小林「あなたは……誰ですか?」トール「……えっ?」【小林さんちのメイドラゴンSS】

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1 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:42:27.46 ID:35WDfJzJ0

・「小林さんちのメイドラゴン」の二次創作SSです。原作とアニメ版1期の両方を参考にしていますが、基本的にアニメ版準拠の内容となります。

・独自設定を多少ですが含みますので、ご注意ください。

・VIPで投稿するのは初めてですが、頑張りたいと思います!至らぬ点があれば遠慮なくご指摘ください。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1622983347
2 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:45:12.30 ID:35WDfJzJ0

【夕方のマンション・小林宅、キッチン】

…………♪ …………♪ …………♪ …………♪

…………♪ …………♪ …………♪ …………♪

トール「……ン♪ ……フン〜……♪ ……フフフ〜〜ン♪」コトコト

トール「フンフンフ〜〜ン♪ フフフンフ〜〜ン♪」グツグツ

トール「フンフンフ〜ン、混沌・料理のさしすせそ〜♪」トントン

3 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:50:21.10 ID:35WDfJzJ0

トール「最初はサタン〜、悪魔の王〜♪」ザクザク

トール「しからばシヴァ神、破壊神〜♪」ジュウジュウ

トール「砂国の魔獣、スフィンクス〜♪」ガリガリ

トール「船舶沈めろ、セイレーン〜♪」ドポドポ

トール「そ〜してソロモン、魔神〜の主♪」パリン!

トール「さあ征くぞ! 邪神よ! 其っの名っを此処に! 食材よ〜、悲鳴を上げろ〜!」ノリノリ

4 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:51:24.62 ID:35WDfJzJ0

トール「斬っ裂、圧っ潰、掻っき混っぜろ〜♪ 細断、熱板、火っ炙っり刑〜♪」グチャグチャ

トール「『邪竜の業火、その身で味わえ……!!』(語り)」シャキーン

トール「地獄の釜に〜蓋をして〜♪ 気化した涙も逃がさない〜♪」ボボボボ

トール「うっらむっならっ弱っい、おっのれっをうっらめ♪」バチバチ

トール「そ〜して『悠久の時間(ルビ:しばらく)』待ったなら〜♪」パカッ

トール「完成! ハンバーグ〜〜〜!!」ジャジャーーン!!



カンナ「トール様、ごぎげん」ヒョコ

トール「おや、カンナ。どうしました?」

カンナ「とっても、いいにおいする。お腹すいてきた」フンフン

トール「もー、カンナは食いしん坊ですね。でも小林さんが帰ってくるまで、もうちょっとだけ待っててくださいねー」ナデナデ

5 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:52:49.37 ID:35WDfJzJ0

カンナ「今日は、ハンバーグ? おいしそう」ジュルル

トール「いいえ、これは今日の夕食のほんの一品に過ぎません……」ニヤリ

カンナ「マジで」

トール「楽しみにしていなさい、カンナ。今日は沢山のご馳走を食べさせてあげますよ!」クワッ

カンナ「おー! トール様、すごーい。マジやばくねー」ピョンピョン

トール「ふふふ、そうでしょうそうでしょう! これでも混沌の邪竜ですからね!」フフン

カンナ「でも何で今日、ごちそう?」

トール「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました……!」クックック

トール「聞いて驚くがいいです! 何と今日はーー……っ!」ドドドドドドド



トール「パンパカパ〜ン! 私と小林さんが出会ってから、ちょうど1年経った記念日なので〜す!」ドドーン!

カンナ「おー」パチパチ

6 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:54:42.26 ID:35WDfJzJ0

――――――――――――――――――――――――――――



【小林、帰りの電車内】

ガタンゴトン…… ガタンゴトン…… ガタンゴトン…… 



小林(はあ、疲れた……)プヘー

小林(今日はちょっと遅くなっちゃったなあ)



ガタンゴトン…… ガタンゴトン…… ガタンゴトン…… 



小林(今日はトールが、私と出会ってちょうど1年の記念に、ご馳走作って待ってるって言ってたっけ)

小林(トールのやつ、今日の朝は……)ホワンホワン

トール『実はこの日のために、何日もかけて綿密な準備をしていたんです!
    おおっと、驚かせたいためメニューについては秘密ですが、
    絶対に美味しいものを作りますので、ぜひ楽しみにしていて下さい!』フンス!

小林(……って張り切ってたけど、大丈夫だろうか)ウーン…

7 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:56:29.49 ID:35WDfJzJ0

ガタンゴトン…… ガタンゴトン…… ガタンゴトン…… 



小林「……今日でちょうど、1年かあ」ポツリ



小林(思い返してみれば、トールと出会ってから1年、沢山の事があった……)

小林(初めは、1年前の今日。私が仕事のストレスから飲みすぎて、酔いに酔って知らない駅で降りて、山に迷い込んで……)

小林(そして、傷ついたトールと出会った)



《(回想)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



トール『人間……?』フシュウウウウ……

小林『ドラゴンだぁ!! 超カッコイイ!! 抱いてーヒュー!』ブハー

8 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:57:15.38 ID:35WDfJzJ0

トール『ドコカラ入ッテキタ……去レ! 食イ殺スゾ!』ギンッ

トール『……マア、ドノミチ……我モモウスグ死ヌガナ……』

小林(……? 剣がドラゴンの背中に、刺さって……)

