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【ミリマスSS】ロコアート防衛戦線24時
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27 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:28:44.32 ID:Rn+1RG8T0
「……これは、何?」
クイズ大会で活躍できるほどの知識量を誇る秋月律子ですら、その物体が何なのか見当もつかず、またこの物体を表現する方法を持ち得なかった。
簡素な言葉を用いれば「ピンクと紫の中間くらいで斑状のグラデーション」「表面には不規則な凹凸があるが、柔らかそうに見える」「緩く回転している」となるだろうか。
誰かのイタズラだろうか。近づいてみて光源を探したり、手で周囲を遮ったりしてみても、物体は変わらずプカプカと浮いていた。気流の影響も受けていないようだ。
「イタズラにしては手が込んでるわね……。こんなことが出来るのは」
「それはあくうか……サブスペースにストックしたロコアートの『概念』だけをリアルワールドにアピアランスさせたロコアートなんですっ!」
「……はぁ」
秋月律子は頭を抱えた。
28 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:29:31.31 ID:Rn+1RG8T0
この謎の物体がこのまま無害でいてくれれば良いのだが、サブスペースだのアピアランスだの、ファンタジーの域に突入している事象だ。既に765プロは時間渡航や宇宙遊泳、果ては異世界転送まで達成しているため説得力に欠けるが、厄介ごとは無いに越したことは無いのだ。
亜空間の定義は識者ごとに異なるが、いずれも何らかの物理法則が捻じ曲げられた超常現象の類であり、この事象が大きなトラブルを引き起こしうるものであることを律子は直感的に理解していた。
ただでさえ765プロはNASAやタイムパトロール、SCP財団に目をつけられているのだ。ここで派手な騒ぎは起こしたくない。
29 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:30:16.76 ID:Rn+1RG8T0
「ロコ、バカなことやってないで片付けなさい」
「リツコ。リツコもロコアートをデストロイするんですか?」
「デストロイって……、私はみんなが危なくないように場所を弁えなさいって言っているだけよ」
「うぅ……せっかくみんなの邪魔にならないようにサブスペースまでクリエイトのに……」
それでクリエイト出来てしまっているので困る。彼女がSCP財団に連れ去られないように気をつけなければならない。
ロコが小動物のようにプルプルと震えている。ここ最近、爆発騒ぎやら解体工事やら、青羽さんがせっせと後処理をしている様子を知っている律子は、どうしてもロコを擁護することは出来ない。
悪気は無い。それは分かっている。ただ、あまりにも被害が大きい。
「ロコ、あのね……」
「ううぅぅ〜! ロコは、ロコは……ッ!」
「あっ、コラ!」
ついにロコは走り出してしまい、勢いよく事務室の扉を飛び出していった。
30 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:30:56.87 ID:Rn+1RG8T0
「はぁ〜」
律子がもう一度大きなため息をついた。
事務所では相変わらず謎の球体がぷかぷかと浮かんでいる。よく見ると色が微妙に変化している。ピンクと紫に加えてオレンジのようなマーブル模様もジワジワと浮かび上がってきている。表面も、なんだか湿ってきているようだ。触れないので実際に湿っているのか分からないが。先ほどより若干大きくなっているようにも見える。
触れることは出来ないため、事務所のスペースを取ることは無い。半透明であるために視界が遮られる危険も無い。確かに、このまま何も起こらなければ無害な存在だ。
「ロコもロコなりに、いろいろと考えてくれてはいるんでしょうけど……」
ロコが帰ってきたらお茶でも淹れて、話を聞いてあげましょうか。
律子は大げさにそう口に出した後、ゆっくりと視線を横に移した。
「いつまで寝たふりをしているんですか、プロデューサー殿」
机に伏せたまま嵐が過ぎ去るのを待っていた男が、ギクリと肩を揺らした。
31 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:31:39.73 ID:Rn+1RG8T0
