シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」

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202 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:58:01.41 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「エヴァ弐号機、目標体内に侵入!」


青葉「それって、食われたってことじゃないのか!?」

日向「なっ、だ、大丈夫なんですか!?」

シンジ「ミサトちゃん!加持くん!!」


ミサト「やば…使徒に食べられちゃったわよ!?私たち」

加持「そのようだ…さてどうするか…」

ミサト「…何とか、離れないと…!」

加持「まずいな。面子的にも」

加持「このままじゃ餌になるために来たようなもんだ」


ミサト「餌……」
203 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:59:01.87 ID:lRBHXjHEo
シンジ「加持くん!ミサトちゃん!聞こえる!?」

ミサト「!シンジさん!聞こえます、私たち…!」

シンジ「分かってる。今は落ち着いて、こちらから何か作戦を…」

ミサト「あの!使徒を…釣り上げることって出来ませんか!?」


シンジ・加持「使徒を」

青葉・日向「釣り上げる???」
204 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:00:02.18 ID:lRBHXjHEo
シンジ「なるほど…釣りか…」

青葉「よく思いついたもんだな、敵の腹の中で」

ミサト「加持くんが…餌って言ったのを聞いて…」


シンジ「…確かに、それならエヴァが動けなくても…」

日向「それで、使徒を引き上げた後は!?」

シンジ「それはこちらでなんとかする。…ミサトちゃん、加持くん!」

シンジ「ミサトちゃんの案を使う。こちらの状況を整えるから、それまで…なんとか持ちこたえて!」

ミサト・加持「はい!」




シンジ「艦長」

艦長「なんだ」

シンジ「ご協力をお願いします」
205 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:01:03.53 ID:lRBHXjHEo
艦長「生き残った戦艦2隻による、ゼロ距離射撃!?」

シンジ「そうです。アンビリカルケーブルの軸線上に無人の戦艦2隻を自沈させ、罠をはります」

シンジ「その間に、エヴァ弐号機が目標の口を開口、そこへ全艦突入し、艦首主砲塔の直接砲撃の後、さらに自爆、目標を撃破します」

艦長「そんな無茶な!」

シンジ「無茶かもしれませんが…無理ではないと思います」


艦長「……分かった」




アナウンス「総員退艦、繰り返す、総員退艦!各フリゲートは、漂流者の救助を急げ!」

艦長「しかし、エヴァはどうする?」

シンジ「心配ありません。あの2人なら…」
206 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:02:01.34 ID:lRBHXjHEo
加持「驚いたな。一応俺の弐号機なんだが…」


シンジ「2人とも、用意はいい?合図を送るから、それまでに使徒の口をこじ開けて」

加持「…できなきゃ、一緒にドカンってわけか…」

シンジ「決して無理はしないで。開口が不十分な場合、砲撃は出来ない。でも…その中にいることも危険なんだ。なるべくなら…一発で仕留めたい」


ミサト「やってみます…!」


シンジ「ありがとう…!頼んだよ」
207 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:03:01.53 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「全艦、キングス弁を抜きました。Z地点に対し沈降開始」

シンジ「了解、ケーブル、リバース!」

アナウンス「エヴァ、浮上開始!接触まで後70!」


加持「…これは、ヤバいことになってきたな…!」

ミサト「…早く口をこじ開けないと、私たち…!」


アナウンス「接触まで後60!」

シンジ「使徒の口は!?」

艦長「まだ開かん!」


アナウンス「戦艦2隻、目標に対し沈降中!」

アナウンス「エヴァ、浮上中!接触まで後50!」


ミサト「…開かない!」


加持「くっ…」
208 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:04:02.13 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「目標はテンペストの艦底を通過!」

シンジ「限界か……!」


加持「美少女と心中も悪くないが…まだ命は惜しいな」

ミサト「な…変なこと考えないでよ!」

加持「とにかく、意識を集中するんだ。この口を開くことだけに!」

ミサト「分かってるわよ…!」


アナウンス「接触まで後20!」


アナウンス「接触まで後15!」


ミサト・加持「開け、開け、開け、開け…っ!」




シンジ「撃てッ!!」
209 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:05:01.77 ID:lRBHXjHEo
レイ「…よく無事だったわね…」

シンジ「ごめん…」

レイ「責めてるんじゃないわ…はい、これ」ペラッ

シンジ「…?」

レイ「その時の数値よ」

シンジ「! これって…」

レイ「ええ」



青葉「おおぉ…ペアルック…」

日向「……」



レイ「シンクロ値の記録更新ね」

シンジ「…でもたった7秒間か…火事場のバカ力ってやつかな」

加持「あれ、アスカ先輩は…?」

シンジ「…先に帰ったよ…!ほんとに…信じられないよ…!」
210 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:06:02.08 ID:lRBHXjHEo
アスカ「まったく…こんなに疲れる船旅は初めてよ…。原因はこれでしょ?」

アスカ「…ここまでの復元には成功したわ…。硬化ベークライトで固めてるけど、間違いなく生きてる」

アスカ「…人類補完計画の要ね」


葛城「そうだ。最初の人間…アダムだよ」






日向「…ほんと、キザったらしくて、嫌な奴だったよ」

青葉「ま、そうカッカするなよ。もう会うこともないんだし…」

日向「俺たちは、だろ!…それがまた不愉快なんだよ…!奴はネルフで…」

日向「! なっ…!?」


加持「どもっ」

加持「ドイツから日本に越してきました、加持リョウジです。よろしくっ」

八話分終わり
211 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:09:01.22 ID:lRBHXjHEo
続きは土曜
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/24(火) 21:15:12.58 ID:02DEpSIS0
山寺ボイスの中学生か
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/24(火) 23:37:19.20 ID:SU+27bOAo
乙ー
214 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:01:11.37 ID:pkrsX4Fxo
女子生徒「ねぇ、見た見た!?」

女子「見た!すっごいイケメン!」

女子「何が?」

女子「あんた知らないの?転校生よ!」

女子「2年A組に転校してきたんだって!先週!」

女子「かっこいいわよねぇ」

女子「加持リョウジくん、っていうんだって」

女子「あたし声かけられちゃった!」

女子「なんか大人っぽいしぃ…やっぱり外国って進んでるのかな?」

女子「やだぁー!」
215 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:02:02.84 ID:pkrsX4Fxo
青葉「しっかし…女子たちは大騒ぎだな…」

日向「まったく…この前までシンジさんにキャーキャー言ってたのに…」

青葉「しかたないさ…あの顔で帰国子女のおまけつきだ…おっ、毎度あり!」

日向「…お前、そういうのやめろよ…」




加持「やぁ、かわいいお嬢さん」

ミサト「…やめてよ、その呼び方…」

加持「本当のことを言ったまでさ…じゃあ、葛城?ちょっと聞きたいことがあるんだが」

ミサト「どうしたの?」

加持「ファーストチルドレンのことさ。いるんだろう?この学校に」

ミサト「ああ、リツコなら…」 チラッ
216 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:03:01.54 ID:pkrsX4Fxo
加持「おっと…これは驚いたな。エヴァのパイロットは容姿端麗なのも条件か?」

ミサト「よしなさいよ。リツコはそういうので笑わないから」

加持「そりゃ残念。笑った顔も見たいとこだったけどな…」

リツコ「……」

加持「はじめまして、ファーストのお嬢さん」

加持「弐号機パイロット…加持リョウジだ。よろしく」

リツコ「……よろしく」




日向「…普通、自分で言うか?容姿端麗って…」

青葉「まいどーっ」
217 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:04:01.08 ID:pkrsX4Fxo
アスカ「あーい変わらずね。学者バカ。男っ気ゼロ」

レイ「…いたの?」

アスカ「いたわよ!失礼ね」

レイ「…碇くんに謝ったほうがいいんじゃないの?」

アスカ「なに…アイツまだ怒ってんの?」

レイ「…そんなに昔のことかしら」

アスカ「はぁーっ!もう!これだから嫌なのよ日本人はぁ!終わったことをいつまでもウジウジウジウジ……あ…」

シンジが睨んでいる

レイ「…今のはアナタが悪いわ…」

アスカ「うげぇ…」
218 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:05:02.63 ID:pkrsX4Fxo
レイ「…ちゃんと謝ったら?」

アスカ「謝ったわよ!それなのにこいつが…」

シンジ「なっ!悪いのはアスカじゃないか!」

レイ「相変わらずね…昔を思い出すわ」

ミサト「ふん…どうせその様子じゃ、お酒も強くなってないんでしょうね?」

シンジ「う…」

レイ「そうそう体質は変わらないわ」

アスカ「ちょうど良いわ。今晩空けときなさいよね!3人で飲むわよ!」

シンジ「それはいいけど…もう吐かないでよね…」

アスカ「ハア!?私がいつ吐いたってのよ!!」


警報。


シンジ「敵襲!?」
219 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:06:02.18 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「警戒中の巡洋艦、「はるな」より入電、「ワレ、キイハントウオキニテ、キョダイナセンコウブッタイヲハッケン。データオクル」」

トウジ「受信データを照合…波長パターン青、使徒と確認!」

カヲル「総員、第一種戦闘配置!」




シンジ「先の戦闘によって第3新東京市の迎撃システムは、大きなダメージを受け、現在までの復旧率は26%。実戦における稼働率はほぼゼロ」

シンジ「したがって今回は、上陸直前の目標を水際で一気に叩きます!」

シンジ「初号機ならびに弐号機は、交互に目標に対し波状攻撃、近接戦闘で行くよ」

ミサト・加持「了解!」
220 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:07:02.41 ID:pkrsX4Fxo
加持「さぁて。日本でのデビュー戦だ…気合い入れていくかなっ」

ミサト「もう船の上で動かしたじゃない」

加持「あれは二人で入ってたしな…大丈夫、今度はヘマはしないよ」ウインク

ミサト「………」(…どうも加持くんのノリは軽いのよね…)


加持「…しかし、2人掛かりか…ま、相手は未知数だし…当然か」

シンジ「正攻法とは言ってられないよ。君たちを死なすわけにはいかないんだ」

加持「はは、人類もね」


ミサト「…来た!」
221 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:08:02.88 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「攻撃開始!」


加持「俺が行く!援護を頼む!」

ミサト「えっ援護!?」

加持「レディーに危険な仕事はさせたくないんでね!」

ミサト「ちょ、ちょっとぉ!!」

加持「行ける!」

ミサト「えっ!?」

加持「よっ!」ドカーン


ミサト「すごい…!」

加持「ははっ、見直しただろ?これでも向こうでみっちり仕込まれたプロだ」


再生する使徒


シンジ「なっ!?どうなってるんだ!?」
222 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:09:01.84 ID:pkrsX4Fxo
ヒカリ「本日午前10時58分15秒、2体に分離した目標甲の攻撃を受けた初号機は、駿河湾沖合い2キロの海上に水没、」

ヒカリ「同20秒、弐号機は目標乙の攻撃により活動停止。この状況に対するE計画責任者のコメント」

レイ「残念」


加持「悪い。また…ヘマやっちまって…」

ミサト「いや…でもまぁ…ああなるのは誰にも分からなかったんだし、仕方ないわよ」

加持「はぁ…葛城に会ってからこの方、どうも格好がつかないな…」

ミサト「無理しないでよ…エバーは3体あるんだから…」

加持「……ん…そうだな…悪い。突っ走っちまって。……それにしても、これは…」


ミサト「犬神家……」

加持「…きっついなぁ…」
223 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:10:12.36 ID:pkrsX4Fxo
ヒカリ「午前11時3分をもって、ネルフは作戦の遂行を断念、」

ヒカリ「国連第2方面軍に指揮権を譲渡」

カヲル「まったく…ついてないね…」

ヒカリ「同05分、N2爆雷により目標を攻撃、」

カヲル「…また地図の描き直しか…」

ヒカリ「構成物質の28%を焼却に成功」

加持「目標は沈黙?」

カヲル「いや、これは足止めに過ぎない…再度侵攻は時間の問題だよ」

アスカ「ま、建て直しの時間が稼げただけでも良しとすべきね…」
224 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:11:01.31 ID:pkrsX4Fxo
カヲル「…君たち、自分の仕事が何だか分かっているかい…?」

加持「…使徒に勝つことです」

カヲル「その通りだよ。確かに相手は未知数だが…負けることは許されないんだ…分かるね?」

ミサト・加持「はい…」

カヲル「…下がっていいよ」




加持「あちらさんカンカンだな…」

アスカ「聞き流せばいいのよ、あんなホモの言うこと…次はしっかりやんなさい」

ミサト「あの、シンジさんは?」

アスカ「後片付け。あいつはそのためにいるよーなものよ」
225 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:12:05.44 ID:pkrsX4Fxo
レイ「関係各省からの抗議文と被害報告書。これがUNからの請求書、広報部からの苦情も」

シンジ「う〜」

レイ「ちゃんと目を通しておいてね」

シンジ「…読まなくても分かるよ、喧嘩をするならここでやれ、でしょ?」

レイ「ええ。概ねは」

シンジ「言われなくったって…できればやってるよ」

レイ「…副司令官もあれでご立腹よ。あなたが左遷されるってことはないでしょうけど」

シンジ「……司令が留守だったのは不幸中の幸いだったね…」

レイ「そうね…これを見ることもなく解任されていたかも」

シンジ「あはは…首の皮一枚の状態か…。何かいいアイディアは…」チラッ

レイ「あるにはあるわ」

シンジ「ほっ本当!?よかった、本当、どうなることかと…!ありがとう綾波…!」

レイ「でもこれは私のアイディアじゃない」

シンジ「えっ」

レイ「アスカの案よ」
226 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:13:01.32 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「ただいまー、って言ったって誰もいない、か…」

ミサト「…あれ、何この荷物…」

加持「失礼。レディーの部屋に踏み込むのは無粋かと思ってね」


ミサト「なっ…なんで加持くんが…」

加持「葛城こそどうして、まだここに?」

ミサト「? まだ?」

加持「今日から配属されたんだ、ここに」

ミサト「え?」

加持「俺がシンジさんと暮らすことになった。まぁ…それが妥当だろうな。若い男と女が暮らしてるよりかは」

加持「…ま、俺としては葛城と二人でも良いんだがな」ウインク

ミサト「な、な…!」カァ
227 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:14:05.05 ID:pkrsX4Fxo
加持「…しっかし、あちらでずいぶんいいとこに住ませてもらってたからなぁ…これは中々…質素と言うか倹約と言うか…」

シンジ「あはは…ごめんね」


ミサト・加持「シンジさん…」


シンジ「お帰り。加持君の荷物はそれだけ?…ならなんとか入りそうだね」

ミサト・加持「えっ?」

シンジ「今度の作戦準備だよ」

ミサト・加持「どうして?」
228 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:15:03.77 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「現時点で確認しうる第7使徒の弱点は1つ」

シンジ「分離中のコアに対する二点同時の荷重攻撃、これしかないんだ」

シンジ「つまり、エヴァ2体のタイミングを完璧に合わせた攻撃」

シンジ「そのためには2人の協調、完璧なユニゾンが必要なんだよ」

シンジ「それで…古典的な方法だけど、呼吸を合わせるために…二人にはこれから一緒に暮らしてもらうことになったんだ」



ミサト(えぇ〜っ!?なにそれぇ!!??)


加持「はは、こりゃ役得だな…」
229 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:16:03.46 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「ほ…他に方法は…」

シンジ「使徒は現在自己修復中。第2波は6日後…時間がないんだ」

加持「なるほど。…無茶だが、やるしかないか」

シンジ「それでなんだけど…無茶を可能にする方法」

シンジ「二人の完璧なユニゾンをマスターするため、この曲に合わせた攻撃パターンを体に覚え込ませるんだ」

シンジ「6日以内に、1秒でも早く!」


ミサト「はぁ…」

加持「よろしくな」ニコッ

ミサト「……」カァ
230 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:17:03.19 ID:pkrsX4Fxo
日向「もう三日か…」

青葉「葛城の欠席がか?心配するなよ。訓練か何かだろ?」

日向「あいつと一緒に、だろ!だから心配なんだよ…」




青葉「あれ?マヤちゃん?」

ヒカリ「日向君に、青葉君…」

日向「…なんだか、嫌な予感が…」




青葉「なんでここで止まるんだ?」

マヤ「なんでここで止まるの?」

日向「……」
231 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:18:09.80 ID:pkrsX4Fxo
ミサト・加持「はーい!」

日向「なっ……」

青葉「おぉ…またしてもペアルック…」

ミサト「ち、ちがうのよ!これは訓練の一環で…」

加持「心を合わせる練習さ。互いの呼吸を感じながらね」

日向「こきゅ…」

マヤ「不潔…」

ミサト「ち、違うのよ!!!もう!加持君は黙ってて!!」

日向「……」ワナワナ

シンジ「あ、いらっしゃい」ヒョコッ

青葉「えっ?シンジさん…?これはいったい…」
232 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:19:12.18 ID:pkrsX4Fxo
青葉「なーんだ。そうだったんですか。いやぁ、よかったなぁマコト」

日向「何がだよ」

マヤ「…それで、そのユニゾンはうまくいってるんですか?」

シンジ「はは…それが…」


加持、ミサトのダンス


『75点』


青葉「なんだ、高得点じゃないですか」

マヤ「なにがいけないんですか?」

日向「……」ムッスー
233 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:20:07.88 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「…リツコちゃん」

リツコ「はい」

シンジ「もう一回…いいかな?」

リツコ「はい」

ミサト「……」


加持、リツコのダンス


『85点』



日向・青葉・マヤ・シンジ「おぉお……!」

シンジ「…シンクロ率で言うとミサトちゃんのほうが高いんだけど…」

マヤ「すごいわ!赤木さん…ダンスもうまいなんて…!」キラキラ


ミサト「……」ズーン
234 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:21:10.53 ID:pkrsX4Fxo
日向「でっでも!75点だって十分すごいよ!なぁ!?」

青葉「あっああ!そうさ!練習すればきっと…」

シンジ「まだ時間はあるから…ね?やってみよう、ミサトちゃん」

ミサト「ありがとうございます…、みんなも…」


ミサト「でも……私、ちょっと……気分転換に、出てきます…すいません!」ダッ

日向「あっ…!」

青葉「葛城!」

シンジ「ミサトちゃん!」
235 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:22:06.99 ID:pkrsX4Fxo
日向「葛城さ…」

加持「ここは俺が」ザッ


ガチャン


日向「な……」ポツーン

青葉「…お前にもそのうちチャンスが回ってくるさ…たぶん」

マヤ「あっ赤木さんのせいじゃないと思うわ…!」

リツコ「……」
236 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:23:05.93 ID:pkrsX4Fxo
加持「……葛城に暗い顔は似合わない」

ミサト「…! 加持君…」

ミサト「ごめんなさい…私…子どもっぽいことしてるわよね…」

加持「俺たちはまだ子どもだ」

ミサト「ううん、子どもでいちゃいけないのよ、もう子どもでいちゃ…だってみんなの命を背負ってるんだもの…」



ミサト「私たち…エバーに乗るしかないのよね…」

加持「…模範的な、回答ってやつか…でも」グイッ

ミサト「あっ!?」

加持「こうすれば誰にも見えない……葛城の子どもの顔も」

ミサト「……加持君だって、子どものくせに…」

加持「はは…そうだな…。じゃあ俺が泣くときは…葛城の胸を貸してもらうよ」

ミサト「バカ…」

ミサト「ありがとう…」グスッ
237 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:24:02.51 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「やるわ、私」

ミサト「こーなったら、とことんやってやるわ!あんな曲、ノーミスでクリアしてやるわよ」

加持「こりゃまた、大きく出たな…」

ミサト「まだ時間はある…!シンジさんも言ってた!なんとかなるって!」

ミサト「でも100点には…まだ遠いわ、さっきだって」


加持に向き直るミサト


加持「……」

ミサト「次からは本気を出してくれて構わない。死ぬ気でついていくから…!」

加持(これは……うかうかしてると俺のほうが抜かれそうだな……)
238 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:25:02.13 ID:pkrsX4Fxo
加持「あれ、シンジさんは?」

ミサト「仕事。今夜は徹夜だって、さっき電話が」

加持「…じゃあ、今夜は二人っきり、ってわけか」

ミサト「!!!!なっ、な…!」

加持「冗談。なにもしないさ…それとも何か期待されたかな?」

ミサト「!!!ばかっ!!!」

加持「はは、悪かったよ。…葛城は反応が可愛いから、ついからかいたくなるんだ」

ミサト「もう…!」




加持「…とは、言ったものの…」

加持「寝顔くらいは拝見しても…っと」ソ〜

ミサト「ぐぅ……くぅ〜…」グチャア…

加持「…おお…これは……」(人は見かけによらないな…)パタン
239 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:26:08.42 ID:pkrsX4Fxo
エレベーター内。

シンジ「むっ…っむぅ…っ!」

アスカ「…っと」

シンジ「なっ、なっ、なっ…なにするんだよぉ!!!???」カァァ

アスカ「してやった、のよ……あんた、ぜーんぜん進歩してないじゃない。…もしかしてあれからやってないの?」

シンジ「あっ…アスカには関係ないだろ…!!」

アスカ「フーン、やってないってわけね…絶対あいつが手ぇ出してると思ってたけど」

シンジ「あいつ??」

アスカ「こっちの話よ」

シンジ「もう…」ブツブツ
240 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:27:08.99 ID:pkrsX4Fxo
レイ「はい」コトッ

シンジ「あ、ありがとう…」

レイ「……なにかあった?」

シンジ「い、いや、ちょっと、ね…」

レイ「アスカ?」

シンジ「えっ!!!!い、いや…」

レイ「相変わらず隠すのが下手ね…」

シンジ「ち、ちがうよ、そんな…」

レイ「まだ好きなのかしら」

シンジ「なっ!な、なんでそうなるのさ!もうアスカとは…!」

レイ「私が言ったのはアスカが、よ。…動揺させてしまった?」

シンジ「あ、綾波…!」

レイ「…今はフリーだそうよ。良い機会なんじゃない?昔に戻る」

シンジ「……無理だよ、そんなの…」

レイ「……」
241 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:28:05.17 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「もう…昔みたいには、戻れないよ…。いや、三人でいるのは楽しいよ?昔みたいに。でも…」

レイ「……」

シンジ「…僕は一度…アスカを傷つけてるから……」

レイ「…碇く」

電話が鳴る

シンジ「わあっ!…は、はい、もしもし…はい、い、今ですか!?いえ……、すぐに提出します…!」

電話口を押さえるシンジ

シンジ「綾波、何か言った?」

レイ「いいえ。……お疲れ様」パタン



レイ(…後悔、か…)

レイ(まだ引きずってるのね…)

レイ「……変わらないのは私も同じか…」
242 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:29:13.99 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「目標は、強羅絶対防衛線を突破」

シンジ「…よし」

シンジ「音楽スタートと同時に、A.T.フィールドを展開。後は作戦通りに。ミサトちゃん、加持くん…健闘を祈ってるよ」

加持「ええ、今度こそ」

ミサト「勝ちます!」
243 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:30:02.28 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「目標は、山間部に侵入」

ミサト「スタートからフル稼動、最大戦速で!」

加持「オーケイ、62秒あれば十分だ」

ケンスケ「目標、ゼロ地点に到達します!」

シンジ「外電源、パージ」

シンジ「発進!」


華麗なる戦闘。使徒撃破
244 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:31:28.72 ID:pkrsX4Fxo
マヤ「エヴァ両機、確認!」

シンジ「うわぁ…」

レイ「残念……着地失敗ね」


加持「いたたたた…悪い、最後のタイミングが…」

ミサト「ごめ…最後、気ぃ抜いちゃったわ…」

加持「それにしても…いたた、凄い体勢になったな…まるで葛城の寝相…」ハッ

ミサト「なっ!!!なによ、私の寝相って!!!???」
245 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:32:26.09 ID:pkrsX4Fxo
加持「い…いや、襖が開いてたから、閉めに行ったら、たまたま、な…」

ミサト「部屋に入ったの!?」

加持「い…いや!入ったと言うか、隙間から見えたと言うか…」

ミサト「〜〜〜エッチ!バカ!ヘンタイ、何してんのよ!!」キーッ


発令所職員「アハハハハ…」


加持「悪かった!もうしないよ、葛城」

ミサト「当然でしょ!!!」

カヲル「やれやれ…」




九話分終わり
246 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:33:21.49 ID:pkrsX4Fxo
女子「加持くんはウチの班が先に誘ったのよ!」

女子「ずるーい!私たちだって声かけてたのにー」

女子「ねっ、ねっ?ウチの班がいいでしょ〜?」

女子「も〜やめなよ〜加持くん困ってるじゃん」

女子「加持くんの気持ちが優先でしょ!まず聞きなさいよー!」

女子「加持くんはどの班がいいの?」


加持「いやぁ…俺もみんなと行きたいのは山々なんだが……」
247 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:34:02.42 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「ごめんね……上に掛け合ってはみたんだけど……」

ミサト「そ、そんな!気にしないで下さいよ…!掛け合ってもらっただけでも、十分…!」

加持「ま、分かってたことですよ。俺たちはパイロットだ。…使徒は待ってちゃくれない、ってね」

ミサト「そ、そうです!しょうがないですよ!シンジさんは悪くないです!!」

シンジ「ありがとう…二人とも優しいね」

ミサト「そ、そんな!」カァ

加持「……ま、ダイビングの機会を逃したのは惜しかったけどな」

ミサト「やったことあるの?」

加持「一応は。アッチにいたころにね。良い筋だ、ってインストラクターからのお墨付き」

ミサト「へぇぇ…」(やっぱ帰国子女は違うわね…)

加持「シンジさんは、ダイビングの経験は?」

シンジ「やったことないよ。機会があったら加持くんに教えてもらおうかな」

加持「はは、お安いご用」
248 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:35:05.45 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「シンジさんは修学旅行、どこ行ったんですか?」

シンジ「ああ…僕らのときはね、なかったんだ」

加持「…サードインパクトの影響で?」

シンジ「うん。本当に直後だったから」

ミサト「ご、ごめんなさい」

シンジ「そんな!気にすること…当時はそれどころじゃなかったから。…みんなの世代でここまで復興が進んで良かったよ。修学旅行も普通に行けるようになったし……あ」

加持「はは…」

シンジ「ごめん……」

ミサト「もう!いいですってば!」
249 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:36:04.08 ID:pkrsX4Fxo
青葉「葛城の分まで楽しんでくるからな!」

日向「……」(俺も残りたい…)

マヤ「赤木さん!お土産買ってくるからね!」


女子たち「加持くぅ〜〜〜ん!お土産買ってくるからね〜!」

女子たち「やっぱり加持くんがいないと寂し〜い」


加持「はは…」


日向「…かっ葛城さん!お土産何が」

女子「葛城さ〜〜〜ん!抜け駆けしちゃ駄目よ〜!」


ミサト「はーいはい、分かってるわよー!」


日向「……」


ブロロロ…
250 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:37:02.35 ID:pkrsX4Fxo
オペレータ「浅間山の観測データは、可及的速やかにバルタザールからメルキオールへ、ペーストしてください」

ヒカリ「……」

トウジ「わはっ…くくく!」

ケンスケ「ヒューーーーン、┣¨┣¨┣¨┣¨ド!ズパーンッ」



レイ「私たちのときには無かったわね、修学旅行」

シンジ「うん…少し羨ましいね」
251 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:38:04.31 ID:pkrsX4Fxo
加持「何してるんだ?」

ミサト「…理科の勉強」

加持「勤勉だな。どれどれ…、うーん、分からないな…」

ミサト「? …休み時間、あの子たちに教えてなかった?」

加持「女の子たち? それなら分かりそうだ…これは何て読むんだ?」

ミサト「膨張、だけど…もしかして日本語読めないの?」

加持「漢字はまだちょっとね。皆よくこういう複雑な形の見分けがつくな」

ミサト「じゃ、じゃあテストで点数が取れないのって…」

加持「ご明察。なぁに…その内追いつくさ」

ミサト「……はぁ〜ああ」(勉強だけは勝ってると思ってたのに…)
252 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:40:27.89 ID:pkrsX4Fxo
加持「ん?どうした?」

ミサト「通りで…点数が低いわりにアドバイスは完璧だったわけね」

加持「ま、音読してくれれば何とかな。…こっちは何て読むんだ?」

ミサト「熱よ、これは熱膨張の問題」

加持「熱膨張か…懐かしいな」

ミサト「え、」

加持「…モノはあたためれば膨らんで大きくなるし、冷やせば縮んで小さくなる、ってことだろ?」

ミサト「いやいやいや、ちょっと、」

加持「ん?」

ミサト「懐かしいって?」

加持「…ああ、前にやったことがあったから。どれくらいだったか…確か大学入る前…」

ミサト「い、いま大学生なの?」

加持「いや。去年卒業した」

ミサト「…たはは…」(こりゃ次元が違うわ…)
253 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:41:00.79 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「…ね、加持くんってさ」

加持「うん?」

ミサト「…苦手なものとかって、ないの?」

加持「これは…嬉しいな。やっと俺に興味を持ってくれたのか?」

ミサト「馬鹿。真面目に聞いてんのよ」

加持「そりゃまた、どうして?」

ミサト「…ぜーんぶ、負けてるなぁって」

加持「葛城が?俺にか?」

ミサト「そーよ。学校の授業なんて聞いてて退屈なんじゃないの?」

加持「…まぁ、そりゃあるが…」
254 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:42:03.02 ID:pkrsX4Fxo
加持「知識だけの差なら、そんなものは大した差じゃないさ。大切なのは発想力だ。…その点、俺は葛城に負けてると思うけどね」

ミサト「発想力?私が?」

加持「そ。機転を利かせた発想力。土壇場でピンチをチャンスに変える力…」

ミサト「あ、あれは…加持くんが呟いたから」

加持「俺はぼやいてただけで、そんなこと思いつかなかった。それに、まだあるぞ」

加持「ユニゾンの練習のとき、葛城は一度は逃げ出したが……帰ってきた」

加持「しかも「ノーミス」「100点」と意気込んでた…落ち込む前よりも落ち込んだ後のほうが前を向けるってのは、成長の証だ。そしてそれは誰にでも出来ることじゃない」

ミサト「あれだって……加持くんが…」

加持「俺はちょっと胸を貸しただけさ。いいか葛城……相手に弱さを見せれるってのは「強さ」だ」

加持「どれだけ相手が手を差し伸べても、その手を取るかどうかは、葛城しだいだからな。俺は手を取ってもらえて嬉しかったよ…葛城が強かったからできたことだ」

ミサト「……」
255 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:43:16.41 ID:pkrsX4Fxo
加持「それにだ、実質の戦績は葛城のほうが上…立派なエースパイロットだ。俺は二度も助けられた。…これでもまだ俺に負けてるって思うのか?全部?」

ミサト「……」

加持「……葛城はよくやってるよ…葛城自身が気付いてないだけで…」

ミサト「…なんだか、べた褒めされてるみたい…」

加持「…もちろん。葛城は魅力的な女性だからな」

ミサト「馬鹿…あの子たちに言いつけるわよ?」

加持「女性を傷つけるのは本意じゃないが、この場合はしょうがないな」

ミサト「どこまで本気なんだか…」

加持「全部さ」

ミサト「はいはい…」
256 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:44:16.47 ID:pkrsX4Fxo
カヲル「これじゃあよく分からないな…」

ケンスケ「しかし、浅間山地震研究所の報告通り、この影は気になります」

カヲル「無視はできないね」

レイ「…MAGIの判断は?」

ヒカリ「フィフティーフィフティーです」

カヲル「現地へは?」

ケンスケ「すでに、碇一尉が到着しています」
257 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:45:01.01 ID:pkrsX4Fxo
所員「もう限界です!」

シンジ「あ、後500だけ…お願いします」

アナウンス「深度1200、耐圧隔壁に亀裂発生」

所員「碇さん!」

シンジ「…しょうがない。引き上げ…」

トウジ「壊れたらうちで弁償したる!後200や」

シンジ「と、トウジ…!」
258 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:46:04.55 ID:pkrsX4Fxo
トウジ「モニターに反応!」

シンジ「かっ解析開始!」

トウジ「よっしゃあ!」


アナウンス「観測機圧壊、爆発しました」


シンジ「解析は!?」

トウジ「ギリギリセーフや。パターン青!」


シンジ「使徒」


シンジ「……回線は?」

トウジ「今やっとる…ええで」


シンジ「…これより当研究所は完全閉鎖、ネルフの管轄下となります。一切の入室を禁じた上、過去6時間以内の事象は、すべて部外秘とします」


シンジ「葛城司令当てに至急、A-17要請を!」
259 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:47:15.50 ID:pkrsX4Fxo
委員「A-17?こちらから打って出るのか?」

葛城「そうです」

委員「駄目だ、危険過ぎる!15年前を忘れたとは言わせんぞ!」

葛城「…これはチャンスです。これまで防戦一方だった我々が、初めて攻勢に出るための」

キール「リスクが大きすぎるな」

葛城「しかし、生きた使徒のサンプル…その重要性は、すでに承知の事でしょう」


キール「失敗は、許さん」


カヲル「失敗か…その時は人類そのものが消えてしまうことになる…。本当にいいのかい?」

葛城「……」
260 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:48:02.38 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「これが使徒?」

レイ「そう…まだ完成体になっていない蛹の状態みたいなものよ」

レイ「今回の作戦は使徒の捕獲を最優先とします。できうる限り原形をとどめ、生きたまま回収すること」

加持「できなかったら?」

レイ「即時殲滅。異常事態の場合は躊躇わず目標と認識して」

ミサト・加持・リツコ「了解」

レイ「作戦担当者は…」

加持「俺が行く」

ミサト「えっ」
261 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:49:04.14 ID:pkrsX4Fxo
加持「いよいよ実戦用の出番ってわけだ」

ミサト「でも…」

レイ「…加持くんが弐号機で担当して」

加持「そうこなくっちゃ」

リツコ「私は?」

ヒカリ「プロトタイプの零号機には、特殊装備は規格外なのよ」

レイ「リツコちゃんと零号機は本部で待機。よろしくね」

リツコ「はい」


ミサト「……」

加持「心配いらない。温泉みたいなもんさ」

レイ「A-17発令後は速やかに収拾…すぐに支度して」

ミサト・加持「はい!」
262 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:50:00.88 ID:pkrsX4Fxo
加持「…耐熱仕様のプラグスーツと言っても、見た目は変わらず、か…」

レイ「右のスイッチを押してみて」

加持「…うわっ」

レイ「弐号機の支度もできてるわ」



加持「…いやはや…なんともこれは…」


レイ「耐熱・耐圧・耐核防護服。局地戦用のD型装備よ」

加持「…弐号機まで…」
263 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:51:04.14 ID:pkrsX4Fxo

加持「どうも恰好がつかないな…いや、喜ぶべきか? レディー二人にはさせたくない恰好だ」

アスカ「似合ってるわよ中々」

加持「……そいつはどうも」

ミサト「あの…やっぱり私が…」

加持「いや、いいんだ葛城」

ミサト「でも」

加持「こいつは俺の相棒だからな…俺が行くよ」

リツコ「………」
264 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:52:02.57 ID:pkrsX4Fxo
アナウンス「エヴァ初号機、および弐号機、到着しました」

シンジ「両機はその場にて待機、レーザーの打ち込みとクレーンの準備を急いで」

トウジ「了解」



加持「あれ?アスカ先輩は?」

シンジ「…ごめんね。とめたんだけど、また勝手に…」

加持「いや、いいですよ。…先輩もいろいろ忙しそうですし」

シンジ「……」
265 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:53:01.53 ID:pkrsX4Fxo
謎の男性「A-17発令か…現資産の凍結も含まれている」

アスカ「上は大騒ぎでしょうね」

男性「なぜ止めなかった?」

アスカ「理由がないわよ。発令は正式なものなんだから」

男性「だがネルフの失敗は、世界の破滅を意味するんだぞ」

アスカ「……あいつらはそんなに傲慢じゃないわよ…」
266 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:54:00.51 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「何ですか、あれ」

レイ「UNの空軍が空中待機してるのよ」

ヒカリ「この作戦が終わるまでね」

ミサト「手伝ってくれるんですか?」

レイ「…いいえ、後始末よ」

ヒカリ「私たちが失敗したときのね」

加持「…なるほど。後処理、ね…」

ミサト「なに?どういうこと?」

レイ「使徒をN2爆雷で熱処理するのよ。私たちごとね」

ミサト「え…そんな…!」

ミサト「そんな命令、いったい誰が…」

レイ「…誰かがしなきゃいけない決断なのよ…今は葛城司令が」


ミサト「……」
267 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:55:02.18 ID:pkrsX4Fxo
アナウンス「レーザー、作業終了」

アナウンス「進路確保!」

アナウンス「D型装備、異常無し!」

トウジ「弐号機、発進位置」

シンジ「了解。加持くん、準備はどう?」

加持「いつでもどうぞ」

シンジ「くれぐれも、無茶はしないで…」

シンジ「発進!」
268 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:56:02.62 ID:pkrsX4Fxo
加持「おっと…こりゃあ、すごいな。熱気が」

ヒカリ「弐号機、溶岩内に入ります」


加持「潜るのは何年ぶりかな…っと。よーし」


ミサト・シンジ「?」


加持「ジャイアントストライドエントリー!」ザブーン


シンジ「…??」

ミサト「馬鹿…真面目にやんなさいよ…!」
269 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:57:02.95 ID:pkrsX4Fxo
加持「現在、深度170、沈降速度20。各部問題なし。視界は…ゼロ。目視は不可能。CTモニターに切り替えます」

加持「これでも透明度120か…」


ヒカリ「深度、400、450、500、550、600、650」

ヒカリ「900、950、1000、1020、安全深度、オーバー」

ヒカリ「深度1300、目標予測地点です」


シンジ「加持くん、何か見える?」


加持「反応なし…いないようだ」


レイ「思ったより対流が早いわね」

トウジ「目標の移動速度に誤差あり。再計算中」

シンジ「急いで。作戦続行。再度沈降、慎重に」
270 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:58:02.43 ID:pkrsX4Fxo
ヒカリ「深度、1350、1400」

オペレータ「第2循環パイプに亀裂発生」

ヒカリ「深度、1480、限界深度、オーバー!」

シンジ「く…、加持くん!」

加持「まだだ!まだやらせてくれ、もう少し…!」

加持(……俺が駄目なら次は初号機が…)



シンジ「目標との接触は……!?」

トウジ「モニター、反応なし」

シンジ「………!」
271 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 13:59:02.38 ID:pkrsX4Fxo
ヒカリ「限界深度、プラス120」

加持「!」

オペレータ「エヴァ弐号機、プログナイフ喪失」

ヒカリ「限界深度、プラス200」


シンジ「……これ以上は…!」


トウジ「まだいける」


シンジ「トウジ!今度は加持くんが乗ってるんだよ!?」

トウジ「…って言うとるで運転手」

加持「シンジさん、行かせてくれ…大丈夫だ」


ヒカリ「深度、1780。目標予測修正地点です」



加持「…………いた…」
272 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:00:01.02 ID:pkrsX4Fxo
トウジ「…目標を映像で確認」

シンジ「捕獲準備…!」

レイ「お互いに対流で流されているから、接触のチャンスは一度しかないわ、気を付けて」

加持「了解」


トウジ「目標接触まで、後30」

加持「相対速度2.2。…軸線に乗った」

加持「電磁柵展開、問題なし」



加持「目標、捕獲しました」



トウジ「……っはぁ〜…!」

シンジ「よかった……!」

加持「捕獲作業終了、これより浮上します」
273 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:01:01.16 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「加持くん、大丈夫?」

加持「少し…いやかなり蒸すけどね。やっぱりダイビングは海に限る」

シンジ「ダイビングって…ああ、あれダイビングの潜り方だったの?」

加持「気がつかなかった?まったく…魅せがいがないな」

シンジ「あはは」


レイ「…緊張がいっぺんに解けたみたいね」

レイ「お疲れさま。碇作戦部長」

シンジ「ありがとう。……良かった。無事に終わって…」

レイ「悪ければセカンドインパクトの二の舞だものね」

シンジ「ふー…温泉にでも浸かりたい気分だよ」
274 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:02:01.66 ID:pkrsX4Fxo
トウジ「! 目標に動きあり!」

加持「これは……っ!?」

レイ「まずいわ、羽化を始めた……!計算よりずっと早い!」

シンジ「キャッチャーは!?」

トウジ「もう持たん!」

シンジ「捕獲中止、キャッチャーは破棄!」

シンジ「作戦変更!使徒殲滅を最優先、弐号機は撤収作業をしつつ戦闘準備!」


加持「最後はこうなるか…!」

加持「…しまった、ナイフは…!」

加持「正面!バラスト放出!」

加持「早い…っ!」
275 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:03:01.38 ID:pkrsX4Fxo
加持「まずいな、見失った…!」

シンジ「加持くん!今のうちに初号機のナイフを落とすから、受け取って!」

加持「了解!」

加持(…しかし、分が悪すぎるな…このままじゃ…!)

加持「う…っっ、シンジさん!ナイフは!」


ミサト「お…りゃあっっっ!」


オペレータ「ナイフ到達まで、後40」

トウジ「使徒、急速接近中!」

加持「…ぐっ…!」

加持(まだか…ナイフは!)

加持(まだ……ハッ)

加持「しまった!」
276 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:04:03.71 ID:pkrsX4Fxo
レイ「まさか、この状況下で口を開くなんて!」

ヒカリ「信じられない構造です!」

加持「う…ぐっ」

ヒカリ「左足損傷!」

加持「……耐熱処置!」

加持「……そう、易々とっ…!」


レイ「高温高圧、これだけの極限状態に耐えているのよ。プログナイフじゃ駄目だわ」

トウジ「方法はないんか!?」

ミサト「…そうだ!」


加持「やられるわけにはいかないね…!」

加持「…………っ!」

レイ「! 熱膨張!」

加持「冷却液の圧力をすべて三番に!早く!」

加持「……破裂しろっ!」
277 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:05:05.65 ID:pkrsX4Fxo
加持「はっ……はぁ……、使徒は倒したが…」

加持「……万事休す、か…」

加持「…………」


加持(みんな……、俺は許されたか……?)


