【シャニマス】凛世「紅く染まるは、川と頬」

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1 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:24:16.88 ID:df4LJ39Io


凛世(それは……ある季節の、お話でございます)

凛世(──夏は既に遠く)

凛世(──冬は未だ遠い) 

凛世(そんな……)



凛世(美しい、秋のことでした)



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2 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:25:19.21 ID:df4LJ39Io
〜事務所〜


(シャニ)P「ほら、凛世。これが資料」

凛世「はい……ありがとうございます」


ペラッ


凛世「……」ジーッ

凛世「美術館での、撮影……」

P「『芸術の秋に、美術館へ足を運んでみませんか?』なんてテーマの旅番組だ。そのメインキャストとして起用したいってことでさ」

凛世「旅番組……それでは……遠方でのお仕事に?」

P「んー、泊まり掛けで収録になるだろうな」

凛世「はい……」

P「俺もいるから、心配しなくて大丈夫だ」

凛世「プロデューサーさま……同行して、頂けるのですか?」

P「折角だから二人で前日入りして、美術館の予習をしてからロケに臨もうと思うんだけど。どうかな?」

凛世「はい……! それはとても……心強く思います」フフ

3 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:26:09.07 ID:df4LJ39Io

凛世「……」


凛世(プロデューサーさまとの、二人だけでの遠出)

凛世(漫画にあった……"旅行でぇと"のようでございます) 


凛世「心浮き立つ……夢のような予定、なのに──」


凛世(胸の隅で、不安が息を潜めるのは)

凛世(夏雲が……脳裏をよぎる為でありましょう)


凛世「……」

凛世「紫に、してしまえたら……よいのに」

4 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:27:12.65 ID:df4LJ39Io
〜撮影前日・駅〜


P「……」


タッタッタ


凛世「プロデューサーさま……お待たせ致しました」

P「おはよう、凛世。俺も今来たとこだ」

凛世「!」

凛世(この会話は……でぇとでお決まりの、やり取りでございますね……!)ドキドキドキ

P「凛世?」

凛世(凛世は、少女漫画で……学んでおります……)フッ

P「おーい、凛世? そろそろ行くよー」

凛世「はい……只今」

5 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:28:14.30 ID:df4LJ39Io
〜新幹線・車内〜


ガタンゴトン


凛世「それにしても……」

P「ん?」

凛世「この距離を、新幹線で移動というのは……珍しいのではないでしょうか……?」

P「あー、確かに。この遠さならいつもは飛行機使うもんなぁ」

凛世「何か……お考えが?」

P「ほら、今回の番組はスポンサーが鉄道会社なんだよ」

凛世「……? はい」

P「新幹線での旅行がどんなものか、経験しとくのも良いかと思ってさ」

凛世「ふふ……お気遣い頂き、感謝いたします」

6 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:28:58.46 ID:df4LJ39Io
──
────
──────

ガタンゴトン


P「……zzz」

凛世「ふふっ」


凛世(プロデューサーさまの仰るとおり……新幹線での旅行も、良いものです)

凛世(お慕いする方の、安らかな寝顔と……流れゆく景色を、眺めていられるだなんて……)


凛世「……とても、穏やかな一時でございます」


ガタンゴトン

7 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:30:18.39 ID:df4LJ39Io

P「んぐ……あれ」

凛世「ゆっくり、お休みになられましたか……?」

P「うわっ。寝ちゃってた!」ガバッ

凛世「日頃から……ご尽力頂いております……疲れも溜まっていらしたのでしょう」

P「あはは──すまん、退屈だっただろ?」

凛世「いえ。とても……充実しておりました」ニコニコ

P「そ、そうか? それなら良かったけれど」

凛世「ふふふ……」
8 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:31:06.81 ID:df4LJ39Io

P「そういえば」

凛世「?」

P「今回は写真、撮らないでいいのか」

凛世「……ええ」

P「ふうん?」

凛世「此度は、旅の思い出を……幾枚か残せれば……それで、充分でございます」

P「ん。そっか」

凛世「それに……前回と同じでは──」ボソリ

P「?」

凛世「いえ……えぇと……」

凛世「ふふっ……そのような訳で、ありますゆえ」スッ

凛世(などと。戯れにカメラを構えてはみたものの……きっとこの御方は──)

