シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」

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40 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:38:02.36 ID:+9cFPgW3o
シンジ「……一人で、ですか…?」

ネルフ職員「そうだ。彼女の個室はこの先の第6ブロックになる。問題は無かろう」

ミサト「はい」

シンジ「え……それでいいの?ミサトちゃん」

ミサト「…いいんです、一人のほうが。慣れてますから」

シンジ「…………」
41 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:39:03.50 ID:+9cFPgW3o
(通話)

レイ「…何を言ってるの?」

シンジ「だから…ミサトちゃんだよ。いくら仲が悪いからって、あんなことがあった後に一人には…だから、僕のところにと思って。上の許可は下りてるんだ。心配しなくてもうまくやるよ」


レイ「……あなた、どこまで……。背負いきれなくなるわよ?」

シンジ「でも………放っとけないよ…」

レイ「ハァ…その歳の女の子を一人暮らしの男性の家になんて、どうかと思うけど…碇くんじゃなきゃ、許可は下りなかったでしょうね…」

レイ「いいわ。くれぐれも間違いのないように」


シンジ「間違いって…?………なっ…!あっ!当たり前じゃないか!!」


シンジ「もう…冗談が分かりづらいよ…!」

ミサト「あの…?」

シンジ「あっ、ああごめん、今車出すから!」
42 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:40:03.01 ID:+9cFPgW3o
主婦A「やっぱり、引っ越されますの?」

主婦B「まさかここが本当に戦場になるとは思ってもみませんでしたから」

主婦A「うちも主人が私と子供だけでも疎開しろって」

主婦B「疎開ねぇ。いくら要塞都市だからと言ったって、何一つ当てにできませんものね」

主婦A「昨日の事件!思い出しただけでもぞっとしますわぁ」


シンジ「……少し寄りたいところがあるんだけど、いいかな…?」

ミサト「えっ?構いませんけど…」

シンジ「ふふ…きっと驚くよ」

ミサト「……?」
43 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:41:02.62 ID:+9cFPgW3o
シンジ「着いたよ」

ミサト(…なんだか寂しい街……夕日を楽しめってことかしら…?)

シンジ「…時間だ」

ミサト「……あっ…!」


ミサト「すごい…!ビルが生えてく…」


シンジ「…これが使徒迎撃専用要塞都市、第3新東京市。僕たちの街」

シンジ「そして…ミサトちゃん、君が守った街だ…」

シンジ「ありがとう、ミサトちゃん、僕たちを、街を…守ってくれて」

ミサト「………」
44 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:42:02.13 ID:+9cFPgW3o
シンジ「ミサトちゃんの荷物はもう届いてると思うけど…実は僕も先日この町に引っ越してきたばかりなんだ。さっ、入って」

ミサト「あっ、あの…おじゃまします…!」

シンジ「そんな…緊張しないで。今日からここはミサトちゃんの家でもあるんだから…」

ミサト(家……私の、)


ミサト「…た、ただいま…」

シンジ「…お帰りなさい」



シンジ「ごめんね、散らかってて…」

ミサト「いえ………とっても綺麗です…」

シンジ「そう? 今夕飯の支度するね。なにか苦手なものとかある?」

ミサト「い、いえ。何も」

シンジ「そう、良かった」
45 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:43:03.05 ID:+9cFPgW3o
ミサト「…? あの、あっちの冷蔵庫は…?」

シンジ「あ、後で紹介するよ。今はまだ寝てるだろうから」

ミサト「寝てる?」


「サクサクサク」「トントントン」「チーン」


シンジ「ごめんね、在り合わせのものしかなくて…」

ミサト「すごい…!」

シンジ「あはは、ありがとう。ほんとは水につけておくとね、もっと美味しいんだけど。これも冷やす時間があったらなぁ…また明日食べようね」

ミサト「は…はい」

シンジ「? どうしたの?…あ、ごめん…多すぎたかな?女の子の食べる量ってよく分からなくて…それとも食欲がなかった?」

ミサト「い、いえ!あの、そうじゃなくて…こういう食事…慣れてなくて…」
46 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:44:02.62 ID:+9cFPgW3o
シンジ「……」

ミサト「いや、あの、違うんです。食べたくないわけじゃ…!」

シンジ「落ち着かない?」

ミサト「え?」

シンジ「僕もね、ほんと言うと久し振りなんだ…誰かとこうやって食卓を囲むの。だから、何話せばいいのかなって…考えてたら、料理もこんなに作っちゃって」


ミサト「……」


シンジ「…でも、ミサトちゃんも同じだってわかってほっとしたよ。はは…駄目だね。僕のほうが大人なのに、全然気のきいたこと言えないや」

ミサト「いえ!そんなこと…!…その…慣れないですけど、誰かと、し…シンジさんと、食事するの、…あ、安心するっていうか、…」

ミサト「楽しい、です…」


シンジ「…!そう…良かった」
47 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:45:03.89 ID:+9cFPgW3o
シンジ「家事?いいよ〜そんなの。今までだって一人でやってきたんだし」

ミサト「あ、あの、でも…私も、その…一員、ですから、公平に…」

シンジ「…ふふ、そうだね。じゃあジャンケンしよっか」

ミサト「はい…!」



シンジ「あはは…結局…」

ミサト「す…すいません…なんか…」

シンジ「いいよいいよ!公平にジャンケンで決めた結果だし…元々ひとりでやるつもりだったんだから。月曜と火曜はよろしくね」

ミサト「はい!…あ…でも…」

シンジ「?」

ミサト「私あんまり料理とか、得意じゃなくて…その、シンジさんみたいに美味しくできないかも…」

シンジ「そんなこと。気にしなくていいよ。作ってくれるだけでも、十分ありがたいよ…それに、分からないことがあったら、聞いてくれれば…」

ミサト「……」

シンジ「料理なら…ちょっとは自信あるんだ。大体のことは分かると思う。だから、その…遠慮しないでなんでも聞いてね」

ミサト「…はい!そうします」
48 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:46:04.29 ID:+9cFPgW3o
シンジ「……うん。このくらいかな。当面はこの割り当てで様子みよっか」

ミサト「はい」

シンジ「よっと」カチャ

ミサト「あっ…手伝います」

シンジ「いいよ、作りすぎちゃったのは僕だから。それより今日は疲れてるだろうし。お風呂湧いてるから、ゆっくり入っておいでよ」

ミサト「…ありがとう、ございます…」



皿洗い中のシンジ

シンジ「フンフフーン」カチャカチャ

ミサト「!!!!!????しっ、ししし、シンジさんっ!!!!」

ミサトに背を向けたままのシンジ

シンジ「ミサトちゃん?早かったね…ゆっくり入ってよかったのに」ジャブジャブ

ミサト「お、おお、お風呂に、ど、ど、ど、動物…!!!」

シンジ「あはは。ペンペンに会ったの?大丈夫だよ。ペンペンは新種の温泉ペンギンなんだ」ジャー
49 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:47:02.34 ID:+9cFPgW3o
ペンペン「クワッ!」

ミサト「ペン…ギン…」

シンジ「驚かせちゃってごめんね。紹介するの、忘れて…」クルッ…

シンジ「エッ……うわっ、み、ミサトちゃ…っ!!!!!」

ミサト「!!!!!!!」


ミサト「きゃーーーーーーー!!!!!」バタバタ


シンジ「……………意外と、おっちょこちょい、なのかな…」


シンジ「……」カァ
50 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:48:03.11 ID:+9cFPgW3o
ミサト「……やっちゃった…!引っ越し早々…!」ブクブク

ミサト「………」

ミサト(……でも…碇シンジさん、か……良い人みたいで良かった…)

(シンジ「なんでも聞いてね」)

ミサト(……ウソみたい……あんなことがあって、死ぬ思いをしたのに……美味しいご飯食べて、お風呂に浸かって…)

ミサト「生きてるのね…私」

ミサト(ここで生きていくの…?本当に?)