加持「!…葛城…?」


加持「……はは」

加持「いい女だよ、まったく」
278 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:06:00.88 ID:pkrsX4Fxo
宅配屋「ごめんくださーい、ネルフの人、いますかー?」

ミサト「はーい!」

宅配屋「では、ここにサインをお願いします」

宅配屋「はい、どうもありがとうございました」

ミサト「アスカさんから??何だろ…?」
279 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:07:01.51 ID:pkrsX4Fxo
加持「はぁ〜。まさか、近くにこんな秘湯があったとはね」

シンジ「綾波が教えてくれたんだ…ゆっくりしてこいって」

加持「マグマはもうごめんだが、ここならまた来たいね」

シンジ「ふふ…気に入ってもらえて良かった」

加持「……」

シンジ「……どうかした?加持くん…」

加持「…いや、こうして見てると…肌が白くて線も細い、それに顔も…中性的な美人だと思ってね」

シンジ「か…加持くん…?僕は男だよ……?」

加持「ノープロブレム。愛に性別は関係ないさ……」

シンジ「わっっっ、ちょっ………、待っ…!」
280 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:08:01.14 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「ちょっとー!バカ加持ぃ!!!」


加持「おっと」

ミサト「シンジさんに変なことしてないでしょうねー!??」

シンジ「…ミサトちゃん?」


ミサト「シンジさーん!大丈夫ですかー?」

ペンペン「クエックエ〜〜〜ッ!」

シンジ「えっ…ペンペンもいるの!?」


ミサト「はい…さっき届いて…アスカさんから」
281 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:09:01.93 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「アスカから!??」

ミサト「はい、宅急便で…こら!ペンペン!」

ミサト「じっとしてないと洗えないでしょ……いたっ!」

ミサト「……も〜へんなとこ噛まないでよ〜!」


ミサト「あっ、こら……!」




シンジ・加持「………………」


加持「前言撤回……シンジさんも「男」だね…」

シンジ「ち、ちがっ!違わないけど……これは…!」

加持「分かってます分かってます、同じ男なんだから。苦労しますよね」

シンジ「もう…!大人をからかって…!」
282 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:10:06.53 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「ぷはぁ〜ぁ、極楽極楽…」

ミサト「風呂がこんなに気持ちいいものだなんて、知らなかった…」

ミサト(………空が、綺麗…)

ミサト「………風呂は命の洗濯ね…」




シンジ「加持くん、はさ…」

加持「ん?」

シンジ「聞かないんだね。この傷のこと…」

加持「あぁ…まぁ、お互い様ですよ」

加持「話して楽になる類いのことじゃない…目に見える傷も、見えない傷も」

シンジ「そっか……」

加持「……」



拾話分終わり
283 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:11:04.31 ID:pkrsX4Fxo
子供「わーい、当たった当たったぁ〜!」


レイ「これじゃあ毎回のクリーニング代も、バカにならないわね」

ヒカリ「せめて自分でお洗濯できる時間くらい、ほしいわよね」

トウジ「重とーてかなわんわ」

ヒカリ「それは溜め込むのが悪いんでしょ」

トウジ「なんやとぅ!?」


レイ「あら、副司令」

レイ・ヒカリ「おはようございます」

トウジ「おはよーさん」

ヒカリ「コラ!敬語!!」

トウジ「うるさいのぉ、またお小言かいな」

ヒカリ「そうやってすぐ崩すから!戦闘中にも出ちゃうんでしょ!」

カヲル「ふふ…おはよう。相変わらず賑やかだね」
284 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:12:03.19 ID:pkrsX4Fxo
レイ「今日はお早いですね」

カヲル「葛城司令の代わりに上の町だよ」

レイ「ああ…今日は評議会の」

カヲル「定例だよ……つまらない仕事さ。昔から雑務はみんな僕に押し付けるんだ、断らなかった僕も悪いんだが。ふふっ…MAGIがいなかったらお手上げだったよ」

レイ「そう言えば、市議選が近いですよね。上は」

カヲル「あれは形骸に過ぎない…ここの市政は事実上MAGIのものだよ」

ヒカリ「あの3台のスーパーコンピューターが…」

カヲル「3系統のコンピュータによる多数決だからね…民主主義の基本に乗っ取ったシステムではある」

ヒカリ「じゃあ、議会はその決定に従うだけですか?」

カヲル「最も無駄の少ない、効率的な政治だよ」
285 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:13:06.69 ID:pkrsX4Fxo
ヒカリ「…凄い時代ですね。何でも科学でやれちゃうなんて…」

トウジ「いけすかんのぉ、機械に踊らされとんのと違うか?」

ヒカリ「また!そういうこと言って!!」


カヲル「……そう言えば、零号機の実験だったかな、そっちは」

レイ「ええ、本日1030より第2次稼動延長試験の予定です」

カヲル「朗報を期待してるよ…それと」

カヲル「シンジくんにもよろしく…」

レイ・ヒカリ・トウジ(……)
286 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:14:01.18 ID:pkrsX4Fxo
レイ「実験中断、回路を切って」

ヒカリ「回路切り替え」

オペレータ「電源、回復します」

レイ「問題は…ここね」

ヒカリ「はい、変換効率が理論値より0.008も低いのが気になります」

オペレータ「ぎりぎりの計測誤差の範囲内ですが、どうしますか?」

レイ「もう一度同じ設定で、相互変換を0.01だけ下げてやってみましょう」

ヒカリ「了解」

レイ「では、再起動実験、始めるわ」
287 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:15:01.28 ID:pkrsX4Fxo
アスカ「ちょっとそこのエレベーター!私も乗るわ!」

シンジ「えっ?うわっ、わ、あっ」

アスカ「うらっ」ガッッ

アスカ「……サイッテー。あんた今「閉」押したでしょ」

シンジ「ご…ごめん…間違っちゃって…」

アスカ「はぁーあ、ショボくれてんわねぇ相変わらず」
288 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:16:01.59 ID:pkrsX4Fxo
(通話)

オペレータ「はい、しばらくお待ちください」

葛城「なんだ?」

ミサト「あ、あの…お父さん…?」

葛城「そうだ」

ミサト「あっあの…今日、学校で進路相談の面接があることを父兄に報告しとけって、言われて…」

葛城「……そういう事はすべて碇君に一任してある。用件はそれだけか?」

ミサト「いや、えっと…」ブツッ

ミサト「あら?」
289 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:17:04.01 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「うわっ…!」

アスカ「停電…?」

シンジ「そんな。ありえないよ」

シンジ「…変だな。何か事故かな…」

アスカ「あの研究バカがやらかしたんじゃないの?」



ヒカリ「主電源ストップ、電圧、ゼロです」

オペレータ達「……」

レイ「……私じゃないわ」



シンジ「綾波が?」

アスカ「でもまぁ、すぐに予備電源に切り替わるでしょ」
290 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:18:07.45 ID:pkrsX4Fxo
オペレータ「だめです、予備回線つながりません」

カヲル「……そんなはずはない。生き残っている回線は?」

職員「全部で1.2%、2567番からの9回線だけです!」

カヲル「生き残っている回線はすべてMAGIとセントラルドグマの維持へ廻して。最優先だ」

オペレータ「全館の生命維持に支障が生じますが…」

カヲル「背に腹は代えられない…」
291 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:19:35.61 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「まったく…気ぃ使うよなあ…あの二人。いつになったらくっつくんだか……アレ??」




加持「単に忙しかっただけじゃないのか?」

ミサト「いや…そういう感じじゃなくて…こう、ブツッと……」

加持「ま、考えてもしょうがない。本人に直接聞くのが早いさ……ん?」

リツコ「?」

ミサト「どうしたの?」

加持「いや、カードキーが……故障か?」

ミサト「そんな」シャッ

ミサト「ほんとだ……」

ミサト「またIDが変わったのかしら」

加持「いや…それにしてもおかしい。エラー音もならないなんて」
292 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:20:16.43 ID:pkrsX4Fxo
レイ「とにかく、発令所へ急ぎましょ。7分たっても復旧しないなんて…」




シンジ「…ただ事じゃない」

アスカ「ここの電源は?」

シンジ「正・副・予備の3系統。それが同時に落ちるなんて、考えられないよ」

アスカ「ってことは…」




葛城「ブレーカーは落ちたと言うより落とされた、と見るべきだ」

カヲル「原因はどうであれ、こんな時に使徒が現れたら一巻の終わりだよ」
293 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:21:01.20 ID:pkrsX4Fxo
戦自「索敵レーダーに正体不明の反応あり!予想上陸地点は旧熱海方面!」

戦自司令官「おそらく、8番目の奴だ」

司令官「ああ、使徒だろう」

戦自「どうします」

司令官「一応、警報シフトにしておけ。決まりだからな」

司令官「どうせまた奴の目的地は、第3新東京市だ」

司令官「そうだな。俺達がすることは何も無いさ」


戦自「使徒、上陸しました!」

戦自「依然、進行中」

司令官「第3進東京市は?」

戦自「沈黙を守っています」

司令官「一体ネルフの連中は、何をやってるんだ!」
294 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:22:05.57 ID:pkrsX4Fxo
レイ「備えあれば憂いなし、とはよく言ったものね…」

ヒカリ「まさかこの時代にタラップを使うことになるなんて…」




加持「…駄目だ、ここも動かない」

リツコ「どの施設も動かない…異常ね」

ミサト「下で何かあったってこと!?」

リツコ「恐らくは」

加持「とにかく、ネルフ本部へ連絡してみよう」
295 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:23:01.05 ID:pkrsX4Fxo
アスカ「駄目。非常電話もつながらない」


トウジ「77号線も繋がらん…!」


リツコ「駄目ね、繋がらない」

加持「こっちもだ、有線の非常回線もイカれちまってる」

ミサト「どうしよう…」

リツコ「……」ゴソ…

加持「おっ、その手があったか」

ミサト「何?」

加持「緊急時のマニュアルだよ」

リツコ「…とにかく本部へ行きましょう」

加持「だな」

リツコ「こっちの第7ルートから下に入れるわ」

ミサト「…手動、ドア…?」

加持「俺の出番かな?」
296 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:24:01.81 ID:pkrsX4Fxo
戦自司令官「統幕会議め、こんな時だけ現場に頼りおって!」

司令官「政府は何と言ってる?」

司令官「フン、第2東京の連中か?逃げ支度だそうだ」

戦自「使徒は依然健在、進行中」

司令官「とにかく、ネルフの連中と連絡を取るんだ」

司令官「しかし、どうやって?」

司令官「直接行くんだよ」



セスナ「こちらは第3管区航空自衛隊です。ただいま正体不明の物体が本書に対し移動中です。住民の皆様は速やかに指定のシェルターに避難してください」


ケンスケ「ヤバイな…!急いで本部に知らせなきゃ!でもどうやって…」

選挙カー「こういった非常時にも動じない、高橋、高橋覗をよろしくお願いいたします!」

ケンスケ「ナ〜イスタイミング!」
297 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:25:01.20 ID:pkrsX4Fxo
アスカ「それにしてもあっついわねぇ…」

シンジ「たぶん…残った回線を全部MAGIとセントラルドグマに使ってるんだ…」

アスカ「〜〜〜〜あ〜ッもうっ!」バサッ

シンジ「うわ!?あ、アスカ!!何してんだよ!??」

アスカ「仕方ないでしょう!?暑いんだからぁ!」

シンジ「な…っ、な…」

アスカ「誰が見ていいって言ったのよ!変態!あっち向いてなさいよ!」

シンジ「ぬっ脱ぐ前に言ってよ…!」


アスカ「はぁーっ。こういう状況下だからって、変なこと考えないでよ?」パタパタ

シンジ「考えないよっ!もう…!」
298 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:26:10.36 ID:pkrsX4Fxo
レイ「…空気がよどんできた……近代科学の粋を凝らした最大施設も、こうなると形無しね…」

ヒカリ「でも、さすがは司令と副司令、この暑さにも動じないわね」



カヲル「……ぬるいね」

葛城「ああ…」




ウグイス嬢「当管区内における非常事態宣言に伴い緊急車両が通ります…って、あの、行き止まりですよぉ!」

ケンスケ「止まるな止まるなぁっ!今は非常時!すべて私が許可するッ!」ビシッ

運転手「リョーカイッ!」

ウグイス嬢「いやぁ、もう止めてぇ!」
299 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:27:03.04 ID:pkrsX4Fxo
カヲル「このジオフロントは外部から隔離されても自給自足できるコロニーとして作られている。そのすべての電源が落ちると言う状況は、理論上はありえない」

レイ「…誰かが故意にやったと言うことですね」

葛城「おそらく目的はここの調査だ」

レイ「復旧ルートから本部の構造を推測するわけですか」

カヲル「連中、小癪なマネをしてくれるよ」

レイ「MAGIにダミープログラムを走らせます。全体の把握は困難になると思いますから」

葛城「頼む」

レイ「はい」

カヲル「…本部初の被害が、使徒によるものではなく同じ人間からのものになるとはね…」

葛城「……同じ人間などいない。だがこのやり方は不当だ」
300 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:28:12.35 ID:pkrsX4Fxo
加持「…路が左右に別れてる」

ミサト「右じゃないの?」

リツコ「…左」

加持「じゃ、左だな」

ミサト「ちょっと!なんでよっ」

加持「さっきから二回も行き止まりを選んでるだろ?」

ミサト「う〜…」

加持「ははっ、明るくったって葛城にとっちゃここは迷路だからなァ。この前だって…」

ミサト「ア〜ッ!リツコには言わないでよっ!」


リツコ「シッ」

ミサト「えっ?」

リツコ「人の声がするわ…」


ミサト「?」
301 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:29:01.15 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「使徒、接近中!繰り返す!使徒、接近中!」

ミサト・加持「相田さんだ!」

ケンスケ「使徒、接近中、繰り返す、現在、使徒、接近中!」

ミサト・加持「使徒接近!?」


リツコ「時間が惜しいわ。近道しましょう」

加持「分かるのか?」

リツコ「確信があるわけじゃないけど…だいたいの構造は頭に入ってるから」

加持「頼もしいな」

リツコ「あなたたちより少し長くここにいるだけよ」
302 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:30:05.32 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「……ねぇ、アスカ」

アスカ「なによ」

シンジ「…使徒って何なのかな…」

アスカ「…!」

アスカ「はぁ!?なに言ってんのよ、こんな時に」

シンジ「いいだろ別に……どうせ何もできないんだから…」

シンジ「使徒。神の使い。天使の名を持つ僕らの敵…」


シンジ「でも遺伝子上ではたった2%の違いしかないんだ。…栄えるはずだったもうひとつの人類…」
303 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:31:09.09 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「なぜ戦わなければいけないんだろう…」

アスカ「……あんたバカぁ?訳わかんない連中が攻めてきてんのよ、降りかかる火の粉は払い除けるのがあったりまえでしょ!?あんたそのもうひとつの人類とやらに立場を譲って、人間が滅びてもいいっての!?」

シンジ「……そうじゃ、ないけど…」

アスカ「あぁ、もう!あんたのそういうウジウジしたとこ、いい加減直んないわけェ!?」

シンジ「ウジウジって……アスカだってその沸点低いのどうにかしたら?ただでさえ暑いんだから…」

アスカ「あ〜ッもう我慢ならないわっ!」

シンジ「うわっごめん言い過ぎたよ!」

アスカ「シンジっ!肩貸しなさい!」

シンジ「えっ」

アスカ「漏れそうなのよッ」
304 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:32:26.29 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「現在、使徒接近中!直ちにエヴァ発進の要有りと認む!」


ヒカリ「…大変!」

葛城「渚、後を頼む」

カヲル「どこへ?」

葛城「…ケイジでエヴァの発進準備を進めておく」

カヲル「手動でかい?司令直々に?」

葛城「緊急用のディーゼルがある」

カヲル「ふふ…分かったよ。ここは任せて」
305 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:33:00.95 ID:pkrsX4Fxo
加持「次は?」

リツコ「右よ」

ミサト「それにしてもスッゴいわね…私もう帰り道分かんないわよ」

加持「大丈夫さ…帰りはちゃんとした道を通って行ける」

ミサト「リツコっていつからここにいるの?」

リツコ「覚えてないわ。ただこの下の道は実験でよく通るから…」

ミサト「実験って…零号機だけでやるあの実験よね?…プロトタイプにしかできないことなの?」

リツコ「……ごめんなさい。答えられないわ」

ミサト「……」

加持「赤木を問い詰めたって仕方ないだろう?ここはネルフなんだ。情報漏洩は命取りになる」

ミサト「…そうね。ごめんリツコ、つまんないこと聞いたわ」

リツコ「…………」
306 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:34:08.23 ID:pkrsX4Fxo
作業員「いよーいしょ、よーいしょ、よーいしょ、よーいしょ!」

作業員「了解、停止信号プラグ、排出終了」

葛城「よし、3機ともエントリープラグ挿入準備」

作業員「しかし、いまだにパイロットが」

レイ「大丈夫。きっと来るわ…あの子達なら」



加持「ここは……手じゃ無理だな」

リツコ「仕方ないわ。ダクトを破壊してそこから進みましょう」

ミサト「…リツコって普段は大人しいのに、使徒が絡んでくると大胆よね」

リツコ「命に関わるもの」

加持「はは…そりゃそうだ」



作業員・葛城「いよーいしょ、よーいしょ、よーいしょ、よーいしょ!」

ヒカリ「プラグ、固定準備完了」

レイ「…後はあの子達ね」
307 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:35:01.82 ID:pkrsX4Fxo
加持「危ないから少し離れて」

加持「じゃあいくぞっ」


ガンッ ガンッ


レイ「……?」


ガンッ


加持「おわっ」ドスンッ

ミサト「だっ大丈夫?加持くん…あっ」

リツコ「……」


レイ「あなたたち!」
308 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:36:00.90 ID:pkrsX4Fxo
葛城「各機、エントリー準備」

作業員「了解、手動でハッチ開け」

ミサト「エバーは…?」

レイ「スタンバイできてるわ」

ミサト「何も動かないのに、どうやって…」

レイ「人の手でね。あなたのお父さんのアイディアよ」

ミサト「父の…」


作業員・葛城「ふぬーっ、ふぬーっ、ふぬーっ…」

レイ「葛城司令は、あなたたちが来ることを信じて、準備してたのよ」
309 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:37:00.67 ID:pkrsX4Fxo
ヒカリ「プラグ挿入」

レイ「全機、補助電源にて起動完了」

葛城「第一ロックボルト、外せ」

作業員「2番から32番までの油圧ロックを解除」

ヒカリ「圧力ゼロ、状況フリー」

葛城「構わん。各機実力で拘束具を除去、出撃しろ!」


ケンスケ「目標は直上にて停止の模様!繰り返す!」


レイ「作業、急いで!」

オペレータ「非常用バッテリー搭載完了!」

レイ「行ける…!」

レイ「発進!」
310 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:38:01.27 ID:pkrsX4Fxo
加持「マグマの次は排気口……平時の戦闘が懐かしくなるな」

リツコ「縦穴に出るわ」

加持「お次は山登りか……」

加持「!」

リツコ「いけない、よけて!」

加持「おわっ」

ミサト「きゃあっ」


リツコ「……目標は、強力な溶解液で本部に直接侵入を図るつもりのようね」

ミサト「どうすんのよ…!?」

加持「やるしか、ないだろうな」

ミサト「やるったって…!ライフルは落としちゃったし、背中の電池は切れちゃったから、後3分も動かないし…!」

加持「待て待て、落ち着くんだ…作戦はある」
311 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:39:10.70 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「作戦?」

加持「…ここにとどまる機体がディフェンス。A.T.フィールドを中和しつつ奴の溶解液からオフェンスを守る」

加持「バックアップは下降。落ちたライフルを回収しオフェンスに渡す。そしてオフェンスはライフルの一斉射にて目標を破壊……簡単だろ?」

ミサト「簡単って…守りは誰が」

リツコ「いいわ。ディフェンスは私が」

加持「却下。発案者は俺だ…危険な役は俺がやる」

ミサト「いえ……私がいくわ!弐号機はまだ前回の傷が…!」

加持「そう言うなよ。たまにはいい格好させてくれ」


加持「大丈夫。…うまくやるよ」

ミサト「…………」
312 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:40:11.75 ID:pkrsX4Fxo
加持「じゃあ確認だ」

加持「葛城がオフェンス、赤木がバックアップ、俺は守りに徹する」

ミサト「…分かった」

リツコ「了解」



加持「それじゃあ、いくぞっ!」


ミサト「リツコっ!」



ミサト「! 加持くん、よけてっ!」


加持「うぐっ、ぅ…!」



加持「……惚れ直しただろ…?」


ミサト「馬鹿……無理しちゃて」
313 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:41:02.05 ID:pkrsX4Fxo
加持「じゃあ確認だ」

加持「葛城がオフェンス、赤木がバックアップ、俺は守りに徹する」

ミサト「…分かった」

リツコ「了解」



加持「それじゃあ、いくぞっ!」


ミサト「リツコっ!」



ミサト「! 加持くん、よけてっ!」


加持「うぐっ、ぅ…!」



加持「……惚れ直しただろ…?」


ミサト「馬鹿……無理しちゃて」
314 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:42:04.17 ID:pkrsX4Fxo
ガンッ ガンッ ガンッ

アスカ「も〜ぅ、何で開かないのよ〜!非常事態なのよ〜!はぁっ、もう、もれちゃう!こら、もう!上見るな、って言ってるでしょ!」

シンジ「あ…アスカ!暴れないでよ、重いんだから…!」

アスカ「ぬわんですって!?」

シンジ「わっ、わ、わあっ!」ガタン


レイ「……」

ヒカリ「…不潔…!」
315 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:43:02.49 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「電気…人工の光が無いと、星がこんなにきれいだなんて、皮肉なもんね」

加持「葛城は星が好きなのか?」

ミサト「んー? 最近は、ちょっちね…」

加持「ロマンチストだな…俺はどうも暗闇が落ち着かない」

ミサト「………」

加持「光があったほうが……」

リツコ「…人は闇を恐れ、火を使い、闇を削って生きてきた」

加持「おっ、なんかの詩かい?」

リツコ「習ったの。綾波博士から…」
316 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:44:02.42 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「続きは?」

リツコ「分からない…」

ミサト「そう…」

加持「……作ればいいさ」

加持「人がこの先、何を使い、どうやって生きていくのか…」

ミサト「…まずは「生」を掴み取らないとね」

加持「その通り」

リツコ「……負けないわ」

加持「ああ。負けないさ、俺たちは」




拾壱話分終わり
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/28(土) 14:48:02.95 ID:1oBntmVXo
加持さんアンタ自分が中学生って自覚無いだろ…
318 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:51:39.76 ID:pkrsX4Fxo
シンジの過去。南極で起きた爆発


シンジ「…母さん…?」

ユイ「……」



シンジ「……」
319 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:52:35.81 ID:pkrsX4Fxo
青葉「悪いな、葛城。雨宿りさせてもらって」

日向「……シンジさんは…?」

ミサト「うーん、まだ寝てるかも。最近徹夜の仕事が多いみたいで…」

日向「…そっか」ホッ


加持「残念。俺がいるよ」

日向「」

加持「雨宿り、って口実も悪くはないが。アプローチするんならもっと相手に「特別」を意識させないとな?」サワッ

ミサト「ちょっと!ふざけないでよっ」バシッ

加持「あたた…」

青葉「はは…」

日向「……………」
320 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:53:23.56 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「あれっ? 青葉くんに、日向くん」

青葉「すいません、雨宿りで」

日向「お邪魔してます」

シンジ「そっか…外雨降ってるのかぁ…」

ミサト「もう出るんですか?」

シンジ「うん。今日はちょっとね…2人とも、今夜はハーモニクスのテストがあるから、遅れないようにね」

ミサト「はい…」

加持「了解」

シンジ「じゃあ、いってきます」

ミサト「いってらっしゃい」
321 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:55:23.76 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「………」

日向「…どうかした?葛城さん」

ミサト「いや…シンジさんの服、いつもと違ったような…」

青葉「ええ?同じだったろ」

ミサト「襟のところの線が、二本になってたような…」

加持「へえ。そりゃすごいな、シンジさん」

青葉「なんだ?なんか違うのか?」

加持「そりゃ、襟章の線が2本になってたんなら、一尉から三佐に昇進したってことだからな」

ミサト「そうなんだ…」

加持「…どうした?まだ何か気になることが?」

ミサト「…シンジさん、全然嬉しそうじゃなかったな、って…」

青葉「…きっと忙しかったんじゃないか?徹夜続きだって話だし」

日向「どうだろうな…あの若さで三佐なら、プレッシャーも大きいだろうし」

加持「ま、ともあれ目出度いことだ。サプライズパーティでも開くか?」

ミサト「……」
322 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:56:01.27 ID:pkrsX4Fxo
ヒカリ「0番2番、ともに汚染区域に隣接。限界です」

レイ「1番にはまだ余裕があるわね……プラグ深度を後0.3下げてみて」


ヒカリ「汚染区域ぎりぎりです」

レイ「それでもこの数値……凄いわね…」

ヒカリ「ハーモニクス、シンクロ率も加持くんに迫ってますね」

レイ「……才能ね…」

オペレータ「まさに、エヴァに乗るために生まれてきたような子供ですね」

シンジ「…………」
323 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:57:16.60 ID:pkrsX4Fxo
レイ「3人ともお疲れさま」

レイ「特に…ミサトちゃん」

ミサト「えっ?」

レイ「ハーモニクスが前回より8も伸びてる。とても良い数字よ」

ミサト「いえっ…そんな…まだまだです…!」

加持「そんなことないさ!10日で8だろ。たいしたもんだよ」

レイ「その通りよ。もっと自信を持って」

ミサト「は、はぁ…」

加持「じゃあ俺は「準備」があるから。お先に!」
324 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:58:10.77 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「あ、あの、シンジさん……昇進おめでとうございます」

シンジ「はは…気付いてたの。ありがとう、嬉しいよ」

ミサト「………本当に嬉しい、ですか?」

シンジ「…!…はは…ダメだな。ミサトちゃんには敵わないや」

シンジ「…本当言うとね、複雑だよ…僕自身、何をしたってわけじゃないんだ。ただ流れに身を任せただけ…」

シンジ「目的はある。でもそれも最近は忙殺されて……遠いんだ。…何やってるんだろうって…疑問に思うこともある」

ミサト「…あの、疑問って…?」

シンジ「…(君たちを、エヴァに乗せてること…)」

ミサト「……?」

シンジ「いや…いいんだ。ごめんね、心配かけちゃって」

シンジ「僕がこんなじゃ、失礼だよね。勇気を持って乗ってくれてるミサトちゃんに対して。他のみんな…加持くんや、リツコちゃんにも……」

ミサト「……」(シンジさん…)
325 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 14:59:11.60 ID:pkrsX4Fxo
ミサト・日向・青葉・加持・マヤ「おめでとうございまーす!」

シンジ「ありがとう…わぁ、すごい。よくこんなに作れたね」

加持「クラスに凄腕の先生がいてね。ご教授いただいたんだ」

マヤ「す…凄腕ってわけじゃ…」


シンジ「…こ、これは…?」

ミサト「そ、それは…わたしが」

青葉「みっ見た目じゃないよなあ!?料理はなぁ!?」

日向「そ、そうさ!旨いんだから!問題ないよ!」

シンジ「ぱくっ」

ミサト「…!」

シンジ「…ありがとう、ミサトちゃんも。おいしいよ」

ミサト「……いえ!そんな…」カァ
326 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:00:12.35 ID:pkrsX4Fxo
リツコ「……私は作戦会議だと聞いたのだけど」

加持「…親睦を深めるってのも作戦のうちさ。それに、祝いの席には華が多い方がいいだろ?」

リツコ「花?」

マヤ「あっ赤木さん!よかったらこのスープ…」

リツコ「…いただくわ」


ミサト「それにしても…アスカさん遅いわね」

シンジ「!? ごほっ、あっ、アスカもくるの!?」

加持「誘ってはみたんですけどね。最近忙しいみたいで、色々と」

シンジ「………」
327 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:01:03.57 ID:pkrsX4Fxo
マヤ「アスカさんってどんな人なの?」

青葉「顔はいいよ…顔はね」

日向「性格がな…」

シンジ「あはは…」

加持「顔で渡ってこれる世界じゃない。腕は確かさ。でもまぁ……当たりが強いのは、感情の裏返しだろうな」

ミサト「裏返し?」

加持「…好きでも素直になれないってこと。俺はストレートに表現してるけどな?」サワッ

ミサト「ちょっと!やめてったら!」

加持「つれないなぁ」

日向「………」ムカムカ

青葉「…祝いの席だぞ、一応…」

マヤ「加持くんと葛城さんってやっぱり…そうなの?」

ミサト「違うわよぉ!全然!!そんなんじゃないから!!!」

シンジ「あはは」
328 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:02:21.21 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「……ミサトちゃん、最近表情が豊かになったね」

ミサト「す、すいません…はしゃいじゃって…」

シンジ「謝ることなんてないよ、嬉しいんだ。ミサトちゃんが笑ってくれて」

ミサト「え…」

シンジ「みんなが笑ってくれて。昇進自体に思うところがないわけじゃないけど、こうやってみんなが集まって……なんて言うのかな、僕のために喜んでくれることが、嬉しい…」

ミサト「…わかります」

シンジ「……」

ミサト「…私も、エバには乗りたくないけど……みんなが、応援してくれるから…」

シンジ「…ミサトちゃん…」

ミサト「大切なんです、きっと」
329 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:03:40.82 ID:pkrsX4Fxo
加持「おっ、先輩かな?」


加持「先輩。よく来れましたね?」

アスカ「本部から直。仕事の虫もついでだから連れてきたわよ」

レイ「おじゃまします…」

シンジ「…あ、いらっしゃい…」

アスカ「なーによちったあ嬉しそうにしなさいよー?せっかく進展を手伝ってやろうってのに」

シンジ「そっそんなこと頼んでないだろ!」

レイ「碇くん、この度は昇進、おめでとう」

シンジ「あっ綾波…ありがとう。ごめんね、忙しいのに…」

レイ「いいの…きりのいいところだったから」

アスカ「あたしもすごぉ〜く忙しかったんですケド?」

シンジ「アスカは普段サボってるからだろ」

アスカ「ぬゎ〜んですってえ!??」

加持「こりゃ一番やっかいなのはシンジさんかもな…」
330 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:04:22.25 ID:pkrsX4Fxo
アスカ「はぁ〜あ!無敵のシンジ様は?昇進でお偉くなられたようで!これからは私たち敬語をつかうべきかしらねえ〜?」

シンジ「そ、そういうのやめてよ…」

レイ「…でも、司令と副司令がそろって日本を離れるなんて、今までなかったことだわ。それだけ碇くんを信頼してるってこと…」

アスカ「ちょっとレイ!!こいつを調子に乗らすんじゃないわよ!」



ミサト「…お父さん、ここにいないんですか?」

レイ「葛城司令は今、南極に行ってるわ」
331 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:05:36.61 ID:pkrsX4Fxo
カヲル「いかなる生命の存在も許さない、死の世界、南極…」

カヲル「いや、地獄というべきかな?」

葛城「……我々はまだここに立っている。人類として、生物として生きたまま」

カヲル「科学の勝利といいたいのかい?」

葛城「傲りだよ……だが全滅は免れた」

カヲル「…15年前の悲劇、セカンドインパクト……それを引き起こした人間の罪、か…」

カヲル「だがもう罰は十分に与えられた。目下の死海もそう、人々の心にも…」

葛城「まだだ。人は背負うべき業を負った。…やつらは、浄化された世界を望んでいる」

カヲル「…未だ赦されず、か…。赦されぬと分かったとき、はたして罪人は頭を垂れたままでいるかな…?」



オペレータ「報告します。ネルフ本部より入電。インド洋上、空衛星軌道上に使徒発見」
332 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:06:21.85 ID:pkrsX4Fxo
トウジ「二分前に突如出現」


オペレータ「第6サーチ、衛星軌道上へ」

オペレータ「接触まで後2分」

ケンスケ「目標を映像で捕捉」

職員「おおっ…」

トウジ「なんじゃこりゃあ…」

シンジ「……!」

ケンスケ「目標と、接触します」

オペレータ「サーチスタート」

オペレータ「データ送信、開始します」

オペレータ「受信確認」



シンジ「…A.T.フィールド?」

レイ「……今までにない使い方ね」
333 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:07:03.64 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「……これだけの質量を…」

ヒカリ「落下のエネルギーをも、利用しています。使徒そのものが爆弾みたいなものです」

レイ「…初弾は太平洋に着弾。2時間後の第2射がそこ。…後は確実に誤差修正してる」

シンジ「学習してるのか…」

トウジ「N2航空爆雷も、効果なしや」

ケンスケ「以後、使徒の消息は不明」

シンジ「…次は、多分…」

レイ「来るわね、ここに」

シンジ「被害予想範囲は?」

レイ「富士五湖が一つになって、太平洋とつながる。本部ごとね」

シンジ「葛城司令との連絡は?」

ケンスケ「使徒の放つ強力なジャミングのため、連絡不能」

シンジ「MAGIの判断は?」

ヒカリ「全会一致で撤退を推奨しています」

シンジ「………」
334 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:08:00.32 ID:pkrsX4Fxo
レイ「……碇三佐、今の責任者はあなたよ」

シンジ「……日本政府各省に通達。ネルフ権限における特別宣言D-17。半径50キロ以内の全市民は直ちに避難。松代にはMAGIのバックアップを要請」

トウジ「ここを放棄するんか?」

シンジ「そうなるかもしれない。でも、その前に……考えがある」



放送「政府による特別宣言D-17が発令されました。市民の皆様は速やかに指定の場所へ避難してください」

放送「第6、第7ブロックを優先に、各区長の指示に従い、速やかに移動願います」

放送「市内における避難はすべて完了」

放送「部内警報Cによる、非戦闘員およびD級勤務者の待避、完了しました」
335 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:09:05.41 ID:pkrsX4Fxo
レイ「普段のあなたからは考えられない、危険な賭ね」

シンジ「……賭にも、なってるかどうか…」

リツコ「勝算は0.00001%……本当にやるの?」

シンジ「綾波は…反対…?」

レイ「いいえ、従うわ…碇くんがそう言うなら」

シンジ「……」

シンジ「……アスカなら…とめに入ったかな…?」


レイ「……あんたバカ?」

シンジ「…え?」

レイ「彼女ならそう言ったかも。ただ……確率で言うなら…人類には滅ぶ道のほうが多い」


レイ「アスカも…最終的には奇跡に賭けたはず」


シンジ「そっか…」
336 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:10:03.23 ID:pkrsX4Fxo
レイ「………」

レイ「あなたを変えたのは……、あの子…?」

シンジ「え…?」

レイ「サードチルドレン…葛城ミサト…」


シンジ「…そうかもしれない。僕は使徒を恨んでた。失ったものを追いかけて…でも今は…違う気がするんだ」

シンジ「…今はもうこの手に「ある」から…だから失いたくない」

レイ「碇くん…」

シンジ「もう誰にも、失ってほしくないんだよ」
337 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:11:01.93 ID:pkrsX4Fxo
加持「手で」

ミサト「受け止める!?」

リツコ「……」


シンジ「そう。観測上最大級の使徒がA.T.フィールドを張ってここに落下してくる……。対抗できるのはA.T.フィールドを持つエヴァ三機だけ」

シンジ「ただ…予測される軌道、衝撃、何もかもが未知数なんだ。無理強いはしないよ、やめたければ…」


加持「……これが作戦といえるのか?」

シンジ「えっ」

加持「先輩なら、そう言ったかもな。でも俺はそういうの、嫌いじゃない」

加持「こちとら何千の候補から選ばれた「チルドレン」…」

加持「勝利の女神も、微笑ませてみせるさ」


シンジ「加持くん…」
338 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:12:04.27 ID:pkrsX4Fxo
リツコ「……私も、やります」

シンジ「リツコちゃん」

リツコ「ここがなくなると困るもの」

ミサト「わ、私も…!」

ミサト「みんなを…!守りたいから」

シンジ「……ミサトちゃん」

加持「勝利は確定だな。すでに女神が二人ついてる」

ミサト「すぐふざけるんだから…」

リツコ「……」

シンジ「…ふふ」
339 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:13:11.54 ID:pkrsX4Fxo
加持「……規則だっていう「家族・友人への手紙」、書いたか?」

ミサト「ぜーんぜん」

リツコ「書いてないわ」

加持「だよなぁ…こりゃ、まんま遺書だもんな」

ミサト(なぜだろう……おじさんの家では…出せなかった手紙が…お父さんに対する、怒りが…山ほどあったはずなのに…今は何て書けばいいのか…)トン…トン…

ペンを迷わせるミサト

ミサト「……不思議」


加持「? なにか言ったか?葛城」

ミサト「ううん…加持くん、リツコ」

ミサト「絶対に奇跡を起こしましょう、…この手で」

加持「…おう!」

リツコ「ええ…」
340 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:14:04.87 ID:pkrsX4Fxo
ヒカリ「使徒による電波撹乱のため、目標を喪失」

シンジ「正確な位置の測定ができないけど、ロスト直前までのデータから、MAGIが算出した落下予想地点が…これ」

加持「あちらさんの攻撃範囲ってわけか」

ミサト「こんなに広く…これじゃ、エバ三体でも…」

レイ「目標のA.T.フィールドをもってすれば、そのどこに落ちても本部を根こそぎえぐることができる」

シンジ「うん。だからエヴァ全機はこれら三個所の配置についてもらう」

リツコ「この配置の根拠は?」

シンジ「……勘、かな……はは……」

ミサト・加持「……カン?」

リツコ「……」

シンジ「確率の高い場所、というのがないんだ……どの地点にも落下しうる」

加持「……はは。こうも運頼みだと笑えてくるな」

加持「なーに。大丈夫さ、きっとなんとかなる。なんとかなったら……その時は碇三佐殿、奮発して頼みますよ?」

シンジ「ありがとう……約束するよ」
341 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:15:01.16 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「ねぇ」

加持「うん?」

ミサト「なに見てるの?」

加持「……3つ星レストランのパンフレット」

ミサト「……加持くんって、図太いわよね。神経が」

加持「胆が据わってるって言ってくれよ…死ぬときのこと考えたってしょうがないだろ?」

ミサト「そりゃそうだけど…」

加持「…生きているんだから、楽しまなきゃな」

ミサト「……加持くんは…どうしてエバーに乗ってるの?」

加持「……自分のためだな。生きている自分のため」

ミサト「そう……」
342 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:16:04.24 ID:pkrsX4Fxo
加持「……おっ、この海鮮料理なんてどうだ?珍しいし」

ミサト「…私は…シンジさんの手料理のほうが…」

加持「……」

ミサト「…あ」

加持「妬けるねえ…」

ミサト「そ! そういうのじゃないわよ!バカ!」
343 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:17:10.81 ID:pkrsX4Fxo
オペレータ「落下予測時間まで、後120分です」

シンジ「みんなも避難して。ここは僕一人でいいから」

ケンスケ「なーに言ってんだよ碇」

トウジ「子供らぁとセンセーだけ残して行けるわけないやろ!」

シンジ「はは…僕は、ダメかもしれないけど、ミサトちゃん達にはA.T.フィールドがあるから…」

トウジ「アホゥ!尚更や!」

ケンスケ「ネルフ期待の作戦部長様を死なすわけにはいかないだろ?あと人類もね」

ヒカリ「私たちもできることはやっておきたいのよ……最後まで」

シンジ「みんな…」
344 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:19:52.14 ID:pkrsX4Fxo
(回想)

夕暮れの街を見下ろすミサト、シンジ。

ミサト「シンジさん…」

シンジ「…なに?」

ミサト「昨日…シンジさんが言ってた…ネルフにいる目的、って…なんですか」

シンジ「そうか…昨日は話さずじまいだったね」


シンジ「僕の両親はね、研究者だったんだ。僕の身代わりになって死んでしまった…」

シンジ「不器用な人だった…父さんは、いつも言葉が足らなくて。でも…母さんが笑っていたから、憎めなかった」

シンジ「幸せだったよ。…泣いてばかりだった僕を、母さんはよく研究室に連れていってくれた」

シンジ「…愛されている気がした。たぶん気のせいじゃない…。心地よかった。敬愛する両親、その仲間からの称賛が誇らしかった」
345 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:21:17.09 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「でも…」

シンジ「一夜にしてすべて失った。家族も…生きる希望も」

シンジ「セカンドインパクトの……直後の記憶はあまりない。ただ亡霊のようになってしまった自分と、反芻する母さんの言葉……「生きてさえいれば」と……それだけ」

シンジ「母さんの言葉通り、また希望と出会った。…父さんに似て不器用で、母さんのように聡明な人だった。愛しかった。でも、いつからか…」

シンジ「想像の中の、彼女を愛しているんだと気づいたんだ。目の前の彼女じゃなく…!」

シンジ「僕は誰も愛してなかった。すべて過去の、「あの頃」を準えているにすぎない」

シンジ「そう思えてからは遠ざけた、人も、自分の心も……何が悪いのか分からなくて」

シンジ「…使徒を恨んだ。僕の人生を狂わせた使徒を」

シンジ「使徒を倒さなければ、二度と現実の理想は語れない、って」


シンジ「そう思い込もうとしてたんだ…」

ミサト「…シンジさん…」
346 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:22:28.53 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「でも今は…違うと思う」

シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「……!」

シンジ「僕もきみが大切だよ」

シンジ「加持くんに、リツコちゃん…ここにいるみんな…、過去の何とも重ならない「今」が…!」



シンジ「だからネルフで迎え撃つ、人類の敵…使徒を」



ミサト「………」

ミサト(大切だから…「守る」)

ミサト(逃げるんじゃなく、「迎え撃つ」)

ミサト(「奇跡」を……起こす…!)
347 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:23:32.65 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「目標を最大望遠で確認!」

トウジ「距離、およそ2万5千!」

シンジ「…エヴァ全機、スタート位置!」

シンジ「目標は光学観測による弾道計算しかできない。MAGIによる距離1万までの誘導ののちは、各自の判断で行動。これが現時点で出せる指示のすべて…」

加持「へへ…腕の見せどころ、ってね」


ケンスケ「使徒接近、距離、およそ2万!」

シンジ「……作戦開始!」

ミサト「行きます!」

加持・リツコ「…」

ミサト「……スタート…っ!」
348 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:24:13.51 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「距離、1万2千!」

ミサト「フィールド、全開!」

ミサト「うっ、ぐ、うう…っ」

リツコ「弐号機、フィールド全開!」

加持「まかせろっ!」

ミサト「…今!」

加持「でやあああっっっ!」


使徒撃破


加持「………ははっ……命あったか……」
349 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:25:02.46 ID:pkrsX4Fxo
ケンスケ「電波システム、回復。南極の葛城司令から、通信が入っています」

シンジ「繋いで」

ケンスケ「了解」

シンジ「申し訳ありません。自分の勝手な判断で、初号機を破損してしまいました。責任はすべて自分にあります」

カヲル「……構わないよ。使徒殲滅がエヴァの使命……君たちも無事で良かった。幸運を引き寄せたね」

シンジ「いえ…それは子どもたちが…」

葛城「よくやってくれた、碇三佐」

シンジ「ありがとうございます」
350 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:26:01.23 ID:pkrsX4Fxo
葛城「……初号機のパイロットはいるか?」

ミサト「は、はい…!」

葛城「…よくやったな、ミサト」

ミサト「えっ………はい…」

葛城「では碇三佐、後の処理は任せる」

シンジ「はい!」




加持「さぁシンジさん、お約束のディナーだ」

シンジ「ふふ、こう見えて貯金はあるんだ。どこのお店にするか決まった?」

加持「それがね……」
351 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:27:03.09 ID:pkrsX4Fxo
シンジ「あはは…こんなのでいいなら、いつでもご馳走するのに」

加持「葛城たっての希望でね。それにリッちゃんもこのほうが好きなものを選んで食えるし」

リツコ「…おいしい」

シンジ「はは、たくさん食べてよ、まだあるから」

葛城「……なによ、「リッちゃん」って…」

加持「…砕けた愛称のほうが、氷の美少女に微笑えんでもらえるかと思ってね。妬いたかい?」

葛城「ばーか。…私は見たことあるわよ?リツコの笑顔〜」

加持「なんだって?いつ?」

葛城「おしえな〜い!ねっ?リツコ」

リツコ「このポテトサラダ…おいしいわ」

シンジ「あはは」
352 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:28:01.75 ID:pkrsX4Fxo
ミサト「…ねぇ、シンジさん…」

シンジ「なに?」

ミサト「……私のお母さんは…泣いてばかりいたの。お父さんと喧嘩して。…泣くお母さんも泣かせるお父さんも嫌だった…」

シンジ「うん…」

ミサト「でも、今は……お父さんは不器用だったんじゃないか、って。……シンジさんのお父さんと同じように」

ミサト「そう思う……そう、思える…」


シンジ「そう……」

加持「……」
353 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:29:03.10 ID:pkrsX4Fxo
加持「多少口下手でも、あの顔だ。女性のほうが放っとかなかったんじゃないか?」

ミサト「なに?」

加持「喧嘩の理由だよ」

ミサト「真面目に話してるのよ?」

加持「こっちだって真面目さ。ポーカーフェイスはモテるからな」

リツコ「……私は見たことあるわ、葛城司令の笑顔」

ミサト・加持・シンジ「えっ…」






拾弐話分終わり
354 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/28(土) 15:30:06.26 ID:pkrsX4Fxo
続きは明日
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2020/11/28(土) 20:09:56.48 ID:qtT08rykO
加藤純一(うんこちゃん) ニコ生

焼きそば食いながらおもろそうなゲームを探す枠
+懐かしのアニソンを聴く枠
(17:54〜放送開始)


https://live.nicovideo.jp/watch/lv329251183
356 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:01:01.51 ID:48W6ECl6o
オペレータ「エヴァ三体のアポトーシス作業は、MAGI-SYSTEMの再開後予定通り行います」

オペレータ「作業確認。450より670は省略」

トウジ「発令所、承認」

レイ「さすが洞木さん、早いわね」

ヒカリ「それはもう。綾波博士直伝ですから」

レイ「…あ、待って、そこ。A8の方が早いわ。ちょっと貸して」

ヒカリ「…さすが、東洋の三賢者の弟子……」
357 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:02:02.85 ID:48W6ECl6o
シンジ「MAGIの診察は順調?」

レイ「大体ね。今日のテストには間に合わせるわ」

シンジ「ごめんね…急がせて。同じ物が3つもあって、大変なのに」

レイ「ちゃんと休憩は取ってるわ。ご心配なく」

シンジ「どうだかなぁ……この紅茶、冷めてるじゃないか」

レイ「そうね…いれ直さなきゃ。碇くんも飲む?」

シンジ「綾波は座ってなよ。僕がいれてくるから」

レイ「………」

レイ「ありがとう…」
358 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:03:09.50 ID:48W6ECl6o
オペレータ「MAGI-SYSTEM、再起動後、自己診断モードに入りました」

ヒカリ「第127次、定期検診異常無し」

レイ「了解。お疲れさま。みんな、テスト開始まで休んでちょうだい」




レイ「不思議ね…歳を取っているはずなのに」

レイ「ちっとも変わった気がしない…」

レイ「可笑しいと思うでしょう?……先生」
359 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:04:03.62 ID:48W6ECl6o
ミサト「…うげぇ。また無菌室…?」

レイ「ごめんなさいあなたたち。ここから先は超クリーンルームなの。17回ほど垢を落としてもらうことになるわ」

ミサト「じゅ、17回ィ!?」

レイ「時間はただ流れているわけじゃない…エヴァのテクノロジーのためなのよ。新しいデータは常に必要なの…こらえてちょうだいね」

ミサト「……は〜い」




ミサト「17回は…やっぱ…」

加持「きついな…」

リツコ「……」
360 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:05:12.77 ID:48W6ECl6o
レイ「お疲れさま。では3人とも、この部屋を抜けてその姿のままエントリープラグに入ってちょうだい」

ミサト「ええっ!?このまま!?」

レイ「大丈夫。映像モニターは切ってあるから…プライバシーは保護してるわ」

ミサト「何も着ちゃだめなんですか…?」

レイ「このテストは、プラグスーツの補助無しに、直接肉体からハーモニクスを行うのが趣旨なのよ」

シンジ「ごめんね、ミサトちゃん」

ミサト「しっシンジさん!?そこにいるんですか!???」

レイ「……隠さなくても、映ってないわよ」
361 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:06:06.77 ID:48W6ECl6o
オペレータ「各パイロットエントリー準備完了しました」

レイ「テストスタート」

オペレータ「テストスタートします。オートパイロット、記憶開始」

オペレータ「シミュレーションプラグを挿入」

オペレータ「システムを、模擬体と接続します」

ヒカリ「シミュレーションプラグ、MAGIの制御下に入りました」

シンジ「すごい、早い…!嘘みたいだね。初実験のときは一週間もかかったのに」

オペレータ「テストは約3時間で終わる予定です」
362 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:07:08.26 ID:48W6ECl6o
レイ「気分はどう?」

リツコ「…何か違うわ」

ミサト「う〜ん、何か変な感じ」

加持「なんというか…右腕だけはっきりして、後はぼやけた感じなんだ」

レイ「リツコちゃん、右手を動かすイメージを描いてみて」

リツコ「はい」

オペレータ「データ収集、順調です」

レイ「問題はないようね…MAGIを通常に戻して」


レイ「ジレンマか…作った人間の性格が伺えるわね」

シンジ「? それって、綾波のってこと?」

レイ「…いいえ…私はシステムアップしただけ。基礎理論と本体を作ったのは、先生なのよ」

シンジ「……赤木、ナオコ博士か…」
363 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:08:01.27 ID:48W6ECl6o
カヲル「確認しているんだね?」

ケンスケ「ええ、一応」

ケンスケ「3日前に搬入されたパーツです。ここですね、変質しているのは」

カヲル「第87蛋白壁か…」

ケンスケ「拡大するとシミのようなものがあります。何でしょうね、これ」

トウジ「浸蝕やないか?温度と伝導率が若干変化しとるし。無菌室の劣化はよくあることや」

ケンスケ「工期が60日近く圧縮されてますから。また気泡が混ざっていたんでしょう。杜撰ですよ、B棟の工事は」

カヲル「…あそこは、使徒が現れてからの工事だったか…」

トウジ「無理ないわ、みんな疲れとるからな」

カヲル「…明日までに処理しておいてくれ。司令に知れるとうるさいからね」

トウジ「了解」
364 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:09:04.46 ID:48W6ECl6o
レイ「また水漏れ?」

ヒカリ「いえ、浸蝕だそうです。この上の蛋白壁」

レイ「…テストに支障は?」

ヒカリ「今のところは何も」

レイ「では続けて。このテストはおいそれと中断するわけにいかないわ」

ヒカリ「了解」

ヒカリ「シンクロ位置、正常」

オペレータ「シミュレーションプラグを模擬体経由でエヴァ本体と接続します」

オペレータ「エヴァ零号機、コンタクト確認」

オペレータ「A.T.フィールド、出力2ヨクトで発生します」
365 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:10:01.87 ID:48W6ECl6o
エラー音。