トール『神共ト戦イ、敗レテコノ地……異界ヘ来タ……』

トール『最後ニ会ッタ者ガ人間トハ…… クク、ミジメナモノ――』

小林『あのさぁ、その話し方疲れない?』ユラユラ

トール『ナッ……』ピキッ

小林『ぜったいつかれるわー』

トール『貴様……』グググ……

9 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:58:20.92 ID:35WDfJzJ0

小林『その剣抜けばいいの?』ゲフー

トール『愚カナ…… 人間ナンゾガ神ノ剣ニ触レレバ、精神ヲ破壊サレ――ッテオイ!』

小林『アーーー? 知らねーし……神がいるなら……んぬっつ!』ガシッ

小林『今すぐ納期をっ……延ばしてみせろってんだ!!』ズボォッ!

トール『!?……!?……!?』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜》



小林(剣を抜いた後は、トールと酒を飲んで愚痴り合ったんだっけ)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



小林『会社のバカヤロー! あたしゃあたしの仕事があんだぁ!!』ブハー!

トール『神のスカタン! おとなしく終焉させろぉ!!』バハー!

10 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 21:59:44.67 ID:35WDfJzJ0

…………

小林『あー……なんで私一人なんだろ……』

トール『……! ……私も一人です…… 一人になりました。この世界で、さっき』

小林『……行くあてあるの?』

トール『いえ、というより、元々一人ですので……』

小林『――じゃあ、私のとこ来る?』

トール『……! い、行きます!』

小林『じゃあメイドやって!!』ガシィッ! ハアハア

トール『…………はい?』タジッ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜》

11 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:01:15.97 ID:35WDfJzJ0

小林(そしたら、その次の日の朝…… 彼女は本当に家に、メイドとしてやって来た)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



トール『じゃーーーーーーーん!』ジャーーーーン

小林『…………!?』



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小林(二日酔いで昨晩の記憶がおぼろげだった私は最初、彼女を雇うのを断った。けれど気付けば会社に遅刻ギリギリになっていたので……)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



小林『トール!!……翔べる!?』ガシッ

トール『!――――――はい!』ニコッ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜》



小林(それで、トールがうちでメイドとして住む事になった)

12 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:02:27.34 ID:35WDfJzJ0

小林(しばらくすると、他にも色んな人……いや、色んな『ドラゴン』が、私の周りに現れる様になった)

小林(初めは、幼い竜の、カンナちゃん)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



カンナ『トール様とわかれて』

小林『様……?』



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小林(カンナちゃんは行方不明だったトールを連れ戻しに来たと言うものの、実際は悪戯した事が原因であっちの世界を追放されていて―― 彼女は一人ぼっちになっていた)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



小林『カンナちゃん。行くとこないなら、うち来る?』

カンナ『に…人間なんか信じてない! 何か企んでる!』ジリッ

小林『…………』ポン

カンナ『!』

小林『知らない世界で誰も信じられない…… 当たり前だと思う。私だって信じない』

カンナ『…………』

小林『友達になろうなんて言わないよ。一緒にいよう。そんだけ』ナデナデ

カンナ『っ……、 ……、 ……うん』コクリ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜》

13 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:05:13.35 ID:35WDfJzJ0

小林(次に宝を守る邪竜で、人嫌いでゲーム好きで、引きこもり体質のファフニールさん)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ファフニール『全く、人間の世界は面倒なものだ…… 絶やしたくなる』チッ

ファフニール『何故俺が人間に隠れてコソコソせねばならん。いっそのこと滅ぼして……』ギリッ



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小林(彼は今、私の会社の同僚でオタ友達の、滝谷くんの家に住んでいる)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ファフニール『あそこのアイテムは取らんのか?』

滝谷『あれトラップでヤンス』ガチャガチャ

ファフニール『小賢しい……』



ファフニール『なんだコイツは!? 勝てんぞッ!!?』ガチャガチャ

滝谷『負けイベントでヤンス』

ファフニール『チィ……!!』ガチャガチャ



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14 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:06:47.43 ID:35WDfJzJ0

小林(物知りで常に落ち着いていて頼れる、けれど何故かいつも痴女めいたファッションのルコアさん)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ルコア『はじめまして、ケツァルコアトルです。長いのでルコアでいいですよ』タプーン

小林『その格好は?』

ルコア『うふふ、これは若者のフォーマルなものなんだよ』ドタプーン

小林『ではなく、体型的に痴女っぽいです』

ルコア『え!?』タプッ



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小林(彼女は今、隠れ魔法使い一家の少年、翔太くんの家に、使い魔として居候している)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ルコア『ほら〜悪魔じゃないよ〜、もっとよく見て〜』スッパダカッ

翔太『うわー! お風呂に入ってくるなー! この悪魔めー!』ワタワタ



ルコア『いってらっしゃい、翔太くん♥』ムギューッ

翔太『むぎゅう、やめろー!!』ジタバタ



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15 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:08:19.83 ID:35WDfJzJ0

小林(調和を尊び、いつもトールと喧嘩している、でも美味しいものには目がないエルマ)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



エルマ『トール!! ドラゴンはこの世界の秩序を乱す!! 私と一緒に戻るんだ!!』キッ

トール『相変わらずクソ真面目なカタブツみたいですね。私、帰りませんよ』フンッ



エルマ『うっ……』ぐぐううううぅぅぅぅぅぅ(腹の音)

