【ミリマス】松田亜利沙が写真撮影を依頼される話

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2 :ベストショットを求めて 1/8 [sage saga]:2020/11/27(金) 00:03:46.50 ID:zlRaz8c80
 ある火曜日の午後のことでした。レッスンの合間で少しだけ抜けてきて、面談が予定されている事務室の前、その中から出てきた育ちゃんに、ありさは呼び止められました。

「亜利沙さん! お願いしたいことがあるんだけど」

 ありさにお願いって、一体何でしょうか。劇場の静かな廊下にはつらつと声を響かせる育ちゃんの目つきは、真剣そのものでした。

「プロデューサーさんの写真をとってほしいの」
「え、プロデューサーさんの、ですか?」

 どうしてでしょう。ありさは当たり前にそう思いました。

 小学校で課題発表があり、「身の周りの大人」を取材してレポートを作ることになっているそうです。家族は取材対象にしてはならない、と取り決めがあって、そこで選ばれたのがプロデューサーさんだった。育ちゃんはそんな風に説明してくれました。見せてくれた用紙には鉛筆の下書きが施してあって、大きな長方形が紙の上にぽっかりと口を開けています。なるほど、ここに貼り付ける写真が必要なんですね。

「インタビューは今のめんだん中にすませたんだけど、写真のうつり方があまりよくないの……。亜利沙さんなら上手にとってくれるかな、って」
「分かりましたっ! そういうことならありさにお任せください!」

 この世に生まれ落ちた天使、育ちゃんからの依頼です。ありさは使命感にメラメラと燃えてきました。今週中にお願い、と育ちゃんはぺこっと頭を下げてくれて、その可愛らしさに思わず鼻息が荒くなってしまいます。

 撮影対象はこの部屋の中にいるんですから、表情や構図にちょっと気を付ければ、すぐに終わるはず。ほんの朝飯前です。ありさは張り切って事務室の扉を開きました。

「失礼します」
「ああ、亜利沙。お疲れ様」
「……!」

 悪い意味でドキッとしてしまいました。そして、育ちゃんがうまく写真を撮れないと言っていた理由も分かりました。いい写真が撮れないのは、撮影技術や機材の問題ではなかったのです。

「プロデューサーさん、目の下のクマ、すごいですよ!」
「ああ、ちょっとな。今日は寝不足なんだ」

 プロデューサーさんはにっこり笑おうとしていますが、かえって痛々しい笑顔になってしまっています。「今日は」と言っていましたが、たった一日の寝不足で果たしてこうなってしまうものでしょうか。デスクに置いてある弁当箱――今日はジュリアちゃんが作ってきてくれたのでしょうか――は空っぽになっているようです。ご飯はちゃんと食べているみたいですが、どうすればいいのでしょうか。この様子だと、ベストショットが撮れるとは到底思えません。

「どうした亜利沙? 俺の顔なんかじっと見て」
「……ハッ! すす、すみませんっ。ちょっと、相談したいことがあって」
「ああ、育から何か頼まれたのか?」
「あ、そ、そうです! 写真撮って欲しいって言われたんですけど、なんていうか、その……」
「今の俺、よっぽどひどい顔してるんだな」

 そんなに体調は悪くないそうですが、もしかしたら、自分が体調不良だということに気が付かないほど調子が悪いのかもしれません。そのことが気にかかってしまい、面談で話したことは半分もありさの頭には残っていないような気がします。夢中で書きとったメモも、自分の書いた字であることは間違いないのですが、書いた記憶すらもあやふやです。
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