レイ「どうしたの?」

オペレータ「シグマユニットAフロアに汚染警報発令」

オペレータ「第87蛋白壁が劣化、発熱しています」

オペレータ「第6パイプにも異常発生」

ヒカリ「蛋白壁の浸蝕部が増殖しています。爆発的スピードです!」

レイ「実験中止、第6パイプを緊急閉鎖!」

ヒカリ「はい!」

オペレータ「60、38、39、閉鎖されました!」

オペレータ「6の42に浸蝕発生!」

ヒカリ「だめです、浸蝕は壁伝いに進行しています!」

レイ「ポリソーム、用意!」

レイ「レーザー、出力最大!侵入と同時に、発射!」

ヒカリ「浸蝕部、6の58に到達……来ます!」
366 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:11:04.40 ID:48W6ECl6o
一同「……」

リツコ「……ああぁっ、う…!」

レイ「リツコちゃん!?」

ヒカリ「赤木リツコの模擬体が、動いています!」

レイ「まさか!」

ヒカリ「浸蝕部、さらに拡大、模擬体の下垂システムを侵しています」



シンジ「リツコちゃんは!?」

ヒカリ「無事です!」

レイ「全プラグを緊急射出!レーザー急いで!」


シンジ「A.T.フィールド!?」

レイ「まさか!」

シンジ「これは…!」

レイ「分析パターン、青。間違いなく……使徒よ」
367 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:12:03.31 ID:48W6ECl6o
カヲル「…使徒?使徒の侵入を許したのかい?」

レイ「申し訳ありません」

カヲル「………セントラルドグマを物理閉鎖、シグマユニットと隔離だ!」


ケンスケ「セントラルドグマを物理閉鎖、シグマユニットと隔離します」

シンジ「ボックスは破棄します!総員待避!」

シンジ「…急いでください!早く!」

アナウンス「シグマユニットをBフロアより隔離します。全隔壁を閉鎖、該当地区は総員待避」
368 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:13:01.35 ID:48W6ECl6o
葛城「分かっている。よろしく頼む」ガチャ

葛城「…警報をとめろ!」

ケンスケ「け、警報を停止します!」

葛城「日本政府と委員会には「探知機のミスによる誤報」と、そう伝えろ」

ケンスケ「は、はい!」

トウジ「汚染区域はさらに下降!プリブノーボックスからシグマユニット全域へと拡大!」

カヲル「場所がまずい…!」

葛城「アダムに近すぎる……。汚染はシグマユニットまでで抑えろ!ジオフロントは犠牲にしても構わない。エヴァは?」

トウジ「第7ケイジにて待機、パイロットを回収次第、発進できます」

葛城「パイロットを待つ必要はない。今すぐ地上へ射出だ」

ケンスケ・トウジ「え?」

葛城「三機すべてだ」

ケンスケ「しかし、エヴァ無しでは、使徒を物理的に殲滅できません!」

葛城「その前にエヴァを汚染されたらすべて終わりだ。急げ!」

ケンスケ・トウジ「はい!」
369 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:14:00.68 ID:48W6ECl6o
アナウンス「シグマユニット以下のセントラルドグマは、60秒後に完全閉鎖されます。真空ポンプ作動まで、後30秒です」


アスカ「あれが使徒か……これは、仕事どころじゃなくなったわ…」

アスカ「ね、っと!」




オペレータ「セントラルドグマ、完全閉鎖。大深度施設は、侵入物に占拠されました」


カヲル「…さて、エヴァ無しで、使徒に対し、どう攻める?」
370 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:15:03.73 ID:48W6ECl6o
レイ「ほら、ここが純水の境目、酸素の多いところ」

ヒカリ「好みがハッキリしてますね」

ケンスケ「無菌状態維持のため、オゾンを噴出しているところは汚染されていません」

シンジ「つまり、酸素に弱い、ってこと?」

レイ「そのようね」

トウジ「オゾン注入、濃度、増加中」

ケンスケ「効いてる効いてる」

カヲル「いけるかい?」

ヒカリ「0Aと0Bは回復しそうです」

ケンスケ「パイプ周り、正常値に戻りました」

トウジ「やっぱり真ん中やな。強いのは」

カヲル「よし、オゾンを増やすんだ」
371 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:16:03.00 ID:48W6ECl6o
レイ「おかしい…」

ケンスケ「あれ?増えてるぞ」

トウジ「あかん…また発熱しだしとる」

ケンスケ「汚染域、また拡大しています!」

ヒカリ「だめです、まるで効果が無くなりました」

トウジ「今度はどんどんオゾンを吸っとる!」

レイ「オゾン止めて!」


レイ「すごい…進化しているんだわ」
372 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:17:00.75 ID:48W6ECl6o
シンジ「! これは…!?」

ケンスケ「サブコンピューターがハッキングを受けています!侵入者不明!」

トウジ「クソッ!こんな時に!Cモードで対応!」

ケンスケ「防壁を解凍します!疑似エントリー、展開!」

オペレータ「疑似エントリーを回避されました」

ケンスケ「逆探まで18秒!」

オペレータ「防壁を展開!」

オペレータ「防壁を突破されました!」

オペレータ「疑似エントリーをさらに展開します!」

トウジ「…こりゃあ人間技やないな…」

ケンスケ「逆探に成功…この施設内です…B棟の地下……!プリブノーボックスです!」

ヒカリ「光学模様が変化しています」

ケンスケ「光ってるラインは電子回路だ。こりゃあ…コンピューターそのものだ」

トウジ「疑似エントリー展開……失敗、妨害された!」

シンジ「メインケーブルを切断!」
373 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:18:03.71 ID:48W6ECl6o
オペレータ「だめです、命令を受け付けません!」

シンジ「レーザーを打ち込んで!」

ヒカリ「A.T.フィールド発生、効果無し!」

ケンスケ「保安部のメインバンクにアクセスしています。パスワードを走査中、12桁、16桁、D-WORDクリア!」

トウジ「保安部のメインバンクに侵入!」

トウジ「メインバンクを読んどる…!解除できん!」

カヲル「何が目的だ…!?」

ケンスケ「メインバスを探っています…このコードは…やばい、MAGIに侵入するつもりです!」

葛城「I/Oシステムをダウンしろ」

ケンスケ「カウント、どうぞ!」

トウジ「3、2、1!」

トウジ「電源が切れん!」

ヒカリ「使徒、さらに侵入、MELCHIORに接触しました!」

ヒカリ「だめです!使徒にのっとられます!」

ヒカリ「MELCHIOR、使徒にリプログラムされました!」
374 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:19:01.65 ID:48W6ECl6o
アナウンス「人工知能、MELCHIORより、自律自爆が提訴されました。否決、否決、否決、否決」

ケンスケ「こっ、今度は、MELCHIORがBALTHASARをハッキングしています!」

トウジ「くそぉ、早い!」

ケンスケ「なんて計算速度だ!」

レイ「…、……!」

レイ「ロジックモードを変更!シンクロコードを15秒単位にして!」

ケンスケ・トウジ・ヒカリ「了解!」


シンジ「! とまった…!」


カヲル「……どのくらい持ちそうだい?」

ケンスケ「今までのスピードから見て、2時間くらいは」

葛城「MAGIが、敵に廻るとはな…」

レイ「……」
375 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:20:06.41 ID:48W6ECl6o
レイ「彼らはマイクロマシン、細菌サイズの使徒と考えられます」

レイ「その個体が集まって群を作り、この短時間で知能回路の形成にいたるまで、爆発的な進化を遂げています」

カヲル「進化か…」

レイ「はい。彼らは常に自分自身を変化させ、いかなる状況にも対処するシステムを模索しています」

カヲル「…まさに、生物の生きるためのシステムそのものだね…」

シンジ「…そんな。それじゃあ……もうMAGIは」

レイ「いいえ。MAGIを切り捨てることは、本部の破棄と同義。物理的消去はできない」

カヲル「…では、司令部から正式に要請することになる」

レイ「拒否します。技術部が解決すべき問題です」

シンジ「あ、綾波…!」

レイ「碇くんは黙ってて。……私のミスから始まったことなのよ」

シンジ「綾波……」
376 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:21:01.54 ID:48W6ECl6o
レイ「…使徒が進化しつづけるのなら、勝算はあります」

葛城「…進化の促進か」

レイ「そうです」

カヲル「なるほど…進化の終着地点は自滅、死、そのもの」

シンジ「…じゃあ、進化をこちらで促進させれば…?」

レイ「使徒が死の効率的な回避を考えれば、MAGIとの共生を選択するかもしれません」

トウジ「できるんか。そんなことが」

レイ「…目標がコンピューターそのものなら、CASPERを使徒に直結、逆ハックを仕掛けて、自滅促進プログラムを送り込むことができます。が…」

ヒカリ「同時に使徒に対しても防壁を開放することにもなります」

葛城「CASPERが早いか、使徒が早いか…勝負というわけか」

レイ「はい」

カヲル「そこまで言い切ったんだ。そのプログラム、間に合うんだろうね?」

レイ「間に合わせます…!」
377 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:22:05.53 ID:48W6ECl6o
アナウンス「R警報発令、R警報発令、ネルフ本部内部に緊急事態が発生しました。D級勤務者は、全員待避してください。」


ヒカリ「な、何これ…」

レイ「…開発者の悪戯書きね…」

ヒカリ「こんなに沢山……MAGIの裏コードが…」

シンジ「すごい…!こんなところがあったなんて」

ヒカリ「わっ…こんなの、見ちゃっていいのかしら…すごい、intのC……!」


ヒカリ「…これなら、意外と早くプログラムできそうね!」

レイ「ええ……ありがとう、先生…確実に間に合うわ」
378 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:23:03.34 ID:48W6ECl6o
レイ「レンチを取って」

シンジ「…大学のころを思い出すね…」

レイ「25番のボード」

シンジ「……ごめん、綾波…さっきは、MAGIを…[ピーーー]ようなことを言って」

レイ「……」

レイ「…いいのよ。私こそ、ごめんなさい。当たったりして」


シンジ「ねぇ、MAGIって何なの…?」

レイ「……」

シンジ「……いや、綾波がこんなに物に執着するのは珍しい、から……」

シンジ「言いたくなかったら、いいんだ。その……ごめん」
379 : ◆gcWj88zLkc [saga]:2020/11/29(日) 14:29:22.17 ID:48W6ECl60
レイ「レンチを取って」

シンジ「…大学のころを思い出すね…」

レイ「25番のボード」

シンジ「……ごめん、綾波…さっきは、MAGIを…殺すようなことを言って」

レイ「……」

レイ「…いいのよ。私こそ、ごめんなさい。当たったりして」


シンジ「ねぇ、MAGIって何なの…?」

レイ「……」

シンジ「……いや、綾波がこんなに物に執着するのは珍しい、から……」

シンジ「言いたくなかったら、いいんだ。その……ごめん」
380 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:31:00.63 ID:48W6ECl6o
レイ「……物じゃないわ」

シンジ「えっ?」

レイ「人格なのよ。……人格移植OSのことは?」

シンジ「えっと……確か、第7世代の有機コンピュータに、個人の人格を移植して思考させる…っていう、エヴァの操縦にも使われている技術だよね…?」

レイ「MAGIがその第1号らしいわ。…先生が開発した技術なのよ」

シンジ「じゃあ、赤木博士の人格を移植したの?」

レイ「そう」

レイ「言ってみれば、これは先生の脳味噌そのものなのよ」

シンジ「……それで、MAGIを…」

レイ「そうね……たぶん、そんなところ」
381 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:32:01.02 ID:48W6ECl6o
トウジ「きたっ!」

トウジ「BALTHASARが、乗っ取られた!」

アナウンス「人工知能により、自律自爆が決議されました」

シンジ「始まった…!?」


アナウンス「自爆装置は、三者一致の後、02秒で行われます」

アナウンス「自爆範囲は、ジオイド深度マイナス280、マイナス140、ゼロフロアーです」

アナウンス「特例582発令下のため、人工知能以外によるキャンセルはできません」

ケンスケ「BALTHASAR、さらにCASPERに侵入!」


カヲル「押されている…!」

ケンスケ「なんて速度だ!」

アナウンス「自爆装置作動まで、後、20秒」

カヲル「まずい!」
382 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:33:00.87 ID:48W6ECl6o
ケンスケ「CASPER、18秒後に乗っ取られます!」

アナウンス「自爆装置作動まで、後、15秒」

シンジ「…綾波!」

アナウンス「自爆装置作動まで、10秒、」

レイ「大丈夫、一秒近く余裕があるわ」

アナウンス「9秒、8秒、」

シンジ「一秒って…!」

レイ「ゼロやマイナスじゃないのよ」

アナウンス「7秒、6秒、5秒」

レイ「洞木さん!」

ヒカリ「行けます!」

アナウンス「4秒、3秒」

レイ「押して!」

アナウンス「2秒、1秒、0秒」
383 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:34:02.12 ID:48W6ECl6o
アナウンス「人工知能により、自律自爆が解除されました」


ケンスケ・トウジ「いよっしゃぁーッ!」


アナウンス「なお、特例582も解除されました。MAGI-SYSTEM、通常モードに戻ります」



アナウンス「R警報解除、R警報解除、総員、第一種警戒態勢に移行してください」


ミサト「…外はどうなってんのかしら?」

リツコ「……」

加持「……裸じゃあどこにも出れないしなぁ…」
384 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:35:03.14 ID:48W6ECl6o
アナウンス「シグマユニット開放、MAGI-SYSTEM開放まで、マイナス、03です」


レイ「…前は眠らなくても仕事ができたのに。体はしっかり歳を取っているのね…」

シンジ「本当にお疲れさまだったね…。はい、紅茶」

レイ「ありがとう…」


レイ「…碇くんがいれてくれる紅茶、いつも美味しいわ……なにかコツがあるの?」

シンジ「うん?あはは…そんな…コツなんて。でも綾波が喜んでくれるなら、良かった」

レイ「……」

レイ「……先生が言ってたの、MAGIは三人の自分なんだって…」

レイ「科学者としての自分、母としての自分、そして女としての自分なんだ、って。その3人がせめぎあってるのが、MAGIなのよ」

レイ「人の持つジレンマをわざと残して…」


シンジ「……そう」
385 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:36:05.51 ID:48W6ECl6o
レイ「先生は私を娘のように可愛がってくれたわ……科学者としての先生も尊敬してた。でも…女としての先生のことはよく分からなかった…」

レイ「…とても情熱的な人だったの。「恋はロジックじゃない」って…口癖みたいに言ってた…」

レイ「研究で忙しいはずなのに、いつも男の人を連れ込んで……でも誰とも本気じゃなかったみたい」

レイ「本当に好きな人はもういないんだ、って言ってたわ…」


シンジ「なんだか…寂しい話だね…」

レイ「そうね…その点私は恵まれてる」

シンジ「えっ?」

レイ「ふふ…いいの。こっちの話…」


レイ「CASPERには、女としてのパターンがインプットされていたの…最後まで女でいることを守ったのね。ほんと、先生らしいわ…」




拾参話分終わり
386 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:38:03.47 ID:48W6ECl6o
(中略)

委員「いかんな、これは」

委員「早すぎる」

委員「左様。使徒がネルフ本部に侵入するとは、予定外だよ」

委員「ましてセントラルドグマへの侵入を許すとはな」

委員「もし接触が起これば、すべての計画が水泡と化したところだ」

葛城「委員会への報告は誤報、使徒侵入の事実はありません」

委員「では葛城、第11使徒侵入の事実はない…と言うのだな」

葛城「はい」

委員「気をつけてしゃべりたまえ、葛城君。この席での偽証は死に値するぞ」

葛城「……MAGIのレコーダーを調べてくださっても結構です。その事実は記録されておりません」

委員「笑わせるな。事実の隠蔽は、君の十八番ではないか!」

葛城「タイムスケジュールは、死海文書の記述通りに進んでいます」

キール「まあいい。今回の君の罪と責任は言及しない。…だが、君が新たなシナリオを作る必要はない」

葛城「分かっています…。すべてはゼーレのシナリオ通りに」
387 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:39:02.73 ID:48W6ECl6o
リツコ「エントリープラグ、魂の座」

リツコ「私にあるものは命、心。その入れ物…」

(ミサト「リツコ!」)

(加持「リッちゃん」)

(レイ「リツコちゃん」)


(?「リッちゃん……」)


リツコ「……これは誰? これは私。私は誰?私は何、私は……」

リツコ「私は自分。この物体が自分。自分を作っている形。目に見える私…」

リツコ「でも、私が私でなくなる感覚…違和感。体が融けていく感じ。私が分からなくなる」

リツコ「私の形が消えていく。私でない人を感じる。誰かいるの?この先に。…葛城司令?それとも別の誰か……」

リツコ「ミサト。加持くん。綾波博士。碇三佐。みんな。クラスメイト。葛城司令」

リツコ「あなた誰」

リツコ「あなた誰、」

リツコ「あなた誰……」
388 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:40:04.02 ID:48W6ECl6o
レイ「どう、リツコちゃん。初めて乗った初号機は?」

リツコ「……、」

リツコ「…ミサトの匂いがします」



レイ「シンクロ率は、やはり下がるわね…零号機のときと比べると」

ヒカリ「それでも凄いですよ。起動には十分な数値です」

レイ「そうね…助かるわ」

ヒカリ「誤差、プラスマイナス0.03。ハーモニクスは正常です」

レイ「赤木リツコと初号機の互換性に問題点は検出されず」

レイ「では、テスト終了。リツコちゃん、あがっていいわよ」

リツコ「はい」
389 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:41:00.62 ID:48W6ECl6o
オペレータ「弐号機のデータバンク、終了」

オペレータ「ハーモニクス、すべて正常値」

ケンスケ「パイロット、異常無し」

加持「良好良好、っと」




オペレータ「エントリープラグ挿入完了」

レイ「零号機のパーソナルデータは?」

ヒカリ「書き換えはすでに終了しています。現在、再確認中」

レイ「被験者は?」

トウジ「若干緊張しとるが、神経パターンに問題はない」
390 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:42:01.26 ID:48W6ECl6o
シンジ「初めての零号機。ほかのエヴァだもんね…」

加持「うちのお姫様は繊細だな」

レイ「あら。弐号機以外には乗りたがらない、乗せたがらない繊細な子は誰だったかしら」

加持「それを言われると痛いなぁ」

シンジ「はは…いいじゃないか、加持くんと弐号機の調子、最近いいみたいだし」

加持「さすがシンジさん。分かってるね」

レイ「あまり甘やかしては駄目よ、互換性の問題もあるんだから…」

シンジ「互換性か…ミサトちゃん、大丈夫かな…」

加持「大丈夫さ。俺の弐号機だって動かしたんだ」

シンジ「でもあの時は、加持くんもいたし…」

加持「乗ってる身としては、葛城の意思を強く感じたがね…」

シンジ「……」
391 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:43:00.60 ID:48W6ECl6o
ヒカリ「エントリー、スタートしました」

オペレータ「L.C.L.電荷」

ヒカリ「第一次接続開始」

レイ「どう、ミサトちゃん。零号機のエントリープラグは?」

ミサト「なんだか…変な感じです」

ヒカリ「違和感があるのかしら?」

ミサト「いえ、ただ、リツコの匂いがする…」

加持「それは……興味深いな」

ヒカリ「データ受信、再確認。パターングリーン」

オペレータ「主電源、接続完了」

オペレータ「各拘束具、問題なし」

レイ「了解。では、相互間テスト、セカンドステージへ移行」

ヒカリ「零号機、第2次コンタクトに入ります」
392 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:44:01.49 ID:48W6ECl6o
シンジ「どう?」

レイ「やはり初号機ほどのシンクロ率は、出ないわね」

ヒカリ「ハーモニクス、すべて正常位置」

レイ「でもいい数値だわ、十分ね」

レイ「これであの計画が遂行できる…」

ヒカリ「…ダミーシステムですか?綾波さんの前だけど、私は、あんまり…」

レイ「……納得は、私もしてないわ…」

レイ「それでも必要なのよ。戦うための、……」

ヒカリ「……綾波さん…?」

レイ「…いいえ、続けましょう…」


ヒカリ(……)
393 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:45:03.81 ID:48W6ECl6o
オペレータ「第3次接続を開始」

トウジ「セルフ心理グラフ、安定しています」

レイ「A10神経接続開始」

ヒカリ「ハーモニクスレベル、プラス20」

ミサト「!?…何これ、頭に入ってくる…直接…何か…」

ミサト「リツコなの…? 赤木リツコ? この感じ……違うの…?」
394 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:46:01.40 ID:48W6ECl6o
シンジ「これは……!?」

オペレータ「パイロットの神経パルスに異常発生」

オペレータ「パルス逆流」

マヤ「精神汚染が始まっています!」

レイ「まさか!このプラグ深度ではありえないわ!」

ヒカリ「プラグではありません、エヴァからの侵蝕です!」


ヒカリ「零号機、制御不能!」

レイ「全回路遮断、電源カット!」

ヒカリ「エヴァ、予備電源に切り替わりました」

オペレータ「依然稼働中」
395 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:47:00.71 ID:48W6ECl6o
シンジ「ミサトちゃんはっ?」

トウジ「回路断線、モニター不能!」

レイ「これは、拒絶…? 零号機が…!」

ヒカリ「だめです、オートエジェクション、作動しません!」

レイ「…まさか! ミサトちゃんを取り込むつもり?」

コントロールルームに手を伸ばす零号機。

シンジ「リツコちゃん、下がって!」

レイ(……!)

リツコ「……、…」

ヒカリ「零号機、」

シンジ「リツコちゃんっ!!」

ヒカリ「活動停止まで、後10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」



ヒカリ「零号機、活動を停止しました」

シンジ「パイロットの救出を! 急いで!」


シンジ「まさか、僕らを殺そうとした…? 零号機が…?」
396 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:48:04.66 ID:48W6ECl6o
シンジ「……この事件、前の暴走と関係があるの?リツコちゃんが精神的に不安定だったときの」

レイ「…今はまだ何も言えないわ。ただ、データを赤木リツコに戻して、早急に零号機との追試、シンクロテストが必要ね」

シンジ「……」

シンジ「もし零号機が……僕らの手に余るようなら、その時は考えなきゃならない。…よろしく頼むよ」

レイ「分かっているわ。碇三佐」



レイ(零号機が殴りたかったのは…私ね)

レイ(当然だわ。……これじゃ約束と違うもの)
397 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:49:02.39 ID:48W6ECl6o
ミサト「はっ……!」


ラジオ(TV)「それでは、次の万国びっくりさんは、何と、算数のできるワンちゃんの登場です!」

ラジオ(TV)「おお、それはすごい!」

ラジオ(TV)「ワン!」


ミサト「……またこの天井…」




トウジ「葛城ミサトの意識が戻った。汚染の後遺症はなし。何も覚えてないそうや」

シンジ「そう……」



ラジオ(TV)「はーい、私は元気にやってんだけど、世間では南沙諸島をめぐってのテロが…」



加持「パイロットの代用テストに…零号機の暴走か」

加持「こりゃ一波乱くるかな」
398 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 14:50:52.07 ID:48W6ECl6o
カヲル「予定外の使徒侵入。その事実を知った人類補完委員会による突き上げか…ただ文句を言うことだけが仕事とは…くだらない連中だよ」

葛城「切り札はすべてこちらが擁している。彼らにできることはない」

カヲル「だからといってじらすこともないだろう……今、ゼーレが乗り出すと面倒なことになる」

葛城「すべて、われわれのシナリオ通りだ。問題ない」

カヲル「零号機の事故は?少なくとも僕の予想を越える事態ではあったよ」

葛城「支障はない。リツコと零号機の再シンクロは成功している」

カヲル「……アダム計画はどうなんだい?」

ゲンドウ「順調だ。2%も遅れていない」

カヲル「では、ロンギヌスの槍は?」

葛城「予定通りだ。作業はリツコが行っている」




槍を運ぶ零号機。

リツコ「……」




拾四話分終わり
399 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:01:02.90 ID:48W6ECl6o
カヲル「第2、第3芦ノ湖か。これ以上増えない事を望むよ」

カヲル「昨日キール議長から、計画遅延の文句が来たよ。僕のところに直接ね」

カヲル「あれは相当苛ついていたな…仕舞いには君の名前も出して。解任を仄めかしていたよ」

葛城「……アダムは順調だ。エヴァ計画もダミープラグに着手している。連中の不満は何だ?」

カヲル「肝心の人類補完計画」

葛城「……」

カヲル「それが遅れているように見えるんじゃないのかい」

葛城「…全ての計画はリンクしている。問題はない」

カヲル「……綾波博士のことも?」

葛城「……」

カヲル「まあいいさ」

カヲル「…ところで、彼女はどうする?」

葛城「…手出し無用だ。いずれ真実に辿り着く」

カヲル「もうしばらくは、様子を見るか…」
400 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:02:10.26 ID:48W6ECl6o
アスカ「16年前、ここで何が始まったってのよ…」



謎のオバサン「私だ」

アスカ「ああ、あんたね」

オバサン「シャノンバイオ。外資系のケミカル会社。9年前からここにあるが、9年前からこの姿のままだ」

オバサン「マルドゥック機関と繋がる108の企業のうち、106がダミーだったよ」

アスカ「で…ここが107個目、ってわけね…」

オバサン「この会社の登記簿だ」

アスカ「…分かってるわよ。取締役でしょ?」

オバサン「もう知っていたか」

アスカ「知ってる名前ばかりだしね…マルドゥック機関。エヴァンゲリオン操縦者選出のために設けられた、人類補完委員会直属の諮問機関。組織の実体は未だ不透明」

オバサン「お前の仕事はネルフの内偵だ。マルドゥックに顔を出すのはまずいぞ」

アスカ「百も承知よ。何事も自分の目で確かめないと気が済まない質なの」
401 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:03:00.96 ID:48W6ECl6o
マヤ「…あの、加持くん、ちょっといい?」

加持「ん…?もちろんさ。珍しいな、マヤちゃんから話しかけてくれるなんて。…デートのお誘いかな?」

マヤ「うん…そうなんだけど…」


青葉「なァにィ〜〜〜〜ッ!??」

日向「うるさいな…っ!」


マヤ「いやっ、違うの、私じゃ、ないんだけど…友達がね」

加持「おっと…そりゃあ、残念だが。美人の頼みを断るわけにはいかないな。明日の昼でどうだい?」

マヤ「ありがとう…!助かるわ」

加持「いいさ…マヤちゃんとのデートは、後日俺から申し込むよ」


青葉「なァアにィ〜〜〜〜〜ッッッ!??」

日向「………」


ミサト「軽いやつ…」

リツコ「…? 彼、重そうよ」
402 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:04:00.61 ID:48W6ECl6o
ミサト「明日、お父さんに会わなきゃなんないのよ」

ミサト「何話せばいいと思う?」

リツコ「……なぜ私に聞くの?」

ミサト「…だって、いつも楽しそうにしてるじゃない。お父さんと話してるとき」

ミサト「ねぇ、お父さんって、どんな人?」

リツコ「…分からないわ」

ミサト「そう…」

リツコ「それより手、動かして。掃除が終わらないわ」

ミサト「……かっんじわるぅ〜い」

リツコ「……」

ミサト「しっかし……こうやって見ると不思議な感じよね…リツコが雑巾絞ったり、塵取り持ってたりするのって」

ミサト「料理とかも違う気がするし…家庭に入ってるイメージが沸かない?のよね」

リツコ「……」

リツコ「ミサトには負けるわ…」

ミサト「ぐっ!」
403 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:05:03.98 ID:48W6ECl6o
ヒカリ「ネクローシス作業、終了」

オペレータ「可逆グラフ、測定完了」

オペレータ「3機とも、シンクロ維持に問題なし」



シンジ「明日の結婚式、二次会まで行く?」

レイ「…もうそんな時期?考えてなかったわ」

シンジ「もう……仕事の虫なんだから」
404 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:06:00.39 ID:48W6ECl6o
レイ「……キヨミに、コトコに……明日のはコウジくんのだったかしら?」

シンジ「コウジと、ユミちゃんのだよ。一緒に内輪のパーティーも行ったじゃないか」

レイ「あれは碇くんが誘ってくれたから……」

シンジ「…………あ、アスカは今回は来るのかなあ?」

レイ「……ドレス、新しいの買わなきゃ…」

シンジ「…え?いつものでいいんじゃないの?似合ってるし」

レイ「アスカに、言われてるから…もうそのドレスは見飽きたって」

シンジ「そう…なの」

レイ「でも……どれも同じに見えて…」

レイ「碇くん、選んでくれない?」

シンジ「えっっっ」
405 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:07:00.95 ID:48W6ECl6o
レイ「三人とも、あがっていいわ」


レイ「お疲れさま」

加持「こうもテスト続きだと退屈だな」

リツコ「不謹慎ね」

加持「言葉のアヤだよ。もちろん平和が一番さ」

ミサト「………」



レイ「そう言えば、今日は元気ないわね、ミサトちゃん」

シンジ「ああ…明日なんだよ」

レイ「……お墓参りか…」
406 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:08:02.75 ID:48W6ECl6o
シンジ「ただいま」

加持「おかえりなさい」

シンジ「あれ? まだ寝てなかったの。明日デートなんじゃなかった?」

加持「昼からね。…シンジさんこそ、こんな遅くまで。残業かい?」

シンジ「ん? ん〜、うん、そんなトコロ…」

加持「……」

加持「はは〜ん。シンジさんもスミに置けないね」

シンジ「なっ何がっ?」

加持「アスカ先輩に報告だな」

シンジ「アッアスカは関係ないじゃないか」

加持「と、すると相手は綾波博士か」

シンジ「……」

加持「はは。冗談冗談、報告なんてしないよ」
407 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:09:04.97 ID:48W6ECl6o
シンジ「……ミサトちゃんは? 部屋?」

加持「…こんちご機嫌斜めみたいでね。帰ってから籠りっきりさ。…よほど父親に会うのが嫌らしい」

シンジ「嫌、って言うわけでもないんだよ…きっと。それが問題なんだろうね」



(葛城「お前の居場所はない」)

(葛城「よくやったなミサト」)

シンジ「ミサトちゃん?」

ミサト「!」

シンジ「開けてもいい?」

ミサト「だっ、駄目です、今…!き、着替えてますから!」

シンジ「クス……緊張しなくても大丈夫だよ、ミサトちゃん。自分でも言ってたじゃないか、お父さんは不器用なだけかもしれない、って」

ミサト「………」

シンジ「……案外、緊張してるのは向こうも同じかもしれないよ? 娘と何を話そうかって。ミサトちゃんがリードしてあげれば、少しは……」

ミサト「なっ、なんで私がリードしなきゃなんないんですかっ!」

ミサト「もういいですから!!寝てください!」
408 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:10:14.40 ID:48W6ECl6o
シンジ「…頑張ってね。ミサトちゃん」

シンジ「分かり合えなくてもいい…ただそれを確かめるのが大事なことなんだ」

シンジ「応援してるよ……おやすみ」


ミサト「…………」





加持「…で?綾波博士をどう口説いたんだ?食事?ショッピング?」

シンジ「いや……綾波とは、そういうんじゃないんだよ。ちょっと買い物に付き合っただけだよ」

加持「なーんだそうだったんだ、となると思うかい?」

加持「子どもじゃあないんだ。この時間までデートとなると……それ相応の進展を予想するね。帰りはもちろん送ってったんだろ?」

シンジ「………まったく」

シンジ(ちょっとは子どもらしくしてほしいよ…)
409 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:11:03.36 ID:48W6ECl6o
シンジ「じゃあ」

加持「行って」

ミサト「きます…!」

ペンペン「クギュウッ!」




スピーチ「三つの袋と言うものを心に…」

挿入歌「てんとう虫のサンバ」

司会者「では、しばしご歓談のほどを」
410 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:12:01.19 ID:48W6ECl6o
シンジ「綾波、飲み物取ってきたよ」

レイ「ありがとう……来ないわね、アスカ」

シンジ「……遅刻なんじゃないかな?案外忘れっぽいとこあるから。ガサツだし」

アスカ「だぁれがガサツ、ですって!?」

シンジ「うわっ」

レイ「来てたのね」

アスカ「今来たとこよ。たまたま仕事が立て込んでてね」

シンジ「どうだか……僕は2時間待たされたことがあるよ…」

アスカ「大〜昔のことを蒸し返してんじゃないわよ!くだらない男ねぇ」

シンジ「…そのくだらない男を待たせてたんだろ?」

アスカ「なんですってぇ!?」

レイ「…夫婦みたいよ、あなたたち」

シンジ・アスカ「だっ誰がこんな奴と!!」

レイ「ふふっ」
411 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:13:02.34 ID:48W6ECl6o
シンジ「……」

アスカ「……」


アスカ「…あら?レイあんた、ドレス新調したんじゃない。中々いい線いってるわよ」

レイ「……ああ、これは碇く」

シンジ「あっあっアスカのドレスも!すっごく似合ってるよね!!」

アスカ「何よ?今さら。当然じゃない」

シンジ「…………」
412 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:14:00.14 ID:48W6ECl6o
葛城「8年ぶりだな…2人でここに来るのは」

ミサト「……納骨に来て以来だから…たぶん、そう」


ミサト「…お父さん、怒ってる…?私が離婚に賛成したこと」

葛城「……昔の話だ」

ミサト「そうね……でも私はよく覚えてる。離れてからも、お母さん泣いてばかりだったわ。やっと自由になれたのに」

ミサト「そう思ってたのに…。今度は、病気で…」


ミサト「苦しんでるお母さんを見てるのは辛かった。鎮静剤を射っても、泣き叫んで…病院のベッドに縛り付けられたようなお母さんを見るのは…」

葛城「………」

ミサト「だからホッとしたの。遠くにいるはずのお父さんが…急に現れて、お母さんを拐っていったとき。……おじいちゃんとおばあちゃんは、大騒ぎだったけど」

ミサト「なにかしたんでしょう?…戻ってきたとき、お母さんはもう、体の痛みも心の痛みも感じていないようだった」

ミサト「…死ぬときも、まるで笑ってるみたいな顔で…」
413 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:15:02.92 ID:48W6ECl6o
葛城「……ミサト。母さんの心は、いつもお前と共にある」

葛城「肉体が滅んだとしても。…それは同じことだ」

ミサト「…………うん」


葛城「……時間だ。先に帰る」

ミサト「あ……お父さん!」

ミサト「あの、今日は嬉しかった。お父さんと話せて」

葛城「そうか…」
414 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:16:05.84 ID:48W6ECl6o
チェロを弾く加持


ペンペン「クゥ〜クッ…クゥゥゥ…」

加持「んん……結構覚えてるもんだな」

ミサト「……あんたそんなことまでできるの?」

加持「才能かな?なんてね……最初は下手だったんだ。先生にもボロクソ言われて…それで意地になってさ」

ミサト「……継続は力なり、か」

加持「パイロットには必要ない技術だし。すぐやめてもよかったんだが…」

ミサト「じゃあ、なんで続けたのよ」

加持「女の子にモテるから」

ミサト「……あんた、ほんとにそればっかね」
415 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:16:59.28 ID:48W6ECl6o
加持「それより、夕飯食べないか?待ってたんだ」

ミサト「? デートで、夜まで食べてくるんじゃなかったの?」

加持「本命は葛城だからな。舞い戻ってきたよ」

ミサト「ったく、もう……どこまで本気なんだか」

加持「本気さ。信じられないか?」

加持「それじゃあ……」
416 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:17:41.60 ID:48W6ECl6o
シンジ「うぅ…僕、ちょっとトイレ」

アスカ「とか言って、逃げんじゃないわよ!」

シンジ「逃げないよ!」


レイ「とばしすぎじゃない?このままじゃ碇くん、ほんとに倒れるわよ…」

アスカ「ふんっ!こんなのまだ序の口よ!」

レイ「変わらないわね…あなたのそういうところ。今度は碇くんをどうするつもりかしら?」

アスカ「……あんな姑息な手はもう使わないわよ」

レイ「でも、素面で言える? 碇くんに、好きって」

アスカ「ごほっ」

アスカ「なんでそういう話になるのよ?……なんなら、今回は譲ってあげたっていいのよ?いい具合に酔っぱらってるし」

レイ「遠慮しておくわ」
417 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:19:00.81 ID:48W6ECl6o
アスカ「……言っておくけど、長期戦に持ち込むつもりなら、無駄よ。あいつタオル一枚で出ていったって何もしなかったんだから!」

レイ「ふふ…さすが、一緒に暮らしてた人の言うことは違うわね」

レイ「でも駄目。私の出る幕じゃないわ」

アスカ「なんでよ。あいつのこと好きなくせに」

レイ「碇くんが好きなのはあなたよ、アスカ」

アスカ「……」

アスカ「……あんたはそれでいいわけ…?」

レイ「私の気持ちは…変わらないわ…」

レイ「碇くんのそばに居られれば、それで…」

アスカ「………」

アスカ「あんたって、昔っからそうね。ほんと、闘志が沸かないったらないわよ」


シンジ「ただいま……何?二人とも、ケンカ?」

アスカ「あんたがぜぇんぶ悪いのよっ!バカシンジ」

シンジ「うわっ、なんだよもう」
418 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:20:01.47 ID:48W6ECl6o
シンジ「松代土産?」

アスカ「そ。レイはラーメン好きでしょ?」

シンジ「だからって、なんで僕のまで…」

アスカ「貰っといて何ぶつぶつ文句言ってんのよ、いらないなら返しなさいよっ!」

シンジ「い…いらないとは言ってないだろ!まったく…すぐ怒るんだから…全然変わってないよ…」

アスカ「失礼ね!変わったわよ!!」

レイ「ふふ…ホメオスタシスとトランジスタシスね」

アスカ「何よそれ?」

レイ「今を維持しようとする力と変えようとする力。その矛盾する二つの性質を一緒に共有しているのが、生き物なのよ…」

シンジ「へぇ…」

レイ「そろそろおいとまするわ…仕事も残ってるし」

シンジ「えっ?」

アスカ「……また顔出しなさいよ?」

レイ「ええ。それじゃあ、また」

シンジ「うん…」
419 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:21:05.88 ID:48W6ECl6o
アスカ「いい年して、戻すんじゃないわよ」

アスカ「自分の限界くらい、知っときなさいよね!バカシンジ」

シンジ「うぅ……大きな声出さないでよ…」

アスカ「…ほんっと馬鹿ね…」

シンジ「……馬鹿バカ言わないでよ、もう…」

アスカ「…ふん。だったらシャキッとしなさいよ?もうすぐ三十路なんだから」

シンジ「……それはアスカもだろ…」

アスカ「なんか言った!?」

シンジ「な……なんでもないよ…ふぅ」
420 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:22:14.65 ID:48W6ECl6o
シンジ「もう一人で歩けるよ…ありがとう」

アスカ「ん。」

シンジ「アスカ……僕、変わったかな……?」

アスカ「……変わってないわよ。相変わらずバカ」

シンジ「そう、だよね……僕は馬鹿だ…」


シンジ「ミサトちゃんがね……僕らを守りたいって言ってくれたんだ。勇気を持って乗ってくれてる、加持くんも、リツコちゃんも…」

シンジ「なのに、僕はミサトちゃんたちを哀れんでるんだ…まだ子どもなのにって」

シンジ「でも本当に救いたいのはミサトちゃんたちじゃない、そうやって、人を哀れんでる自分自身だ」

シンジ「偽善なんだよ…!そうやって、自分だけが綺麗なふりをして…」

アスカ「………」

シンジ「……あの時、アスカと別れたときだって…」

シンジ「きっと誰でも良かった。僕の心を埋めてくれる人なら…だから怖かったんだ」
421 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:23:00.23 ID:48W6ECl6o
シンジ「僕は過去に囚われてる、」

シンジ「過去が、僕を人にすがらせる」

シンジ「すがった相手の魅力も、人格も、何も関係なく!」

シンジ「……中途半端が…一番だめなんだよ…こんな愚痴だって、」

シンジ「本当は「そんなことないよ」って言ってもらいたくて、優しくしてもらいたくて、言ってるんだ」

シンジ「でもアスカは違うから。僕にそんなこと言わないって、分かってるから…言うんだ」

アスカ「………」


シンジ「……僕は卑怯で、臆病で…ずるくて、弱虫で…っ」


アスカ「…………ほんと、バカね…」
422 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:24:02.05 ID:48W6ECl6o
加持「それじゃあ、キスするか? 俺と」

ミサト「……は?」

加持「そしたら分かるだろ。俺が……本気だって」

ミサト「なっ、何言ってんのよ!ふざけないで!」

加持「ふざけてなんかいないさ。葛城とキスしたいんだ」

ミサト「ど……どうしてよ……?」

加持「好きだから」

ミサト「…好きだからって、そんな…」

加持「葛城は嫌いか? 俺のこと」

ミサト「………嫌いじゃあ、ない、けど…」

加持「それとも、恐い?」

ミサト「こ、恐かないわよ…!」

加持「じゃ、いいじゃないか……目、つむって…」

ミサト「えっ……、わ、ちょ…!」
423 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:25:01.37 ID:48W6ECl6o
ガチャンッ


ミサト「!!!!!」バシンッ

加持「いてっ」


アスカ「ほら、着いたわよ……もー!立ってるくらい自分でできるでしょ!」

加持「……アスカ先輩」

アスカ「ああ、あんたね。……どうしたのよ、その頬」

加持「……別に」

ミサト「わっ、シンジさん…!大丈夫ですか!?」

アスカ「飲みすぎてノビてるだけよ。ほら加持!介抱する!」

加持「えー? 俺が?」

アスカ「つべこべ言わない!」

加持「へいへい…」
424 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:26:01.61 ID:48W6ECl6o
ミサト「あのアスカさん…もう遅いですし、泊まっていかれたらどうですか?お布団ならありますから…」

アスカ「ありがたいけど、却下。着替えがないし、明日も早いのよ」

ミサト「そうですか…」

アスカ「気持ちだけ貰っとくわ」

シンジ「…うぅん……」

アスカ「じゃあそのバカのこと、頼んだわよ」

加持「は〜い」

ミサト「お休みなさい」


ガチャン


加持「………するか? 続き」

ミサト「バカッ」

加持「あらら……」
425 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:27:02.13 ID:48W6ECl6o
老教師「えー、では、続いて女子」

老教師「赤木…おお? 赤木は、今日も休みか?」



ネルフ地下、セントラルドグマ

葛城「……」

リツコ「……」
426 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:27:59.97 ID:48W6ECl6o
アスカ「……だいぶ早かったじゃない?昼まで寝込むと思ってたのに」

シンジ「ふざけないでよ……!」

アスカ「心配してやってんのよ」

シンジ「アスカ……アスカは、どっちの味方なの…?ネルフ?それとも…」

アスカ「……今度はなんて言ってほしいのよ」

アスカ「特務機関ネルフ特殊監査部所属惣流アスカ? それとも、日本政府内務省調査部所属、惣流アスカって?」

シンジ「教えてよ……!」

アスカ「あんたはまだ知らなくていい。おとなしく作戦部長やってなさいよ」

シンジ「教えろ……!」カチャ

アスカ「……私を撃つ気? 馬鹿ね、できもしないのに」
427 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:28:52.73 ID:48W6ECl6o
シンジ「……なんだよ、分かんないよアスカ、どうして……っ」

アスカ「…………」

アスカ「………ハァ。まったく、タイミング悪いわね…あんた私を、信じられるの? 自分の意志もグラグラのくせに」

シンジ「…なんだよ、それ、どういう…」

アスカ「……あんたが囚われてる「過去」の、その正体を暴いてやろうってのよ…」

シンジ「正体…?」

アスカ「ついて来なさい」




シンジ「これは……!?」

シンジ「エヴァ?…いや、まさか…」

アスカ「…セカンドインパクトからその全ての要であり、始まりでもある…アダムよ」

シンジ「アダム? あの第一使徒がここに…?」

アスカ「あんたが考えているほど、ネルフは甘くないってことよ」

シンジ「…………」


拾伍話分終わり
428 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:31:02.10 ID:48W6ECl6o
加持「……あれ? シンジさん、これ、いつもと違う?」

シンジ「うん。カツオだし。綾波から貰ったんだ」

ミサト「ふぁ〜ぁ、おふぁようございます…」

加持「相変わらずギリギリだなぁ」

シンジ「今、よそうね」

ミサト「あっ、いいですいいです!自分でやりますから…」

ミサト「あっ熱っ!」ガタッ


シンジ「だっ大丈夫?ミサトちゃん」

ミサト「あはは…大丈夫です…ちょっとヤケドしただけ」

加持「すぐ冷やしたほうがいい、ほら」グイッ

ミサト「あ……」ジャー

加持「こういうのは初めが肝心だからな」
429 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:32:02.21 ID:48W6ECl6o
ミサト「ちょ……いつまで触ってんのよ!」

加持「は?」

ミサト「手よ!」

加持「手? 別にどってことないだろ、手くらい…」

ミサト「ひ、ひとりでできるから!離しなさいよっ!」

加持「……はいはい」

ミサト「……もう…!」


シンジ「…………」
430 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:33:01.44 ID:48W6ECl6o
シンジ「加持くん、ミサトちゃんとケンカでもしたの?」ボソッ

加持「いや、その逆というか……」


伝言メッセージの音


アスカ「あんたが行きたがってた店、予約取っといたから。今晩空けときなさいよ!」


加持「シンジさんこそ、どうなってんだ?そこんとこ……」

シンジ「いや、これは……」

加持「まったく。両手に花とは、羨ましいよ」


シンジ「………」
431 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:34:03.15 ID:48W6ECl6o
ヒカリ「B型ハーモニクステスト、問題なし」

オペレータ「深度調整数値をすべてクリア」

トウジ「センセ、なんか疲れてへんか?」

シンジ「ちょっとね」

レイ「アスカ?」

シンジ「ちっちちち違うよ!」

トウジ「………」

レイ「………」

シンジ「み、ミサトちゃんの様子は?」

ヒカリ「すごいですよ、ほら」

シンジ「?」

シンジ「………わ……ほんとだ…」
432 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:35:02.52 ID:48W6ECl6o
シンジ「聞こえる? ミサトちゃん」

ミサト「シンジさん!今のテストの結果、どうでした?」

シンジ「ふふ、おめでとう。新記録達成だよ!」






ミサト「それでねぇ。なにかってーとすぐ女の子、女の子でしょお?私もどうかと思ったんだけどサ。あんまり真剣に言うもんだから…ちょっとは付き合ってあげよっかな?って」

ミサト「でも格好つけたがりだから。なんでもかんでも、男の仕事ー!なんて言っちゃってさ、まぁ…気遣われて、悪い気はしないけど。そのくせドジ踏むから、格好つかないのよね〜」

リツコ「…彼、戦い方は悪くないわ」

ミサト「ね〜!?まぁね〜、あいつも、その点は馬鹿にできないっていうか、なんせ本場仕込みでしょ?ま…シンクロ率は私のほうが上だけど。安心してちゃ駄目よね。うん、頑張らなきゃ!」

リツコ「…私、帰るわ」

ミサト「えっ」

ミサト「ちょっとー!待ちなさいよ、リツコ!」
433 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:36:03.90 ID:48W6ECl6o
バスのアナウンス「次は、セイショウカノセ、次は、セイショウカノセ。古本、中古ソフトの店、バシャール前」

加持「……」

加持「…あっさり、抜かれちまったな…」

子供たち「ケッケッケ…」

加持「……はっ」
434 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:37:00.74 ID:48W6ECl6o
オペレータ「西区の住民避難、後5分かかります」

オペレータ「目標は微速で進行中。毎時2.5キロ」

レイ「遅刻よ」

シンジ「ごめん!…どうなってるの?富士の電波観測所は」

ケンスケ「探知してない、直上にいきなり現れたんだよ」

トウジ「パターンオレンジ、A.T.フィールド反応無し!」

シンジ「どういうこと?」

レイ「新種の使徒?」

ヒカリ「MAGIは判断を保留しています」


シンジ「参ったな…葛城司令のいないときに…」
435 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:38:02.96 ID:48W6ECl6o
シンジ「みんな聞こえる?目標のデータは送った通り。今はそれだけしか分からないんだ」

シンジ「慎重に接近して反応をうかがい、可能であれば市街地上空外への誘導も行う」

シンジ「先行する一機を残りが援護。いい?」

加持「先行は俺がやるよ。お姫様を守るのはナイトの役目だからな」

ミサト「ぶっ!だっ、誰がお姫様よ!??」

加持「別に誰とは言ってないが」

ミサト「……むうっ!」
436 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:39:13.55 ID:48W6ECl6o
ミサト「シンジさん!私に行かせてください!」

加持「おいおい、敵がどう出るか分からないんだぞ?」

ミサト「それはあんただって同じでしょ!同じリスクなら、より低いほうを選ぶ!シンクロ率一番は私なんだから!私が先行!」

シンジ「……分かった。先行はミサトちゃんでいこう」

シンジ「だけど本当に気を付けて。慎重にね」

ミサト「はいっ!」

加持「……ふぅ。弐号機、バックアップに回ります」

リツコ「零号機も、バックアップに」

シンジ「……」

レイ「…ミサトちゃん、ずいぶん前向きになったじゃない?」

シンジ「言い出したらきかないんだよ。それがミサトちゃんのいい所でもあるんだけど……帰ったらよく言って聞かせないと」

レイ「ふふっ…碇くん、お父さんみたいよ」
437 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:40:00.90 ID:48W6ECl6o
ミサト「加持くん、リツコ!そっちの配置は?」

加持「もう少しだ!」

リツコ「もう着くわ」


ミサト(………よしっ!姿が見えた!)

