」
垣根「ああ。これは今日絶対にお前に言っときたい言葉があってな」
海美「……えっ、そ、それって」アセ
垣根「よーく聞け心理定規……いや、 獄彩海美」
海美「ちょ、急に本名で呼ばないでちょうだい、き、気持ち悪い……!」ドキン
垣根「チッ、うるせえな別にいいだろ面倒臭せぇヤツめ。まあいい、よく聞け心理定規」
海美「……は、はい」ドキドキ
垣根「ざまあみろクソガキが!」
海美「……え?」
垣根「お前バレンタインのときに散々俺をガキ扱いしやがっただろうが。だがよお、今日のホワイトデーのお返しを思い出してみろ!」
垣根「高級ホテルで食事。サプライズの花火。こんなもんそこらのガキじゃ出来ねえ。つまり俺は超絶完璧な大人っつーわけだ」
垣根「思い知ったか心理定規! この俺の『大人』なホワイトデーっつーのをよお!」
海美「…………はぁ」
垣根「あん? 何だその残念なものを見た後のため息みてえなのは?」
海美「別になんでもないわ。私ちょっと気分が悪いから先帰らせてもらうわ」
垣根「そーか。じゃあここでお開きだな。お前絶対今日のことを、かけがえのないひと時として記憶の中に永久保存しとけよ」
海美「……そうね」
垣根「あん?」
海美「たしかに楽しいホワイトデーだったわよ。こんなの初めてだったし、たぶん忘れることもないわ」
海美「ありがとうね、垣根」ニコッ
垣根「……お、おぉ」
―――
――
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190 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:27:37.80 ID:9mCcFctro
同日 21:30
-黄泉川家・リビング-
ガラララ
黄泉川「ただいまじゃん! いやーすごかったすごかった」
結標「おかえりなさい黄泉川さん。すごかったって何がですか?」
黄泉川「何か九時前くらいに真っ白な花火が上がってたんだけど、それがどういう仕組み知らないけど10分くらいずっと形を変えながら空に滞在してたじゃんよ」
結標「へー、学園都市の新しい技術なのかしら?」
一方通行「こンな時期に花火を上げるなンて酔狂なヤツがいたモンだな」
黄泉川「しかしみんな遅くなって悪かったじゃん。コンビニ弁当を晩飯にさせちゃって」
結標「たまにはいいですよ。黄泉川さんも今日くらいゆっくりしてください」
黄泉川「ほんと悪いじゃんねー。しかし一方通行、お前がこの時間にこんなところにいるなんて珍しいな。いっつも部屋かソファで寝てんのに」
一方通行「あン? 居たら悪いかよ」
黄泉川「別に。なんなら久しぶりに将棋でもするかー?」
一方通行「そンな勝ち負けの決まったゲームなンざしたくねェよ」
黄泉川「まあ私も正直疲れてるからやりたくないけどな」
一方通行「だったら誘ってくるなよ」
結標「あっ、黄泉川さんお茶でも入れてきましょうか? それともコーヒーがいい?」
黄泉川「ありがとうじゃん。お茶で頼む」
結標「はーい」テクテク
一方通行「……黄泉川」
黄泉川「何じゃん?」
一方通行「疲れてるっつったな。だったらコイツでも食ってろ」スッ
黄泉川「うん? おっ、何これチョコレート?」
一方通行「疲れてるときには甘いもの、ってな」
黄泉川「……ぷふっ」
一方通行「あァ?」
191 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:28:17.81 ID:9mCcFctro
黄泉川「ぷわっははははははははははははははははっ!!」
一方通行「な、何を笑ってやがる!?」
黄泉川「くふっ、い、いやーだってお前がそんな似合わないセリフを言うなんて思わないじゃん?」
一方通行「チッ、俺だってわかってンだよ、らしくねェなンてよォ」
結標「そうよね。ほんと、今日の貴方はいろいろと変わってるわよね。お茶置いときますね黄泉川さん」ガチャ
黄泉川「おっ、ありがとじゃん」
一方通行「皆まで言うな。面倒臭せェ」
黄泉川「これってあれか? 今日ホワイトデーだから、バレンタインのお返しってやつ?」
