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ライラ「アイスクリームはスキですか」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 08:53:39.09 ID:FQVp12gN0
アイドルマスターシンデレラガールズ・ライラのSSです。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1604793218
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 08:54:36.34 ID:FQVp12gN0
序
遠い彼方の 煌めき見つめ
少女は歌う 高く高く
届かぬ声を もっと夢方へ
あけの明星 今いずこ
(「四行連詩集」古アラブ編より)
アパートに手紙が届いたのは夏のことだった。
ライラは迷いつつ、躊躇いつつ、一読したそれをそっと机にしまった。
あなたは幸せ者 ―― そう言われて育つことは、はたして幸せだろうか。
彼女には今、何が必要なのだろうか。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 08:56:37.21 ID:FQVp12gN0
T セイハロー・フロム・ホームタウン
「明日世界が終わるなら」なんて例えを出さずとも、今日を全力で生きる意味はある。
(黒川千秋/アイドル)
「ありがとうございますですよー。これからもよろしくお願いします♪」
いっぱいの笑顔と握手でお応え。もうそろそろ人の流れも終盤に入った頃だが、会場の熱気はまだ冷めやらぬまま。そんな中、ひとりひとりに精一杯の感謝を伝えようと奮闘するライラ。額に光る大粒の汗が彼女の頑張りをよく物語っている。もっともそれは、この握手会の前にわずか数曲とはいえ、歌って踊って今に至るからでもあるのだけど。
音楽ショップでのミニライブ、そしてその後に行われる握手会。今回はライラの他にも事務所の子が数名、同じタイミングで新曲を発表したということで合同のイベントとなった。それぞれのファンが相伴ったこともあり、決して広いとは言い難いショップ内のステージ周辺は既に開幕前から満員御礼状態。連日のように四十度にも迫ろうかという酷暑が続くここ最近、それを一時でも忘れさせてくれるくらい空調の効いた建物内ではあったのだけど、ステージの熱気はそれを上回るほどだった。盛り上がったのは喜ばしいとはいえ、そうなると来場者たちの安全管理にも平時以上に気をつけなくてはいけないところ。事前準備含め、スタッフやプロデューサーも後ろであれやこれやといつも以上に忙しく動き回る一日となった。とはいえそれはそれ、「ライラは全力で笑顔とキラメキを振りまいておいで。周囲の心配ごとはこちらがきちんと準備も対応もするから」と言葉をもらい、ライラはステージに、そして握手会の現場に立っている。役割というものはそれぞれにあって、支え合いや助け合いの上で今の自分がいる。それを最近感じることが多い彼女にとって、プロデューサーは頼もしく、嬉しい存在だった。
ライブ最高でした、笑顔がかわいいですね、まちあるきの番組観ました……などなど、握手の際にファンからもらう言葉も様々で、そしてとっても暖かい。そんな中で、少し珍しい報告をするファンが現れた。
「ライラさん、僕このあいだドバイ行ったんですよ! とっても素敵でした!」
「おー、ライラさんの故郷ですね。お仕事ですか? それとも旅行でしょうか」
予想していなかったタイミングで故郷の名を聞いて自然と目がきらめいたライラ。
「いやぁ、なんというか……ライラさん好き! ライラさんをもっと知りたい! って気持ちが高じてドバイに行っちゃったというか……とにかく、今日会えてよかったです!」
「……? 素敵だったのでしたら嬉しいですねー。そして今日来てくださったことも、ありがとうございますですね♪」
がっちりと握手を交わす。ライラの質問に対して的を射ない返答の彼ではあったが、ともかく熱心なファンであること、ドバイが素敵だと言ってもらえたことは彼女の記憶に残った。やっぱり受け答えって難しいな、これまでの人とも話はできていたつもりだったけど……ちゃんとできていたのかな? と戸惑うライラの姿がそこにはあった。
「そうなんですよ、輝く青春のジュブナイルってところがすごく大事で!」
隣では同じ事務所の長富蓮実がファンとの応対中。蓮実の言葉はライラにとってまだまだ難しかったりする。誰かの有名な言葉だったり、流行っている言葉だったり……らしいのだけど、それは事務所に置いてあるアイドル情報誌や雑誌にはあまり載っていないもので。でも彼女の前に並ぶ人々は、ちゃんと彼女と合言葉を付き合わせるように笑顔でそういう話をしている。ファンだからこそわかる世界なのかもしれない。アイドルは奥が深い、と思いながらその様子を眺めていた。
「そのくらい、好きって言いたいんだよ」
イベント終了後、控え室。着替え終わって片付けに入ったところで、今日の握手会でのドバイの一幕についてプロデューサーに話すライラ。熱心なファンがいたんだね、とプロデューサーは言ってくれた。
「お気持ちはとても嬉しいですねー。でもライラさんのためにドバイへ、というのは少しわからないというか……。ライラさんとはこうして東京でお会いしているわけで、ドバイに行ったところで会えませんでので……ちょっと不思議ですねー」
首を傾げ様子を伺うライラを微笑ましく見るプロデューサー。ライラは少しだけ傾くポーズをするクセがある。きょとんとした表情と相まって、かわいらしい。
「プロデューサー殿も、好きな人のために、その故郷へ行ったりしますですか?」
「うーん、その人と会えるなら行くけど、『場所』へは行かないかもしれないね」
ライラの問いかけに丁寧に答えるプロデューサー。あくまで僕の場合だけどね、と補足しつつ。
「でも好きの形はいろいろだから。表現の仕方も、在り方も様々」
信仰における追体験みたいなものかもね、というプロデューサーの説明でライラも少し納得の様子を見せた。追体験。vicarious experience. むかし読んだ本に書かれていた気がする、と記憶を辿りながら。
言葉を反芻しつつライラは思う。確かにそう考えるとファンのお兄さんなりの、情熱ゆえの、ひとつの形なのかもしれない。もっとも、それほどの想いに自分が応えるためには、もっともっとレベルアップしなければいけないのだろうけど。
「……好き、ですか」
再び言葉を噛みしめるライラ。何気ない一言だけど、それはとっても奥深い。
「まぁ何はともあれ」
プロデューサーの手がライラの髪にそっと触れた。
「歌もダンスもバッチリだったんだから、今日はまずそのことを素直に喜ぶべきだし、自分を褒めてあげようね。少しずつ成長しているし、ライラらしい輝きもいっぱいあったよ。それを大切にしようね」
頭を撫でてくれるプロデューサーの優しい手が、ライラは大好きだった。えへへ、とはにかんでみせた。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 08:59:19.54 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「なかなかすごいファンもいたもんだな」
「ですねー。好きだからということですので、もちろん嬉しいのですが」
事務所の休憩スペース。ようやく今日の予定をすべて終えたライラは、レッスン終わりの池袋晶葉と合流、ドリンク片手にのんびりタイムとなった。
ライラは晶葉と特に縁が深い。今でこそ友達も増えたが、事務所のアイドルで最初に知り合ったのが晶葉だったし、歳も近くて気心の知れた存在だ。ここに来て間もない頃、デスクに部品を広げ、妙ちくりんなロボットを組み立てていた彼女に声を掛けたのが始まりだった。何を作っているのですかと問われた晶葉は声のする方に一度視線を向け、丁寧に説明するでも反応を拒否するでも、また自己紹介をするでもなく、「これはな、きっと凄いものができるぞ」とだけ答えた。冷静に言えばこの受け答えも不器用極まりないのだが、それに対するライラの返答は「それは素敵ですねー」だった。そう言って隣に腰を下ろすライラが、晶葉には妙に嬉しかった。ほどなくして二人はごく自然に会話をするようになった。これまでもずっと友達だったかのように。
晶葉もまた、ライラをひときわ大切な友人と思っている。晶葉が事務所で機械をいじっているところにしばしば現れて、その姿を眺めながらいつも隣でニコニコしている。今日あったことを話したり、簡単な手伝いをしてくれたり。とにかく肩肘を張ることのない、気楽な関係なのだ。別段、何かがすごく分かり合えたとか意気投合したというわけではない。けれどお互いにとって居心地のいい、素敵な仲間といえる存在だ。
―― このキラキラとドキドキのすべてを、みなさんにお届けします!