ミサト「接近し、様子を見ます!」

パレットを撃ち込む初号機


レイ「…消えた!?」

シンジ「何だ…!?」

トウジ「パターン青、使徒発見!初号機の真下や!」
438 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:41:02.93 ID:48W6ECl6o
ミサト「はっ!か、影が…!」

ミサト「何よこれ、体が……!」


シンジ「ミサトちゃん、逃げて!」

加持「葛城っ!」

リツコ「ミサト!」


ミサト「シンジさん!? どうなってるんですか!シンジさん!加持くん、リツコ…どこなの!? シンジさん!聞こえますか!? シンジさん!」

シンジ「プラグを強制射出!信号送って!」

ヒカリ「だめです!反応ありません!」

ミサト「シンジさんっ、シンジさん!」

シンジ「ミサトちゃん!」
439 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:42:02.68 ID:48W6ECl6o
シンジ「加持くん、リツコちゃん!初号機を救出!急いで!」

加持「っ!救出ったって…!」

リツコ「………!」


ヒカリ「また消えた!」

レイ「加持くん、気をつけて!」

加持「影!?」

加持「! おわっ…!!」



加持「街が…!」
440 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:43:03.98 ID:48W6ECl6o
シンジ「加持くん!リツコちゃん……後退して」

加持「なっ…」

リツコ「……まだ、初号機を救出していません」

加持「……」

シンジ「命令は、取り消すよ……戻ってきて」





ヒカリ「碇くん、辛いでしょうね」

レイ「…アンビリカルケーブルを引き上げてみたら、先はなくなっていたそうよ」

ヒカリ「それじゃあ…」

レイ「内臓電源に残された量はわずかだけど、ミサトちゃんが闇雲にエヴァを動かさず、生命維持モードで耐える事ができれば、16時間は生きていられるわ」

ヒカリ「……」
441 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:44:01.36 ID:48W6ECl6o
オペレータ「第二戦車小隊、配置完了」

オペレータ「了解、現在位置のまま待機」

オペレータ「サブレーザー、回線開きます。情報送る」

オペレータ「確認、C回線にて発信」

ケンスケ「国連軍の包囲、完了しました」

シンジ「影は?」

トウジ「動きなしや。直径600mを超えたところで停止したまま。……地上部隊なんて役に立つんか?」

ケンスケ「プレッシャーかけてるつもりなんだろ、俺たちに」

シンジ「……」
442 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:45:06.08 ID:48W6ECl6o
加持「俺が……あの時止めていれば……」

リツコ「結果は同じよ。立場が逆になるだけ」

リツコ「ミサトは自分で行くと言ったんだから…それはあの子の責任よ」

加持「だが…!」

リツコ「…もし落ちたのがあなただったら」

リツコ「ミサトはあなたを救う方法を考えたはずよ」

加持「………」


シンジ「その通りだよ…今はミサトちゃんを救う方法を考えよう」

シンジ「それに…ミサトちゃんに行けと言ったのは僕だ。責任は僕にある」

シンジ「だから、加持くんが自分を責める必要はないんだよ…」

加持「……」

シンジ「ミサトちゃんを助けて、またみんなでご飯を食べよう」
443 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:46:22.13 ID:48W6ECl6o
ミサト「眠る事がこんなに疲れるなんて、思わなかった…」

ミサト「やっぱり真っ白か…レーダーやソナーが返ってこない。空間が広すぎるんだわ…」

ミサト「生命維持モードに切り替えてから12時間…私の命も後4、5時間か…お腹空いたな…」




シンジ「じゃあ、あの影の部分が?」

レイ「そう、使徒の本体。直径680メートル、厚さ約3ナノメートルのね。その極薄の空間を、内向きA.T.フィールドで支え、内部はディラックの海と呼ばれる虚数空間」

レイ「多分、別の宇宙につながっているんじゃないかしら…」

シンジ「あの球体は?」

レイ「本体の虚数回路が閉じれば消えてしまう。上空の物体こそ、影に過ぎないわ」

シンジ「初号機を取り込んだ、黒い影が目標か…」

加持「そんな…どうすれば…」
444 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:47:04.96 ID:48W6ECl6o
ミサト「水が…!濁ってきてる……浄化能力が落ちてきてるんだわ…!」

ミサト「うっ!…生臭い!血?血の匂い…!」

ミサト「……嫌っ!ここは嫌!なんでロックが外れないのよっ!」

ミサト「開けて!ここから出して!シンジさん、どうなってるの…?シンジさん!加持くん!リツコ!…レイさん………お父さん…」

ミサト「お願い、誰か、助けて…」
445 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:48:27.67 ID:48W6ECl6o
シンジ「エヴァの強制サルベージ?」

レイ「現在、可能と思われる、唯一の方法よ」

レイ「992個、現存する全てのN2爆雷を、中心部に投下」

レイ「タイミングを合わせて残存するエヴァ2体のA.T.フィールドを使い、使徒の虚数回路に1000分の1秒だけ干渉するわ」

レイ「その瞬間に、爆発エネルギーを集中させて、使徒を形成するディラックの海ごと破壊する」

シンジ「でもそれじゃあエヴァの機体が…ミサトちゃんがどうなるか…!救出作戦とは言えないよ」

レイ「…作戦は初号機の機体回収を最優先とします。たとえボディーが大破したとしても」

シンジ「な…っ!」

シンジ「なに言ってるんだよ!綾波!」

レイ「……今初号機を失うわけにはいかないのよ、碇三佐」

シンジ「そんな…!ミサトちゃんだって!同じじゃないか、そんな作戦は認められない!」

レイ「…パイロットの補充はきくわ」

シンジ「……綾波…!」
446 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:49:03.36 ID:48W6ECl6o
レイ「あなたも分かってるはずよ…冷静になって」

シンジ「僕は……!冷静だよ、…綾波こそおかしいんじゃないのか!?」

シンジ「………そこまで初号機にこだわる理由って何、エヴァってなんなんだよ!」

レイ「…あなたに渡した資料が全てよ」

シンジ「嘘だ…!」

レイ「………」

レイ「…碇くん、私を信じて」


レイ「これ以降、本作戦についての一切の指揮は、私が執ります」

レイ「関空には便を廻すわ。航空管制と空自の戦略輸送団にも連絡を」


シンジ「………」

シンジ(セカンドインパクト。補完計画。まだ…まだ僕の知らない秘密があるんだ…)
447 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:50:01.71 ID:48W6ECl6o
ミサト「…誰?」


ミサト「誰?」

ミサト「…葛城ミサト」

ミサト「それは私よ!」

ミサト「あなたは私よ。人は自分の中にもう一人の自分を持っている。自分というのは常に2人でできているものなの」

ミサト「2人?」

ミサト「実際に見られる自分とそれを見つめている自分。葛城ミサトという人物だって何人もいる」

ミサト「私の心の中にいるもう一人の葛城ミサト、碇シンジの心の中にいる葛城ミサト、加持リョウジの中のミサト、赤木リツコの中のミサト…お父さんの中のミサト」

ミサト「みんなそれぞれ違う葛城ミサトだけど、どれも本物の葛城ミサト。あなたはその他人の中の葛城ミサトが恐いのよ」

ミサト「人から嫌われるのが恐いんでしょ?」

ミサト「弱い自分を見るのが恐いのよ」
448 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:51:00.81 ID:48W6ECl6o
ミサト「よい子にならなきゃいけないの」

ミサト「パパがいないから。ママを助けて私はよい子にならなきゃいけないの」

ミサト「でも、ママのようにはなりたくない。パパがいないとき、ママは泣いてばかりだもの」

ミサト「泣いちゃだめ、甘えちゃだめ。だから、よい子にならなきゃいけないの。そしてパパに嫌われないようにするの」


ミサト「……でも父はいなくなった。私を置いて」

ミサト「だから恨んだ。お母さんと同じに…」




ミサト「悪いのは誰?」

ミサト「悪いのはお父さんよ!私を捨てたお父さん!」


ミサト「悪いのは私よ!」
449 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:52:03.48 ID:48W6ECl6o
ミサト「疑問?」

シンジ「君たちをエヴァに乗せてること…」


ミサト「で、自分を大切にしろ、って言うんでしょう?」

ミサト「みんなそうなのよ。そうして、仕事に、自分の世界に行ってしまうんだわ。私を置き去りにしたまま」


ミサト「お父さんと同じなのよ」

ミサト「辛い現実から逃げてばかりなのよ」

ミサト「辛い現実?私のことか…」



ミサト「嘘よ!私は必要とされてる!」
450 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:53:02.82 ID:48W6ECl6o
日向「付き合ってくれないかな」

シンジ「僕も君が大切だよ」

加持「好きだから…キスしよう」

葛城「よくやったな、ミサト」


ミサト「お父さんが、私の名前を呼んだのよ。あのお父さんが誉めてくれたのよ!」

ミサト「みんなも優しくしてくれる。私が必要なのよ!」

ミサト「その喜びを反芻して、これから生きていくんだ?」

ミサト「その言葉を信じてれば、これからも生きていけるわ!」

ミサト「自分をだましつづけて?」

ミサト「みんなそうよ、誰だってそうやって生きてる」

ミサト「自分はこれでいいんだ、と思いつづけている。でなければ生きていけないのよ」

ミサト「私が生きていくには、この世界には辛い事が多すぎる」

ミサト「そう。辛かったら逃げてもいいのよ」

ミサト「そうよ。嫌なことから逃げ出して、何が悪いって言うのよ!」
451 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:54:02.07 ID:48W6ECl6o
日向「こないだの騒ぎで、妹が怪我しちゃって」

加持「両手に花とは、羨ましいよ」

葛城「ここにお前の居場所はない!」


ミサト「嫌!聞きたくない!」

ミサト「ほら、また逃げてる」

ミサト「楽しいことだけを数珠のように紡いで生きていられるはずが無いのよ、特に私はね」

ミサト「楽しいこと見つけたの。楽しいこと見つけて、そればっかりやってて、何が悪いのよ!」

ミサト「楽しいことだけ、やっていたいの」
452 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:55:04.27 ID:48W6ECl6o
トウジ「エントリープラグの予備電源、理論値ではそろそろ限界や」

ヒカリ「プラグスーツの生命維持システムも危険域に入ります」

レイ「12分予定を早めましょう」

レイ「…ミサトちゃんが生きている可能性が、まだあるうちに」





ミサト「お父さん、私はいらない子なの?お父さん!」

ミサト「自分が追い出したくせに」


女「父親の実験だか何かのせいで母親が犠牲になったっていうじゃない」

女「恐ろしいわよねえ、自分の奥さんを実験台にするなんて…」

ミサト「違う!お母さんは…笑ってた…」
453 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:56:31.42 ID:48W6ECl6o
シンジ「立派じゃなくてもいい」

加持「誰にでもできることじゃないさ」

シンジ「頑張ってね……応援してるよ」

葛城「お前の心と共にある」



ミサト「ここは嫌……一人はもう、嫌…!」



ミサト「保温も、酸素の循環も切れてる…寒い…だめだ……スーツも限界…ここまでね…。もう、疲れた…ぜんぶ…」

光が体を包む

ミサト「…、……!」



ミサト「お母さん…!?」



(ほら、こうするの…)

(あなたにもできるわ……)
454 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:57:05.08 ID:48W6ECl6o
ケンスケ「エヴァ両機、作戦位置」

ヒカリ「A.T.フィールド、発生準備よし」

レイ「了解」

トウジ「爆雷投下、60秒前」


使徒に亀裂。


加持「何が起こってるんだ!?」

シンジ「状況は?」

トウジ「分からん!」

ヒカリ「全てのメーターは、振り切られています!」

レイ「まだ何もしていないのに!」

シンジ「まさか、ミサトちゃんが!」

レイ「ありえないわ!初号機のエネルギーは、ゼロなのよ!」

影を突き破って現れる手

オペレータ「おおっ!」
455 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:58:01.89 ID:48W6ECl6o
咆哮する初号機

加持「……これが、エヴァなのか…?」

リツコ「……」


レイ「何て物を……何て物をコピーしたの?私たちは…」

シンジ(エヴァがただの第1使徒のコピーなんかじゃないのは分かる…)

シンジ(でも、ネルフは使徒をすべて倒した後、エヴァをどうするつもりなんだ…?)


降り立つ初号機

レイ「……!」

加持「……、…」

リツコ「……」
456 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 15:59:03.41 ID:48W6ECl6o
シンジ「ミサトちゃん…ミサトちゃん!ミサトちゃん!」

シンジ「ミサトちゃん、大丈夫!?ミサトちゃん!」


ミサト「…ただ会いたかったの、もう一度…」



加持「…はぁ」

加持「よかった……」

リツコ「…あなたもそんな顔、するのね」

加持「ん?はは…葛城には内緒で頼むよ」

リツコ「ええ…」
457 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 16:00:02.79 ID:48W6ECl6o
レイ「私は今日ほど、このエヴァが恐いと思ったことはありません」

レイ「本当にエヴァは私たちの手に負えるのでしょうか」

レイ「私たちは、憎まれているのかもしれません……エヴァに」


レイ「碇三佐の疑心も、そろそろ限界です」

葛城「そうか、今はいい…」

レイ「……彼らがコアの秘密を知ったら……許してもらえないでしょうね」

葛城「……」
458 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 16:01:02.10 ID:48W6ECl6o
リツコ「今日は寝ていて。後は私たちで処理するわ」

ミサト「うん…でも、もう大丈夫よ?ほら」ブンブン

ミサト「うっ…痛…!」

加持「強がるなよ、寝てろって」

リツコ「…あなたも、格好がつかないわね…」

ミサト「ぐっ…」

加持「? 何の話だ?」

ミサト「あっあんたには関係ない話よ!」

リツコ「ふふ…」

ミサト「…もうっ!分かったから、作業に行きなさいよ!」

加持「はいはい、お姫さま」

リツコ「また来るわ」
459 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 16:02:08.79 ID:48W6ECl6o
ドアが閉まる

ミサト「………もう。バカにして…」

ミサト「………」


ミサト「取れないわね…血の匂い」




拾六話分終わり
460 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/29(日) 16:03:08.31 ID:48W6ECl6o
続きは土曜
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2020/12/02(水) 20:41:51.75 ID:KaV0xIhhO
加藤純一(うんこちゃん) Youtubelive
リスナー制作
『アンダーテイル』リメイクゲーム
『加藤純一物語』配信

『視聴者が600時間かけて作りし
加藤純一TALEをやる』
(20:23〜放送開始)


https://youtube.com/watch?v=_OaV_qQsq0I
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/03(木) 01:50:29.02 ID:/sRc7TGbo
乙ー
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2020/12/04(金) 11:19:26.10 ID:KANWBNK5O
加藤純一(うんこちゃん) Twitch

APEX(PC) シーズン7
ランクマ Part24

『プラチナ1行きます』[プラチナU]
(7:10〜放送開始)


http://www.twitch.tv/kato_junichi0817
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/12/05(土) 07:40:18.01 ID:G4Ro6tBs0
期待
465 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:01:02.45 ID:bn13i2TRo
キール「今回の事件の唯一の当事者である初号機パイロットの直接尋問を拒否したそうだな、碇三佐」

シンジ「はい。彼女の情緒はとても不安定な状態です。今ここに立つことが良策とは思えません」

委員「では聞こう、代理人碇三佐」

委員「先の事件、使徒がわれわれ人類にコンタクトを試みたのではないのかね?」

シンジ「…分かりかねます。被験者の報告からはそれを感じ取れません。イレギュラーな事件だと推定されます」

委員「彼女の記憶が正しいとすればな」

シンジ「……記憶の外的操作は認められません」

委員「エヴァのACレコーダーは作動していなかった。確認はとれまい」

委員「使徒は人間の精神、心に興味を持ったのかね?」

シンジ「それは…。使徒に心の概念があるのか、人間の思考が理解できるのか、まったく不明ですので……返答できかねます」
466 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:02:07.42 ID:bn13i2TRo
委員「今回の事件には、使徒がエヴァを取り込もうとしたという新たな要素がある。これが予測されうる第13使徒以降とリンクする可能性は?」

シンジ「これまでの例から、使徒同士の組織的なつながりは否定されます」

委員「さよう。単独行動であることは明らかだ。これまではな」

シンジ「…それは、どういうことなのでしょうか?」

キール「君の質問は許されない」

シンジ「…はい」

キール「以上だ。下がりたまえ」

シンジ「はい」




キール「どう思うかね、葛城君?」

葛城「使徒は知恵を身につけ始めています。残された時間は…」

キール「後わずか、と言うことか」
467 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:03:16.44 ID:bn13i2TRo
看護師「12号室のクランケ?」

看護師「例のE事件の救急でしょ?ここに入院してからずいぶん経つわね」

看護師「なかなか難しいみたいよ、あの怪我」

看護師「まだ小学生なのに」

看護師「今日もきてるんでしょ、あの子」

看護師「そうそう。週2回は必ず顔出してるのよ、妹思いのいいお兄さんよねぇ」

看護師「ほんと?今時珍しいわね、あんな男の子」
468 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:04:05.38 ID:bn13i2TRo
葛城「リツコ、今日はいいのか?」

リツコ「はい。明日、綾波博士のところへ行きます。明後日は学校へ」

葛城「…学校はどうだ」

リツコ「問題ありません」

葛城「そうか…ならいい」




マヤ「起立、礼、着席!」

老教師「あ、ああ…今日の休みはいつもの赤木と、青葉か。後、今日は小池先生がお休みで、4時限目の現国が自習となります」

ミサト「青葉くん、どうかしたの?」

日向「さぁ…またどっかで路上ライブじゃないかな……あいつのことだし」

老教師「日向!」

日向「は、はい!」

老教師「後で、赤木にプリントを届けておくように」

日向「はい!」
469 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:05:19.06 ID:bn13i2TRo
トウジ「とにかく、第一支部の状況は、無事なんやな!?かまわん!計算式やデータ誤差はMAGIに判断させる!」



カヲル「消滅!?確かなのか!?第2支部が」

ケンスケ「はい、すべて確認しました。消滅です」



シンジ「…なんてこと……」

トウジ「上の管理部や調査部は大騒ぎ、総務部はパニックや!」

シンジ「それで、原因は?」

レイ「未だ分からず。手がかりはこの静止衛星からの映像だけで、後は何も残ってないの」

ヒカリ「10セコンド、8、7、6、5、4、3、2、1、コンタクト」

シンジ「……ひどい」

ヒカリ「エヴァンゲリオン四号機ならびに半径89キロ以内の関連研究施設はすべて消滅しました」

レイ「数千の人間を道連れにね」

シンジ「………」
470 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:06:12.30 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「…タイムスケジュールから推測して、ドイツで修復したS2機関の搭載実験中の事故と思われます」

ヒカリ「予想される原因は、材質の強度不足から設計初期段階のミスまで、32768通りです」

シンジ「妨害工作の線も…あるか」

トウジ「せやけど爆発やなく消滅なんやろ?つまり、消えた、と」

レイ「多分、ディラックの海に飲み込まれたんでしょうね、先の初号機みたく」

シンジ「じゃあS2機関も?」

レイ「……夢は潰えたわね」

レイ「訳の分からないものを無理して使った…その報いね」

シンジ(…それはエヴァも同じだ……)
471 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:07:04.81 ID:bn13i2TRo
シンジ「…残った参号機はどうするの?」

レイ「ここで引き取ることになったわ。米国政府も第1支部までは失いたくないみたいね」

シンジ「そんな。参号機と四号機はあっちが建造権を主張して強引に作ってたんじゃないか!いまさら危ないところだけうちに押し付けるなんて、虫がよすぎるよ」

レイ「あの惨劇の後じゃ誰だって弱気になるわ…」

シンジ「…それじゃあ、起動試験はどうするの?例のダミーを?」

レイ「…これから決めるわ」
472 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:08:02.40 ID:bn13i2TRo
レイ「試作されたダミープラグです。赤木リツコのパーソナルが移植されています」

レイ「…ただ、人の心、魂のデジタル化はできません。あくまでフェイク、擬似的なものです」

レイ「パイロットの思考の真似をする、ただの機械です」

葛城「信号パターンをエヴァに送り込む。エヴァがそこにパイロットがいると思い込み、シンクロさえすればいい」

葛城「初号機と弐号機にはデータを入れておけ」

レイ「まだ問題が残っていますが」

葛城「…エヴァが動くことが先決だ」

レイ「はい…」
473 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:09:02.44 ID:bn13i2TRo
葛城「機体の運搬はUNに一任してある。週末には届くだろう」

葛城「後は君のほうでやってくれ」

レイ「はい。調整ならびに起動試験は、松代で行います」

葛城「…テストパイロットは?」

レイ「ダミープラグはまだ危険です。現候補者の中から、」

葛城「4人目を選ぶか……」

レイ「はい。一人、速やかに……コアの準備が可能な子供がいます」

葛城「…すまないな」

レイ「いいえ…」


レイ「……リツコちゃん?」

リツコ「…はい」

レイ「お疲れさま。もう上がっていいわよ」

リツコ「はい」

葛城「……」
474 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:10:02.45 ID:bn13i2TRo
マヤ「起立!礼!」



ミサト「さってぇと〜ご飯ご飯♪」

ミサト「…って、あら?」

マヤ「葛城さん……ずいぶん大きなお弁当ね」

ミサト「そ、そうよね、これは…」

加持「悪いな、葛城。玄関で取り違えちまったみたいだ」

ミサト「げっ」

加持「これで元通り、っと」
475 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:11:02.68 ID:bn13i2TRo
女子「お弁当の交換〜!?」

男子「イヤ〜ンな感じ〜!」


ミサト「ちっ、違うのよ!?これは…!」

女子「いいわよね〜、家ではシンジさん、学校では加持くん」

女子「どっちか譲りなさいよ〜!」

女子「どっちが本命なのよお!」

ミサト「やっ…やあねえ!そんなんじゃないわよ!」


日向「………」
476 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:12:03.26 ID:bn13i2TRo
シンジ「どうしたの?…改まって」

レイ「松代での参号機の起動実験、テストパイロットは4人目を使うわ」

シンジ「4人目?フォースチルドレンが見つかったの?」

レイ「昨日ね」

シンジ「…マルドゥック機関からの報告は受けてないよ」

レイ「正式な書類は明日届くわ」

シンジ「それで……選ばれた子って?」

レイ「……この子よ」

シンジ「……そんな、よりによって」

レイ「候補者を集めて保護してあるのだから…仕方ないわよ」

レイ「話しづらいでしょうけど……頼むわね」
477 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:13:03.31 ID:bn13i2TRo
シンジ「…加持くんや、リツコちゃんは大丈夫だと思う、エヴァに乗ることにプライドも持ってるし。でも…ミサトちゃんは…」

シンジ「加持くんやリツコちゃんとは、パイロットとして出会った、初めから戦闘員として。でも…今回は一般人…クラスメイトだ。今まで守っていた対象。それに…先の事件もある」

シンジ「一番エヴァに対する恐怖心が強いのはミサトちゃんだから……辛いんじゃないかな。誰かを巻き込むのは」


レイ「…これ以上辛い思いは、させたくない?」

シンジ「それは……もちろん」

レイ「でも、私たちにはそういう子供たちが必要なのよ、みんなで生き残るために」

シンジ「……分かってるよ」

レイ「あなたが弱気だと、全体の士気に関わるわ……頑張ってね、碇作戦部長」

シンジ「……」

シンジ「うん……」
478 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:14:02.53 ID:bn13i2TRo
男子「じゃぁな〜」

女子「明日ね〜」


マヤ「……日向くん、これ」

日向「? プリント?」

マヤ「赤木さんのよ。先生に頼まれてたでしょ?」

日向「ああ、赤木のか。ありがとう、わざわざ」


日向「……でも女の子の家に一人でってのは、ちょっとなぁ……」

マヤ「そ!それなら私が一緒に…!」

日向「葛城さん!…これから時間ある?」

マヤ「……」

ミサト「リツコの家?いいわよ」
479 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:15:03.28 ID:bn13i2TRo
ミサト「リツコ〜!入るわよぉ!」

日向「い、いいの? 黙って上がって…」

ミサト「いいのよぉリツコは。防犯意識ゼロなんだから」

日向「そ、そういう問題じゃ…」

ミサト「あら?リツコ?リツコ〜?いないみたいね…」

日向「なっ」

日向「なんだ、この部屋は!」
480 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:15:56.75 ID:bn13i2TRo
ミサト「……勝手にイジると、さすがのリツコも怒るんじゃない?」

日向「いいや。これは……放っておけないよ。ゴミだけでも片付ける…!」

ミサト「…マメねぇ……」

日向「……イメージと違ったよ。赤木って…もっと完ペキな奴かと」

ミサト「意外と抜けてるとこあるわよ?リツコって」

日向「へぇ…」


ミサト「…あら。噂をすれば」

リツコ「……何してるの?」

日向「ごめん、勝手に片づけたよ。ごみ以外は触ってない」

日向「それと、これ。休んでた間のプリント」

リツコ「あ…」

リツコ「ありがとう…」
481 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:17:15.86 ID:bn13i2TRo
ミサト「しっかし、意外だったわね〜。リツコが照れるなんて。珍しいもん見たわ」

日向「えっ?真顔じゃなかった?」

ミサト「チッチッチ〜よ!あの頬の赤みは照れよ、照れ!」

日向「そ、そうかな…」

ミサト「ま。私とリツコくらいの仲になんないと、分っかんないでしょおね〜」

日向「…葛城さん、変わったね。なんていうか…明るくなった」

ミサト「……」

ミサト「そうかもね。シンジさんや…みんなが支えてくれて。エバにも慣れてきたし…」

ミサト「ちょっとは変われた、かな…」

日向「……」
482 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:18:05.46 ID:bn13i2TRo
カヲル「街。人の作り出したパラダイスだね」

葛城「かつて楽園を追い出され、死と隣り合わせの地上と言う世界に逃げるしかなかった人類」

葛城「そのもっとも弱い生物が、弱さゆえ手に入れた知恵で作り出した自分達の楽園だ」

カヲル「自分を死の恐怖から守るため、自分の快楽を満足させるために自分達で作ったパラダイスか…」

カヲル「この街がまさにそれだね…自分達を守る、武装された街」

葛城「…敵だらけの外界から逃げ込んでいる臆病者の街だよ」

カヲル「臆病なほうが長生きできる。それでいいじゃないか」

カヲル「第三新東京市、ネルフの偽装迎撃要塞都市、遅れに遅れていた第7次建設も終わる。いよいよ、完成だね…」
483 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:18:59.16 ID:bn13i2TRo
カヲル「四号機の事故、委員会にどう報告するつもりだい?」

葛城「原因不明だ」

カヲル「事実の通り、か……。ここにきて、大きな損失だね…」

葛城「…S2機関のデータはドイツに残っている」

葛城「ここと初号機が残っていれば、ことは成せる…」

カヲル「どうかな…委員会は血相を変えていたよ」

葛城「……」

カヲル「死海文書にはない事件だ……ゼーレも、慌てて行動表を修正しているだろうね」

カヲル「……老人たちにはいい薬か…」
484 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:20:03.55 ID:bn13i2TRo
シンジ「アスカ!」

アスカ「あら、ネルフの作戦部長様が、息を切らしてなんのご用?」

シンジ「…地下のアダムとマルドゥック機関の秘密、教えてよ。…知ってるんでしょ?」

アスカ「……何の話よ?」

シンジ「とぼけないでよ!」

アスカ「…あんたバカ?ここをどこだと思ってんのよ…まず落ち着きなさい」

シンジ「…落ち着いてられないよ…!消滅した第2支部に、移設される参号機…」

シンジ「そして都合よくフォースチルドレンが見つかる……こんなのおかしいよ。誰かが、裏で…!」

アスカ「……」

アスカ「…これだけは言えるわ。マルドゥック機関は存在しない。影で操っているのは、ネルフそのものよ」

シンジ「ネルフそのもの…葛城司令が?」

アスカ「そ。…あとは自分でやんなさいよ。コード707」

シンジ「707…ミサトちゃんの学校?」

アスカ「ったく。こっちは命懸けだってのに…べらべら喋らせてくれちゃって」

アスカ「コーヒーくらい奢んなさいよね?」
485 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:21:00.98 ID:bn13i2TRo
ミサト「シンジさん…どこかしら。レイさんも携帯使えばいいのに……よりによって私に頼むなんて……」

ミサト「あれっ?加持くんと……リツコ…?」


アナウンス「第三管区の形態移行ならびに指向兵器試験は予定通り行われます。技術局3課のニシザイ博士、ニシザイ博士、至急開発2課までご連絡ください」

ミサト(……って、なんで隠れてるのよ私!!)


聞き耳を立てるミサト
486 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:22:02.72 ID:bn13i2TRo
加持「せっかくここの迎撃システムが完成するのに、祝賀パーティーの一つも予定されていないとは、ネルフってお堅い組織だねぇ」

リツコ「司令がああいう人だもの……」

加持「リッちゃんはどうなのかな?」

リツコ「私にそんな権限はないわ」

加持「君の気持ちが知りたいんだよ」

リツコ「人がたくさんいるのは…苦手」

加持「どうして?」

リツコ「分からないわ」

加持「人を寄せ付けないのは……悲しい恋をしたからかな?」

リツコ「なぜそう思うの」

加持「…涙の通り道にほくろのある人は…一生泣き続ける運命にあるからさ」

加持「ま…俺なら、そんな思いはさせないが」
487 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:23:02.45 ID:bn13i2TRo
ミサト「……………」


ミサト(なんだ…)


ミサト(私ばっかり本気だったのか………馬鹿みたい)



シンジ「あれ?ミサトちゃん」

ミサト「……シンジさん…」

シンジ「どうしたの?」

ミサト「あ……レイさんが…、明日からの出張の打ち合わせだって…シンジさんに」

シンジ「ああ…そっか。ありがとう」

ミサト「それじゃあ…」

シンジ「……?」
488 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:24:05.08 ID:bn13i2TRo
シンジ「ミサトちゃん、どうかしたのかな…」

アスカ「あんたホントに、鈍くてバカね」

アスカ「先いってなさいよ。こっちは私が渇入れとくから」

シンジ「ちょっと、あんまり手荒なマネは…」

アスカ「するわけないでしょ。いいから、行きなさいよ」





ミサト「……」

アスカ「ちょっとー!葛城ミサトっ!」

ミサト「…?」

アスカ「時間あるでしょ?付き合いなさいよ」
489 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:25:05.15 ID:bn13i2TRo
ミサト「……………」

アスカ「……ビクつくんじゃないわよ。取って食やしないわよ」

ミサト「…あの、どこ行くんですか……?」

アスカ「行けば分かるわ」

ミサト「……」





ミサト「なんですか?この、…草……?」

アスカ「ハーブよ!あんた何にも知らないのねぇ」

アスカ「シンジの作った料理に、時々乗ってるでしょ?パセリとかバジルとか」

ミサト「…シンジさんのために作ってるんですか?」

アスカ「べっつに。ただの趣味よ」

アスカ「でも…まぁそうね、あいつの料理、まあまあ悪くない味でしょ?こういうの持ってくと、喜ぶのよね…店で買ってるとバカにならないからって」

アスカ「だから!あたしはシンジに料理を作らせて、食べる!「自分のため」にやってんのよ!」

ミサト「自分の……ために」
490 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:26:02.21 ID:bn13i2TRo
アスカ「あんたはどうなのよ?」

ミサト「えっ」

アスカ「なんで乗ってるのよ?エヴァに」

アスカ「違うか。乗せられてんのね…あいつの口車に」

ミサト「そんな、シンジさんは!いつも優しくしてくれてます…!」

アスカ「あんたのためじゃないわよ?あいつは誰にでも優しいの、優しい自分が好きなのよ。「自分のため」にやってんのよ、あいつも」

アスカ「誰かのために…なんて思ってるなら、今すぐエヴァを降りるのね。押しつぶされて、その内自分を無くすわよ」

ミサト「私は……!」

ミサト「今いる場所を、失いたくないんです…シンジさんや、ネルフのみんな…加持くんや、リツコ…学校の友達も」

アスカ「………」

ミサト「エバに乗るのは恐い…だけど、みんなを…居場所を失いたくないから…!だから、誰かのためじゃない!…自分自身の望みのために、乗ってるんです…!」


アスカ「…上出来ね」

ミサト「え…?」

アスカ「誰かのためにやるってのは…聞こえはいいけど、心情的には見返りを求めるものよ。自分のためにやってることなら…やり遂げれば、それで満足できる」
491 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:27:01.94 ID:bn13i2TRo
アスカ「変なこと聞いて悪かったわね。…あんた向いてるわよ、エヴァのパイロットに」

ミサト「あ……」

ミサト「ありがとう、ございます…」

アスカ「バカ。お礼なんていらないのよ、こっちも「自分のために」やってんだから。あんたに潰れられたら後味悪いのよ」

ミサト「……ふふ、アスカさんって」

アスカ「なによ?」

ミサト「思ってたより、真面目ですね」

アスカ「……」

電話の音

アスカ「はい、もしもし」



アスカ「シンジからよ。今から、シンクロテストですって」
492 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:28:09.47 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「プラグ深度は3.2で固定。L.C.L.濃度は現状を維持。ハーモニクスレベルはマイナス1.2、1.5、1.6、1.8、1.9、限界指数は0.2。 データはレベル3を消去。以下はMELCHIORに保存されます」

レイ「やはり間違いないわね…。ミサトちゃんのシンクロ率、落ちてきてる」

シンジ「どういう事?」

レイ「何とも言えないわ。ただ、先の事件のとき何かがあったんでしょうね。あるいは…精神的な問題が生じたか」

シンジ(アスカ…何か変なこと言ったのかな…?)

レイ「何か思い当たる?」

シンジ「いや……これでますます、参号機のパイロットの件、話しづらくなったなと思って…」

レイ「…本人には明日、正式に通達されるわよ」

シンジ「うん…」
493 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:29:02.10 ID:bn13i2TRo
マヤ「きりーつ、気を付け、礼!」


放送「2年Aクラスの日向マコト、日向マコト、至急、校長室まで」


日向「…何だ?」

青葉「なんかやったのか?お前」

日向「するわけないだろ」

ミサト「…?」




日向「日向マコト、入ります!」

レイ「……日向マコトくんね?」
494 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:30:02.33 ID:bn13i2TRo
マヤ「葛城さん、ちょっと…いい?」

ミサト「?」

ミサト「いいけど…」



マヤ「ごめんね。こんなとこに呼び出して。ちょっと気になることがあって…」

ミサト「気になることって?」

マヤ「エヴァ参号機のこと」

ミサト「……エバ参号機?」

マヤ「そう。アメリカで建造中だったっていう……完成したんでしょ?」

ミサト「…知らないわ。エバ参号機なんて…」

マヤ「…隠さなきゃならない事情も分かるけど、お願い、教えて!」

ミサト「ほんとに聞いてないのよ!」
495 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:31:02.79 ID:bn13i2TRo
マヤ「…じゃあ、松代の第2実験場で起動試験をやるって噂も知らないの……?」

ミサト「知らないわよ。何?松代でやるの?」

マヤ「そうらしいわ。…それでなんだけど、パイロットはまだ決まってないんでしょう?」

ミサト「分からないわよ、そんな…」

マヤ「私にやらせてほしいのよ!ねぇ、葛城さん。葛城さんからも頼んでくれない?シンジさんに。乗りたいのよ、エヴァに!赤木さんの…みんなの力になりたいの!」

ミサト「ほ、ほんとに知らないのよ…そんなこと言われても」
496 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:32:03.23 ID:bn13i2TRo
マヤ「じゃあ、四号機が欠番になったって言う話も?」

ミサト「何それ?」

マヤ「……ほんとにこれも知らないのね……。第2支部ごと消滅したって、母さんのところは大騒ぎだったのに」

ミサト「消滅…?」

マヤ「…跡形も残らなかったそうよ」

ミサト「…シンジさんからは、何も聞いてない…」

マヤ「……」

マヤ「ごめんね、変なこと聞いて。…でも、羨ましかったんだ……好きな人と、支え合えるのって…」

ミサト「好きな人?」

マヤ「な!なんでもない!それじゃ…!」


ミサト「………」
497 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:33:15.73 ID:bn13i2TRo
老教師「われわれはセカンドインパクトと言うこの世の地獄から再び立ち上がったのです。今、年々子供の数も減ってきています」

日向「遅れて、すいません…」

老教師「話は聞いてる。席に着きなさい。あー、これからの時代をになう君たち若い世代が…」



日向「………」

青葉「何だよ?そんなにこってり絞られたのか?」

日向「…別に。何でもない」

青葉「………?」
498 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:34:02.54 ID:bn13i2TRo
放送「下校の時刻です。教室に残っている生徒は、早く帰りましょう」


青葉「なんだ、帰らないのか?」

日向「当番だからな」

青葉「サボっちゃえよ。十分綺麗だろ?」

日向「お前じゃないんだよ…」

青葉「マメだねぇ…」

日向「……」

日向「…葛城さん、変わったよな」

青葉「ん?ああ…明るくなった」

日向「……」

青葉「おいおい、どうしたんだよ?」

日向「いや……最近、パイロット同士の絆…みたいなものを感じることがあってさ」

日向「加持……あいつも、いけすかないけど、葛城さんを支えてるんだよな…」

青葉「……」
499 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:35:03.42 ID:bn13i2TRo
青葉「なに弱気になってるんだよ、お前はお前だろ? そりゃ、赤木や加持みたいにはいかないさ」

青葉「お前のいいところで勝負していけよ。何を選ぶかは、葛城次第だろ?」

青葉「それに、だ」

日向「それに?」

青葉「諦めろったって、無理な話だろ?それなら無理矢理にでも、前向いて行くしかないじゃないか」

日向「……それも、そうだな…」

青葉「しっかりしろよ?」

日向「はは…まさかお前に説教される日がくるとはな」

青葉「…時々思うけど、お前って俺をなめてないか?」

日向「少しな」

青葉「おいおい」

日向「ははは」
500 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:36:02.60 ID:bn13i2TRo
加持「おっ…アスカ先輩」

アスカ「加持? 今忙しいから。用があるならそこで待ってて」

加持「…相変わらず仕事、仕事か。そんな調子で、シンジさんに愛想つかされないか心配だね…」

アスカ「馬鹿。子どもが大人の問題に首突っ込んでんじゃないわよ」

加持「どれどれ…」

アスカ「こら!」

加持「…………」

加持「…これは決定事項?」

アスカ「……明日、あんたたちにも正式に通達されるわ」

加持「…この人選の根拠は?」

アスカ「…根拠かどうかは知らないけど。こいつの妹が難しい怪我してて、その優先治療が約束されたそうよ、ネルフで…」

加持「……」

アスカ「ちょっと、加持!どこ行くのよ!」
501 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:37:02.79 ID:bn13i2TRo
ミサト「見返りを求めない、か……」

ミサト「私は…加持くんとどうなりたいのかしら…」




台所で奮闘するマヤ

マヤ「……、…!」



校庭で佇む日向

日向「……」




拾七話分終わり
502 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:41:02.26 ID:bn13i2TRo
加持「…よっ。ずいぶん早いな」

日向「……」

加持「時間はあるんだ…ちょっと遠回りしてかないか?」

日向「……」

日向「俺は男だぞ…?」






ミサト「あの、加持くんは…?」

シンジ「ああ、なんか用事があったみたいでね。朝早く出てったよ」

ミサト「…用事って?」

シンジ「さぁ…ミサトちゃんも聞いてないの?」

ミサト「いえ…」

シンジ「そうか…昨日帰ってきてからも元気なかったし…どうかしたのかな…」

ミサト(……リツコのとこかしら…)
503 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:42:02.70 ID:bn13i2TRo
ミサト「あの、」
シンジ「ところで、」

ミサト「あっ…」

シンジ「あはっ。いいよ先に」

ミサト「あの…四号機が欠番っていう噂、本当ですか?何か事故があって爆発したって」

シンジ「…うん、本当だよ。四号機はネルフ第二支部と共に消滅したんだ。S2機関の実験中に…」

ミサト「……」

シンジ「ごめんね。伝えるのが遅れて…でもここは大丈夫だよ?3体ともちゃんと動いてるし、パイロットもスタッフも優秀なんだから」

ミサト「…でも、アメリカから参号機が来るって。松代でやるって聞きました、起動実験」

シンジ「うん…ここは4日ほど留守にするけど、その間のことはアスカに頼んでるし、心配ないよ」

ミサト「でも実験は…」

シンジ「大丈夫だよ、ミサトちゃん。綾波も立ち会ってくれるんだし、それに…」

ミサト「パイロットは…?パイロットはどうなるんですか?」

シンジ「……」
504 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:43:02.70 ID:bn13i2TRo
シンジ「その、パイロットなんだけど…」


チャイムの音


ミサト「あっ、私がでます」


ミサト「えっ」

マヤ「おっおはようございます!今日は、シンジさんにお願いがあって来ました……!」

シンジ「えっ、え?」

マヤ「私を……私をエヴァンゲリオン参号機の、パイロットにしてください!」

シンジ「………」
505 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:44:02.09 ID:bn13i2TRo
レイ「じゃあまだミサトちゃんは知らないの?」

シンジ「なかなか言い出すきっかけがなかったんだよ…それに、最近なんだか少し暗いんだ、ミサトちゃん」

レイ「…父親役が板についてきたと思ったら、もう弱音?まだまだ先は長いのよ」

シンジ「それはそう…なんだけど…」


シンジ「それで……いつ呼ぶの?パイロット」

レイ「そうね…明日になるわ。準備もいろいろあるし」

シンジ「…日向くんが自分で言ってくれたりは、しないかな?」

レイ「……期待しないほうがいいわ。人に自慢するほど、喜んでなかったもの。入院中の妹を本部の医学部に転院させてくれっていうのが彼の出した例の条件だったのよ」
506 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:45:01.83 ID:bn13i2TRo
加持「……妹さんが、入院してるそうだな」

日向「……」

加持「良くないのか?」

日向「……関係ないだろ」

加持「…あるさ。これからはパイロット同士だ」

日向「!」

日向「知ってるのか……葛城さんは?」

加持「葛城はまだ知らない。恐らくな」
507 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:46:05.77 ID:bn13i2TRo
日向「……それで?降りろって言いに来たのか?悪いけど俺は…!」

加持「「覚悟はできてる」?」

日向「……! そうだよ」

加持「……」

加持「……はぁっ。どうにも……駄目だな。俺は」

日向「…?」

加持「いや……すまない。嫌味のつもりはないんだ、…ただ……」

加持「仲間が死ぬのは見たくない…」

日向「……!」
508 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:47:03.16 ID:bn13i2TRo
加持「パイロットになるかどうかは…それぞれが決めることだ。決めたんなら……俺にあれこれ言う資格はない」

加持「覚悟結構。死ぬ気でやらなきゃいけないのは事実だ…。全人類とパイロット、天秤はどうあっても人類に傾く」

加持「ただ俺個人としては……仲間に死なれると後味が悪い」

加持「それに……葛城も悲しむしな…」

日向「……!」

加持「それだけ、言いに来たんだ」

日向「……」

日向「…分かった」


加持「…ま。ただでさえ少ないパイロットだ、これからよろしく頼むよ」

日向「ああ…」

加持「……」

加持「…治るといいな、妹さんの怪我…」

日向「……?ああ…」
509 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:48:01.67 ID:bn13i2TRo
マヤ「あ〜!きっと変な子だと思われたわよね?でも、居ても立ってもいられなくて……シンジさん、上に掛け合ってくれると思う??」

ミサト「どうかしらねぇ…」

マヤ「予備としてでもいいから使ってくれないかしら。やる気ならあるのになぁ…」

ミサト「……あ、」

マヤ「ちょっと葛城さん、聞いてる?」

ミサト「聞いてる聞いてる」


ミサト(加持くん…私より先に出たはずなのに…)


教室の入口、笑いあう女子と加持
510 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:49:02.85 ID:bn13i2TRo
青葉「さーて、飯メシ…あれ?マコトは?」

男子「さっき出てったよ」

青葉「ふぅん……」

青葉(……)