小林『……食べる? クリームパン……』スッ

エルマ『……で、では、ご好意に甘えて……』ハムッ

エルマ『(―――何これ、おいしい……ほっぺたおちる、幸せぇ……!!)』はふぁ……



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小林(彼女は今、うちの会社の新入社員として一緒に働いている)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



小林『結構PC操作覚えてきたねエルマ』

エルマ『任せておけ! このまま仕事の役に立ってやる!』フンス

エルマ『小林先輩、帰りアイス食べようアイス! あれはうまいぞ!』ウキウキ

小林『あーはいはい(すっかり餌付けしてしまった)』



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16 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:09:45.44 ID:35WDfJzJ0

小林(そして……終焉帝と呼ばれる、トールのお父さん)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



終焉帝『一緒に帰るのだ、トール。この世界に迷惑をかけてはいけない』ゴゴゴゴゴ

トール『………っ嫌です!』グッ



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小林(彼は本気でトールを連れ戻そうとやって来た)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



小林『あの……』

終焉帝『―――』バシュッ!

パリンッ!(小林の眼鏡が魔法で割られる音)

小林『ぐっ!?』ドサッ

トール『こ――――小林さんっ!?』

終焉帝『気を付けて喋ってほしい。放つ言葉によっては消し飛ぶのはあなたになる』

小林『――っ……!! ……はぁっ、はぁっ……!!』フルフル

終焉帝『何  か  な  ?』ゴゴゴ

小林『っ………………っ………………』ゴクッ

17 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:11:47.71 ID:35WDfJzJ0

小林『………………へっ』ギリィッ

小林『トールは帰りたくないってさ!』

トール「……………!!」ギュッ

小林『私のメイドを持っていくな。これは私んだ!』

終焉帝『調子にっ……!』バチバチッ……!

トール『―――――!』ザッ!

終焉帝『!―――やる気かトール。ならばここは少々窮屈だ』バサッ



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小林(トールが戦意を見せた事で、その後二人は場所を移し、激闘という名の親子喧嘩を繰り広げた)



《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



終焉帝『初めてだな、お前が私に逆らったのは』ゴオッ!

トール『自分の居場所は自分で決めます! 小林さんは私の、私の光です!』キッ

終焉帝『お前は何も分かっておらぬ! 戻ってこいバカ娘!』ドゴォッ!バシュッ!

トール『戻りません!』ガギッ、バギィッ!

終焉帝『ゆるさん、人間となど!』ゴバアァッツ!

トール『小林さんは特別なんです!』ボシュウゥ!



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜》



小林(戦いの末の説得で、トールのお父さんは、なんとか退いてくれた)

18 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:12:54.83 ID:35WDfJzJ0

《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



終焉帝『……認めはせん。人間など、共に生き切る寿命も持たぬ分際如きが。トール、愚かな娘よ……!』バサッ!



………………



トール『…………』

小林『……行っちゃった』

トール『―――――!』ダキッ

小林『うわっ!?』ドタッ

トール『………………』ギュウウウウ

小林『…………トール、わがまま言っちゃってごめん』

トール『……何を、あげたらいいですか? 全部……全部あげます』ギュウウウウ

小林『……そんなにいらん』ナデナデ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜》

19 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:13:59.36 ID:35WDfJzJ0

ガタンゴトン…… ガタンゴトン…… ガタンゴトン…… 



小林(色んな…… 本当に色んな事があった)

小林(時には互いの常識の違いから衝突してしまう事もあったけど、その都度話し合って、すり合わせて、何とかやって来れた)

小林(最近は大きな喧嘩になるような事も減って、自分でも上手くやれてると思う)



ガタンゴトン……キキーッ プシュー

……〇〇エキー、〇〇エキー、オデグチハミギテガワ……



小林「お、着いた。よいしょっと……んーっ」ノビーッ

小林(このまま、仲良く一緒に暮らし続けられればいいなあ)

20 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:16:34.54 ID:35WDfJzJ0

――――――――――――――――――――――――――――

【夜、小林宅】

小林「ただいまー」ガチャ

トール「あ、小林さん! おかえりなさーい!」パアッ

カンナ「コバヤシ、おそいー」プー

小林「あはは、ごめんごめん。今日はちょっと仕事が重なっちゃってね」

カンナ「『今日は』じゃない、『今日も』ー!」プープー

小林「あ、あはは……」ニガワライー

トール「毎度の事ではありますが、やっぱり小林さんは帰ってくる時間遅いですよね……」ムウ……

トール「……はっ!? まさか本当は私たちに内緒で夜のお店に遊びに……!?」ピキーン

小林「まーた変な事覚えて…… そもそも私がどんなお店に行くっていうの?」ハア

トール「それはもちろん、メイドのコスプレをした娘達でいっぱいのキャバクラに!」ドン!