(葛城「ここにお前の居場所はない」)


ミサト「………!」ザプンッ

ミサト(でも、他に行く場所もない……)

(レイ「赤木リツコにデータを書き換えて!」)

(リツコ「……ぅ、……」)


ミサト「……赤木、リツコか…」
51 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:49:03.01 ID:+9cFPgW3o
葛城「……リツコの様子はどうだ」

レイ「身体の傷は20日もすれば良くなります」

葛城「そうか……ではそれまでに凍結中の零号機の再起動を取り付ける」

レイ「心のメンテナンスもなしに、ですか?」

葛城「……私の出る幕ではない、その件に関しては碇一伊に一任している……」

葛城「いかに倫理的な問題があったとしても、エヴァを動かせる人間は他にはいない」

レイ「………分かりました」
52 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:50:02.80 ID:+9cFPgW3o
(通話)

シンジ「激励の言葉…?「この仕事に誇りを持て」なんて言えないよ、まだ自分の夢も見たことないような子どもに…」

レイ「夢を見るのに、明日の世界は必要よ。あの子には前を向いてもらわないと…」

シンジ「そうだよ…だけど…分からないんだ。何を言う権利がある…?世界のためだ人類のためだと言って僕たちは子どもを利用してるんだ」

レイ「……」

シンジ「…道具みたいに……」


レイ「あなたがそれでは…無敵の要塞も形無しよ?」

レイ「……しっかり胸を張って。「碇作戦部長」」


シンジ「………」
53 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:51:03.24 ID:+9cFPgW3o
ミサト(ここも、知らない天井……当たり前か。この街で知っているとこなんて、どこにも無いんだから…)

(シンジ「ミサトちゃんの家でもあるんだから…」)

(葛城「ここにお前の居場所はない」)

ミサト(………)

ミサト(本当に…なんでここにいるんだろ……)
54 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:52:03.90 ID:+9cFPgW3o
(回想)

ケンスケ「頭部破損、損害不明!」

オペレータ「活動維持に問題発生!」

シンジ「状況は!?」

ヒカリ「シンクログラフ反転、パルスが逆流しています!」

レイ「回路遮断、塞き止めて!」

ヒカリ「だめです、信号拒絶、受信しません!」

シンジ「ミサトちゃんは!?」

トウジ「モニター反応無し、生死不明!」

ケンスケ「初号機、完全に沈黙!」

レイ「碇くん!」

シンジ「……っ…作戦中止!パイロット保護を最優先、プラグを強制射出して!」

ヒカリ「だめです、完全に制御不能です!」

シンジ「そんな……!!」
55 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:53:15.10 ID:+9cFPgW3o
オペレータ「エヴァ、再起動!」

ヒカリ「そんな、動けるはずありません!」

シンジ「……まさか…!」

レイ「暴走!?」


咆哮する初号機


カヲル「勝負…あったね」


レイ「A.T.フィールド!」

シンジ「……だめだ!A.T.フィールドがある限り」

レイ「使徒には接触できない!」

ケンスケ「左腕復元!」

シンジ「これは…!?」
56 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:54:06.65 ID:+9cFPgW3o
ヒカリ「初号機もA.T.フィールドを展開…位相空間を中和していきます!」

レイ「いいえ、侵蝕している…」

シンジ「あのA.T.フィールドをいとも簡単に…!」


使徒の腕を折る初号機。コアを叩く

変形した使徒が初号機を抱き込む


シンジ「!!自爆…!?」

ヒカリ「エヴァは…!?」

レイ「あれがエヴァの…」

シンジ「本当の姿…」

葛城「……」
57 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:55:03.26 ID:+9cFPgW3o
ケンスケ「回路、接続」

オペレータ「システム回復、グラフ正常位置」

トウジ「パイロットの生存を確認」

レイ「機体回収班、急いで!パイロット保護を最優先に!」


ミサト「……ふ、ぅあ…っ」

建物のガラス越し。初号機と目が合う

ミサト「あああああああっっ!」
58 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 00:56:07.05 ID:+9cFPgW3o
シンジ「ミサトちゃん……?もう寝た…?」


シンジ「いきなり…こんな街に連れてこられて、使徒と戦わされて…ぶつけようのない感情があると思う」

シンジ「僕たち大人を…恨んでくれて構わない」


シンジ「逃げないでくれてありがとう…、戦ってくれて、ありがとう…だけどこの先、立ち向かえない現実があったとしても、」

シンジ「ミサトちゃん…君自身のことは、嫌いにならないでほしい」

シンジ「…立派なことをしなくても……君は、君でいていいんだから…」

シンジ「おやすみ…」

ミサト「………」







弐話分終わり
59 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:01:03.68 ID:+9cFPgW3o
レイ「おはよう」

ミサト「おっおはようございます…!」

レイ「昨日はよく眠れた?」

ミサト「あっ昨日は…その、はい。眠れました」


レイ「そう…良かったわ。くれぐれも無理はしないように。気分が悪くなったらすぐに言ってね…では、エヴァの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、回収スポット、おさらいしておく?」

ミサト「お…お願いします…」


レイ「通常エヴァは有線からの電力供給で稼動しています。非常時に体内電池に切り替えると、蓄電容量の関係でフルで1分、ゲインを利用してもせいぜい5分しか稼動できない…」

レイ「これが私たちの科学の限界。あとはパイロットの技量にかかってる」

ミサト「はい…!」


レイ「…では昨日の続きから。インダクションモード、始めて」
60 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:02:03.34 ID:+9cFPgW3o
レイ「目標をセンターに入れて」

レイ「スイッチオン」

レイ「もう一度。落ち着いて、目標をセンターに…」

ミサト「目標をセンターに入れて、スイッチ…!」

レイ「次」

ヒカリ「しかし、よく乗る気になってくれましたね、ミサトちゃん」

レイ「…覚悟を決めてくれたなら助かるけど。まだ揺れている、でしょうね…」


ミサト「目標をセンターに入れて、スイッチ…!目標をセンターに入れて、スイッチ…!目標をセンターに入れて、スイッチ…!目標をセンターに入れて…!」
61 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:03:02.90 ID:+9cFPgW3o
テレビ「それではスタジオから、松崎のシノハラナツコさーん!」

テレビ「はい、おはようございます、シノハラです!今朝は何と、西伊豆の松崎へ、ダイビングに来てるんですよ!本日も西伊豆地方は今日も快晴!予想最高気温は…」


ミサト「…シンジさん、帰ってたんですか」

シンジ「ウン…さっきまで当直で…ごめん、朝ごはん作れなくて…。ふわぁぁ…ちょっとゴミ出してくるね」

ミサト「そんな…私が持っていきますから、寝ててください」

シンジ「そんな、悪いよ。僕が当番なのに…」

ミサト「いいですから、ほら!」

シンジ「ありがとう……ミサトちゃん、学校で変わったこととか、ない…?」


ミサト「…大丈夫ですよ」

シンジ「そう…行ってらっしゃい」

ミサト「行ってきます」
62 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:04:03.15 ID:+9cFPgW3o
シンジ「…ハイ、もしもし、あぁ、綾波か…」

レイ「どう?その後彼女とは」

シンジ「うん…。転校して2週間なんだけど、まだ電話も掛かってこなくって…」

レイ「電話?」

シンジ「うん。必須アイテムだから随分前に携帯渡しておいたんだ。だけど自分で使ったり、誰かから掛かってきた様子がなくて…ひょっとしてうまくいってないんじゃないかな…」

レイ「…近づくのが恐いんじゃないかしら。ヤマアラシのジレンマね」

シンジ「ヤマアラシ?あのトゲトゲの?」

レイ「…ヤマアラシの場合、相手に自分の温もりを伝えたいと思っても身を寄せれば寄せるほど体中のとげでお互いを傷つけてしまう。人間にも同じことが言えるわ…。今のミサトちゃんは心のどこかで痛みに怯えて、臆病になってるんでしょうね…」

シンジ「…痛みに怯えて、か…。結局寂しさに耐えられなくて、また近づくのにね…丁度いい距離が掴めればいいんだけど。大人になった今でも分からないくらいだから…ミサトちゃんくらいの歳の子には、もっと難しいだろうね…」
63 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:05:02.29 ID:+9cFPgW3o
教室。ホウキをかき鳴らす青葉

青葉「ギャギャギャ、ギャーン。チュイーン…何? マヤちゃん」

マヤ「…昨日のプリント、届けてくれた?」

青葉「あ、あぁ…いや、なんかマコトの家、留守みたいでさ」

マヤ「もう。青葉君、日向君と仲良いんでしょ?二週間も休んで心配じゃないの?」

青葉「…怪我でもしたのかなぁ」

マヤ「えっ、例のロボット事件で?TVじゃ一人もいなかったって…」

青葉「まさか。鷹ノ巣山の爆心地見ただろ?入間や小松だけじゃなくて三沢や九州の部隊まで出動してるんだ。絶対、十人や二十人じゃすまないさ。死人だって…、マコト!」

マヤ「日向君」


日向「…なんだか、見ないうちにガランとしちゃったな」
64 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:06:02.40 ID:+9cFPgW3o
青葉「まぁ…街であれだけ派手に暴れられちゃな…疎開ってやつだろ」

日向「…喜んでるのはお前ぐらいだろうな。男のロマンとか言って」

青葉「ははっ…それよりお前はどうしてたんだよ?えーと…二週間も休んで。騒ぎの巻き添えでも食ったのか?」

日向「…妹がな。倒れてきた瓦礫の下敷きになったんだ。幸い、大したことはなかったんだけど…医者が念のためにってね。俺のところは二親が研究所勤めだから、長く病院にはいられないだろ?…でも一人にするのは可哀想だから、ずっと俺が付いてたんだ」