リツコ「…日向くん」

日向「ああ……赤木か。どうしたんだ?こんなところで」

リツコ「……」

日向「……操縦のコツでも教えに来てくれたのか?…知ってるんだろ、俺が乗るって」

リツコ「ええ…」

日向「……知らないのは葛城さんだけか」

リツコ「そうなの?」

日向「たぶんな」
511 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:50:02.14 ID:bn13i2TRo
日向「……赤木ってさ」

日向「……死にそうになったことってあるか?エヴァに乗ってて」

リツコ「……」

日向「いや……ごめん、こんなこと聞いて。赤木ってパイロットになってもう長いんだろ?」

リツコ「ええ」

日向「……」

日向「加持にさ…言われたんだ、死ぬ覚悟はしていい……でも死ぬな、って……」

日向「無茶言うよな…赤木には分かるか?」

リツコ「……」
512 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:51:01.10 ID:bn13i2TRo
リツコ「……私が、死にそうになったとき、ミサトは泣いてたわ」

リツコ「……私は、人のために死ねればいいと、思ってたけど……」

リツコ「その時は、ミサトを悲しませたくないと思った」

リツコ「だから、加持くんの言ってることは…分かるわ」

日向「……」

日向「はは…葛城さんはみんなに愛されてるんだな…」

リツコ「? あなたもでしょ…?」

日向「…!」

日向「その通りだ…」

日向「よろしく頼むよ、これから」




教室の窓から、マヤ

マヤ「………」
513 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:52:02.09 ID:bn13i2TRo
レイ「遅れること2時間。ようやく到着ね」

シンジ「いくら慎重にって言っても限度があるよ…!こんなに待たせるなんて」

レイ「デートのときは黙って待ってたんでしょ?」

シンジ「……」





老教師「でありまして、これが世に言うセカンドインパクトであります」

老教師「私はそのころ根府川に住んでいたのですが、南極大陸の溶解に伴う水位の上昇により、今では海の底になってしまいました…」


(日向「付き合ってほしい…」)

(日向「葛城さんの支えになりたいんだ」)

日向「……」
514 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:53:03.80 ID:bn13i2TRo
マヤ「ごめんね葛城さん。いつもなら加持くんと一緒に帰ってるのに…」

ミサト「い…いいのよぉあんなやつ!どうせ帰ってもいるんだから。マヤちゃんとは外でしか話せないじゃない。…それで、何?悩み事って」

マヤ「……」

ミサト「……また、エバのこと?」

マヤ「ううん、それはもういいの…」

マヤ「いいえ…よくは、ないんだけど……今日は赤木さんのことで」

ミサト「リツコのこと?」

マヤ「うん…赤木さんと、日向くんって……付き合ってるのかな…?」

ミサト「ぶっ!!」

ミサト「は!?なんて?」

マヤ「二人、付き合ってるんじゃないかって。…だって、お昼休み、とっても仲良さそうにしてたのよ?」

マヤ「…日向くん、笑ってたし…」

ミサト「……」
515 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:54:02.77 ID:bn13i2TRo
マヤ「確証はないんだけど……日向くんって、赤木さんのことが好きなんじゃないかしら…」

ミサト「…う〜ん」

ミサト(これは…リツコの赤面事件は伏せといたほうがいいわね…)

ミサト(それに……日向くんが好きなのはたぶん、まだ私だし……)

ミサト「大丈夫よ!日向くんが好きなのはリツコじゃないって!」

マヤ「……どうしてそう言えるの?」

ミサト「う……ちょっとガサツで、ほんのちょっとズボラなくらいがタイプらしいから。リツコじゃないわよ」

マヤ「なんでそんなこと知ってるの?」

ミサト「かっ加持くんに聞いたのよ!」

マヤ「そっかぁ……加持くんか…」

ミサト「……」
516 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:55:04.02 ID:bn13i2TRo
マヤ「加持くん……家で、何か赤木さんのこと言ってない?」

ミサト「なんで?」

マヤ「だって……最近よく赤木さんに声かけてるのを見るから…」

ミサト「き…気にしすぎよぉ!同じエバのパイロットなんだし…それに、あいつは女の子なら誰彼かまわずじゃない」

マヤ「そうだけど…」

マヤ「赤木さんは、綺麗だし…何でもそつなくこなすし」

ミサト「……」

マヤ「優しいから…」

マヤ「加持くんも、本気になっちゃうんじゃないかと、思って……」

ミサト「……」

ミサト「…そうね…」

ミサト「リツコは、いい子よね…」
517 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:56:02.24 ID:bn13i2TRo
ミサト「ねぇ…加持くん」

加持「なんだ?」

ミサト「………」

(マヤ「赤木さんは、綺麗だし…」)

ミサト「…さ、参号機のことって聞いてる?新しいパイロットの話とか」

加持「…さぁ、どうだかね…」

加持「なんにせよ、少ないパイロットだ。仲良くやるさ…」

ミサト「…………」

加持「……ん?」

加持「葛城…?」
518 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:57:02.71 ID:bn13i2TRo
アスカ「ふーっ!さっぱりしたっ!お風呂、空いたわよ」

加持「あ……先輩」

アスカ「なによ、あんたたち…まだくっちゃべってんの?スッとろいわねぇ」

アスカ「さっさと片付けて、さっさと風呂入って、寝る!明日も早いんだから」

ミサト「か、加持くん、先に…」

アスカ「加持!あんたは最後!レディーファーストよ」

加持「へーいへい」

アスカ「ミサト!とっとと入っちゃいなさい!」

ミサト「はっはいっ!」
519 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:58:02.13 ID:bn13i2TRo
ミサト「……アスカさん、もう寝ました?」

アスカ「…まだ起きてるわよ」

ミサト「………」

アスカ「…なによ。言いたいことがあんなら言いなさいよ」

ミサト「……加持くん、って…どんな子でした?向こうで…」

アスカ「加持?唐突ね……あんたあいつが気になるの?」

ミサト「気になるっていうか…最近」

アスカ「……」

ミサト「よく…分からなくて」

アスカ「……あいつはあいつよ。私の口から言ったって、それは私の中の加持でしかない。気になるんなら、自分で見つけなさいよ……あいつがあんたにとっての、何なのか」

ミサト「そう……ですよね…やっぱり」
520 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:59:02.44 ID:bn13i2TRo
アスカ「それにしても…ふぅ〜ん?あんたがねぇ…」

ミサト「…な、なんですか……」

アスカ「べつに。聞かれるんだったらあんたの父親のことだと思ってたから。拍子抜けしたのよ」

ミサト「……お父さんのことは…いつか、聞きます…副司令とかに」

アスカ「ゲッ……あのホモに関わると、ロクなことないわよ…?」

ミサト「? ホモ?」

アスカ「いや……なんでもないわ」

ミサト「……」

ミサト「…アスカさんにとってのシンジさんって、何なんですか…?」

アスカ「……それが分かりゃあ、苦労しないわよ」

ミサト「ふふっ…同じですね」

アスカ「バーカ。こっちは腐れ縁。あんたたちなんてまだペーペーよ」

アスカ「…ほら、お喋りはおしまい。もう寝なさい」

ミサト「はーい」
521 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:00:01.88 ID:bn13i2TRo
アナウンス「参号機、起動実験まで、マイナス、300分です」

アナウンス「主電源、問題なし」

アナウンス「第二アポトーシス、異常無し」

アナウンス「各部、冷却システム、順調なり」

アナウンス「左腕圧着ロック、固定終了」

レイ「了解。Bチーム作業開始」

アナウンス「エヴァ初号機とのデータリンク、問題なし」

レイ「これだと即、実戦も可能だわ」

シンジ「そう……」

レイ「…複雑そうね」
522 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:01:01.57 ID:bn13i2TRo
シンジ「…この機体が納品されたら、エヴァは全部で4機になる…」

レイ「…その気になれば世界を滅ぼせる戦力ね……」

シンジ「……」

レイ「パイロットの件…ミサトちゃんには話したの?」

シンジ「実験が終わったら……話すよ」

アナウンス「フォースチルドレン、到着。第2班は、速やかにエントリー準備に入ってください」
523 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:02:02.81 ID:bn13i2TRo
マヤ「ねぇ……赤木さん、お弁当、一緒に食べない?ちょっと作りすぎちゃって…」

リツコ「…いただくわ」

マヤ「良かった!お肉は苦手だって聞いてたから、お野菜中心にしたのよ」

ミサト「あのぉ〜…私もいい?」

マヤ「葛城さん?…でもいつもは…」

ミサト「今日、シンジさんいなくて。お弁当…失敗しちゃったのよね」マルコゲ

リツコ「あきれた…」

マヤ「……」



マヤ「…参号機って、もう日本に到着したの?」

ミサト「うん…昨日着いたみたいよ」

マヤ「いいなぁ。誰が乗るのかしら…日向くんかな?今日休んでるし」

ミサト「まさかぁ!」

リツコ「………」
524 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:03:02.52 ID:bn13i2TRo
オペレータ「エントリープラグ、固定完了。第一次、接続開始」

オペレータ「パルス送信。グラフ正常位置。リスト、1350までクリア。初期コンタクト、問題なし」

レイ「了解。作業をフェイズ2へ移行」

オペレータ「オールナーブリンク、問題なし。リスト、2550までクリア。ハーモニクス、すべて正常位置」

オペレータ「絶対境界線、突破します」


突破直後、異変。


レイ「実験中止、回路切断!」

オペレータ「だめです、体内に高エネルギー反応!」

レイ「まさか…」

レイ「使徒!?」
525 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:04:02.30 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「松代にて、爆発事故発生」

オペレータ「被害、不明!」

カヲル「救助、および第3部隊を直ちに派遣!戦自が介入する前にすべて処理するんだ」

トウジ「了解!」

ケンスケ「事故現場に未確認移動物体を発見」

トウジ「パターンオレンジ、使徒とは確認できん」

葛城「…第一種、戦闘配置」

ケンスケ「総員、第一種戦闘配置!」

トウジ「地、対地戦用意!」

ヒカリ「エヴァ全機、発進!迎撃地点へ緊急配置!」

オペレータ「空輸開始は20を予定」
526 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:05:01.54 ID:bn13i2TRo
ミサト「松代で事故?そんな、じゃあ、シンジさん達は!?」

リツコ「分からないわ。連絡が取れない」

ミサト「そんな、どうすれば…」

加持「……今俺らが心配したってしょうがない。無事を祈るしかない……まずは目先の問題だ」

ミサト「…でも…使徒相手に、私たちだけで…」

リツコ「今は葛城司令が、直接指揮を執っているわ」

ミサト「お父さんが?」
527 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:06:01.93 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「野辺山で映像を捉えました。主モニターに廻します」


職員「おおっ…」

カヲル「…やはりこれか」

葛城「活動停止信号を発信。エントリープラグを強制射出」

ヒカリ「だめです、停止信号およびプラグ排出コード、認識しません」

葛城「パイロットは?」

トウジ「呼吸・心拍の反応はありますが、おそらく…」

葛城「…エヴァンゲリオン参号機は現時刻をもって破棄。目標を第拾参使徒と識別する」


トウジ「しかし!」

葛城「予定通り野辺山で戦線を展開、目標を撃破しろ」
528 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:07:03.23 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「目標接近!」

トウジ「全機、地上戦用意!」

ミサト「えっ?まさか、使徒…?これが使徒なの?」

葛城「…そうだ。目標だ」

ミサト「目標って……これはエバじゃないの…」

加持「…乗っ取られたのか、使徒に……!」

ミサト「やっぱり、人が…子供が乗ってるんじゃ…!同い年の…」

加持「………っ」

加持「二人とも、下がれ!ここは俺がやる」

ミサト「加持くん!?」

加持「援護を頼む!」

加持(…足、動きを封じて、エントリープラグだけでも…!)

加持「だぁああっ!」

(アスカ「こいつの妹が、難しい怪我してて…」)

加持「くっ…!」

ミサト「加持くんッ!!」
529 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:08:03.53 ID:bn13i2TRo
トウジ「エヴァ弐号機完全に沈黙!」

ヒカリ「パイロットは脱出、回収班向かいます」

ケンスケ「目標移動、零号機へ」

葛城「リツコ、近接戦闘は避け、目標を足止めしろ。今初号機をまわす」

リツコ「了解」

リツコ(乗っているのは、彼…)

照準を合わせるリツコ

突如、襲いかかる参号機

リツコ「あぁ…っ!」

ヒカリ「零号機、左腕に使徒侵入!神経節が侵されて行きます!」

葛城「左腕部切断。急げ!」

ヒカリ「しかし、神経接続を解除しないと!」

葛城「切断だ!」

ヒカリ「…はい!」

リツコ「ひっ…!」
530 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:09:02.71 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「零号機中破、パイロットは負傷」

ミサト「そんな…」

葛城「目標は進行中。後20で接触する。聞こえるな?…ミサト」

ミサト「……!」


葛城「お前がやるんだ」


ミサト「……でも」

ミサト「でも、目標って言ったって…!」



ミサト「人が乗ってるんじゃないの…?」

ミサト「同い年の子供が…!」

葛城「……」

咆哮する参号機
531 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:10:03.72 ID:bn13i2TRo
ミサト「エントリープラグ…やっぱり、人が乗ってる…!」

ミサト「あっ!」

初号機を締め上げる参号機

ミサト「はっ、ぁ、う…っ!」


トウジ「生命維持に支障発生!」

ヒカリ「パイロットが危険です!」

カヲル「いけない、シンクロ率を60%にカットだ!」

葛城「待て!」

カヲル「しかし!このままではパイロットが…!」

葛城「……ミサト、なぜ戦わない」

ミサト「……!」
532 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:11:02.60 ID:bn13i2TRo
ミサト「だって、だって人が乗ってるのよ、お父さん!!」

葛城「…そいつは使徒だ。われわれの敵なんだ」

ミサト「でも…そんなの、できないわよ…!…助けなきゃ…人殺しなんてできない!!」

葛城「お前が死ぬぞ!」

ミサト「…いいわよ、人を殺すよりはいい!死んだほうがマシよ!!」

葛城「………!」

葛城「パイロットと初号機のシンクロを全面カットしろ」

ヒカリ「カットですか?」

葛城「そうだ。回路をダミープラグに切り替えろ!」

マヤ「しかし、ダミーシステムはまだ問題も多く、…綾波博士の指示もなく!」

葛城「このままではパイロットが死ぬ!急ぐんだ!」

ヒカリ「はい…!」
533 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:12:01.83 ID:bn13i2TRo
ミサト「はぁっ、は…!」

ミサト「なに…? 何をしたの、お父さん!」


トウジ「信号、受信を確認」

ヒカリ「官制システム切り替え完了」

オペレータ「全神経、ダミーシステムへ直結完了」

オペレータ「感情素子の32.8%が不鮮明、モニターできません」

葛城「構うな…システム開放、攻撃開始」
534 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:13:02.59 ID:bn13i2TRo
参号機を捩じ伏せる初号機

ヒカリ「これが、ダミープラグの力なの…?」

オペレータ「システム正常!」

オペレータ「さらにゲインがあがります!」

参号機の頭部を踏み潰し、身体を抉る

ヒカリ「ひっ!」



ミサト「やめてよ!!!!!」

ミサト「お父さん、お願い、やめてよ、こんなのやめさせて!!!!!」

ミサト「嫌…!止まってよ、止まれ、止まれ、止まれ、止まれ!止まれ!」

エントリープラグが軋む

ミサト「はっ!これは…!」


ミサト「やめて!!!!嫌っ!やめてぇっ!!!!!!!!!!!!!!」



ケンスケ「エ、エヴァ参号機、あ、いえ、目標は、完全に、沈黙しました…」
535 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:14:03.28 ID:bn13i2TRo
男「こっちにもいたぞーっ!生存者だ!息はある!急いで救護を廻してくれ!」

男「そうだ。レコーダーのプラグは、ペースト作業終了後、すべて、焼却処分にしろ!」


シンジ「生きてる……。…アスカ?」


男「いいから!…の封鎖を解除しろ!」


アスカ「……良かったわね、命があって」

シンジ「綾波は…?」

アスカ「…あんたよりは軽傷よ。まったく…心配させんじゃないわよ、バカシンジ」

シンジ「…はっ!…エヴァ参号機は!?」

アスカ「……使徒、として処理されたそうよ。初号機に」

シンジ「そんな……」


男「……は破棄だ!ベークライトを注入してくれ」

男「地下800mの…」

シンジ「……僕、まだミサ
536 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:14:52.74 ID:bn13i2TRo
男「こっちにもいたぞーっ!生存者だ!息はある!急いで救護を廻してくれ!」

男「そうだ。レコーダーのプラグは、ペースト作業終了後、すべて、焼却処分にしろ!」


シンジ「生きてる……。…アスカ?」


男「いいから!…の封鎖を解除しろ!」


アスカ「……良かったわね、命があって」

シンジ「綾波は…?」

アスカ「…あんたよりは軽傷よ。まったく…心配させんじゃないわよ、バカシンジ」

シンジ「…はっ!…エヴァ参号機は!?」

アスカ「……使徒、として処理されたそうよ。初号機に」

シンジ「そんな……」


男「……は破棄だ!ベークライトを注入してくれ」

男「地下800mの…」

シンジ「……僕、まだミサトちゃんに何も話してない…」
537 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:16:02.96 ID:bn13i2TRo
(通信)

シンジ「ミサトちゃん…?」

ミサト「シンジさん…!良かった。無事だったんですね…?」

シンジ「ごめん……ミサトちゃん、僕は……君に伝えなきゃいけなかったのに、こんなことに…」


ミサト「シンジさん…私は…私は、人を…!お父さんが、私、嫌だって、…やめてって頼んだのに…!」

シンジ「ミサトちゃん、ごめん、本当に…」

ミサト「シンジさん……?」

ヒカリ「エントリープラグ回収班より連絡。パイロットの生存を確認」


ミサト「生きてる!?」


男「了解。変形部はレーザーで切断」

男「L.C.L.の変質サンプルは最優先で…」
538 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:17:02.39 ID:bn13i2TRo
シンジ「あの参号機のパイロットは…フォースチルドレンは…」


女「付着している生体部品は破棄処分、熱処理を準備!」

ミサト「え…?」



シンジ「…ミサトちゃん?…ミサトちゃん、ミサトちゃん…!ミサトちゃん!」

ミサト「嫌、」


(絶叫)


拾八話分終わり
539 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:21:01.69 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「…初号機の連動回路、カットされました」

カヲル「射出信号は?」

ヒカリ「プラグ側からロックされています。受信しません」

トウジ「聞いとるか?…ああでもせなんだら、お前がやられとったんやぞ!」


ミサト「そんなの関係ない……」


トウジ「それでも、それが事実や」

ミサト「………」


ミサト「そんなこと言って…これ以上私を怒らせないでよ…」

ミサト「初号機に残されている後185秒、これだけあれば、本部の半分は壊せる…!」
540 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:22:02.17 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「今の彼女なら、やりかねませんね」

ヒカリ「ミサトちゃん、話を聞いて!」

ヒカリ「葛城司令の判断がなければ、みんな死んでいたかもしれないのよ!」

ミサト「関係ない、そんなの」

ヒカリ「ミサトちゃん……!」


ミサト「関係ないって言ってるでしょ……!」


ミサト「殺そうとしたのよ…!?日向くんを、初号機が……私の手が!!」




葛城「お前ではない」

ミサト「な……」

葛城「あの少年を殺そうとしたのは私だ」

ミサト「……っ」
541 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:23:02.90 ID:bn13i2TRo
葛城「お前は死を選んだ。私はダミープラグを」

葛城「初号機を動かしたのはダミープラグだ」

ミサト「……!」

ミサト「そんなの……!そんなの関係ないわよ!!乗ってたのは私でしょ!?」

葛城「お前は戦うことを放棄したんだ」

ミサト「違うわよっ!!!」

葛城「……」

葛城「L.C.L.圧縮濃度を限界まで上げろ」

ヒカリ「ええっ?」

葛城「…やってくれ。ここを破壊されては困る…」

ミサト「まだ直結回路が残っ…がはっ!」

ミサト「チクショウ…チクショウ…チクショウ…」
542 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:24:02.13 ID:bn13i2TRo
作業員「ライトブレストの溶解処理、完了しました」

作業員「体液の洗浄は予定通り、30から始めます」

作業員「第6パーツは熱処理されます。エリア内の作業員は待避してください」

レイ「…もういいの?」

シンジ「仕事ができれば、問題ないよ」

シンジ「それに、休んでられないよ。こんな非常時に…」

シンジ「ミサトちゃんは…?」


レイ「…あの後、レーザーカッターで非常ハッチを切断。強制排除されたらしいわ」

シンジ「……参ったな…、今回ばかりは」
543 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:25:02.22 ID:bn13i2TRo
加持「…立ち直れないかもしれないな」

リツコ「ミサト?」

加持「…ああ、葛城もだし」

加持「俺もだ…」

リツコ「…あなたの先行で、使徒との接近戦が危険と分かったんだから…無駄ではなかったわ」

加持「ははっ…優しいじゃないか。いつになく」

リツコ「そうかしら…普通よ」


加持「……葛城は、今ごろ夢の中かな?」

リツコ「夢?」

加持「ああ……悪夢じゃないといいが…」

リツコ「……」
544 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:26:01.76 ID:bn13i2TRo
日向(……どこだ…ここは…妹の病院か…?なぜ俺は寝てるんだ……?)

日向(何だ……葛城さんじゃないか…それに、赤木…)


リツコ「なぜあんなことをしたの?」

ミサト「許せなかったのよ、お父さんが。私の気持ちを裏切ったお父さんが…」

ミサト「せっかくいい気持ちで話ができたのに、あの人は私の気持ちなんか分かってくれないんだわ」

リツコ「あなたは分かろうとしたの?お父さんの気持ちを」

ミサト「…分かろうとした」

リツコ「なぜ分かろうとしないの?」

ミサト「分かろうとしたわよ!」

リツコ「司令はあなたに死んでほしくなかっただけよ」

ミサト「……っ」

ミサト「私は……!」


日向(…なんで喧嘩してるんだ…二人…)
545 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:27:04.88 ID:bn13i2TRo
看護師「面会は特別だから、5分だけよ」

加持「はい、ありがとうございます」

日向「なんだ……お前か」

加持「悪かったな…葛城じゃなくて」

日向「いや…良かったよ。今はまともに顔を見れそうにない」

加持「……大丈夫か?」

日向「…生きてはいるみたいだな…」

加持「……」

日向「……葛城さんと、赤木がいたような気がしたんだがな…ちょうどそこに」

加持「…葛城は昨日退院したよ。リッちゃんは…何度か顔を見せてたようだが。おたくは丸三日寝てたんだ…夢でも見たんじゃないのか?」

日向「そうか…3日も……」

日向「……」
546 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:28:01.10 ID:bn13i2TRo
日向「なぁ……ひとつ、頼んでいいか…?」

加持「何だ?」

日向「妹には…知らせないでくれ。俺は何でもないって…少し忙しいだけだからって…伝えてくれないか…?」

加持「……」

加持「分かった…」
547 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:29:02.53 ID:bn13i2TRo
ネルフ職員「出たまえ、葛城ミサト君。総司令がお会いになる」


葛城「命令違反、エヴァの私的占有、恫喝…」

葛城「これらはすべて犯罪行為だ」

葛城「…何か言いたいことはあるか」

ミサト「……」

ミサト「私はもう、エバに乗りたくありません。…ここにもいたくありません」

葛城「どうするつもりだ」

ミサト「おじさんのところへ戻ります」

葛城「…それで逃げられると思うのか」

ミサト「……!」

葛城「…お前だけは、お前自身から逃げられない」
548 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:30:04.24 ID:bn13i2TRo
葛城「お前の戦闘離脱も、同級生の怪我も、すべて事実だ。向き合わない道はない…「演じる」ことで隠すことはできても。…ミサト」

葛城「…もうここへは帰ってくるな」

ミサト「……っ!言われなくても、そうするわよ!!!」




葛城「私だ。サードチルドレンは抹消、初号機の専属パイロットはリツコをベーシックに、ダミープラグをバックアップに廻せ」




(伝言メッセージ)


マヤ「葛城さん? 大丈夫…? わたし、何て言ったらいいのか…」

マヤ「ごめんなさい。勝手なことばかり言って…乗りたいとか、羨ましいとか。私、自分が幻想を見てるんだって気づいたのよ、出ていくあなたを責められないわ……日向くんがエヴァの事故に巻き込まれたって聞いて、私…!」



オペレータ「この電話は盗聴されています。機密保持のため回線を切らせていただきました。ご協力を感謝いたします」
549 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:31:02.65 ID:bn13i2TRo
シンジ「…加持くんが、悪かったって。…ミサトちゃんに」

ミサト「……みんな私に謝ってばっかり。悪いのは私なのに」

シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「やめてくださいよ!!いらないですよ、同情なんて…!」

シンジ「………」


ミサト「もう聞きあきたわ……私はかわいそうなんかじゃない……!」

ミサト「………」

ミサト「エバに乗ることも、ここに残ることも…」

ミサト「自分で選んだ……だから今度も、自分で出ていくんです…」

シンジ「…ミサトちゃん…」
550 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:32:03.21 ID:bn13i2TRo
ミサト「…最後に、ひとつだけ教えてください。なぜ日向くんだったんですか?フォースチルドレンが」

シンジ「……第4次選抜候補者は、全てミサトちゃんのクラスメートだったんだよ……ごめん、こんな大事なことが、今まで言えなくて……」

ミサト「……全部、仕組まれてたってことですか?クラスのみんなが……」

ミサト「なんなんですか……?お父さんが……あの人がやろうとしてることは…!」

シンジ「……」

シンジ「ごめん……うまく言えないんだ。でも僕らが戦ってるのは、人類を救うためで…!……それだけは、嘘じゃ、ないから…」

ミサト「……もういいです。どうせ私には関係のなくなることですから」

シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「私のパスコードは破棄してください。部屋の荷物も…」

シンジ「……」

ミサト「すみません、最後までご迷惑をおかけして」

ミサト「それじゃあ……さようなら」
551 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:33:02.06 ID:bn13i2TRo
警報。

放送「ただいま東海地方を中心に、非常事態宣言が発令されました。住民の皆さまは、速やかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返します、ただいま…」



ミサト「使徒だ…」





オペレータ「総員第一種戦闘配置、地対空迎撃戦用意」

カヲル「目標は?」

ケンスケ「現在、侵攻中です。駒ケ岳防衛線、突破されました!」
552 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:34:02.37 ID:bn13i2TRo
オペレータ「第1から18番装甲まで損壊!」

トウジ「18もある特殊装甲を、一瞬で…!」

シンジ「……エヴァの地上迎撃は間に合わない!弐号機をジオフロント内に配置、本部施設の直縁に廻して!」

シンジ「加持くんには目標がジオフロント内に侵入した瞬間を狙い撃ちさせて!」

シンジ「零号機は?」

ヒカリ「A.T.フィールド中和地点に、配置されています」

レイ「左腕の再生がまだなのよ」

シンジ「戦闘は無理か…」

葛城「リツコは初号機で出せ」

シンジ「…!」

葛城「ダミープラグをバックアップとして用意」

シンジ「はい…!」
553 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:35:02.14 ID:bn13i2TRo
オペレータ「エントリースタート」

ヒカリ「L.C.L.電荷」

レイ「A10神経、接続開始」

異変。

リツコ「うっ…だめなのね、もう…」

オペレータ「パルス逆流!」

ヒカリ「初号機、神経接続を拒絶しています!」

レイ「まさか、そんな…」

カヲル「……葛城君」

葛城「ああ…私を拒絶するつもりか」

葛城「…起動中止、リツコは零号機で出撃させろ。初号機はダミープラグで再起動」

シンジ「しかし零号機は…!」

リツコ「構いません。行きます」

シンジ「リツコちゃん…!」

リツコ(私が死んでも代わりはいる…もう気づいて泣く人もいないわ)
554 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:36:02.31 ID:bn13i2TRo
火柱が立ち上る。市街地。


ミサト(……私はもう、乗らないって決めたのよ…!)

男「君、何をしている!早くシェルターに避難しなさい!」




ケンスケ「だめです!後一撃ですべての装甲が突破されます!」

シンジ「…頑張って、加持くん…!」




加持「来たな……こちとら傷心中だってのに」

加持「ま……いいさ。スパッと勝ちどきを上げて、」

加持「英雄の凱旋といこうじゃないか……!」
555 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:37:01.74 ID:bn13i2TRo
連射。

加持「このっっ!!」

加持「チッ……次!」

加持「なぜだ!? A.T.フィールドは中和しているはず…」

加持(なぜ通じない!?)

なおも撃ち込むが、通じない

加持「ははっ……笑えない冗談だ」

加持「何…っ!」


加持「がっっ」

腕を切り落とされる

加持「……っああ、あぅ……!」


加持「……でやあああっ!」


シンジ「弐号機の全神経接続カット!早く!!」
556 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:38:02.56 ID:bn13i2TRo
(加持「避難訓練?……まぁ、俺たちパイロットには関係ない話だろうな」)

揺れる避難所。

ミサト「……うわっ!」

男「第8区に直撃!」

男「第6シェルターは放棄、生きてるものは第3シェルターへ急げ!」

目前に弐号機の頭部。

ミサト「……!!」



ケンスケ「弐号機大破、戦闘不能!」

シンジ「加持くんは!?」

トウジ「無事や!生きとる!」



加持「はは…」

加持「…首、ついてるよな……?」

加持「………」
557 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:39:02.31 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「使徒、移動開始!」

シンジ「初号機の状況は?」

オペレータ「ダミープラグ、搭載完了!」

ヒカリ「探査針、打ち込み終了!」

レイ「コンタクト、スタート!」

ヒカリ「了解!」

エラー音

レイ「何っ!?」

ヒカリ「パルス消失、ダミーを拒絶、だめです!エヴァ初号機、起動しません!」

レイ「ダミーを、赤木リツコを、」

カヲル「受け入れないのか…!」

葛城「……」

葛城「渚、少し、頼む…」
558 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:40:01.46 ID:bn13i2TRo
男「怪我人は第6ブロックへ!」

男「無事なものは第3シェルターへ集合しろ!」

男「こっちだ!」

男「早く!」

男「急げ!」

男「早く!」

男「おい君!何をしている!死にたいのか!」


立ち尽くすミサト


ミサト「加持くん…」



アスカ「ミサト!」
559 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:41:02.86 ID:bn13i2TRo
ミサト「アスカさん…、どうしてここに…」

アスカ「それはこっちの台詞よ。何やってんのよ、サードチルドレン、葛城ミサト」

ミサト「もうパイロットじゃありません。…自分のために決めたんです」

アスカ「自分のため?聞いて呆れるわね…あんた逃げてるだけじゃないの」

ミサト「アスカさんこそ……何してるんですか」

アスカ「…アルバイトが公になったからね。戦闘配置に私の居場所はなくなったの。だからここで水を撒いてるってわけ」

ミサト「だからここで?意味が分かりません」

アスカ「分からない?何してたって同じってことよ。エヴァが負ければみんな死ぬんだから」

ミサト「……みんな、死ぬ…」


アスカ「そうよ。使徒がここの地下に眠るアダムと接触すれば、人は全て滅びる…サードインパクトで」

アスカ「あたしはここで水を撒くことしかできない…あんたは違うでしょ?」

アスカ「使徒を止められるのは、使徒と同じ力を持つエヴァンゲリオンだけ」


ミサト「リツコっ!?ライフルも持たずに!」
560 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:42:02.06 ID:bn13i2TRo
レイ「やめなさいっ!!」

葛城「リツコ!」


リツコ「A.T.フィールド、全開…!」

爆発。

ミサト「うっ!……!」



トウジ「零号機は…!」


爆煙の中から、使徒

零号機の頭部を切り落とす


シンジ「リツコちゃんっ!」

レイ「何てこと…!」
561 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:43:10.35 ID:bn13i2TRo
アスカ「後悔なんて誰だってするわよ。誰だって今が一番辛いの。時間は巻き戻せない、一瞬一瞬を積み重ねたものが人の歴史なのよ」

アスカ「選択できるのは「今」だけ…」

アスカ「その一瞬で何を選択するか……少なくともそれで、未来(さき)の後悔は変えられるわ」

ミサト「……」


アスカ「あんた本当に後悔しないの?こんなところに突っ立ってて」

ミサト「………!」





ケンスケ「第三基部に、直撃!」

トウジ「最終装甲版、融解!」

シンジ「まずい、メインシャフトが丸見えだ…!」

レイ「初号機はまだなの!?」

オペレータ「ダミープラグ、拒絶」

オペレータ「だめです、反応ありません!」
562 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:44:02.75 ID:bn13i2TRo
葛城「続けろ。もう一度108からやり直せ」



ミサト「乗せてください!」


ミサト「私を、私をこの……っ、初号機に乗せてください!」

葛城「……!」

ミサト「お父さん…」

葛城「…なぜ帰ってきた」

ミサト「私は…!」


ミサト「私は、エヴァンゲリオン初号機のパイロット、葛城ミサトです!」
563 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:45:10.09 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「目標は、メインシャフトに侵入、降下中です!」

シンジ「目的地は!?」

トウジ「そのまま、セントラルドグマへ直進!」

シンジ「ここに来る…!総員待避!急いで!」

トウジ「総員待避!繰り返す、総員待避!」


目前に迫る使徒。


シンジ「……!」

突進する初号機

シンジ「エヴァ初号機!?…ミサトちゃん!?」


ミサト「ぐ…っ!」

ミサト「ああああああっ!」
564 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:46:02.48 ID:bn13i2TRo
拳を振り上げる初号機。腕を切断される

ミサト「……っ、あああああああ!」

射出リフトに使徒を追いやる。

ミサト「シンジさんっ!」

シンジ「5番射出、急いで!」

ミサト「あああああっ!」

ミサト「やあああああ!」

絶叫し使徒を撲つ。

突如、停止する

ミサト「エネルギーが切れた!?」


ヒカリ「初号機、活動限界です!予備も動きません!」

シンジ「ミサトちゃん…!」
565 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:47:03.60 ID:bn13i2TRo
刻まれ、爆撃を受ける初号機。

シンジ「ミサトちゃん!!」


ミサト「動け、動け、動け!動け、動いてよ!今動かなきゃ、何にもならないのよ!」


シンジ「あれは…っ」

露呈したコア。

ミサト「動け、動け、動け!動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動きなさいよ!」

ミサト「今動かなきゃ、今やらなきゃ……みんな死んじゃうのよ…!もう…もうそんなのは、嫌なの…!」

ミサト「だから……動いてよ…っ!!」



鼓動。



覚醒する初号機。攻撃を受け止める

アスカ「……!」
566 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:48:03.51 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エ、エヴァ、再起動…」

使徒の部品を押し当てる。腕を再生。

シンジ「すごい…」

ヒカリ「まさか…信じられません、初号機のシンクロ率が400%を超えています!」

レイ「目覚めたのね……彼女が」


咆哮する初号機。使徒を圧倒する


シンジ「使徒を……食べてる…」

レイ「S2機関を自ら取り込んでいるというの…?エヴァ初号機が…」

ヒカリ「……うぅっ!」


レイ「拘束具が…!」

トウジ「拘束具?」

レイ「そうよ…あれは装甲板ではないの。エヴァ本来の力を私たちが押え込むための、拘束具」

レイ「その呪縛が今、自らの力で解かれていく…私たちにはもう、エヴァを止めることはできない…」
567 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:49:02.60 ID:bn13i2TRo
アスカ「……初号機の覚醒と開放。こーなりゃゼーレが黙っちゃいないわよ」

アスカ「これもシナリオの内?……葛城司令殿」





カヲル「始まってしまったね…どうする?」

葛城「最善を尽くす…選ぶ道はひとつだ」




拾九話分終わり
568 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:51:01.27 ID:bn13i2TRo
シンジ「使徒を……食べてる…」


レイ「拘束具が、今自らの力で解かれてゆく。私たちにはもう、エヴァを止める事はできない…」


アスカ「初号機の覚醒と開放。こーなりゃゼーレが黙っちゃいないわよ?」



ゼーレ「エヴァシリーズに生まれいずる筈のないS2機関」

ゼーレ「まさかかのような手段で自ら取り込むとはな」

ゼーレ「我らゼーレのシナリオとは大きく違った出来事だよ」

ゼーレ「この修正、容易ではないぞ」

ゼーレ「葛城。あの男にネルフを与えたのがそもそもの間違いではないのかね?」

キール「だがあの男でなければ、全ての計画の遂行はできなかった。葛城、何を考えている?」




カヲル「始まってしまったね…どうする?」

葛城「最善を尽くす…選ぶ道はひとつだ」
569 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:52:20.93 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エヴァ両機の損傷は、ヘイフリックの限界を超えています」

レイ「時間がかかるわね。全てが戻るには」

ヒカリ「幸い、MAGIシステムは移植可能です。明日にも作業を開始します」

レイ「でも、ここはだめね」

ケンスケ「破棄決定は、もはや時間の問題だな」

レイ「そうね…とりあえずは、予備の第2発令所を使用するしかないわね」

ヒカリ「MAGIはなくとも、ですか?」

レイ「…そうね。埃を払って、午後には仕事を始めるわ」

ヒカリ「椅子はきついし、センサーは硬いし、やりづらいのよね…ここ」

ケンスケ「見慣れた第1発令所と造りは同じなんだがな」

ヒカリ「違和感あるわよね」

レイ「使えるだけでも良しとしましょう」


レイ「使えるかどうか分からないのは、初号機ね…」
570 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:53:02.23 ID:bn13i2TRo
拘束された初号機

シンジ「…何か反応は?」

トウジ「内部に熱、電子、電磁波ほか、化学エネルギー反応無し。S2機関は完全に停止しとる」

シンジ「にもかかわらず、この初号機は3度も動いた…」

シンジ「目視できる状況だけじゃ、迂闊に触れないね」

トウジ「……」

トウジ「迂闊に手ェ出すと何されるか分からん。…まるでセンセを尻に敷いとる、あの女やな」

シンジ「…トウジも、人のこと言えるの?」

トウジ「なんやとっ!」
571 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:54:14.56 ID:bn13i2TRo
キール「だが事態はエヴァ初号機の問題だけではない」

ゼーレ「さよう、零号機と弐号機の大破、本部施設の半壊、セントラルドグマの露呈。被害は甚大だよ」

ゼーレ「われわれがどの程度の時と金を失ったか、見当も付かん」

ゼーレ「これも、葛城の首に鈴を付けておかないからだ」

ゼーレ「鈴は付いている。ただ、鳴らなかっただけだ」

キール「鳴らない鈴に意味はない。今度は鈴に動いてもらおう」
572 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:55:08.40 ID:bn13i2TRo
アスカ「…どーなってんのよ?この展開は」

アスカ「ゼーレにどう言い分けつけるつもり?」

カヲル「……初号機はわれわれの制御下ではなかった。これは不慮の事故だよ」

葛城「よって初号機は凍結。委員会の別命あるまでは、だ」

アスカ「あくまで演じ通すってわけね…。いいわ。でもどうするの?パイロットは取り込まれたままなのよ」

葛城「……」
573 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:56:01.73 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「やはりだめです、エントリープラグ排出信号、受け付けません」

レイ「予備と疑似信号は? 」

ヒカリ「拒絶されています。 直轄回路もつながりません」

トウジ「プラグの映像回線が繋がった。主モニターに廻す」


シンジ「……何だ、これ……!」


レイ「…これがシンクロ率400%の正体」

シンジ「そんな……!ミサトちゃんは一体…!?」

レイ「…エヴァ初号機に取り込まれてしまったのよ」

シンジ「……!」
574 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:57:02.80 ID:bn13i2TRo
シンジ「……何だよそれ…どういうことなの? エヴァは対使徒用の、決戦兵器なんじゃなかったの!?」


シンジ「あの時南極で拾った……それをコピーした、人が戦うために作った兵器なんじゃ…」

レイ「ただのコピーとは違うわ。人の意思が込められているもの」

シンジ「これも誰かの意思だって言うの…?」

レイ「……あるいは、エヴァの」

シンジ「!」

シンジ「…なんだよそれ…!エヴァって何なんだよ…!」


レイ「…人の作り出した、人に近いカタチをした物体、としか言いようがないわ」


シンジ「……」
575 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:58:01.92 ID:bn13i2TRo
テレビ(ラジオ)「…であり、南沙諸島の問題に対し、政府と内務省はこれを公式に否定しました」

テレビ(ラジオ)「次のニュースです。第2東京市で起きたセクトによるテロ事件から一ヶ月が過ぎた今日、新たなテロ行為に対し再発防止を第一に政府による…」


リツコ「…まだ生きてる…」



(通話)

加持「リッちゃんが無事?それは…よかった…俺は大丈夫、ああ、大したことないよ、それじゃあ」



加持「…大したことないか…」

加持「弐号機、大破…」

加持「……」

加持「…荷が重いな…」
576 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:59:02.23 ID:bn13i2TRo
シンジ「ミサトちゃんのサルベージ計画?」

レイ「そう。ミサトちゃんの生命と言うべき物は、まだ存在しているわ」

シンジ「言うべき物?」

ヒカリ「ミサトちゃんの肉体は、自我境界線を失って、量子状態のまま、エントリープラグ内を漂っていると推測されます」

シンジ「つまり…ミサトちゃんは僕たちの目では確認できない状態に変化している?」

ヒカリ「そう。プラグの中のL.C.L.成分は、化学変化を起こし、現在は原始地球の海水に酷似していて…」

レイ「言うなれば、生命のスープね」
577 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:00:01.13 ID:bn13i2TRo
レイ「ミサトちゃんを構成していた物質は、すべてプラグ内に保存されているし、魂と言うべき物もそこに存在している」

シンジ「……なぜそう言い切れるの?」

レイ「現に彼女の自我イメージが、プラグスーツを擬似的に実体化させているわ」

ヒカリ「つまりサルベージとは、彼の肉体を再構成して精神を定着させる作業です」

シンジ「そんな事が可能なの?僕たちの力で」

レイ「MAGIのサポートがあればね」

シンジ「……」

レイ「結果どうなるかは……やってみなくては分からないわ」
578 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:01:15.88 ID:bn13i2TRo
ミサト「…なに、これ…?どこなの…?エントリープラグ?初号機の?…でも誰もいない。私もいない…」



ミサト「なに…これは…?よく分からない…」

ミサト「この人達…そう、私の知っている人たち、私を知っている人たち」


ミサト「そうか、みんな私の世界なんだ」



ミサト「これは? 私の世界のはずなのに、よく分からない、外からのイメージ、嫌なイメージ」

ミサト「そうよ、敵!」

ミサト「敵、テキ、てき、敵!使徒と呼ばれ天使の名を冠する私たちの敵!」

ミサト「エバの…そしてネルフの目標…シンジさんの両親の仇…」

ミサト「なんで私が戦うんだろう…こんな目に遭ってまで…」

(アスカ「誰かのためってのは聞こえはいいけど、心情的には見返りを求めるものよ」)
579 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:02:04.84 ID:bn13i2TRo
ミサト「自分のため……自分のため?」

ミサト「私はこんなに傷ついているのに……」


ミサト「敵、テキ、てき、敵、みんな敵!私を…私たちを脅かすもの、つまり敵」

ミサト「そうよ、自分の命を……心を守って、何が悪いのよ!いいことじゃないの!」


リツコ「いい子でいたいの?」


ミサト「何よ!私と母さんを捨てたくせに!」

リツコ「あなたが逃げ出したんでしょう?」

ミサト「違う、違う、違う、違う!お父さんが捨てたのよ!日向くんを傷つけたのよ、お母さんを殺したのよ!」


リツコ「お母さんが、あなたを殺していたんじゃないの?」

ミサト「嫌……っ!」
580 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:03:05.16 ID:bn13i2TRo
母「ミサト……ミサトはお母さんの味方よね…?」

母「ひどい…、ひどいわ…何も分かってないのよ、あの人は」

母「家庭より仕事を取ったのよ!愛してないんだわ、私たちのことを」

ミサト「……」

母「あなただけは、お母さんの味方よね?」

母「あなたがいてくれれば……他になにもいらないの」

母「ミサト…!」
581 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:04:03.70 ID:bn13i2TRo
リツコ「だから嫌いなの?」

ミサト「そうよ……父も母も嫌い。自分だけがかわいいのよ」

リツコ「だから逃げ出したのね」

ミサト「一人になって当然よ!お父さんは私たちを愛してなかったんだから!」

リツコ「だから私を愛すの?」

ミサト「そうよ!実の子が恐いから…!他の子で誤魔化してるのよ」

リツコ「あなたは違うの?」


ミサト「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!お父さんがみんな悪いんじゃないの!あの時だって、ほんとはお父さんに嫌いだって言うつもりで…!」
582 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:05:02.40 ID:bn13i2TRo
ミサト「私に…これに乗って戦えって言うの?さっきの化け物と!」

葛城「…そうだ」

ミサト「……いやよっ!そんなの……!何?なんでそうなるのよ、今更、いまさら……私を捨てたんじゃなかったの!!?」

葛城「……捨てた覚えはない」

ミサト「なぜ、私なの?」

葛城「お前にしかできないことだからだ」

ミサト「……無理よ…っ!そんなの…見たことも、聞いたこともないのに、できるわけない!」




ミサト「そう、私は何も知らなかった」

ミサト「それなのに、飛び込んだのよ」

ミサト「エバに乗ることを選んだ」


ミサト「お父さんに近づきたかったから…」
583 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:06:01.86 ID:bn13i2TRo
アナウンス「現在、L.C.L.の温度は36を維持、酸素密度に問題なし」

アナウンス「放射電磁パルス異常無し。波形パターンはB」

アナウンス「各計測装置は正常に作動中」


ヒカリ「サルベージ計画の要綱、たった一ヶ月でできるなんて。さすが綾波さんね」

レイ「原案は私じゃないわ…先生が残したものに手を加えたの。10年前に実験済みのデータよ」

ヒカリ「そんなことがあったの?エヴァの開発中に?」

レイ「私が入ってすぐの出来事よ」

ヒカリ「…その時の結果は…?」

レイ「……失敗」
584 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:07:04.87 ID:bn13i2TRo
ミサト「冷たい…さびしい…」

ミサト「おかしいな。…前は一人でも平気だったのに」

リツコ「サビシイってなに?」

ミサト「一人が嫌ってこと。誰かといたいってことよ」

リツコ「シアワセってなに?」

ミサト「好きってこと。心が満たされることよ」

リツコ「誰かと一緒にいれば、幸せ?」

ミサト「……分からない。お母さんといるときは…息苦しかったから」


母親の遺体の前に立つミサト


ミサト「死を悲しめない自分がいるのよ」

ミサト「切り離されてほっとしている自分がいる」

ミサト「…でも、自分からは逃げられない」


(葛城「お前自身から逃げられない」)
585 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:08:03.77 ID:bn13i2TRo
ミサト「自分のために優しくしてきたわ!」

ミサト「自分のためにいい子でいた!」

ミサト「なのに……なぜなの?」


ミサト「嬉しくないのね」

ミサト「嬉しくないわよ」

ミサト「こんな……偽物の自分…」


ミサト「自分なのか分からない自分…」

ミサト「誰か…」


ミサト「汚して!」




ミサト「めちゃくちゃにしてよ!」
586 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:09:02.59 ID:bn13i2TRo
日向「意外だったな…葛城さんにこんな一面があったなんて」

シンジ「かわいいよ、ミサトちゃん」

加持「魅力的だよ」



ミサト「気持ち、いいの?」

日向「気持ちいいよ」

ミサト「気持ち、いいの?」

シンジ「気持ちいいよ」

ミサト「気持ち、いいの?」

加持「君は最高だ…」
587 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:10:02.80 ID:bn13i2TRo
日向「君が必要なんだ」

シンジ「君が必要だよ」

加持「君しかいらない…君だけでいい」


リツコ「嘘ね」

ミサト「はっ」


リツコ「一時の感情に身を任せて、刹那的に自分を傷つけているだけよ。罰を与えて、誤魔化しているだけ」

ミサト「それの何がいけないのよ!私は汚れたいの!もういい子は嫌…!私はあんたじゃないのよ!!」


リツコ「私はいい子じゃないわよ?」



(加持「涙の通り道にほくろのある人は…」)

(加持「ま、俺ならそんな思いはさせないが」)

(アスカ「あたしにとってのシンジ?…それが分かりゃあ、苦労しないわよ」)
588 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:11:02.13 ID:bn13i2TRo
シンジ「アスカは特別なんだ」


加持「笑った顔が見たい」



ミサト「やめて!!!やめてよ!!!!私だけを見て!」

ミサト「私だけを愛してよ…!」



日向「愛しているよ」

シンジ「愛してるよ」

加持「………」



葛城「お前の居場所はない」



ミサト「ひ…っ!」
589 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:12:01.55 ID:bn13i2TRo
オペレータ「全探査針、打ち込み終了」

オペレータ「電磁波形、ゼロマイナス3で固定されています」

ヒカリ「自我境界パルス、接続完了」

レイ「了解、サルベージ、スタート」

トウジ「了解、第1信号を送信」

ケンスケ「エヴァ、信号を受信。拒絶反応無し」

ヒカリ「続けて、第2、第3信号送信開始」

オペレータ「対象カテクシス異常無し」

オペレータ「デストルドー、認められません」

レイ「了解、対象をステージ2へ移行」

シンジ「…ミサトちゃん…!」
590 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:13:01.71 ID:bn13i2TRo
ミサト「はっ」

(加持「葛城!」)

ミサト「はっ!」

(シンジ「ミサトちゃん!?」)

ミサト「はっ!」

(マヤ「あら、葛城さん!」)

ミサト「はっ!」

(リツコ「ミサト!」)

ミサト「はっ!」

(日向「葛城さん」)

(青葉「葛城〜!」)

(レイ「ミサトちゃん?」)
591 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:14:01.75 ID:bn13i2TRo
(加持「お姫さま」)

(シンジ「ミサトちゃん…」)

(日向「葛城さん?」)

(リツコ「ミサト」)

(レイ「ミサトちゃん!」)

(マヤ「葛城さん?!」)

(青葉「葛城?」)

(加持「おい、葛城!」)

(日向「あっ、葛城さん!」)

(リツコ「ミサト」)

(シンジ「ミサトちゃん!」)

(加持「葛城!」)

(日向「葛城さん!」)
592 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:15:01.65 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「だめです、自我境界がループ上に固定されています!」

レイ「全波形域を全方位で照射してみて!」


レイ「だめね…発信信号がクライン空間に捕われている…」

シンジ「どういう事?」

レイ「つまり、失敗」

シンジ「えっ…」

レイ「干渉中止、タンジェントグラフを逆転、加算数値をゼロに戻して」

ヒカリ「はい!」

ケンスケ「Qエリアにデストルドー反応、パターンセピア」

トウジ「コアパルスに変化あり!プラス0.3を確認!」

レイ「現状維持を最優先、逆流を防いで!」

ヒカリ「はい!」
593 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:16:01.18 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「プラス02…0.8、変です!塞き止められません!」

レイ「これは…なぜ…帰りたくないの?ミサトちゃん…」




ミサト「分からない、分からない…私は…私は…」


シンジ「何を願うの?」

加持「何を、願う?」

日向「何を願うの?」

葛城「何を願う?」
594 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:17:03.32 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エヴァ、信号を拒絶!」

ケンスケ「L.C.L.の自己フォーメーションが分解していきます!」

ケンスケ「プラグ内、圧力上昇!」

レイ「現作業中止、電源落として!」

ヒカリ「だめです、プラグがイクジットされます!」

溢れ出るL.C.L.