小林「マニアックだな!? いや探せばありそうだけども!」

カンナ「ウワキモノー! カイショウナシー! ドロボウネコー! コノオンナダレヨー!」ワーワー

小林「カンナちゃんまで! ちょっとトール、子供に変な言葉教えちゃダメだよ?」

トール「私が休日にお昼のドラマを流してると、傍から聞いて覚えちゃうみたいなんですよねー。意味はまだ分かってないみたいですけど」アハハ

トール「ところで昼ドラって、本当に不倫とか三角関係とか多いですよね。
他人のドロドロの愛憎劇を見て喜ぶとかやっぱり人間って度し難いというか、
それに昼ドラって略称ドラゴンと被っててホント不敬というか、
というわけでとりあえず人間滅ぼしちゃっていいですか?」ゴゴゴ

小林「ダメに決まってるでしょーが!」

トール「え〜しょうがないですね〜……」プクー

小林「まったく…………」ハアァァー……

小林「…………」

小林「……ははっ」

トール「……ふふふっ」クスクス

21 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:18:34.02 ID:35WDfJzJ0

カンナ「? 何が面白い?」クビカシゲ

小林「いや、この流れも久しぶりだなと思って」クックック

トール「はい、始めの頃は毎日こんな感じでしたよね」クスクス

小林「そうそう」

トール「でも、あの頃に比べたら私、随分成長したでしょー、小林さん?」エッヘン

小林「エー、ソウカナー? ソウカモネー?」シラジラ

トール「もー、小林さんっ!」プンプン クスクス

小林「ごめんごめん、あっはっはっはっは……」ケラケラ

トール「うふふふふ……」クスクス

カンナ「ふーん? よくわかんないけど、私もなんかうれしー」パタパタ

小林「あっはっはっは……おろ?」フラッ

トール「っ小林さん!?」パシッ

カンナ「コバヤシっ! だいじょぶ?」

小林「……ああうん、大丈夫大丈夫、疲れてただけだよ」ヨッコイセット

小林「いやあ、ちょっと気が抜けたら足がよろけちゃった。あはは……」

トール「…………小林さん」

小林「ん?」

トール「冗談は抜きにしても、やっぱりここ数日はずっと帰りが遅いですよ」

小林「…………」

トール「私、小林さんの体が心配です……」シュン

小林「……まあ、仕事柄どうしても、気張らなきゃならない時が出てきちゃうからねー」アハハ

トール「でも……!」

22 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:20:46.70 ID:35WDfJzJ0

小林「心配しなくて大丈夫だよ」ポン

トール「!」カァッ

小林「今日の分でもう山場は越えた。明日からはもう普通の時間に帰って来れるからさ」ナデナデ

トール「もうっ、約束ですからね……」テレテレ

カンナ「あー、ずるいー、私もなでてコバヤシー!」ギュッ

小林「はいはい」ナデナデ

カンナ「〜〜♪」

小林「さて、我が家のメイドさんっ! 元気を取り戻すためにも、ご飯にしようか。私達が出会って、1年を祝して!」

トール「っ! はいっ、そうですねっ! どうぞこちらへ、ご主人様!」ニコッ

カンナ「トール様、料理とってもがんばってたー」

小林「おー、そりゃ楽しみだ。期待してるよー?」ニヤニヤ

トール「ええ、お任せ下さい! この日のために準備してきた、最高級のフルコース料理をご覧あれ!」ドーン!

23 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:22:02.04 ID:35WDfJzJ0

――――――――――――――――――――――――

【小林宅・食卓】

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



小林「……………………」ゴゴゴゴゴ

トール「〜〜〜♥」フンフンフーン

カンナ「?」ボケー



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



小林「トール…… これ、なに?」ジー

トール「トールお手製、龍の尻尾肉フルコースで〜す♥」ジャーン!

小林「……………………………………………………………………」ゴゴゴゴゴ

24 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:23:30.87 ID:35WDfJzJ0

トール「龍肉のステーキに〜♥ こっちは龍肉ハンバーグ、龍肉のシチューに龍挽肉のピーマン詰め――」

小林「…………」

トール「――それで、こちらが龍肉の冷製ジュレ、龍肉の照り焼き、龍肉のハムサラダ、そして最後のとっておきは〜〜〜〜〜…… こちら、龍肉の丸焼きになりま〜す♥」

小林「あのさあ…… トール」

トール「いえいえ、言わずとも分かります。とっておきがただの丸焼きかよ! とお思いなのでしょう、いつも見せてますからね。ですが今回は下拵えから普段の三倍は入念に――」

小林「そういう事じゃない」

トール「へ?」ピタッ

小林「トール、今回はさすがに私も怒るよ?」ゴゴゴゴゴ

トール「もー、小林さんそうやっていつも好き嫌い言って、私の尻尾肉食べてくれないじゃないですか! もう良い機会ですし好き嫌い克服しましょうよ〜!」プンプン

小林「好き嫌いとか、そういう話じゃない!」バンッ!