日向「…しかし、変だよな。まるで暴走していたようだって話じゃないか。仮にも市民の安全を守る機関のロボットがだぞ?全く…しっかりしてほしいよ」


青葉「それなんだけどさ、お前聞いたか?転校生のうわさ」

日向「転校生?」

青葉「お前が休んでる間に転入してきたんだよ。…あの事件の後にだぞ?おかしくないか?ほら、あの娘さ」



マヤ「起立!」
65 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:07:03.99 ID:+9cFPgW3o
教員「あー、このように人類はその最大の試練を迎えたのであります。二十世紀最後の年、宇宙より飛来した大質量の隕石が南極に衝突。氷の大陸を一瞬にして融解させたのであります。海洋の水位は上昇し…」


「 葛城さんが あのロボットのパイロットというのはホント? Y/N」


教員「だが、あれから15年。わずか15年で我々はここまで復興を遂げる事が出来たのです」


「 ホントなんでしょ? 」


「 Y/N 」


教員「それは私たち人類の優秀性もさることながら皆さんのお父さんお母さんの血と汗と涙と努力の賜物といえるで有りましょう」


「YES」


生徒達「えーー!!!」
66 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:08:02.67 ID:+9cFPgW3o
教員「その頃私は根府川に住んでましてね、今はもう海の…」

マヤ「ちょっともう、みんな!まだ授業中よ!席について!」

生徒女「あー、またそうやってすぐ仕切る〜」

生徒男「いいじゃんいいじゃん」

マヤ「良くない!」

生徒女「ねぇねぇ、どうやって選ばれたの?」

生徒女「テストとか有ったの?」

生徒女「怖くなかった?」

生徒女「操縦席ってどんなの?」
67 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:09:05.24 ID:+9cFPgW3o
ミサト「いやっ…あの、そういうのは、秘密で…」

生徒女「あのロボットなんて名前なの?」

ミサト「…み、みんなは、エバーとか、初号機って…」

生徒男「エッ、必殺技は?」

ミサト「何とかナイフって言って振動が…えと、超音波?みたいに…」

生徒女「でも凄いわ。学校の誇りよね〜」


教師「で、ありますから…あぁ、では今日はこれまで」

マヤ「起立、礼!…ちょっとみんな最後くらいちゃんと……!」


日向「………」ポロッ

シャーペンを落とし、固まる日向


青葉「おいマコト?授業終わったぞ?おーい」
68 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:10:05.71 ID:+9cFPgW3o
ミサト「ごめんなさい」


日向「」


青葉「悪いね。とめたんだけどさ。言いだしたら聞かなくて、コイツ…ほら、だから言ったろ…」



ミサト「………にも………いくせに…」



青葉「……?」




リツコ「葛城さん…非常召集よ。…先に行ってるわ」



放送「ただいま東海地方を中心とした関東中部の全域に特別非常事態宣言が発令されました。速やかに指定のシェルターへ避難して下さい。繰り返しお伝えいたします。…」
69 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:11:02.98 ID:+9cFPgW3o
ケンスケ「目標を光学で捕捉。領海内に進入しました」

カヲル「…総員、第一種戦闘配置」

オペレータ「了解、滞空迎撃戦用意」

トウジ「第三新東京市、戦闘形態に移行」

オペレータ「中央ブロック収容開始」


オペレータ「中央ブロック及び第1から第7管区まで間で収容完了」

ケンスケ「政府及び関係各省への通達終了」

オペレータ「現在対空迎撃システム稼働率48%」

シンジ「非戦闘員、及び民間人は?」

ケンスケ「すでに退避完了だそうだよ」
70 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:12:02.40 ID:+9cFPgW3o
放送「小中学生は各クラス、住民の方々は各ブロック毎にお集まりください」


青葉「くっそー!またかぁ」

日向「また文字だけか…報道管制ってやつだな」

青葉「俺ら民間人には見せてくれないってのか?どうして!身の上のことだろ?」



シンジ「第4の使途…まさかこんなに早く来るなんて…葛城司令のいないときに…」

トウジ「前は15年のブランク、今回はたったの3週間やからなぁ」

シンジ「…こっちの都合はお構いなしか」

ケンスケ「女性に嫌われるタイプだね」


カヲル「…税金の使い道が組織の面子、体裁のためとはね…」

ケンスケ「委員会から再びエヴァンゲリオンの出動要請が来てるよ」

シンジ「了解。…言われなくても出撃させるさ」
71 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:13:02.71 ID:+9cFPgW3o
オペレータ「エントリースタートしました」

ヒカリ「L.C.L.電荷」

オペレータ「圧着ロック解除」

ミサト(……また乗ってる……恐くて……逃げ出したいのに)



(学校の誇りよね)



(付き合ってほしいんだ)

(君の支えになりたい)



ミサト(そんなんじゃない。私は…)


ミサト「何も……知らないくせに……」
72 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:14:02.72 ID:+9cFPgW3o
青葉「なあ?ものは相談なんだけどさ」

日向「何だよ」

青葉「ちょっと、さ。ほら」

日向「…物好きな奴だなぁ」


日向「マヤちゃん」

マヤ「何?」

日向「俺ら二人、ちょっと野暮用」

マヤ「野暮用?」

青葉「催したんだよ」

マヤ「…もう。早く行ってきなさいよ」
73 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:15:02.14 ID:+9cFPgW3o
青葉「死ぬまでに一度だけでも見たいんだよ」

日向「本物のロボットをか?」

青葉「そうさ。次が何時になるのか、次があるのかも分からないんだ。このチャンスを逃したくない」

日向「逃すもなにも…命のほうが大切じゃないのか?」

青葉「…お前だって、本当は見たいんじゃないのか!?外ではミサトちゃんが戦ってるんだぞ!?応援しなくていいのか?」

日向「……」

青葉「…なぁ、頼むよ。ロック外すの手伝ってくれ。この通り!」
74 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:16:02.96 ID:+9cFPgW3o
日向「…こんなとこで死ぬのは御免だぞ…?」

青葉「なぁに。あそこに居たってロボットが負ければ人類滅亡だ…どうせ死ぬなら見てからがいい」

日向「俺が言ってるのは流れ弾に当たりやしないかってことだよ。それに、人類滅亡なんて…それを阻止するためにネルフがあるんだろ」

青葉「そうさ。そのネルフの決戦兵器は何だ?…あの転校生のロボットだよ。この前もあの娘が俺達を守ったんだ。俺らが模試の結果に一喜一憂してるようなそれとはスケールが違うのさ…!抱えているもんが違う。…そんな相手にお前は…」

日向「……」

青葉「普通に手順を踏めばいいものを、いきなり「付き合いたい」だの「支えになりたい」だの…だいぶショッキングだよな。…精神に多大なストレスを与えたかも」

日向「ど…どうしろって言うんだよ」

青葉「応援するんだよ!!あの娘がやってくれなきゃ、俺達は死ぬんだぞ?俺達にはあの娘の戦いを見守る義務があるのさ」

日向「……まったく…乗せられる俺も俺だけど、お前のその情熱はいったい何処から来るんだよ…」

青葉「ははっ」
75 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:17:03.46 ID:+9cFPgW3o
シンジ「ミサトちゃん…準備はいい?」

ミサト「…はい」

レイ「…敵のA.T.フィールドを中和しつつ、パレットの一斉射撃。練習通りよ、大丈夫?」

ミサト「はい…!」

シンジ「発進!」



青葉「おおおぉ!凄い…!本物が…!ロマンだ!!良いフレーズが浮かぶ気がする!!!」

日向「お前、それが本音か!?」

青葉「出たっ!」



ミサト「目標をセンターに入れてスイッチ…」

ヒカリ「A.T.フィールド展開」

ミサト「目標をセンターに入れてスイッチ…」

シンジ「作戦通りに。いいね?ミサトちゃん」

ミサト「…はい…!」
76 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:18:04.09 ID:+9cFPgW3o
シンジ「まずいっ!爆煙で敵が見えない!」

ミサト「アッ!」



日向「ちょっ…!大丈夫なのか、あれ!?」

青葉「大丈夫さ…。ん?大丈夫だろ…?」



シンジ「予備のライフルを出すから、受け取って」

シンジ「ミサトちゃん?…ミサトちゃん!?」



青葉「これは…思った以上に告白がショックだったかな…」

日向「もうよせよ…!」
77 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:19:04.34 ID:+9cFPgW3o
ミサト「ハッ…!」