シンジ「ミサトちゃん!!!」





ミサト「はっ…」

ミサト「ここは…」


ミサト「エバの中よ」

ミサト「エバの中?私はまたエバに乗ったの…?どうして…」
595 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:18:01.61 ID:bn13i2TRo
シンジ「もうエヴァには乗らないの…?」

ミサト「破棄してください。パスコードも、部屋の荷物も…」

アスカ「でもあんたは乗った。エヴァンゲリオン初号機に」

ミサト「はっ!」

アスカ「一瞬一瞬の積み重ねなのよ、人の歴史は」

シンジ「僕らは人を守るのが仕事で…君もその一人なのに」

アスカ「後悔しないの?そんなとこに突っ立ってて」

シンジ「僕たち大人を……恨んでくれてかまわない」

アスカ「あんた逃げてるだけじゃないの」

シンジ「ごめんね……勝手な大人ばかりで」

アスカ「サードチルドレン!」

シンジ「この先…立ち向かえない現実があったとしても……君自身のことは、嫌いにならないでほしい」


ミサト「……シンジさん!」
596 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:19:03.01 ID:bn13i2TRo
シンジ「う…っ、う、ぅ……!」

シンジ「何が科学だよ……!…人一人、助けられなくて…!」

シンジ「返してよ…!ミサトちゃんを…!」

シンジ「返してよ…っ」




ミサト「匂い…人の匂い…」

ミサト「シンジさん…?」

ミサト「リツコ…?」

ミサト「いや、違う…」

ミサト「そうだ、お母さんの匂い…」



母「……ふふ、可愛いわね、きっと世界で一番、可愛い子よ…」

葛城「ああ…そうだな」


ミサト「お母さん…」
597 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:20:04.95 ID:bn13i2TRo
母「抱いてあげて?」

葛城「…抱き方が分からない」

母「こうするの…ほら」

母「優しく…」

母「支えてあげるのよ」

母「あなたにもできるわ」

母「ほら…」

葛城「……」


ミサト「……お父さん」


パシャッ


シンジ「…!」

シンジ「…ミサトちゃん!」
598 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:21:03.40 ID:bn13i2TRo
カーラジオ「そりゃ分かるんだけど、オーラルステージの…心理学者が…つまり、母親といつまでも一緒にいたがる… 」



レイ「初号機の修復、明後日には完了するわ」

シンジ「結局、めでたしめでたしか…。科学…人間は不滅なのかもしれないね、神様の力まで利用しちゃうんだから…」

レイ「…どうかしらね…。委員会では凍結案も出ているそうよ」

シンジ「不安要素が大きすぎるって?今さらだよ…やめるんなら初めから手を出すべきじゃなかったんだ」

レイ「……」

シンジ「人造人間、エヴァンゲリオン……ミサトちゃんが助かったのも、エヴァの意思かな?それとも、人の力?」

レイ「少なくとも……私の力じゃないわ、あなたの存在が大きかったんじゃないかしら。彼女の深層心理において」

シンジ「僕が?」

レイ「人は傍らの存在に温もりを感じるものよ。それにあなたは…愛を持って彼女に接してる。影響がなかったとは思えないわ」

シンジ「そうかな…?なんだか綾波にそう言われると、照れるな…」

レイ「素直な感想よ。感謝してるの、あなたにも…ミサトちゃんにも」

シンジ「綾波……」
599 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:22:03.83 ID:bn13i2TRo
レイ「一杯奢らせてくれない? サルベージ成功のお祝いに」

シンジ「あ…」

レイ「?」

シンジ「…ごめん!今日は、…約束があって」

レイ「そう… 」



シンジ「それじゃ…!」





レイ「……あれだけ泣いていたのに」

レイ「ミサトちゃんが無事だと分かったら、今度はアスカのところか…」

レイ「……」

レイ「忙しい人ね…」
600 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:23:01.51 ID:bn13i2TRo
アスカ「あいつは今ごろ、いやらしい女だって軽蔑してるわね。きっと…」

シンジ「誰…っ、あいつって…」

アスカ「…馬鹿ね。さすがにあいつに同情するわよ…」

シンジ「…あ、アスカ、もう…っ」

アスカ「だーめ。あんたまだ言ってないでしょ?」

シンジ「…言えないよ…!こんな、ところで…っ」

アスカ「あたしには言わせたクセに」

アスカ「人類補完計画…人を滅ぼすアダム…あんたの知らないこと、ほらぁ…聞き出しなさいよ、それが仕事でしょ?」

シンジ「アスカ…っ、言わないでよ。信じるから。僕はアスカを信じるって、決めたから…」

アスカ「……」

シンジ「……もう危険な橋を渡るのはやめてよ…アスカ」
601 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:24:02.05 ID:bn13i2TRo
シンジ「まだやめてなかったんだ…たばこ」

アスカ「だったら何?もうお小言はウンザリよ、耳にタコ」

シンジ「体に悪いのに…」

アスカ「……こういう事のあとにしか吸わないんだから、セーフよ」

アスカ「それともなぁに?シンちゃん、物足りなかったのかな?」

シンジ「あ、アスカ…!」

アスカ「……。…あんたってホンットに、昔っからこういうとこは…」

アスカ「……んっ」
602 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:25:02.63 ID:bn13i2TRo
ベッドが軋む音


シンジ「!」

シンジ「ちょっ…!アスカ…!」

アスカ「…あによ?こっちイジられんのも、好きなくせに…」

シンジ「やめてよ……変なもの入れないでよ」

シンジ「……? なに、これ」


アスカ「プレゼントよ、8年ぶりの」

シンジ「?」

アスカ「最後かもしれないから。…大事にしまっときなさいよ」





弐拾話分終わり
603 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:26:07.30 ID:bn13i2TRo
続きは明日
604 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:01:02.20 ID:3d5dCKQ9o
シンジ(留守番電話)「はい、ただいま留守にしています。発信音の後にメッセージをどうぞ」

アスカ「最後の仕事か…」

アスカ「まるで血の赤ね」




シンジ「拉致された!?副指令が?」

諜報部員「今より2時間前です。西の第8管区を最後に、消息を絶っています」

シンジ「うちの署内で…!?消えようがないじゃないか」

諜報部員「身内に内報、および先導したものがいます。その人物に裏をかかれました」

シンジ「身内に内報……?…まさか!」

諜報部員「惣流・アスカ・ラングレー。この事件の首謀者と目される人物です」

シンジ「………!」

諜報部員「首謀者とあなたの過去の経歴を考えると…致し方ない処置かと思われます。作戦課長を疑うのは、同じ職場の人間として心苦しいのですが…」

シンジ「いいよ…。それが諜報部の仕事だもの…」

諜報部員「ご協力感謝します。お連れしろ!」
605 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:02:01.61 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「……お久しぶりです、キール議長。ずいぶんと手荒な歓迎ですね」

キール「非礼を詫びる必要はない。君とゆっくり話をするためには、当然の処置だ」

カヲル「相変わらずですね……僕の都合はおかまい無しですか?」

ゼーレ「議題としている問題が急務なのでね。やむなくの処置だ」

ゼーレ「分かってくれたまえ」

カヲル「やれやれ…委員会ではなく、ゼーレのお出ましとは」

ゼーレ「われわれは、新たな神を作るつもりはないのだ!」

ゼーレ「ご協力を願いますよ、渚先生」

カヲル「……」

カヲル(渚先生、か…)
606 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:03:01.87 ID:3d5dCKQ9o
学生「先生!渚先生!」

カヲル「ん?ああ、君たちか」

学生「これからどないです?鴨川でビールでも」

カヲル「またかい?学生の本分は勉学じゃなかったのかな」

学生「そない言わんと。リョウコらが先生と一緒なら行くゆうとりますんや」

学生「教授もたまには顔出せゆうてはりましたで」

カヲル「……ああ、分かったよ」
607 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:04:02.85 ID:3d5dCKQ9o
教授「たまにはこうして外で飲むのも良かろう」

カヲル「えぇ…まぁ…」

教授「…君は優秀だが、人の付き合いというものを軽く見ているのがいかんな」

カヲル「恐れ入ります」

教授「ところで渚君、生物工学部の葛城という生徒を知っているかね?」

カヲル「? いいえ、存じませんが」

教授「成績はいいのだがね…色々と悪い噂を耳にする。君のことも嗅ぎ回っているようだ」

カヲル「僕のことを?」

教授「おそらく…君の後ろにある組織にくみいろうという魂胆だろう。気を付けたまえ」

カヲル「……」

カヲル「肝に銘じておきます」
608 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:05:02.07 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「S2機関を自ら搭載し、絶対的存在を手にしたエヴァンゲリオン初号機!」

ゼーレ「われわれには具象化された神は不要なのだよ」

キール「神を作ってはいかん」

ゼーレ「まして、あの男に神を手渡すわけにはいかんよ!」

ゼーレ「葛城。あの男、信用に足る人物かな?」
609 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:06:01.51 ID:3d5dCKQ9o
論文に没頭するカヲル

カヲル「……おっと」

カヲル「すっかり時間を忘れていたな…」

カヲル「……」

カヲル「…この時間なら、学食も空いてるか…」




葛城「B定を」

カヲル「B定食を」

葛城・カヲル「………」

おばさん「すみませんねぇ、B定こちらの学生さんで終わりなんですよ」

カヲル「そうですか……ではA定食を」

おばさん「すみません」

葛城「………」
610 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:07:02.08 ID:3d5dCKQ9o
葛城「あの……取り替えましょうか?」

カヲル「え?」

葛城「迷っていたんです。だから…どちらでもよくて」

カヲル「ああ……定食のことか。気にしなくていいよ、僕もそんなに拘って決めたわけではないんだ」

葛城「そうですか……それじゃあ…」

カヲル「……おや、君は…」

葛城「?」

カヲル「その資料、生物工学部の子かい?」

葛城「はい、まぁ…」

カヲル「では、僕の講義は?」

葛城「…取っています」

カヲル「ちょうどよかった。意見を聞かせてくれないかな」

葛城「…自分のですか…?」

カヲル「そう。論文で行き詰まっててね、新しい風を入れたいんだ」

カヲル「君、名前は?」
611 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:08:06.78 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「そう…彼の第一印象は、不思議な男だった…」

カヲル「影のあるようにも見えるが…どこか人を惹き付ける」

カヲル「言葉少なで、人と距離を置きたがるために…誤解されることも多いが、少なくとも僕の目には善人に見えた」




カヲル「そしてあの時はこの国に季節、四季があった」
612 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:09:02.56 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「いいことじゃないか。…パートナーの存在は人生をより良いものにしてくれるよ」

葛城「…しかし」

カヲル「何か問題が?」

葛城「彼女を……幸せにできる自信がありません」

カヲル「……」

カヲル「…ふふ、葛城君。そういうことは直接本人に聞くべきだよ」

葛城「?」

カヲル「自信があるとか、ないとかは関係ないんだ。人を変えるのはいつだって変わりたいという人自身の意思だからね」

葛城「…人自身の、意思…」

カヲル「彼女が君を愛しているならば、彼女自身が君の隣を選ぶだろう。それが幸せの道だからね」

葛城「……」

カヲル「そして君自身が選ぶ、幸せの道でもある」
613 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:10:01.62 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…彼らは籍を入れた」

カヲル「その直後だった」


カヲル「セカンドインパクト。20世紀最後の年に、あの悲劇は起こった」

カヲル「そして、21世紀最初の年は、地獄しかなかった…他に語る言葉を持たない年だ」
614 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:11:01.88 ID:3d5dCKQ9o
2年後、南極調査船内


カヲル「これがかつての氷の大陸とはね。見る影もない…」

カヲル「…君があの日、帰国していなかったらと思うと…ゾッとするよ、葛城君」

葛城「…自分は、難を逃れましたが……多くのものを失いました」

カヲル「そうだね…その通りだ」

カヲル「何も取り戻せはしないが…少しでも情報を得ないと。二の舞だけは御免だからね」

葛城「……先生」スッ

カヲル「? …なんだい?」

葛城「…これを。妻からあなたへ渡すように言われています」

カヲル「これは、奥さんと…息子さんの写真かい?」

葛城「…娘です」

カヲル「なぜ僕に?」

葛城「…妻は、よく溢しています…自分たちより渚教授が大切なのか?と」

カヲル「はは…それは…一度怒られに行かなくてはね」
615 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:12:01.78 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…最近、ゼーレについて良くない噂を耳にするよ。…力で、理事会を押さえ込んだとか」

葛城「………」

カヲル「たしかに、口利きをしたのは僕だが。情報はすべて入れるという約束じゃなかったかな?」

葛城「……すみません」

カヲル「……まぁ、いいさ…こんな時代だ。綺麗なだけの組織では生きていけないだろう」

葛城「…おっしゃる通りです。今回のセカンドインパクトの正式調査、これも…ゼーレの人間だけで調査隊を組めば、いろいろと面倒な事になります」

カヲル「僕たちはそのための間に合わせというわけか…」

葛城「…気を悪くされましたか…?」

カヲル「いいよ。……他ならぬ君の頼みだ」

葛城「…ありがとうございます」
616 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:13:02.53 ID:3d5dCKQ9o
暗闇で膝を抱えるシンジ


シンジ「暗いとこは、まだ駄目だな…いやな事ばかり思い出す…」






カヲル「……彼は?」

男「例の調査団ただ一人の生き残りです。名は、碇シンジ」

カヲル「碇?碇博士のご子息か…!」

男「はい、もう2年近くも口を開いていません」

カヲル「なんて…むごい…」

男「ええ…それだけの地獄を見たのです。体の傷は治っても、心の傷はそう簡単には治りませんよ」

カヲル「……」

カヲル「……あとは本人の生きる意思の問題か…」


カヲル「…こちらの調査結果も、簡単には出せそうにないな。この光の巨人…謎だらけだよ」
617 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:14:05.03 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「その後国連は、セカンドインパクトは大質量隕石の落下によるものと正式発表した」

カヲル「だが、僕の目から見れば、それは…あからさまに情報操作をされたものだった」

カヲル「その裏にはゼーレ、そして、キール議長の姿が見え隠れしていた」

カヲル「疑いたくなかった。葛城君を。彼の背中は、僕が押したのだから…」

カヲル「だが衝動は抑えきれず…」

カヲル「僕は、あの事件の闇の真相を探った」
618 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:15:01.37 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「なぜ巨人の存在を隠すんだい?…セカンドインパクトを知っていたんじゃないのか、君らは。その日、あれが起こる事を…!」

葛城「……」

カヲル「君は運良く事件の前日に引き揚げた……では、全ての資料を一緒に引き揚げたのも、幸運の内かい?」

葛城「……」

カヲル「…君の資産、いろいろと調べさせてもらったよ。子供の養育にお金はかかるだろうが、個人で持つには額が多すぎる」

葛城「……」

カヲル「……何か言ってくれ…!このままでは…セカンドインパクトの裏に潜む、君たちゼーレと、死海文書を公表することになる。あれを起こした人間たちを、許すわけにはいかない」

葛城「……お怒りはごもっともです。ですが…お別れの前に、お目にかけたいものがあります」
619 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:16:02.51 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「随分潜るんだね…」

葛城「心配ですか?」

カヲル「得体が知れないからね」



カヲル「これは…!」

葛城「われわれではない、誰かが残した空間です。89%は埋まっていますが…」

カヲル「もとはきれいな球状の地底空間か…」

葛城「…あれが、人類がもてる全てを費やしている施設です」



ナオコ「あら、渚先生」

カヲル「赤木君……君もなのか」

ナオコ「ええ、ここは目指すべき生体コンピュータの基礎理論を模索する、ベストな所ですのよ」

カヲル「これは…」

ナオコ「MAGIと名づけるつもりですわ」

カヲル「MAGI?東方より来たりし三賢者か…見せたいものというのは、これかい?」

ナオコ「いいえ、こちらです」
620 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:17:01.87 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「これは…まさか、あの巨人を…!?」

ナオコ「あの物体をわれわれゲヒルンではアダムと呼んでいます。が、これは違います。オリジナルのものではありません」

カヲル「では…」

ナオコ「そうです。アダムより人の造りしもの、エヴァです」

カヲル「エヴァ…!」

葛城「われわれのアダム再生計画、通称E計画の雛形たる、エヴァ零号機です」

カヲル「神のプロトタイプか…!」

葛城「…先生、力を貸していただけませんか。…人類の、新たな歴史のために」

カヲル「……」
621 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:18:02.95 ID:3d5dCKQ9o
レイ「……」

ヒカリ「綾波さん?」

レイ「あぁ、ごめんなさい、リツコちゃんの再テスト、急ぎましょう」

ヒカリ「今日……碇くん、見かけないわね」

レイ「…そうね」





レイ「碇くん?」

シンジ「うん。碇シンジっていうんだ…よろしく」

(手紙)

レイ「先生、先日碇くんと言う子と知り合いました」

レイ「他の人たちは私を遠巻きに見るだけで、その都度先生の名前の重さを思い知らされるのですが、なぜか彼だけは私に対しても屈託がありません」

レイ「彼は例の調査隊ただ一人の生き残りと聞きました。一時失語症になっていたそうです。そのせいか…今も言葉少なですが、どこか優しさを感じます。彼の一挙一動から、心の内側が暖かくなるような、何かを…。これがロジックじゃないということでしょうか?」

ナオコ「レイちゃん、あなたにもとうとう春がきたんですね。こっちは相変わらず、地下に潜りっぱなしの男日照りです。支給のお弁当にも飽きました」

ナオコ「上では第二遷都計画による第三新東京市の計画に着工したようです」
622 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:19:01.95 ID:3d5dCKQ9o
レイ「このところ碇くんが大学に来ないので、理由を問い詰めたら、呆れてしまいました。ずっと彼女とアパートで寝ていたそうです」

レイ「飽きもせず、一週間もだらだらと。彼の意外な一面を知った感じです」

レイ「今日紹介されました。可愛い子ですが、気性が荒く、私はどうも好きになれません」



ナオコ「恋に嫉妬…、順調ね。勉強以外でもあなたの成長が見られて嬉しく思います。たくさん悩んでください。大丈夫、あなたは気づいてないでしょうけど、周りの男の子はみんなあなたを気にしています。あなたがその気になれば、きっと碇くんをあなただけのものにすることもできるはず…」

ナオコ「…駄目ね、恋愛観を押し付けるのは。あなたの思う通りにやってみてください。決して後悔のないように。あなたのことを娘のように思っています。いつでも相談してください」


ナオコ「……」


ナオコ「…娘か…」


机の上、碇調査隊の写真
623 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:20:01.77 ID:3d5dCKQ9o
電話中の葛城

葛城「ああ、分かった……手続きは明日、お互いの弁護士を通してやろう」

葛城「ああ……それじゃあ」

カヲル「……」

カヲル「…これで良かったのかい」

葛城「彼女が決めたことです…自分はそばにいてやれなかった」

カヲル「しかし…」

葛城「…先生、幸せの道ですよ。彼女の道は、きっとまたどこかに続いている…」

カヲル「………」





レイ「先生、MAGIの基礎理論、完成おめでとうございます。そのお祝いと言うわけでもないのですが、私のゲヒルンへの正式入所が内定しました」

レイ「来月から、E計画勤務となります」

ナオコ「レイちゃん、おめでとう。これであなたも一人前ですね。優秀な助手を持てて嬉しく思います」

ナオコ「私もあなたに伝えたいことがあるのだけど…それは研究所で。きっと驚きますよ」
624 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:21:05.28 ID:3d5dCKQ9o
零号機、機動実験日

オペレータ「L.C.L.変化、圧力、プラス0.2」

オペレータ「送信部にデストルドー反応無し」

オペレータ「疑似回路、安定しています」



カヲル「なぜ、実験に零号機を?」

ナオコ「そのことですが、われわれは考えを改めました。初号機だけでは使徒には勝てない…」

カヲル「それは…」

ナオコ「使徒との戦闘は必ず厳しいものになります。そのためには…この子にも動いてもらわないと」

傍らの子どもを見つめるナオコ

ナオコの視線を追うカヲル


カヲル「……その子は…?」

レイ「赤木先生のお子さんです」
625 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:22:01.55 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「赤木君の…?」

ナオコ「リツコといいますのよ」

ナオコ「ほら、リッちゃん。ご挨拶して?」

リツコ「…こんにちは」

カヲル「こんにちは」


カヲル「…どういうことだい?君は独身のはずでは?」

ナオコ「あら。今時分、父親がいないことなんてそう珍しくはないでしょう?」

カヲル「それは…そうだが、今日は…」

ナオコ「大丈夫です。ちゃんと言って聞かせますから。ねっ?リッちゃん」

リツコ「はい」

カヲル「赤木君……君の実験なんだよ?」

ナオコ「だからこそですよ。この子には明るい未来を見せておきたいんです」

レイ「先生…」
626 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:23:01.90 ID:3d5dCKQ9o
ナオコ「レイちゃん…葛城所長に、渚先生も」

ナオコ「…私に、もしものことがあったときは…その時は娘を頼みます」

リツコ「ママ…」

ナオコ「大丈夫よ。…必ず帰ってくるから」





レイ「それが先生の最後の言葉でした。イレギュラーな事件は、先生をこの世から消し去ってしまった…」

レイ「先生の右腕となって、先生を支える…」

レイ「そんな願いとは裏腹に。私だけではない…いったい誰が組織の頭脳を失うことを望んだでしょうか。ゲヒルンは一時騒然としました」

レイ「ただ…葛城所長だけは、平静を保っているように見えました」
627 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:24:01.56 ID:3d5dCKQ9o
内線「所長、弁護士の方からお電話ですが。お繋ぎしますか」

葛城「繋いでくれ」

葛城「……」

葛城「…!」





レイ「何をおっしゃっているんですか…!先の事件で先生を失ったばかりなのに…、あまりに危険すぎます!」

葛城「時間がないんだ、どいてくれ…!」

レイ「あっ…!…渚教授、教授からも言ってください!」

カヲル「……」

レイ「教授!」
628 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:25:07.06 ID:3d5dCKQ9o
葛城「本当にいいんだな?」

妻「いいわ…あの子といられるなら…」

葛城「……」

妻「それに…今度は、あなたの仕事場だもの…」

妻「きっともう、寂しくない…」

葛城「…!」

葛城「すまない…」




レイ「そして…「無事に」事件を起こすことに成功した葛城所長は、姿を消した」
629 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:26:03.35 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…ずいぶんと長かったじゃないか。赤木君もいない、所長の君もいないでは、ここは回らないよ」

葛城「…分かっている」

カヲル「…それで?話はつけてきたのかい」

葛城「ああ…今日から新たな計画を推奨する」

カヲル「始めるのか…あれを」

葛城「連中はもう止まらない。我々も止まるつもりはない…」

カヲル「…かつて誰もが為し得なかった神への道」

カヲル「人類補完計画か…」
630 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:27:01.79 ID:3d5dCKQ9o
ゲヒルン本部

レイ「おはようございます」

リツコ「おはようございます」

葛城「ああ、おはよう」

レイ「所長…今日は面会の日では?」

葛城「いいんだ…私に会う資格はない」

葛城「……リツコ。調子はどうだ?」

リツコ「…げんき、です…」

葛城「そうか…」

レイ「………」




カヲル「赤木リツコに関する全ファイルが、抹消済み?どういう事だ…」

レイ「その件については、私からお話しします」
631 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:28:09.64 ID:3d5dCKQ9o

(ナオコ「MAGI-CASPER、MAGI-BALTHASAR、MAGI-MELCHIOR。MAGIは三人の私。科学者としての私、母親としての私、女としての私」)


レイ「その3つがせめぎあっている…」

レイ「3人の先生か…。後は電源を入れるだけね」



レイ「あら…リツコちゃん、どうしたの?」

リツコ「…ママは迷子なの…?」

レイ「……!」

リツコ「どこにもいないの…ママはどこへ行ったの」

レイ「……リツコちゃん。私も、ずっと前にママがいなくなって…ママを探してたの」


リツコ「…あやなみ博士も?」

レイ「そう。ママは見つからなかったけど…赤木先生…あなたのお母さんと出会えたわ。私のママの代わりになってくれたのよ」

リツコ「ママが…?」
632 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:29:02.61 ID:3d5dCKQ9o
レイ「そうよ。リツコちゃん、あなたのママは本当に素晴らしい人だったの…姿は見えなくても、今もこの場所を支えてる。科学の礎となって、隅々にまで存在しているのよ」

リツコ「……いるのに、会えないの」

レイ「リツコちゃん…。今はまだ分からないかもしれないけど、必ずお母さんの存在を感じるときがくるわ…」

レイ「……それまで、私がママの代わりじゃ、ダメかな…?」

リツコ「……」

リツコ「…いい。……ママは、ママひとりだから」

リツコ「会えるまで…まつ」

レイ「そう……」

レイ「そうね……先生は、ひとりよね…」

リツコ「……」
633 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:30:02.63 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「泣いてるの…?」

レイ「え……?」

リツコ「……だいじょうぶ、だいじょうぶ」

レイの手を撫でるリツコ

レイ「リツコちゃん…」

リツコ「泣いてるとき、ママがこうしてくれると、悲しくなくなるのよ」

(ナオコ「大丈夫よ、あなたなら…」)

レイ「リツコちゃん…!」

リツコ「だいじょうぶ…だいじょうぶ、」

レイ「うっ…う、う…っ」

リツコ「…だいじょうぶ」



カヲル「……」
634 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:31:03.75 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「キールローレンツを議長とする人類補完委員会は、調査組織であるゲヒルンを即日解体。全計画の遂行組織として特務機関ネルフを結成した」

カヲル「そしてわれわれは、そのまま籍をネルフへと移した。二人の女性の魂を宿した、エヴァ零号機、初号機と共に…」





監禁を解かれるカヲル

カヲル「君か…」

アスカ「ご無沙汰ね。少し痩せたんじゃない?」

カヲル「…さすがに老体には堪えるよ」

アスカ「外の見張りには、眠ってもらってるから。逃げるんなら今よ」

カヲル「分からないな……僕を拐っておいて、また助けるのかい」

アスカ「こっちにも色々と都合があんのよ。どうやらゼーレや委員会より、ネルフのほうが真実に近いみたいだし」

アスカ「私はそれが知りたいだけよ」

カヲル「真実か…しかし、この行動は君の…」

アスカ「もとより、覚悟の上よ」
635 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:32:02.03 ID:3d5dCKQ9o
諜報部員「ご協力、ありがとうございました」

シンジ「……もういいの?」

諜報部員「はい、問題は解決しましたから」

シンジ「そう…」

シンジ「……彼女は?」

諜報部員「存じません」
636 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:33:01.23 ID:3d5dCKQ9o
諜報部員「ご協力、ありがとうございました」

シンジ「……もういいの?」

諜報部員「はい、問題は解決しましたから」

シンジ「そう…」

シンジ「……彼女は?」

諜報部員「存じません」






アスカ「遅かったじゃないの。…さっさと済ませなさいよ」


響く銃声
637 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:34:01.83 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「ただいま…」

ミサト「……」

シンジ「……!」


留守電の再生音


アスカ「…シンジ?あたしよ。あんたがこれを聞いてるときは…ずいぶん迷惑かけた後でしょうね。まぁ、あんたのことだから、自分より私の心配してるんでしょうけど」


アスカ「大丈夫よ、後悔はしてないわ…自分のためにやったことだもの。だから…シンジ、あんたもうじうじしてんしゃないわよ?」
638 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:35:03.44 ID:3d5dCKQ9o
アスカ「あんたが胸張らないから…あたしが叱らなきゃいけないんじゃない」

アスカ「次会うときくらい、優しくさせなさいよね」

アスカ「……」

アスカ「信じてるって言ってくれて…嬉しかった。…それじゃあ」


電話「午後、0時、2分、です」

シンジ「………うっ」

シンジ「うっ、く……アスカ…!どうして…」

ミサト「……」



ミサト「その時私は、シンジさんから逃げる事しかできなかった。他には何もできない、大人になったつもりでいても…大切な人を支えることもできない、子どもなんだと…私は分かった」



弐拾壱話分終わり
639 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:41:01.80 ID:3d5dCKQ9o
「兄ちゃん!」


「任せろ…ここで待ってろ」


「言え!コソ泥め」



「……坊主。仲間の居場所を言え。そうすれば…」




「加地リョウジくん、ですね?」



「605号室の患者。あなた知らないの?」

「…お兄さんがよくお見舞いに来られてますよね。それが?」

「もう長くはないでしょう……衰弱しきってる」




「……おれのせいだ」
640 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:42:01.94 ID:3d5dCKQ9o
「民間から?信用できるのかね」

「ですがコアとのシンクロ率は基準値を上回っています」

「…連中か。まったく得体の知れない…」

「気味が悪いよ」


「無理はしてないかな?君の心のケアも私の仕事の内だ」

「必要ない。必要のあるやつはみんな死んだ…」

「俺は生きるんだ 俺が殺した分も…」



「我々も誇らしいよ」

(「お前すげぇな」)

「頑張ってね」

(「頼むぞー!」)


「俺が必要なんだ…」

「………」
641 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:43:02.75 ID:3d5dCKQ9o
レイ「聞こえる?加持くん。シンクロ率が低下してるわ。いつも通り、余計な事は考えずに…」

加持「ああ……分かってる」


ヒカリ「シンクロ率8も低下…加持くん、最近調子悪いですね」

レイ「ええ…困ったわね…この余裕のない時に。やはりリツコちゃんの零号機を優先させましょう、今は同時に修理できるだけのゆとりはない」

アナウンス「弐号機左腕のマイトーシス作業は数値目標をクリア」

アナウンス「ネクローシスは、現在0.05%未満」

アナウンス「アポトーシス作業、問題ありません」

アナウンス「零号機の形態形成システムは、現状を維持」

アナウンス「各レセプターを第2シグナルへ接続してください」



シンジ(…あのアダムより生まれし物、エヴァシリーズ…)

シンジ(セカンドインパクトを引き起こした原因たるものまで流用しなければ…僕たちは使徒に勝てない)

シンジ(逆に…生きるためには、自分たちを滅ぼそうとしたものをも利用する)

シンジ「それが人間なんだ……」


トウジ「センセ!」
642 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:44:02.97 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「……エヴァ13号機までの建造開始?世界七個所で?」

トウジ「上海経由の情報や。ソースに信頼は置ける」

シンジ「…なぜこの時期に量産を急ぐの?」

トウジ「……エヴァを過去に2機失い、現在は2機も大破…。第2次整備に向けて予備戦力の増強を急いどるんやないか?」

シンジ「どうだろう…ここにしてもドイツで建造中の5・6号機のパーツを廻してもらってるから…。最近、ずいぶんお金が動くね」

トウジ「ここに来て予算倍増やからな。それだけ上も、せっぱ詰まっとる、って事やろ」

シンジ「……委員会も焦ってるんだ…」

トウジ「…ほなら、今までみたいな単独やなく、使徒の複数同時展開のケースを設定した…?」

シンジ「そうかもしれない…でも、非公式に行う理由がないよ。何か別の目的があるんだ…」
643 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:45:05.01 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「あ……煮付け、どうだったかな? いやっ、失敗したってわけじゃないけど。今日味見してなくて」

加持「すごく旨かったよ。いつも通り、な?」

ミサト「……うん」

シンジ「…あ、よかった……」


シンジ「……」

電話がなる

ミサト「あ、」

シンジ「あっ、いいよいいよ。僕が出るから」
644 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:46:02.71 ID:3d5dCKQ9o
加持「先輩かな?最近ご無沙汰みたいだし、ここいらで…」

シンジ「……」

ミサト「ごっ、ごちそうさま!あたし、部屋に…」

シンジ「……加持くん」

ミサト「!」

加持「うん?」

シンジ「電話だよ…お母さんから、国際電話」ニコ

ミサト(………ぅ…、)


ミサト(シンジさん……)


加持「はいはい。母さんね…」

加持「(外国語)」
645 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:47:02.69 ID:3d5dCKQ9o
ミサト(…浮いている。加持くんの明るい声だけ…)

ミサト(違う。浮いているのは私。シンジさんも加持くんもいつも通りにしようとしてくれてる。情けないのは私…)

ミサト(私の知っている加持くん、知らない加持くん…)

ミサト(家族と話す彼。…家族? 相手がお母さんなのに)

ミサト「……嬉しくないのね」

加持「ん? 何か言ったか」

ミサト「ううん、電話、終わったの?」

加持「ああ」

ミサト「…お母さん?」

加持「向こうでのね。血は繋がってないが、ずいぶん良くしてもらってる。たまに恋しくなるよ」

ミサト「嘘ばっかり…」

加持「……なんでそう思う?」

ミサト「分かるわよ」

加持「……」
646 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:48:01.73 ID:3d5dCKQ9o
ヒカリ「シンクログラフ、−12.8。起動指数ギリギリです」

レイ「……昨日より更に落ちてる」

シンジ「ごめん、綾波。最近気を遣わせることが多くて…疲れてるんだよ」

レイ「シンクロ率は表層的な身体の不調に左右されない。気のほうでしょうね…問題があるのは。ただしもっと深層の部分…」

レイ「…変更もやむを得ないわ、弐号機のコア…」

レイ「加持くん。上がっていいわよ」
647 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:49:02.24 ID:3d5dCKQ9o
アナウンス「第8動力システムの復旧作業は、本日18:00より再会の予定です」

レイ「酷く傷ついてるみたいね……彼の心」

アナウンス「第1発令所処理問題に関する定例会議は、定刻より行われます」

シンジ「昔のことは…もういいみたいに話してたのに。どうしたんだろう、加持くん…」


レイ「……暴かないことと、治すことは違うわ」


アナウンス「総務担当者は第2会議室にお集まりください」

シンジ「離れたほうがいいんだろうか……彼らにとって負担なら…」


レイ「…あなたもよ」

シンジ「え…?」


レイ「顔色が悪いわ…ここのところずっと」

シンジ「……」

シンジ「……ごめん、もう少し考えてみる」
648 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:50:01.91 ID:3d5dCKQ9o
加持「ウッ……」(吐瀉)

加持「………」


加持「……すまない、みんな…」





エレベーター前。

アナウンス「第7環状ルートは現在事故のため閉鎖中です。迂回ルートは12号線を利用してください」


加持「おっと、」

加持「調子はどうだい?って…俺が聞くことじゃないか」

リツコ「……」

加持「はは…」
649 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:51:02.72 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「あなたは悪いみたいね、調子…」

加持「まぁね。スランプってやつかな? 望むところだよ」

リツコ「何か悩みごと」

加持「……なんで、そう思う…」

リツコ「元気がないみたい、あなたも、ミサトも…」


リツコ「エヴァは………いえ」

加持「なんだよ、気になるじゃないか」

リツコ「エヴァには心がある」

加持「何?」

リツコ「心があるから…心を開かなければ、動かないわ」

加持「……馬鹿な。あれは俺たちが動かして…」

リツコ「分かっているはずよ」
650 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:52:01.70 ID:3d5dCKQ9o
加持「………リッちゃん、君は…」

加持「…ウッ」

口許をおさえる加持

リツコ「大丈夫、」

加持「大丈夫、大丈夫だ……すまない、」

加持「……聞こえないんだ。昔は聞こえていた声が…」

加持「自分の声が煩くて…」

リツコ「……」

リツコ「聞こえるはずよ」

加持「……!はは…厳しいな」

リツコ「……」
651 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:53:07.24 ID:3d5dCKQ9o
加持「そんな顔で見ないでくれ……泣きたくなってくる」

リツコ「……、」

リツコ「いけないの」

加持「……ッ」

リツコ「泣いてはいけないの?」


リツコ「あっ、」

リツコに抱きすがる加持。

抱き返そうとするリツコの手が回る前に加持が体を離す

加持「すまない。……また」

閉じるエレベーター

リツコ「………」



加持「ないさ…そんな資格はない」

加持「……」
652 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:54:05.17 ID:3d5dCKQ9o
青葉「葛城、今日も来ないな。赤木はいつもの事として…」

マヤ「それに加持くんも…。日向くんもまだ退院できないみたいだし」

青葉「…学校どころじゃないんだな、今や」




アナウンス「エヴァ弐号機のシグナル、問題なし」

アナウンス「VAの接合および融合は正常。増殖範囲は予定通りです」


加持「さぞ憎んでいるだろう……俺を」

加持(お前のせいで死んだ、お前が殺した)

加持「お前は俺の誇り…生きる意味」

弐号機 (沈黙)

加持「………もう誤魔化しはきかないな」

(沈黙)

ケンスケ「総員、第一種戦闘配置。対空迎撃戦用意!」

加持「…お出ましか」
653 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:55:01.64 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「使徒を映像で確認、最大望遠です!」

トウジ「衛星軌道から動かん」

ケンスケ「ここからは、一定距離を保っています」

シンジ「ということは、降下接近の機会をうかがっているのか、その必要もなくここを破壊できるのか…」

トウジ「こりゃ迂闊には動けんな」

シンジ「…どの道目標がこちらの射程距離内にまで近づいてくれないと、どうにもならない。エヴァには衛星軌道の敵は、迎撃できない…」

シンジ「リツコちゃんは?」

ヒカリ「零号機共に順調。行けます!」

シンジ「了解、零号機発進、超長距離射撃用意、弐号機、加持くんはバックアップとして…」

加持「待ってくれ」

シンジ「加持くん」

加持「射撃は俺が。」

リツコ「……」

加持「………シンジさん。最後にチャンスをくれ」

シンジ「……分かった…」
654 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:56:04.89 ID:3d5dCKQ9o
トウジ「…ええのか」

レイ「本人がそう言うのなら。…覚悟があるのはありがたいわ」

シンジ「……」

ヒカリ「そんな……これまで、ってことなの…」

レイ「失敗したときは。…弐号機パイロットの変換、考えておかなくてはね」

ヒカリ「…ええ…」

トウジ「初号機は?出さんのか」

シンジ「凍結なんだよ、葛城司令の絶対命令で」

シンジ(…無理ないか、あんな事の後じゃ…)


待機する初号機、ミサト。

ミサト(……加持くん…!)
655 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:57:01.97 ID:3d5dCKQ9o
加持「これで駄目なら、所詮俺はそれまでの男…」

加持「……よくやったさ。もういいだろう」


ケンスケ「目標、未だ射程距離外です」

加持「…………」


加持「来る…!」



天から光線が注ぐ。



加持「……!」



シンジ「これは…!敵の指向性兵器…?」

ケンスケ「いや、熱エネルギー反応無し」

ヒカリ「心理グラフが乱れています、精神汚染が始まります!」

レイ「使徒が心理攻撃…まさか、使徒に人の心が理解できるの…?」
656 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:58:01.96 ID:3d5dCKQ9o
加持「…ッグ!アアアアッ!」


オペレータ「陽電子消滅」

ケンスケ「だめです、射程距離外です!」

ライフルを乱射する弐号機

ケンスケ「弐号機、ライフル残弾ゼロ!」

シンジ「光線の分析は!?」

トウジ「可視波長のエネルギー波!A.T.フィールドに近いが、詳細は不明!」

レイ「加持くんは」

ヒカリ「危険です、精神汚染、Yに突入しました!」
657 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:58:57.06 ID:3d5dCKQ9o
加持「っぐ、ぅ…ア……!」


加持「…め、ろ…」

加持「やめろ…ッ」


加持(!)


加持「やめろ!」


加持「駄目だ、そこは…嫌だ!!!」


加持「ぐ…ッ」


加持「…やめろ、それは…!」

加持「暴かないでくれ、」

加持「それだけは」



加持「俺を見るな!!!!」
658 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:00:01.87 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「加持くん!!」


ヒカリ「心理グラフ限界!」

レイ「精神回路がズタズタにされている…これ以上の過負荷は危険過ぎる」

シンジ「加持くん!戻って!!」


加持「うっ、う、ウッ……」


シンジ「加持くん!!加持くん!命令だ、撤退して!」


加持「……ォ、ア……」


シンジ「加持くん!!!」
659 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:01:02.09 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「加速器、同調スタート」

オペレータ「電圧上昇中、加圧域へ」

オペレータ「強制収束機、作動」

オペレータ「地球自転および重力誤差、修正0.03」

オペレータ「薬室内、圧力最大」

トウジ「最終安全装置、解除!全て、発射位置!」


リツコ「くっ…!」

弾道は使徒を捕らえるが、A.T.フィールドに阻まれ、分散する
660 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:02:01.96 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「だめです!この遠距離で、A.T.フィールドを貫くには、エネルギーがまるで足りません!」

トウジ「すでに最大出力や、これ以上はない…!」

ヒカリ「弐号機、心理グラフシグナル微弱!」

レイ「L.C.L.の精神防壁は」

ヒカリ「だめです、触媒の効果もありません!」

レイ「生命維持を最優先、エヴァからの逆流を防いで!」

ヒカリ「はい!」


レイ(…この光は、まるで…加持くんの精神波長を探っているみたい……まさか、使徒は人の心を知ろうとしているの?)
661 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:03:07.21 ID:3d5dCKQ9o
加持(泣いている……)

加持(泣いているのは誰だ?俺か…)

加持(弟か……)



加持「どうしたんだ?男の子だろう…泣いてちゃだめだ」

加持「泣いてたって誰も助けちゃくれない。自分で何とかするんだ。でもお前は…」

加持「俺が守るから。待ってろ。食い物をとってくる」



加持「……どうした?泣いてちゃ分からないだろう…」


加持「はっ」



加持「泣かないんだ。死人は泣かない」


加持「俺が殺した…死ぬはずだった俺が」
662 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:04:02.76 ID:3d5dCKQ9o
加持「俺の…身体だけが大きくなる。仲間たちを置き去りにして」

加持「大きくなりたかったはずだ…その権利があった、」


加持(俺が置いてきた)



加持「……死人じゃない」


加持「これは俺だ…」


膝を抱えている加持。
663 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:05:03.36 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「弐号機、活動停止!生命維持に問題発生!」

ヒカリ「パイロット、危険域に入ります!」

ケンスケ「目標、変化無し、相対距離、依然変わらず!」

トウジ「零号機の射程距離内に移動する可能性は、0.02%」

シンジ(零号機を空輸、空中から狙撃するか…?いいや駄目だ、接近中に撃たれたら、おしまいだ…)

ミサト「……!」

ミサト「私が初号機で出ます!」

カヲル「いけない、目標はパイロットの精神を侵蝕するタイプだ」

葛城「今、初号機を侵蝕される事態は、避けねばならない」

ミサト「やられません!」

葛城「確証がない」

ミサト「でも、このままじゃ加持くんが!」
664 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:06:04.55 ID:3d5dCKQ9o
葛城「……」

葛城「構わん。リツコ、ドグマを降りて、槍を使え」

カヲル「ロンギヌスの槍を…?葛城君、それは…」

葛城「A.T.フィールドの届かぬ衛星軌道の目標を倒すには、それしかない。急げ!」

シンジ「しかし!アダムとエヴァの接触は、サードインパクトを引き起こす可能性があります!あまりに危険です、葛城司令、やめてください!」

葛城「……」

シンジ「……!」

シンジ(なぜ…危険はないのか…?セカンドインパクトは使徒の接触が原因ではない…?)