マグカップの水面に視線を落とすライラ。今日のライブや握手会の記憶をぼんやりと思い起こしていると、長富蓮実の明るいセリフがいくつも浮かぶ。まぶしくて、華やかで、かわいい笑顔。ともに駆け出しのアイドルとはいえ、もとよりアイドル文化に思い入れの強かった彼女には、やっぱりいろんな違いを見せられる。知識が豊富だったり、細かなこだわりがあったり、ファンとの意思疎通もバッチリだったり……。言葉や文化の歴差はもちろんあるんだけど、そういうことではなくて、彼女はもっと彼方を歩いているような気がした。うまく説明はできないけれど、アイドルらしく素敵、というのは彼女のようなタイプを言うのかも、などと思った。
憧れの世界に自らの足で立つのはいっとう素敵なことだ。そうした夢を描いてやってくる人は少なくないとライラも聞いている。自分はそうではないけれど、そこに並んで、歌ったり踊ったりさせてもらえることは光栄だし、せめて、できることはしっかりこなしていきたい。ここ最近、ライラはそういうことをしばしば考えている。……と同時に、自分は何を憧れ、何を求めていくのだろう、いつまでそうしていられるのだろう、などとも思案してしまう。それは彼女にとって、少しだけ胸が締め付けられるような錯覚に陥ることでもあった。
―― 今はちょうど蓮実の季節、なんですよ! なーんて♪
蓮実の軽やかな声が再び頭を巡ったところでふと思い出したライラ。そうだ、気になった言葉があったんだった、と。
「そういえばアキハさん、今はハスミさんのキセツ……らしいのですが、そういうのがあるんですか?」
「季節? んー……? ああ、あれかな。七十二候とかいうやつかな」
少し離れた机のキーボードに無理やり手を伸ばし、素早く文字を打ち込む晶葉。椅子を寄せればいいだけなのにズボラなのか、伸びをする猫のような歪な格好で画面と向き合う形になっている。身体が引っ張られているせいで、ご自慢の白衣の下ではおへそがチラリと出てしまっているのだが、その辺りを気にする様子はまるでないのが晶葉らしい。「椅子の上で胡座をかくのは行儀よくないぞ」とプロデューサーに注意されたのもつい最近のことだが、直る見込みがあるかは疑わしい。せくしーですね、と眺めて笑うライラ。とりあえず飲みかけのコーヒーがこぼれないよう、そっと動かして反応を待った。
「これのことだな」
晶葉がウェブページを開いて説明してくれた。テキストによれば、七十二候という中国由来の暦に「蓮始開」というのがあるとのこと。二十四節気では「小暑」の中頃、七月十二〜十六日に当たる。ちょうど今だ。
「私もこういう歳時記的なことには疎いからなぁ。今がそうなんだな」
「蓮のお花も咲く頃ということでございますかねー?」
まぁ蓮の花は八月にさしかかる頃が本番かもしれないけどな、と晶葉が返す。時期というのは必ずしも合致はしない。今年も例年以上の猛暑になると言われているし、毎年変わるものだ。
「でもそうやって、ご縁のある言葉を大切にするのはイイことですねー」
「まぁ、そうだな」
名前は自分が背負って生きていくものだ。それが似合っているかどうかではなく、そこに縁を感じて生きる。それは素敵なことだ。そう思いつつ、ライラは目の前の晶葉を見つめる。人工知能と同じ頭文字を持つ彼女が機械に明るいのもまた不思議な縁なのかもしれない。……では翻って、自分はどうだろう。千夜一夜、たくさんの物語を紡いでいける人であるだろうか、などと。
ふぅ、と小さなため息をひとつ。ライラ、十六歳の夏。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:00:04.65 ID:FQVp12gN0
「ライラ、このあと時間あるかな? ちょっと打ち合わせができたらと思うんだけど」
「はいです、大丈夫ですよー」
別日。予定を終えて休憩スペースへ戻ったライラは、プロデューサーに声を掛けられた。そばにはトレーナーの青木明も一緒で、何やら話し込んでいた様子。特訓でも始まるのだろうか、と資料を覗き込むように二人の間に入るライラ。
「いま明さんと話してて、次回からのレッスンで新しいプログラムを覚えていこうってことになってね」
「おお、そうなのですね」
「はい。少しずつですけど、レベルアップを図る頃だと思って」
トレーナーが補足する。快活でかわいらしい雰囲気をメインとしたダンスを一部変更して、しなやかさや美しさといった表現力を学ぶ時間を増やしていくという。
「おー、まさしく新しいことですねー」
挑戦させてもらえることは嬉しい。頑張らねばという気持ちとともに、笑顔で二人を見つめるライラ。
「レベルアップでもあるんですけど、ライラさんの強みを見つけていきたい意図もあるんですよ」
心なしかライラの顔がこわばる。
「気負わなくていいですよ。やることは今までと同じで、少しずつ新しい動きを覚えていくだけですから。でもライラさん、この先どういうパフォーマンスを得意としていきたいか、というのを一緒に考えてみましょう」
「どういう……?」
「はい」
明は続ける。
「しなやかで品のある動きも、激しく盛り上がる動きも大事です。だけど魅力の本質はらしさにあります。その人に期待できるモノ。それを見つけていきたいんです。それは今はまだわかっていなくても大丈夫。でも長所は売り出す上でのポイントにもなるし、モチベーションの源にもなります。活動していく中で変わっていったって構わないですが、まずは何かを意識すること。だからこそ今、いろんなレッスンをこなしてほしいと思います」
「おお……」
投げかけられた言葉をゆっくり噛み締めるライラ。うまい返答が見当たらずただただ曖昧な反応になってしまった。そんな様子の彼女をそっと撫でるプロデューサー。
「大丈夫、基礎レッスンはこれからも繰り返していくし、ライラは素直で素敵な子だから心配はしていないよ。ポジティブに、アイドルらしくて自分らしい姿を見つけていこう」
優しい言葉をくれるプロデューサーと目を合わせ、ライラの表情に小さく笑みがこぼれる。だけどすぐに照れくさくなって、また視線を逸らした。
「……ふふっ、ずいぶんプロデューサーさんに懐くようになりましたね♪」
明の茶化すような言葉が聞こえて、えへへ、と笑って返すライラ。そうですよーと言いたかったのだけど、なぜかそれには少し抵抗があった。あまりからかわないでくださいよ、とプロデューサーが遮る。
