【アークナイツ】フロストリーフ育成計画【安価あり】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 23:03:59.29 ID:1+ShHwZcO
本スレはタワーディフェンスゲーム『アークナイツ』の二次創作です。
一部、本編とは相違のある部分、本編で明瞭になってない部分があるため、パラレルワールドのようなものだと思ってください。

PS:エイヤの新スキンをください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1611065039
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 23:05:16.47 ID:1+ShHwZcO
燃える街を抜け出し、雪の中をよろめき進む。

後ろに視線を移せば、通った道には赤い染みが存在を主張していた。

(俺の今までは、何だったんだ)

戦って、闘って、殺して、奪って。

大切なものを手にしても、何一つ護れず、また全てを喪った。

上手くいっていたから、驕っていたのだろう。

形だけの力に、溺れていたのだろう。

だから俺は、罰を受けたのだろう。

手を汚した者は、決して幸せになってはならない。

その言葉が、脳内を埋め尽くす。

「…五月蝿い」

一歩、前に進む。

「五月蝿い」

また一歩、前に進む。

「五月蝿いッ!ぐうっ…」

足は動かず、地面に倒れた。

「く…そ…!」

身体に力が入らず、視界が霞む。

それでも。

「ぐ…ッ」

俺は、生きなければならない。

死者の分まで生き続けるのが、残された者の責任だから。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 23:05:58.96 ID:1+ShHwZcO
戦いというものは、どんな場所でも起こり得るものだ。

クルビアの辺境、戦火の近付く小さな町では、戦力補充のために、貧困層の少年少女をクルビア政府が掻き集める。

用途は勿論、少年兵として戦場に投入するためだ。

アーツさえ使えれば、子供であろうと多少なりとも戦力になる。

「ついにここも、戦場になるんですかね?」

日用品を荷台に乗せながら、青年が疑問を呈した。

「だろうな…。孫と同じくらいの子供が駆り出されるとは、嘆かわしい…」

商人の老人は、悲しげに頷いた。

トラックのコンテナに載せられる子供たち。

その中の、一人のヴァルポの少女が目に入った時、青年の身体は動いていた。

「ちょっといいですか?」

軍刀を携えた兵士に、物怖じせず声をかける。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 23:06:43.90 ID:1+ShHwZcO
「ん?」

くるりと振り向いて、兵士は眼前の青年を品定めする。

服装から見るに、付近に居住する民間人のようだ。

警戒を解き、兵士は青年に対応した。

「何か用があるのか?」

「いえね、随分と大勢の子供を連れてくなぁ、と思いまして」

「あぁ。今は少しでも戦力が欲しくてな。可能な限り人を掻き集めろ、との命令だ」

「こいつらは皆、孤児(みなしご)だったり親が生きるために已む無く政府に売った奴らだ」

軍帽を深く被り、暗い表情をしていることから、彼も今回のことは不本意のようだ。

「で、そんなことを聞くために呼び止めたのか?俺はそろそろ出発したいんだが…?」

兵士が言い切る前に、宝石やアクセサリーが入った袋を渡す。

「なにこれ?」

「換金用の宝飾品です。これを全て差し上げるので、子供を一人、いただきたく思います」

「………」

ふむ、と兵士は顎に手を当て思考する。

青年と宝石を交互に十回ほど見た後、袋の中身を少し摘んで、袋を中身ごと返却した。

「…こいつらの装備を整える必要があるから、これだけは貰っておくよ。一人、だったな」

兵士はコンテナを開錠し、扉を開く。

そして、コンテナの中を指差した。

「好きな子を連れていけ。で、残った宝飾品はその子と暮らすのに利用しろ。その方が有効活用出来るだろう」

「ありがとうございます」

先程目に映った少女の手を引き、コンテナから出す。

「ここに乗ってくれ」

荷台を整理しスペースを開け、そこに入るよう促す。

少女を乗せた後に、荷車を引いて帰路に着く。

そして、自嘲の意を込め、少し笑った。

(…分かっている、リーゼ。これは、ただのエゴに過ぎない)

(…でも、もう関わってしまったから。もう、後戻りは出来ないから)

(だから)

"今回こそ"は、何があっても護り抜いてみせる。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 23:07:25.74 ID:1+ShHwZcO
家に戻った青年は、ランプに火を灯し、ミルクを温める。

「散らかってるが、気にしないでくれ」

「ああ」

家に入るや否や、少女は部屋の片隅に座り込んだ。

自分の人生を買い取られたことを、子供ながらに察しているのだろうか。

「………」

「………」

先程の返事から、無言が続く。

聞こえるのは、ミルクをかき混ぜるスプーンと鍋の当たる音とミルクの水音だけ。

「これくらいなら、飲めるだろ」

人肌程に温まったミルクをマグカップに移し、少女に渡す。

それを受け取っても、少女は微塵も動かない。

「私は、何をすればいい?」

「ミルクの見返りに、か?」

青年の問いに、少女は頷いた。

「…とりあえず、それを飲め。話はそれからだ」

「わかった」

少女がミルクを飲み干すまで、会話は一度もなかった。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 23:08:09.23 ID:1+ShHwZcO
空になったマグカップを洗っている間も、少女は部屋の片隅というポジションをキープしている。

その視線は、真っ直ぐと青年に向けられている。

洗い物が終わった青年は、折れた剣と手斧を両手に持ち、靴を履いた。

「ついて来い」

青年の指示に従い、少女はボロボロのサンダルを履き、青年の後を追う。

林に入った青年は、手斧を少女に渡し、徐に木を斬り倒した。

「俺の家には電気が通ってないから、薪が必要なんだ。お前には薪集めの手伝いをしてもらう」

「わかった」

青年は、斬り倒した木を一定間隔で切り分ける。

少女は、切り分けられた木を割り、薪を作る。

そんな作業が、数十分続いた。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 23:08:41.62 ID:1+ShHwZcO
青年が薪をロープで纏めている間、少女は切り株に腰掛け指示を待つ。

「お前、名前は無いのか?」

「…え?」

不意の質問に、少女は反応が遅れる。

質問の意味を理解した少女は、ゆっくりと頷いた。

「…ない」

「それは困るな。これからどう呼べばいいのか困るじゃないか」

「好きに呼べばいい」

「そう言われてもな…」

ひらりと落ちた木の葉が、少女の髪に乗る。

鬱陶しそうに、少女はそれを摘む。

刹那、手に持たれた葉は紅葉し、鮮やかなオレンジの色に変わった。

「…あ」

名前が無いのなら、付ければいい。

目の前の光景が青年に一つの名前を閃かせた。

名乗るにしても、呼ばれるにしても、少し不格好だが、無いよりはマシのはずだ。

「フロストリーフ」

「それが、お前の名前だ」

霜が降りた葉、または、寒さで紅葉した葉。

それが、彼女の名前。

「フロスト…リーフ…か…」

「…いいんじゃ、ないか?」

そう言って、フロストリーフは笑った。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 23:09:08.35 ID:1+ShHwZcO
「私は、お前を何と呼べばいい?」

薪を持ち帰る道中、フロストリーフが疑問を呈す。

ある意味、意趣返しとも言える。

「俺は、他人に名乗るべき名前は持たない」

「…そうだな。呼ぶとするなら、ブランク、とでも呼んでくれ」

名無しに名前を与えた人の名前が空白(名無し)とは、何と皮肉なんだろう。

そんなブランクの自嘲は、フロストリーフに気付かれなかった。
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