トウジ「アンビリカルケーブル断線」

ケンスケ「エヴァ、内臓電源に切り替わりました」

ヒカリ「活動限界まで後4分53秒」

ミサト「きゃあっ!!」


青葉「こ、こっちに来る!」

青葉・日向「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」



シンジ「ミサトちゃん、大丈夫?ミサトちゃん!…ダメージは?」

トウジ「問題無しや」


ミサト「…痛ぅ……ハッ!」
78 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:20:00.74 ID:+9cFPgW3o
シンジ「ミサトちゃんのクラスメイト!?」

レイ「何故こんな所に…!」

ミサト「……っ!」


青葉「な…なんで戦わないんだ」

日向「俺らがここに居るから……自由に動けないんだ」


ヒカリ「初号機活動限界まで後3分28秒」

シンジ「…ミサトちゃん!そこの二人を操縦席へ!」

シンジ「二人を回収した後、一次退却。出直すしかない…!」

レイ「許可の無い民間人をエントリープラグに入れることはできないわ」

シンジ「だけど!あそこは危険だよ!」

レイ「…越権行為よ、碇一尉!」

ヒカリ「初号機活動限界まで後3分」

シンジ「くっ…エヴァは現行命令でホールド、その間にエントリープラグ排出。急いで!」

シンジ「そこの二人、乗って。早く!」
79 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:21:03.84 ID:+9cFPgW3o
日向「なんだ!?水…!?」

青葉「おあぁ…っ!カメラがっ…!ごほっ、かはっ」


ヒカリ「神経系統に異常発生」

レイ「異物を二つもプラグに挿入したからよ。…神経パルスにノイズが混じってる」

シンジ「今だ!ミサトちゃん、後退して!」


シンジ「回収ルートは34番、山の東側へ!」

日向「か…葛城さん、後退って…」

ミサト「……、ちゃだめ、逃げちゃ駄目…!逃げちゃ…」


トウジ「プログレッシブナイフ装備!」

シンジ「みっミサトちゃん!!!退却だよ!言うことを聞いて!!!」

ミサト「…あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
80 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:22:02.60 ID:+9cFPgW3o
シンジ「ミサトちゃん…!」

ミサト「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!あああぁぁぁぁっ!!!!」

ヒカリ「初号機活動限界まで後30秒、28、27、26、25」

ヒカリ「14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」

ヒカリ「エヴァ初号機活動停止」

トウジ「…目標は完全に沈黙」


ミサト「ハァ…ハァ…ハァ…」

ミサト「……うっ、うっ……っ、う……」

日向「……」

青葉「……」
81 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:23:02.79 ID:+9cFPgW3o
日向「…今日でもう三日か」

青葉「俺らがコッテリと絞られてから?」

日向「…あの娘が学校に来なくなってからだよ…」

青葉「あーあの娘ね…」



日向「…葛城さん、あれからどうしてるんだろ…」

青葉「お前…諦めてないのか?」

日向「悪いかよ…」

青葉「いや、好きにすればいいさ。まったく…普段は冷静なくせに思い込んだらとことんだな、お前ってやつは。ほれ」

日向「?」

青葉「転校生の電話番号だ…だが!うまく使えよ?間違ってもまた告白なんてするんじゃないぞ」

日向「…恩にきる」







参話分終わり
82 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:24:03.05 ID:+9cFPgW3o
シンジ「…ミサトちゃん?」

シンジ「…今日も具合が悪いの?…行きにくいと思うけど、学校はちゃんと行ったほうがいいよ…もう五日だし。きっとみんな君のこと心配して…」

シンジ「ミサトちゃん…?開けてもいい…?」

シンジ「……」ガラッ

シンジ「いない……。…当然か…」


「ピンポーン」


シンジ「ミサトちゃんっ?」

日向「…?いえ。クラスメイトの日向です」

青葉「青葉です」

シンジ「…日向君と青葉君…」

シンジ「…あ、この間初号機のエントリープラグに入った…」

日向「…!そっ、その節はご迷惑をおかけしました!」

青葉「あの…葛城さんは?」

日向「…このところずっと休んでいらっしゃるので…様子見に」
83 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:25:02.76 ID:+9cFPgW3o
シンジ「わざわざありがとう。でも…ミサトちゃんは…今ネルフの訓練施設にいるんだ」

日向「そう…なんですか…」

シンジ「ごめんね。せっかく来てもらったのに…」

青葉「いえいえ。どうせ俺たちの家もこの辺ですから」

日向「あの…これ、プリント類です」

シンジ「ありがとう。渡しておくね」

日向「じゃあ…僕らはこれで。葛城さんに宜しくお伝えください」

シンジ「伝えておくよ。気をつけてね」



日向「なんなんだ…さっきの人…大学生くらいに見えたぞ?」

青葉「…葛城の彼氏かな?」

日向「そんなわけないだろ。…俺たちのことを知ってた。ネルフ職員さ。…保護役か何かだろ…」



シンジ「友達いたんだ…ミサトちゃん…」

シンジ「…いったい何処に…」
84 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:26:02.54 ID:+9cFPgW3o
放送「次は瀬能峠、長尾方面です。お出口右側に変わります」


放送「本日は第3新東京市第七環状線をご利用いただき真にありがとうございます」

放送「この電車は当駅にて回送電車となります。どちらさまもお忘れ物の無いように御降車ください」

ミサト「帰らなきゃ…」

ミサト(あの場所へ?それとも…)


「お兄さん、ちょっとそこのお兄さんお兄さん。よってこうよ。安いんだから…」

「超疲れたあなたを極楽へとご案内…」

(映画)

「キャーー」

「本当に探知できなかったんですか?」

「そうだ。直径数十ミリの物体が光速の何十倍という速度で南極に激突したのだ…」

ミサト「………」

さ迷い歩くミサト

ミサト「……」
85 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:27:03.76 ID:+9cFPgW3o
シンジ「…やっぱり、僕らが間違ってたんだ」

シンジ「14歳の子どもに、こんな重荷を…人類の存亡を背負わせるなんて…」

レイ「…でも、乗れるのは彼女たちだけ。…私たちはエヴァの操縦を14歳の子どもたちに委ねる…それしか方法はない」

シンジ「…分かってる」

レイ「ミサトちゃんから連絡は?」

シンジ「…何も。…このまま帰ってこないかもしれない…」

レイ「どうするつもり?」

シンジ「どうしようもないよ。帰りたくないなら、そのほうが…」

レイ「何故?」



シンジ「…こないだの戦闘の後…」
86 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:28:00.58 ID:+9cFPgW3o
シンジ「…どうして指示を無視したの…?」

ミサト「ごめんなさい」

シンジ「…謝ってほしいわけじゃないんだ。その…理由が聞きたくて。混乱してたなら、それも仕方のないことだし……僕らは、君の身体状況に合わせて適切な処置を…」

ミサト「……疲れていたので、指示を聞き間違いました」

シンジ「………君に命をかけさせて、申し訳ないと思ってる…だけど、君だけじゃないんだ。ネルフにいる全員が、恐怖と戦ってる。ほんの些細なミス、誤った情報伝達が、戦況を左右する」

シンジ「僕らは……共有していかなければならないんだ。同じものが見えていないと、倒せるものも倒せない…」
87 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:29:02.55 ID:+9cFPgW3o
シンジ「だから……」

ミサト「…もう、いいじゃないですか…」

シンジ「…ミサトちゃん……?」

ミサト「勝ったんだから……っ!そんな、私は立派にはなれない…!なにも…!共有なんてできない…、私はよそ者だから…!!」

シンジ「ミサトちゃ…」

ミサト「戦わなきゃ……前の生活に逆戻り…嫌なんです、でも、戦うのも嫌…!」

シンジ「………」

ミサト「でも、私が逃げ出したら…あの娘がまた一人で戦うことになって…!それも嫌、もう、嫌で嫌でたまらないのに……ここに残って…でも見渡すと、私は一人なんです」

シンジ「……!」

ミサト「私だけが恐がってる、私だけが覚悟してない!ただ言われるままにエバに乗って…」

シンジ「ミサトちゃん…!」

ミサト「うっ……う、う…っ」
88 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:30:03.75 ID:+9cFPgW3o
レイ「そう…」

シンジ「…ミサトちゃんにとって、エヴァに乗ることが苦痛でしかないのなら…もう乗らないほうがいい。自暴自棄になって戦っても…使徒には勝てない。死んでしまうよ…」

レイ「…エヴァが動かなければ、同じことよ」



空き地。

青葉「フンフーン…ざーんーこーくな…んん、違うかな…?ざーんーこーくーな…これかな…」ジャカジャカ

青葉「これでよし、と。…ん、転校生…?」

青葉「葛城!」
89 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:31:03.24 ID:+9cFPgW3o
青葉「…マコトのことさ、忘れてやってくれよ。普段はあんな奴じゃないんだ…なんと言うか…思い込んだら止まらない奴でさ…あいつ妹がいるんだけど、その妹にも叱られたらしい。初対面で告白するなんて気持ち悪い、ってさ。はは、その通りだよな?」