プロデューサーを慕うライラの姿は、最近の彼女をよく知る人にとっては自然なことだ。だが果たしてそのお慕いには、どのくらいの意味があるのか。今後も変わらないものなのか。それが判然としないのは案外、彼女自身だったりする。
簡単な確認事項を済ませ、あとはまた後日に、と言ってトレーナーはその場を退席となった。プロデューサーが改めて話を続ける。
「たとえばライラなら、故郷の民族舞踊や古典音楽に通じるようなテイストをこなせるようになってもいいと思う。コンテンポラリーなものでもいい。それはアラブの出身というライラのパーソナルな一面を広げたものだ。ふだんのアイドルソングやポップスと合わせて持ち幅を作っていくのは一つだから」
「なるほど……」
「逆に、日本らしい和のスタイルや、日本の音楽シーンについてもっともっと理解を深めていくことだってありだと思う。歴のまだ浅いライラが一つずつ学び進めていくことは、それはまた独自の魅力として映えるだろうから」
プロデューサーが例を示しながら丁寧に説明してくれる。どれが正解という話ではないし、可能な限りライラの嗜好を聞いて、好きなものを軸にしていくよう助力したいと。
「好きなことを推していくって大事なんだよ。トレーナーさんも言っていたけど、続けていけるモチベーションになるからね」
ふむふむと頷くライラだったが、自分の好きなこととなると少し困ってしまう。触れるものはどれも素敵だし、同時に執着するようなことがすぐには浮かばない。
「……プロデューサー殿は、どんなライラさんがいいと思いますですか?」
「どうだろうね。可能性はいろいろあると思うから」
明確には答えないプロデューサー。意見を出すこともできるけど、まずは自身でイメージすべき。そう言っているようだった。そんな空気を少しだけ、ライラも察した。
「わかりました。考えておきますー」
急がずゆっくり考えようね、とプロデューサーは話した。新しいことは楽しみで、プロデューサーも優しくて、……だけどもしオススメがあるなら聞いてみたかったなともライラは思った。自分で考えることは大事だけど、それはわかるけど。どう見られているか、どうしていくべきかなどの彼の言葉はいつだって信頼の最上級だし、信じてここまで活動してきているのだから。
* * * * *
仕事終わり、今日は商店街を通って帰るライラ。道中あちこちで声を掛けられる。今帰りかい? お仕事頑張ってる? 今日は魚が安いよ! サービスつけるけどどうだい? エトセトラ、エトセトラ。
アパートからほど近く、下町情緒いっぱいのこの雰囲気がライラは好きだった。
ひとりひとりにきちんと挨拶を返す。ペコリペコリと丁寧にお辞儀をし、言葉を交わしつつ街を歩く彼女の様子は、商店街に訪れるひとときの癒しでもあった。ここで買い物をしたり、挨拶だけして通り抜けたり。人とのコミュニケーションが好きなライラにとって、ここは楽しい場所でもあった。
暖かくて柔らかな空気が満ちている。事務所も、学校も、近くの公園も、そしてこの商店街も。キラキラすることも、笑ってしまうようなことも日々に溢れていた。時にはうまくいかないことだって、少ししょんぼりすることだってあるけれど、それでも世知辛いことばかりではない。紆余曲折どうあれ、ライラは今の毎日を楽しいと心から感じていた。
「ライラさんにとって、日本は第二の故郷ですねー」
ぼんやりと思いを馳せるライラ。もっともっとたくさんの言葉を理解して、話せるようになって。そうして日本ともっと通じていきたいな、と。そこでふと、先のトレーナーからの言葉が蘇ってきた。つながったかもしれない。ようやく一つ見つけられたような気がして嬉しくなる。アパートの階段を少しだけ、小気味よく駆け上がる。明日プロデューサー殿に相談してみよう、などと考えながら。
暖かな空気に頬を緩ませながら、そのまま彼女は家に到着した。
ポストに一通の手紙が入っていたことに気づいたのはその時だった。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:01:25.78 ID:FQVp12gN0
U ミッシング・イン・ザ・シティ
人にはそれぞれ役割があるし、きっとそれぞれに責任もある。あるいは希望も。
(青木明/トレーナー)
「そう、そこでもっと伸ばす。いい感じよ。最初からの流れで今の動きまで行けるようにするのが次の課題かしらね」
「あー……、えっと……あー……ムズかしいですねー」
わたわたと不慣れな様子を露呈するライラ。うつむく彼女を見て千夏がくすり、と笑う。
別日、レッスンルーム。ようやく始まった新しいレッスンプログラム、当面はお手本を見つつ学ぶということで、先輩アイドルのレッスンに合流させてもらうことになった。快諾してくれたのは相川千夏だった。
私で役に立てるかしらと謙遜していた千夏だったが、蓋を開ければ想定通り、いやそれ以上に、丁寧で優しくて、そして何よりお手本たりえる美がそこにはあった。
「ライラさん、よく見ていてくださいね。相川さんはここまでの三つの動きのつなぎがとても自然でしょう? 全体の流れをちゃんとイメージしていないとこうはならないんですよ」
トレーナーが身振りを交えながら細かな動きについて補足する。目の前でのお手本、その仔細な説明、そして実際に自分も真似して、それにアドバイスをもらう。ぜいたくなレッスンですね、と明は冗談交じりに笑った。
「でも遠慮はいらないですから。それよりもこの時間を積極的に活かしていきましょう」
貴女のことはみんな信頼しています。焦らなくてもいいから少しずつ、とトレーナーは念を押した。
改めて目の前でステップを踏む千夏に目をやるライラ。ふだんは寡黙でクールな彼女だが、表現の美しさ、しなやかさ、そして躍動感に思わず見惚れてしまう。基礎練習で似たようなことをやっているときは穏やかで、でもこうしたところで見せる迫力や色気を見るとその差は歴然で、すごい人なんだということが改めて実感させられた。
「ふぅ……」
レッスン室そばの休憩スペース。ベンチに腰を下ろし、思わず大きく息を吐く。ライラにとって学びいっぱいで、そして己の未熟さいっぱいなことも再認識する時間だった。
「お疲れ様。大丈夫?」
電話中だった千夏が戻ってきた。ドリンクが差し出される。
