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【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「私はこの絆を諦めません」【安価進行】

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672 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:07:22.70 ID:PKHgrFLn0





______ええ、フィクションですよ。

______私たちとは縁遠い世界のお話なんです、人の生き死になんて。




673 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:08:03.77 ID:PKHgrFLn0
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CHAPTER06

なんどでも祈ろう

非日常編



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674 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:08:37.27 ID:PKHgrFLn0

…………

……………………

…………………………………………
…………………………………………


暗く、昏く、深い地の底。私の体は重力に導かれるままに、堕ちていく。
耳元では風がゴウゴウと吹き上がり、私の体の逆をいく。
全身に感じる強く引力が死というものを強く感じさせる。


おしおきは消化不良なまま終わった。
ただ、この落下速度と落下時間。
言うまでもなくその末路は悲惨なものになるはずだ。
675 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:09:47.81 ID:PKHgrFLn0

私は諦観にも似た感情を抱き、目を瞑っていた。
瞼の裏には走馬灯のように、これまでにめぐると過ごした記憶が流れていた。
めぐると出会った頃のぶっきらぼうな反応をしてしまった私、体調を崩して看病に来てくれためぐる。
思えばあの時から心を開くことができたんだっけ。
この学園に来てからも、めぐるは常に私の傍にいて、依代であり支えになってくれていた。

……そのめぐるを、私が殺した。
自分の掌を見た。
おしおきの最中、抜けていく床と残された柱とに何度もしがみついたその手にはいくつもの擦り傷。

ただ、それを上塗りするかのように私の目には赤黒い染みが見えるのだ。
それは言うまでもなく、罪の証。

めぐるが最後に残した、生命の息吹。
覆面を外した時のあの瞬間、あの感触が染み付いている。
焦燥から私の手は手汗に塗れていて、掴んだ布地は妙に重たかった。

……ただ、めぐるは私のことを恨んではいないと思う。
傲慢ではなく、これは親友だからこそわかる確信だ。
きっとめぐるは誰にどんな理由で殺されたとしても、それを受け入れてしまう。
そんな彼女の寛容さに私自身ずっと甘えてきた。


だからこの掌の赤い染みは、めぐるの怨恨ではなく私が私に課した、重責なのだ。

676 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:11:16.67 ID:PKHgrFLn0


……まだ数秒、死までは時間があるらしい。

最期の最期に、私はもう一度目を閉じた。
死の間際に見る光景は、この学園の無情さではなく美しい記憶の残響がいい。

最期くらい、我儘を言っても許されるかな。



……ただ、私は忘れていた。
この学園は、私たちの覚悟や決意、そして道理をも裏切って嘲笑う。
死を前にして行った私の葛藤の全ては……





___徒労に終わった。


677 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:12:17.08 ID:PKHgrFLn0

ドサッ

「痛っ……?!」

全身を襲う鈍い痛み。
急速に異常なまでの滞空時間で落下した私の骨という骨は見るも無惨に砕け散り、
臓物はぐちゃぐちゃに掻き乱されて虫けらのような骸と化す……はずだった。

その痛みは死というにはあまりに優しく、まるでプールの飛び込み台から正面落下したような“打ち身”だったのだ。

「助かった……?」

そしてそれと同時に襲ってくるのが……

「な、なに……この匂い……」

臭気。
夏の終わり、三角コーナーに溜め込んだ野菜が放つような鼻を刺す刺激臭。それがあたり一体に立ち込めている。

どうやら私の鼻の感覚はそれなりに信頼できるらしい、
つい今し方“夏の終わりの三角コーナー”と評したその臭いは、その比喩と当たらずも遠からずだったのである。
私の死を打ち身にとどめた緩衝材の正体は、ゴミ袋。
文字通りに山積みになったゴミ袋が私の体を優しく受け止めて、あたり一体に残飯を撒き散らしている。
中には数日前に食堂で見かけた食材なんかもある。
678 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:13:16.55 ID:PKHgrFLn0

どうやらここは“ゴミ捨て場”、その終着点のようである。
学園にはトラッシュルームが存在し、手頃なものなら焼却処分ができるが、そうでないものは全てここに押し込められているようだ。
故障したクローゼットや怪しい機材なども投棄されており、手付かず。
臭いものには蓋をする、煩わしいものは目の届かないところに押し込む。
なんとも杜撰な処理の形だ。

ただ、今回ばかりはそれに助けられたのも事実。
暫く打ち身に身を捩っていた私も、その身を起こしてあたりの散策を始めた。
つい先ほどまで死を覚悟していたというのに、いざ生を掴んだからといって縋るのは醜いだろうか。

ただ、どれほど醜くても生に縋らないのは不誠実だと思う。
それはこの学園で生きてきた私だからこそ、犠牲になった皆さんの思いを引き継いだ私だからこそ。
真乃とめぐるとも約束をしたんだから。


……生きないと。

679 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:14:09.63 ID:PKHgrFLn0

強い決意と共に、手当たり次第にそこら中のゴミ袋に手をつけた。
食べられるもの、飲めるもの。
とにかく食いつなげるものを探した。

見上げた天井は目視できないほど遠く、そして暗い。ここから助けなしに脱出することは不可能だろう。
なら、摩美々さんたちを信じてなんとか生き延びる他ない。

「……うう、これも腐ってる」

だが、事はそううまくはいかなかった。ゴミ袋は、”ゴミ“が入っているからこそゴミ袋なのであり、実用性のあるものはそもそも入らない。
まして、口に入れていいものなんかは。

「……お腹空いたな」

空間の隅から隅まで、目につくものは一通り調べ尽くした。ただ、どれほど探そうとも成果を上げる事は出来ず。
体力を消費して汗をかいただけの骨折り損。腹の虫も癇癪を起こして煩い。

このままでは、まずい。

せっかく掴んだ生、それを繋げていくに必要なものが見当たらなかった私は……





____ひたすらに眠った。

680 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:16:09.89 ID:PKHgrFLn0

全ての体力消費を抑えて、空腹や喉の渇きを体に感じさせる時間を削った。
目が覚めるたびに無理矢理に瞳を閉じて再度眠りにつく。

それを何度も繰り返し、数時間、数日……ただ、絆を信じて眠り続けた。





___ドサッ


そして、その時は来た。
いつもより鈍い音を立てて何かが落下した、その衝撃からか自然と目が覚めた。
硬い床に何も敷かずに長時間横になっていた全身がバキバキと聞いたことのない軋みを立て、痛みを伴う。
そんな満身創痍な体で落下した何かに向かって近づいていくと……

「……え?」

モゾモゾとその“何か”は動き出す。
内側から蹴破ろうとしているのか、あちらこちらから内側で暴れている痕跡が浮き上がる。
そこから暫く、まるで蛹から蝶が孵化するかのように彼女は姿を表した。

「……ふー、やっと出れたぁ」
「ま、摩美々さん?!」
681 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:17:43.99 ID:PKHgrFLn0
◆◇◆◇◆◇

摩美々さんは首や肩をポキポキと鳴らしながら立ち上がると、私の顔を見ていつものほくそ笑みを披露した。


摩美々「お久しぶりです、覚えてますかぁ? 田中摩美々と申しますー」

灯織「覚えてますよ、当然じゃないですか!」

摩美々「おー、ツッコむ元気があるぐらいには健康そうでなによりー」


開口一番に揶揄いから入るあたりやっぱり摩美々さんだ。
数日間一人っきりで悪環境に置かれていたこともあり、いつも以上にコミュニケーションが心に沁みる。
そんな会話に思わず目頭が熱くなりかけたのだけど……


灯織「……あの、摩美々さん」

摩美々「んー?」

灯織「その、頭にカップヌードルの容器が」


摩美々さんの頭に載っているそれがどうも目について涙は引っ込んでしまった。


摩美々「……」


本人はどうやら気づいていなかったらしい。
無言で後ろを向いて、頭のカップヌードルの容器を払うとすぐにこちらに平然と向き直った。
……ただ、その耳は真っ赤に染まっている。
682 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:19:11.48 ID:PKHgrFLn0

摩美々「それよりお腹空いてないー?」

(なかったことにするんだ……)

灯織「ええ、まあ……食べるものどころか飲むものすら無くて今も息絶え絶えです」

摩美々「だと思ったのでー……じゃーん、摩美々からのプレゼントだよー」


摩美々さんが懐から取り出したのは水に入ったペットボトルとあんパン。
これまた数日ぶりに目にする文化的な食事。何も口にしていなかった体は、それを目視した瞬間に一気に口に涎を充満させた。


摩美々「その前に、ちゃんと手、拭いてからねー。今の灯織ってば手がネチャネチャだよー」

灯織「え」


久方ぶりに掌を見ると、成る程摩美々さんの言う通り。
食い繋ぐためにゴミ袋を漁ったその掌はこれまでに経験したことのないような感触の膜が貼られている。
……このまま食べたらお腹を壊すどころじゃ済まなさそうだ。

摩美々さんから除菌ティッシュを譲り受け、ちゃんと清潔にしてから食事を口へと放り込んだ。
栄養が枯渇状態にあった体にはほんの一口でも染み渡るようで、思考が冴え渡り、肉体の疲労が吹き飛んでいくのを感じる。

なんとか私は、【生】を守り抜いたんだ。
683 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:20:59.72 ID:PKHgrFLn0

摩美々「数日ぶりの食事はどうだったー?」

灯織「大変美味しかったです……ありがとうございました」

摩美々「その調子だと本当に何も口にしてなかったんだねー、口元が緩みきってるよー」

灯織「め、面目ないです……」

摩美々「ま、仕方ないでしょー」


食い意地の張った私を一頻り揶揄い終えた摩美々さんは、近くに腰掛けて私に向き直る。
つい数瞬前とは異なる、真剣な面持ちだ。


摩美々「……ねえ、灯織」

灯織「……摩美々さん?」


その声色も、これまでと違った熱を帯びている。
胸を抑えながら声を絞り出すような、これまでに見たことない摩美々さんを前に思わずこちらも襟を正す。


摩美々「ごめんね、中々助けに行けなくてー……ずっと一人で大変な思いをさせて……辛かった、どころじゃないと思うしー」

灯織「い、いえそんな……」
684 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:23:18.43 ID:PKHgrFLn0

摩美々「おしおきが失敗した瞬間、なんとか灯織を助けなきゃって……みんなでどうにかここまでくる方法を考えて考えて、でも糸口が見つからなくて……なんとかチャンスを見つけ出して……」

摩美々「もしかして、こうしてる間にも灯織は死んじゃってるんじゃないかって……それでまた焦って……」

摩美々「本当に、生きてくれててよかった……生きてて、良かったよ灯織」

灯織「摩美々さん……」


初めての表情だった。
揶揄いや悪巧みで誤魔化していない、素のままありのままの摩美々さんの表明した【安堵】。
いつもなら取り繕うだろう頬の綻びもそのままに、優しい言葉をかけてくれる摩美々さんを前に、私の目頭は再度熱を帯び始めた。


灯織「私も……生きて、再度会うことができて……本当に良かったです……」

摩美々「……!! も、もぅ……泣かないでよー」

灯織「ふふ……摩美々さんこそですよ」

摩美々「え……はぁ、摩美々の涙なんかレア物なんだから、光栄に思いなよー」


摩美々さんは照れくさそうにしつつも、その涙を隠そうとはしなかった。
私のために流してくれているその涙、それを思うとより一層私の視界も滲む。

暫く、感情に身を委ねて泣き続けていた。
何か再会を喜んだり、励ましたり、言葉を交わすわけでもない。
ただかけがえのない友人との再会、その間のある絆を噛み締めて、身を浸していると自然とそれ以外の選択肢が消えていた。
これまでに過ごした時間や感傷が何度も何度も浮かび上がり、その度にピークを迎えて収まる余裕はなく。

落ち着くまでのどれほどの時間を要したのかはわからない。
ただ一言言えるのは全てが収まった時には私の服の裾はすっかり水に浸されていたということだけだ。
685 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:25:06.22 ID:PKHgrFLn0

