北条加蓮「藍子と」高森藍子「私たちの大好きな場所で」

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24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:04:32.89 ID:olNGque80
藍子「Pさんに……。『あいこカフェ』は3日限定の物ではなくて、本物の……ここと同じように、本当に実在するカフェにしないか、って提案されました」

加蓮「…………」

藍子「と言っても、そこまで決まっているお話じゃないみたいなんです。噂のようなものというか……詳しいことは、なにも決まっていません。私はまだ子どもですから、お店の経営なんて1人ではできないと思います。Pさんはプロデューサーさんですし……もし実現したらどうなるのかは、まだ何も」

加蓮「それでも、Pさんは藍子に提案したんだ」

藍子「はい。藍子ならできるかもしれない、って……」

加蓮「無責任な思いつき……という訳でもないみたい」

藍子「私のことを信じてくれる、いつもの眼差しでした」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:07:01.81 ID:olNGque80
>>24 重ねて申し訳ございません。以下の2箇所を修正させてください。

◯上から3行目の藍子のセリフ
誤:藍子「と言っても、そこまで決まっているお話じゃないみたいなんです。
正:藍子「と言っても、そこまで決まっているお話ではないみたいなんです。

◯下から2行目の加蓮のセリフ
誤:加蓮「無責任な思いつき……という訳でもないみたい」
正:加蓮「無責任な思いつき……という訳でもないんだね」



加蓮「…………」

藍子「…………」

加蓮「……藍子は」

加蓮「っ……」

加蓮「藍子は……どうしたい?」

藍子「私は――Pさんが具体的な計画を作って、本当に実現するようなお話を用意しても、お断りすると思います」

加蓮「!」

藍子「だけど……もしまた提案された時、はっきりと断れる自信は……ありません」

加蓮「どっちっ……!」

藍子「だってその提案は、すごく嬉しかったから……!」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:07:33.61 ID:olNGque80
藍子「アイドル活動は楽しいけれど、大変です。学校になかなか行けないこともあって、家に帰ってもすぐ寝ちゃう日もあります……ううん、家に帰れない時だってあって、お母さんとお父さんにはその度に心配されてしまいます」

藍子「その上、カフェまでやるなんて……。それってきっと、すごく難しいことですよね」

藍子「芸能人の方がお店をやるというお話は、たまに耳にします。きっとすごく頑張って、いろいろ調べたり、勉強したり……なによりも、やりたいという気持ちが強くあって、やり遂げている方もいます」

藍子「私は……。今の私には、そこまではできないって思っています。トップアイドルへの長い長い道も、まだ歩き終わっていないのに……」

藍子「いくら好きなことだからといって、突然違う道を歩き出すのは間違っていますよね」

藍子「アイドルならアイドルを、カフェならカフェを。やるって決めてやらなくちゃ」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:08:01.58 ID:olNGque80
加蓮「……半端なのは嫌い、か」

藍子「はい。だから加蓮ちゃんがさっき、まるで私の気持ちを見通したようなことを言った時には……すごく、びっくりしちゃったんですよ」

加蓮「そんなつもりはなかったけど――ううん。まっ、普段私が味わわされているのはそれってことで? たまには藍子が受ける側になってみなさいよ」

藍子「加蓮ちゃんが、気持ちを分かってもらえたのに悔しそうにしていたのは、こういうことだったんですね……!」

加蓮「ホント。藍子ってば、頼んでもないのにズケズケといつもいつも――」

藍子「……頼んでいないんですか?」

加蓮「こらっ。そういうことを真顔で言うのはダメ!」

藍子「くすっ」

加蓮「こーいうのは、隠しておくべきことでしょ? 見えてても、見えないフリをするのっ」

藍子「は〜い」

加蓮「まったく……」

加蓮「……じゃあ、カフェを開くって話は断って、今まで通りアイドルを続けるつもりなんだ」

藍子「そのつもりです。……そのつもりなんですけれど……」

加蓮「断れるか、自信がない……か」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:09:32.92 ID:olNGque80
藍子「3日限定だけど、自分のカフェをやろうってお話になった時も、すっごく嬉しかったんです。大好きな場所を作れることが、すごくすごく嬉しくて……っ」

藍子「最初は冗談かと思っていたんですけれど、Pさんの真剣な眼差しを見て……私の好きなことを、すくい上げてくれたんだって分かって!」

藍子「もしもそれが、3日だけではなくて、ずっと続けていられるのだとしたら……。ちゃんと拒めないかもしれません。アイドルを続けていきたいって、堂々としていられるかどうか……」