「あ、はい。ありがとうございますですー。とってもすごかったですねーチナツさん」
「そうかしら? ふふ、ありがとう♪」
今日の振り返りとともに、今後しばらくのスケジュールについて話を交わす二人。
「とっても嬉しいのですが、ご迷惑ではありませんかー?」
少しだけ不安がるライラ。そんなことはないわよ、私自身も確認になるし、と千夏が返すも、それならばよいのですが……と、少し冴えない。
「ふふ。みんな慣れないうちは大変なものよ? 気負わず少しずつ、ね」
無理せずライラのペースでいけばいいから、と優しい口調でフォローする千夏。
「おおらかで優しいいつものライラも素敵よ。でも今のあなたはそこからもう一歩前に進もうとしている。だから苦労するし、だから学びもきっと多い。それはとても尊いことなの。だから絶対に、自分を否定しないでね」
そして、いろんな人にどんどん頼ってね、と。
「レッスンに限らず、悩むことがあったらいつでも相談に乗るわ」
そんな会話とともに今日はお開きとなった。千夏はふたたびトレーナーのもとへ向かった。個人的な確認事項があるから、と。
荷物の片付けをしながら、ライラは考える。千夏に言われるまでもなく、自分はいろんな人に頼りっぱなしだし、感謝の気持ちで日々いっぱいだ。そうしたありがとうを、アイドル活動の中で恩返しできたら。そう思っているからこそ、少しずつでも形になったり、歌やダンスでファンに喜んでもらえたりするのが嬉しい。
だけど同時に、自分がどれくらいのことをできるのか、そもそもアイドルを続けていけるのか、そして日本にどれだけいられるのかもわからない。
先をイメージするというのは、時に酷なことでもある。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:02:54.05 ID:FQVp12gN0
* * * * *
《ライラ、忘れないで。生きていくために大切なことは二つ。受け入れる柔軟さと、揺るぎない想い。その両方なの》
記憶の中をたゆたう声とともに目が覚めたライラ。あたりはまだ薄暗い。カーテンを少しだけ動かすと、おおらかな輝きの月が見える。オボロヅキヨ、でしたっけ。いやあれは春の言葉でしたっけ。
そんなつぶやきとともに、ぼんやりお月様を眺めながら、ライラはつい今しがた見たはずの夢を思い出す。故郷を離れる直前に、母からもらった言葉。相反するその二つを持つこと。それさえ失わなければ、天はあなたを見放さないから、と。ライラはそれをしっかりと心に刻んでいる。だけど、具体的に何をどうすればいいのかというのは簡単なようでいて、難しい。
届いた手紙をもう一度開く。メッセージはライラの母からのものだった。
彼女の身を案じていること、異国への旅路を選択させてしまったことへの責任。もろもろ。居場所は最近になって、仕事で日本に行っている側近者が確認したということ。父にもその知らせは入っているが、現状静観を続けているということ。どうアプローチするか考えているのかもしれないということ。また連絡するとのこと。
ライラの父もさすがに、愛娘がいなくなったことは堪えているようだという。けれど父にもいろんな思いがあるし、立場もある。素直に手を差し伸べてくれるかはわからない。まだ会うべき状態ではないと思う。それでも会いたいという気持ちは募っている。そんな内容だった。
母は板挟み状態だ。
旅立つ時からずっとそう。別れを惜しむ気持ち、旅させることへの不安、でも国に居続けさせるわけにいかなかったという事情、彼女を応援したい気持ち、などなど。
「……」
ライラは思う。キッカケは自発的なものでなかったとはいえ、こうして旅立ったことで故郷に残るいろんな人に少なからず迷惑をかけてしまっただろう。その意識はあるし、そうした自己嫌悪の念は波のように、こうして時を置いて繰り返し押し寄せる。
十六歳にして己の業のようなものを自覚する彼女は儚くもあり、皮肉にも美しかった。
迷惑、という言葉から部屋の隅に視線を移すライラ。今日は綺麗に畳まれたままの、もう一組の布団。運命共同体ともいえる、メイドの分である。
「次は月曜の夜に帰宅致します。必要なものは全て机とカバンに ――」
昨日の丁寧な説明を思い出す。律儀でマメで、献身的で努力家。それが彼女だった。一緒に日本にやってきて、手続きや諸々の段取りから日常生活に至るまで、ライラ一人では難しいことを精一杯フォローしてくれた。メイドも決して人生経験が豊富というわけでも、日本や日本語に長じているわけでもなかったのだが、旅立ったあの日以降、ライラからは全幅の信頼を受けている。
もともとこの旅を計画してくれたのも、故郷でライラの側仕えをしていたこのメイドであった。そういう意味でも、彼女はライラの運命共同体といえた。
日本に到着して以降、いくつかの仕事を転々とする中で一つの縁があり、家政婦のお仕事にたどり着いたのが数ヶ月前のこと。故郷の屋敷で働いていた経験を活かせることもあり、メイドも「これだ!」と勇んで頑張っている最近。東京郊外のある邸宅にてのお仕事で、基本は通っているものの、時折こうして泊まり込みでの仕事が入ったりもする。
経緯どうあれ、端から見ればライラの件は人生を懸けての逃避行。それもうら若き十代半ばの少女。まして故郷ではそれなりに名の知れた富豪のひとり娘である。いかなる事情があるにせよ、旅立ちをおいそれと許可したり助けたりしてくれるほど世間も家族は甘くはない。
それでも、決断が迫られていたこと。母がその密かな理解者だったこと。そして、一人の若いメイドが彼女に寄り添って生きると決断してくれたこと。それにより、この運命の歯車は動き出して現在に至っている。
なかなかすぐにはいい仕事が見つからなかった去年。悲観に暮れそうになるメイドを支えたのはライラの優しい笑顔であり、そんな彼女のために、という己の決意や執念であった。実のところライラは、貧しくも寝食をともにして、会話をして過ごすという当たり前の毎日だけでも純粋に幸せだったのだけど。
都心はずれの古いアパート。ここに共に住まい、そして働きに出て。なにより、故郷の屋敷生活を捨て異国の地に赴き、ほとんどゼロの状態から生きる道を見つけていくという途方もない旅路を選んでくれたこと。支えてくれていること。いろんな意味でライラはメイドに頭が上がらない。迷惑はたくさんかけたし、きっとこれからもたくさんかけてしまうだろうと思うと、心苦しくもなる。