ミサト「そんな…ことは…」

青葉「……」

青葉「……夜は静かで良いよな。あの五月蝿い蝉が鳴かないし」

ミサト「生態系が戻ってるんだって…シンジさんが言ってた」

青葉「…あの男の人か。…ほんとに一緒に住んでるの?」

ミサト「…?ええ…」

青葉「そっか…しかし大変だよな…まだ14歳で、しかも女の子なのに…あんなでかいロボットに乗らなきゃならないなんて。…代われるもんなら代わってやりたいよ」

ミサト「…それはやめたほうが…。お母さんが心配するし…」

青葉「あぁ、それなら問題ない。俺そういうの居ないからさ」

ミサト「ご…ごめんなさい」

青葉「気にするなよ。それより、飯食うだろ?」

ミサト「ありがとう…」
90 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:32:04.02 ID:+9cFPgW3o
ミサト「…いつもこんな事してるの?」

青葉「ん?うん…そうだな。ここなら近所迷惑にもならないし」

ミサト「…プロを、目指してる?」

青葉「はは。まさか…そんな時代じゃないだろ?好きでやってるだけさ」



黒服男「…葛城ミサトちゃんだね?」

ミサト「…はい」

黒服男「ネルフ保安諜報部のものだ。保安条例第8項の適応により君を本部まで連行する。いいね?」

ミサト「はい…」



日向「それで、お前はそれを黙って見てたって言うのか?」

青葉「見てたさ。しょうがないだろ?向こうはプロだ、勝てやしない」

日向「くそ…そこにいたのが俺なら…!」

青葉「…今ごろまた校長室だろ?」
91 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:33:03.20 ID:+9cFPgW3o
シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「…すみませんでした」

シンジ「いや…心配したよ…どこにいたの?二日間も…」

ミサト「……」

シンジ「……」

ミサト「私乗ります、エバに」

シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「乗って、戦って、死ぬまで続けます…きっと、何回も乗れば恐くなくなる」

ミサト「あの娘…リツコちゃんみたいに、落ちついてやれるようになる、シンジさんやレイさんみたいに強くなれる」

ミサト「そしたら人の顔も…気にならなくなって、きっと仲良くなれる、学校のみんなとも…」

ミサト「………お父さんも、きっと私を認めて…!」

シンジ「ミサトちゃん!……ミサトちゃん…もういい、もういいよ…」

ミサト「…え…?」
92 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:34:03.61 ID:+9cFPgW3o
シンジ「もういいんだ…無理してエヴァに乗る必要なんてない。僕たちのことは…気にしなくていい。元々巻き込んだのは僕らのほうなんだ。謝るよ…」

ミサト「でも…」

シンジ「いいんだ。僕らは…僕らは市民の安全を守るのが仕事で…君もその一人なのに。君をたくさん傷つけてしまった…」

ミサト「……」

シンジ「ミサトちゃん」

シンジ「僕も恐くてたまらないよ…覚悟が決まってるなんて嘘だ。前なんて見えてない、ただそう繕うのに必死で………」

ミサト「……シンジさん…」

シンジ「ごめんね…勝手な大人ばかりで」
93 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:35:03.35 ID:+9cFPgW3o
レイ「サードチルドレンは明日第3新東京を離れます」

葛城「…では、初号機のデータはリツコに書き換えろ」

レイ「しかし」

葛城「…零号機の再起動実験の結果の如何によらず初号機での実験に移る」

葛城「マルドゥック機関の報告によるとフォースチルドレンはまだ見つかっていない」

レイ「…パイロットの補充は効かない、と言う事ですね」

葛城「……」
94 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:36:03.74 ID:+9cFPgW3o
ミサト「あの、シンジさんはどこですか?一言お別れを…」

黒服男「君はもうすでにネルフの人間ではない。どのような事も教えられない」

駅。

青葉「葛城!忘れもんだぞー!」

日向「葛城さん!」

ミサト「あっ…」


ミサト「あの、ちょっといいですか?」
95 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:37:03.02 ID:+9cFPgW3o
ミサト「あの…ありがとう」

青葉「…なんか喋れよ。ホラッ!」

日向「かっ、葛城さん…この前は、その、急にあんなこと言ったりして、ごめん」

日向「でも、正直な気持ちだったんだ。実は…その、最初のロボット騒ぎで、妹が怪我をして…いや!全然大した怪我じゃなかったんだけどさ。頭にきてたんだ、誰かも分からないパイロットに」

日向「でも、君の悲しそうな顔を見て、変わった」

ミサト「……!」

日向「教室でさ。クラスの連中に囲まれてるのに…ひとりきり、みたいな…寂しそうに見えて、もっと知りたいと思ったんだ。支えたいと…あの時は、つい熱くなって、ああいう事を言ってしまったけど。その、今でも、葛城さんさえ良ければ、友達として…」

青葉「おい…」

日向「いや…その…ごめん。今から引っ越すのに、こんなこと…」

ミサト「ううん、……ありがとう」

日向「……!」
96 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:38:05.15 ID:+9cFPgW3o
ミサト「…どうしてここが?」

青葉「勘だよ。ここんとこ何十人って同級生を見送ってきたからな」

日向「…葛城さんが出ていくなら、いずれ俺らも出ていくことになるだろうな…。だけど…ほっとしてるよ。…エヴァの中で、あんなに苦しんでる姿を見たんだ。葛城さんがエヴァから解放されて…良かった…」

ミサト「………!」

青葉「…おいおい。二人ともそんな辛気臭い顔するなよ」

日向「向こうでも…元気で」

青葉「ガンバレよ?」



ミサト「あのっ…」

黒服男「時間だ」


黒服男「オイ、コラッ…」


ミサト「謝らなきゃいけないのは私よ…!何も…!何も知ろうとしなかったのは私のほう…!殻にこもって、拒絶して…、勝手に、思い込んでただけで…っ!」


黒服男「これ以上手を焼かせるな」
97 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:39:02.31 ID:+9cFPgW3o
レイ「本当にこれでよかったの?」

シンジ「……ミサトちゃんが帰ってきたとき…なんて声をかけていいか分からなかったんだ…」

シンジ「………僕の見栄が彼女を追い込んでた…本当のことを言っても、彼女を救えたかどうか……」

レイ「…ヤマアラシのジレンマ」

シンジ「……」

レイ「まだ時間はあるわ」
98 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:40:05.12 ID:+9cFPgW3o
放送「二番線に厚木行き特急リニアが参ります。危ないですから黄色い線の内側までお下がりください」


放送「二番線の電車は4時20分発厚木行き政府専用特別列車です。一般の方は柵の内側には入れません」

放送「なお許可の無い方の御乗車は硬く禁じられております。くれぐれもご注意ください」



(シンジ「今日からミサトちゃんの家でもあるんだから」)



青葉「…おい、あの人って」

日向「葛城さん家の…」

シンジ「はぁっ、はぁ…」


シンジ「……」

ミサト「……!」
99 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:41:02.30 ID:+9cFPgW3o
放送「まもなく4番線に強羅行き各駅停車が参ります。危ないですから黄色い線の内側までお下がりください」

放送「小さいお子様をお連れの方は特にご注意ください」


放送「4番線の電車は4時32分発強羅行き折り返しの各駅停車です。ご利用の皆様はご乗車になってお待ちください」

放送「はい、まもなく電車入ります。黄色い線の内側まで下がってください」



ミサト「たっ、ただいま…」


シンジ「……おかえりなさい」





四話分終わり
100 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/23(月) 01:43:25.53 ID:+9cFPgW3o
続きは明日
101 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:29:03.91 ID:lRBHXjHEo
22日前

ネルフ本部・第2実験場


葛城「起動開始」

レイ「主電源全回路接続」

ヒカリ「主電源接続完了。起動用システム作動開始」

ヒカリ「稼動電圧後臨界点まであと0.5、0.2、突破」

レイ「起動システム第2段階に移行」


オペレータ「パイロット接合に入ります」

オペレータ「システムフェーズ2スタート」
102 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:30:04.81 ID:lRBHXjHEo
オペレータ「シナプス挿入。接合開始」

オペレータ「パルス送信」

オペレータ「全回路正常」

オペレータ「初期コンタクト異常なし」

オペレータ「左右上腕筋まで動力伝達」

オペレータ「オールナーブリンク問題無し」


ヒカリ「チェック2550までリストクリア」


レイ「第3接続準備」


ヒカリ「2580までクリア。絶対境界線まであと0.9、0.7、0.5、0.4、0.3、パルス逆流!」
103 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:31:03.18 ID:lRBHXjHEo
オペレータ「第3ステージに異常発生!」