一方通行「そォだよ。分かったら黙って受け取ってろよ」
黄泉川「はいはいありがとじゃん。へー、これってあの有名な店のチョコレート? すごいじゃん」
結標「ほんとすごいですよね。どんな手を使って手に入れたのやら……」
一方通行「言ったじゃねェか。常盤台の知り合いに頼ンだってよ」
結標「ほんとかしらね?」
一方通行「嘘は言ってるつもりはねェ」
黄泉川「しかし、今日はお疲れじゃんね。お前たくさんもらってたから今日一日大変だったんじゃないか?」
一方通行「まァな」
黄泉川「そうか。……で、どうだった? 今日のホワイトデーの感想は?」
一方通行「……‥…」
一方通行「二度と御免だ。こンなクソイベント」
―――
192 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/20(金) 22:30:21.88 ID:9mCcFctro
心理定規ちゃんとゴーグル君の名前が解禁されてたから改名させたけど違和感すげンだわ
次回『焼き芋大会』
193 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:46:23.69 ID:8jcO/JJGo
とくに書くことねーや
投下
194 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:47:19.86 ID:8jcO/JJGo
9.焼き芋大会
March Forth Saturday 20:00
-黄泉川家・食卓-
一方通行「ハァ? 明日焼き芋大会に行って運営を手伝えだァ?」
黄泉川「そうじゃん」
結標「その焼き芋大会ってどういうのなんですか?」
黄泉川「ああ、町内会の主催のヤツじゃん。近くのでっかい公園を借りてやる子供向けな感じの」
一方通行「つーか、何でそンなモンの手伝いに行かなきゃいけねェンだ?」
黄泉川「いやー、実は私もその大会の係員の一人だったんだけどさー、ちょっとアンチスキルの仕事で緊急なヤツが入ってな」
結標「なるほど。それで代わりに私たちに行ってこい、と」
黄泉川「そうそう」
一方通行「オイ、その大会とやらは町内会でやってるヤツだろ? だったらその役員の中に暇なヤツくらい何人かいるだろ。ソイツらに頼めよ」
黄泉川「いやー、そうしたいのはやまやまなんだけどなー、こんな夜分に連絡するのも悪いし、ぶっちゃけると私、町内会の中では結構若年者だから頼み辛くて……」
一方通行「えっ? オマエの年齢ならもっと上の――」
ゴッ!
結標「それにしても何で私たちなんです? 芳川さんは出られないんですか?」
芳川「残念。私はバイトよ。まあ、休みだとしても行きたくはないけどね」
黄泉川「薄情な親友じゃんね」
一方通行「……まあ他に頼めるヤツが居ねェことはわかった。だが欠員は一人だろ? だったら一人だけ行かせりゃイイだろォが。俺を巻き込ンでンじゃねェ」
黄泉川「運営するのは大人たちだからな。その中に子供一人に行かせるのは酷だろ? だから二人で行けば怖くない、って感じじゃん」
一方通行「そォか。だったら結標はしっかりしているから問題ねェ。安心して任せられる」
結標「何よ? 私が行くことは確定しているわけ?」
一方通行「どォせ暇だろうが」
結標「それは貴方にも言えることじゃない? ちなみに昼寝で忙しいはなしね」
一方通行「クソが」
195 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:48:00.92 ID:8jcO/JJGo
打ち止め「はいはーい!! だったら代わりにミサカが行くよ、ってミサカはミサカは挙手して志願してみたり」
一方通行「一番の不安要素は黙ってろよ」
打ち止め「ぶーぶー」
黄泉川「そういうわけだから、二人とも頼むじゃん。手伝ってくれたら焼き芋一個ただで食べさせてくれると思うからさ」
結標「……まあ、別に明日はすることないからいいですよ。参加する側じゃなくて、運営する側ってのも面白そうだし」
一方通行「つゥか、金取るのかよこの焼き芋大会」
黄泉川「ちなみに参加費三百円じゃん」