「いえ、そんな。そもそも言い出したのは私です。ライラ様こそ大変な中を生きてくださって、……そして笑顔を見せてくださって。本当にありがとうございます」
私はライラ様が好きですし、この運命が好きですから。そんな彼女の言葉を思い出すライラ。生きれば生きるほどに、自分がまだまだ未熟な子供であることを思い知らされる最近の日々。みんなそれぞれ一生懸命で、みんな生きる様がとても素敵だ。
では自分は、どうなのだろう。
《月は無慈悲、ですね……》
ふふ、と自嘲気味に笑う。たぶん、月は少しも変わらなくて、あの日も今日も輝いている。でも柄にもなく感傷的になっているライラがいて、それは向こうにいた頃の彼女自身のようでもあった。そんなことを思い出したのが、なんとも可笑しかった。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:03:22.33 ID:FQVp12gN0
ぼんやりと思い返すライラ。公園のベンチで行き交う人を眺めたり、交流したりするようになったのは新緑が始まる頃だっただろうか。あれからぐるりと季節が一周して、再びの緑を目にした。そしてさらにまた今、暑い暑い毎日がやってきている。それはつまり、彼に、みんなに、そしてこのアイドルという世界に出会えた季節がまたやって来たということでもある。
情報が濁流のように駆けゆく毎日の中で、自身のおぼつかなさを痛感することはしばしばだったライラ。もともとそんなにテキパキと動ける人間ではないし、それが日本語ばかりの世界ならなおのことだ。でもそれは仕方のないことだし少しずつ、できることから頑張ろう。そう思っていた彼女への、光り輝く世界へのお誘い。
最初は半信半疑だったライラ。だけど徐々にいろんなことができるようになってきて、いろんな人に出会えて、そしていろんな人に支えられながら歩んでいく毎日が、だんだん楽しくなっていった。
彼との出会いが、差し伸べられた手が、あのお誘いの言葉がなければ、アイドル活動はもちろん、こんなに慌ただしく毎日を過ごすことすらできなかっただろう。経験したことのないような日々の忙しさとともに今はいるけれど、それはとても暖かくて、とても幸せで。それは嘘偽りのない、ライラの率直な気持ちだった。
故郷の父母や親族への想いもいろいろあるけれど、ここで得た友達や、お世話になっている方々へのたくさんの感謝や、尊敬の念や、トクベツな気持ち。それがどんどん増えているという事実が、少なからず時が経っているんだということをライラに実感させていた。
窓際に立ち、再び夜空に視線を移す。心なしか、今日は月も星もひときわ輝いているようだった。
《明るい夜は、神秘と隣あわせ……でしたっけ》
思いを馳せる。
アラブに伝わる古い説話に『月を想う』というものがある。赤い月の日はよくない兆候、満月は力に満ちている日といった、よくある伝承をまとめたものだ。その中に「明るく月が照らす夜は、わずかに与えられた自由のひととき」と触れられた一節があって、ライラはそれが好きだった。それは普段言えないことを言ったり、できないことをしたり、たそがれたりする瞬間。北の大地の白夜のような、もっともあれと違って本当に短い時間のことだけど。そこには非日常があり、日常との境界はない。日本でも夕の刻を「彼は誰時」なんて言ったりするらしいけれど、非日常との曖昧さは国を問わず、畏敬の対象でもあり、ロマンでもあるのかもしれない。
「……プロデューサー殿」
意図せずぽつりと言葉が漏れた。日本語だと「ツキ」と「スキ」は、少しだけ似ている。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:04:09.20 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「ライラー! 元気なさそうだけど大丈夫カ?」
翌日昼、事務所休憩スペース。ぼんやりとしていたライラを覗き込むように声を掛けてきたのはナターリアだった。
「お疲れ様でございますねー。ライラさんは元気ですよー」
「ソウ? なんだかションボリに見えたゾ。でもなんともないならよかった!」
気づいて笑顔を返すライラとナターリアの視線が重なる。実際、そんなに落ち込んでいるつもりはないライラだったが、気づかって話しかけてくれるのは嬉しい。
「みんなでまたご飯食べるカ? ふぇいふぇい腕によりをかけて作るヨ!」
後ろには楊菲菲の姿もあった。ムン、と力こぶのような仕草を見せる彼女はどこか愛らしくて、そして頼もしい。
ユニットでのイベント活動などを何度か経験する中で仲良くなったこの三人。出自や経緯こそ異なるものの、ともに異国の地でアイドルとなって、不思議な縁あって同じ事務所にいる存在。年も近く、三人とも友好的で周囲への思いやりに溢れている。親しくなるのにそう時間はかからなかった。
とくにナターリアは、活動し始めの頃からライラとレッスンやミニライブなどをともにしていたこともあり、コミュニケーションの機会も多く、ライラをかなり慕っている。月と太陽、静のライラと動のナターリアなど、当初から対比的に評されることが多かった二人。二人ともそれを好意的に受け止め、お互いを意識しつつ、ここまできたのだ。ナターリアは生来の明るさが日々の活動にもいかんなく発揮され、皆を笑顔にするのが得意だった。ライラは対照的に穏やかで、またちがった美しさがあった。そして二人とも周囲の人間のちょっとした変化や悩み・苦しみなどのサインによく気づくタイプだったといえる。フォローのやり方もそれぞれ異なってはいたが、明るさとともに助けの手を差し伸べるナターリアと、相手のそばにそっと腰を下ろして目線を合わせるライラ、ともに慕われるだけの魅力と優しさがあったのは確かだった。ナターリアはそんなライラの優しい佇まいが好きだったし、ライラもまたナターリアの輝きが好きだった。
一方の菲菲にとってもまた、トクベツだった。二人より少し早く事務所に入っていた彼女だが、なかなか確たる仕事のチャンスが掴めず、辛抱強くレッスンを繰り返す日々が続いていた。そんな彼女にそっと声を掛けてきたのが、新しく入ってきたライラだった。
「こんにちは。お疲れさまでございますよー」