トール「わっ!?」ビクッ

25 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:26:56.74 ID:35WDfJzJ0

小林「最初に出された時からずっと言ってるよね? 好き嫌いとか偏食とかじゃなくて、生理と倫理に合わないから食べられないってさ」

トール「あ、あの、小林さん?どうしたんですか、急に……」オドオド

小林「そりゃもちろん、私だって種族や文化の違いくらい考慮してるさ。
   トールからしたら自分の肉を食べてもらう事がなにより嬉しい事なんだろうって思うし、
   その気持ちに応えてあげられなくて申し訳ないともいつも思っちゃいるさ!」

小林「つっても、こっちの事情も考えてくれたっていいじゃん!
   私にとっちゃ隣人の体の一部を食べるっていうのはとてもハードルの高い事なの!
   覚悟決めなきゃ出来ない事なの!」

小林「今までは料理の中に一品だけ混ぜてくるぐらいだったからさ?
   私が自分で気付いて食べなければいいだけだったし、強く文句も言ってこなかったけどさ?」

小林「こんな全部に入れられちゃったら、もう強制されてるのと同じで……」

トール「…………」

小林「ちょっとトール、ちゃんと聞いてる――」ピクッ

トール「…………」プルプル

小林「……トール? (泣いて……)」

26 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:28:12.96 ID:35WDfJzJ0

トール「なんで怒るんですか……私だって一生懸命、小林さんに美味しいって言ってほしくて作ったのに……」ポロポロ

小林「あの、その……別に怒ってる訳じゃなくて……」

トール「怒ってたじゃないですか、机叩いて、怒鳴って!」

小林「いや、それは、確かにちょっと熱くなっちゃったけど怒った訳じゃ」

トール「ちょっと!? ちょっとって何ですか! 今のが怒ってないなら何なんですかあ!」

小林「トール、話を聞いて――」

トール「もう小林さんなんて知りません!」バサッ

小林「トール!」



ガシャーン!



小林「あ…………」

カンナ「トール様、窓から飛んで出てっちゃった……お行儀悪い」

27 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:29:19.42 ID:35WDfJzJ0

小林「…………」ペタン

カンナ「コバヤシ、だいじょぶ?」

小林「ああ、うん…… 大丈夫だよ、カンナちゃん」

カンナ「ほんとに?」

小林「うん、本当に本当」

カンナ「…………」ポン

小林「……?」

カンナ「……ムリ、しないでね」ナデナデ

小林「……うん」

小林(………ああ、くそ…… 仕事で疲れ切って、余裕がなかったからって………)

小林「……あんな事言うつもりじゃ、なかったのに……」

小林「何やってんだ、私……」ギュウウウ

28 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:30:38.21 ID:35WDfJzJ0

――――――――――――――――――――――――

【地上から遥か上空】

ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!

トール(竜形態)「GUOAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」ビュゴオオオオオオオ!!

トール(何で!? 何であんな事言うんですか小林さん!)

トール(私、一生懸命に料理頑張ったんですよ!? 時間も手間も愛情もよりをかけて、今日のために準備してたんですよ!?)

トール(なのに、なのにっ、あんなっ……!!)

トール「……GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」キイィィィィィィィン!!



ビキ…………



トール(もう……)



ビキビキ……



トール(もう………!)



ビキ、ビキッバキッ!



トール(小林さんの顔なんて、もう見たくない!)



バキィーーーーーーーン!!



……………………………………………

………………………

……………

29 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/06(日) 22:38:05.55 ID:35WDfJzJ0
とりあえず、原作の振り返りも兼ねた導入はここまでです。

書き溜めたストックはまだあるので、近日中に再開します。では今日はお休みなさい〜。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/07(月) 17:08:36.15 ID:QmDNXbMDO
おつ
親子喧嘩の後のトールのセリフ好き
31 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:40:35.94 ID:RHOuKnm+0
>>30
小林さんへの信頼の厚さが佳いよね… 佳い…

という訳で再開しますー。
32 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:42:19.12 ID:RHOuKnm+0

――――――――――――――――――――――――

【数時間後、明け方の上空】

チュンチュン……



トール「ふー……」パタパタ

トール「一晩ずっと全力で空飛んでたら、何だかんだスッキリしました!」ノーン

33 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:43:35.78 ID:RHOuKnm+0

トール「しかし、スッキリした頭で改めて考えてみると、やっぱり昨日の件は私が間違ってましたかね……」パタパタ

トール「小林さんの気持ちも考えず、自分の気持ちを押し付ける形になってしまった、私の責任です……」ショボーン

トール「もう朝ごはんの時間です、早く帰って、二人の朝ごはん作って……」

トール「……それで、ちゃんと仲直りしなきゃなあ」

トール「……まあ、小林さんは優しいから、ちゃんと謝りさえすれば許してくれますよね! うん、そうに違いない!」グッ

トール「よーし、じゃあさっさと帰りますか!」クルッ

トール「急がないとですね、行きますよー、せーの……っ!」グググッ

トール「――――――ふっ!」ビュオン!



………………………………………

34 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:45:25.27 ID:RHOuKnm+0

――――――――――――――――――――――――

【マンション上空】

バサッ バサッ

トール「さて、帰り着きましたね」バサッバサッ

トール「一般人に飛んでる姿を見られない様、念のため認識阻害魔法・オン、と…… うん、問題なし」ブオン

トール(認識阻害ON)「二人はまだ寝てる時間ですかねー、ではまず朝ご飯作りますか」ノビー

トール「二人が起きたらすぐ謝って、その後、昨日の夕食の片付けと、洗濯、掃除……」

トール「あ、そうだ。昨日窓を割って出てっちゃったから、それも直さないと!」

トール「あちゃー、夜中、風が入ってきて寒かったりしましたかね…… その事も謝らないと……」ショボーン

トール「ドラゴンのカンナはともかく、小林さんは風邪を引いてないといいですけど……」ムムム

トール「ま、とにかく、まずは窓から直しますか。では、ベランダから部屋に入りましょうかね」

トール「――ほっ!」バサッ!