アナウンス「セントラルドグマ10番から15番までを開放、第6マルボルジェ、零号機、通過。続いて、16番から20番、開放」


シンジ(嘘…欺瞞だったんだ。そんな事でサードインパクトは起こらない……だったら、セカンドインパクトの原因は…?)
665 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:07:02.79 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…早計なんじゃないかい」

葛城「抵抗手段はひとつではない」

カヲル「しかし…」

葛城「…渚。時計の針は止まってはくれないんだ」

カヲル「……」

葛城「今セカンドを失うわけにはいかない」

カヲル「老人たちが黙っていないよ」

葛城「ゼーレが動く前にすべて済ませる」

カヲル「かと言って、ロンギヌスの槍をゼーレの許可なく使うのは面倒だ」

葛城「理由が存在すればいい」


カヲル「…そううまく丸めこまれてくれるかな」


槍を引き抜く零号機

リツコ「……」
666 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:08:01.77 ID:3d5dCKQ9o
トウジ「弐号機のパイロットの脳波、0.06に低下!」

ヒカリ「生命維持、限界点です!」

ケンスケ「零号機、二番を通過、地上に出ます!」


シンジ「……!」

シンジ「あれが、ロンギヌスの槍…!」

ケンスケ「零号機、投擲体制!」

トウジ「目標確認、誤差修正よし」

ヒカリ「カウントダウン入ります、10秒前、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」


リツコ「…、……っ!」

投擲。
667 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:09:03.01 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「目標、消滅!」

ヒカリ「エヴァ弐号機、開放されます」

カヲル「ロンギヌスの槍は…」

トウジ「第一宇宙速度を突破、現在、月軌道に移行中」

カヲル「回収は不可能に近いな…」

トウジ「…今のところは。あの質量を持って帰る手段はない」





ヒカリ「弐号機健在、グラフ正常位置」

ケンスケ「機体回収は、2番ケイジへ」

オペレータ「第67番ルートを使用してください」


シンジ「加持くんは?」

トウジ「パイロットの生存は確認。汚染による防疫隔離は解除されとる」

シンジ「……そう」
668 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:10:02.42 ID:3d5dCKQ9o
回収される弐号機

加持「………」


ミサト「良かった、加持くん。本当に…」

加持「……ああ…」

ミサト「…加持くん…?」


加持「悪い。少し…休ませてくれ」


ミサト「……」





加持「…これは俺だ」

加持「死人じゃない……」



弐拾弐話分終わり
669 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:11:01.71 ID:3d5dCKQ9o
アスカ「…シンジ?あたしよ。あんたがこれを聞いてるときは…ずいぶん迷惑かけた後でしょうね。まぁ、あんたのことだから、自分より私の心配してるんでしょうけど」

アスカ「大丈夫よ、後悔はしてないわ…自分のためにやったことだもの。だから…シンジ、あんたもうじうじしてんしゃないわよ?」

アスカ「あんたが胸張らないから…あたしが叱らなきゃいけないんじゃない」

アスカ「次会うときくらい、優しくさせなさいよね」

アスカ「……」

アスカ「信じてるって言ってくれて…嬉しかった。…それじゃあ」




シンジ「…鳴らない電話、か…」




ミサト(シンジさん、今日も部屋から出てこない…)

ミサト(……加持くんも…)

ミサト「…今日も帰らない気かしら…」
670 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:12:02.30 ID:3d5dCKQ9o
加持(学校にも行かず、家にも帰らず、ずっと…)


「んっ………ねーえ、」

「うん?」

「寝よっか?」

「…お望みとあらば」

「ふふっ」

携帯のバイブ音

「ごめんね…私、邪魔かな?」

「そんなことないさ。こうやって俺を置いてくれてる」

「…それだけ?」

「どうかな…」

「…あっ…」


加持(……ここに俺はいない)

加持(いるのは誰でもいい、誰か…)
671 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:13:02.11 ID:3d5dCKQ9o
(通話)

レイ「そう…いなくなったの、あの子…」

レイ「そうね……猫ってそういうところ、あるもの…」

レイ「でもまだ分からないじゃない。いつもの場所は探したの?…うん、うん…」

レイ「分かったわ…時間ができたら一度帰るから…。それじゃ、また」



レイ「……そう、あの子が…」

レイ(…嫌な予感がする…)
672 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:14:01.93 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「ロンギヌスの槍……回収はわれらの手では不可能だよ」

ゼーレ「なぜ使用した」

ゼーレ「エヴァシリーズ。まだ予定には揃っていないのだぞ」

葛城「使徒殲滅を優先させました。やむを得ない事情です」

ゼーレ「やむを得ないか。言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ」

ゼーレ「最近の君の行動には、目に余るものがあるな」


葛城「…渚、審議中だぞ」

葛城「……分かった」

葛城「使徒が現在接近中です。続きはまた後ほど」


ゼーレ「その時君の席が残っていたらな」

キール「葛城、ゼーレを裏切る気か?」
673 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:15:02.64 ID:3d5dCKQ9o
車を走らせるシンジ

シンジ「後15分でそっちに着く。零号機を32番から地上に射出、弐号機はバックアップに廻して」

シンジ「そう……初号機は葛城司令の指示に。僕の権限じゃ凍結解除はできない」

シンジ「……!」

シンジ「使徒を肉眼で確認、か…」



オペレータ「零号機発進、迎撃位置へ!」

トウジ「弐号機は現在位置で待機!」

葛城「いや…発進だ」

トウジ「司令…!」

葛城「必要があるときにいなかったでは遅い。発進だ」

トウジ「…了解」
674 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:16:02.01 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「エヴァ弐号機、発進準備!」


加持(また乗っている…どうして?)

加持(誇りであるはずのエヴァ。自分であるはずの身体…)


ヒカリ「弐号機、第8ゲートへ。出現位置決定次第、発進せよ」


加持(発進…なんのため?)


ケンスケ「目標接近、強羅絶対防衛線を通過」


加持(俺のため…人類のためか どっちだったか…)

加持(……)
675 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:17:01.81 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「目標は、大涌谷上空にて滞空。定点回転を続けています」

トウジ「目標のA.T.フィールドは依然健在」


レイ「遅いわ」

シンジ「ごめん、状況は!」

ケンスケ「膠着状態が続いています」

トウジ「パターン青からオレンジへ、周期的に変化しとる!」

シンジ「どういう事…!」

ヒカリ「MAGIは回答不能を提示しています!」

ケンスケ「答えを導くには、データ不足か」

レイ「ただあの形が固定形態でない事は確かだわ」

シンジ「先に手は出せないか…」
676 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:18:01.65 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「リツコちゃん、しばらく様子を見よう」

リツコ「…いえ、来る……!」


変形する使徒


シンジ「リツコちゃん!応戦して!」

トウジ「間に合わん…!」

応戦する零号機。

ライフルを撃ち込むが、効かない

リツコ「……!」

ケンスケ「目標、零号機と物理的接触!」

シンジ「零号機のA.T.フィールドは?!」

ヒカリ「展開中、しかし、使徒に侵蝕されています!」

レイ「使徒が積極的に一次的接触を試みているの?零号機と…!」


リツコ「……っ、う……っ!」
677 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:19:02.11 ID:3d5dCKQ9o
ヒカリ「危険です!零号機の生体部品が侵されて行きます!」

シンジ「エヴァ弐号機、発進、リツコちゃんの救出と援護を!」

ヒカリ「目標、さらに侵蝕!」

レイ「危険よ…!すでに5%以上が生体融合されている」



シンジ「加持くん!後300接近したらA.T.フィールド最大で、パレットガンを目標後部に撃ち込んで!」

シンジ「エヴァ弐号機、リフトオフ!」


シンジ「…加持くん…!どうしたの、加持くんは…?!」

ヒカリ「だめです、シンクロ率が二桁を切ってます!」

シンジ「まずい…!」



加持「動かない…」


加持「死体だ。死体は俺……」




シンジ「駄目だ!このままじゃ餌食にされる」

シンジ「戻して!早く!」
678 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:20:04.42 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「誰…?」

リツコ「私。エヴァの中の私」

リツコ「いいえ、あなたは私じゃない…」

リツコ「あなたは誰?…使徒?私たちが使徒と呼んでいるヒト…?」

使徒「私を抱いて。私とひとつにならない?」

リツコ「嫌よ。あなたとは繋がりたくない」

使徒「そう。でもだめ、もう遅いわ」

使徒「あなたを抱いてあげる。抱き返してあげる…私の心を分けてあげるわ」

使徒「温かいでしょう、ほら、心がポカポカする…」

リツコ「温かい…?違うわ、寂しいのね」

使徒「サビシイ?分からないわ」

リツコ「寂しいから隙間を埋めようとするの」

リツコ「隙間が埋まったら、心も埋まった気がするから…」

リツコ「それを、寂しい、というのよ」

使徒「それはあなたの心よ。悲しみに満ち満ちている。あなた自身の心よ」
679 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:21:03.49 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「私の心…?」

リツコ「……あ、」

リツコ「泣いているのは、私…」


変容し膨れ上がる零号機


シンジ「リツコちゃんっ!」




葛城「…初号機の凍結を現時刻をもって解除、直ちに出撃させろ」

シンジ「え…」

葛城「出撃だ」

シンジ「…はい!」




加持「……声なんてない」

加持「…死人は口を利かないんだ…」
680 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:22:01.89 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「A.T.フィールド展開、リツコちゃんの救出急いで!」


ミサト「はい!」



リツコ「…ミサト…!」


シンジ「ミサトちゃんっ!!」

使徒が初号機を襲う

シンジ「プログナイフで応戦してっ!」

ミサト「はっ!」

悲鳴を上げる使徒

リツコ「これは、私の心…!」

リツコ「ミサトを…?」

リツコ「だめ…っ!」
681 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:23:02.41 ID:3d5dCKQ9o
ヒカリ「A.T.フィールド反転、一気に侵蝕されます!」

レイ「まさか、使徒を……!」

シンジ「駄目だリツコちゃんっ!機体は捨てて、逃げて!」

リツコ「いいえ……私がいなくなったらA.T.フィールドが消えてしまう…!」

レイ「……!」

シンジ「リツコちゃん!!」

ヒカリ「コアが潰れます、臨界突破!」



リツコ「!」

走馬灯。人々の温かな笑顔
682 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:24:01.53 ID:3d5dCKQ9o
光の輪を宿す零号機

消滅。辺りが光に包まれる


ミサト「……、…」



ケンスケ「目標、消失…」

シンジ「……現時刻をもって、作戦を…終了します。第一種警戒態勢へ移行」

トウジ「了解、状況イエローへ、速やかに移行」

シンジ「零号機は……?」

ヒカリ「エントリープラグの射出は、確認されていません…」

シンジ「…生存者の確認と救出、急いで」

レイ「……」
683 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:25:03.02 ID:3d5dCKQ9o
男「綾波博士…」

男「レベルCの…は、南西方向に広がっています」

レイ「…この事は極秘とします。プラグは回収、関係部品は処分してください」

男「了解」

男「作業、急げ!」

レイ「……」
684 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:26:01.60 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「ついに第16の使徒までを倒した」

ゼーレ「これで、ゼーレの死海文書に記載されている使徒は、後一つ」

キール「約束の時は近い。その道のりは長く、犠牲も大きかったな」

ゼーレ「左様。ロンギヌスの槍に続き、エヴァ零号機の損失」

ゼーレ「葛城の解任には十分すぎる理由だな」

ゼーレ「渚を無事に返した意味の分からぬ男でもあるまい」

ゼーレ「新たな人柱が必要ですな、葛城に対する」

キール「そして事実を知るものが必要だ」




レイ「……」

机の上。ゲヒルン時代の写真
685 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:27:01.31 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「ミサトちゃん、入るよ…」


ミサト「……シンジさん。涙、出ないんです……どうしてだろう とても悲しいのに…」


ミサト「…もう嫌、もう忘れたい…シンジさん」

ミサト「忘れさせて…」


シンジの手に自分の手を重ね、身体を預けるミサト

シンジ「っ、」


シンジ「……ミサトちゃん…!」

ミサトの肩を押し身体を離すシンジ

シンジ「ミサトちゃん…自分を捨てちゃ駄目だ」

シンジ「…僕には何もできないよ。ごめん……」


ミサト「……」
686 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:28:06.68 ID:3d5dCKQ9o
ミサト(アスカさんのことがあるから?違うわね。私がいけないんだわ…)

ミサト「ペンペン、おいで…」

ペンペン「……」

ミサト「……最低だ、私って…」






ネルフ地下、3号分室

散乱した書物。倒された机


カヲル「……綾波博士か…」

カヲル「…愛する者を失った今…彼女の心は深い絶望の底だろう」

葛城「……」

カヲル「……話してはやらないのかい」

葛城「彼女が望んだのは…ここで生きた赤木リツコの未来だ」

カヲル「……」

カヲル「希望の依り代とはならないか…」
687 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:29:05.79 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「はい…もしもし………えっ…!」

シンジ「ミサトちゃん!」



アナウンス「第一内科のウガイ先生、ウガイ先生、至急、第二会議室へご連絡ください」




ミサト「リツコ!」

リツコ「……」
688 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:30:01.74 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「ばか、バカァ!心配したじゃないのよ…!」

ミサト「良かった。本当に良かった…」ギュ

リツコ「……」

ミサト「…あ、ごめん…まだ体キツいわよね」

リツコ「……」

ミサト「他は誰も来てないの?薄情ねえ みんな忙しいのかしら…」

リツコ「……」

ミサト「……まだ、ちゃんとお礼言ってなかったわね」

ミサト「ありがとう、助けてくれて」

リツコ「…何が」

ミサト「……何が、って…零号機を捨ててまで助けてくれたじゃない」

リツコ「私が?」

ミサト「そうよ!……覚えてないの…?」

リツコ「…いいえ、知らないの」

リツコ「多分私は二人目だと思うから」
689 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:31:03.33 ID:3d5dCKQ9o
リツコの部屋。

リツコ「……」

眼鏡を手に取るリツコ

リツコ「これが、涙…?初めて見たはずなのに、初めてじゃないような気がする。私、泣いてるの?…なぜ、泣いてるの…?」





葛城「そうだ、ファーストチルドレンは現状維持だ。新たな拘束の必要はない。セカンド、サードに関しても同様だ。監視だけでいい」

カヲル「赤木リツコが生きていると分かれば、議長らが黙っていないだろうね」

葛城「………」


カヲル「それで……彼女を代わりにか。つくづく君は…敵を作る」

カヲル「だが恨んではくれないだろうね」

葛城「……」
690 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:32:01.80 ID:3d5dCKQ9o
キール「われわれも穏便に事は進めたい。君にこれ以上の陵辱、辛い思いはさせたくないのだ」

レイ「私は何の屈辱も感じていません」

ゼーレ「気の強い女性だ。葛城がそばに置きたがるのも分かる」

ゼーレ「聞けば…君は自ら名乗り出たそうじゃないか。代理人として」

ゼーレ「零号機パイロットの尋問を拒否…では、君なら応えてくれるのかね?」


レイ「私で……代わりになるのなら」
691 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:33:01.70 ID:3d5dCKQ9o
アスカ「あんたが欲しがっていた真実の一部よ」


アスカ「他に36の手段を講じてあんたに送ってるけど、そっちはたぶん駄目ね」

アスカ「確実なのはこのカプセルだけ」

アスカ「これは私のすべてよ。あんたに託す。好きにしなさい」

アスカ「パスコードは私たちの最初の思い出」

アスカ「それじゃ、しっかりやんなさいよ」




シンジ「鳴らない電話を待つのはもうやめだ…」

シンジ「アスカの心は無駄にしない…」
692 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:34:02.25 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「良いのか?綾波博士の処置」

ゼーレ「渚とは違う。彼女は返した方が得策だ」

ゼーレ「さよう…まだ利用価値はある」

ゼーレ「いま少し役に立ってもらうか。われわれ人類の未来のために…」

ゼーレ「エヴァンゲリオン、すでに八体まで用意されつつある」

ゼーレ「残るは後四体か」

キール「第3新東京市の消滅は、計画を進める良き材料になる」

キール「完成を急がせろ」

キール「約束の時は、その日となる」
693 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:35:01.68 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「はい、もしもし」

レイ「そのまま聞いて。あなたのガードを解いたわ。今なら外に出られる」

ミサト「レイさん……」




ターミナルドグマ入り口。カードキーを差し込むレイ

レイ「……、…!」

シンジ「無駄だよ。僕のパスがないと」

レイ「……そう…アスカの仕業ね」

シンジ「綾波博士。…ここの秘密、見せてもらうよ」

レイ「…いいわ。ただしこの子も一緒に…」

ミサト「……」

シンジ「…分かった」
694 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:36:02.24 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「……まるでリツコの部屋…」

レイ「…彼女の部屋よ。生まれ育ったところ」

ミサト「ここが?」

レイ「そうよ、一人目のね」

ミサト「…、……!」


レイ「リツコちゃんの深層心理を構成する光と水は、ここのイメージが強く残っていたのでしょうね…」

シンジ「何を……!言ってるんだ、綾波…!目的の場所はここじゃない!」

レイ「…分かっているわ」
695 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:37:02.08 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「エバ…?」

レイ「その失敗作…。10年前に破棄されたの」

ミサト「…エバーの墓場…」

レイ「……そうね」


レイ「あなたのお母さんが消えたところでもあるわ」


レイ「あなたも見ているはずよ…あなたのお母さんが、魂を亡くした姿を…」

ミサト「……!」

シンジ「…、綾波!」


レイ「……こっちよ」

シンジ「……」


レイ「あなたが知りたかった真実…」



レイ「……」
696 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:38:02.01 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「赤木…リツコ…?」

ミサト「……!!」

シンジ「まさか、ダミープラグの…!」

レイ「そう、ダミーシステムのコアとなるもの……その生産工場よ」

シンジ「これが…?」

レイ「ここにあるのはダミー。そして赤木リツコのためのただのパーツに過ぎない」

レイ「……人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たったの。それが15年前…」

レイ「せっかく拾った神様も消えてしまった」

レイ「……でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム」

レイ「そしてアダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ…」

ミサト「ヒト…人間なんですか…?」

レイ「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには、人の魂が宿らせてあるもの」

レイ「みんな、サルベージされたものなのよ」
697 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:39:13.57 ID:3d5dCKQ9o
レイ「魂が入ったのは赤木リツコ、一人だけだった……あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになっていたのよ」

レイ「ここに並ぶ赤木リツコと同じ物には魂がない。ただの入れ物なのよ」

レイ「だから壊すの」

レイ「怖いから…」


リツコたち「……」


シンジ「……! やめるんだ、綾波!そんなことしたら…!」


レイ「したら、何…?入れ物が壊れるだけよ。この中には何もないの。ただ人の形をしたもの…」


レイ「……これ以上ない生命に対する侮辱よ…」


レイ「代わりはいくらでもいる。…そんなことはもう、言わせないわ…」

レイ「あの子が優しいんじゃない、私が愚かだった……」
698 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:40:15.45 ID:3d5dCKQ9o
レイ「…私たちのために死んだあの子は、もういないの」


レイ「…初めから、こんなもの……っ、作るべきじゃなかったのよ…!」


レイ「うっ、うぅ…うっ…」

ミサト「……」

シンジ「綾波…」




シンジ(エヴァに取り憑かれたヒトの悲劇……)

シンジ(僕も…同じか…)




弐拾参話分終わり
699 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:41:01.90 ID:3d5dCKQ9o
「リョウジ、お手柄だな!」

「ちょろいさ、こんなもん」

「よくやったな加持くん」

「当然です。それが俺の役目」

「フルスコアだ。その調子で頼むよ」


(リョウジ!)

(加持くん)

(兄ちゃん!)
700 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:42:01.76 ID:3d5dCKQ9o
病室


(沈黙)


古い倉庫


(沈黙)


仲間に駆け寄る加持

抱き上げる。血が滴っている


加持「はっ」
701 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:43:01.63 ID:3d5dCKQ9o
廃墟のバスタブ

加持「分かったんだ。俺は誰も守っちゃいない。守りたかったものはもういない。置いてきた……」


諜報課員「加持リョウジだな」




トウジ「諜報二課から。セカンドチルドレンを無事保護したそうや」

シンジ「……そう。ずいぶん…遅かったね」

トウジ「いけ好かん奴らや。地味な嫌がらせしくさって…」

シンジ「……」

シンジ(……そして今日、加持くんの代わりのフィフス到着…話が出来過ぎてる、これもシナリオ通りか…)





ミサト(ダミープラグ…赤木リツコ…魂の入れ物?父はいったい何をしているの…?)

過去の記憶。病室の母。安らかな寝顔

ミサト(何をしたの…!)
702 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:44:04.21 ID:3d5dCKQ9o
レイ「葛城司令…」

葛城「……」

レイ「猫が…死んだんです。家で飼っていた……。とても可愛がっていたのに。突然、もう二度と会えなくなるんですね」


葛城「……君には、辛い役割を負わせた…」

レイ「いいえ…いいえ。私が望んだんです。後悔はありません」

葛城「……赤木リツコの容態は」

レイ「落ち着いています。記憶に…混濁は見られますが……」


レイ「……う…っ」

泣き崩れるレイ
703 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:45:02.16 ID:3d5dCKQ9o
レイ「……あの子をよろしく、と…!そう言われた日に破壊すべきだった!」

レイ「彼女は人間なんです!…代えのきく人形じゃない」


葛城「……すまない」


(ナオコ「…所長。お話があります」)


葛城「いつか君には真実を話す」

葛城「もう少しだけ……耐えてくれ」


閉まるドア

レイ「…う…っ、先生……」

レイ「教えてください…」
704 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:46:01.94 ID:3d5dCKQ9o
(通話)

カヲル「…そうだ、拘束だ。形式上のものでいい。…誰にも知られるな」

カヲル「ああ、頼んだよ」


葛城「……」

カヲル「…名目は破壊行為への懲罰…。不満だったかい?」

葛城「……いや」

葛城「そのほうが安全だろう…」
705 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:47:02.83 ID:3d5dCKQ9o
ミサト(どこに行ったんだろう…加持くん…)

ミサト(でも会ってどうするんだろう…リツコの話でもする…?)


ミサト(日向くんも青葉くんも…みんな家を失って他のところへ行ってしまった。友達は…友達と呼べる人はいなくなってしまった…誰も…)


ミサト(……リツコには会えない…その勇気がない。どんな顔をすればいいのか、分からない。加持くん、シンジさん、お母さん…私はどうすれば…どうしたらいいの…?)




マリ「しっあわせは〜あるいてこ〜ない」

マリ「だ〜からあるいていっくんだねぇ〜」

ミサト(…なに、この子…)

マリ「歌はいいよねぇ」
706 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:48:02.42 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「……」

マリ「いいよね?」

ミサト「……」

ミサト「…私に言ってる?」

マリ「君しかいないジャン!」

ミサト「あぁ、そうね…まぁ…」

ミサト(なんなのこの子…)

マリ「……辛いから明るく歌うの。面白い文化だよね。せつな〜くてあったかくてさぁ…」


マリ「君はどう思う?葛城…ミサトちゃん」


ミサト「なんで、私の名前…」

マリ「なっんででしょ〜〜〜?」
707 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:49:07.59 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「……まさか、あなた。新しいパイロット?」

マリ「そ。真希波マリ。よろしくねん♪」

ミサト「……」

マリ「…あっ!ちょっとー!」

マリ「待ちなってば」



(加持「最後のチャンスをくれ」)

ミサト(……)
708 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:50:10.39 ID:3d5dCKQ9o
トウジ「フィフスチルドレン…到着したそうや」

シンジ「真希波マリ…過去の経歴は抹消済み。リツコちゃんと同じ…」

トウジ「……ここが気になるな。生年月日、セカンドインパクトと同日…」

シンジ「…委員会が直接送ってきた子どもなんだ、必ず何かある…」

トウジ「マルドゥックの報告書も、フィフスの件は非公開になっとる。せやから……ちーとばかし、諜報部のデータに割り込んだ」

シンジ「なっ…、トウジ、そんな危ないこと…!」

トウジ「お小言はあとや。確かに危ない橋やったが…その甲斐はあった」

トウジ「…綾波レイの居場所」

シンジ「……!」


トウジ「フィフスのシンクロテスト。どないする」

シンジ「…小細工してもしょうがない…。見せてもらおう。彼女の実力がどの程度のものなのか…」
709 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:51:05.48 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…後、0コンマ3下げて」

ヒカリ「はい」

カヲル「……」

カヲル「このデータに間違いは…?」

トウジ「全ての計測システムは、正常に作動しとります」

ヒカリ「MAGIによるデータ誤差、認められません」

カヲル「……まさか、コアの変換も無しに弐号機とシンクロするとはね…」

ヒカリ「しかし、信じられません!…いえ、システム上、ありえないです…」


シンジ「それでも…事実なんだ。事実をまず受け止めてから、原因を探ってみて」
710 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:52:01.79 ID:3d5dCKQ9o
マリ「君がリリスの器?」

リツコ「私は……赤木リツコ」

マリ「ん〜。やっぱ似た匂い…」

リツコ「……あなたは?」

マリ「私? ヒ・ミ・ツ」

リツコ「……」




カヲル「…フィフスが赤木リツコと接触したそうだよ」

葛城「…そうか」

カヲル「今、フィフスのデータをMAGIが全力を挙げて当たっている」あらっている



シンジ「にもかかわらず、未だ正体不明。何者なんだ…?あの子は…」


シンジ「ミサトちゃんも未だ戻らず、か……ダメだな…」

シンジ「……父親役が…聞いて呆れるよ…」
711 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:53:02.75 ID:3d5dCKQ9o
ヒカリ「現在、セントラルドグマは開放中。移動ルートは3番を使用してください」



マリ「おっまたー♪」

ミサト「…待ってないわよ。……ついて来ないで!」

マリ「な〜んでさぁ。仲良くしよ〜よ〜」

腕を回そうとするマリ。振り払うミサト

マリ「……」

ミサト「……」

マリ「つれないにゃ〜…なんで?」

ミサト「……」

ミサト「…知らない子だもの…」

マリ「……ふぅ〜ん?」


ミサト「……ついて来ないでよ」

マリ「あたしもそっちに用があるの〜」
712 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:54:05.84 ID:3d5dCKQ9o
マリ「…なんか、悩みごと?」

ミサト「……」

マリ「私でよかったら、聞くよ〜?」

ミサト「……」

マリ「……加持くんのことかな〜」

ミサト「…っ」

マリ「それとも、赤木リツコ?」

ミサト「なんで…っ」

(加持「俺は手を取ってもらえて嬉しかったよ…」)



ミサト「……あんたには、関係ないでしょ…!」


シャワールームを出るミサト

マリ「……」

マリ「…なるほど。繊細だねぇ」
713 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:55:01.64 ID:3d5dCKQ9o
マリ「ちゃんと乾かさないと、風邪引いちゃうよ?」

ミサト「…ついて来ないでって、言ってるでしょ」

マリ「…心配しなくても加持くんの居場所とったりしないよー」

ミサト「……、いいかげんに…っ」

ミサトの口に人差し指を立てるマリ

マリ「続きはさっ、私の部屋で話そーよ」

マリ「一人だと退屈なんだよね」

マリ「ほらっ!早く早く〜」


促すマリ。立ち尽くすミサト

ミサト(……)
714 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:56:02.92 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「ネルフ。われらゼーレの実行機関として結成されし組織」

ゼーレ「われらのシナリオを実践するために用意されたモノ」

ゼーレ「だが、今は一個人の占有機関と成り果てている」

ゼーレ「さよう。われらの手に取り戻さねばならん」

ゼーレ「約束の日の前に」

キール「ネルフとエヴァシリーズを本来の姿にしておかねばならん。葛城、ゼーレへの背任、その責任は取ってもらうぞ」




初号機のケージ。

葛城「われわれに与えられた時間は残り少ない…」

葛城「希望であるロンギヌスの槍は手を離れた」

葛城「まもなく最後の使徒が現れる。今はそれを消すことだ」


葛城「……信じている」

葛城「…お前も、そうだろう…」
715 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:57:01.54 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「私は…なぜここにいるの」

リツコ「なぜまた生きているの」

リツコ「何のために」

リツコ「誰のために…」


リツコ「フィフスチルドレン…」

リツコ「…あの子から、私と同じものを感じた…」

リツコ「なぜ…?」
716 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:58:01.72 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「ここが街外れで良かった…。ペンペンが巻き込まれずに済んで…」

シンジ「…でも、この次の保証はないんだ…だから、明日からは伊吹さんちのお世話になるんだよ…」

シンジ「…しばらく、お別れだね…」

ペンペン「クワァッ」

シンジ「ペンペン……」ギュ…
717 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:59:02.54 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「……こういうのって、普通お客が上なんじゃないの…?」

マリ「知らない子だも〜ん」

ミサト「……」

マリ「…それで、居づらくなって逃げ出してきたんだ?」

ミサト「あんたが無理やり誘ったんでしょ」

マリ「そりゃあ、君の中に逃げたいって気持ちがあったからデショ」

ミサト「……」

マリ「…図星?」

ミサト「知らないわよっ。もう寝る」

マリ「え〜」
718 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:00:01.62 ID:3d5dCKQ9o
マリ「……」

マリ「とりゃっ」

ミサト「ちょっ…!自分のとこで寝なさいよ…!」

マリ「ん〜?寒いから。ここで寝る」

ミサト「…パーソナルスペースってもんがあるでしょっ」

マリ「い〜じゃんい〜じゃん〜。袖振り合うも多生の縁、って言うし」

ミサト「意味分かんないわよ、もう」

ミサト「だったら、私は上に…」

マリ「うにゃっ!」

ミサト「!、ちょっと…!」

マリ「い〜じゃん。あったかくて、やわらかいし…」

マリ「あたしも柔らかいっしょ?うりうり〜」

ミサト「ちょっと……、もう…」
719 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:01:05.76 ID:3d5dCKQ9o
マリ「お? 大人しくなった」

ミサト「……馬鹿らしくなっただけよ。まともに取り合うのが」

ミサト「……はぁ…」

マリ「ん〜…ぬくぬく」

ミサト「……」


ミサト(誰かと寝るなんて、いつぶりかしら…)


ミサト(生温かい…人の呼吸、落ち着かない…)

ミサト(いや、落ち着くの…?誰かの体温)


ミサト(鼓動……)


ミサト(……)


ミサト「……おかぁ、…さん…」

マリ「……」
720 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:02:02.07 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「どうだった、あの子のデータ」

トウジ「これや。イインチョに借りた」

シンジ「これは…!」

トウジ「…公表できんのも納得や、こんなもん…」

シンジ「理論上ありえない…エヴァとのシンクロ率を自由に設定できるなんて」

シンジ「それも、自分の意志で…!」

トウジ「謎やな…探れば探るほど」


シンジ「……もう、正攻法ではいかないか…」
721 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:03:02.20 ID:3d5dCKQ9o
レイ「……よく来られたわね」


シンジ「…聞きたいことがあるんだ」

レイ「…ここでの会話は録音されるわ」

シンジ「構わないよ。あの子の…フィフスの正体は何なの?」

レイ「……」

レイ「……おそらく、最後のシ者…」
722 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:04:01.89 ID:3d5dCKQ9o
マリ「さ…行くよ、アダムの分身。そしてリリンの僕…」


空中に踏み出すマリ。



トウジ「エヴァ弐号機、起動!」

シンジ「そんな…!? 加持くんは!」

ケンスケ「303病室です。確認済みです!」

シンジ「じゃあいったい誰が…!」

ヒカリ「無人です、弐号機にエントリープラグは挿入されていません!」

シンジ(誰もいない?フィフスじゃないのか……!?)

トウジ「セントラルドグマに、A.T.フィールドの発生を確認!」

シンジ「弐号機!?」

トウジ「…いや、パターン青!間違いない!使徒や」

シンジ「使徒……!」

シンジ「あの子どもが…!」
723 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:05:02.91 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「目標は第4層を通過、なおも降下中!」

ケンスケ「だめです、リニアの電源は切れません!」

オペレータ「目標は第5層を通過!」

カヲル「セントラルドグマの全隔壁を緊急閉鎖!少しでも時間を稼ぐんだ!」

アナウンス「マルボルジェ全層緊急閉鎖、総員退去、総員退去!」

カヲル「……まさか、ゼーレが直接送り込んでくるとはね…」

葛城「連中は予定を一つ繰り上げるつもりだ。われわれの手で…」
724 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:06:01.46 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ 02「最後の使徒がセントラルドグマに侵入した。現在降下中だ」

ゼーレ「予定通りだな」

キール「葛城。君はよき友人であり、志を共にする仲間であり、理解ある協力者だった。これが最後の仕事だ。初号機による遂行を願うぞ」





ケンスケ「装甲隔壁は、エヴァ弐号機により突破されています!」

トウジ「目標は、第2コキュートスを通過!」

葛城「……!」

葛城「エヴァ初号機に追撃させろ」

シンジ「はい!」

葛城「…いかなる方法をもってしても、目標のターミナルドグマ侵入を阻止するんだ」
725 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:07:03.18 ID:3d5dCKQ9o
シンジ(……使徒はなぜ、弐号機を…!)


カヲル「まさか…弐号機との融合を果たすつもりなのか」

葛城「あるいは破滅を導くためか…」





ミサト「あの子が、使徒……?」

ミサト「…嘘よ。だってあの子は…」

シンジ「本当なんだ。ミサトちゃん」

シンジ「出撃の準備を」

ミサト「……」

シンジ「ミサトちゃん…!」
726 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:08:02.10 ID:3d5dCKQ9o
マリ「おっそいな〜」

マリ「…ちょっとからかいすぎちゃった、かな」



オペレータ「エヴァ初号機、ルート2を降下!目標を追撃中!」


(マリ「加持くんの居場所とったりしないよー」)


ミサト「……!」

ミサト「馬鹿にして…!」

ミサト「汚させやしない、加持くんの、弐号機を…!」
727 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:09:01.87 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「初号機、第4層に到達、目標と接触します」



ミサト「…いた!」

マリ「おっそ〜い。待ちくたびれたよ」


ミサト「マリ…ッ!」

マリ「あー。はじめて!名前呼んでくれたね」

ミサト「ふざけんじゃ、ないわよ…っ!」


にらみ合い、掴みあう弐号機と初号機


マリ「今さら向き合ったって。許してあげないよ!誰でもよかったくせに」

ミサト「…! じゃあ、あんたはどうして…ッ」

ミサト「私に近付いたのよっ!」

プログナイフで斬りかかる
728 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:10:01.86 ID:3d5dCKQ9o
弾かれる

ミサト「うっ」

マリ「無駄だよ」

マリ「弐号機は今、誰とも会いたくないって。」


ミサト「これは…!A.T.フィールド…!?」


マリ「驚くこたないじゃん。誰だって持ってる。A.T.フィールドは心の壁」

ミサト「心の壁…!?」

マリ「そう。こうやって、土足で上がることだって…!」

ミサト「グッ」

マリ「できる!」

ミサト「アアアッ」
729 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:11:02.17 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「エヴァ両機、最下層に到達」

オペレータ「目標、ターミナルドグマまで、後20」


シンジ「……く…っ!」

シンジ「……初号機の信号が消えて、もう一度変化があったときは…」

トウジ「分かっとる。その時は…ここを自爆させるんやな」

シンジ「…トウジ、僕は…!」

トウジ「このワシがセンセ一人置いていくわけないやろ。死ぬときは一緒や」

ケンスケ「はは。俺はできれば死にたくないかな」

トウジ「アホ!何をウジウジ言うとんのや。ちゃんとタマンキついとんのか!?」

ヒカリ「ちょっと!やめなさいよ、こんなときに…」

トウジ「もとより覚悟の上や!…ついて行くで」


シンジ「……ありがとう、みんな…!」
730 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:12:01.79 ID:3d5dCKQ9o
マリ「…ヒトの宿命か…。いじけてたって何にも楽しいことないのに…」

ミサト「…なんなのよ…!」

マリ「遺伝子レベルでの欲求に対する疑問…ヒトの限界だよ…」





シンジ「いったい、これは…!」

トウジ「これまでにない強力なA.T.フィールド…!」

ケンスケ「光波、電磁波、粒子も遮断しています!何もモニターできません」

シンジ「結界…!?」

ヒカリ「目標およびエヴァ弐号機、初号機、共にロスト、パイロットとの連絡も取れません!」
731 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:13:01.72 ID:3d5dCKQ9o
最深部に落下する両機


ミサト「んっ…!う、うぅ…っ!」

ミサト「待ちなさい、よ…っ!」

弐号機に足を掴まれる

ミサト「!」

マリ「……」

マリ「諦めちゃいなよ」

ミサト「……!」

マリ「もう無理だって」

ミサト「無理じゃない……!」




ケンスケ「最終安全装置、解除!」

トウジ「ヘヴンズドアが、開く…!」

シンジ「……!」

シンジ「たどり着いたのか、使徒が…!」
732 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:14:01.70 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「みんな…」

トウジ「……」


猛攻。


ミサト「……ぁああああっ!」


弐号機に掴みかかる初号機


ミサト「はっ!」


シンジ「…状況は!」

トウジ「A.T.フィールドや!」

ケンスケ「ターミナルドグマの結界周辺に先と同等のA.T.フィールドが発生」

ヒカリ「結界の中へ侵入していきます!」

シンジ「まさか、新たな使徒…!」

ケンスケ「だめです、確認できません!…いえ、し、消失しました!」

シンジ「消えた?!使徒が?!」
733 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:15:02.65 ID:3d5dCKQ9o
マリ「…おまたせ。アダム…ようやく会えたね…」

マリ「……!」

マリ「違う、これは…!」

マリ「…なるほど。」

マリ「リリンの狙いはこれか…」


横たわる弐号機。


マリ「悔しいなあ……」


初号機の手がマリを捕らえる


マリ「……あとちょっとで勝てると思ったのに。」


ミサト「あんた…っ!なんで、こんなこと…!」


マリ「生きることに……理由なんていらない。ただ生きていたいじゃん?」


マリ「生み落とせば次が待ってる。できるからやればいい。そうやって繰り返し、生命は巡ってきた…」

マリ「疑問なんて…持ってるみたいだからサ、面白くって。もうちょっと見ていたかったけど…」
734 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:16:02.62 ID:3d5dCKQ9o
マリ「でももう終わり。今回は生命に懐疑的なほうが生き残る」

ミサト「…なに、言ってんのよ…」


マリ「…ま。それも面白いか…」


ミサト「わけ、分かんないわよ…!どうしろって言うのよ、私に…!」



マリ「受け取ってよ、リリンの代表として」

ミサト「……」

マリ「私のキモチ」


ミサト「…!」



ミサト「なによ…なんなのよ、ずっと!最初から…」

ミサト「勝手なことばっかり言わないでよ、あたし、あたしは…!」
735 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:17:02.13 ID:3d5dCKQ9o
マリ「知ってるよ?」


ミサト「!」

マリ「最初から好きじゃなかった…気に入らなかった。だよね?」


ミサト「…ッ」

マリ「殺しなよ。そうすれば君たちの世界はそのまま」


マリ「…このまま死んで、心に残るのも悪くない……」

ミサト「……」

マリ「…悪かったね。パーソナルスペース汚しちゃって」

ミサト「……、」

ミサト「馬鹿…!」
736 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:19:08.81 ID:3d5dCKQ9o
洗浄される初号機

葛城「……」

リツコ「……」





ミサト「あの子は…」

ミサト「マリは……使徒じゃなかった」

ミサト「温もりがあったもの…」

ミサト「好きじゃなかった…でも、嫌いでもなかった…」

ミサト「……何も違わなかった。私たちは…っ」
737 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:20:01.74 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「……彼女は死を望んだんだ。ミサトちゃん、君は生を…」


ミサト「違う!」

ミサト「違う、違う、違う違う!私は逃げただけ…!」

ミサト「何も選びたくなかった…だから、あの子の言うことを聞いた…そのほうが、自分が傷つかないもの」

ミサト「嘘ばっかり…知ってるなんて、ぜんぶ嘘…!」

ミサト「あの子も生きたかったんだわ……」

シンジ「……」


扉を閉めるシンジ

布団に踞るミサト

ミサト「……寒い…」




弐拾四話分終わり
738 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:21:05.54 ID:3d5dCKQ9o
続きは明日
739 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 21:56:02.54 ID:KdkUNOgoo
>>317

>>212

大人ぶってる少年、でなんとか(脳内山寺に)演ってもらうしかないな…
740 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 21:57:13.25 ID:KdkUNOgoo
期待コメもありがとう 読むほうも乙!