摩美々「……さて、ようやく収まったわけだけど」

灯織「ええ、なんとか落ち着きました」

摩美々「そろそろ、脱出と行こうかぁ。いつまでもこんな臭いのするところにいるわけにもいかないし、いい加減にはねー」


そうだ、元々摩美々さんはそのためにわざわざやってきてくれたんだ。
摩美々さんが指さした先は、壁に取り付けられた簡易梯子。
私も落ちたすぐ後にそれを登ろうかと考えたが、
登った先に出口があると言う確証もない、無駄なリスクを踏む事は避けたかったので放置していたものになる。


摩美々「ここに落ちてくる前に、上で扉の鍵は開けておいたのでここを登れば元の生活に戻れるはずだよー」

灯織「なるほど……しかし、かなり長そうですね」

摩美々「まぁねー……何せ学園の本当の意味での地の底なんだしー」

灯織「でも、行きましょう……なんとしても、生きて戻らないと」

摩美々「覚悟は出来てるみたいだねー、それじゃ行こっかぁ」

灯織「はい!」

摩美々「……」

灯織「……」

灯織「…………摩美々さん?」

摩美々「何やってるのー? 灯織が先に登るに決まってるじゃーん」

灯織「え……わ、私ですか……?」

摩美々「だって、ほら。摩美々ってばスカートだしー」

(私もそれはそうなんだけど……)


摩美々さんの言い分には釈然といかない部分もあったけど、ここでごねていても仕方ない。
ひとまず飲み込むことにして、鉄の梯子へと手足をかけた。
686 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:26:34.17 ID:PKHgrFLn0

__

____

_______

カンッ カンッ カンッ

それから暫く。鉄と靴とが奏でる無機質な音だけが響く時間が流れた。
音が耳に届けば届くほど、自分はここまで奥深くまで落下していたのかと驚かされる。
上を見上げても暗闇が続くばかり、まだまだ終わりは見えなさそうだ。


摩美々「ねえ、灯織ー」

灯織「摩美々さん、どうしました?」

摩美々「登りながらでいいからさぁ、脱出した後のことを話しとこうかぁ」

灯織「そうですね……私がいない間の学園の事情なども伺いたいですし……」

摩美々「まぁそれも大事なんだケド……」

摩美々「多分灯織は、ここを出た瞬間モノクマに命を狙われると思うんだよねー」

灯織「ええ?!」

摩美々「しょうがないよー……だって灯織はおしおきが失敗して偶然命を拾った形……モノクマとしてはちゃんと殺すところまでやっておきたいはずでしょー?」

灯織「そ、それはそうかもしれませんが……」

摩美々「出た瞬間その場でおしおき、なんてこともあり得なくはないと思うよー」

灯織「そ、そんな……なら、脱出なんてしたところで……」

687 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:29:06.34 ID:PKHgrFLn0

摩美々「まぁ落ち着きなってー……それをどうにかするために私が来たんでしょー」

灯織「どうにかすると言われましても……」

摩美々「灯織がおしおきを回避する方法はひとつだけ……あのクロ判定が不適切なものだったと証明することだよ」

灯織「……え?」

摩美々「要は、灯織がクロじゃなかったことを証明しておしおき自体を不当なものだったと指摘するんだよー」

灯織「え、ええええ?! 摩美々さん、めぐるの命を奪ったあの爆弾は私の行動が引き金になってですね……?」

摩美々「もう一度、その議論をやり直そうよー。私たちは灯織に死んで欲しくないんだよー」

灯織「し、しかしですね?!」

摩美々「それに、あの議論は……まだ完全じゃないと思うんだー」

灯織「……議論が、完全じゃない……? でも、すべての証拠品を検討しましたし、あらゆる可能性はつぶしたと思うんですが……」

摩美々「確かに摩美々たちの知る証拠品と状況証拠はすべて検討したケド、それがすべてじゃないと思うんだよねー……」

灯織「……」

摩美々「それに、灯織自身はどうなのー?」

灯織「私、ですか……?」

摩美々「めぐるを殺したのが自分で、納得できるのー?」


___納得なんかできるわけない。それは、当然の心理だ。

後にも先にもこれ以上はない親友を手にかけた事実、否定できるのなら私だって否定したい。
でも、その否定をしてしまうことは、めぐるの死から目を背ける以上に不義理だと思う。
自分自身にかかる責任を放棄する、最低最悪の身勝手。


灯織「……だとしても、受け入れるしか」

摩美々「はぁ……灯織ってば相変わらずいい子過ぎー……もっと自分の気持ちに素直になりなよー」

灯織「そうは言いますが……私はめぐるの死においては何よりも事実を尊重したいんです。それがめぐるに対しての誠意であり、義務だと思うんです」

摩美々「……灯織、この前の裁判の最後に見た映像、覚えてるよねー?」

灯織「映像、ですか……?」

(おそらくそれはきっと、めぐると樋口さんが事件の直前に交わした会話の映像……)


688 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:29:37.70 ID:PKHgrFLn0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

めぐる『円香……本当に、やるの……? わたしを殺して、灯織たちに絶望させるつもりなの……?』

円香『……そうだけど』

めぐる『これ以外の方法はなかったの?……どうしても、みんなはわかり合えなかったの?』

円香『……しつこい、言ったでしょ。分かり合うとか分かり合えないとかの次元じゃない。国籍が変われば言葉は通じないのと同じ、そもそも別の種類の人間だったってだけ』

めぐる『ちがうよ』

円香『……は?』

めぐる『言葉が通じなくても、気持ちは通じ合える……円香が別の種類の人間だって思っても、心を通わせることはできるはず……! 灯織たちは、円香が思うような悪い子たちなんかじゃ……!』

円香『やっぱりわかってない。灯織たちの掲げる絆とやらの崇高さ、美徳は十分に理解してる。……そのうえで、それを掴む権利が私には無いってだけ』

めぐる『そんなことないよ!』

円香『……もういい?めぐると雑談している間に邪魔が入っても困るから』

めぐる『……わかった、でも最後に一つだけ円香に聞いてもらってもいいかな』

円香『……何?』

めぐる『わたしも、灯織も、摩美々も愛依もチョコも雛菜も……これまでに犠牲になったみんなも……全員が、円香のことを大好きだから!』

円香『……今からその相手に仲間を殺す道具として使われても?』

めぐる『円香のすることは許せないよ。確証のない計画で仲間の命を巻き込んで……でもね、円香という一人の女の子が元々すごく優しい子だってことは知ってるから』

円香『……罪を憎んで人を憎まずってわけ? お涙頂戴でも狙ってるの?』

めぐる『円香、助けてあげられなくてごめんね』

円香『……うるさい』


ブツンッ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
689 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:32:06.70 ID:PKHgrFLn0

摩美々「あの映像の内容を振り返ってみると、一つだけ【不自然な点】があるよねー?」

灯織「不自然な点……ですか……?」

摩美々「めぐるの言葉、『確証のない計画で仲間の命を巻き込んで』……これってめぐるの視点から見ると不自然だよねー?」

灯織「……どういうことでしょう」

摩美々「確かにめぐるは今から自分自身が殺されることはわかってる、でも円香の計画まで知ってるのはおかしくないー? 覆面をかぶせて、薬品Aで全身を麻痺させて最終的に灯織に爆殺させる……そんな計画をめぐるは知ってて受け入れたってワケー?」

灯織「で、でも……あのめぐるは拘束されていましたし、受け入れざるを得ない状況だっただけなんじゃ……」

摩美々「……灯織、よく思い出して。八宮めぐるっていう女の子のことを、灯織の一番の親友のことをよく思い出してよー」

(めぐるのことを……?)

摩美々「自分の動きを封じられたぐらいで諦めるような女の子だったぁ? 仲間の命が危険にさらされる計画を聞かされて、黙っていられるような女の子だったぁ?」

灯織「……!!」

(……違う)

(……めぐるはきっと、そんな状況下なら自分の命も顧みずに食ってかかるような……誰かのために動ける人間だ)

(もし、樋口さんの『絶望計画』を聞かされていたなら……もっとそれに抗った痕跡があったはず)

(でも、あの映像のめぐるは……衣服の乱れすら見えなかった。まるで計画そのものに賛同しているかのように)
690 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:32:37.73 ID:PKHgrFLn0

摩美々「……ねえ、灯織。あの映像で二人の言っていた計画って、本当にこの前の裁判の話だったのかなぁ」

灯織「……え?」

摩美々「めぐるはもっと別の何かを知っていて、それであの事件で命を落とすことを……受け入れたんじゃないかなぁ」

灯織「めぐるが……?」

摩美々「ま、あくまで私の想像でしかないんですけどねー。それでも、あの映像に違和感を感じたのは事実だよー」

(……)

(……もし、仮に。もし仮に……あの事件の真相が違っていて、私がめぐるを殺害したのでなかったのなら)

灯織「……摩美々さん、我儘を一つ言ってもいいでしょうか」

摩美々「んー?」

灯織「……もう一度、私と一緒に戦ってはもらえませんか?」

摩美々「……ふふー、望むところですよー」

691 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:33:38.92 ID:PKHgrFLn0

__

____

_______

カンッ カンッ カンッ

そしてまた暫くの時間が流れた。
鉄の足場を掴んでは離して下へと送り、また上から足場が降りてきてそれを掴む。
何度も何度も同じ作業を繰り返すだけの時間、視界の一切も変わらない時間は妙に長く感じられた。

その長い長い単純作業の繰り返しは……今ようやく終わりの時を迎える。


灯織「……摩美々さん、着いたみたいです」

摩美々「ふー、もう腕も足もガクガクだよー」

灯織「天井の扉、こちらを押し開ければいいんですか?」

摩美々「そうだねー、降りてくる前に鍵は開けといたから押せば開くんじゃないかなぁ」

灯織「わかりました……それでは、いきます……!」


グッと体重を乗せて押し上げた。
分厚い鉄板を切り出したような扉は想像以上の重量で、気を抜くと押し負けそうなほどだ。
奥歯をぎゅっと噛みしめて、飛び上がるようにして一気に押し込んだ。


ガコンッ


その力にこたえるかのようにして鉄板は押しあがり、一気に視界には光が飛び込んできた……!
692 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:36:10.30 ID:PKHgrFLn0
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【トラッシュルーム】

……帰ってきた。
見慣れたような、見慣れないような、そんな不和に充満したこの空間は私もよく知るあの学園の一部屋だ。

灯織「着いた……」


地の底からの生還を喜ぶより先に、その場に倒れこんでしまった。
全身を襲うすさまじいほどの疲労感。手も足ももう棒のようで感覚がおかしい。


(確実に後々筋肉痛になるな……)

摩美々さんも私の後に継いで出てきたものの、むしろ私以上にぐったりした様子だ。床に溶けるように寝そべる様子がなんだかかわいらしい。

灯織「……帰ってこれたんですね」

摩美々「なんとかねー、できればもう地の底にはいきたくないかなー……」


ただ、休む暇など与えてはもらえない。私たちが疲労感に浸り、手足をそこらに伸ばしていたのもつかの間。
見慣れたような、見慣れないような、そんな最悪な存在はすぐにその姿を現した。
693 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:37:21.05 ID:PKHgrFLn0

モノクマ「こらー! なんで生きてんだタコこらー!」

摩美々「うわぁ……もう来た……」

モノクマ「なんだその言いぐさは! ボクだってね、これが仕事なんだよ! 決して学園内の女子高生濃度が上がったからそれをかぎつけてきたとかそういう話じゃないんだからね!」

灯織「はぁ……」

モノクマ「それより! 風野さん、キミもわかってるよね? キミは本来ここにいちゃいけない人間、生きてちゃいけない人間なんだよ」

灯織「……っ!」

(摩美々さんの言ってた通りだ……モノクマはここに私がいることをただ嗅ぎつけただけじゃない……)

(私のことを、殺しに来てる……!)

