令嬢「路上飲み? はしたない事をする人間がいるものね」

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9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:42:52.48 ID:GD1Tr+3e0
令嬢「ただいま!」

執事「お帰りなさいませ。おや、お濡れになられて。どうなさいました?」

令嬢「ビールをご馳走になったのよ」


令嬢は一部始終を話した。


執事「そうでしたか。よく我慢なされました。お嬢様の心の広さに私、感動を覚えております」

令嬢「そんな言葉じゃ私の気は収まらないわ!」

執事「まもなく通販番組が始まりますよ」

令嬢「通販!? 絶対見なきゃ!」


一瞬にして機嫌が直る。
令嬢は深夜の通販番組も大好きなのである。

あくまで見るだけなのだが、紹介される数々の便利アイテムや、
あのそこはかとなく漂う胡散臭さがクセになってしまったようだ。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:43:41.36 ID:GD1Tr+3e0
翌日、令嬢は昨夜と同じように起床した。


令嬢「おはよう」

執事「おはようございます、お嬢様」

令嬢「今何時かしら?」

執事「夜の9時でございます」

令嬢「ニュースを見なくっちゃ!」


ニュースを一通り楽しんだ後、令嬢は夜の散歩に出かける。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:44:36.36 ID:GD1Tr+3e0
同じコースを散歩していると、またも昨夜のグループを見かける。


令嬢「あ……」

令嬢(ふん、無視無視。あんな連中に関わっては不愉快になるだけだわ)


しかし、昨夜とは少し様子が違っていた。


若者「ちょっと付き合えよォ!」

OL「離して下さい!」

仲間A「缶ビール一杯ぐらいいいじゃねえか!」


会社帰りのOLを捕まえて、酔った勢いに任せタチの悪い絡み方をしている。


令嬢(これは……放っておけないわね!)


お嬢様の好奇心――おっと、正義感に火がついた。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:45:51.83 ID:GD1Tr+3e0
令嬢「ちょっとあなたたち」

若者「あぁん? お前は昨日の……」

令嬢「その女性を今すぐ離しなさい。嫌がってるじゃないの」

若者「この子は俺らと飲みたがってんだよ!」

仲間A「とっとと帰れ! 青臭いクソガキ!」

仲間B「なんなら……」


金属バットを令嬢に突きつける。どう考えても本来の用途で持ち歩いてるわけではなさそうだ。


仲間B「こいつでお尻ペンペンしちまうぞォ〜?」

令嬢「……」

アハハハハ… ヒャハハハハ…
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:46:38.52 ID:GD1Tr+3e0
令嬢「ちょうどよかった」

仲間B「へ?」

令嬢「私の力を見せてあげる」


令嬢は金属バットを奪うと、両腕でそれをヘシ曲げてみせた。


若者「え!?」

仲間A「は!?」

仲間B「い!?」

OL「……!」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:48:23.94 ID:GD1Tr+3e0
令嬢「こんなこともできますわよ」


まるで粘土でもこねるように、金属バットを折り曲げ、丸め、結び、たちまち現代アートさながらの形状にしてしまった。
絶句する四人。


令嬢「あなた。見とれてないですぐお逃げなさい」

OL「は……はい!」


OLが逃げ去ったのを確認すると、令嬢は三人に向き直る。


若者「なんだよ……なんなんだよ、お前!?」

令嬢「私? 名刺はないから口で説明してあげる」


令嬢は大きく口を開けた。すると犬歯の部分に明らかに人間離れした牙が……。

悲鳴が上がる。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:49:56.95 ID:GD1Tr+3e0
令嬢は腕を伸ばし、若者を捕える。一掴みで「絶対逃げられない」と悟らせる怪力。
残り二人は逃げてしまった。


