歩夢「ポケットモンスター」

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102 : ◆8TImjtGSKs [sage]:2021/02/09(火) 22:21:59.92 ID:5dG4fBjuO
璃奈「璃奈……天王寺璃奈」

愛「オッケー。逃げるよ、りなりー!」

璃奈「えっ、あっ」

黒服たちからりなりーを奪取して、再びダッシュ!

黒服C「逃がすな、追え!」

黒服D「くそっ! 行け、ヤミカラス!」
「カァー!」

黒服E「クスネ! 奴らを捉えろ!」
「コン!」

次々とポケモンを繰り出し、数の暴力で追って来る黒服たち。
でも。

愛「愛さんの身体能力を、舐めるなよ〜!」

りなりーを前方に抱えながら、全力で街の外へ。
この先は“こもれびの森”へ続く3番道路、森を抜けた4番道路、そして次のジムがある街、オードシティだ!

夕暮れの中、アタシたちは駆ける。
オハラカンパニーを名乗っていた黒服が、何故りなりーを囲んでいたのかは知らない。
考える余裕も今はない。

ただ追っ手を振り切るために、全速力で走る──
103 : ◆8TImjtGSKs [sage]:2021/02/09(火) 22:22:50.26 ID:5dG4fBjuO
【リローシティ ウパーホテル】

ホテルマン「上原様のお部屋の鍵はこちらになります。どうぞごゆっくり」

ジム戦を終えて、ポケモンセンターでメッソンを休ませた後。
フロントでルームキーを受け取って、部屋へ向かう最中のこと。


花丸『そういえば、歩夢さんはこのあとどうするの?』


ポケモンセンターに訪れた花丸さんとの会話を思い出す。


歩夢『えっと……いや、まだ何も』

花丸『この街は色々あるから、ゆっくりしていくといいずら。
   それに、次のジムがある街・オードシティに行くには森を抜けなきゃいけないから……』

歩夢『森……』

花丸『こもれびの森って言って、昼間は太陽の光がいい感じに差し込むんだけど、夜は暗くて危ないから。
   森でサバイバルをしたいって言うなら、おらは止めないけどね』


結局、夜間の森でケガを負うのも嫌なので、サバイバルは辞退。
今日はこの街に滞在することにした。
104 : ◆8TImjtGSKs [sage]:2021/02/09(火) 22:23:29.06 ID:5dG4fBjuO
歩夢「ふぅ……」

部屋に荷物を置いて、一息つく。
昼間に乗ったキマワリ観覧車が、夕日をバックに窓の向こう。
夜間用のライトアップが始まっており、真っ黄色に光を放っていた。

『着信ロト! 着信ロト!』

歩夢「?」

ロトムタブレットに、唐突な着信。
ディスプレイに表示されている文字は『小原会長』だ。

歩夢「あ……もしもし」

画面をタップして、上ずったような声を出す。

鞠莉『Hi♪ 上原歩夢さんの端末で合ってるかしら?』

ビデオ通話の要領で、向こうの様子がこちらに映し出される。

歩夢「は、はい」

鞠莉『緊張しなくていいよ』

そう言われても……相手は大企業のトップであり、ポケモンリーグ準備委員会の委員長でもある。
緊張するなという方が、無理な話だ。
105 : ◆8TImjtGSKs [sage]:2021/02/09(火) 22:23:56.63 ID:5dG4fBjuO
鞠莉『ジム戦、見させてもらったわ。ダイマックスも使ってくれたようで何より』

歩夢「あ、ありがとうございます……」

鞠莉『バトルが盛り上がれば盛り上がるほど、ダイマックスに必要なエネルギーが集まる。
   ダイバオ地方のダイマックスは、ざっくり言えばそんな感じになってるわ』

曰く、元々ダイマックス現象が確認されていたガラル地方のそれとは、勝手が少し違うのだとか。

鞠莉『──と、これ以上専門的でdeepな話はおしまいにして。本題に入りましょう。
   上原歩夢。あなたに、折り入って頼みがあるの』

歩夢「頼み……ですか」

その“頼み”のために、梨子さんを動かして私に接触して来たのだろう。

鞠莉『実は今、オハラカンパニーは2つの派閥に分かれていてね。
   端的に言えば私・小原鞠莉の派閥と、前CEO・私のママ……じゃなかった、母の派閥』

鞠莉『母が擁する派閥は、今年のジムアリーナフェスティバルを台無しにしようとしている。
   あなたにはそれを、止める手伝いをして欲しいの』

歩夢「……えっ?」

鞠莉『あら。梨子はあなたのことを理解が早いって言ってくれたけど……』

いやいや。鞠莉さんの言っていることの中身は、途中までなら分かる。
彼女の母親が前CEOであることは、せつ菜ちゃんが話してくれた。
派閥争い(?)が起きていて、ジムアリーナフェスティバルが台無しになろうとしている。
そこまでは、分かっている。でも。