「ロコ、ここに居たのか」
「プロデューサー」
青い空と白い雲のコントラストが明るく輝く。気温は高いが潮風が強く、長居するなら何か羽織る物が欲しくなる陽気だ。
「律子も別に怒ってないから。一緒にお茶でも飲もうってさ」
「……戻りません」
「ロコ」
ロコは屋上の手すりに手をかけて外を眺めたまま、顔を合わせようとしない。
風に揺られた大きな髪束が頭を引っ張る。その力に負けないように必死に踏ん張っているようにも見えた。
「ロコにとって、シアターはニューウェイブなパッションが溢れている場所なんです」
「……うん」
「ロコは、その場所で受けたインスピレーションを、みんなとシェアしたくて、」
「そうだな。だけど」
「だから、エクスプロージョンされたりすると、悲しいです」
「ロコ……」
32 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:32:28.46 ID:Rn+1RG8T0
『どうしよう』
その言葉が頭の中でグルグルと回った。
またロコが妙ちくりんなロコアートを作って律子から雷を落とされ、片付けたくないと駄々をこねるロコをわしゃわしゃと宥めながら事務室に引っ張っていって、一緒にごめんなさいして終わり。そう考えていた。ポケットの中で握っていた飴玉をグシャリと握りしめた。
全然そんな雰囲気じゃないな。努めて明るく接しようと緩めていた口元にキュッと力を込める。
こちらを見ようともしないロコに、なんて声を掛けようかと考えながらゆっくり、ゆっくりと近づいていく。
33 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:33:09.47 ID:Rn+1RG8T0
「それ以上ロコにクローズしないでください。ランドマインがエクスプロージョンしますよ」
「……!」
靴の裏が屋上のコンクリートに縫い付けられる。息を吐けない。吸えない。ロコの表情は伺うことが出来ないが、その口から発された言葉は冷たく、潮風の中でもハッキリと俺の耳に突き刺さった。
ロコは動かない。近くの公園ではしゃぐ子供の声が妙に大きく聞こえる。屋上の様子は一見いつもと変わらないように見える。ただ、施工業者にも顔が効くロコならば、むき出しのコンクリートを斫って、何かを埋めて平坦に均す程度なら一晩もあれば十分だろう。
ロコはこちらを向かない。これ以上近づいたら、ということはこのまま回れ右すれば少なくとも安全なのだろう。
34 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:33:59.87 ID:Rn+1RG8T0
「……いや、違うな」
プロデューサーは軸足に力を込めて、一歩を前に踏み出した。
「なっ、ランドマインが……」
「ロコは人を傷つけるようなアートは作らない」
「うぅ……」
「ようやく顔が見えたな」
ロコのすぐ横の手すりを掴むと、ロコはバツが悪そうにこちらを見上げた。
その顔はイタズラがバレた子供のようでもあり、業務を完遂できなかった大人のようでもあった。
「戻るか?」
「イヤです」
「そっか」
やれやれ仕方ない。ポケットの中から適当な飴玉を取り出して、ロコの手に無理やり押し込める。
「ロコはベイビーじゃありません」と渋られる。だが、もう一つ飴玉を取り出して俺が舐め始めると、観念したのかロコも飴玉の袋を破いた。
コロコロと飴を舐める音を風が吹き流していく。
35 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:34:47.41 ID:Rn+1RG8T0
「俺さ、美的感覚はサッパリなんだけど、ロコが楽しんでいるっていうことと、周りにその楽しさを伝えたいってことは分かるよ」
「……でもロコアートをブレイクするじゃないですか」
「そりゃあ危ないのはダメだ。お客さんの邪魔になるのもダメ。劇場はみんなのモノなんだから」
「でもロコは、スペシャルなプレイスごとのフィーリングを」
「そう、それだ。折角ロコが想いを込めてアートを作っているのに、その想いが伝わる前に片付けられてしまっている。それが問題」
「シェアリングがプロブレム……」
なんとか頭を回しながら、ロコの説得を試みる。こうした時に口を突いて出る言葉は大抵が本心で、言葉に出すことによって自分の考えもまとまっていくものだ。
ロコは何やらムムムと考え込んでしまっているようだ。こういう時のロコは下手に話しかけても梨の礫だろう。風に合わせて揺れるカモメをぼんやりと眺める。