若者「あっ……ああっ、あっ!」

令嬢「ここで飲んでもいいんだけど……路上飲みを注意した私が路上飲みをしてはいけないわね」

令嬢「屋敷に招待してあげる」

若者「た、助けっ……!」

令嬢「大人しくしなさい。はしたないわよ」


自分より大きく、体重60〜70kgはあるであろう若者を、軽々と無造作に引きずっていく。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:52:09.99 ID:GD1Tr+3e0
執事「お帰りなさいませ、お嬢様。おや、そちらの御仁は?」

令嬢「路上飲みをやっていた若者よ。連れてきちゃった」

令嬢「ここでなら遠慮なく飲むことができるわね」

若者「た、助け……命だけは……」

令嬢「往生際が悪いわよ」

執事「お嬢様に飲んで頂くなど光栄なことですよ」

令嬢「いただきます」

若者「うわああああああああっ……!」


令嬢は若者の首筋に噛みつき、血を飲み始めた。喉がごきゅごきゅと音を立てる。

みるみるうちに、若者の体は干からび――
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:54:07.70 ID:GD1Tr+3e0
――なかった。

令嬢「ふぅ」

若者「……え。あれ……俺、生きてる……?」

令嬢「大げさに叫んじゃって。せいぜい400ml飲んだだけよ」

執事「一般的な献血と同じぐらいですね」

令嬢「それどころか、悪い血を抜いてあげたぐらいよ。これで少しはマシな人間になるでしょ。感謝なさい」

若者「……へ」

令嬢「別に命を奪う趣味はないし。帰っていいわよ」

若者「は、はい……」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:55:56.98 ID:GD1Tr+3e0
執事「あ、少々お待ちを」

若者「!」ビクッ

執事「昨夜、お嬢様にビールをかけたのはあなた方だと聞いてます」

執事「お嬢様はお優しいので許すそうですが、私にはどうしても許せません」

若者「ひっ……!」


執事の声には明らかに殺気がこもっている。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:57:16.98 ID:GD1Tr+3e0
執事「本来なら私がここで全ての血を飲んでしまってもいいのですが、それはやめておきましょう」

執事「お嬢様が見逃した相手を私が始末してしまっては、従者失格ですからね」

執事「ただしもし……今後また路上飲みをしたり、今日起きたことを口外したら――」

執事「あなたの身に“あなたが想像する通りの事態”が起こると予告しておきましょう」

若者「そうぞう……」

執事「この予告を叶える力、まさかお疑いになることはありませんね?」

若者「は、はいぃっ!」

執事「ご友人にもきちんとお伝え下さい」

若者「か、かか……必ず伝えますぅ!」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 20:59:14.45 ID:GD1Tr+3e0
騒動から少し経ち、令嬢と執事は夜の散歩をしていた。


執事「あれから彼らはどうですか?」

令嬢「少なくとも、あの公園では見かけなくなったわね」

執事「ということは、ちゃんと約束を守っているということですかね」

令嬢「そうだといいんだけどね」

令嬢「だけど……」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 21:01:11.58 ID:GD1Tr+3e0
例の公園から騒がしい声が聞こえる。

「飲もうぜー!」

「ちょっと前まで悪そうな連中がいて、ここで飲めなかったからな!」

「カンパーイッ!」



執事「どうやらまた別のグループが路上飲みをしているようですね」

令嬢「やれやれ、私たち吸血鬼の方が人間よりよっぽどマナーができてるわね」







END
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/04/29(木) 21:02:02.07 ID:GD1Tr+3e0
以上で終わりです
>>8が二重投下になってしまいました
失礼いたしました
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/29(木) 21:29:16.40 ID:iu/h3isjo
おつおつ
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/29(木) 22:02:05.95 ID:5MXvO9NRO
吸血鬼って普通獲物に家に招かせて飲むもんな
めっちゃマナー良いわ
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/29(木) 23:03:47.15 ID:iD3mq9vwo
乙乙
お嬢様かっこいい
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/30(金) 15:40:12.99 ID:0oJomEnWo
>>10
どんだけ寝てんねんwと思ったら伏線だった
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