一方通行「俺らの日当三百円かよ」
打ち止め「三百円か……それならミサカのお小遣いでも大丈夫そうだね、ってミサカはミサカは明日の予定が出来たことを喜んでみたり」
一方通行「チッ、オマエも来るのかよ」
打ち止め「うわっ、露骨に嫌な顔するね。慣れない環境の中だったら知り合いが一人でも多い方が気が楽になったりするよ、ってミサカはミサカは知ったようなことを言ってみたり」
一方通行「慣れない環境だろうと気なンて重くならねェよ」
芳川「あら。スキー旅行の行きの時、車の中で風斬さんと二人きりになってものすごく動揺してたキミがそれを言うのかしら?」
一方通行「何だと?」
結標「そういえばメールでSOS出してきてたっけ。あれは面白かったなあ……」
一方通行「変な記憶呼び起こしてンじゃねェよ!」
黄泉川「じゃ、二人ともよろしくじゃん」
結標「はい」
一方通行「面倒臭せェ」
―――
――
―
196 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:49:00.16 ID:8jcO/JJGo
March Third Sunday 13:00
-第七学区・とある公園-
一方通行「……はァ、今日ほど面倒臭せェと思ったことはねェな」
結標「そのセリフ、今までに何回も聞いたことあるような気がするのは気のせいかしら?」
打ち止め「よーし、今日は焼きまくるぜー! ってミサカはミサカは背中に大きな気合の炎をまとっている気分になってみたり」
結標「そういえば今日は円周ちゃんいないのね。いつもこういうイベント事のときって一緒に付いてきてるイメージあるけど」
打ち止め「誘ってみたんだけど、何か今日は実験で忙しいとか言ってて断られちゃったんだ、ってミサカはミサカは説明してみる」
結標「そう。それは残念ね」
一方通行「うぜェのがいなくてせいせいするがな」
結標「……あっ、設営のテントが見えてきたわ。たぶんあそこが会場じゃない?」
打ち止め「よーし、ならばいざ突撃じゃー! ってミサカはミサカは指をさしながら駆け出してみたり」タタタ
一方通行「走ンな! コケて怪我でもされたら面倒だ」
打ち止め「コケないよーだ! ってミサカはミサカは気にせずダッシュ!」ダダダ
結標「子供は元気よねー」
一方通行「うっとォしいだけだ」
結標「こんにちはー」
係員1「おやこんにちは。話は聞いてるよ、黄泉川さんの代理の方たちだね?」
結標「結標です。至らぬ点が多々あると思いますが、本日はよろしくお願い致します」ペコ
係員1「これはご丁寧に。こちらこそよろしくね」
打ち止め「おおー、アワキお姉ちゃんが家では見せたことないような大人な対応をしてる、ってミサカはミサカは動揺を隠しきれずにいたり」
一方通行「やっぱ俺いらねェよォな気がして仕方がねェンだが」
打ち止め「そうだね。あなたが出ていっても何もできなさそう、ってミサカはミサカは同意してみる」
一方通行「オイ、それはどォいう意味だクソガキ」
結標「何やってるのよ一方通行。こっちに来て自己紹介しなさいよ」
197 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:50:04.70 ID:8jcO/JJGo
一方通行「一方通行だ」
打ち止め「打ち止めでーす! ってミサカはミサカは自己紹介してみる」
係員1「はいよろしく。ちなみにこの子は……」
打ち止め「ミサカはお手伝いさんじゃなくて、このなけなしの三百円を持ってきて焼き芋を食べに来た参加者でーす、ってミサカはミサカは百円玉三枚を見せつけてアピールしてみたり」
結標「すみません。この子一人じゃここまで来れるかわからないので、先に連れてきちゃったんですよ」
係員1「なるほど。……そうだ、始まるまで暇だろ? なら君も手伝ってくれないかな? そうしたら参加料をタダにしてあげよう」
打ち止め「えっ、ほんと? 手伝う手伝うー! ってミサカはミサカはやる気アピールを発してみたり」
結標「いいんですか?」
係員1「構わないよ。それに始まるまで一時間もあるんだ。君たちもこの子が目に届く範囲にいたほうが助かるんじゃないかな?」