あと少しなので付き合ってくれ
741 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 21:58:01.70 ID:KdkUNOgoo
修正

>>248

サードインパクト×

セカンドインパクト○
742 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 21:59:02.02 ID:KdkUNOgoo
修正

>>351

葛城「……なによ、「リッちゃん」って…」×

ミサト「……なによ、「リッちゃん」って…」○


他にもあると思うが各自で補完頼む

すでにまとめてくれてるサイトの管理人さん、ありがとう
743 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:01:02.24 ID:KdkUNOgoo
第一脳神経外科。


ミサト「……」

アナウンス「東棟の第2、第3区画は本日18時より閉鎖されます。引き継ぎ作業は本日16時30分までに終了してください」


ミサト「加持くん…、ねぇ」

ミサト「起きてよ……こわいの。シンジさんも、リツコも、みんな…!」

ミサト「どうして平気なの…?あんな…!」

ミサト「……起きて…起きてよ…!分かって、私を見てよ…!」

ミサト「おかしいって、言ってよ…!こんなの変だって…!」


(マリ「…悪かったね」)

(ミサト「馬鹿!」)

(シンジ「彼女は死を望んだんだ」)

(ミサト「違う!」)

(ミサト「寒い…」)
744 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:02:02.02 ID:KdkUNOgoo
ミサト「……もう分からないの。他人も、自分も…」

ミサト「…ねぇ。加持くん…!加持くん…」

ミサト「起きて、また…いつもみたいに、好きって、言っ……」

加持の上に泣き崩れるミサト

ミサト「うっ、う…っ」


ミサト「う…っ、加持くん…」



ミサト「私を助けてよ…!」
745 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:03:05.83 ID:KdkUNOgoo
加持。夢の中。

「大勢で行くと目立つ」

「大丈夫さ…うまくやるよ」


「こいつらか、最近この辺を荒らしてる」

「殺せ。どうせ足もつかない」

「やめろ…」

「やめろ?やめろって?坊主…」


「やめてやってもいい。…仲間の居場所を吐きな」

「そうすりゃ助けてやる」

「……あ、」


加持「……あぁ……っ」

ミサト「加持くん…?加持くん!」
746 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:04:02.25 ID:KdkUNOgoo
加持「あ、ああああっ!」

ミサト「…や、ぁ!」

ミサト「か…加持く、離し…!」

(「仲間の居場所を言え」)

加持「……ろ…してやる…!」


加持「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる…っ!」

ミサト「い…い、や…」

ミサト「だれかあっ」

加持の身体から計器が外れる。電子音。
747 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:05:02.31 ID:KdkUNOgoo
看護師「…何をしてるの!」

看護師「先生!」

医師「鎮静剤だ、」

医師「押さえろ!興奮している」

加持「うぅ、あぁ…!」

加持「……っあああッ!」

看護師「…っ、落ち着いて!ここは病院よ」

加持「ふーっ、ふーっ……」

加持「……、……」

加持「…」



ミサト「………」

看護師「大丈夫?怪我はない?」
748 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:06:02.14 ID:KdkUNOgoo
ヒカリ「本部施設の出入りが全面禁止…?」

トウジ「解せんな。第一種警戒態勢のままっちゅうのも…」

ヒカリ「最後の使徒だったんでしょう?あの子が…」

ケンスケ「ああ。全ての使徒は消えたはずだよ」

トウジ「なんや。ほんならめでたしめでたし、ってことなんか?」

ヒカリ「じゃあここは…エヴァはどうなるの?綾波さんも今いないのに…」

ケンスケ「……ネルフは、組織解体されると思う。俺たちがどうなるかは…見当もつかないよ」

トウジ「補完計画の発動まで、自分らで粘るしかないか」





シンジ「…出来損ないの群体として既に行き詰まった人類を完全な単体としての生物へ人工進化させる補完計画。理想の世界、か…。」

シンジ「そのために委員会はまだ使うつもりなんだ…」

シンジ「アダムやネルフではなく、あのエヴァを」


シンジ「アスカの予想通り…」
749 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:07:02.02 ID:KdkUNOgoo
キール「約束を違えたな……葛城」

ゼーレ 02「我らに背き 滅びを拒むとは」

ゼーレ 05「滅びの宿命は新生の喜びでもある」

ゼーレ 04「神も人も全ての生命が死を以てやがて一つになる為に」

キール「だがロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完は出来ぬ」

キール「それが可能なのはリリスの分身たるエヴァ初号機のみ」

キール「速やかな遂行を願うぞ…」


葛城「死は何も生みません」


キール「死は君達に与えよう」


カヲル「人は生きていこうとする所にその存在がある」

カヲル「それが自らエヴァに残った彼女の…いや」

カヲル「彼女たちの願いだからね」
750 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:08:02.79 ID:KdkUNOgoo
夜。

目を覚ますリツコ

リツコ「……」


目を閉じるミサト

ミサト「……」



明け方。

キーを叩くシンジ

シンジ「…これが…セカンドインパクトの真意…」

シンジ「はっ」

シンジ「気付かれた…!」

シンジ「…いや、違う…!」

シンジ「始まったのか…」

シンジ(始まってしまった。こんなにも早く…)
751 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:09:01.86 ID:KdkUNOgoo
葛城「……結局、最後まで頼ることになってしまった」

葛城「…行ってくれるか」

リツコ「……」コクン…





警告音。

オペレータ「第6ネット、音信不通」

カヲル「左は青の非常通信に切り替えろ。衛星を開いても構わない…そうだ。右の状況は?」

オペレータ「外部との全ネット、情報回線が一方的に遮断されています!」

カヲル「目的はMAGIか…」
752 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:10:02.28 ID:KdkUNOgoo
ケンスケ「全ての外部端末からデータ侵入。MAGIへのハッキングを目指しています!」

カヲル「やはりか…侵入者は松代のMAGI2号かい?」

ケンスケ「いえ、少なくともMAGIタイプ5」

ケンスケ「ドイツと中国、アメリカからの侵入が確認できます!」

カヲル「…ゼーレは総力を挙げているな…彼我兵力差は1対5…分が悪い…」

オペレータ「第4防壁、突破されました」

トウジ「主データベース閉鎖…駄目や、進行をカットできん!」

ヒカリ「更に外郭部へ侵入、予備回路も阻止不能です!」

カヲル「まずいな…MAGIの占拠は本部のそれと同義だ…」
753 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:11:04.65 ID:KdkUNOgoo
アナウンス「総員、第一種警戒態勢。繰り返す。総員、第一種警戒態勢。D級勤務者は可及的速やかに所定の配置に付いてください」



レイ「解ってる…、MAGIの自律防衛でしょう…」

諜報員「はい、詳しくは第2発令所の洞木二尉からどうぞ」

レイ「ここもいよいよね…。最後の敵は人か…」




アナウンス「現在、第一種警戒態勢が発令されています」

(通話)

シンジ「状況は!」

トウジ「今しがた、第2東京からA-801が出た」

シンジ「801?」

トウジ「特務機関ネルフの特例による法的保護の破棄」

トウジ「及び、指揮権の日本国政府への委譲…最後通告やな。ああ、そうや。今MAGIがハッキングを受けとる…かなり押されとる」

ヒカリ「碇くん?洞木よ。今、綾波さんがプロテクトの作業に入ってくれてる」

ヒカリ「あ…!」

シンジ「綾波が…?」
754 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:12:02.79 ID:KdkUNOgoo
レイ「……先生、私。待てませんよ、もう…」

レイ「疲れました……そっちへ行ってもいいですか…?」


レイ「…駄目ね、私…弱気になってる。こんなことじゃ先生に叱られてしまうわ」

レイ「先生……」




オペレータ「強羅地上回線、復旧率0.2%に上昇」

オペレータ「第3ケーブル、箱根の予備回線、依然不通」

シンジ「後、どれくらい…?」

トウジ「ギリギリ間に合いそうや…綾波博士様様やな」

シンジ(MAGIへの侵入だけ……それで済むはずがない。おそらく……!)
755 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:13:02.62 ID:KdkUNOgoo
カヲル「MAGIは前哨戦に過ぎない。彼らの狙いは本部施設、及び残るエヴァ2体の直接占拠だ」

葛城「ああ。リリス、そしてアダムさえ我らにある」

カヲル「老人達が焦るわけだ……」


ヒカリ「MAGIへのハッキングが停止しました」

アナウンス「フリーズ、フリーズ、フリーズ、フリーズ…」

ヒカリ「Bダナン形防壁を展開。以後62時間は外部侵攻不能です」




レイ「先生……今度は一緒ですよ…」
756 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:14:01.79 ID:KdkUNOgoo
ゼーレ 09「葛城はMAGIに対し、第666プロテクトを掛けた。この突破は容易ではない」

ゼーレ 07「MAGIの接収は中止せざるを得ないな」

キール「出来うるだけ穏便に進めたかったのだが、致し方あるまい。本部施設の直接占拠を行う」


山道に蠢く影。


隊員「始めよう」

隊員「予定通りだ」
757 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:15:02.39 ID:KdkUNOgoo
被弾するネルフ本部。


オペレータ「第8から17までのレーダーサイト、沈黙」

ケンスケ「特科大隊、強羅防衛線より侵攻してきます」

トウジ「御殿場方面からも二個大隊が接近中」


カヲル「…最後の敵が人とはね」

葛城「…総員、第一種戦闘配置」

ヒカリ「戦闘配置…?相手は使徒じゃないのに…同じ人間なのに…」

トウジ「…敵さん、そうは思うてくれんようやな」
758 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:16:02.10 ID:KdkUNOgoo
ネルフ本部ゲート前

職員「…、……」

職員「う、……!」

開放されるゲート

警報。

職員「おいどうした!おい!」

職員「なんだ?」

職員「南のハブステーションです」

着弾。


オペレータ「台ヶ丘トンネル使用不能」

オペレータ「西5番搬入路にて火災発生」

オペレータ「侵入部隊は第1層に突入しました!」
759 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:17:06.39 ID:KdkUNOgoo
シンジ「西館の部隊は…陽動だ」

シンジ「本命がエヴァの占拠なら、パイロットを狙うはず…至急ミサトちゃんを初号機に退避させて!」

トウジ「了解」

シンジ「加持くんは」

ケンスケ「303号病室」

シンジ「…そのまま弐号機に乗せて。あそこだと確実に見つかる…!エヴァの中のほうが安全だ」

ヒカリ「…了解、パイロットへの投薬を中断、発進準備!」

シンジ「加持くん収容後、エヴァ弐号機は地底湖に隠して」

シンジ「…すぐに見付かるけど、ケージよりマシだ…!リツコちゃんは?」

ケンスケ「所在不明。位置を確認できない」

シンジ「こんなときに…!捕捉急いで!」




迷いなく進むリツコ。その手にはアダム

リツコ「……」
760 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:18:02.40 ID:KdkUNOgoo
トウジ「弐号機射出!8番ルートから水深70に固定」

シンジ「続いて初号機発進!ジオフロント内に配置して」

ケンスケ「駄目だ…!パイロットがまだ…!」

シンジ「そんな、」

シンジ「ミサトちゃん…!」


アナウンス「セントラルドグマ第2層までの全隔壁を閉鎖します。非戦闘員は第87経路にて待避してください」


ケンスケ「地下、第3隔壁破壊。第2層に侵入されました」

カヲル「戦自約一個師団の投入か…占拠は時間の問題だね…」

葛城「……渚先生、後を頼みます」

カヲル「…解っているよ。彼女に伝えてくれ、すまなかったと」

葛城「……」
761 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:19:03.24 ID:KdkUNOgoo
侵攻、破壊。

オペレータ「第2グループ、応答なし」

オペレータ「77電算室、連絡不能」

ケンスケ「52番のリニアレール、爆破されました!」

トウジ「なんて奴らや…、使徒のがよっぽど可愛いげがあったな」

シンジ「無理ないよ。今までとは相手が違う。人を殺すなんて…!」



瀕死の同僚を運ぶ職員

職員「っっん、っっん…!」

銃撃。


隊員「赤のケーブルから優先して切断…」


火炎放射機。

職員「あぁぁ…」
762 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:20:05.46 ID:KdkUNOgoo
オペレータ「第3層Bブロックに侵入者!防御できません!」


ケンスケ「Fブロックからもです!メインバイパスを挟撃されました」

シンジ「第3層まで破棄します。戦闘員は下がって」

シンジ「803区間までの全通路とパイプにベークライト注入」

ケンスケ「ベークライト注入!」


アナウンス「第703管区、ベークライト注入を開始。完了まであと30。第730管区、ベークライト注入を開始。完了まであと20」


シンジ「これで、少しは…」

トウジ「センセ!…ルート47が寸断されてグループ3が足止め食っとる。このままやと、葛城ミサトが」

シンジ「……、」

シンジ「…非戦闘員の白兵戦は極力避けて。向こうはプロだ。ドグマまで後退不可能なら投降した方がいい…!」


シンジ「…ごめん、ここは任せる」

トウジ「…シンジ、…」

シンジ「大丈夫。…死なないよ」
763 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:21:02.68 ID:KdkUNOgoo
無線「二子山はもういい、長尾峠に回れ」

戦闘団長「以外と手間取るな…」

隊員「我々に楽な仕事はありませんよ」




トウジ「……まったく。無茶しよるわ。こっちは本格的な対人要撃システムもないっちゅーのに…」

ケンスケ「だな。精々テロ止まりだ」

トウジ「…戦自が本気出したら、この施設なんてイチコロなんやないか?」

ケンスケ「イチコロなんてもんじゃないさ。骨も残らないと思うね」

トウジ「アホ!嘘でもそんなことないて、言わんかい!」
764 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:22:02.24 ID:KdkUNOgoo
爆撃。

トウジ「が……っ!」

トウジ「……!!」


トウジ「イインチョ!」

ケンスケ「ロック外して!」

ヒカリ「嫌……私…鉄砲なんて撃てない…!」

ケンスケ「訓練で何度も撃ったろ…!」

ヒカリ「その時は…!その時は人なんて、いなかったもの…!」

トウジ「…く…っ、」

トウジ「委員長!伏せとれ!」
765 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:23:07.06 ID:KdkUNOgoo
無線「第2層は完全に制圧。送れ」

無線「第2発令所、MAGIオリジナルは未だ確保できず。左翼下層フロアにて交戦中」

無線「5thマルボルジェは熱冷却装置に入れ」


無線「エヴァパイロットは発見次第射殺」

無線「非戦闘員への無条件発砲も許可する」

無線「柳原隊、新庄隊、速やかに下層に突入」


隊員「サード発見。これより排除する」

隊員「悪く思うなよ…!」


銃声。倒れる隊員


ミサト「……!」

葛城「立つんだ…ミサト」
766 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:24:06.86 ID:KdkUNOgoo
倒れた隊員の無線を聞くシンジ

無線「紫の方は確保しました。ベークライトの注入も問題ありません」

無線「赤い奴は既に射出された模様。目下移送ルートを調査中」

シンジ「ミサトちゃんと初号機の物理的接触を断とうとしている…。ミサトちゃん、無事なのか…!でもどうやって…」


無線「ファーストは未だ発見できず」

シンジ「……うかうかしてられない。どっち道初号機までのルートを確保しなきゃ…」


(通話)

シンジ「トウジ、聞こえる?」
767 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:25:01.94 ID:KdkUNOgoo
ミサト「たすけて…加持くん、助けてよ…」


葛城「……セカンドは弐号機の中だ」

葛城「ミサト。お前もすぐに…」

ミサト「やめてよ…!」

ミサト「もう、嫌なの…!もう誰も殺したくない!行きたくない!」

ミサト「もう嫌……なんでなのよ」


葛城「……すまなかった」

ミサト「………!」

ミサト「なに…よ、なん…今さら!何なのよ!」

ミサト「こんなところに呼んで!ずっと来てくれなかったのに、急に、エバーに乗せて、私から奪って、また…!」
768 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:26:02.15 ID:KdkUNOgoo
カヲル「構わない!ここよりもターミナルドグマの分断を優先させるんだ」

トウジ「あちこち爆破されとるのに、やはし此処には手を出さんか…」

ケンスケ「一気に片を付けたい所だろうが、下にはMAGIのオリジナルがあるからね…」

トウジ「はん。できるだけ無傷で…ちゅうわけか」

ケンスケ「ただ、対BC兵器装備は少ない。使用されたらヤバイよ…」

トウジ「N2兵器もな…」


爆発。激しい揺れ。


ケンスケ「あ〜、言わんこっちゃない…」

トウジ「奴ら加減ってもんを知らんのか!」

カヲル「無茶をする…」

さらに降り注ぐ

ヒカリ「ねぇ、どうしてそんなにエヴァが欲しいの!」
769 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:27:02.31 ID:KdkUNOgoo
葛城「奴らは……ゼーレはサードインパクトを起こすつもりだ。使徒ではなくエヴァシリーズを使って…」

葛城「15年前のセカンドインパクトは、人間に仕組まれたものだ」

葛城「だがそれは、他の使徒が覚醒する前にアダムを卵にまで還元する事によって被害を最小限に食い止める為のものだった…」

葛城「…ミサト、われわれ人間も、アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた18番目の使徒だ。他の使徒達は別の可能性だった…。人の形を捨てた人類の」


葛城「……私は16年前、この事実を知った。ゼーレにおもねることで計画を絶つ気でいた。だが…それも失敗だ」

葛城「人間同士で争う形となってしまった…」

ミサト「……」



葛城「……生き残るにはエヴァシリーズを全て消滅させるしかない。ミサト…」


葛城「それが叶わなくても、お前なら…」

ミサト「……?」

葛城「…いや。来るんだ」
770 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:28:01.69 ID:KdkUNOgoo
首相「電話が通じなくなったな」

秘書官「はい、3分前に弾道弾の爆発を確認しております」

首相「ネルフが裏で進行させていた人類補完計画。人間全てを消し去るサードインパクトの誘発が目的だったとは…とんでもない話だ」

秘書官「自らを憎むことのできる生物は人間くらいのものでしょう」

首相「さて、残りはネルフ本部施設の後始末か」

秘書官「ドイツか中国に再開発を委託されますか?」

首相「買い叩かれるのがオチだ。20年は風地だな。旧東京と同じくね」
771 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:29:02.30 ID:KdkUNOgoo
無線「表層部の熱は退きました。高圧蒸気も問題ありません」

無線「全部隊の初期配置完了」

隊員「現在、ドグマ3層と紫の奴は制圧下にあります」

戦闘団長「赤い奴は?」

隊員「地底湖の水深70にて発見、専属パイロットの生死は不明です」




加持(………、)

加持(生きてる…)

加持(…また、夢の中か…?)

加持(…うっ、)

加持(何が起きてる…?)

加持(いたい…痛い、身体が…)

加持(殴られている、強い、力で…)

加持(上から…)
772 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:30:01.89 ID:KdkUNOgoo
「兄ちゃん」

「リョウジー!」

「兄ちゃん」

「リョウジ」

「兄ちゃん」

「リョウジ」

「兄ちゃん!」

「リョウジー!」

「兄ちゃん……」


加持「はっ…」


(「教えろ…」)

(「仲間の居場所を吐け」)
773 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:31:03.05 ID:KdkUNOgoo
爆雷。


加持「死ぬのか…?俺は…」

(「仲間の居場所を言えば…」)


加持「死ぬのは俺、死ぬのは俺…?死ぬのは俺…。死ぬのは俺、死ぬのは俺…!死ぬのは俺、死ぬのは俺、死ぬのは俺、死ぬのは俺、死ぬのは俺…」


(「兄ちゃん……」)
774 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:32:02.09 ID:KdkUNOgoo
(「もうここは出よう」)

加持「死ぬべきなのは俺、」

(「俺たちは自由なんだ」)

加持「あの時死ぬはずだったのは俺」

(「軍の倉庫を見つけた」)

加持「俺が死んでさえいれば、」

(「これで当分は…」)

加持「みんなは助かった…」

(「あっこら、はは」)

加持「死ぬのは俺」

(「兄ちゃん!」)



(「加持くん」)

加持「死ぬのは俺……一人だ!」

閃光。
775 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:33:01.93 ID:KdkUNOgoo
隊員「こっ、これは!?」

隊員「やったか!?」



護衛艦を押し上げ、現れる弐号機

戦自の攻撃を蹴散らしていく



加持「……大切だった」

操縦桿を握る加持

加持「大切だ…!」


空を翔る。




車内。

ヒカリ(無線)「エヴァ弐号機起動!加持くんは無事です。生きてます!」

ミサト「加持くんが……!」
776 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:34:03.81 ID:KdkUNOgoo
隊員「ケーブルだ!やつの電源ケーブル、そこに集中すればいい!」

爆撃。

加持「……チイッ!」

加持「アンビリカルケーブルが、無かろうと……ッ!」

加持「こちとら1万2千枚の特殊装甲と!」


加持「A.T.フィールドがある…!」


攻撃機を凪ぎ払う


加持「うぉぉぉぉぉ…っ!」




キール「忌むべき存在のエヴァ。またも我らの妨げとなるか…やはり毒は、同じ毒を以て征すべきだな」


輸送機からエヴァシリーズが投下される


加持「エヴァシリーズ…!完成していたのか」


カヲル「S2機関搭載型を9体全機投入とは…大げさすぎるな。ここで起こすつもりか…!」

降り立つエヴァシリーズ
777 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:35:03.86 ID:KdkUNOgoo
無線。電話越しに。

シンジ「司令…!よかった、ミサトちゃんは無事なんですか!」

葛城「無事だ」

シンジ「そのまま非常用のルート20へ向かってください」

葛城「電源は」

トウジ「三重に確保しとります。3分以内に乗り込めば第7ケージに直行できます」

葛城「分かった。……セカンドに繋げるか」

トウジ「どうぞ」

葛城「…エヴァシリーズは必ず殲滅させるんだ。初号機もすぐに上げる」

葛城「それまで耐えてくれ」
778 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:39:13.80 ID:KdkUNOgoo
加持「必ず殲滅、ね…。司令も、病み上がりに軽く言ってくれる」

加持「…残り3分半で9つ。一匹につき20秒か……ははっ」

加持「望むところだ…!」



加持「うお、お…!」

9号機の頭を潰し、背骨を折る



加持「Erst!」
779 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:40:02.24 ID:KdkUNOgoo
ルート20。

葛城「……ここだ」

銃撃。逃れる葛城、ミサト。


隊員「逃がしたか」

隊員「目標は射殺出来ず。追撃の是非を問う」

無線「追撃不要。そこは爆破予定である。至急戻れ」

隊員「了解」
780 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:41:13.30 ID:KdkUNOgoo
ミサト「え……?」

葛城「……っ…、」

ミサト「ちょっと…!」

葛城「電源は……生きている」

葛城「行って初号機に乗るんだ」

ミサト「……お父さんは…!?」

葛城「……」

ミサト「ねぇ……!」

葛城「……ミサト」

何かを手に握り込ませる

葛城「 」

扉が閉まる

手のひら。血のついた十字架

ミサト「う……っ」

ミサト「くぅ…、っ、う、う…っ」
781 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:42:12.19 ID:KdkUNOgoo
加持「だああああっ」

11号機を地底湖に沈める

加持「あああ…っ!」

11号機の頭にプログナイフを突き刺し沈黙させる

加持「これで4つ…っ!」


加持「次ッ!」


加持「でやあああああッ!」


プログナイフが砕ける

加持「チイッ!」


弐号機の顔面を掴まれる

加持「ウッ」


加持「…ゥオアアアッ!」
782 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:43:02.94 ID:KdkUNOgoo
ターミナルドグマに辿り着くリツコ


リツコ「……」

リツコ「……!」


レイ「……待っていたわ。司令は一緒じゃないのね…」

レイ「嘘ばっかり。結局……真実なんて教えてくれなかった」

レイ「……でももういいの…」カチャ…


リツコに銃口を向けるレイ


レイ「……あなたはトリガーとなる。だったら殺すのが確実……」

リツコ「……」
783 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:44:02.03 ID:KdkUNOgoo
レイ「ずっとあなたを守ってきたつもりだった。先生と自分を重ねて。…それをあなたが重荷に感じていたのも知ってる…」

レイ「……もう、終わりにしましょう。家族ごっこは終わり」

リツコ「……」

リツコ「…あなたは私を撃てない」

レイ「……!」

レイ「……そうね。でももう遅い。さっきMAGIのプログラムを変えてきたわ」

レイ「一緒に死にましょう…先生も……あなたのお母さんも一緒に」カチ…

レイ「……」

レイ「……!、なぜ……!」

レイ「は…っ」



レイ「BALTHASARが……!」

レイ「う……っ、」


レイ「……なぜなの!母としての先生がそう望むならいったい、私は…!」
784 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:45:14.60 ID:KdkUNOgoo
トウジ「どうなっとるんや外は!」

ヒカリ「活動限界まで1分を切ってる!このままじゃ加持くんが…!」


シンジ「ミサトちゃん、急いで……!」




加持「葛城は、せめて葛城だけは」


加持「守ってみせる…!」


加持「アアアアアッ!」



加持の声が鳴り響いている。第7ケージ。


ミサト「……いや…!」

ミサト「もう失うのはイヤ…!」

ミサト「どうしてなの…ッ」
785 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 22:46:20.62 ID:KdkUNOgoo
埋もれている初号機。

ミサト「こんなときにッ!」

ミサト「動けないで何が世界の希望よ」


加持「だああああっ」


ミサト「動いてよ…!」

ミサト「私の初号機なら、動いて…!」


壁が軋む。

ミサトに手を伸べる初号機


ミサト「アッ……」

ミサト「……!」

ミサト「まさか…!」


初号機「………」


ミサト「お母さん…?」






25話分終わり
786 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:01:02.29 ID:KdkUNOgoo
肩を貫かれ、よろめく。

加持「…ッグ…!」

右腕を引き裂かれる。

加持「ォア…!」

加持「…………!」

加持「ダアアアアッ!!!」


なぎ倒して後ずさる

加持「……ハァ、ハァ…!」


加持「………、」

加持「ここまでか…!」
787 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:02:01.67 ID:KdkUNOgoo
ヒカリ「内部電源終了…っ!予備電源に切り替わります、活動限界です…!」


シンジ「加持くん…!」


加持「……はぁ、は……」

加持(………よく、やった…)


加持「へへ…」

加持「…よく、ここまでもったな…」

加持「ありがとう」
788 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:03:01.85 ID:KdkUNOgoo
加持「俺もすぐに行くよ」

加持「…今度は、一緒に…」

目を閉じる加持。

刃が迫る。


大きな影。

初号機が飛びかかる

ヒカリ「……!」

ヒカリ「エヴァ初号機、起動!」
789 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:04:03.59 ID:KdkUNOgoo
加持「葛城……!?」


ミサト「……ごめん、遅れちゃって」


加持「………、」

加持「……締まらないな…」


残った機体をなぎ倒していく初号機

加持「………」
790 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:05:02.60 ID:KdkUNOgoo
レイ「…欠けた心の補完」

レイ「不要な身体を捨てて、全ての魂をひとつにする…それが人類補完計画の全容」

レイ「…なぜ先生は、あなたを行かせようとするの…!」


レイ「復讐のためだったと言うの…?すべて、私を育てたことも…」

リツコ「…違うわ」

リツコ「確かに母さんは、セカンドインパクトで愛する人を失った」



リツコ「でもこれは、私が決めたこと…」

レイ「……!」
791 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:06:02.36 ID:KdkUNOgoo
ミサト「…加持くん、腕、大丈夫…?」

加持「…どってことないさ、これくらい…」


加持「…葛城、俺のことは気にするな」

加持「いや…しないでくれ」

ミサト(…………、)


加持「俺は弟たちを身代わりにして生き残った」

加持「悔いることも恐れていた…でも今は分かる」

加持「俺が悪かったんだ」

加持「もうこれ以上、俺は……!」


ミサト「加持くんのせいじゃない」

加持「……、」
792 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:07:16.34 ID:KdkUNOgoo
ミサト「大人が悪いのよ……いえ、セカンドインパクトが。あれが世界を変えてしまった。加持くんたちを苦しめた…」

ミサト「背負う人が違っただけ。あなたを身代りにしても…しなくても、必ず誰かが背負うことになるのよ」

加持「葛城…」

ミサト「………」

ミサト「生きろ、と…言われたの、お父さんに」


ミサト「そう望まれたの…。だから生きるの。私も望んでる。加持くん、あなたに」

ミサト「生きていてほしい、って…」


ミサト「……絶対に生き残るのよ。生き残って、それでも死にたかったら、その時死ねばいい…!」


ミサト「今、死に急ぐような真似したら…!一生許さないから…!」



加持「……、…」

加持「敵わないな…」
793 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:08:06.50 ID:KdkUNOgoo
ヒカリ「エヴァシリーズ、すべて沈黙!」

トウジ「ィヨッシャー!」

ヒカリ「ミサトちゃん!加持くんを安全な所へ運んで」

ミサト「はい!」


加持「………」

加持「葛城、………帰ったら」

ミサト「?」

加持「あの時の続きをしよう」

ミサト「……、!」

ミサト「バカ…!」
794 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:09:07.02 ID:KdkUNOgoo
ヒカリ「……待って」

ヒカリ「…なに、これ……」


加持「!」

加持「葛城、後ろ…!」


シンジ「倒したはずのエヴァシリーズが…!?」


飛び立つエヴァシリーズ

狙いすまされる。乱れ打ち。

加持「ッグ、」

ミサト「加持くん!」
795 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:10:02.35 ID:KdkUNOgoo
対抗するミサト


ミサト「ああああっ!」


ミサト「うぐ…っ!」

腹部を貫かれる

加持「葛城!」

ミサト「…ぅああああああっ!」

加持「……っ」

引き抜いて突き刺す

ミサト「あああああっ!」

加持「葛城……っ」

ミサト「…ぁあああぁ!」
796 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:11:05.57 ID:KdkUNOgoo
ミサト(加持くんは)

ミサト(私が守る、絶対に)

ミサト(話したいことが沢山あるのよ)

ミサト(自分で決めたの)


ミサト(……お父さん、お母さん…!)

ミサト(私が決めたのよ、守りたいと、思ったの)


ミサト「ぐ…っ!」


ミサト(力を貸して…!)


光が天を貫く。

光の羽を纏い、初号機が立ち上がる


隊員「エヴァンゲリオン初号機…!」

隊員「まさに悪魔か…」



加持「葛城…!」
797 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:12:03.99 ID:KdkUNOgoo
隊員「大気圏外より高速接近中の物体あり!」

隊員「なんだと…!」



カヲル「ロンギヌスの槍…!」



加持「ロンギヌスの槍…!?」


シンジ「ミサトちゃん!」


ミサト「ッア……!」

飛来した槍が初号機の喉元に止まる
798 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:13:02.21 ID:KdkUNOgoo
キール「遂に我らの願いが始まる」

ゼーレ 04「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に還った」

ゼーレ 02「葛城の娘を乗せたままだが」

キール「神が時を選んだのだ」

ゼーレ 03「方舟の行き先は決まっている」

ゼーレ 09「いささか数が足りぬが、やむを得まい」

ゼーレ(全員)「エヴァシリーズを本来の姿に」


全員「我ら人類に福音をもたらす真の姿に」

全員「等しき死と祈りを以て、人々を真の姿に」

キール「それは魂の安らぎでもある」


キール「では、儀式を始めよう」
799 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:14:06.52 ID:KdkUNOgoo
エヴァシリーズが初号機を空へと運ぶ

トウジ「エヴァ初号機が拘引されていく…!」

ケンスケ「高度12000!更に上昇中!」


カヲル「ゼーレめ、初号機を依り代とするつもりか…」


ミサト「…………!」


キール「エヴァ初号機に聖痕が刻まれた」

ゼーレ(全員)「今こそ中心の樹の復活を」


キール「我らが僕、エヴァシリーズは皆この時の為に」

光を放つエヴァシリーズ

ケンスケ「エヴァシリーズ、S2機関を開放!」

トウジ「次元測定値が反転、−を示しとる!…観測不能!数値化できん!」

カヲル「…アンチA.T.フィールドか…」

空に図象が浮かび上がる

ヒカリ「全ての現象が15年前と酷似している…じゃあこれってやっぱり、サードインパクトの前兆なの…!?」
800 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:15:14.86 ID:KdkUNOgoo
隊員「S2機関、臨界!」

隊員「これ以上は、もう…」


戦闘団長「作戦は、失敗だったな…」


辺り一帯が赤く染まる。爆発。


ケンスケ「直撃です!地上堆積層が融解!」

トウジ「第2波が本部周辺を掘削中……外郭部が露呈していく…!」

カヲル「まだ物理的な衝撃波だ。アブソーバーを最大にすれば耐えられる!」




ゼーレ 08「悠久の時を示す」

ゼーレ 09「赤き土の禊を以て」

ゼーレ 11「まずはジオフロントを」

キール「真の姿に」




カヲル「……人類の、生命の源たるリリスの卵…黒き月…今更、その殻の中へと還る事は望まない……」

カヲル「だが、それも…リリス次第か…」
801 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:17:02.21 ID:KdkUNOgoo
遠くで響く爆音。


レイ「終わらせると言うの?この世界を…」

リツコ「……そうじゃない」

リツコ「……手に」


リツコ「触れたいと思ったの」

リツコ「だから掴みにいく」


レイ「そんな……!」


リツコ「さよなら……母さん」

レイ「…、……!」


レイ「リ……!」
802 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:18:02.22 ID:KdkUNOgoo
ケンスケ「ターミナルドグマより正体不明の高エネルギー体が急速接近中!」

トウジ「A.T.フィールドを確認!分析パターン青!」

ヒカリ「まさか、使徒!?」

トウジ「いや、違う…人! 人間…!」


上昇していくリリス。ネルフメンバーの目の前を通り過ぎていく


地中から現れる白い手。

ヒカリ「ひっ…!」


(ヒカリの悲鳴)
803 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:19:02.44 ID:KdkUNOgoo
ミサト「なんなの、これ…」



ミサト「どうなったの…!加持くんは、みんなは…!」

ミサト「はっ」


巨大化したリリス。

ミサト「リツコ…!」


マリ「知らない子だも〜ん」

ミサト「マリ……!?」

マリ「………」

ミサト「いや…!」

マリ「…」

ミサト「嫌…っ!」
804 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:20:03.32 ID:KdkUNOgoo
ケンスケ「エヴァシリーズのA.T.フィールドが共鳴!」

トウジ「さらに、増幅しています!」

カヲル「…赤木リツコと同化を始めたか」


(ミサトの悲鳴)


ケンスケ「心理グラフ、シグナルダウン!」

トウジ「デストルドーが形而化されていく…!」

カヲル「…これ以上はパイロットの自我が持たない…」



ゼーレ「エヴァンゲリオン初号機パイロットの欠けた自我をもって人々の補完を」

キール「三度の報いの時が、今」
805 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:22:01.69 ID:KdkUNOgoo
ミサト(はっ)


ミサト(ここは、どこ)


ミサト(私はどうなったの…)



マリ「こーっちだよーっ」

ミサト(…あれ。私……)

リツコ「こっちよ」

ミサト「あ…」

加持「遅れるぞ?」
806 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:23:01.54 ID:KdkUNOgoo
ケンスケ「ソレノイドグラフ反転!自我境界が弱体化していきます!」

ケンスケ「A.T.フィールドもパターンレッドへ!」


コアに槍が刺さり、初号機との同化が始まる


カヲル「使徒の持つ生命の実と、人の持つ知恵の実。その両方を手に入れたエヴァ初号機は神に等しき存在となった…」

カヲル「そして今や生命の胎芽たる生命の樹へと還元している。この先にサードインパクトの無から人を救う方舟となるのか…人を滅ぼす悪魔となるのか」

カヲル「未来は子どもらの手に委ねられた……」


ヒカリ「ねえ!私たち、正しいわよね?」

ケンスケ「分かるもんか」


生命の樹となる初号機。
807 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:24:01.93 ID:KdkUNOgoo
ミサト(ここはどこ、)

ミサト(私は…?)


ミサト(なんだろう…とても、重い…)


リツコ(それは私たちが負った柵)

リツコ(託された望みなのよ)




マリ(重いなら、捨てれば?)

リツコ(とても重い)

ミサト(だけど、必要……)
808 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:25:01.74 ID:KdkUNOgoo
ミサト「リツコ?」

リツコ「はっ」

ミサト「リツコ……どうしたのよ、早く乗っちゃいましょ」

アナウンス「列車が発車します 黄色い線の内側までお下がりください」

リツコ「私は……」


(リツコ「代わりはいる…」)

(リツコ「もう気づいて泣く人もいないわ…」)


リツコ「……なぜ戻ってきたの」



リツコ「ミサト…」
809 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:26:01.52 ID:KdkUNOgoo
ミサト「さ〜ねん」

ミサト「忘れちゃったわ」

ミサト「…きっと、そうしたかったから。」


リツコ「自分勝手ね」

ミサト「自分を殺しているよりかはいいわ」


ミサト「……」


リツコ「……私にはできない」


リツコ「私は捨てても平気」

リツコ「でも、私の体は…」
810 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:27:01.85 ID:KdkUNOgoo
ミサト「……」

ミサト「嫌になったら、捨てればいい」

リツコ「また欲しくなったら?」

ミサト「また拾えばいいのよ」


リツコ「……もう手が届かなかったら?」

ミサト「届く範囲で探すのよ」

リツコ「忘れられなかったら?」

ミサト「……」
811 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:28:06.81 ID:KdkUNOgoo
(ミサト「加持くんっ」)

リツコ「あなたは怖くないの?一度関わりを持ったら…」

ミサト「手を離すのが怖い?」

リツコ「……」

ミサト「簡単よ、リツコ」

ミサト「嫌になったら、離せばいいのよ」



(リフレインする意識)



リツコ「嫌になったら…?」

(葛城「リツコ」)

(レイ「リツコちゃん」)
812 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:29:02.28 ID:KdkUNOgoo
不幸な人を見たくないのよ

私がいないと不幸になる人


幸福が誰かの存在に依存していることが


リツコ「嫌だった、ずっと……」


ミサト「自分がかわいいのね」

リツコ「そうよ」



リツコ「私のせいにしてほしくないの。それだけ」
813 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:30:03.23 ID:KdkUNOgoo
「それ」無しでは生きられない人の

「それ」になりたくないのよ


私で何かを埋め合わせようとしている


捨てきれない人の

捨てられないものになりたくないのよ

私なしでは可哀想になってしまう人たち

私を縛る人たち


リツコ「煩わしいのよ!」

リツコ「優しさと保身を一緒にしないで!」

リツコ「自分がどうあるかなんて、」

リツコ「そんなもののために、私を使わないでよ!」
814 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:31:02.22 ID:KdkUNOgoo
トウジ「パイロットの反応が限りなく0に近づいていく…!」

ケンスケ「エヴァシリーズ及びジオフロント、E層を通過。なおも上昇中」


アナウンス「現在、高度、22万キロ。F層に突入」


トウジ「エヴァシリーズ全機健在!」

ケンスケ「リリスよりのアンチA.T.フィールドさらに拡大、物質化されます」


巨大化したリリスがジオフロントを抱く


トウジ「アンチA.T.フィールド臨界点を突破!」

ケンスケ「駄目です!このままでは固体生命の形が維持できません!」

リリスが羽を広げる

カヲル「…ガフの部屋が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか…」
815 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:32:02.15 ID:KdkUNOgoo
リツコ「愛しさが私を満たしていく…空しさが私を埋めていく……そうか…心地よかったのね、私…」

リツコ「誰かの心に蓋をするのが…」



ネルフメンバーの周囲に現れるリツコ(リリス)


カヲル「……シンジくん…」

カヲル「すまない。僕は…」

カヲル「あの時彼女をとめるべきだった…。彼女にその覚悟があっても、君にはないと…分かっていたはずなのに…彼女をとめられなかった」

微笑むシンジ(リリス)


カヲル「シンジくん、君は…」

カヲル「幸せになれたのかい」


融ける
816 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:33:13.09 ID:KdkUNOgoo
トウジ「あ、あぁ…!」

ヒカリ(リリス)がトウジにキスをする

融ける


ケンスケ「ひ、ひぃ……っ!」

大量のリツコ(リリス)がケンスケに迫る

融ける


ヒカリ「…A.T.フィールドが、みんなのA.T.フィールドが消えていく。これが答えなの。私が求めていた……はっ!」

トウジ(リリス)がヒカリを抱き締める


ヒカリ「鈴原……私、わたし……っ!」


融ける
817 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:34:06.95 ID:KdkUNOgoo
レイ「碇くん……?」

微笑むシンジ(リリス)

レイ「いいえ。私の中のあなたなのね…こんなときまで」


レイ「私も嘘つきね…」


手を握る

融ける



アスカとシンジ

シンジ「アスカ……!」

シンジ「……僕たち、これで良かったよね…?」




キール「始まりと終わりは同じところにある。良い。全てはこれで良い」
818 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:36:01.90 ID:KdkUNOgoo
葛城とその妻


「……君か」

「ようやく会えたな…」

「……」

「…会わせる顔も、ないが…」



「…バカね」

「あなたはよくやったわよ…」

「分かるわ…」

「ずっと、側にいたんだもの…」
819 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:37:01.98 ID:KdkUNOgoo
「これが…」

「生命の理に背いた…報いか」



「ええ…でも、これで終わりじゃない」

「あなたと私の子どもが、私たちの分まで未来を紡いでくれる」



「……」

「本来なら…私が望むはずだった…人との共存を」

「だが、私は逃げてばかりだった…君からも、仲間からも」

「結果…巻き込むまいとして遠ざけた我が子に、全てを託す形となってしまった」

「……」
820 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:38:02.07 ID:KdkUNOgoo
「私に望みはない」

「今際の際に、何を望むか分からない。私の幸せの道は過去にしかない」


「信じている……」

「あの子らの、望む力を」



「……」

「ええ…」
821 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:39:01.97 ID:KdkUNOgoo
自らのコアを貫くエヴァシリーズ

光の群れがリリスの手に向かう

リリスの額に生じた亀裂

初号機が取り込まれていく


(シンジ「…買い換えどきかな……」)


リツコ「大切なものは二度と帰ってこない」

大切なものが何もないから、どこででも生きていけると思った

(本当に?)

疲れるの、人を好きになるのって。

構ってもらえないと悲しいから

失うと心が欠けるから

だからもう一人になって、

一人のままで生きようと思ったのよ



ミサト「馬っ鹿ねぇ」

ミサト「そんなこと考えてたの?」
822 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:40:01.59 ID:KdkUNOgoo
マリ「だからなるだけ遠ざけて?」

加持「そう。縁のない場所に自分を追いやる」

マリ「自分がかわいーんだ」

加持「悪いか?」

マリ「いんやー。自然なことじゃない?」

マリ「誰だって自分が一番かわいいでしょ」

(リフレイン)

リツコ「…心が、落ち着かないのよ」

弱い人間が傷ついているのを見ると

脆い人間が俯いているのを見ると

健常で、笑っている人だけを見ていたいのよ

それは人間の一面にすぎない

私は人間が苦手なのよ

ひどく憂鬱になるの、見てると…
823 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:41:01.83 ID:KdkUNOgoo
加持「これ以上誰かに自分の存在を脅かされたくないんだ」

べき、べきじゃないの姿をこれ以上増やしたくない

俺は天の邪鬼だからな

愛せない存在を、わざわざ生むことはない

傷つけると分かっていて関わるのは暴力だ

溺愛したって、それが相手の重荷にならないとも言えないんだ



ミサト「意地でも幸せになって、そうなるために生まれてきたことにするのよ」



加持「意味なんてないさ。ただ欲しいものを欲すだけ…」

リツコ「そうすれば…」


リツコ「私は幸せになれるの?」

ミサト「あなたが望むのよ」

加持「きみが望めばね」
824 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:43:03.35 ID:KdkUNOgoo
電車が揺れている


リツコ「……」

ミサト「…ね、この戦いが終わったらさ、みんなで旅行しない?」

リツコ「旅行?」

ミサト「そ。青葉くんとかマヤちゃんとか、ほかのみんなも誘ってさ」

リツコ「……」


ミサト「お金はネ、なんとかなるわよ。なんたって私たち、世界を救うスーパーチルドレンなんだから」

リツコ「……」

ミサト「ね!」

リツコ「……温泉」

ミサト「ん?」

リツコ「温泉、私はあのとき一緒じゃなかったから」

ミサト「…それじゃあ、決まりね」
825 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:44:02.30 ID:KdkUNOgoo
リツコ「……」

リツコ「欲しいものは、別にいい。私はいらないものの話がしたいの」

リツコ「捨て方が分からないのよ」

ミサト「……手を離せばいいんじゃないの?」

リツコ「繋がれていたら?向こうが離さなかったらどうするの?」

ミサト「どっかに逃げ込むことね…今は無理でも。大人になれば…」


電車が止まる



ミサト「でも、寂しいわね。解放されることでしか幸せを得られないなんて」

リツコ「そうね。でも」

リツコ「私にはそれが一歩なの」
826 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:45:19.21 ID:KdkUNOgoo
ミサト「……リツコ」


ミサト「…行きましょう、一緒に」

手をのべるミサト

リツコ「……、」


リツコ「……そう、手を…。」

ミサト「……」


リツコ「あの時はじめて…」


(ミサト「馬鹿…!」)

(加持「すまない…また」)


リツコ「…引き留めたいと思った」
827 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:47:01.56 ID:KdkUNOgoo
ミサト「それでいいのよリツコ」

ミサト「掴みたいときに掴んで、嫌になったら離せばいいのよ」


リツコ「我儘ね…」


ミサト「我儘でいい」

ミサト「我儘でいてほしいと思うときがあるのよ」


リツコ「それは少し……分かる気がする」

リツコ「私に自由を望む人たち」

リツコ「私を愛する人たち…」


血を噴き出すリリス
828 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:49:01.80 ID:KdkUNOgoo
(水滴が落ちる音)

あたりが真っ白になっている

リツコ(……)



リツコ「他人の存在を今一度願えば、再び心の壁が全ての人々を引き離すわ。また、他人の恐怖が始まるのよ」

ミサト「分かってる。……それでいいのよ」


ミサト「私はきっと逃げ出しても良かった……でも、逃げたところにも良いことはなかった。だって私がいないもの。誰もいないのと、同じだもの」
829 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:50:01.24 ID:KdkUNOgoo
マリ「再びA.T.フィールドが君や他人を傷付けても良いの?」

ミサト「構わない。でも、私の心の中にいるあなたたちは何?」

リツコ「可能性なのよ。分かり合えるのか、諦めるのか……どちらにも伸びる道のひとつなの」

マリ「過去の痼。分かり合えないという形の」


ミサト「…でもそれは見せ掛けのもの。自分勝手な思い込み。希望だってそう。ずっと続くはずない……」


ミサト「後悔と自己嫌悪の繰り返し。でも…その度に、前に進めた気がするから…」



ミサト「もう一度望むわ。会いたいと。」

ミサト「……たとえ分かり合えなくても」

ミサト「それを確かめに行く」


倒れるリリス

人々の魂が解放されていく
830 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:52:02.28 ID:KdkUNOgoo
マリ「現実は知らないところに。夢は現実の中に」

リツコ「そして、真実は心の中にある」

マリ「人の心が自分自身の形を作り出しているからね」

リツコ「そして新たなイメージがその人の心も体も変えていくわ。イメージが、想像する力が、自分たちの未来を、時の流れを作り出しているもの」

マリ「ただ人は、自分自身の意思で動かなければ何も変わらない」

リツコ「だから、見失った自分は自分の力で取り戻すのよ。たとえ自分の言葉を失っても、他人の言葉に取り込まれても」

槍が消滅する

リツコ「……自らの心で自分自身をイメージできれば、誰もが人の形に戻れるわ」
831 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:54:02.08 ID:KdkUNOgoo
父と母

「…生きろ」

「生きなさい」



ミサトとシンジ

「生態系が戻ってる?」

「うん…少しずつだけど。本当は、夏だけじゃなくて…四季があったんだけどね」

「冬、とか?」

「そう。ミサトちゃんは雪って知ってる?」

「ええ、見たことは、ないですけど」

「…見せてあげたいな。本当に綺麗なんだ、秋も、春も…」
832 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 23:55:01.67 ID:KdkUNOgoo
ミサトとリツコ


ミサトがリツコを抱き締めている

ミサト「…大丈夫」

リツコ「……」

ミサト「そう…」

ミサト「もういいのね」


リツコ「ええ」




「……待ってる」

「また、あなたが」

「あなたたちが……還ってくるのを」
833 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/08(火) 00:00:02.12 ID:DuEu8EUlo
○○年。居酒屋


一同「ハッピバースデェーイディーア」

一同「ミサト〜〜〜〜」

一同「ヒューヒュー」



加持「……あっちの席やけに賑やかだな」

男「誕生会だろォ。加持オイ!俺の話聞いてるかァ?」

加持「飲みすぎだぞ、お前…」
834 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/08(火) 00:01:01.96 ID:DuEu8EUlo
一同「ハッピバースデェートゥーユー!」

一同「イエーッ」

ミサト「ふーっ、ちょっち、休憩…っと」

加持「…いいのかい?主役がいなくなって」

ミサト「いーのいーの、みんな騒ぎたいだけなんだから!」

ミサト「……あれ、あなた…どっかで会ったことある?」

加持「……あったら、忘れたりしないさ。こんな美人のこと」

ミサト「ブーッ、ちょっともぉ、やめてよ!」

男「おいっ、リョウジずりーぞ!」

ミサト「キザーッ!」

ミサト「……ねぇっ、一緒に呑みましょーよ!」

男「呑もう呑もう!」

加持「……はは」

ミサト「ったくもー!あいつまだ来てないのォ?!」

ミサト「んっとに仕事の虫ね〜」
835 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/08(火) 00:02:02.19 ID:DuEu8EUlo
一同「カンパ〜イ」

ミサト「プッッッ……」

ミサト「…………ハァァァ〜〜〜〜〜!」

女「ミサトォ!」

男「ペース早すぎだよ」

ミサト「こォの一杯のために生きてるようなもんよねェ〜」

加持「……この一杯のために生きてる、か」

ミサト「そォよお?ヤ〜なことがあったって、楽しいことがあれば明日も頑張れる!」

ミサト「でしょ?」


加持(……!)
836 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/08(火) 00:03:01.95 ID:DuEu8EUlo
女「ま〜たミサトォ!」

女「知らない子にお酒あげてるー」

ミサト「いいじゃないのよォ!今日くらい」

ミサト「サービスサービス♪」トクトクトク…

加持「……はは」

加持「頂くよ」

ミサト「そーぉこなくっちゃ!」

加持「………」
837 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/08(火) 00:04:01.74 ID:DuEu8EUlo
「葛城さん…ッ、俺と…!」

「おーっとぉ!これは3度目のォー?!」

「……ごめんッ!」

「ダメだったァーッ」

「ギャハハ」





一同「カンパ〜〜〜〜イ」

加持「……、…」


加持「頑張ろう……明日も」





THE END
838 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/08(火) 00:05:22.38 ID:DuEu8EUlo
以上です
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/08(火) 01:39:22.73 ID:ot8aauXDO

原作知らんが面白かった
840 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/08(火) 07:11:41.33 ID:DuEu8EUlo
原作知らないのによく最後まで付き合ってくれたな…!
ありがとう
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/08(火) 07:59:07.37 ID:YPCLYK6p0

時間があるときにゆっくり読む
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/08(火) 10:58:26.57 ID:ot8aauXDO
>>840
あ、ゴメンちょっと抜けてた
正しくは名前しか知らないです
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/08(火) 17:53:23.52 ID:yupJoX6U0

投稿日時に愛を感じた
844 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/08(火) 20:35:21.19 ID:DuEu8EUlo
>>839
原作もよろしくな


>>841
ありがとう ゆっくり読んでくれ


>>843 にありがとう
ミサトにおめでとう
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