35 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:47:47.15 ID:RHOuKnm+0

【マンション・小林宅のベランダ】

バサッ バサッ……

トール「――よっと」スタッ

トール「じゃ〜ん、トール様のご帰宅〜。頭が高いぞよ控えおろーう、なーんて……」ピタッ

トール「……ん? んん?? んんんんんんんっ???」ジーッ(窓越しに部屋内を凝視)

トール「――え、は……ちょ!? 何ですかこれ!?」バン!(窓に顔を張り付ける)

トール「部屋の中の家具が、ひとつ残らず無くなってるじゃないですか!?」

トール「え、これはどういう…… あ、も、もしかして部屋の場所、間違えちゃった? も、もー私ったらうっかりうっかり……」タハハ……

トール「お、お邪魔しました〜……」パタパタ



………………………………………………………………



トール「…………」パタパタ スタッ

トール「……いや、改めて外側から確かめましたけど…… 確かにこの階の、この部屋、ですよね……?」ムムム

トール「そもそも、私が百歩譲って過去五十年間棲んだ巣穴の場所を忘れたとしても、
    この一年間小林さんと暮らしたこの愛の巣…… もとい家の場所を間違える事はあり得ません(断言)」

トール「……むーう、しかし、そうすると、つまり…… この何も無い空き部屋にしか見えない部屋が、本当に私達の家……?」ムムム

トール「と、とにかく部屋の中に……」カチャ(魔法で鍵開け) ガラガラ

トール(――あれ? そういえば、窓が割れてない…… 何で…… いや、そんな事よりも、まずは部屋の中の確認!)スタスタ

36 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:51:11.66 ID:RHOuKnm+0

………………

【マンション・小林宅(?)】

スタスタ バンッ! スタスタ バンッ! スタスタ バンッ!

トール「……本当に、どの部屋にも何も残ってない……」

トール(各部屋の間取りや広さ、扉や壁紙の作り、窓から眺めた外の景色などからして、
    やっぱりここは、私が慣れ親しんだ、小林さん達と暮らす家のはず。それは間違いない)

トール(けれど、それなのに、ここに昨日まであったはずの家具や家電類は跡形もない、その痕跡すらも。まるで消滅したかの様に――)

トール「――ん、消滅?」ピクッ

トール「あ、そうだ! 消滅したものを元通りにする復元魔法があるじゃないですか!」ピコーン

トール「だったらさっそく試してみましょう! ん〜〜〜、それ!」ピカッ



…………………………………シーン………………………………



トール「……あ、あれ? 調子悪いかな、もう一度、それ!」ピカッ



…………………………………シーン………………………………



トール「……あっれぇ〜? 何でだー……?」ムー

37 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:54:18.60 ID:RHOuKnm+0

トール(考えられる可能性は…… 復元魔法は文字通り、消滅したり壊れたりした物を、元の状態に「復元」する魔法だから……)ムムム

トール「物品を『消した・壊した』のではなく『移動した』から…… 復元の対象には選べない…… とか?」

トール「ハッ!? まさか小林さん、今回の私のやらかしが余りに腹に据えかねて、私が帰ってくる前に夜逃げを……!?」ガーン

トール「い…… いやいや、一晩であれだけの物品を運び出しとか、人間の業者に出来る訳はないですし。
    カンナだってまだそういう便利魔法は使えないはず……」

トール「いやしかし、ルコアさんやファフニールさん、あとエルマ辺りの誰かの協力があれば可能っちゃ可能……!」アセアセ

トール「窓が直ってるのも彼ら彼女らが直したとすれば不思議はない……!」ギリッ

トール「で、では昨晩はこんな感じで――」



小林(想像)『ええい、もうあんな被食願望マシマシの変態ドラゴンと同じ部屋にいられるか! 私は実家に帰らせてもらう!』

カンナ(想像)『ダメヨ、コバヤシ! トール様は一度狙った獲物は絶対に逃がさない、モンスターなハンター! ニゲラレハシナイワ!』

小林(想像)『問題ないさ! 出でよ、我が手下達!!』バッ

ルコア(想像)『あいあいさ〜♡』スタッ

エルマ(想像)『あらほらさっさ!』スタッ

ファフニール(想像)『ふん…… やれやれだな』ザッ ドドドドド

小林(想像)『カンナちゃん…… 一緒に逃げよう……!』ギュッ

カンナ(想像)『コバヤシ……!(トゥンク) ツイテイキマス……!』ギュッ



トール「ご、小゛林゛ざーん゛! ヴェア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!(泣)」ボドボド

トール「私を置いていかないでーー! あ、でも変態扱いはそれはそれで気持ちいい゛ーー!!」プルプル

38 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:56:13.25 ID:RHOuKnm+0

トール「ヴェウウウウ…… はあ…… はあ……」ゼエゼエ

トール「…………………………………」

トール「……いや、流石にないか。昼ドラの見過ぎですね……」フー

トール「小林さんは、確かに怒ると怖いけど…… でも、こんな対話自体を拒む様な、頑なな事はしない人です。ええ、それはもう絶対」グッ

トール「でなきゃ、私は生きていませんし、ここでメイドをやれてもいません」

トール「だから、これが小林さんの意志による状況ではない…… というのは確かだろうとして……」

トール(ならば、この状況は一体……)

トール(……胸騒ぎがしますね――)

………………………………

39 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 21:59:30.94 ID:RHOuKnm+0

【マンション・小林宅の玄関】

ガチャッ バタン……

トール「……うーん…… 玄関の表札も無くなっている、か……」

トール「結局、家の中にも手がかりは見つかりませんでしたし…… いったい何が起こって……」モヤモヤ

トール「あ、とりあえず玄関の施錠は鍵を携帯し忘れたので魔法でかけといて……」カチャリ



ガチャッ



トール(? 右隣の部屋から、誰か出てきた。あれは――)



笹木部「――さーて、朝のゴミ出しゴミ出しっと。主婦の朝は忙しいわねー全く……」



トール(隣人の笹木部さん! そうか、彼女なら何か知ってるかも! では早速……!)