結標「ありがとうございます。ところで私たちは何をすればいいんですか?」
係員1「そうだね。君たちは机と椅子の設営を手伝ってもらおうかな」
結標「机と椅子を?」
係員1「そうそう。長机とパイプ椅子があるからそれを運んで、組み立てて並べてほしいんだ。すでにやってる係の人がいるから詳しくはその人に聞いてくれ」
結標「分かりました」
係員1「あと君たちはお客さん、要するに子供たちの対応も手伝ってもらおうと思っているのでそのつもりでいてくれ」
一方通行「は?」
打ち止め「了解! 子供の対応なんて全部ミサカに任せなさい、ってミサカはミサカはお姉さんアピールをしてみたり」
係員1「いや、君はそのときはお客さんとして参加してくれればいいよ」
打ち止め「そっかー、それは残念だね、ってミサカはミサカは指をくわえてみる」
係員1「じゃ、頼むよ」
結標「分かりました」
-机・椅子設営場所-
係員2「おっ、黄泉川さんとこの居候さんたちだね。今日は来てくれてありがと」
結標「いえ。ところでどういう風にやればいいです?」
係員2「ああ、あそこに積んである長机とパイプ椅子をこっちに持ってきて、組み立てて並べていくんだよ」
係員2「並べ方は長机を二つ横に並べて一つの島を作る。一つの島には左右三つずつ合計六つのイスを並べる。このセットを十セット作ることになる」
一方通行「つまりこれは六十人が定員の大会っつーことか?」
係員2「まあそれくらいだね。椅子の予備はあるからある程度は許容できるよ。まあでも、今頃の子供はこういう古臭いイベントに参加したがらないからねー、埋まることはないと思うよ」
結標「もしかしたら人がまったくこない、みたいなことになるってことですか?」
係員2「いや、それはないよ。近くの養護施設の子たちが来たりする予定だから、ある程度は席は埋まるよ。人が居なくて中止はまずないね」
一方通行「俺たちのやることは無駄にはならねェってことだな」
結標「ちょっと一方通行言い方悪いわよ?」
係員2「ははは、いいよいいよ。それじゃあ並べていこうか」
198 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:50:59.70 ID:8jcO/JJGo
結標「……しかし、机と椅子が積んである場所から設営場所までそこそこ距離があるわね」
打ち止め「そうだねー。いちいち何回も往復しなきゃいけないんだね。それにミサカにとっては結構重そう、ってミサカはミサカは自分の細腕を見ながらげんなりしてみる」
一方通行「面倒臭せェ。結標、ここはオマエの能力を有効活用する場面だ」
結標「私の?」
一方通行「ああ。長机二本、パイプ椅子六つを一セットになるよォにして、設営場所まで移動させろ。そォすりゃあとは組み立てるだけの作業になる」
結標「また私ばかり働かせるつもりね? 雛祭りのときみたいに」
一方通行「能力の有効活用だ」
結標「貴方でも出来るでしょうに」
一方通行「出来るが、オマエがやるより絶対に遅くなるだろうから無駄な時間を過ごすことになる。なにより電極のバッテリーの無駄遣いはしたくねェ」
結標「私だって脳のブドウ糖大量消費するんですけど?」
一方通行「この後クソ甘ェ焼き芋食うンだからプラマイゼロだろ」
結標「……はぁ、わかったわ。やりますやらせていただきますよ」
打ち止め「おおっ、アワキお姉ちゃんの超能力ショーの開幕だぜ、ってミサカはミサカは目を輝かせながら胸をときめかせてみたり」キラキラ
結標「係員2さーん」
係員2「どうかした?」
結標「かくかくしかじかなんでだいたいの配置予定を教えてもらませんか」
係員2「へー、君ってテレポーターなんだ。すごいねえ。それじゃあこれが配置図だ」ペラッ
結標「ありがとうございます」
係員2「がんばってくれ」
結標「えーと、この配置だと島と島のスペースがだいたい2〜3メートルくらいになるのかな?」
結標「まあ、細かい調整は組み立てるときにすればいいから、適当に飛ばせばいっか」スッ
シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン!