モノクマ「おしおきは一時失敗しましたがね、今度こそきっちりしっかり執行させてもらいますよ! そうじゃなきゃトッチラケだからね!」

摩美々「灯織、わかってるよね。覚悟を決めるんだよー」

(覚悟……)

(……よし)
694 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:39:09.72 ID:PKHgrFLn0

灯織「モノクマ、私をおしおきする前に一ついいですか?」

モノクマ「ん?」

灯織「本当に、あのクロ認定は正当だったと思っているんですか?」

モノクマ「……なにそれ、どういう意味さ」

摩美々「言葉通りの意味だよ、あの事件は本当に灯織がクロだったと思ってるわけー?」

モノクマ「思ってるも何も、オマエラの推理で導き出した答えがそうなんでしょ! 急に無責任なことを言い出さないでもらえる?」

摩美々「だとしてもだよ、それに考えなしに便乗して灯織をおしおき……まぁ未遂だったケド、それまでしちゃって不正解でしたーなんて、絶対にあっちゃならないよねー?」

モノクマ「うぐっ……で、でもあの事件は状況からみても風野さんがクロで間違いない……」

摩美々「本当にそう? あの爆発の瞬間までめぐるが生きていたかどうか、モノクマは確かめたの?」

モノクマ「うぐぐぐ……」

(さすがは摩美々さんだ……交渉力というか、理で詰めていく凄みは摩美々さんには敵わないな……)

灯織「もし、モノクマがクロをしっかりと把握していない状況下で私を自己判断でクロとして処刑したのであれば……それはルールとして破綻していませんか?」

モノクマ「……オマエラ、自分たちが何言ってるのかわかってるの?」

モノクマ「今オマエラが口にしてるのはボクへのボートク、この合宿生活の管理体制への反発だよ? 特に田中さんはその意味をよく分かってるはずだよね?」

(……!!)

695 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:40:29.98 ID:PKHgrFLn0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

モノクマ「でもさ、今オマエが口にしてるのってこの合宿生活の存亡にかかわる話なわけじゃん?」

モノクマ「ボクのミスだって指摘するんだったら、それに見合うだけの覚悟とリスクを背負ってもらわないと!」

灯織「覚悟と、リスク……?」

モノクマ「田中さんの筋が通らなかったとき、田中さんにはこの合宿生活の存続を妨げた罰としておしおきさせてもらうから!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

摩美々「それはモチロン誰よりも、ねー」

モノクマ「ふーん……ヨユーはシャクシャク。リスクも何もかもわかったうえで、ってことなんだね?」

灯織「もちろんです!」

(……そう、きっとこれはめぐるが私たちのために残してくれた道)

(あの映像の中に見た違和感は、嘘じゃないはず……!)

モノクマ「……よし、わかりました! それならオマエラの上告をボクも受理してあげよう!」

灯織「……!!」

モノクマ「ただし、白瀬さんの事件でも言った通り……もし、この指摘が間違いで、本当に風野さんがクロだと認定されたときにはその責任をとって」
696 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:41:00.49 ID:PKHgrFLn0



モノクマ「二人、いや……全員におしおきを受けてもらおうかな!」



697 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:42:24.10 ID:PKHgrFLn0

灯織「……えっ?」

(全員に、おしおき……?)

灯織「ちょ、ちょっと待ってください! なんでほかの人も巻き込むんですか?!」

モノクマ「だってオマエラの言ってることって学級裁判の否定どころか、ボク自身の管理責任にもかかわる話でしょ? それぐらいのリスクは背負ってもおかしくないよね?」


……めちゃくちゃだ。
そもそもこんな生活に無理やり引きずり込んでいる時点で非は間違いなくあちらにあるというのに、なぜこんな責任まで背負わされねばならないんだ。

不条理を極限まで煮詰めたような理不尽に、一気に血の気が引いていく。
一度振り上げた拳の、その感覚がどんどん遠ざかるような悪寒が全身を襲う。この拳に、全員の命がかかっている……?


そんなの、私は……
698 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:42:51.28 ID:PKHgrFLn0



摩美々「了解でーす」



699 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:43:55.64 ID:PKHgrFLn0

灯織「ま、摩美々さん?!」

摩美々「いいよー、裁判の結果を否定できなければ摩美々たち全員その場でおしおきねー」

モノクマ「うぷぷぷ……随分と思い切りがいいんだね。赤信号、みんなで轢き殺されれば怖くないって?」

摩美々「お生憎ですケド、轢き殺されるつもりは毛頭ありませんのでー」

灯織「摩美々さん、そんなその場の勢いだけで啖呵を切るような真似……」

摩美々「灯織、さっきも言ったケド、“私たち”は灯織に死んでほしくないんだよー? これぐらいのリスク、全員背負う覚悟はしてるんだよねー」

灯織「……!!」

(まさか、私を助けると決めたその時から……?)

モノクマ「やれやれ、勇敢でございますこと! でもそれってさ、蛮勇って言うんだよ? 向う見ずで自分の命を顧みない、さながらギャンブル狂いのようだよね」

摩美々「ギャンブル? ふふー、それだったらむしろ好都合ですねー、摩美々は負ける賭けはしないでおなじみですからー」

摩美々「これが賭けなら、摩美々は勝っちゃいますねー」

(摩美々さん……すごい、モノクマ相手に一歩も譲らない……!)
700 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:45:44.59 ID:PKHgrFLn0

モノクマ「クックックッ……面白い、面白いクマ! オマエラがそれほどの覚悟を持っているというのならボクもそれに答えてやるクマ!」

モノクマ「ボクとオマエラの最終決戦! 次の裁判で雌雄を決すクマーーーーーー!!」

灯織「最終決戦……!!」

モノクマ「風野さんのクロ判定を覆せなきゃおしおき……どうせそれで終わるんなら、もっと大々的なお祭りにしたいじゃない? だからもう一つとっておきの楽しみも用意しておこうかなって!」

摩美々「それってどういう……」

モノクマ「この学園の真実だよ!」

(……この学園の真実……!!)

モノクマ「オマエラはなぜこの学園にいるのか、なぜコロシアイをしているのか、なぜこの学園には他に誰もいないのか、etc…そういう一切合切の謎を全部ここで解き明かしちゃおうよ!」

モノクマ「ビバ! 希望ヶ峰学園・真相編! これは忙しくなるぞーーーー!!」

(な、なんだかすごいことになってしまった……)

(この学園のすべての謎を、この裁判で解き明かす……なんて!)
701 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:46:39.75 ID:PKHgrFLn0

摩美々「灯織、なんだかすごいことになってきちゃってるケド……」

灯織「……」

摩美々「ま、その顔を見ればどうするかなんて聞くまでもないかぁ」

モノクマ「決戦の日は明日! 今日は疲れてるだろうし、ひとまずは体調を万全にしておくことだね! オマエラがどこまでボクに迫れるか楽しみにしてるクマ!」

灯織「……はい」

灯織「モノクマ、いえ……黒幕のあなたこそ覚悟をしておいてください。すべて白日の下に晒されて、己が失態の下にすべてを台無しにする……その覚悟を!」


モノクマは私の言葉を誹りもせずに聞き入れ、そのまま姿を消した。
残された私たち、その体は妙に火照っている。
啖呵を切ったことで血が上っているのはモチロンだけど、それ以上に……
私以外の皆さんが、私のために命をもかける覚悟でいてくれている。その実感が生の熱気を高めてならないのだ。


摩美々「やっぱりこういう展開になったねー、おおむね予想通りだケド」

灯織「やっぱりわかってたんですね……」

摩美々「ひとまず合流しよう、明日の作戦会議もしなきゃだしー」

灯織「は、はい!」
702 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:48:57.65 ID:PKHgrFLn0
-------------------------------------------------
【食堂】

摩美々さんに連れられ食堂に踏み入ると……


智代子「灯織ちゃんだ! 本当の本当に、灯織ちゃんだ!」

雛菜「あは〜〜〜〜〜! 無事だった〜〜〜〜〜〜!」

愛依「だいじょーぶ?! ケガしてない?!」


すぐに皆さんが駆けつけてくれた。
どうやら摩美々さんを地下に見送った後はここで待機する手はずだったみたい。
でも、今この瞬間まで気が気でなかったらしい。机の上のお茶が手付かずでぬるくなっている。

私たちはすぐにここに至るまでの経緯を説明した。
地下でなんとか食いつないだこと、私の命をモノクマが狙っていること、そしてそれを跳ね除けるための裁判が行われること。
その裁判では学園の真実をも解き明かさねばならないこと。そして、皆さんの命もかかっているということ。
703 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:49:45.59 ID:PKHgrFLn0

だけど、やっぱり摩美々さんの言っていた通りらしい。
そんなリスクは織り込み済み、だったようだ。
チョコ、雛菜、愛依さん……誰一人としてそのリスクを前にして震え上がるような素振りはなく、むしろ決意を新たにしたような面持ちだった。


智代子「いやはや……とうとうこの時が来ましたかって感じだね!」

雛菜「これで勝ったら雛菜たちも学園から出られるんでしょ〜? なら頑張るしかないよね〜〜〜!」

愛依「おっし、うち、なんか燃えてきた!」

摩美々「お、頼もしいじゃーん」

智代子「えへへ、摩美々ちゃんが地下に行ってからわたしたちも色々話してたんだ。この学園に来てからのこととか、外の世界のこととか」

雛菜「やっぱり、雛菜たちは外に出なきゃだめだよ〜。それが雛菜たちにみんなが託した願いでもあるんだしね〜」

愛依「それに、灯織ちゃんを守るためって思うとなんか勇気が湧いてくるし!」

灯織「皆さん……」

智代子「だから大丈夫! わたしたちの命がかかってるからって、変に気負わなくていいからね! 同じリスクを背負って一緒に戦う者同士、結束を高めて参りましょう!」

(すごいな、この学園で過ごすうちに、皆の表情もだいぶん様変わりした……)

(戸惑うばかりだった私たちも、今こうして武器をとれるようになった。これは成長といっても差し支えないんだろうか)
704 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:51:11.51 ID:PKHgrFLn0

雛菜「ね〜、それより〜」

灯織「……雛菜?」

雛菜「灯織ちゃん、なんだか臭いよ〜?」

灯織「えっ」

摩美々「ずっと地下にいたから匂いが染みついてるんじゃないー? ふふー、案外自分じゃ気が付かないものですしねー」

愛依「……摩美々ちゃん、言いにくいんだけど……摩美々ちゃんもちょっとだけ匂う……的な」

摩美々「えっ」

智代子「くんくん……ホントだ! 二人とも雨の中散歩した後のマメ丸やカトレアみたいな匂いがするよ!」

雛菜「この匂い雛菜好きじゃない〜〜〜……」

灯織「ご、ごめん……」

摩美々「……とりあえず、私たちはお風呂にでも入ろっか」

灯織「そうしましょうか……」
705 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:52:52.53 ID:PKHgrFLn0
-------------------------------------------------
【灯織の部屋】

それから私たちはそれぞれの部屋に分かれ、ひとまず今晩はゆっくりと休むことにした。
明日はモノクマとの対決、どんな展開になるのかわからないし、きっと長丁場になる。
耐え忍ぶだけの体力はしっかりと回復させておかないとだめだろう。

……正直、怖い。
これまでの学級裁判だってずっと命はかけてきたし、合宿生活そのものだって殺されるリスクはあった。

でも、今回はそんな単純な生死のやりとりじゃない。
一度確定した結論をひっくり返し、そのうえですべての謎を解き明かすという難易度の高い要求が為されていて、その上に私たちの命がある。
私に本当にできるのだろうか、その自信があるかといわれると疑問符が浮かぶことは否定できない。

私は弱い人間だ。
もう引くことができないこの状況下で、まだ意志と覚悟とを固めることができないでいるんだから。
引っ張ってくださる皆さんにおんぶにだっこ。
以前摩美々さんは私のことをリーダーだと評してくれたけど、そこに自信が備わっているかといわれると不安はある。


____だから、もう少しだけ私には助けが必要だ。

私は自分の部屋の引き出し、そこにしまい込んでいた“それ”を取り出して、ある場所へと向かった。
706 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:54:51.49 ID:PKHgrFLn0
__

____

_______


「……よし、誰もいない」


別に見つかってもよかったのだけど、この期に及んでまだこれに頼るのかと思われると少しだけこっぱずかしい。
道中誰にも出会わなかったのは幸運かな。

音をたてないように扉を閉めて、ゆっくりと近くの席に腰かけて、そのディスプレイの電源をつけた。
真っ暗な部屋に青白い光が仄かに浮かび上がる。

私がやってきたのは【視聴覚室】。
小糸の事件が起きるきっかけとなった動機ビデオ、それを見たのはこの部屋だった。
ほかには甜花さんの用意したゲームをあのモニターにつないで、ゲーム大会なんかもやったんだったっけ。摩美々さんに勝ったのは我ながら驚いたな。
もうそれも、少し前の記憶。この学園で過ごした時間もかなりになるのが物悲しく感じられてしまう。