事務所の休憩スペースで雑誌を開いていた菲菲のもとを訪れた褐色少女。澄んだ瞳とどこか間の抜けたトーンの挨拶が印象的だった。聞けば、事務所で見かけた人に一人ずつ挨拶をして回っているのだとか。
「ご挨拶ありがとうダヨ! フェイフェイって呼んでね!」
「ふぇいふぇいさんでごさいますか。素敵なお名前ですねー。よろしくお願いしますですー」
ライラの言葉に深い意味はなかった。だけど混じりっ気のない瞳で優しく発せられたその言葉が、菲菲にはとても嬉しかった。もっと日本を勉強しなきゃ、業界のことを理解しなきゃ、できることを増やしてアピールしなきゃ。そんな気負いがあった彼女に、緩やかな風が吹き抜けたようだった。
もっとこの子と仲良くなりたい。菲菲が雑誌を閉じて改めて向き直ったところで、ぐぅ、と音が鳴った。ライラのお腹だった。
「失礼しました……えへへ」
「お腹空いてるノ?」
実は今日まだ何も食べていなくて、とライラが説明する。ダメダヨ! 食べなきゃイロイロ大変! と菲菲が立ち上がる。
「レッスンもそれ以外でも、頑張るエネルギーは大切なんだカラ!」
そう言ってライラを寮の食堂へ連れて行き、チャーハンを御馳走したのが初めて会った日の出来事。とってもおいしいですー、とゆっくり噛み締めるように食べるライラの表情は菲菲の心も暖かにするものだった。
「ライラ、いい笑顔ダヨ」
「そうでございますか? ありがとうございますですよー。でも、ふぇいふぇいさんも素敵な笑顔ですねー」
そう言われて改めて、料理を振る舞っている自分も確かに元気になったと気づいた菲菲。そうか、自分にできることっていろいろあるんだ。そして、幸せを振りまくってこういう感覚だったよネ、と。
「……どうかしましたか?」
「なんでもないヨ! エヘヘ、ありがとうライラ!」
楊菲菲がアイドルとしてステップを上り始めるのはこの少し後からになる。他愛ない出来事に過ぎなくとも、本人にとって大切なきっかけになることがあるし、往々にしてそれは突然の出会いとともに訪れる。彼女にとってそれがこの日のことだったのかもしれない。
「もしなにかあったらみんなに話すんだゾ! プロデューサーでもいいケド、ナターリアたちだって聞くからナ!」
「そうダヨ、ライラ楽しい話はしてくれるけど、悩みとかなかなか言わないカラ……」
そうした二人の暖かい気づかいを受け止め、嬉しそうにするライラの姿があった。
「ありがとうございますですー、大丈夫ですよ。お優しいですね二人とも」
だって友達ダカラネ! 信頼関係っていいよネ! そう言ってワイワイ言葉を交わす。
「ライラだって、このあいだふぇいふぇいがダンスうまくいかなくてしょんぼりしていた時にいち早く声かけてくれたよネ。あれとってもうれしかったんダ」
「そうそう、ライラこそ優しくて、いつも気づいてくれるよ! アタシも思ウ!」
「うふふ、みなさん大好きですよー」
ライラは事務所のこの場所がお気に入りだった。それはとりもなおさず、二人のような存在がいるからに違いない。そして彼も。
「ライラ、そろそろお仕事だけど準備はいいかな」
「あ、はいですー。ではみなさん、またのちほど」
周囲のみんなにも会釈するプロデューサー。場の空気を気づかって、話のタイミングを少し待ってくれていたんだとライラも察した。
「……やっぱりイイですね」
「あの二人のこと?」
「ふふ。プロデューサー殿も、ですよ」
良さに気づいて、素敵を愛して。そんなみんなが大好きだ。肯定して進みたい。自分も。改めてそう感じたライラだった。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:04:52.20 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「最近少し、元気がない感じだったりする?」
仕事終わり、プロデューサーがライラに話しかけた。
動きがどこかダメということではないけれど、表情はあまり冴えているとはいえない。そんな雰囲気が見て取れたから。相川千夏は「そういう時もあるわよ」と言ってはいたが、とはいえ気づいたなら軽くでもフォローしておきたい。プロデューサーらしい考え方だった。
ライラとしても、なんとなくそんな感覚があったここ数日。お見通しですねー、と苦笑いのような表情を見せた。彼女にしては珍しい。
どこか冴えないここ最近の雰囲気を察してもらえたのは嬉しいようでいて、申し訳なさもある。それはナターリアたちからも言われたこと。あまりよくない雰囲気に見えているんだろうなということは反省しなくてはいけない。理由は何だろうと辿ってみるライラではあったけれど、当然ながら手紙のことになるだろう。
「……ライラさん、少しだけおセンチさんなのかもしれませんです」
「どこで覚えたのそんな言葉」
このあいだハスミさんがおっしゃってました、と補足するライラ。使い方はこれで合っているはず、と。視線を合わせる二人。緊張気味の空気が少し、和らいだ。
「プロデューサー殿、ご相談いいでしょうか」
「うん」
「ありがとうございますですよ。……えっと」
ライラも、やっぱり彼にはきちんと説明しておくことが大事だと思った様子。とはいえ、何から話してよいものか、少し迷ってしまうところもあるようで。しばし沈黙が流れる。
「あー、ちょっとお待ちくださいね」
うまい言葉が出てこずうーんと首をひねるライラに、そっと笑顔を寄せる彼。
「待つよ。でも話すのが難しいなら焦らないこと。少しずつでもいいし、今じゃなくてもいい。もちろん今何か聞かせてくれるならちゃんと聞くし、一緒に考えられることは考えるから」
ここじゃない場所がいいならまた相談に乗るし、何でも言ってほしい。彼はそう続けた。
「―― ありがとうございます、ですよ」
相談そのものも大事だけど、信頼があるってことが何より大切だし、彼はきっとそう。それが伝わってくる言葉に、ライラは嬉しくなった。
「ごめんなさい、ではまた改めていつか、でよろしいですか?」
「もちろん」
笑顔を交わす。大丈夫、もう少し頭の中で整理できたらお伝えしてみましょう。己に言い聞かせるように小さくつぶやくライラの姿があった。