結標「ざっとこんなもんか」
打ち止め「おおっー! さすがアワキお姉ちゃん鮮やかなお手並みだ! ってミサカはミサカは称賛の拍手を送ってみたり」パチパチ
一方通行「へェー、前より演算の速度上がってンじゃねェか?」
結標「それはそうよ。雛祭りの時に散々能力使わせられたのだから。配置から片付けまで」
係員2「お見事だねー。この分じゃ設営はすぐに終わりそうだね」
打ち止め「よーし、それじゃあ組み立てよー! ミサカに続けー! ってミサカはミサカは隊長気分で先陣を切ってみたり」タッタタ
一方通行「オマエ組み立て方分かンのかよ?」ガチャリガチャリ
打ち止め「知ってる? ああいうのって適当にやっても誰でも組み立てられるように設計されているんだよ? だからやったことなくてもだいじょーぶ! ってミサカはミサカは博識ぶってみたり」
一方通行「誰でも、っつゥ範疇にクソガキは含まれてねェだろ」
―――
――
―
199 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:51:49.61 ID:8jcO/JJGo
同日 13:30
ワイワイガヤガヤ
結標「あっ、設営が終わったと思ったら、いつの間にか結構人が来てるわ」
係員2「あれは近くの養護施設の子たちだね」
一方通行「ざっと見た感じ三十人っつゥところか」
打ち止め「見たところそれ以外の人たちもいるよ。見た目中学生とか、高校生の人たちもぽろぽろ見かけるね、ってミサカはミサカはざっと公園を見回してみたり」
結標「たぶん兄弟とか近所で仲良くしてる小さい子の付き添いでしょうね」
係員1「おっ、終わったみたいだね。じゃあ君たちにはこれからやることをざっと説明するよ」
結標「お願いします」
係員1「まずこの焼き芋大会の流れなんだけど、君たちが作ったブースで子供たちがサツマイモに濡れ新聞とアルミホイルを巻く」
係員1「そのあと別の係員が作った焚火で芋を焼く。だいたいこれが一時間くらい。その一時間の待ち時間に子供たちはゲームとかして遊んで時間をつぶす」
結標「ゲームですか?」
係員1「ボールを用意してるからドッジボール大会でも開こうと思っているけど、まあ強制とかじゃないから適当に自由にしてもらって構わないよ」
係員1「で、それで一時間くらい経ったら完成すると思うからまたブースに戻って実食。終わったらお土産にお菓子を渡して終わりって感じ」
結標「なるほど。それで私たちのやる仕事っていうのは?」
係員1「君たちはブースでの焼き芋の準備とゲーム中の子供たちを見守るのが役目だよ。あっ、ちなみに焼き芋の準備のときに君たちも自分の分も作っておいてくれ」
係員1「焼き芋の準備のときはHとIの島を君たちは見ていてくれ」
係員1「まあ、あとは終わった後の片付けも手伝ってもらおうかな。遠めで見たけど君はなかなか便利な能力を持っているようだ」
結標「ありがとうございます。任せてください」
係員1「それじゃあ時間までゆっくりしてていいよ」
結標「わかりました」
結標「――というのが私たちの役割よ」
一方通行「面倒臭せェ」
結標「言うと思ったわ」
200 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:53:06.54 ID:8jcO/JJGo
一方通行「ただでさえこのクソガキの子守で面倒だっつゥのに、他のガキどもに構ってる暇ァあるかよ」
打ち止め「大丈夫だよ。ミサカは平気だから安心して自分の仕事に臨むといいよ、ってミサカはミサカは胸を張ってみる」
一方通行「オマエが一番安心できねェっつってンだろォが」
結標「しかしだんだん人が増えてきたわね。あれならブースのほとんどは埋まりそう」
一方通行「こンなくだらねェ行事によく参加できるモンだ」
結標「あら、こういうイベントで思い出を作っていくのが普通じゃない? ましてやあの年代の子たちになると」
打ち止め「そうだそうだー!! そういうわけだからミサカをもっとイベントごとに連れてけー!! ってミサカはミサカは抗議デモのごとく要求してみたり」
一方通行「うるせェ――ッ!?」ゾクッ
打ち止め「ん? どうしたの、ってミサカはミサカは首をかしげてみる」
一方通行「……このニオイ」
結標「ニオイ? ああ、たしかに焚火の葉っぱが燃える特有のニオイはするわね」
打ち止め「おおっーたしかにそうだ。何か悪いものを肺に吸い込んでる気がしてすごいねー、ってミサカはミサカは深呼吸しながら言ってみたり」スー