そんな悲嘆を押し込むように、DVDプレーヤーに自室から持ち込んだものを読み込ませた。
少しばかりの機械音とともに装置は作動し、画面上にもぷつりぷつりと波が生まれだす。

そして、それは始まった。


707 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:55:59.18 ID:PKHgrFLn0

『大人気のアイドルユニット、イルミネーションスターズ。かわいらしく、華やかな彼女たちにはアイドルのステージが本当によく似合いますね』


画面上に浮かび上がるのは、私たち。
真乃とめぐると私、もう二度と揃うことのない私たちがステップを刻み、必死に歌っている。

そう、これは【動機ビデオ】だ。
私たちのパフォーマンスの映像ののち、プロデューサーの身に危険が迫る映像が流れ、私たちの動揺を誘ったあの映像。

実際この映像の真偽はいまだにわかっていない。
ここに流れている出来事を前にすると心がざわつくことは否定できないけど、今私がここで映像を見ている理由は、そこじゃない。


私は必死に耳を澄ました。
モノクマの悪趣味なナレーションを他所において、その向こうに聞こえる私たちの歌声に耳を澄ませる。

それは確かな厚みと存在感があって、ナレーションを上乗せしたところで打ち消せるようなものじゃない。
真乃とめぐるの確かな“命”がそこに存在している。
708 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:57:19.94 ID:PKHgrFLn0

≪ひらひら 織り重ねている
頭の中 今日までのキセキを
ふわふわ 舞い上がってゆく 
幸せが溢れてしまいそう≫


今となっては随分と昔に感じられる、レッスンの日々。
ずっと隣で聞いてきて、自分の声を重ね合わせて作り上げてきたその全てが鮮明に呼び起こされる。
努力に葛藤、そして歓喜。共に過ごしたどの時間も他に代えがたい大切な宝物だ。
……でも、私はその感傷に浸るために来たわけではない。


≪ひとつのココロは些細なことで
潰されそうにもなるけど
重ね合わせれば 強くなれる そう教えてくれた≫


私はやっぱり弱い人間だ。
一人でモノクマに立ち向かう勇気なんて全く持っていないし、いざそうなっても膝はガクガクで体の震えも止まらないだろう。
今だって、逃げ出したい思いを必死に抑え込んでいる。

709 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 20:58:28.11 ID:PKHgrFLn0

≪大丈夫 泣いたりしないよもう
ちゃんと胸に 刻まれてる
あなたの優しい笑顔≫


それでも、折れたりなんかしない。
絶望がどれほど押し寄せようとも、不安がのしかかってこようとも、私たちには絆がある。
お互いを信じて、背中を託せる仲間がいる。私たちに思いを託してくれた仲間がいる。

……だから、戦える。戦わなきゃ、いけないんだ。


≪奏でるよ 私が 貰ってきた
輝きのハーモニー
ほら スマイルシンフォニア≫


「……真乃、めぐる。ありがとう」

最後まで聞き遂げた私はプレーヤーの電源を落として、部屋を後にした。

本当は、もっとずっと見ていたいし、聞いていたい。思い出の中の記憶に浸っていたい。
でも、二人はそんなことを望んでいないはずだ。
夜空を彩る星が二晩として同じ位置に出ることがないように、私たちの行く道に停滞はない。
星座ごと、夜空ごと、ゆっくりとでも着実に進んでいかなくちゃいけないんだ。


_____最高の輝きは、その行きつく先でこそ生まれる。
710 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:01:00.95 ID:PKHgrFLn0

___

_____

_______


【灯織の部屋】

キーンコーンカーンコーン……

モノクマ『オマエラ、おはようございます!朝です、7時になりました!起床時間ですよ〜!』

モノクマ『今日、ついにオマエラとの共同生活も終わる……クックックッ、今日の晩酌が勝利の美酒になるか、敗北の苦汁になるか……ボクもドキがムネムネだよね!』

……ついに最後の朝が来た。
それは間違っても最期ではなく、【最後】。この学園で過ごす上での最後の朝だ。

昨晩は不思議とよく眠れた。寝る前に二人を見たからか自然と心臓の鼓動も穏やかで、むしろ落ち着いてすらいた。
やっと終わらせられるという安堵感のほうが強かったのかもしれない。

「……よし」

鏡の前で身だしなみを整え、大きく息をついた。鏡に映る私は顔色も悪くない、体調は万全みたいだ。
711 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:02:29.94 ID:PKHgrFLn0

ただ、少しばかり表情は硬い。
眉はセメントで固まったのかと思うぐらいに動かず、口元はへの字のアーチがかかっている。


「……これじゃだめだよね」


両の指で口元を吊り上げた。
無理やりに押し上げられた頬はニィっと不器用な微笑みになって、それが自分でも少し滑稽で思わず吹き出してしまった。


「……大丈夫、落ち着いていこう」


信じるべきものを信じて、疑うべきものを疑うだけ。
ちょっとばかり疑うことは苦手だけど、それを補ってくれる“仲間”だっている。

この合宿生活で犠牲になった皆さんの遺志を継ぐためにも立ち向かわないといけない。
その遺志をダイレクトに受け取り、前に進む覚悟を決めた“仲間”だっている。

学園の謎に迫ることで、不安や緊張にかられる場面だってあるかもしれないけど、逃げたりしない。
いつだって皆を気遣って精神の支えになってくれる“仲間”だっている。

協力して謎に挑めば、解けない謎なんてない。
私たちのことを認めてくれて、全幅の信頼を寄せてくれた、そんな勇気ある選択をしてくれた“仲間”だっている。


そんな仲間たちと挑む、いつも通りの戦いだ。何も身構えることはない。


「行こう……!!」


最後に鏡で確認した私の表情は、ほぐれていたと思う。
712 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:04:04.96 ID:PKHgrFLn0
-------------------------------------------------
【食堂】

摩美々「さて、裁判に備えて作戦をしっかりと固めておこうかー。今回の目的は二つ、灯織の無実の証明と学園の謎の解明だよー」

智代子「だったらめぐるちゃんの事件を改めて調べる必要があるよね?」

雛菜「でももう死体も全部片づけられちゃってるよね〜?」

摩美々「だから別の方向性で捜査をしていくしかないねー。例えば円香の部屋を調べるとか、そういうのでー」

灯織「可能性はわずかでも拾い集めなくちゃいけませんしね……」

愛依「学園の謎はどーすんの? これまでにも結構学園自体は調べてきたけどあんま手掛かりはなかったよね?」

摩美々「うーん……一応まだ未解禁なエリアはいくつかあったと思うケド……」

モノクマ「はいよ! もちろん解放してあげますよ!」

灯織「モノクマ……!!」

智代子「相変わらず突然だね……」

モノクマ「せっかく最終決戦をやるならフェアにいかないとね。お互い全力を尽くした勝負だからこそ、カタストロフィってあるわけじゃん?」

愛依「肩ローストロフィー……?」

モノクマ「だから情報の出し惜しみはしないよ! この学園の謎を最後まで解き明かしてもらうため、それに必要なものは全て調べられるようにしてあげます!」

雛菜「ってなると〜、寄宿舎エリアの2Fが開くの〜?」

灯織「あとこの学園で調べてないのはそれぐらいだよね……」
713 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:05:30.11 ID:PKHgrFLn0

モノクマ「チッチッチッ、それだけではございませんよ!」

摩美々「えー? でもこの学園って5階建てって話でしょー? もう階段もなかったし、ほかにどこを調べるっていうのー?」

モノクマ「その認識が間違ってるんでございますな! この学園は確かに地上5階建てですが……地下はまだまだあるんですぞ!」

灯織「え!? 裁判場だけじゃないんですか?!」

モノクマ「そういうわけでございますな!」

雛菜「え〜? でも地下に行く階段なんかないよ〜?」

(そうだ……地上にある階段は上に上るもののみ……地下階になんかどうやって行けば……)

モノクマ「ま、それは各々頭を働かせてよね! さすがにそこまでは面倒見切れないからさ!」

摩美々「えー……なにソレ、ケチくさー……」

灯織「……となると、当面の方針としては寄宿舎エリアの二階、学校エリア地下階の捜索……ですか?」

摩美々「だねー、特に地下階はこれまでに情報がないから見つけたらすぐに共有するコトー」

智代子「承知しました!」

モノクマ「ま、せいぜい頑張ってチョーダイ! ボクはオマエラをおしおきするための準備を進めておくからさ!」


モノクマはそう言い残すと姿を消した。最後に脅しを入れたつもりだろうか、おしおきなんて文言をわざわざ持ち出して。
ただそれに怯むはずもなく、私たちはお互いの目を見合わせて深くうなずいた。
714 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:06:48.88 ID:PKHgrFLn0

摩美々「……これが正真正銘最後の戦いになるから、出し惜しみなんかしたら承知しないからねー」

雛菜「は〜い! 全力で行きま〜す!」

智代子「あはは、なんだか雛菜ちゃんが言うと気が抜けちゃうかな」

灯織「ふふっ、でもそれぐらいリラックスしてやったほうがいいかも。変に肩の力を入れると、逆に視野が狭くなっちゃうかも」

愛依「あっ、それ急がば回れってやつ?!」

摩美々「多分違うと思うー……」

灯織「……皆さん、頑張りましょう。絶対に……生きて帰りましょうね」


さあ、ここからが正念場だ。
泣いても笑っても……いや、生きても死んでも、これが最後。
ありとあらゆる可能性を拾い集め、どんなに小さな疑問であってもそれを昇華する。
この学園にあるすべてのものを検討し尽くした果てに残るもの。


_____それが私たちに残された道、黒幕の首筋に突き付けられる唯一の武器になるはずだから……!

715 :導入が長かった……ここから安価になります ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:08:32.85 ID:PKHgrFLn0
-------------------------------------------------
【捜査開始】

今回は捜査の労力もいつも以上だ。
すぐに私たちは個人で別れてそれぞれ別に調査することになった。
そうでもしないとこの学園のすべてを調べ尽くすのは困難だろう。

「ただし、危険を感じた場合はすぐにほかの人の助けを求めるコトー」

摩美々さんはそれだけ釘を刺していた。
もし、万が一ということがあれば私も他の皆さんを頼ることにしよう。


……さて、ひとまずは【寄宿舎エリアの2F】の捜査に、【学校エリア地下階】の捜索をしないとだよね。

寄宿舎エリアの2Fは今すぐにでも調べに行ける。
食堂からも近いし、これまでに一度も踏み入れてない場所。

地下階に関しては特に今のところ手掛かりはないから……とにかく調べ回らなきゃいけない、かな?
でも、地下に行けそうな場所って言うと一つぐらいしか思いつかないような……

-------------------------------------------------
☆最終章における捜査パートについて

最終章は非日常編から開始いたしますが、
新しい調査エリアに踏み込むたびに行動指定安価でコンマ判定を行い、
末尾と同じ枚数のモノクマメダルを手に入れることができます。

自由行動がないのにメダルだけ手に入れても意味がない?

……ん?それでは前回の裁判で手に入れたメダルの使い道がないのでは?
ご安心を、前回の裁判同様開始前に購買パートを挟む予定です。
購買パートで各種裁判を有利に働かせるアイテムを購入することもできますし、
前回習得した八宮さんのスキル【アップ・トゥ・ユー】でもメダルは使うことができます。
メダルの持ち腐れなんてことはございません、じゃんじゃん集めてくださいませ。

-------------------------------------------------

1.寄宿舎エリア2F
2.エレベーターホール

↓1
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/09/30(木) 21:09:27.38 ID:1UTcyhAT0
エレベーターホール
717 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:12:32.64 ID:PKHgrFLn0
【コンマ判定 38】

【モノクマメダル8枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル…51枚】

-------------------------------------------------
【エレベーターホール】


愛依「あっ、灯織ちゃん! お疲れ〜!」

灯織「愛依さん……もしかして、地下階に行く方法を探して?」

愛依「せーかい! 学校の地下に行くと言ったら、やっぱりここしかないと思ってさ! でもショージキ全然手掛かりもなくて困ってたんだよね……」

灯織「……ぱっと見では何もなさそうですね」

愛依「でしょ? なんか謎解きとかならうちは割とお手上げだしさぁ……」

灯織「まあまあ、ここはひとつ諦めずに調査を続けてみましょう。案外発見があるかもしれませんよ」


普段は閉まっている空間ということもあり、私たちが日常生活で偶然に地下階に行ってしまうこともない。
黒幕が存在を隠すならこの上なくうってつけの場所だ。
でも、エレベーター自体は裁判場に行く機能しか私の知る限りでは存在しない。
……ほかに、なにか方法が?
もう一度この部屋を隅々まで調べてみよう……何か新しい手掛かりがあるかもしれない!