トール(認識阻害OFF)「おはようございます、笹木部さん!」ズイッ

笹木部「きゃっ!?」ビクッ

トール「今日も朝からお疲れ様です。メイドではないものの同じく家事をこなす者として、主婦のあなたにはいつも共感と敬意を抱いています」ペコリ

笹木部「は、はあ…… どうも……?」ペコリ

40 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 22:02:15.08 ID:RHOuKnm+0

トール「それでですね、ちょっとお伺いしたい事があるんですが……
    昨夜から今朝までの間で、隣の私達の部屋やこの廊下とかにおいて、何かおかしな事はありませんでしたか?」

トール「沢山の人の出入りがあったとか、家具を動かす様な音がしたとか…… 何でもいいんです、何かご存知ありませんか?」

笹木部「昨夜、隣で……? いえ、特に何も……」

トール「そうですか……」シュン

トール(……ん?『特に何も……』? 何かおかしい様な…… まあとりあえず置いておいて!)

トール「じゃ、じゃあ! 小林さんやカンナから、何か聞いてはいませんか!?
    私について何か言ってただとか、何処かに行く予定があるとか!」

笹木部「は、はあ……? その……」

トール「どんな些細な事でも構いません! 今は少しでも二人の手がかりが欲しい状況でして、どうか協力を――」ピクッ

笹木部「………………」

トール「――どうしたんですか、怪訝そうな顔をして?」

笹木部「ええと、その……ですね……」

トール「?」キョトン

41 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 22:04:16.11 ID:RHOuKnm+0

トール(あ、そうだ、そう言えばさっきの違和感……)

トール(昨夜、私が衝動的に窓を割って出て行った時は、
認識阻害はしていなかったはずだから近隣に音が響いちゃったはずなのに、何で『特に何も……』と……)

トール「あの…… 笹木部さん?」オズオズ

笹木部「ええと、その…… 言いにくいのだけど……」

トール「はあ……」



笹木部「――失礼ですが、どなたですか?」



トール「………………………………は?」ポカン

42 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 22:07:24.27 ID:RHOuKnm+0

トール「…………え? いや、何を、言ってるんですか、笹木部さん?」

笹木部「いえ、その、ね? やけに私の事を知っている風に話すから、私が忘れてるだけかなー、とも思って話を聞いてたんだけど……」

笹木部「やっぱりどうしてもあなたの事を思い出せなくて…… あなたの様に珍しい格好の人をそうそう忘れるとも思えないし……」

トール「な…………」

笹木部「その…… 知り合いを装って話を聞き出そうとする詐欺…… とかではない、わよね?」オズオズ

トール「な――何て事言うんですか! そんな気、微塵もありません!」

笹木部「きゃっ!」ビクッ

トール「あっ! ……す、すみません、大声で……」

笹木部「い、いえ、私こそ不躾でごめんなさいね。でも、じゃあやっぱり、人違いじゃないかしら?」

トール「そんな…… そんなはず、ありません!」

トール「だってあなたは、正月には栗きんとんのおすそ分けして下さった、料理好きの主婦の笹木部さんでしょう!」

笹木部「あら、私の得意料理…… どうして知ってるの?」

トール「ギガンテスの四股の様な怪音を出して調理をする割に、できた料理は味を含め至って普通という、主婦の笹木部さんでしょう!?」

笹木部「ふぇっ!? あ、あらいやだ、そんな事までご存知で……」カアァッ

43 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 22:09:44.70 ID:RHOuKnm+0

笹木部「……うーん…… その必死な様子だと、嘘をついたり騙そうとしてる訳ではなさそうだけど……」

笹木部「でもごめんなさいね、本当に私はあなたの事、覚えていないのよ」

笹木部「あなたの言うコバヤシさんと、えーと、カンナさん? の事も、私は全く知らないわ」

トール「そんな…… だって、私達、ずっと隣同士で暮らしてきたのに……」

笹木部「あと、話の初めからずっと気になってたんだけど……」

トール「え……?」



笹木部「……隣の部屋は、もうここ一年くらいはずっと、空き部屋だったと思うわよ?」



トール「………… ………… …………は?」ゾクッ

笹木部「それ以前に住んでいた人も、コバヤシやカンナという名前ではなかったと思うけど……」ウーン

トール「え、いや、は? そんな……、そんな馬鹿な事……」

笹木部「あなた良い子そうだし、協力できるならしてあげたいんだけど…… ごめんなさいね。私、本当にそれ以上の事は分からないの」フルフル

笹木部「だから…… って、あ! ゴミ収集車そろそろ来ちゃう!? 急がなきゃ!」クルッ

トール「あ! ちょっと、待って――!」

笹木部「ごめんなさーい! 聞きたい事があれば他の人に聞くか、また後で聞きに来てー!」タッタッタ…………

トール「あ…………」

………………………………

44 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 22:13:36.21 ID:RHOuKnm+0

