高森藍子「加蓮ちゃんが忙しい日の、いつもではないカフェで」

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7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:54:39.06 ID:SopT+Ge10
>>6 4つ目の文章の最終行を一部訂正させてください。申し訳ございません。
誤:でも加蓮ちゃんも、Pさんがいて、そして加蓮ちゃんの強さがあったから、大きく成長したんですよね。
正:加蓮ちゃんも、Pさんがいて、そして加蓮ちゃんの強さがあったから、大きく成長したんですよね。


 えっと……。まずは……カフェに、詳しくなりました!

 ……そういうことじゃない?

 え、ええと……。では、そうですね〜。前よりも、落ち着いてアイドルができるように、なったかな……。
 最初の頃は、もっと可愛くならないと、とか、もっと特別にならないと、なんて焦ってしまったり、周りのみなさんのどたばたに巻き込まれがちだったり……。
 あれっ、でも、加蓮ちゃんは私のこと、よくパッションだって言うような……? アイドルになる前、パッションだね、なんて言われたことは1度も。

 ……。

 ……加蓮ちゃ〜ん……。いつもは自分にも、そして周りにもけっこう厳しくて、私のことも叱ってくれるけれど、今だけは……うぅ〜。

 体の力が、ぐにゃ、となってしまいました。
 ちょっぴりはしたないけれど、テーブルに両肘をついて、手枕にして、頭を、ぼすっ、と乗っけてしまいます。
 真っ暗なままでは、もっと落ち込んでしまいそうになるから。
 く、と横を向けて……カフェの風景を、少し違う角度から見てみて。

 お客さんが、レジで精算をしています。店員さんがお金を受け取って……お客さん、ぺこっとお辞儀をして帰っていきました。声は聞こえなかったけれど、何か言っていたのは分かります。
 ごちそうさまでした……とかかな?
 店員さんが、ほっこり笑ってます……♪ それから、ちょっぴり表情が崩れちゃって。その、例えば加蓮ちゃんがファンレターを読んで、なにかすっごく嬉しいことが書かれてあって、にへっ、って笑った時のような――

 ……わ、私がその時の加蓮ちゃんを見たっていうのは、加蓮ちゃんには秘密にしておいてくださいね? 知ったら、絶対怒っちゃうから。

 あっ。別の店員さんがやってきて、肘でこんっとどついちゃいました。でも怒っているとかではなくて、ちょっぴりからかってるような笑い顔。
 つつかれちゃった店員さんは、顔を赤くして、ちょっぴり悪態をついている感じ……? で、それから慌てて去っていきました。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:55:09.81 ID:SopT+Ge10
 さっき、ファンレターを読んでいた加蓮ちゃんを思い浮かべたからかな。それと、後からやってきたもう1人の店員さんが、なんだか未央ちゃんにちょっぴり似てるって思っちゃいました。

 カフェかぁ……。

 お客さんに食べてほしい、あるいは、いま流行りのみんなが食べそうなメニューをご用意して……来てくれた方をもてなすための工夫を、いっぱいに凝らして。だけど店員さんとしている間にも、今みたいに、嬉しいって気持ちに顔を綻ばせたり。常連の方が来たら、少しだけお喋りしてみたり。
 ずっと料理を担当している方もいますよね。
 いつも行くカフェで言うなら、店長さん。
 あんまり顔を見ることはありませんけれど、あたたかい料理から、優しさの溢れる方なんだって分かるんです。

 ……加蓮ちゃんと、未央ちゃんが店員さんで。それなら、私が料理を担当しようかな? 1人だと大変だろうから、愛梨さんと……茜ちゃんにも手伝ってもらおうっと♪
 それだったら歌鈴ちゃんと春菜ちゃんにも来てもらいましょう。って、春菜ちゃんならカフェの一角に眼鏡コーナーとか作っちゃいそうですね……。さすがにカフェと眼鏡店を一緒にしたところは、私も見たことがないです。でも初めてのお店ってことで、注目されちゃうかも?
 歌鈴ちゃんは、ときどきドジをしてしまうので、ここは加蓮ちゃんに頼っちゃって。

 くすっ……♪ 私、いつの間にか、カフェをする側のことばっかり考えてる。
 癒やされる側ではなくて、みなさんを癒やす側。
 もちろん、私たちはアイドルです。それに、カフェだって楽しいことばかりではなくて、お金のことや、客足のこと。きびしいことがいっぱいあって、簡単にできることではありません。
 だから、こんなのはただの夢物語。お昼に見た夢だから、白昼夢。

 ……ほんとうに?
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:55:39.24 ID:SopT+Ge10
 アイドルには、そしてPさんには、やりたいと思ったことを実現できる力があります。
 加蓮ちゃんだって、かつての自分と重ね合わせて、力になりたいって思って、病院のみなさんに夢をあげました。
 それなら私にだって……とまでは……言えなくても。でも、じゃあ、ほんのちょっぴりだけ。真似事になってしまってもいいから、できないかな。
 カフェ……ううん、私なりの、癒やしの世界を作ること。

 私1人では、分からないから……そういう時は、誰かに相談してみなきゃっ。Pさんは今日は事務所にいないから……それなら、さっき思い浮かべた誰かっ。未央ちゃんでも、愛梨さんでも!

