【ミリマス】松田亜利沙が写真撮影を依頼される話

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3 :ベストショットを求めて 2/8 [sage saga]:2020/11/27(金) 00:05:08.79 ID:zlRaz8c80
 結局、その日の内に育ちゃんからのミッションを達成することは諦めました。でも、明日になってみればプロデューサーさんの顔に元気が戻っているのか、と思うと、その可能性は低いような気がしました。レッスンを終えてから開いた控室の扉はずっしりと重たくて、それがありさの頭の中でこんがらがる糸をもっとぐちゃぐちゃにしていました。

 扉を開いた先には、いつものように劇場のアイドルちゃん達がいます。ありさみたいに、今来たばかりの人、これから劇場を後にする人、空き時間を潰している人や、台本を黙々と読み込んでいる人も。その中に、救急箱の中身を補充している風花さんの姿が見えて、ありさのアンテナにピーンと来るものがありました。

「風花さんなら、何か分かるかもしれませんっ!」
「へっ? な、何が?」
「こら亜利沙。声が大きいわよ」
「ああああ、すみません律子センパイ! 実は、かくかくしかじかで……」

 ありさの話を聞いてくれた風花さんの隣には、律子センパイが座っていました。そんなに大きな声を出したつもりはなかったのですが、ありさの声はいつも大きいから分かりません。台本を読んでいた桃子ちゃんや、後から部屋に入って来たこのみさんもデスクの周りに集合してきました。ありさはアイドルちゃん達に囲まれています。今日の天国です。鼻血が出てしまいそうなのですが、さすがに今は悶えている場合じゃありませんっ。

「……不眠症かもしれないわね。仕事をいっぱい抱えてるのに、最近、寝つきが悪かったり、真夜中に目が覚めたりしてる、って言ってたから、病院にかかるように勧めたんだけど……」
「医療の専門家の言うことに従わないなんて……お説教だね」

 溜息をつく風花さんの横では、桃子ちゃんが腕を組んでぷりぷり怒っています。写真に収めておきたいぐらいたいへんキュートなのですが、今カメラを向けたらありさがお説教を食らうに違いありません。

「育の頼みのこともあるけど、何とかしないとまずいことになりそうね。あの人の代理になれる人はいないんだから、どうにか睡眠だけでも確保させないと」

 おっ、律子センパイ、乗ってきてくれそうな感じがします。心強いです。

「一番効果があるのは、医療機関に行ってもらって、ちゃんと睡眠導入剤を処方してもらうことなんだけど……心療内科に行くことになるから、ハードルが高いかもしれないのよ」
「心療内科、ですか……ありさにとってはですけど、あまりその、いいイメージが……」
「それも無理のないことかもしれないわね。心の病気を持っているっていうマイナスの印象を持たれがちだもの。実際、それで適切な対処をできず余計にストレスを抱えちゃう人も多いのよ」

 あのプロデューサーさんなら、自分の心に不調があるなんて認めようとしない気がします。それに、病院へ行く時間が果たして、いつも忙しいあの人にあるのでしょうか。
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