オペレータ「中枢神経素子にも拒絶が始まっています!」


レイ「コンタクト停止。6番までの回路開いて!」

ヒカリ「駄目です!信号が届きません」

ヒカリ「零号機制御不能!」


葛城「実験中止。電源を落とせ!」



レイ「はい!」


レイ「零号機、予備電源に切り替わりました」



オペレータ「完全停止まで後35秒!」
104 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:32:03.05 ID:lRBHXjHEo
レイ「危険です、下がってください!」

ヒカリ「オートエジェクション作動します」

葛城「……!」

オペレータ「完全停止まで後10秒」

レイ「特殊ベークライト急いで!」

オペレータ「8、7、6…」

葛城「リツコ!」

ハッチをこじ開ける

葛城「………が……っ、ぐぅ……っ!」

葛城「リツコ、大丈夫かっ?」


葛城「リツコッ?」


小さく頷く


葛城「そうか…」
105 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:33:02.50 ID:lRBHXjHEo
レイ「赤木リツコ14歳。マルドゥックの報告書によって選ばれた最初の被験者、ファーストチルドレン。エヴァンゲリオン試作零号機専属操縦者。過去の経歴は白紙、全て抹消済み」

レイ「……」


シンジ「…それで、事故の原因は何だったの?」

レイ「未だ不明。ただし、推定では操縦者の精神的不安定が第一原因と考えられるわ」


シンジ「精神的に不安定…」

レイ「……結局、何も話してもらえなかったから…そう言うほかないの」

シンジ「……やっぱり、エヴァに乗ることが…」

レイ「分からない。でも、…」

シンジ「なに…?」

レイ「……いいえ、何でも無い…」
106 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:34:03.42 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「B3ブロックの解体終了」

アナウンス「全データを技術局1課分析班に提出してください」



ミサト「…これが私達の敵…」


レイ「コア以外は殆ど原形を留めている…。本当に、理想的なサンプルね…ありがたいわ」

シンジ「解析結果は?」


レイ「…これ」

シンジ「…何?これ」

レイ「…解析不明を示すコードナンバー」

シンジ「…駄目か…」

レイ「分かったこともあるわ。使徒は粒子と波両方の性質を備える、光のようなもので構成されている…」
107 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:35:03.35 ID:lRBHXjHEo
シンジ「動力源は?」

レイ「…そこはサッパリ。らしきものはあったんだけどね…」

シンジ「…まだまだ多くは未知のままか…」

レイ「…とかくこの世は謎だらけよ。例えばほら、この使徒独自の固有波形パターン」

シンジ「ん?」


シンジ「な…これって…!」

レイ「そう、構成素材に違いは有っても信号の配置と座標は人間の遺伝子と酷似している…99.89%ね」

シンジ「99.89%…」

レイ「…改めて思い知らされるわ。私達の知恵の浅はかさを」
108 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:36:03.67 ID:lRBHXjHEo
葛城「そこだ、止めろ」

カヲル「これがコアか…。残りは?」


研究員「それが劣化が激しく資料としては問題が多すぎます」

葛城「構わない、他は全て破棄しろ」

研究員「はい」
109 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:37:04.11 ID:lRBHXjHEo
ミサト「…、……」

シンジ「…どうかした…?」

ミサト「い、いえ…あの…お父さん、手に火傷してるみたいなんですけど…」

シンジ「火傷?」

ミサト「どうしたのかなって思って」

シンジ「…綾波は知ってる?」

レイ「あなたがまだここに来る前、起動実験中に零号機が暴走して…その話は?」

ミサト「聞いてます」

レイ「その時パイロットが中に閉じ込められたの」

ミサト「パイロットって、リツコちゃんですよね」

レイ「ええ。葛城指令が彼女を助け出したの…加熱したハッチを無理やりこじ開けて」

ミサト「お父さんが?」

レイ「手のひらの火傷はその時のものよ」
110 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:38:03.50 ID:lRBHXjHEo
女子「行け行け行け行けー!」

女子「行けヒデコー!」

女子「負けんなー」



男子「させるかー」

男子「ったぁ!」

男子「次決めてくぞー!」

男子「オー」



青葉「眩しいなぁ…」

日向「やめろよ、あからさまに。みっともない」
111 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:39:04.31 ID:lRBHXjHEo
女子「なんか青葉って目つきヤラシー」


ミサト(リツコちゃんは…また見学か…そうよね…まだ完治してないみたいだし…)


マヤ「葛城さん、どうしたの?」

ミサト「えっ?」

マヤ「ああ…赤木さんね。ほんと心配になるわよね…細いし、色白だから」

マヤ「私もああなれたらなぁ…赤木さんって、何でもそつなくこなすし」


ミサト「そうね…羨ましい」
112 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:40:09.25 ID:lRBHXjHEo
日向「よせよ、女子たち、こっち見てるぞ?」

青葉「いいじゃないか。見せてくれてるんだろ」

日向「お前な…」

青葉「ふん…なーに淡泊ぶってるんだ?お前だってさっきから葛城ばっかり見てるじゃないか」

日向「なっ、み、見てない!」

青葉「おいおい。今さら隠すなよ、好きなんだろ?」

日向「それとこれとは別だろ!」

青葉「…葛城の胸、葛城の太もも、葛城のふくらはぎ…」

日向「よせよ!」



青葉「それにしても…赤木はいつも一人だよな…」

日向「赤木リツコか?」

青葉「ああ…マヤちゃんがちょいちょい声かけてる以外は。友達いないのかな」

日向「…作る気がないんじゃないのか?一人で寂しいってふうでもないし…」

青葉「それもそうだな…」
113 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:41:03.04 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「エヴァ初号機は第3次冷却に入ります。第6ケージ内はフェーズ3までの各システムを落としてください」

ヒカリ「先のハーモニクス及びシンクロテストは異常なし。数値目標を全てクリア」

オペレータ「了解。結果報告はBALTHASARへ」

ヒカリ「了解」

オペレータ「エントリープラグのパーソナルデータはオールレンジにてMELCHIORへコピー。データ送ります」


ミサト「……」

リツコと父親が親しげに話している

ミサト「…、……」


オペレータ「MELCHIOR了解。回路接続」

オペレータ「第3時冷却スタートします」

ヒカリ「CBL循環を開始」

オペレータ「廃液は第2浄水システムへ」

オペレータ「各タンパク壁の状態は良好。各部問題無し」

オペレータ「零号機の再起動実験までマイナス1500分です」
114 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:42:05.02 ID:lRBHXjHEo
シンジ・ミサト宅

レイ「これは?」

シンジ「カレーだよ。市販のルーは使ってないんだ」

レイ「相変わらずね…」


レイ「…お肉はよけてくれる?」

シンジ「相変わらずだなぁ…」


シンジ「ミサトちゃん、つぐよ?」

ミサト「あ…いえ、大丈夫です。私は自分で…」ドヴァーッ

カップラーメンにカレーを投下するミサト


シンジ「えっ」

レイ「本気…?」

ミサト「えっ?あ…すいません…この食べ方が好きで…」

シンジ「い…いや、いいと思うよ。人それぞれだし」
115 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:43:03.70 ID:lRBHXjHEo
レイ「…じゃあ」

ミサト「いただきます!」


レイ・ミサト「ンッ!」


ミサト「〜おっいしい!」

レイ「おいしい…」

シンジ「はは…照れるな…」



ペンペン「クワッ」

レイ「……」

ペンペン「クワックワ〜」

レイ「……」


ミサト「あの…レイさんってペンペン苦手なんですか…?」

シンジ「ん?いや。はは…あれが綾波なりの愛で方なんだよ」
116 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:44:02.50 ID:lRBHXjHEo
レイ「はじめて見たときは驚いたけど…慣れると可愛いわ…」

ミサト「そうですよね、私もはじめて見たときは、……」カァ

シンジ「……」カァ

レイ「…碇君、あなた何かしたの?」

シンジ「なっ、何もしてないよ!何言い出すんだよ綾波」

レイ「じゃあ今何を思い出したの?」

シンジ「なっ…何も思いだしてないよ!」

レイ「…ミサトちゃん、やっぱり引っ越したほうがいいわ。いくら碇君でも自分の性には抗えないもの」

ミサト「い…いえ…その…あれは本当に…」

シンジ「もう!やめてよ綾波!ほんとに何もなかったったら!」

レイ「そうなの?ミサトちゃん」

ミサト「……」コクン

レイ「……そう…何もないならいいのだけど」

シンジ「だから最初からそう言ってるじゃないか…!」

レイ「確認は必要よ」
117 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:45:03.01 ID:lRBHXjHEo
レイ「……そう言えば。ミサトちゃん、ひとつ頼まれてくれないかしら」