 沼の中に浸かっていたように重い足が、お散歩用のシューズを履いた時のように軽くなってきました。
 遠い遠い世界が、今では少しだけ、近くに感じることができます。

 世界中から注目される舞台に、自分が立つことを、今は想像できなくても。
 もやを晴らすため、自分の好きな、近くにある幸せへ目を向けることが、たとえ逃避になってしまうとしても。
 私は1つずつ、1歩ずつ、できることからやっていこうと思います。
 やりたいって気持ちがある限り、大丈夫!

 最後に、電源が落ちちゃっていたスマートフォンを起動し直して、やっぱり表示されたままの写真――さっきは何重にも並べられたショーケースの向こうに飾られているように見えた笑顔も、ごく最近に、例えばカフェで一緒にのんびりした時や、例えば事務所のレッスン終わりにお話した時のような、可愛くて、ちょっぴり悪戯っぽくて、私と同い年な女の子のような、すぐ向かいにいる、いつもの加蓮ちゃんに見えるようになりました。
 ……ふふっ。そのハズなのに、まばたきをしたら、また遠く煌めいているアイドルにも見えちゃいます。少しだけ気持ちがしぼみ返しちゃう自分のことも、おかしいって笑うことができちゃう。
 自分でも、変なのって思います。どっちにも見えるんです。それなら、加蓮ちゃんがまた私を誘ってくれる時までは、少し待ちましょう。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:56:17.83 ID:SopT+Ge10
 でも、ただ待っているだけではありません。やりたいって気持ちを、がっちりと抱えて、私には私のできることを、1つずつ。
 ばっと起き上がって、大きく背伸び! 息を吐いたら立ち上がって、ほどけかけている靴紐を、何度も何度も結び直して、かかともしっかり履き直しますっ。
 伝票を持って、レジへ――

 あっ、そうだ♪ もう1つ、やりたいことを思いついちゃったっ。

 今日は、帰ったらこのカフェのことを少し書いてみましょう。
 加蓮ちゃんがまた、私のことを誘ってくれた時には。
 伝えたいと思うことを、一緒に紡ぐことができるように。


【おしまい】
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 19:09:18.13 ID:SopT+Ge10
>>9 度々申し訳ございません。最初の4行が抜け落ちていました。追記した上で、>>9の文章をこちらに差し替えるものとさせてください。



 いつか加蓮ちゃんと一緒に思い描いた、ぼんやりとした風景。
 1人でいるからでしょうか。それとも……さっきから、店員さんの目線ばかりでいられるのも、私が成長したっていうことなのかな。
 ひょっとしたら、ちっちゃなきっかけがあったから?
 今なら、もう少しだけはっきりと、楽しいところも難しいところも、現実感を抱いて……やってみたい、って思うんです。

 アイドルには、そしてPさんには、やりたいと思ったことを実現できる力があります。
 加蓮ちゃんだって、かつての自分と重ね合わせて、力になりたいって思って、病院のみなさんに夢をあげました。
 それなら私にだって……とまでは……言えなくても。でも、じゃあ、ほんのちょっぴりだけ。真似事になってしまってもいいから、できないかな。
 カフェ……ううん、私なりの、癒やしの世界を作ること。

 私1人では、分からないから……そういう時は、誰かに相談してみなきゃっ。Pさんは今日は事務所にいないから……それなら、さっき思い浮かべた誰かっ。未央ちゃんでも、愛梨さんでも!

 沼の中に浸かっていたように重い足が、お散歩用のシューズを履いた時のように軽くなってきました。
 遠い遠い世界が、今では少しだけ、近くに感じることができます。

 世界中から注目される舞台に、自分が立つことを、今は想像できなくても。
 もやを晴らすため、自分の好きな、近くにある幸せへ目を向けることが、たとえ逃避になってしまうとしても。
 私は1つずつ、1歩ずつ、できることからやっていこうと思います。
 やりたいって気持ちがある限り、大丈夫!

 最後に、電源が落ちちゃっていたスマートフォンを起動し直して、やっぱり表示されたままの写真――さっきは何重にも並べられたショーケースの向こうに飾られているように見えた笑顔も、ごく最近に、例えばカフェで一緒にのんびりした時や、例えば事務所のレッスン終わりにお話した時のような、可愛くて、ちょっぴり悪戯っぽくて、私と同い年な女の子のような、すぐ向かいにいる、いつもの加蓮ちゃんに見えるようになりました。
 ……ふふっ。そのハズなのに、まばたきをしたら、また遠く煌めいているアイドルにも見えちゃいます。少しだけ気持ちがしぼみ返しちゃう自分のことも、おかしいって笑うことができちゃう。
 自分でも、変なのって思います。どっちにも見えるんです。それなら、加蓮ちゃんがまた私を誘ってくれる時までは、少し待ちましょう。
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