藍子「…………」

加蓮「…………」

藍子「加蓮ちゃんは……。どう思いますか……?」

加蓮「…………」

藍子「……きびしい言葉でも、大丈夫ですから」

加蓮「私は……。私も、今すぐの答えは出せないよ。こうして欲しいとか、こうなったらいいとか、あとは私が藍子ならこうするとか……正解なんて、全然出てこない。だから思ったことをそのまま言うことになるけど――」

藍子「うん……」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:10:02.08 ID:olNGque80
加蓮「正直言うと……藍子なら、どっちもできるんじゃないかって思っちゃうの」

藍子「えっ……?」

加蓮「カフェとアイドル。だって藍子はゆるふわカフェアイドルでしょ?」

藍子「……冗談っ――」

加蓮「本気だよ。藍子ならできるんじゃないかって思っちゃうの。カフェもアイドルも、どっちも。半端な事なんかじゃない、どちらにも全力でなれて……藍子らしい方法でみんなへ幸せな時間を、って」

藍子「…………」

加蓮「夢望んだことを形にするのって、すごく難しいよね。私達がこうして一緒にいる時間を迎えるまでに、沢山の傷や涙があったのと同じで……絶対に、簡単なことじゃないと思う」

加蓮「まして、それが3日だけじゃない、永遠に続いていくなんて……やろうよ、って簡単に言えることじゃないよね」

加蓮「でも、藍子ならできると思うの。傷ついても泣いちゃっても、今の時間を迎えてるんだよ」

加蓮「私は藍子の優しさを知ってる。誰かの笑顔の為に、これだって決めた道を歩き続けられるって知ってるから……」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:11:02.23 ID:olNGque80
加蓮「それにさ……」

加蓮「それに――私も付き合うよ、って言っちゃいそうになって……」

藍子「……加蓮ちゃんも……」

加蓮「アイドルを続けながらカフェを開く。ずっと続けていく。そんな無理なことも、私がいればちょっとくらいはできることが増えるかもしれない。じゃあ、その為に私も付き合うよ。……って言いたくなる」

加蓮「永遠を覚悟してなお、私に寄り添ってくれた藍子へのお礼。それから……これからもずっと一緒にいたいっていう私の気持ち」

加蓮「あははっ。そんな建前なんて、もういらないんだった」

加蓮「藍子の夢が叶って、藍子が笑顔でいるところを、一緒の場所で見ていたいの。そのために人生を捧げるのも、全然悪くないやっ」

加蓮「……だけどそれは、私の話」

加蓮「藍子がやろうって言ったのならともかく、こんなのは全部私の気持ちのことだもん。それって違うじゃん。ただの私の身勝手な感情じゃん」

藍子「……いままでずっと、ここでずっと。私とあなたのやりたいことを、自分の気持ちを大切にして、言葉として交わし続けていたのに?」

加蓮「今だけは、それじゃダメだって思う。そもそも――」

藍子「…………」

加蓮「そもそも私の気持ちって言うなら、……藍子にはアイドルでいてほしい」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:11:32.96 ID:olNGque80
加蓮「アイドルか、カフェの店長さんか、って2択なら、アイドルでいてほしい。そこにアイドルとカフェの店長さんっていう3つ目の選択肢を入れても、その中からアイドルを選んで、今まで通り輝いてほしいって思っちゃうくらいに」

加蓮「それを……それこそ今までずっとやってきたように、私の言いたいこととして藍子に押し付けられないのは……。私も、カフェっていう場所が大好きだからかもね」

藍子「…………」

加蓮「……ごめんね、はっきりしない話で」

藍子「ううん……」

加蓮「私も、話しててわかんなくなっちゃった。だって全部が本当のことなの」

加蓮「藍子なら両方できるって思うし、少しでも実現できる可能性が上がるなら付き合ってあげたい。けどアイドル一筋でいてほしい。ただ……カフェっていう場所も、大好き。藍子がカフェを開いて、そこにいる姿が簡単に想像できるし、素敵な未来だって思ってしまう。全部、嘘じゃないの……」

藍子「知っていますよ……。だって加蓮ちゃん、嘘が大嫌いですからっ」

加蓮「あははっ、まあね? いつだって自分に正直だもん」

藍子「それも、知っていますよ」

加蓮「知ってた?」

藍子「はいっ」

加蓮「そっか」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:12:02.76 ID:olNGque80
加蓮「ねえ、藍子。とっても無責任かもしれないけど……打ち合わせ、もう少し続けよっか」