結標「焼いてるのは落ち葉とかだから身体に悪いものはないと思うけど、深呼吸するのはやめときなさい」
一方通行「…………」ガチャリガチャリ
結標「ちょっと一方通行? どこに行くつもりよ」
一方通行「トイレ」ガチャリガチャリ
結標「あっ、そう。でもそっち――」
一方通行「すぐ戻る」ガチャリガチャリ
結標「……うん」
結標「…………」
打ち止め「どしたのアワキお姉ちゃん?」
結標「いや、アイツトイレがある方とはまったくの逆方向に歩いていったのよ」
打ち止め「そうなんだ。だったら教えてあげればよかったんじゃ、ってミサカはミサカは当然のことを聞いてみる」
結標「何か……、そういうこと言えるような表情じゃなかったのよ、アイツ」
打ち止め「へー、あれじゃないかな。おしっこ漏れそうなんだよきっと、ってミサカはミサカは名推理を披露してみたり」
結標「それって名推理なの?」
201 :
◆ZS3MUpa49nlt
[saga]:2021/08/27(金) 19:54:07.76 ID:8jcO/JJGo
フレンダ「フレメアー! お姉ちゃんここのベンチに座って休んでるから時間になったら教えてー」
フレメア「えー、お姉ちゃんも一緒にやろうよバイオハザードごっこ。お姉ちゃんがゾンビ役で私が配属初日の新米警官役」
フレンダ「ごめんねー。私そんなバイオレンスな遊びに付き合えるほど元気じゃないって訳よ。昨晩遅くまで出かけてた疲れが今になってたたってきてだるい」
フレメア「にゃあ。今日一緒に焼き芋大会に行くことは約束してたはず。それなのに遅くまで出かけてたなんて、大体お姉ちゃんが悪い」
フレンダ「私にもいろいろあるって訳よ。だからほんとマジで休ませて。遊びならまた今度付き合うからさー」
フレメア「もう! しょうがないなあ。ここは私が大人になろう。私一人でバイオハザードごっこやるよ。ゾンビ役は……ここにいる人たちみんなだ!」タッタッタ
フレンダ「はいはい、怒られない程度に頑張ってねー……ふう、やっと静かになった。ちょっと仮眠でも取ろう」ゴロン
一方通行「オイ」
フレンダ「……ゲッ、だ、第一位!?」
一方通行「オマエ、こンなところで何をしてやがる」
フレンダ「えっ、ええっと……」アセッ
フレンダ(や、やばい。こんなところで第一位と遭遇するなんて思ってもみなかった訳よ。ど、どうする私……!?)
一方通行「他のアイテムの連中もいるのか?」
フレンダ「い、いやいないと思うよ。今日はプライベートでここに来たって訳よ」
一方通行「暗部組織のオマエの言葉なンざ一ミリも信用できねェな」
フレンダ「別に信用してくれなくてもいいよ。アンタがいくら警戒しようが他のメンバーはここには来ないから無駄骨を折るだけって訳」
一方通行「まァイイ。で、オマエはこンな場所で何をやっている。まさか焼き芋大会に参加しに来た、とかいう似合わねェ言葉を言うわけじゃねェだろォな?」
フレンダ「えっ、何で分かったの?」
一方通行「……はァ、面倒臭せェ」
フレンダ「ベクトル操作って相手の思考を読むチカラでもあるの? うんたらかんたらのベクトル操って解析、みたいな?」
一方通行「ンなモンねェよ。ここが焼き芋大会の会場で、その会場のベンチで寝てるヤツならたぶン参加者だろう、そォ思っただけだ」
フレンダ「ってことは、アンタもこの焼き芋大会に参加するつもりな訳?」
一方通行「不本意だがな。それに俺は参加者側じゃなく運営側だ」
フレンダ「へー、似合わなっ」
一方通行「だから不本意だっつってンだろ。家主に頼まれて仕方がなく手伝っているだけだ」
フレンダ「あーそう。ま、正直アンタが何でここにいるのかとかどーでもいいけど」
一方通行「オマエはどォして焼き芋大会なンて参加してンだ? オマエこそ柄じゃねェだろこンな平和ボケした催し」
フレンダ「私がいつでもどこでも暗部モードだとか思わないでよ? まあ私だって不本意だってところは一緒だけどね」
一方通行「あン?」
フレンダ「あそこを見て」スッ
フレメア「ふりぃずっ! バンバンッ!」
子供1「うわあ、やられたー」
フレメア「ゾンビはやられたー何て言わない! 『あうぅん……』って感じで死んでいく!」
子供2「それってゾンビがやられたときのセリフだっけ?」
子供3「というか何で鬼ごっこしてたのにいつの間にかゾンビごっこになってんの?」
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