ミサト「はい…?」

レイ「リツコちゃんの更新カード。渡しそびれてしまって…悪いんだけど、本部に行く前に彼女のところに届けてほしいの」

ミサト「わかりました」

シンジ「…リツコちゃんとはもう仲良くなれた?」

ミサト「いえ…ほとんど口聞いてなくて…」

シンジ「そっか…リツコちゃんあんまり喋らないもんな…」


ミサト「…リツコちゃんって、どんな子ですか?」

レイ「いい子よ……とても。ただ愛情表現が苦手みたい…その点はあなたのお父さんと似ているかもね」


ミサト「……父と……」

シンジ「……………」
118 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:46:03.18 ID:lRBHXjHEo
ミサト「ごめんください…」

ミサト「ごめんください、あの、いますか?…リツコちゃん?」

ミサト「………」

机の上に置かれた眼鏡

ミサト「…リツコちゃんのかしら…?」


ミサト「…?」クルッ

ミサト「うわ…ごめん、いたの…」

リツコ「ええ。何か?」

ミサト「あの…カードが、新しくなったの。えと…だから、レイさんに頼まれて、渡しに…」

リツコ「そう」

ミサト「えっと…(目のやり場に困るわ…)」

リツコ「そこに置いておいてちょうだい…着替えたら行くわ」

ミサト「…待っててもいい?その…一緒に行っても」

リツコ「別に…構わないわ」
119 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:47:03.05 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「セントラルドグマは現在改装中です。技術班は第4直通ゲートを利用してください」


ミサト「…今日は再起動の実験よね。…今度は、上手くいくと良いわね」

ミサト「ねぇ、リツコちゃんは怖くないの?またあの零号機に乗るのが」

リツコ「なぜ?」

ミサト「なぜって…前の実験で大怪我したって聞いたから。その…平気なのかなって思って」

リツコ「…あなたは葛城指令の子どもでしょ?」

ミサト「? ええ…」

リツコ「信じられないの?お父さんの仕事が」

ミサト「……信じられるわけないわよ、あんな父親なんて」

ミサト「…だいたい、私たちみたいな子どもをあんな危険なものに乗せて、平気な顔してるのが分からないわ。それに私を遠くへやったときだってろくな説明もしないで…」

リツコ「……」

ミサト「ここに呼ぶときだって手紙で「至急来られたし」たったそれだけよ?」

ミサト「信じられるわけ…ちょっと、リツコちゃん聞いてる?」

リツコ「……あなたはよく喋るのね…」
120 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:48:02.83 ID:lRBHXjHEo
(葛城「大丈夫か、リツコ?」)


(レイ「その時パイロットが中に閉じ込められてね、葛城指令が彼女を助け出したの。加熱したハッチを無理やりこじ開けてね」)


(レイ「手のひらの火傷はその時のものよ」)



葛城「リツコ、聞こえるか?」

リツコ「はい」
121 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:49:04.50 ID:lRBHXjHEo
葛城「これより零号機の再起動実験を行う。第一次接続開始」

レイ「主電源コンタクト」

ヒカリ「稼動電圧臨界点を突破」

レイ「了解、フォーマットフェーズ2に以降」

オペレータ「パイロット零号機と接続開始」

オペレータ「回線開きます」

オペレータ「パルス及びハーモニクス正常」

オペレータ「シンクロ問題無し」

オペレータ「オールナーブリンク終了、中枢神経素子に異常なし」

オペレータ「再計算、誤差修正なし」

ヒカリ「チェック2590までリストクリア。絶対境界線まで後2.5、1.7、1.2、1.0、0.8、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、突破。ボーダーラインクリア」


ヒカリ「零号機起動しました」

リツコ「了解、引き続き連動試験に入ります」
122 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:50:03.79 ID:lRBHXjHEo
カヲル「…葛城君、未確認飛行物体が接近中だ…恐らく第五の使徒だろうね」

葛城「テスト中断。総員第一種警戒態勢」

カヲル「…零号機はこのまま使わないのかい?」

葛城「まだ戦闘には耐えない。初号機は?」

レイ「380秒で準備できます」


葛城「出撃だ」

レイ「はい」


葛城「リツコ、再起動は成功した。戻れ」


リツコ「……」
123 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:51:08.35 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「目標は遠野沢上空を通過」

トウジ「初号機発進準備に入ります。第一ロックボルト、外せ」

ミサト「解除確認」

トウジ「了解。第二拘束具外せ」

オペレータ「了解」


ケンスケ「目標は芦ノ湖上空へ侵入」

トウジ「エヴァ初号機、発進準備よろし!」

シンジ「発進!」
124 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:52:08.09 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「目標内部に高エネルギー反応!」

シンジ「そんな…っ!?」

ケンスケ「円周部を加速、収束していきます!」

レイ「まさかっ!?」



シンジ「ミサトちゃん!!!!避けてっ!」


ミサト「えっ?」


ミサト「アアアアァァァァッッッッ、アアアァァァァ!!!」



シンジ「ミサトちゃん!!」






伍話分終わり
125 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:42:04.81 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「目標内部に、高エネルギー反応!」

シンジ「そんな…っ!?」

ケンスケ「円周部を加速!収束していきます!」

レイ「まさかっ!」


シンジ「ミサトちゃん!!避けてっ!!!」


ミサト「え!?」

ミサト「…ぁぁあああああ!」


シンジ「戻してください!早く!」


ケンスケ「目標、完黙!」

シンジ「ミサトちゃんはっ?」

トウジ「まだ生きとる!」

ヒカリ「初号機回収、第7ケイジへ!」

シンジ「ケイジへ行ってくる。後は頼むよ!」
126 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:43:03.23 ID:lRBHXjHEo
ヒカリ「初号機、固定完了!」

トウジ「パイロット、脳波乱れとる、心音微弱!」

レイ「生命維持システム最大、心臓マッサージを!」

トウジ「心臓マッサージ!」

トウジ「パルス確認!」

レイ「プラグの強制排除、急いで!」

レイ「L.C.L.緊急排水!」

ヒカリ「はい!」



シンジ「…早く、早くハッチを開けて!」

シンジ「ミサトちゃん…!」


処置室へ運ばれるミサト


シンジ「……」
127 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:44:02.28 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「敵、荷粒子砲命中、ダミー蒸発!」

シンジ「次!」

ケンスケ「12式自走臼砲消滅!」

シンジ「…なるほど…」

職員「これまで採取したデータによりますと、目標は一定距離内の外敵を自動排除するもの、と推測されます」

トウジ「エリア侵入と同時に荷粒子砲で100%狙い撃ち…こりゃあ、エヴァによる近接戦闘は危険過ぎるなァ」

シンジ「A.T.フィールドは?」

職員「健在です。相転移空間を肉眼で確認できるほど、強力なものが展開されています」

トウジ「誘導火砲、爆撃やらの生半可な攻撃じゃあ、泣きを見るだけやな…これじゃあ」

シンジ「攻守ともにほぼ完璧…まさに空中要塞か…それで、問題のシールドは?」

職員「現在目標はわれわれの直上、第3新東京市ゼロエリアに侵攻、直径17.5mの巨大シールドがジオフロント内、ネルフ本部に向かい穿孔中です」

トウジ「…敵さん、ここへ直接、攻撃を仕掛けるつもりやな」

シンジ「…到達予想時刻は?」

職員「あ、明朝午前0時06分54秒、その時刻には22層全ての装甲防御を貫通して、ネルフ本部へ到達するもの、と思われます」

シンジ(後10時間足らず…)
128 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:45:03.83 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「敵シールド、第一装甲版に接触!」

シンジ「こちらの初号機の状況は?」

レイ「胸部第3装甲板まで見事に融解。機能中枢をやられなかったのは、不幸中の幸いね」

ヒカリ「後3秒照射されていたら、アウトだったけど…」

ケイジ作業員「3時間後には換装作業、終了予定です」

シンジ「了解。ありがとう…零号機は?」

ヒカリ「再起動自体に問題ないけど、フィードバックにまだ誤差が残ってるわ」

レイ「実戦は…」

シンジ「まだ無理、か…」

シンジ「…ミサトちゃんの容体は?」

トウジ「身体に異常はあらへん。神経パルスが0.8上昇しとるくらいで、あとは許容範囲内や」

ケンスケ「敵シールド到達まで、後9時間55分!」

シンジ「状況は芳しくない、か…」

トウジ「白旗でも揚げるか?」

シンジ「…その前に、試してみたいことがあるんだ」
129 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:46:04.94 ID:lRBHXjHEo
カヲル「目標のレンジ外、超長距離からの直接射撃…?」