1.観葉植物を調べる
2.エレベーターのパネルを調べる
3.置物を調べる

↓1
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/09/30(木) 21:14:54.87 ID:FI0JBYoK0
2
719 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:20:49.37 ID:PKHgrFLn0
2 選択
-------------------------------------------------
【エレベーターパネル】

壁に取り付けられたこのボタンを押せば、すぐに扉が開いて裁判場への道が開ける。
でも逆に、それ以外の用途は見えないように思えるけど……?


愛依「……あれ? 灯織ちゃん、こんなところにタッチパネルなんかあったっけ?」


愛依さんの指さした先、そこには彼女言うとおり見覚えのないパネルが鎮座していた。
私たちがこれまで見てきたパネルがスライドしてその下にあったパネルが姿を現しているらしかった。


灯織「モノクマなりの譲歩ということでしょうか……私たちが地下階を見つけやすくなるようにした、とか」

愛依「せっかくならもう直接行けるようにしてくれたら早かった系なんだけど……」

灯織「それはそうですね……」


どうやらこのパネルはパスワード入力式らしい。
今の私たちの状況を見るに、差し詰め『地下に行きたいならこのパスワード』を解いてみろってところかな。
そっちがそのつもりなら私たちだって引くつもりはない。

この程度のパスワード、すぐに解いて地下への道をすぐに暴き出してやる!

-------------------------------------------------
☆学校エリア地下階について

学校エリア地下階に行くためにはパネルにパスワードを入力する必要があります。
パスワードは数字四桁、このエリア内にそれを特定する手掛かりが隠されております。
簡単な謎解き、ショートショート脱出ゲームのようなものとお考え下さい。

学校の謎という真実を解き明かす前に、このささやかな真実を明らかにしてウォーミングアップと参りましょう!
-------------------------------------------------

【謎解きパート開始】

1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる
3.置物を調べる
4.愛依に相談する(ヒント)

↓1
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/30(木) 21:24:45.11 ID:b8DDtyV00
1
721 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:27:33.89 ID:PKHgrFLn0
※パスワード入力を安価指定する際には合わせて四桁の数字も記載する形でよろしくおねがいします

1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる
3.置物を調べる
4.愛依に相談する(ヒント)

再安価↓1

722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/30(木) 21:29:26.31 ID:b8DDtyV00
2
723 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:31:53.05 ID:PKHgrFLn0
2 指定
-------------------------------------------------
【観葉植物】

部屋に置かれたあまり見なれない観葉植物だ……。
葉っぱには極細い産毛のようなものが立っていてなんとも薄気味悪い。
あまりこれまで触れてこなかったけど、なにか手掛かりがあるのかも……


愛依「もしかして、その植木鉢を調べる感じ?」

灯織「ええ……もしかすると、なにかあるかもしれませんし……」

愛依「オッケー! それじゃあうち、こっち側持ち上げるわ!」

灯織「ありがとうございます、それじゃあいっせーのーでで行きましょう……いっせーのーで!」


思い切ってその鉢を持ち上げてみると……あった。
これは……暗号だろうか?

『ABJRQIA DCKLTSKLD EMU HGOWXPO』


灯織「不規則な文字の並び方ですね……」

愛依「んー……なんか意味ありげなスペース、ここが区切りってことなんかな?」

灯織「となると、四つのブロックに分かれていることになりますね」

愛依「4……4……四文字熟語?!」

灯織「そもそも漢字じゃないですね……」

愛依「ありゃりゃ、そりゃそうか……」


でも、重要なキーワードであることは間違いないはず。
しっかりと覚えておいたほうがよさそう。
-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる
4.愛依に相談する(ヒント)

↓1
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/30(木) 21:32:36.05 ID:b8DDtyV00
3
725 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:34:36.27 ID:PKHgrFLn0
3 選択
-------------------------------------------------
【置物】

どこまでも自分のことが好きなんだなと思わずため息が出る。
これ見よがしに置かれたモノクマの銅像は気色の悪いセクシーポーズを決めている。
しかたない、これも捜査のためだ……
自分にそう言い聞かせて四方八方から見つめると……銅像の碑文に見せかけたプレートが実はそうではないことを発見した。
これはきっと……地下階に向かうために必要な手がかりだ。


『問26 8×3 余りは切り捨て』


灯織「これは算数の計算式……でしょうか……」

愛依「あちゃー……うち数学とか苦手だなぁ……」

灯織「愛依さん、落ち着いてください。数学じゃなくて算数です、できないと困るレベルの問題ですよ」

愛依「ホントだ! うち、これならわかるよ! 答えは24! ……ってあれ? 余り……?」

灯織「……どういうことなんでしょうか、掛け算に余りなんか生じないはずですが」

愛依「それに、問26って何? うちら、そんなに問題解いてきたっけ?」

……こうなったら、これは算数としてみない方がいいのかも?
何か別のメッセージでもあるのかな……?

-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる(済)
4.愛依に相談する(ヒント)

↓1
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/30(木) 21:35:16.43 ID:FI0JBYoKo
4
727 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:39:19.12 ID:PKHgrFLn0
4 選択

灯織「愛依さん、どうでしょう……地下に行くためのパスワード、わかりますか?」

愛依「うーん……現状はサッパリかなぁ……観葉植物と置物、これ以外に調べるものは特にないし、【材料はそろってる】系だと思うんだけど……」

(愛依さんの言うとおり、この部屋でほかに目につくものはない)

『ABJRQIA DCKLTSKLD EMU HGOWXPO』

『問26 8×3 余りは切り捨て』

(この二つでパスワード自体は導き出せるんだろう……)

愛依「でも、この暗号意味わかんないんだよね……よく家族で見るクイズ番組だと、問題文を別の見方すると新しい意味になる……とかありがちなんだけどね」

(別の見方……)

(算数の問題……これって本当に問題なのかな……)

-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる(済)
4.愛依に相談する(ヒント)

↓1
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/09/30(木) 21:43:59.72 ID:1UTcyhAT0
4
729 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 21:48:46.80 ID:PKHgrFLn0
4 選択

愛依「ねえ、灯織ちゃん? ここまでで算数の問題なんか解いたことってあった系?」

灯織「い、いえ……特に身に覚えはないですが……」

愛依「じゃあ、なんでこの問題【26問目】なんだろう……ほかに問題なんかないのに……」

(26問目……そう、それが妙なんだよね……)

(1問目や2問目じゃダメだったのかな……? なにか26という数字に意味があるんだろうか……?)

(身近にある、26という数字から考えてみるのがいいかも……)

愛依「てか、8×3のケーサンも割と答えは26に近いよね」

灯織「……確かにそうですね、24ですからその差は2……」

(もしかして、余りって……?)

-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる(済)
4.愛依に相談する(ヒント)

↓1
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/09/30(木) 21:54:18.05 ID:1UTcyhAT0
4
731 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/09/30(木) 22:02:03.61 ID:PKHgrFLn0

申し訳ない、突然の電話がかかってきて応対しているうちに10時になってしまいました……
大変区切りの悪いところで申し訳ないのですが一時中断いたします。

明日21:00〜よりまた再開予定です、すみません……!
732 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 20:55:01.65 ID:/fY6YMbW0
昨日は申し訳ありませんでした、謎解きの最中に電話が来るとは思わず……
愛依のヒントより再開しますが、一日経ちましたしもう皆さん答えは分かったかもしれませんね。

-------------------------------------------------
4 選択

愛依「あっ!うち、分かったかも……26って、アルファベットの総数と全く同じなんじゃん?!」

灯織「Aから数えてZまで……確かに全部合わせると26ですね」

愛依「問26って、アルファベットを使う問ってことなんだ!」

(アルファベットを使う問……!)

灯織「それと先ほども話したような、8×3に対する考察を含めると……」

愛依「アルファベットの総数との差は2……これが余りなんだとしたら、最後の二個を切り捨てる……的な?」

灯織「アルファベットの順序で言えば、YとZ、ですかね……?」

愛依「YとZ……YとZ……あれ?! よくみたらこっちの暗号にもYとZが出てきてないよ?!」

『ABJRQIA DCKLTSKLD EMU HGOWXPO』

灯織「……どうやらここまでの推理は間違っていないようですね……!」

-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる(済)
4.愛依に相談する(ヒント)

↓1
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/01(金) 21:03:12.10 ID:unkD6adb0
4
734 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:10:42.36 ID:/fY6YMbW0
4 選択

灯織「……8×3、これが計算式でないのは薄々感じていましたが……」

愛依「列と行にしろってことだったんだ……!」

AIQ
BJR
CKS
DLT
EMU
FNV
GOW
HPX

愛依「うーん、でもこれじゃまだよくわかんないよね……」

灯織「愛依さん、算数の基本です! 掛け算は左右を入れ替えても問題ない、ですよね!」

愛依「そっか……!」

AB CD EF GH
IJ KL MN OP
QR ST UV WX

愛依「あ、こっちのほうが……なんか、見えてきそう……!」

灯織「アルファベットを8×3(3×8)に整列させて、あまりのYとZはないものとして考える……プレートのメッセージはそれを指していたんです!」

愛依「てなると……あとは、あの暗号だけだね!」

『ABJRQIA DCKLTSKLD EMU HGOWXPO』

-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる(済)
4.愛依に相談する(ヒント)

↓1
735 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:31:01.50 ID:/fY6YMbW0
30分が来たので一部修正
ヒントとしてもさっきのが出せるのは最後になるかなといった形なので
4を自動進行にして再安価

-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる(済)
4.愛依に相談する(自動進行)

↓1
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/01(金) 21:34:09.17 ID:unkD6adb0
1.パスワードを入力する【1234】
737 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:36:02.45 ID:/fY6YMbW0
1 選択

【1234】

灯織「とりあえず入れてみましたが……」

ブブー!

灯織「さすがに違いますね……」

愛依「まぁこれで通ったらセキュリティがガバいって感じだよね……」

(うーん……あと少しまで、出かかってるんだけどな……)

-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる(済)
4.愛依に相談する(自動進行)

↓1
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/01(金) 21:42:19.90 ID:unkD6adb0
1.パスワードを入力する【1331】
739 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:44:27.87 ID:/fY6YMbW0
1 選択

【1331】

ブブー!

灯織「これも違うみたいですね……」

愛依「うーん、さっきの暗号をやっぱ読み解かなきゃいけない系だよね……?」

灯織「8×3で作った表、あれにも意味があるはずなんですが……」

-------------------------------------------------
1.パスワードを入力する【数字4桁】
2.観葉植物を調べる(済)
3.置物を調べる(済)
4.愛依に相談する(自動進行)

↓1
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/01(金) 21:45:30.05 ID:ahL0JSiRO
パスワードを入力する 0816
741 :ヒントなし版のテキストになるので一部かぶります、ご容赦ください ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:47:01.22 ID:/fY6YMbW0
1 選択

『0816』

ピピッ 

よかった、正解みたいだ。
なんとか導き出したパスワードを入力するとその液晶は緑色に光り、部屋のそこら中から駆動音が聞こえてくる。
これでようやっと、この学園最後のエリア・地下階に行けるようになる……!