【マンション・廊下】

トール「………………………………」ムムムムム

トール(念の為にあの後、左隣の部屋に住むバンドマン・谷菜さん(マンドラゴラの断末魔みたいな声)と、
    上の部屋に住む木工家・曽根さん(電動ドリルの音がうるさい)にも話を聞いてみたけれど……)

トール(……二人とも、反応は笹木部さんと全く同じ。
    『私や小林さん、カンナの事は何も知らない』『私達の部屋は1年前から空き部屋のはず』……)

トール(証言は完全に一致していて、各々の勘違い・記憶違いという事は考えにくい……)

トール(彼らが嘘を吐いている? いや、そんな事をする動機はないだろうし、演技とはとても思えない反応だった。
    脅されて知らないふりをしているという線もないだろう)

トール(なら後、考えられる可能性は――)

トール「――魔法による、記憶改竄を受けた……とか?」

トール「魔法なら、そういう事も一応、可能ではある。けど……」

トール「1年という長期間の記憶を、無矛盾に、違和感なく改変を行うというのは、並の力量では不可能だ。
    しかもそれを一晩で、少なくとも3人に……?」

トール「余程高位の魔術師か、長く生きたドラゴン、神霊でもなければ…… いや、しかし……」ブツブツ

45 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 22:18:29.72 ID:RHOuKnm+0

トール「……あ〜〜〜、も〜〜〜! ダメだ、分からん!」ブンブン

トール(えーい、分からない事は後回し! とにかく小林さんとカンナの手がかりを探す事が先決!)パシン!

トール「――魔力感知魔法、展開! 探索・開始!」ブウン!



ブオンブオン ブオンブオン……



トール(この魔力感知魔法なら、魔力の強いドラゴンの位置は勿論、
    私が密かに魔力でストーキング……もといマーキングしていた小林さんの位置も、町内ぐらいの近隣であれば探知できる!)



ブオンブオン……



トール「…………………………………………」



ブオンブオンブオン……



トール「……くそっ! これも駄目なの……?」ギリッ

トール(何で? 現在地点どころか、魔力の残滓すら感じ取れない……)

トール(それどころか、小林さんやカンナだけでなく、ルコアさんやファフニールさん、エルマの魔力も感知できない……)

トール(皆、既にこの周辺にはいない……? いや、それでも魔力の残滓も感じられないのはおかしい)

トール(魔力感知の妨害が行われている……? 
    いや、それならそれで『妨害されている』という感覚がないのは変だ。今、魔力感知魔法は正常に作動しているはず……)

トール「それとも、私を超える魔法の使い手による、妨害している事を悟らせない程に高度な妨害魔法とか……?」

トール「……いやいや、私これでも上位の竜ぞ? そんな存在がそうそう、しかもこっちの世界にいるはずないですし……」ハハッ

トール「1兆歩譲って存在したとしても、そんな凄まじい存在に私やルコアさん達が全く気付かない訳がありません」

トール「……しかしそうなるとなぜ……? うーん、むむむ……」ムムム

トール「うーん、何だか不気味ですが…… 今ここで悩んでもしょうがなさそうですね」

トール「聞き込みも魔法も駄目なら、足で――いえ、ドラゴンとしては”翼”で直接稼ぐしかないですか」バサッ

トール「手がかりのありそうな場所……
    とりあえず小林さんが勤めてる会社、次にカンナが通っている学校、とかに行ってみましょう!」

トール「……もしかしたら異変が起きたのは二人が家を出てからで、案外二人とも平気にしてる可能性もありますし、ね! うん、大丈夫、大丈夫!」

トール「さあ、行くぞーー!」バササッ

バサッバサッ……



トール(……大丈夫、だよね?)



…………………………………………

46 : ◆bhlju8wMK6 [saga]:2021/06/07(月) 22:21:16.60 ID:RHOuKnm+0

…………………………………………

【小林が勤める会社・オフィス内】

カタカタカタ ピーガガガ ギャーギャー カチカチ、カタカタカタ……



トール(認識阻害ON)「さて、小林さんの職場に来てみた訳ですが……」チラッ



…………………………………………

社員A「はあ……はあ…… あー眠い…… キツ…… あーー……」カタカタカタ

社員B「オイオイ誰だよこのコード書いた奴…… 絡まり具合がスパゲッティってレベルを超えてんぞ……」ゲッソリ

社員C「納期数日前にwwwまた仕様変更とかwwwないわーwwwww ないわー………………」カチャカチャ

社員D「五徹目突入とか、我ながらやばい扉を開けちゃうかな……」ボロボロ

社員E「プログラムの中にはバ〜グが一つ、プログラムを直すとバ〜グが二つ……♪
    も一度直すとバ〜グが三つ……♪ 直してみるたびバグは増える〜……♪ へへ……へへへへ……!」フラフラ カタカタ

…………………………………………



トール「……相変わらず、忙しそうですねえ」テクテク

トール「皆さん、陥落寸前の城の兵の如く憔悴していて、見てるこっちまで疲れてきます……」ゲンナリ

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