プロデューサーという人物にも少し触れておく必要があるだろう。言わずもがな、この少女と公園で出会い、アイドルとして迎え入れたのが彼である。その出会いを運命と呼ぶか偶然の産物と呼ぶかは定かでないが、彼女の複雑な出自を知ってなお手を差し伸べたことは事実であり、それはライラに少なからずアイドルとしての可能性を見たということでもある。彼女はきっと伸びるし、きっと輝く。それを誰より信じているのは彼だった。同情や人助けの思いで提案したわけではないのだ。だからこそ、だからこそ、彼女のフォローアップや様々なケアについてひときわ熱心だし、誰よりも気を回している一人でもあった。
元々とにかくマメな性格で、担当アイドルへはもちろん周囲の関係者や業界の方々への気配りも忘れない。熱心さと驕らない謙虚さが部署内では評判だった。
とはいえ結局他人は他人、伝わらないこともあるし汲み取れないことだってある。まして相手が異性だったり、異文化圏からやって来た子だったりすればなおさらである。
彼がライラをスカウトしてきたと報告した折、事務所では驚きとともに心配の声も少なからずあった。アイドルとしてきちんとプロデュースしていけるかはもちろん、彼女本人のケアに求められることも多いだろうことが懸念されたからだ。だが彼にも彼なりの熟慮と決意があったと汲み取られ、事務所からはゴーサインがくだった。彼という一人のプロデューサーの運命もここで大きく動いたのだった。
どんなに心血を注ごうと、アイドルとして大成することを約束できるわけではないし、先のことに責任を負えるわけでもない。しかしそれでも賽は投げられた。ここは既にルビコン川の彼岸なのだ。ライラのアイドル活動はそうした彼の覚悟とともに始まったことは間違いない。
日進月歩、物語は動いていた。当初は歌もダンスもおぼつかない彼女ではあったが、光るものは確かにあって、熱心に一つずつ学び覚えていく努力の姿もそこにはあった。それはまたライラ自身の内なる覚悟の賜物かもしれないし、彼女のなりのセンスに導かれる部分だったのかもしれない。
一つ厳然たる事実として、プロデューサーの言葉や思い、気づかいや理解が、ライラにはとても心地よかったということがある。そしてそれはプロデューサーにとってのライラの言動にも当てはまることだった。これこそは理論や理屈では埋め難い、運命的なことなのかもしれない。人はそれを相性、などと言ったり言わなかったり。
出会うべくして出会ったかどうかを明言するのは難しい。しかしきっと、無二の信頼関係は築けるように思っていた。おそらく、お互いに。
それでも、だからこそ、言葉は必要なのだけど。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:06:34.55 ID:FQVp12gN0
「フゴフゴ」
プロデューサーが机に戻るのと入れ違いに、後ろからソファ越しにパンの薫りと柔らかな咀嚼音が来訪した。視線を寄せるとコロネがふたつ。
「お疲れ様でございます、フゴフゴさん」
大原みちる。パンを食べている人。そして、パンを分けてくれた人。
初見のライラの感想はそれに尽きる。公園のベンチでぼんやりしていたところに偶然通りがかった彼女。空腹を隠せないでいたライラの様子をしばし眺めたのち、抱えるように持っていた袋からパンを一つ取り出し、彼女に差し出した。自身は既に口いっぱいに頬張っていたため、言葉少なにフゴ、フゴ、と述べただけだけど。
パンをもらえることを察し、丁寧にお礼を述べたライラ。こちらどうぞ、とベンチの隣席を促すと彼女もそのまま腰を下ろした。そっと噛みしめると、芳ばしさと、甘さが口の中に広がった。
「とてもおいしいです。ありがとうございますですよ」
笑顔を交わした。
「パンをたくさんお持ちなんですねー」
「フゴフゴ」
「……パン屋さんでございますか?」
「フゴ!」
頬張りながら頷く少女。
大きな大きなバゲットが、ようやく全て彼女の口の中に収まった。
「……あたしのうち、パン屋なんです! これはおすそわけ! おいしいものはみんなで! ね、幸せって一緒がいいでしょう?」
そうこうしているうちに少女の手元では次なるベーグルの包みが開かれていた。軽快に口に運ばれる。
「そうですね、こうしていろんな出会いやお話ができて嬉しいです」
しばらく雑談を交わす二人。パンを食べ続ける謎のもぐもぐ少女。どうやら近くの学校に通っている中学生とのこと。なるほど、じゃあまたお会いできるかもしれませんね、とライラ。
「またお会いできますように。……わたくし、ライラと申します。お名前伺ってよろしいですか?」
「フゴフゴ」
ロールパンを咥えたまま「大原みちるです」と彼女は名乗った、つもりだった。
二ヶ月後、事務所で偶然の再会を果たした時に「あの時はありがとうございました、フゴフゴさん」と返されたのだけど、それはまた別の話。
「ライラさん、プロデューサーさんに相談するのは難しいですか?」
話題はさっきのライラのことになった。ぐうぜん近くに座っていたので会話の様子が少し、みちるの耳にも入っていたという。言葉に詰まっているようだったのが気になったとのこと。
「伝えるって難しいですよね。でもやっぱり大事なんだって、あたし思うんです」
話せることからでいいんです、とみちるは続けた。漠然と思うこと。感じていること。ちょっとした考え。やってみたいこと。今日あった楽しいこと。好きなこと。好きな人。なんでも。
「話すときっと、また見えてくることはありますよ」
だからあいまいでも、まとまっていなくても、想いは口に出していいと思うんです、と。それはたとえ言葉足らずの時にも笑顔と意思で前に進む、大原みちるらしいメッセージでもあった。
「相手にもっともっと知ってほしいし、相手のことをもっともっと知りたいって思う気持ちは大切ですから。ライラさんも大切にしてくださいね♪」
なるほどー、とライラが相槌をうつ。噛み締めるほどに、自分にも当てはまる言葉だ。
プロデューサーには特にそうだ。信じることも、頼りにしていることもたくさんあるし、いろんな気持ちが溢れている。それはライラにとっても確かなことだ。みちるにそれを話すと、そう言えるのって大切なことですよ! と返してくれた。
「フゴフゴさんも、担当のプロデューサー殿とはそうですか?」
うーん、と一旦間を置きつつ、にっこりと頷いてみせたみちる。
「そうですね! まぁ、あたしプロデューサーのこと大好きですから!」
ライラさんはどうですか?