藍子「……打ち合わせ?」

加蓮「これからずっと先のことじゃなくて、まずはこの、3日間限定『あいこカフェ』の打ち合わせ」

藍子「だけど、もういま話すことなんて」

加蓮「なんでもいいよ。打ち合わせにするようなことを作るの。お客さんが来た時のシミュレートとか、スタッフさんへの指示の種類とか。料理のレシピを考え直してもいいし」

藍子「…………、」

加蓮「本当にカフェをやるかどうかってお話は、とても大切なことかもしれないけど……だからこそ今、急いで話し合っても答えは出ないと思う」

加蓮「それに、『あいこカフェ』をやることで何か気付けることがあるかもしれないでしょ?」

加蓮「その後のことは、終わってからまた話そうよ。一晩でも何日でもかけて話そう」

加蓮「藍子の歩く道は、ゆっくり選んでいいんだから……」

藍子「……うんっ」

加蓮「うんっ」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:12:31.63 ID:olNGque80
加蓮「せっかくのオープンなんだから。別のことなんて考えたら、来てくれるファンの人たちもがっかりしちゃうよ?」

藍子「そうでしたね」

加蓮「ま、そうなる前に私のチョップが飛ぶけど」

藍子「そう言いながら、さっそくテーブルの下から蹴って来ないで〜っ……いたいっ。加蓮ちゃん、そこは痛いっ」

加蓮「くくくっ」

藍子「も〜……。でも……ありがとう、加蓮ちゃん」

加蓮「どう致しまして」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……くすっ」

加蓮「ふふっ」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:13:04.60 ID:olNGque80
藍子「さあ、何を決めましょうか。もう1回、最初から見直してみてもいいのかな……」

加蓮「こういう時は見返すのも重要だよね。当たり前のことも……、……あっ」

藍子「内装も、また別のいいアイディアが――」

加蓮「……藍子」

藍子「あ、はいっ。なんでしょう」

加蓮「なんか打ち合わせの必要はないみたい」

藍子「えっ……?」

加蓮「外」

藍子「……まっくら」

加蓮「あ、店員さんが来た。閉店のお時間です、だそうです」

藍子「……21時?」

加蓮「ね?」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……あははっ。わらっ……笑っちゃだめだって分かりますけれど、もうっ……!」

加蓮「ぷくくっ……。なによー、人がせっかく用意してあげた建前を」

藍子「ごめんなさいっ」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:14:01.34 ID:olNGque80
加蓮「なんでもかんでも、すぐゆるふわ空間で無駄にしちゃうんだから」

藍子「でも、それだけ真剣なお話だったんです。だから……」

加蓮「いいよー。その代わり、今日は藍子のとこに泊まるからね」

藍子「ほっ」

加蓮「お母さんからのメッセージなんて全部無視しちゃおー」

藍子「せめて、私の家に泊まることくらいは教えてあげましょう……? 心配しちゃいますよ」

加蓮「それもそっか」

藍子「店員さん、遅くまですみません。今日も、ありがとうございました」

加蓮「ありがとね。……そんな心配そうな顔しなくても大丈夫。藍子だって、そこら辺の新人アイドルなんかじゃないの」

藍子「はいっ。自分で歩く道は、ちゃんと自分で決めます。加蓮ちゃんも、いてくれますから」

加蓮「……え、単純に外が暗いから心配? あははっ、そういうことなんだ」

藍子「つい、勘違いしてしまいましたね。お母さんが迎えに来てくれるまで、外で待たせてもらいます」

加蓮「いやいや、中でお待ち下さいって……いいってば。ズルいことはしたくな――ああもう、分かったって! いちいち顔を寄せてこないのっ」

藍子「ふふっ。加蓮ちゃんの言っていた、カフェの店員さんが……ってお話も、本当のことみたい♪」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/13(木) 19:15:12.40 ID:olNGque80
加蓮「ね、藍子」

藍子「なんですか、加蓮ちゃん?」

加蓮「どうするか決まってからも……もしもアイドルの話を一緒にしなくなったとしても、たまにはこうして一緒にいようね。私達の大好きな、この場所で」

藍子「もちろんっ。私たちの大好きなこの場所で、一緒の時間を!」


【おしまい】
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