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【ミリマスSS】ロコアート防衛戦線24時
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1 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:07:48.99 ID:Rn+1RG8T0
アイドルマスターミリオンライブ!のSSです。
地の文がありますのでよろしくお願いします。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1623449268
2 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:09:57.96 ID:Rn+1RG8T0
「ああぁっ!!!!」
耳を突き刺すような轟音と共にロコアートが爆発した。
劇場のエントランスに飾られていた、高さ3メートルほどに積み上げられたロコアートは土台が消し飛んだのだ。哀れなロコアートは悲しそうな表情を浮かべながら床に伏していった。
「わぁ〜! すごいねロコちゃん。これが『芸術は爆発だ!』ってやつ?」
今まさにロコアートの命を奪ったボタンを手にしている彼女は、今日も純粋無垢な瞳で制作者を見つめている。悪気などあろうはずもない。彼女にボタンを渡した者に悪意があったかどうかまでは分からないが。
本来であればそのボタンが何を引き起こすか確認せずに押してしまった彼女を咎めるべきだが、それすらも許されないほどに彼女の瞳は美しかった。
3 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:10:30.19 ID:Rn+1RG8T0
今まさに灰と化しつつあるロコアートの製作者は、ため息を手早く済ませて顔を上げた。
「ミライ、そのボタンは誰からギフトされたんですか?」
「さっき亜美ちゃんからもらったの。これ押したら良いことがあるよーって」
ふむ。常に他人の心を搔き乱すことを信条としている双子ではあるが、これほど大規模な爆発を実現できるほどの技術力を有しているとは思えない。
ブスブスと燻り続けるロコアートのように頭の中をぐるぐると回し、彼女は双子の有り余る破壊衝動に手を貸した人物に思いを馳せていた。
(ジュリアが一枚バイトしていることは確定として、リツコ?? いや、リツコならプライオリティはシンプルなクリーニングのはず……?)
「じゃあ私、お水持ってくるね!」
4 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:11:18.85 ID:Rn+1RG8T0
突然だが、劇場の消火器は各部屋に設置されている。
エントランスも例外ではなく、受付のすぐ横に置かれている。春日未来とて、それを覚えていないわけではない。定期的な消火訓練は、有事の際でも冷静な対応を取れるように繰り返されるものだ。
ただ、彼女は現在の黒く細い煙を棚引かせているロコアートの様子を見て、延焼の危険はないものと判断し、消火器を使うまでもなく、バケツに水を汲んでくれば十分に鎮火できると考えたのであった。
結論から言うとこの判断は正しかった。春日未来には、現場を見て適切な状況判断を下す能力が培われていた。言い換えれば、それほどまでに幾度となくこの状況に立ち会っていることを意味する。
5 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:11:53.77 ID:Rn+1RG8T0
(ロコアートのウィークポイントをクリティカルにバーストしてますね……)
一方、ロコはまた別の観点から、冷静に現場状況を確認していた。
(バランスとアンバランス、ハーモニーとノイズ……むむむ)
そしてその思考は、徐々に次に作るアートの構想に移っていった。
一方、未来がようやくバケツに組んだ水をロコアートにばちゃばちゃと雑にかけ始めたころ。
「え……なにこれ……」
騒ぎを聞きつけた現場に駆けつけた青羽美咲は、焦げ付いた壁や黒い燃えカスで覆われた床を見て絶望していた。
6 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:12:28.00 ID:Rn+1RG8T0
「え……?」
田中琴葉は絶望していた。
昨日のダンスレッスンの内容をおさらいしておこうと、いつものように自主練習をするためにレッスンルームの扉を開いた直後だった。
レッスンルームの区画のうち四分の一が、なにやらド派手に着彩された鉄格子で覆われているのであった。その内側には細長いバルーンアートを様々な角度で組み合わせたような、カラフルな何かが聳え立っている。
アレは一体なんだろう。
その物体をなんと形容すれば良いのかは分からないが、誰が作ったかは分かる。ロコちゃんだ。
7 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:13:12.95 ID:Rn+1RG8T0
彼女はいつでもどこでもアートを制作してしまう。それは彼女の魅力的でありながら傍迷惑な一面であるのだが、いつもなら「ちゃんと片付けないとダメだよ」と注意して、一緒にどこか別の場所に運べば良いだけだった。
しかし今回は違う。
ただ大きいだけではない。そもそもロコアートに触れることすら出来ないのだ。このままではレッスンに十分なスペースを確保することができない。鉄格子に身体をぶつけて怪我をしてしまうかもしれない。
田中琴葉は、元気にダンスをしていたら鉄格子に身体をぶつけてしまい痛がる島原エレナを夢想して、ひとり静かに絶望していた。
「気付いたか、琴葉」
「ジュリアちゃん!」
8 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:14:02.39 ID:Rn+1RG8T0
背を壁に預けながら登場した赤髪の彼女はジュリア。本名は秘密。