愛依「灯織ちゃんスゴ! なんでパスワードわかったん?!」

灯織「いえ、そう難しいものではありませんでしたよ。あの算数の問題を、別の形のものだと捉えなおすとすぐに結論にたどり着けました」

愛依「算数の問題を……?」

灯織「3×8の計算式。あれは計算式ではなく、集合の形式を現していたんです」

愛依「シューゴー……?」

灯織「……ほかのところから説明いたしますね。問26、あれは問題番号が26なのではなく、『26』という数字がまつわる問いだという意味なんです。身近なもので26というと何か思いつきませんか?」

愛依「んー……?」

灯織「……アルファベットです。AからZまでその総数は26。これを3×8の形式で並べなおします」

愛依「……あっ! 余り2ってそっから?! 26個のものを3×8で並べなおすから!」

(よかった、なんとかついてきてくださっているようだ)

『アルファベットは26個存在しているが、これを無理やり3×8で並べなおす。その時発生する末尾のあまり2個の文字、YとZは【切り捨て】=【なかったもの】とする』

灯織「この規則に従って並べなおすとこのようになります」

AB CD EF GH
IJ KL ML OP
QR ST UV WX

愛依「……あれ、この並びって!」

灯織「そうです、ちょうど四分割すると、それぞれのブロックと重なるような並びになって植木鉢下の暗号と合致するんです。あとはあの暗号の通りにアルファベットをなぞっていくと……」

『ABJRQIA DCKLTSKLD EMU HGOWXPO』

愛依「……あっ、『0816』!」

灯織「そう、ちょうどその軌跡が数字を現すことになるんです。デジタル時計と同じ要領ですね。それに従ってパスワードを入力すれば、無事解決といったところです」

愛依「は〜……すっご、よく考えつくわ」

灯織「そんな……大したことないですよ」

742 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:48:05.91 ID:/fY6YMbW0

べた褒めする愛依さんを前に謙遜していた、その時だった。
ついに準備が整ったらしく、地下階への入り口が開かれた。

……想定外の形で。


ドッカーーーーーーーン!!


愛依「え、えええええ?! か、壁が崩れ落ちたんだけど?!」

灯織「み、見てください愛依さん! あそこ、階段が見えます……下に下る階段が!」


てっきりエレベーターの行く先に地下階が追加されるものだとばかり思っていたけど、当てが外れた。
いや、モノクマならこういう意味のない裏の掻き方をしてくるものだとわかっていたのに。
すっかり騙されてしまったことが少し腹立たしい。


愛依「うち、みんなを呼んでくるね! 地下に行く階段が見つかったって!」

灯織「あっ、愛依さん……行っちゃった」


愛依さん、すっかり張り切って……制止する間もなく行ってしまった。
まだ崩れ落ちたばかりの壁からは砂煙が舞い上がっている。
……でも、私も愛依さんほどではないがどこか体が舞い上がっているようで落ち着かない。
この砂煙が収まるまで、なんて待っていられないのだ。


「……よし」


私ははやる気持ちを抑えることも知らず、そのままその中へ飛び込んでいった。

743 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:49:26.38 ID:/fY6YMbW0
-------------------------------------------------
【学園地下階】

突如として現れた階段を下っていくと、ついにこの学園の最後のエリア・地下階にたどり着いた。

学園の地上階は一応は学園としての体裁を守ってはいた。
教室然とした教室に、実際学校といえばで名前の挙がる専門教室の数々。
希望ヶ峰学園という高次元の尺度でそれらが再現されていた。

……にも拘らず、地下階はそれらを鼻で笑うような。


「……なに、これは」


形容するなら研究所とでも言おうか。
あの目にどぎつい発色の電灯は廊下にも点灯していない、白を基調とした清潔感すら漂う内装。
それでいてどこかゴージャスな雰囲気もある装飾が為されている。正直地上とはまるで同じ建物とは思えない、こちら側が黒幕の趣味ということなのだろうか。

そんなこれまでにない雰囲気に気圧されながら、私は地下階の探索を開始した。

さて、どこから調べようか……

-------------------------------------------------
1.中央制御室
2.モノクマプライベートルーム
3.おしおきメンテナンスルーム
4.トレーニングルーム
5.技術開発室

↓1
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/01(金) 21:49:47.25 ID:ahL0JSiRO
1
745 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:52:50.87 ID:/fY6YMbW0

【コンマ判定25】

【モノクマメダル5枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…56枚】

-------------------------------------------------
【中央制御室】

地下階の文字通り中央に構えているのがこの大きな部屋。
円柱状のその間取りをはじめ理解しがたかったが、実際に足を踏み入れてみると即座にその意味を理解する。

この部屋は、学園の中枢なのだ。
私が十人以上縦に並んでも足りないだろう巨大な発電機が堂々と鎮座し、そこから枝分かれするような無数のケーブルが壁に接続している。
この学園の設備ははっきり言って規格外だ。
高校、大学、研究施設……そんなどころの話ではない、下手すれば一自治体レベルの電力が必要になるやもしれない。

それをこの発電機一つで賄っているんだろう。


モノクマ「どう? すごいでしょ、これがこの学園の心臓……中央制御室だよ!」

灯織「……やっぱりそうなんですね、この学園の設備はすべてここで?」

モノクマ「うん! 原動力となる電力はこいつが生み出してるし、ここから機械も制御できるよ? 試しに空気清浄機を暴走させて学園を真空にしてみようか?」

灯織「や、やめてください!」

(……まったく、油断も隙もありゃしない)


ひとまずこの学園にいるうちはこの部屋で暴れたりはしない方がよさそう。
巨大な発電機からは一度離れて、周囲を調べることにした。
746 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:55:15.93 ID:/fY6YMbW0
-------------------------------------------------
【ジェネレーター】

部屋には中央の発電機から直接電力を引いている機械が置いてある。
これまた規格外のサイズ……だけど操作するモニターはかなり小さなものだ。触っては見たけど反応はない。
何かライセンス的なものが必要みたい。


「……あれ?」


操作はできないものの、ある程度いじることはできる。
手の届くところには透明なフィルター、その取っ手を引くとすんなりと開き……見覚えのあるそれが姿を現した。

これは……【思い出しライト】だ。
私たちがこの学園に踏み入る際にモノクマに奪われていた希望ヶ峰学園と第78期生の記憶。
それを取り戻すきっかけになった機械なんだけど、なぜこんなところに?
モノクマはここからこのライトを持ち出したのだろうか、と改めて機械を観察すると操作盤とは別にまたモニターを見つけた。
しかもこっちは点灯していて、何か文字を読むことができる。

『LOG:希望ヶ峰学園 78期生』

……これって?

コトダマゲット!【思い出しライト】
〔照射した相手の記憶を呼び起こす不思議なライト。中央制御室の一角に落ちており、その近くの装置のモニターには『LOG:希望ヶ峰学園 78期生』とあった〕
747 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:57:09.94 ID:/fY6YMbW0
-------------------------------------------------
【マザーコンピューター】

正直なところ、触れるか触れまいかずっと悩んでいたんだけど……
この部屋には明らかに異質なものがもう一つ。
それはなんなら超巨大発電機よりも存在感を放っていて……今にもこちらに話しかけてほしそうに視線を寄せているのだ。

『巨大なモノクマの頭部』、そうとしか形容のできない物体がコードに繋がれている。


『おーい! いい加減ボクにもかまってよ! ここに人が来るなんてめったにないんだしさ、お話の相手ぐらい……ねえ、いいでしょ?! ウサギとモノクマは寂しいと死んじゃうんだよ?!』

灯織「うさぎが孤独だと死ぬなんてデマカセですよ……ただ病気が他の動物に比べてわかりづらいから飼い主が放っておくと死んでしまうケースが多くて、そこから誤解されたそうです」

『おっ! やっとこっち向いてくれたね! お話、お話ししようよ!』

(……しまった、ついマメ知識を披露してしまった……)

(まあ、いいか……どうせこれも調べる予定ではあったんだし)

灯織「……雑談の相手をしている暇はありません、我々の調査に協力していただけるなら少しの間聞き取りということで応じることはできますが」

『チェー、なんだか事務的だなぁ……風野さんって、情報通りの人なんだねー』

灯織「……情報?」

(今、何か気になることをこぼしたような……)
748 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 21:59:26.68 ID:/fY6YMbW0

(というか、このモノクマ……なんだか様子がおかしい、私たちが普段接するモノクマとまるで人格が違うような……そこまで不快感のない人懐っこさがあるというか……)

『うん、ボクはオマエラコロシアイ合宿生活の参加者全員のデータはインプットされてるけど、逆に言えばデータでしかオマエラのことを知らないんだ』

灯織「……あなたは黒幕とはまた別の存在、ということですか?」

『うーん……まあ、そういうことになるのかな? いや、でも黒幕って言えば黒幕なのかな……』

灯織「なんだか随分と歯切れが悪いですね……」

『うん、風野さんの言う黒幕の定義が今の文脈からではわからないんだ。ボクはこの学園の管理系統を指揮している、その意味合いでは黒幕ともいえるけど……コロシアイ合宿生活に招集した張本人ではないから、その意味合いでは黒幕ではないんだよ』

灯織「……え?」

『うーん、せっかくこの部屋に来てくれたお客さんだから正確な回答をしたいんだけど……なんだか難しいなぁ』

灯織「ちょ、ちょっと待ってください!? い、今あなたは……この学園を管理している、そう言ったんですか?!」

『うん、そうだよ。なんたってボク、モノクマはこの学園の学園長なんだからね!』

(それって……黒幕がすべてを管理していたわけではないってこと……?)

灯織「すみません、あなたの言う学園の管理、もう少し詳しくうかがえますか?」

『うぷぷぷ……興味津々って感じだね。いいよ、なんだかボクも話すのが楽しくなってきたところだから!』

749 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:00:43.10 ID:/fY6YMbW0

『このコロシアイ合宿生活の黒幕は当然だけど風野さんと同じく人間だからね。どうしても体力には限界があるし、休憩が必要になるタイミングがあるんだよ。だからそういうときに学園の監視を行っていたのはボクになるね!』

灯織「……! それはつまり、深夜などのタイミングなどは黒幕本人は監視していなかったってことですか?!」

『そうだね……一応、事件や異常が起きたら報告するプログラムになってるけどね。それ以外の情報は基本的にボクが預かる形かな。誰かが誰かを殺したり、脱出のために学園設備を破壊したり、そういうのはすぐに緊急事態として報告することになってたんだ』

(……それって、深夜なら一部黒幕の監視を免れることができたってことなんじゃ)

『あとはどうしても人間の力じゃ難しい物資の補給とかかな。黒幕の正体がうっかりばれてしまうリスクもあるし、ボクの管理のもとオートメーション化されてたんだよ、エッヘン!』

(……よくよく考えてみたら当然のことだ。もうここでの生活は一か月にも及ぶ。それを人間一人で管理しきれるはずがない)

(なら、必然的にそこに付け入るスキは生まれるはず……!)


コトダマゲット!【コロシアイ合宿生活の運営】
〔コロシアイ合宿生活の運営はすべてがすべて人力で行われていたわけではない。物資の搬入などはオートメーション化されており、深夜の監視は黒幕自身は行わずAIに任せていた〕

750 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:02:44.51 ID:/fY6YMbW0

灯織「ありがとうございます、大変有意義なお話が聞けました……でも、いいんですか? あなたは黒幕の側のコンピューターなのでは……?」

『大丈夫大丈夫! ボクは別にどっちの味方でもないんだ、だってそうでしょ? 完全に黒幕の側ならこんな情報を話しもしないし、キミたちの味方ならとっくにこの学園系統をすべて停止させて玄関ホールの扉だって開けてる』

『ボクはただ、このコロシアイ合宿生活を観測し続けるだけのAIなんだよ。本当にそれだけさ』

灯織「……なるほど」

なんだか不思議な体験をした気分だ。自立思考するAIとの会話なんて、テレビの中でしか見なかった……それでいえば貴重な体験なのかもしれないけど。ただ、このAIは本人が言う通り私たちにとって敵でも味方でもない。
私がすべきなのは、この体験に歓喜することでもAIに同情することでもない。
得た情報を使うべき使い方をするだけのことなんだ。

……だって、ほら。振り向いたらマザーコンピュータは黒幕と全く同じ笑みを浮かべているんだから。

-------------------------------------------------

この部屋で調べられるのはこれくらいかな……?
少しでも真相に近づけているならいいんだけど……

1.モノクマプライベートルーム
2.おしおきメンテナンスルーム
3.トレーニングルーム
4.技術開発室

↓1
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/01(金) 22:03:52.13 ID:unkD6adb0
2
752 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:07:12.28 ID:/fY6YMbW0
【コンマ判定13】