106 : ◆8TImjtGSKs [sage]:2021/02/09(火) 22:24:51.27 ID:5dG4fBjuO
歩夢「あの……なんで、私なんですか?」

そこだけが、1ミリたりとも分からない。

鞠莉『ジムアリーナが台無しになったら、あなただって困るでしょう?』

歩夢「それは……」

侑ちゃんに並び立つチャンピオンになりたい。
その機会が失われることは、私だって嫌。けれども、だ。

鞠莉『こちらからも可能な限り人員は割く。フェスティバルを終わらせるワケにはいかないからね。
   でもね。この頼み事は、あなたが一番適任なのよ』

歩夢「適任、って……」

相応の理由もなしに、無責任な言葉……。

鞠莉『ごめんなさい、今はここまでしか言えないの。
   何故あなたが適任なのか、時が来たらちゃんと話すわ』

歩夢「……っ」

腰かけていたベッドのシーツを握る手が、ぎゅっと強くなる。
私だって、ジムアリーナは台無しになって欲しくないけれど──
107 : ◆8TImjtGSKs [sage]:2021/02/09(火) 22:26:02.63 ID:5dG4fBjuO
歩夢「あの……なんで、私なんですか?」

そこだけが、1ミリたりとも分からない。

鞠莉『ジムアリーナが台無しになったら、あなただって困るでしょう?』

歩夢「それは……」

侑ちゃんに並び立つチャンピオンになりたい。
その機会が失われることは、私だって嫌だ。けれども、だ。

鞠莉『こちらからも可能な限り人員は割く。フェスティバルを終わらせるワケにはいかないからね。
   でもね。この頼み事は、あなたが一番適任なのよ』

歩夢「適任、って……」

相応の理由もなしに、無責任な言葉……。

鞠莉『ごめんなさい、今はここまでしか言えないの。
   何故あなたが適任なのか、時が来たらちゃんと話すわ』

歩夢「……っ」

腰かけていたベッドのシーツを握る手が、ぎゅっと強くなる。
私だって、ジムアリーナは台無しになって欲しくないけれど──
108 : ◆8TImjtGSKs [sage]:2021/02/09(火) 22:26:52.09 ID:5dG4fBjuO
鞠莉『こちらも無理強いはしない。あくまでお願いはお願いであって、そこに強制力はない』

電話に出た直後の、少しおどけた様子は残っていない。
真剣な声で、鞠莉さんは私に語り掛ける。

鞠莉『断るならこの話はすぐに忘れて、気持ち新たにジムアリーナを楽しんで欲しい。
   みんながフェスティバルを楽しんでくれることこそが、私や準備委員会にとっての本望だから』

歩夢「……」

鞠莉『迷ってるみたいね……じゃあ、返事は聞かないことにするわ。
   私の話はこれで終わり。お時間取らせてごめんなさいね、良い旅を』

ピッ

電話が切られて。無言のまま、私はベッドに倒れ込む。
結局……梨子さんの時にも言いそびれたココガラとイーブイの件も、話せずじまいに終わった。
関連性があるのかはまだ分からない。分からないけれど。
話してしまえば、騒動の渦中に飛び込んで行くことになる──そんな予感がして、口にすることが出来なかった。

歩夢(こういう時……愛ちゃんやせつ菜ちゃん、侑ちゃんだったら、どうするんだろう)

歩夢(……やめやめ! 今日はゆっくり休んで、それからまた考えよう)

答えは出ないまま、私の意識は眠りへと落ちていく。
いずれ巻き起こる大事件のことなど、考えもしないまま。
自分たちを取り巻く歯車がとっくに動き出していることから、目を背けたまま──
109 : ◆8TImjtGSKs [sage]:2021/02/09(火) 22:27:29.24 ID:5dG4fBjuO
今回はここまで。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/10(水) 02:32:31.30 ID:L/s1MrunO
某板に慣れすぎてもう来ないもんだと思ってたわ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/10(水) 04:09:31.44 ID:xz9gInhsO
ウィークバッジってもしかしてwaku waku weekとweakの駄洒落・・・
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/02(土) 04:22:17.46 ID:duhfKPRlO
保守
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