36 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:35:25.56 ID:Rn+1RG8T0
「ロコは、もう少しリツコやコトハとマインドシェアリングしないといけなかったのかもしれません……」
「うん、それが良いと思う。じゃあ事務室に戻ろうか」
「はいっ!」
ロコの良い所。ちゃんと反省できるけど、その反省を必要以上に引きずらないところ。アート活動に限らず、アイドル活動でもその良い所はちゃんと活きている。
だからと言って凹んでいないわけではない。引きずらないから周りには伝わりにくいだけで、ロコも迷うし悩むし、時には泣いたりもする。
今回の一連の騒動もロコなりに考えた結果なのだろう。流石に亜空間はよく分からなかったが。
「そういえば、あの亜空間ってやつ、どうやってるの?」
「あれはアカネドールがアウトブレイクした時のエンジニアリングをアレンジしてですね……」
「え?」
37 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:36:18.05 ID:Rn+1RG8T0
屋上から事務室に戻ると、全ての空間がオレンジ色、ピンク色、紫色の何かで満たされていた。脳に直接「アカネチャン……アカネチャン……」という信号が送られてくる。音が聞こえているわけではない。なにこれ怖い。
「ロコーーッ!! 早く何とかしなさい!!」
「サブスペースのロコアートがアカネにインベーダーされているんですか!? これは一体……!?」
「ハハハ、これは流石にマインドシェアリングできないな」
「プロデューサー殿も笑ってないで、どうにかしてくださいよ!!」
「えっと、あの、ロコは、その、そ……」
「ソーリーです〜〜〜!!!」
「ロコーッッ!!! 待ちなさいーー!!!」
亜空間ロコアートは麗花さんがストローで吸ったら無くなりました。
曰く、「プリンと茜ちゃんの真ん中の味がして、美味しかったです!」とのこと。
めでたしめでたし
38 :
◆ivbWs9E0to
[sage]:2021/06/12(土) 07:37:11.02 ID:Rn+1RG8T0
終わりです。HTML依頼出しています。
ロコアートを大切に保護してあげたい。
39 :
◆NdBxVzEDf6
[sage]:2021/06/12(土) 09:47:08.22 ID:4gQ3DqGx0
頭にミリオンキメてますな
乙です
>>2
ロコ(15) Vi/Fa
http://i.imgur.com/Xnfi1iN.png
http://i.imgur.com/zbhE4XZ.png
春日未来(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/PVO0n4P.jpg
http://i.imgur.com/RqgSNtq.jpg
>>5
青羽美咲(20) Ex
http://i.imgur.com/N78dpoq.png
>>6
田中琴葉(18) Vo/Pr
http://i.imgur.com/PswNrWf.png
http://i.imgur.com/NGhomXO.jpg
>>7
ジュリア(16) Vo/Fa
http://i.imgur.com/fAvSAp4.jpg
http://i.imgur.com/F55ippY.png
>>14
望月杏奈(14) Vo/An
http://i.imgur.com/G751lFY.png
http://i.imgur.com/zFDBDqs.png
>>22
大神環(12) Da/An
http://i.imgur.com/5fO8UEL.png
http://i.imgur.com/RBbUGME.jpg
>>26
秋月律子(19) Vi/Fa
http://i.imgur.com/QwqjxMY.png
http://i.imgur.com/iCJLoUg.jpg
>>37
北上麗花(20) Da/An
http://i.imgur.com/E25Yxta.png
http://i.imgur.com/PVxLarv.png
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/12(土) 10:50:48.51 ID:IWC7MtyDO
プリンと茜の真ん中……茜は食べられませんがな
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