彼女は田中琴葉らと共にアイドルとして活動しつつ、生粋のダイナマイターとしてその爆破技術を買われ、大型ロコアートの解体作業で確かな実績を持っていた。
「こうも立派な鉄格子に囲まれてしまっては、ロコアートにダイナマイトを設置できない。鉄格子の外から吹き飛ばそうとすれば、劇場ごと粉微塵だろうよ」
「そんな……!」
荒療治を好まない田中琴葉ですら、ジュリアに大型ロコアートの爆破を依頼したことがある。彼女のダイナマイトは劇場の被害を最小限に抑えつつ、安全かつ確実にロコアートを破壊する。彼女の爆発は美しさすら感じさせるものだった。
そんな彼女が「劇場ごと粉微塵」と言うのだ。それは間違いないのだろう。ロコアートと共に崩れ去る劇場を夢想して、田中琴葉は再び絶望していた。
「エントランスにあったロコアートを爆破しちまったの、根に持ってんのかな」
ところで前回の犯人はやはりジュリアだったらしい。
9 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:14:42.84 ID:Rn+1RG8T0
「ふっふっふ、スタックですか、コトハ」
「ロコちゃん! 今すぐロコアートを片付けなさい!」
「もちろん、次のフルメンバーでのレッスンまでにはスロウアウェイします。それまでのスケジュールでは、このスペースでレッスナブルです!」
ジュリアはレッスナブルって聞いたことない英語だなと思いつつ、おそらく何かが可能であることを示すだろうと予想をつけた。
また、胸を張って自論を展開する彼女を見ていると、きっと何か不可能なことが可能になるし、彼女の言葉に一切間違いはないと錯覚してしまうようだった。
「自主練習する人もいるんだから、その妨げになっちゃダメでしょ。レッスンルームが狭くなったらそれだけぶつかったり、怪我をするリスクが上がっちゃう。片付けなさい」
普通に正論だった。
正義は彼女にあった。
10 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:15:17.96 ID:Rn+1RG8T0
「うぅ……」
ジュリアの目からは先ほどまで胸を張っていたロコが一気に小さくなったように見えた。
その小さな少女が、胸元のポケットから何から鍵のようなものを取り出した。
鍵。どこに使うのかと眼を凝らしてみると、なるほど、鉄格子の一部がドアのようになっていて、南京錠のようなものが掛かっている。観念したのだろうか、ロコは鍵を握りしめながらプルプルと震えている。
「嫌ですぅ〜! ロコはランナウェイします!!」
「あっ!ロコちゃん!」
観念するかと思いきや、ロコはそのまま走り出してしまった。
ロコがあそこまで強情なのは珍しく……はないかもしれないが、ともかく今日のロコは一段と強情だった。身体能力は良くも無いが悪い方ではない。先に駆けだした彼女に琴葉とジュリアが追いつくのは中々苦労するだろう。
11 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:16:01.74 ID:Rn+1RG8T0
「南京錠か、どうする?」
小型のダイナマイトを掌の上で弄りながらジュリアが問いた。
琴葉はそれに「ちょっとやってみる」と答えつつ、亜麻色のポーチから小さな透明なケースを取り出し、その中に入っていたクリップをコネコネと曲げ始めた。
「恵美に教えてもらったの」
手早い動きで小さくまとまっていたクリップを「くの字」に曲げる。どこをどう使用するのかは分からないが、先端は気持ちの良いほどにピンと伸びていた。もう一本クリップを取り出し、同じように丁寧に伸ばされていく。着火用のライターを取り出しながら、こういうちょっとした仕草にも人柄が出るよなぁとジュリアは思った。
南京錠の下に座り込んだと思ったら両手で針金をチャカチャカ。探るような、押し込むような、不思議な動きをする琴葉。
アイドルとして活動するときのように真剣な表情で、アイドルとして決して見せてはいけない動きをする琴葉。レッスンルームは異様な空気に包まれていた。
12 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:16:41.10 ID:Rn+1RG8T0
「開いた!」
開いた。
アイドル以前に、法治国家の民がしてはいけない行為が達成された瞬間だった。今現在、劇場で密着取材などがされていないことを切に望む。
兎にも角にも、この「優等生」かつ「学級委員長」かつ「アイドル」という、一ミリもピッキングとは縁の無い属性が盛り盛りの田中琴葉は、見事に南京錠の門を突破したのである。
やれやれ、ようやくアタシの出番かと、ジュリアは手遊びしていたダイナマイトをガッシリと握りしめた。
「今回はいつもより細かめに爆破お願いね。まずは扉からロコアートを運び出した方が良いと思うから。鉄格子も内側からなら工具と人手が有れば解体出来そう。美咲さんに連絡しておくね」
「よしきた」
かくして、馴染みのロコアート解体業者への連絡をテキパキと進める田中琴葉。施工管理は段取り八分と言われているが、彼女ならばきっと立派な現場監督になれることだろう。
いや、彼女は現場監督ではなくアイドルなのであるが。
13 :
◆ivbWs9E0to
[saga]:2021/06/12(土) 07:17:27.28 ID:Rn+1RG8T0
望月杏奈はアイドルである。
幼少期よりゲームが好きだった彼女は、ゲームのキャラクターのように現実世界でもキラキラと輝くアイドルという職業に憧れていた。そして誰に言うでもなく、たった一人でもアイドルになるための努力を続けていた。
しかし、本人の引っ込み思案な性格は直すことが出来ず、自らオーディションに申し込むことが出来なかったが、神様は見ているものだ。765プロのプロデューサーにスカウトされ、現在はこうしてアイドルとして活動できている。
こうして公演が無い日であっても劇場に踏み入ることが出来るのも、アイドルの特権である。彼女は今、レッスンまで時間はあるので劇場でゲームをしようと、エントランスから堂々と入室した、その時であった。
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