高森藍子「加蓮ちゃんが忙しい日の、いつもではないカフェで」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:50:30.22 ID:SopT+Ge10
――ほどほどに賑やかなカフェ――


 あわただしくも、マイペースに注文を運んでいる店員さん。
 ソファの形の席に深く腰かけ、両手を背もたれにかけてくつろぐ方、あるいは逆に、カフェに来るのが珍しいのか、少し縮こまっちゃったり、メニューを開いては中身を指差し楽しそうにされている方。

 静かすぎず、にぎやかすぎず……。

 そんなカフェの一角で、私はココアを飲み終わり、ふぅ、と息を吐きました。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1606643429
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:51:10.79 ID:SopT+Ge10
レンアイカフェテラスシリーズ第144話です。

<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

〜中略〜

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「見てあげているカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「何度だって言うカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「変わらないカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「お届けするカフェで」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:51:39.79 ID:SopT+Ge10
 こんにちは。高森藍子です。
 今日は、最近オープンしたカフェにお邪魔しています。……って、別にお仕事ではありませんよ? オフの日ですから。
 さまざまなお店の立ち並ぶ大通りから、物静かで少し立派な家の並ぶ住宅地へ向かう途中にあり、外観は真っ白な木壁に、ちょっぴり絵本を意識したような真っ赤な屋根。店前のポップには、「すこし、のんびりされてはいかがですかっ」という、はしっこがくるっとまるまった文字が書いてあります。

 私は……。
 私は……そうっ。なんと、私はこう見えてもカフェアイドルなんです!

 ……。

 ……いま、頭の中で、ぽか〜んとしている加蓮ちゃんと、お腹を抱えて大笑いしている加蓮ちゃんが同時に思い浮かびました……。普通にやります……。

 これでもカフェコラムを書いたり、ラジオでもカフェについて語るコーナーを設けさせてもらっている身です。それに、忙しいアイドル活動があるからこそ、やっぱりこういう、のんびりする時間は欲しくて……窓の外から見える空は、突き抜けるように青く、絶好のお散歩日和だというのに。つい、足を運んでしまいました。
 ふかふかのクッションと、心地いい物音、話し声……ほんのりあまったるくて、心臓の鼓動の位置が少し下がってしまうようなココア。
 かくごはしていましたが、今日は1日、私はカフェの虫さんですね。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:52:10.65 ID:SopT+Ge10
 店員さんがやってきて、空になったカップを回収してくれます。またご注文がありましたら、お気軽に――ていねいな口調なのに、なんだかちょっぴり、弾んだ声。店員さんも、オープンしたばかりのカフェでわくわくしているのかな? 今は、お腹もいっぱいで、何かを食べたいって気分ではありませんけれど、つい、メニューを手に取ってしまいます。

 いくつかの項目を指でなぞって……いつもの癖で、顔を上げて。

 残念。今日は私1人だけ。そこにいつもいてくれる人はいませんよ。

 なんて――ただ、ちょっとだけ加蓮ちゃんにつられちゃって……自分で自分のことを、からかうように、心の中で言ってしまいます。決して、そう、決して、加蓮ちゃんにからかわれるのが好きとか、意地悪されるのが好きって意味じゃありませんからねっ。
 1人でメニューを眺めるのも、ほんの少し、寂しく。
 ぱたん、と閉じてしまいましょう。
 元あった場所に戻して……まばたき、1つ。足の下からつけ根にかけて、むずむずって感覚が上がって来ちゃいます。

 スマートフォンを取り出して、いま話題を独占しているトレンドを開いて。
 加蓮ちゃんは、いま事務所のアニバーサリーとアクセサリーブランドのアンバサダーとで、大活躍中です。
 ときどき、私の見ているSNSにもその様子が流れてきて……お仕事を進めている途中だったり、するのかな? 詳しいことは、残念。まだよく分かりません。
 最後に見た写真は、あかりちゃんをフレームの真ん中にぐいっと引き寄せて、その隣につかさちゃんがいて……っていうことは、撮ったのはあきらちゃんかな? そんな1枚でした。

 キラキラしているなぁ……。それが、最初に思ったこと。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/29(日) 18:52:38.91 ID:SopT+Ge10
 カフェの一角で、ちいさく笑ったおひとり客に、気づいたのは近くを通りかかった店員さんだけ。
 不思議そうに私のことを見て、私がスマートフォンを持っているのを見て、あまり気にしていない様子で歩き出そうと……2歩進んだところで、ぴたっと立ち止まり、ちら、と私のことをまた見ました。
 これ、私のことがばれちゃっているのでしょうか。
 いちおう変装はしてきています。春菜ちゃんから借りた眼鏡と、愛梨さんから借りた大人っぽいカーディガン。歌鈴ちゃんも何か貸してくれようとしていましたけれど、残念ながら、なにも思いつかなかったみたい。今度、歌鈴ちゃんのやっている巫女さん体験ツアーに参加させてもらっちゃおうかな?

 変装していても、自分がアイドルだってばれてしまうのは……もしかしたら、困っちゃうことなのかもしれません。
 でも、ほんのちょっぴり嬉しいのっ。
 前に、加蓮ちゃんとカフェ巡りをしていた時、加蓮ちゃんだけがアイドルだってばれちゃって、私のことは気づかれないってことがあったり……。あと、加蓮ちゃんが優しくしてあげている、病院にいる子、そーちゃん。あの子も私のことを知らなかったりしてて……う。思い出すと、お腹がちくっとしてきました……。

 今から知ってもらえればいいんです。そう、今からっ。

 その先が、私の目指す場所――もう1度、加蓮ちゃんたちの写真を開いて、じっ、と見ます。
 とっても楽しそうな笑顔。仲のいいみんなで楽しそうにしているだけではない、本物のアイドルの耀き。

 全国の、いえ、世界中から注目される立場に……もし、自分がなったらと、少しだけ想像してみました。
 思い浮かべた光景には、薄いもやがかかっていて、何も分かりませんでした。
 その時の私が、どんな姿をしているかとか。どんなことをしているだろうとか……。
 そんなことは、何も分かりませんでした。
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