シンジ「…そうです。目標のA.T.フィールドを中和せず、高エネルギー収束帯による一点突破しか…方法はないと思います」

カヲル「成功するのかい?」

シンジ「………MAGIは」

カヲル「いや。君の見立てだよ…作戦部長としての」

シンジ「…残り9時間以内で実現可能、かつもっとも確実な方法かと思われます」

カヲル「ふふ…頼もしいね」

葛城「…反対する理由はない。実行してくれ」

シンジ「はい!ありがとうございます」
130 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:47:03.10 ID:lRBHXjHEo
レイ「しかし、よく通ったものね…こんな作戦が。MAGIは何と言ってるの?」

シンジ「…賛成2、条件付き賛成が1」

レイ「勝算は8.7%か…」

レイ「でも…うちのポジトロンライフルじゃ、そんな大出力には耐えられないわよ。…どうするの?」

シンジ「…耐え得るのを借りてくるよ」




シンジ「……以上の理由により、この自走陽電子砲は、本日15時より、特務機関ネルフが徴発いたします」

戦自の人「かと言って、しかし、そんな無茶な…」

シンジ「申し訳ありません…可能な限り、原形をとどめて返却するよう、努めますので。…では、ご協力、感謝します!」ペコッ

シンジ「…リツコちゃーん!持って行ってー!精密機械だから、そーっと、そおっとね!」

戦自の人「……………」

シンジ「……はは…」

トウジ「けどなぁ、A.T.フィールドをも貫くエネルギーっちゅうのは、最低1億8千万キロワットやぞ、それだけのもんを、どっから集めてくるんや?」

シンジ「…日本中だよ」
131 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:48:02.93 ID:lRBHXjHEo
TV(日向邸内)「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えいたします」

TV(伊吹邸内)「本日、午後11時30分より」

TV(街頭)「明日未明にかけて、全国で大規模な」

ヘリコプター「停電があります。皆様のご協力をよろしくお願いいたします」

放送「繰り返しお伝えいたします。本日午後11時30分より、」

宣伝カー「明日未明にかけて、全国で大規模な」

放送「停電があります。皆様のご協力をよろしくお願いいたします」



オペレータ「敵シールド、第7装甲版を突破」

シンジ「…エネルギーシステムの見通しは?」

オペレータ「現在予定より3.2%遅れていますが、本日23時10分には、何とかできます」

シンジ「ポジトロンライフルは?」

作業員「技術開発部第三課の意地にかけても、後3時間で形にして見せますよ!」

シンジ「…みんなありがとう。それで…防御手段は」

レイ「盾で防ぐしかないわね」
132 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:49:02.95 ID:lRBHXjHEo
ヒカリ「これが…盾?」

レイ「そう、SSTOのお下がり。二課の保証書付きよ?見た目はひどくても、もともと底部は超電磁コーティングされている機種だし、あの砲撃にも17秒はもつ」

シンジ「分かった。狙撃地点は?」

トウジ「目標との距離、地形、手頃な変電設備も考えると…やっぱりここやな」

シンジ「…うん…。これで理論上はいけるはずだ…」

シンジ「狙撃地点は二子山山頂。作戦開始時刻は明朝0時、以後、本作戦を、ヤシマ作戦と呼称します!」

トウジ「了解!」

シンジ(後は、パイロットの問題か…)



職員「初号機パイロットの意識が戻ったそうです。検査数値に問題なし」

シンジ「ありがとう。では、作戦は予定どおりに」

職員「了解」


レイ「…彼女、もう一度乗るかしら?」

シンジ「……」
133 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:50:03.25 ID:lRBHXjHEo
ミサト「ん?あぁ…?リツコちゃん…?」

リツコ「明日、午前0時より発動される、ヤシマ作戦のスケジュールを伝えます」

リツコ「葛城、赤木の両パイロットは、本日1730、ケイジに集合」

リツコ「1800、初号機および零号機起動」

リツコ「1805、発進」

リツコ「同30、二子山仮設基地到着」

リツコ「以降は別命あるまで待機」

リツコ「明朝日付変更と同時に作戦行動開始」



リツコ「これ…新しいものよ」

リツコ「寝ぼけて、その格好で来ないでね」

ミサト「ん?…きゃっ!……」
134 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:51:03.40 ID:lRBHXjHEo
リツコ「食事は?」

ミサト「…何も、食べたくないわ…」

リツコ「60分後に出発よ」

ミサト「…また、あれに乗らなきゃならないの…?」

リツコ「ええ」

ミサト「私は……嫌よ…リツコちゃんみたいに、強くなれない、逃げ出したい……」

リツコ「………」

ミサト「リツコちゃんは…!なぜ平気なの、暴走したんでしょう…!?前の実験で……。もう嫌…私は…もうあんな痛い思いは…!」

リツコ「…なら寝ていたら?」

ミサト「ね…寝ていたら、って…?」

リツコ「初号機には私が乗るわ…。綾波博士が初号機のパーソナルデータの書き換えの用意をしてる」

ミサト「レイさんが?」

リツコ「じゃあ、碇一尉と綾波博士がケイジで待っているから」

リツコ「さようなら」

ミサト「……」
135 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:52:03.37 ID:lRBHXjHEo
日向「ずいぶん遅いな…。もう避難する時間だぞ?」

青葉「親父のデータをちょろまかして見たんだ。この時間に間違いない」

日向「…だが、出てこないぞ?」

青葉「ん?」

男子生徒「おおっ?」

日向「…山が、動いてる…!」

青葉「エヴァンゲリオンだ!」



男子生徒「おおっ!」

男子生徒「すっげーっ!」

男子生徒「ミサトちゃーん!」

男子生徒「頼んだぞー!」

男子生徒「好きだーっ!」

男子生徒「エヴァンゲリオ〜ン!」

男子生徒「頑張れよー!」
136 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:53:01.85 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「敵シールド、第17装甲板を突破!本部到達まで、後3時間55分!」

トウジ「四国および九州エリアの通電完了」

オペレータ「各冷却システムは試運転に入ってください」

レイ「精密機械だから、慎重にね」

ミサト「でも、こんなヘンテコな兵器、役に立つんですか?」

レイ「仕方ないわよ、間に合わせなんだから」

ミサト「…大丈夫ですよね」

レイ「理論上はね。でも、銃身や加速器がもつかどうかは、撃ってみないと分からないわ。こんな大出力で試射したこと、一度も無いから」

シンジ「本作戦における、各担当を伝達します」

シンジ「ミサトちゃん」

ミサト「はい」

シンジ「初号機で砲手を担当」

ミサト「はい」

シンジ「リツコちゃんは零号機で防御を担当して」

リツコ「はい」
137 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:54:03.42 ID:lRBHXjHEo
レイ「これは、ミサトちゃんと初号機の方が、シンクロ率が高いからよ。今回はより精度の高いオペレーションが必要なの」

レイ「陽電子は地球の自転、磁場、重力の影響を受け、直進しません。その誤差を修正するのを、忘れないでね」

レイ「正確に、コア一点のみを貫くのよ」

ミサト「えっ、ど、どうやって…」

レイ「大丈夫、あなたはテキストどおりにやって、最後に真ん中のマークがそろったらスイッチを押せばいいの。後は機械がやってくれるわ」

レイ「それと、一度発射すると、冷却や再充填、ヒューズの交換などで、次に撃てるまで時間がかかるから」

ミサト「じゃあ、もし外れて敵が撃ち返してきたら…?」

レイ「…今は余計なことを考えないで。一撃で撃破することだけを考えて」

ミサト(大ピンチ、ってワケね…)


リツコ「…私は初号機を護ればいいのね」

レイ「そうよ」

リツコ「分かりました」


シンジ「…時間だ。2人とも、…無事を祈ってるよ」

ミサト・リツコ「はい」
138 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:55:02.66 ID:lRBHXjHEo
ミサト「これで死ぬかもしれない…」

リツコ「なぜそう思うの?」

ミサト「……」

リツコ「あなたは死なないわ」

リツコ「私が守るもの」

ミサト「……」


明かりの消えた街。見下ろすミサト、リツコ


ミサト「…リツコちゃんはなぜこれに乗るの?」

リツコ「…これしか出来ることがないから」

ミサト「そんな…」

リツコ「そうよ。それに、恩もある…」

ミサト「…お父さんに?」

リツコ「みんなによ」
139 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:56:02.13 ID:lRBHXjHEo
ミサト「やっぱり……強いのね、リツコちゃんは…」

リツコ「……」

リツコ「…ほかに何も無いだけよ」

ミサト「……!」

ミサト「ほかに何も無いって…」



リツコ「時間よ。行きましょう」


リツコ「じゃあ…さようなら」
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