9 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:31:58.47 ID:df4LJ39Io

P「ははは。上手に撮ってくれよ?」ピース

凛世「……!?」パシャリ

P「ん、どうした凛世」

凛世「いえ……その」パシャリ

P「?」

凛世「凛世は、てっきり……先日のように『ダメダメ』と……諌められるものと……」パシャリ

P「あぁ、まぁ──俺もさ。色々思う所があったんだよ」

凛世「……そうですか」パシャリ

P「もちろん仕事ではあるんだけど。折角だ、旅行もしっかり楽しもうな」

凛世「はい……!」パシャシャシャシャシャ

P「さ、流石に撮りすぎじゃないか……?」

凛世「ふふっ」

10 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:32:47.70 ID:df4LJ39Io

P「そうだ。凛世、トッポ食べるか?」ガサゴソ

凛世「?」

P「旅行の移動の時はな、トッポを食べるものなんだ」

凛世「……そういう、ものなのですか?」

P「そういうものなんだ。俺の中ではな!」

凛世「……」キョトン

凛世「ふっ。ふふふふ……」

P「ん? どうした」

凛世「プロデューサーさまは……時折、幼子のような所が……ございます」クスクス

P「そうかなあ? 美味しいんだぞ、ほら」

凛世「ありがとうございます……頂きます」パクッ


P「な? 普段食べるよりも美味しいだろ?」

凛世「ふふ……はい。是非、智代子さんにもお教えいたしましょう」

P「うん。どんどん広めてくれ」

11 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:33:23.80 ID:df4LJ39Io

ガタンゴトン


P「──おっ。ほら凛世、あそこの山」

凛世「……! 紅葉で、ございますね」

P「綺麗だなぁ」

凛世「……」

凛世「『小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびのみゆき待たなむ』」

P「……あの紅葉も、誰かが来るのを待っているのかもな」

凛世「はい。そうやも、しれません」ニコニコ

12 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:33:57.12 ID:df4LJ39Io

〜♪


P「そろそろ着きそうだな」

凛世「プロデューサーさま……この後は、どのようなご予定で……?」

P「ホテルのチェックインまではまだ時間があるから……荷物だけ預けて、先に美術館へ行こう」

凛世「はい……それでは、そのように」

13 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:34:50.01 ID:df4LJ39Io

〜昼過ぎ・美術館前〜

美術館「……」デーーーン


凛世「これは……」

P「おぉー、立派な建物」

凛世「はい。それに……美術館のすぐ前を、小川が流れているのも……趣深く」

P「本当だな──この川沿いの一帯、美観地区って言うんだってさ」

凛世「美観地区……」

P「観光名所になっていてな。なんでも昔ながらの景観を保存しているらしい」

凛世「確かに、白壁の家屋や倉が並び……調和の取れた風景です」

P「川に架かる石橋もレトロで、雰囲気あるなぁ」

凛世「はい……とても、好き眺めでございます」

14 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:35:26.35 ID:df4LJ39Io

P「そろそろチケット買って中に入ろうか」

凛世「あの……プロデューサーさま……?」

P「ん?」

凛世「凛世は、あまり美術館に来たことがなく……」

凛世「館内を巡る作法などが……分からないのです……」

P「……」ウーン

P「あんまり難しく考える必要はないと思うぞ?」

凛世「そうで、ございましょうか……」

P「それならさ。今日はまず、自分の気に入った作品を見つけよう!」

凛世「気に入った作品……」

P「ちょっとしたゲームだよ。宝探しだ」

P「絵画や彫刻、陶磁器……何でも良い。『これが今日見た中で、私のNo.1だ!』なんて思えるものを、見つけるつもりで回ってみようか」

凛世「……はい。プロデューサーさまが、そう仰るのであれば」

15 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:36:20.13 ID:df4LJ39Io

P「えーと、受付は……あっちか」

凛世「はい……」


テクテク


P「──美術館ってのはさ。芸術家の人達が作った色んな作品を、鑑賞する所だ」

凛世「はい」

P「でもな。それと同時に、自分なりの美しさを見つける場所でもある」

凛世「……自分なりの、美しさ……?」

P「自分が何を美しいと思って、何を好ましく感じるのか。そんな、自分の中にある価値観を考えて、作品を通して自身と対話していく……」

P「もっとシンプルに言うと、『自分はどんなものが好きなのかを知る』っていうかさ」

凛世「……」

P「そういう楽しみ方も、美術館では出来ると思うんだ」

凛世「なるほど……」

16 : ◆RZFwc/0Dpg [sage saga]:2020/11/23(月) 00:37:17.17 ID:df4LJ39Io

P「好きな芸術家だったり、作品の時代背景だったり、誰から影響を受けているのかだったり──そういう小難しいことは、興味を持ってから知っていけば良いんだ」

凛世「……そうですか」フフッ

P「な、なんか妙に熱く語っちゃったな。はは……」

凛世「いえ……おかげ様で、少し気が楽になりました」

P「『綺麗だなぁ』『なんとなく好きだなぁ』なんて思えるものに凛世が出会えれば、俺は嬉しいよ」

凛世「はい……凛世も、楽しみになって参りました」ニッコリ

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