【モノクマメダルを3枚獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…59枚】

-------------------------------------------------
2 選択

【おしおきメンテナンスルーム】

部屋の名前を見た時から、背中に悪寒が走っていた。
真乃、樹里、霧子さん、凛世、そして私。
5人の人間に牙をむいて、私を除いた全員の命を奪ってきた最悪の存在。
それを管理し、維持するためだけに存在する空間。
今すぐにでも爆弾を放り込んでめちゃくちゃにしてやりたくなる。
この部屋にいる限り、彼女たちの死が心臓を内側から刺してならないから。

でも、この痛みをぐっとこらえて調査を進めるしかない。
私には武力も、黒幕を凌駕する知力もないから。

____それが彼女たちの死に報いる唯一の筋道だ。
753 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:08:58.47 ID:/fY6YMbW0
-------------------------------------------------
【おしおきセット】

「…………」

真乃が命を落としたステージセットだ。
私たちがこの学園で最初に目撃することになった、『おしおき』……その光景は今でも焼き付いている。
おしおきの進行とともにステージと衣装とが華やかになっていき、最終的にはカラスに目をつけられて、その輝きごと啄み殺される。
私の目の前にある衣装セットにも真乃の流したであろう血液の赤黒いシミがついたままになっている。


「…………」

樹里のおしおきに使われた放クラの皆さんのお面だ。これをつけたモノクマたちに樹里は袋叩きにされて、その結果……
彼女が最期の最期、その一瞬まで仲間のことを思って戦い続けていたことを私たちはこの先一生忘れることはない。


「…………」

霧子さんを絞め殺した巨大なモーターだ。先端に取り付けられた棒にその体を拘束され、高速回転で帯を巻き取り、最終的には窒息死。
霧子さんは、人格を破綻させて事件を起こしてしまったし、おしおきの最中でさえもそれは変わらなかった。彼女は最後に、何を思っていたんだろう。

754 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:11:10.40 ID:/fY6YMbW0

「…………」

凛世が切腹に使おうとした短刀だ。
彼女は事件に踏み切るうえでとてつもない覚悟をしていたというのに、モノクマはそれを一蹴して、踏みにじるようなおしおきを行った。
あのとき、頬を撫でた爆風の冷たさがまだ感触として残っている。


「…………」

そして、私を裁断して殺そうとした巨大なカメラのシャッター。
もはやシュレッダーにも近しい鋭利な切断面、もしこれをまともに受けていたら私は骨一つとしてまともに残ってはいなかっただろう。
こうして遠目に見ているだけでも寒気が押し寄せる。


……この部屋には、この学園でこれまでに起きた事件がそのままに写し取られている。
この機械に命を奪われた彼女たちの苦悶と葛藤、それが空気中に漂い、呼吸をするだけでむせ返るような思いだ。

だけど、それに目を背けてはいけない。
死の証というのは裏を返せば彼女たちの生きた証でもある。
彼女たちの流した血は、彼女たちの味わった苦しみは、彼女たちの抱え込んだ絶望は、彼女たち自身を形作る要素の一つであることは否定できないのだ。


今ひとたび、そんな彼女たちに触れたことで一つ想起されたものがある。それは、【コロシアイの動機】だ。
彼女たちが事件を起こすきっかけ、命を落とすきっかけとなった事件の動機。

思えばモノクマはあの手この手でコロシアイに精力的でない私たちを無理やりに動かしてきた。
あれには、ただ動機としての意味以上のものを感じてしまう。ただコロシアイをさせたいだけなら食料を取り上げたり、睡眠を奪ったりしてしまえばいい。
そうではなくあくまで私たち自身の葛藤の中から殺意を引き出したことには何か目的意識があったのではないだろうか。

……もう一度、【動機】は確認しておいたほうがいいかも。


-------------------------------------------------

【捜査パートの行先に学園長室が追加されました!】
755 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:13:20.96 ID:/fY6YMbW0
-------------------------------------------------
【管理者コンピュータ】

おしおきセットはいずれもケーブルのようなものと繋がっており、この一つのコンピュータで制御されているようだ。
専門的な装置なのだろうか、妙に仰々しい設備で触るのが少し気が引ける。

少し操作してみたけど、基本は私たちの良く知るコンピュータと相違はない。
インターネットには接続していないようで、データの保管とこれらおしおきセットの管理が目的のものらしい。

……流石におしおきセットをいじる気にはならない、保管されているデータを確認することとした。
中で確認できるデータは、一つのファイルのみ。しかも中身が暗号化されていて読むことができない。わかるのはそのファイルの名前のみだ。

暗号化されたファイルにも一応の目は通す。
データ自体は解析不可能、特殊な操作やパスワードが必要みたい。現状わかるのは、そのファイル名のみ。

ファイルの名前は……『方舟計画』。
方舟と聞くと、神話の『ノアの方舟』をすぐにイメージするけど、これって一体……?


コトダマゲット!【方舟計画】
〔おしおきメンテナンスルームのパソコンに隠されていた謎の計画のファイル。詳細は一切不明〕

-------------------------------------------------

この部屋で調べられるのはこれくらいかな。
……あんまりここに長居はしたくない、ほかのところに行こう。

1.モノクマプライベートルーム
2.トレーニングルーム
3.技術開発室

↓1
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/01(金) 22:15:41.24 ID:unkD6adb0
3
757 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:18:35.51 ID:/fY6YMbW0

【コンマ判定24】

【モノクマメダル4枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…63枚】

-------------------------------------------------
【技術開発室】

機械の駆動音が響き渡る中鼻を刺すのは化学薬品の香り。
かと思えば窓の向こうには手術台の姿が見える。一体ここは何を研究している場所なんだろうか、ジャンルがまるで分らない……


摩美々「とにかく詰め込みましたって感じだよねー……あんなたいそうなロボットアームじゃ手術なんかできないでしょー……」

灯織「摩美々さん……いらしてたんですね」

摩美々「まあねー、灯織が地下階見つけてくれたんでしょー? お手柄じゃーん」

灯織「い、いえ……そんな……」

摩美々「この部屋にも何かしらの手掛かりはあるだろうし、とりあえず協力してあそこでも漁ろうかぁ」


摩美々さんが指さした先は研究設備とはまた別の区画。
どうやらここで行われている研究について詳細に記した報告記録が集積されているらしい棚だ。
パラパラとめくっていくとどこか見覚えのある内容がちらほら。


摩美々「科学室の薬品ってここで作られてたんだねー、薬品A・Bの調合記録なんかもあるよー」

灯織「空気清浄機の整備記録もありますね……ロボットに改造した時の記録まで」

摩美々「……あれ、なんだったんだろうねー」


こちらの報告記録も化学も物理もないまぜになっていてまるでまとまりがない……
頭痛がしそうな記録を眺めているうちに、あるページに行きついた。ここに書いてあるのは……どちらかというと“生物”の内容みたい。
758 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:20:44.92 ID:/fY6YMbW0

『我々の開発も一定の成果をあげた。マウスによる生体実験も無事に成功、いよいよ続いての段階に遷移することとした。本実験の最後では全被験者への適用が予定されているが、特に適正値の高い被検体αに先行して適用した。彼女はもとより性格面で類似性があったためか、特に拒絶反応も発生することなく実験も成功した』

摩美々「『神経系統に基づく移植実験』……?」

灯織「これって一体……?」

摩美々「……なんだか変な記述だよねー、マウス実験の後の臨床実験っぽいケド」

灯織「はい……【性格面】だなんて、精神科の診断か何かでしょうか?」

摩美々「【全被験者への適用】……【性格面で類似性】……」

摩美々「なんか、藪蛇な気分だよー……なんか嫌な予感がする……」

(……なんなんだろう、この報告書は)

(摩美々さんの言うとおりだ……書いてあることはまるで理解できないのに、なぜか胸のあたりがざわつくような……)


コトダマゲット!【被検体α】
〔我々の開発も一定の成果をあげた。マウスによる生体実験も無事に成功、いよいよ続いての段階に遷移することとした。本実験の最後では全被験者への適用が予定されているが、特に適正値の高い被検体αに先行して適用した。彼女はもとより性格面で類似性があったためか、特に拒絶反応も発生することなく実験も成功した〕

-------------------------------------------------

この部屋で調べられるのはこれくらいかな。
なんだか情報が得られたような、そうじゃないような……

1.モノクマプライベートルーム
2.トレーニングルーム

↓1
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/01(金) 22:22:02.07 ID:unkD6adb0
1
760 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:24:57.32 ID:/fY6YMbW0
1 選択

【コンマ判定07】

【モノクマメダル7枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…70枚】

-------------------------------------------------
【モノクマプライベートルーム】

学園内でも異質な地下階、その中でもさらに異質な部屋がある。
というよりもこれは場違いといったほうがいいだろうか。
胃もたれがしそうなほどにゴテゴテの装飾が為された扉にはへたくそな字で『モノクマの部屋』と書かれている。
これ一つで雰囲気ぶち壊しもいいところだ。


「……はぁ」


その残念なデザインセンスに対する失望なのかなんなのか。自分でもよくわからないため息とともにその扉を開けた。


「……うわぁ」


中に入ると更にどぎつい。床、壁、天井。360度すべてを覆い尽くすモノクマの顔。
世界一のナルシストでもなかなかこうはいかないだろうに、よくやるものだ。


モノクマ「ようこそ! ボクの勝負部屋へ!」

灯織「……はぁ」

モノクマ「はぁって何さ! なんなのさ! この部屋でボクがどれほど激しいプレイをしてきたと思ってるんだ!?」

灯織「ぷ、プレイ……って……やめてください、そういうの……」

モノクマ「ん? ボクはプレイとしか言ってないよ? ただちょっと格闘ゲームの“プレイ”が熱くなりがちだって……そういうお話なんだけど?」

灯織「……」

モノクマ「むきー! なんだよ、冷たいな! せっかく人がセクハラ弄りしてやってるのに!」

(……地獄だ)
761 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:26:18.02 ID:/fY6YMbW0

ガチャ

雛菜「あれ〜? 灯織ちゃんだ〜!」

灯織「雛菜……雛菜も捜査の途中?」

雛菜「うん〜! 地下室がいけるようになったって聞いたから〜、それでこの部屋に来たんだけど〜?」

モノクマ「市川さん、ようこそボクのしょ___」

雛菜「なにこれ〜! この部屋気持ち悪い〜〜〜〜〜〜!」

(……あっ)

雛菜「なんだかこの部屋に長くいたくないかも〜、雛菜もう行くね〜……」

灯織「えっ、ちょっ……雛菜?!」

モノクマ「」

(……二人きりにされてしまった)


なんとも気まずい思いだけど、モノクマが精神崩壊している今のうちに調べさせてもらおう。
モノクマの個人部屋だというなら、何か手掛かりはあるかもしれないし……


モノクマ「」


モノクマ自身に話を聞くのもありなんじゃないかな……
762 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:28:20.49 ID:/fY6YMbW0
-------------------------------------------------
【アルバム】

手に取ってまず後悔した。部屋の節々から感じてはいたけど、ナルシストとかいうレベルの話ではなく自分に酔っている。
幼稚園のスモックを着ているモノクマ、サッカー部のユニフォームを着ているモノクマ、成人式でがちがちの袴を着ているモノクマ、マイクロビキニを着ているモノクマ……
どれも悪趣味な写真ばかり。あまり人の思い出に文句を言うものではないけど、深いという言葉をつけずにはいられない。
それでもこれも調査のうちと自分に言い聞かせてページをめくると……

助かった。ちゃんと有益な情報だ。

モノクマの写真の数々はカモフラージュ。木を隠すなら森の中、写真を隠すならアルバムの中。
モノクマの醜悪な写真には途中から私たち自身の写真が混じるようになっていた。

「……なに、これ」

しかし、その写真の悉くに見覚えがない。
恋鐘さんと屋外で料理をしている写真、果穂と川で草の船を浮かべて遊んでいる写真……樋口さんと一緒にバーベキューを食べている写真。
それは何も私だけではない、めぐるがあさひと一緒に木登りしている様子なんかこれまでに見たこともない。
ほかにも摩美々さんが冬優子さんにいたずらを仕掛けている写真なんかもあるし、283プロの全員が写真に登場しているのだ。
特に加工や編集がされたような痕跡も残っていない、この写真は素人目に見ても本物。それなのに、当の本人に記憶がないというのもおかしな話だろう。

そして、最後に見つけた写真は……

「真乃と、小糸の写真……これって」

-------------------------------------------------
灯織「写真……?誰が撮ったんだろう……?」

そう、純粋な興味で私はその写真を手に取った。
この学校に関係するものだろうか、外の世界に関係するものだろうか。ただそれだけの興味だった。
でも、そこに残されていたのは。

(……え?)

_______真乃と小糸が二人で料理をしている写真だった。

(……な、なんで?)

めぐる「こ、これって……?」

モノクマ「わーーーーー!!なに見てるのさーーーー!!」

-------------------------------------------------
あの時、美術倉庫でモノクマに回収された写真そのものだった。


コトダマゲット!【キャンプの写真】
〔灯織を含む283プロ全員が登場しているキャンプの写真。加工編集がされたようには見えないが、灯織たちにその記憶は全く存在しない〕

763 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:29:48.79 ID:/fY6YMbW0
-------------------------------------------------
【モノクマ】

……この合宿生活を引き起こした諸悪の根源。
私たちの命をそのエゴで奪い去り、人生そのものを勝手に踏み荒らしてきた憎き存在。
だが、この学園で唯一すべての真相を知る存在でもある。
それなら、話を聞かない理由はない。私たちが真実に少しでも近づくため、勝利をもぎ取るためにも……なんとしても有効な証言を引き出してやる!


灯織「モノクマ!」

モノクマ「」

灯織「話してもらいますよ……この学園の真相について……少しでも!」

モノクマ「……は!? しまった、センスを否定されたショックで思わず三途の川を反復横跳びしてしまっていた……!」

灯織「死にかけてるじゃないですか……そ、そんなことより! あなたにお伺いしたいことがこちらは山ほどあるんですよ!」

モノクマ「だろうね、ボクの魅力的なボデェを前にしたら質問の一つや二つや三億ぐらいは湧いてくるよね!」

灯織「モノクマ自身のことはどうでもいいです、それより学園生活についてです!……どうしてあなたは私たちをこの学園に集めてコロシアイをさせたんですか?! なぜ私たちを選んだんですか?!」

モノクマ「なんだよ、どうでもいいってさ。いじけちゃうよね、チェッ!」

灯織「誤魔化さないでください、今回ばかりは逃がしませんよ!」

モノクマ「むむむ……シリアスモードの風野さんはいつも以上にノリが悪いぜ……」

(モノクマの小ボケにいちいち反応している暇はない……!)

(一歩も引くな、風野灯織……!)
764 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:31:15.98 ID:/fY6YMbW0

モノクマ「……はぁ、しょうがないね。核心的な部分は教えてあげれないけどさ、オマエラを選んだことには確かに明確な理由が存在するよ!」

灯織「……! もちろん、聞かせてもらえるんですよね?」

モノクマ「いいかい? コロシアイ合宿生活に参加できるのはあくまで現役の高校生のみなんだ。だからオマエラ283プロダクションの人間でもお姉さん方やお子さん連中は参加できないんだよね」

灯織「それはこの生活が始まるときにも言っていたことですよね?」

モノクマ「うん、宣言したね。そしてこれこそがオマエラを参加者に選んだ理由でもある。オマエラが現役の高校生で、かつ283プロダクションのアイドルだったから……これ以上でもこれ以下でもないよ!」

灯織「……え?」

モノクマ「だからこの15人でなくてはならなかったってことだね! ほかの人間では替えが利かないんだよ!」

灯織「ちょっと待ってください、これじゃ前に伺ったのと何も変わらな……!」

モノクマ「まあもっといろいろ知りたいって言うんなら図書室の書庫でも調べればいいんじゃないかな? 現役の高校生アイドルにこだわった理由を推理するヒントになるかもね」

灯織「と、図書室の書庫……ですか……?」

モノクマ「今ボクからいえるのはこれぐらいのもんだよ、こっから先はモロに答えになっちゃうからね〜!」

灯織「あっ……ちょっと……!」

(だめだ……摩美々さんのようにはうまくはいかないな……)

765 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:34:25.26 ID:/fY6YMbW0

モノクマはすぐにその場を立ち去ってしまった。
聞き出せたのは、以前にも確認したとおりの内容。私たちが現役の高校生で、アイドルだなんてわかりきっていることだ。


灯織「……はぁ」


仕方ない、モノクマから情報を引き出すのはほかの方にお任せしよう。

……ん? ちょっと待って。
今回モノクマに改めて質問して、全く同じ内容が返ってきた。

……それってつまりは、それだけその情報に意味があることの証明にならないかな。
モノクマにとって、よっぽど【現役の高校生】で【アイドル】であることに意味があるっていうことなんじゃ……

大丈夫、自信を失うな風野灯織。
今の問答にだって、きっと意味があったに違いない……!


コトダマゲット!【モノクマの証言】
〔今回のコロシアイ合宿生活の参加者は、283プロの現役高校生アイドル15人のみ。そしてこのコロシアイはこの15人でなくては意味がなかったらしい〕

-------------------------------------------------
それに、モノクマは去り際に興味深い一言も残していた。
【図書室 書庫】、知りたければそこを調べなくてはならないらしい。

小糸の事件以来だ、ほこりのかぶった空間には悪趣味な事件資料の数々が収められていたと思うけど、そこに何か手掛かりが……?
余裕があれば向かうようにしよう。


【捜査パートの行先に図書室 書庫が追加されました!】

-------------------------------------------------

この部屋で調べられるのはこれくらいかな……
モノクマという存在、ますますわからなくなってしまった気がする……

【選択肢が残り一つになったので自動進行します】

【モノクマメダル獲得のためのコンマ判定を行います】

【直下レスのコンマ末尾と同じ枚数だけ獲得できます】

↓1
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/01(金) 22:36:06.40 ID:unkD6adb0
どうもです!
767 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:37:39.37 ID:/fY6YMbW0

【コンマ判定40】

【モノクマメダル10枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…80枚】

-------------------------------------------------
【トレーニングルーム】

この一角は黒幕のプライベート用なのだろうか。
学校エリアの2階にもプール前の更衣室でトレーニングのできる空間はあったけど設備が段違いだ。
ルームランナーにベンチプレス、その他もろもろトレーニング器具が一通りそろっているし、壁は鏡張り。
肉体を仕上げるにはもってこいの設備が整っている。


智代子「ひゃ〜〜〜! なんだかここにいるだけでカロリーを消費しちゃいそうな部屋だね!」

灯織「チョコ、捜査の進捗はどう?」

智代子「うん、順調かな! ……それにしても、すごい部屋だよね! トレーニングジムが丸ごと一個入ってるみたい!」

灯織「うん……シャワーもロッカーもあるみたいだし、なんなら冷蔵庫にプロテインまで完備されてるよ」

智代子「……ん?」

(どうしたんだろう、チョコ……何か引っ掛かってるみたいだ)

(深く考え込んでる、ひとまずはそっとしておこう)
768 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:40:22.45 ID:/fY6YMbW0
-------------------------------------------------
【ポスター】

部屋の一角には一枚のポスターが飾られている。
華々しいステージの上でパフォーマンスを披露するアイドルの写真、そのアイドルはこの国の人間ならだれもが知っている往年の伝説的なアイドルだ。


智代子「あっ、それって【VERTEX】のポスター?」

灯織「うん……どうしてここに……」


【VERTEX】、この業界の人間なら知らない人間はいない最高規模のオーディションだ。
最高とは文字通りの最高、優勝して得られる恩恵は並大抵のものではない。
アイドルはモチロン事務所も一気に注目が集まり、それだけで芸能の歴史に名を刻むことになるとまで言われる代物。

実際優勝者はいずれもアイドルを引退した後でもいわゆる“大御所”としての椅子を用意されて一生くいっぱぐれることはない。
だが、それゆえに優勝の道は険しく、審査員の判定も厳しい。開催は定期的に行われるものの、基本的に優勝者を出さないことのほうが多いのだ。


智代子「やっぱりアイドルになったからには一番の夢だよね、VERTEX優勝!」

灯織「うん……まだまだ私たちには遠い道のりだけど、いつかあの舞台で歌ってみたいな……」

智代子「やっぱりコロシアイ合宿生活の参加者がわたしたち283プロのアイドルだからこのポスターも貼ってあったのかな? 世間的にVERTEXは知名度はあるといっても、わざわざこんなポスターを貼るなんて……」

灯織「うーん……どうなんだろう、そもそもこの地下階ってもともとは隠されていた場所なんだし、私たちのために用意したのなら学校エリアの地上階に貼りそうなものだけど……」

智代子「そ、それもそうか……! あれ? それじゃあこのポスターは……?」

灯織「黒幕が、黒幕自身のために貼った……?」


コトダマゲット!【VERTEX】
〔アイドルのオーディションとして別格の規模を誇る最高峰のオーディション。これに優勝すればアイドルとその所属事務所は至上の名誉を得られると言われている。そのポスターがなぜか地下一階のトレーニングルームに貼られていた〕
769 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:43:15.50 ID:/fY6YMbW0

さて、地下階での捜査もひと段落かな。
少しずつだけど、黒幕の正体や学園の真実に近づけているような気がする。
まだ時間は少し残っている、悔いのないように最後まで調べ尽くさないと……!

【地下階の捜査が終了しました】

【別のエリアの捜査に移行します】

-------------------------------------------------

1.寄宿舎エリア2F
2.学園長室
3.図書室 書庫

↓1
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/10/01(金) 22:44:49.90 ID:unkD6adb0
2
771 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/10/01(金) 22:49:06.24 ID:/fY6YMbW0
2 選択

【コンマ判定90】

【モノクマメダル10枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…90枚】

-------------------------------------------------
【学園長室】

おしおきメンテナンスルームを調べた時から気になっていた。
なぜモノクマは回りくどい動機を渡してコロシアイを強いるんだろうか。
人の生き死にが見たいだけなら、いくらでももっと強制する方法はある。
あくまで私たちが自分の手で殺害を選ぶことに意味があるといわんばかりの動機の数々……
改めて検討して、モノクマの真意を探らないと……!

ショーケースを開けて、そのファイルを手に取った。
『コロシアイ合宿生活動機概要』、モノクマがわたしたちにぶつけてきた動機のその全てが収められている一冊だ。


『一つ目の動機は【疑心暗鬼】、あえて黒幕との接点を公開することにより必要のない疑いあいに持ち込む。お互いがお互いを信じ合えない状況下でアイドルたちは信頼をどんな形で発揮してくれるのか』

『二つ目の動機は【焦燥】、フェイク映像による近縁者の危機を告示する。この学園から出たいという意思を一層駆り立てた上で、真のアイドルになるための決断力を養成する』

『三つ目の動機は【才能】、各人の才能を伸ばすためのヒントを授ける。柔軟な思考力のもと、与えられた道具をどう活用するかに着目したい。
備考:当初の予定と異なり、コロシアイがそこまで精力的に行われなかったため一部変更。後の計画の予備実験としての役割も兼ね、被験体αに人格の移植を行う』

『4つ目の動機は【犠牲】、集団としての生存のために1人を切り捨てる決断を迫る。損得勘定と個人の感情との間のすり合わせを適正化し、これから先生き残っていく上での野心を研ぎ澄ますのも狙いの一つである』


こうやって改めて見直すとやはり殺意を抱かせる動機としては異質なものを感じる。
動機にそれぞれ題されたものはもちろんのこと、文章の結びにあるのは黒幕から私たちに対する期待や狙いといった記述なのである。
まるでこの合宿生活で私たち自身に成長を促しているかのような、教育者ぶった顔がよぎってしまうような書き方だ。

(……もしかして、このコロシアイって……)

いや、さすがに考えすぎだ……
このコロシアイで私たちはあまりにも多くのものを失いすぎている。その失ったものと引き換えに、何かを手にするなんて……そんな……

黒幕は、私たちに何をさせたいの……?


コトダマゲット!【コロシアイの動機】
〔これまでの事件の引き金となったモノクマ提供の動機の数々。
@【疑心暗鬼】黒幕が事務所の仲間内にいるという情報
A【焦燥】身近な人物の身に危険が及ぶフェイク映像
B【才能】それぞれに与えられたさいのうにかんれんする物品
C【犠牲】裏切り者の暴露
そのいずれにおいても黒幕には何かしらの期待や狙いが存在していると思われる〕

-------------------------------------------------

1.寄宿舎エリア2F
2.図書室 書庫

↓1
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