その質問は答えが見えているようで、でもまだ、どこか口にしづらいものでもあった。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:07:02.21 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「少し掴めてきたようね。いい感じよ」
「おー、いけておりましたか。えへへ、ありがとうございますですよー」
翌日のレッスン終わり。千夏から動きを褒められ、笑みを見せつつ言葉を返すライラ。
「いいですね! 緩急のつけ方が少しずつうまくなってきました。表現の積み重ねはこれからですけど、まずはいい調子ですよ!」
青木トレーナーの言葉も明るい。いい流れがきているのがわかる。
レッスンを終え、事務室へ戻りながら千夏と会話を交わすライラ。途中、通りがかった部屋から美しいメロディと雄大な声が聞こえてきた。
「今日もやってるわね」
二人で扉の窓越しにそっと覗くと、伴奏に合わせて伸びやかに歌い上げる黒川千秋の姿がそこにあった。一節歌っては担当する青木麗トレーナーと確認、また一節繰り返しては確認。緻密で厳格、妥協のない彼女らしさがそこに見て取れる。また声が響く。繊細で力強く、そして美しい。まさしく黒川千秋、彼女の声だ。
「すごいわね」
「すごいですねー」
事務所の売り出し中アイドルの一人であり、最近ますます活躍どころが増えつつある彼女。ステージ活動に限らず、バラエティでの雛壇や地方レポでのちょっとした役回りなど、分野を問わず様々な仕事が舞い込んできているが、どれも苦手意識を持たず積極的にアタックするし、その様子はお茶の間にも概ね好評である。一方で彼女のストイックで妥協のない姿勢、こうした陰ながらの努力、そうして積み上げられた信頼と確かな歌唱力。これこそが彼女の人気を不動のものにしている。技術的な細かなことまではわからないライラにとっても、その歌声は心に響くものがあった。
千夏もそうだが、先輩たちはみな自分たちの魅力に長けている。自己理解と研鑽の賜物、なのかもしれない。自分もうまくならなくては、という気持ちに駆られるライラ。
「二人とも、お疲れさま」
プロデューサーと廊下で合流した。千夏と三人で今日の振り返りをしつつ歩く。
「またレッスンも見てあげてね。ライラ、どんどんうまくなってきてるわよ」
「相川さんが言うなら間違いないですね。明日は見られるから楽しみにしてるよ」
「えへへ、頑張りますですよー」
にっこり笑ってみせるライラ。彼女はこうした空気がとてもお気に入りだ。
でも、自分が前に進むためには。己を進めていくためには。それにはまず、言葉を発していかないと。みちるを見て、千夏を見て、ライラは改めてそれを自覚していた。
「……プロデューサー殿、あの」
ライラが口を開いたところで、大きな声とともにその話は遮られた。千川ちひろが事務室からこちらへ走ってやってきた。
「すみませんプロデューサーさん! あの、アポなしで面会を求めて来られた方がいらっしゃるんですが……その、今、大丈夫でしょうか?」
緊張気味の表情を隠せないちひろは珍しい。
「あ、はいもちろん。……えっと、どなたが?」
「詳細までは伺えなかったんですが、あの、……ライラちゃんの関係者の方、と」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/08(日) 09:08:00.86 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「お待たせしました」
いつになく緊張感が漂う応接室に入るプロデューサー。
そこで彼が対峙したのは紳士然とした風体の外国人男性だった。ライラと似ているようで違うようで、そんな紺碧の瞳が印象的。
「初めまして。唐突で不躾な訪問をお許しください」
自己紹介を受ける。ライラの両親に頼まれてやってきたエージェントだという。黒服のSPみたいな人物が現れるのかと思ったらそうではなく、話のできそうな感じのビジネスマンがそこにいた。いや、むしろ警戒が必要かもしれないなとプロデューサーは思った。
ライラも一言だけ、エージェントの男性と挨拶を交わした。アラビア語らしき言葉はプロデューサーたちにはわからなかったが、どうやら面識があるらしいことだけは周囲にも察しがついた。とはいえ、顔は強張ったままのライラ。不安でいっぱいなこともまた事実だった。
挨拶が済んだ男性がプロデューサーの方に向き直る。
「いくつかお話をできればと思うのですが……、まずその前に、ライラ様を救ってくださったこと、今なお生活面含め様々にサポートしてくださっていること、母国の親族に代わってお礼を述べさせてください。本当にありがとうございます」
深々と頭を下げるエージェント。流暢な日本語だった。
「いえいえ、それは様々な偶然が重なってのことです。頭をあげてください。話を進めましょう」
プロデューサーが応じつつ先を促す。本題はここからだ。しかしキッチリとした礼から入ってこられたことに、内心少しだけほっとするところもあった。ひとまず、高圧的あるいは暴力的に何かがなされることはない様子だったから。
「……私たちはライラ様の、そして皆様の味方である、ということを説明させてください」
エージェントが言葉を選ぶように、丁寧に切り出す。
結論から言えばライラを連れて帰ろうというものではない。どのような状態でいるかのより詳細な確認がしたくてここに来たということ。皆心配していたし、何をおいてもまずそのことであろうと。
何人ものエージェントの尽力により、ライラの消息が日本で確認でき、アイドル活動をしていることを数ヶ月前にようやく把握した。そしてその活動や人間関係を通じて彼女が成長していることを窺い知ることもできた。前向きに努力し、学び、苦労をしながらも生活していること。周囲の人間に恵まれていること。今を大切に思っていること。その事実に皆まず安堵したこと。何一つ否定するつもりはないし、むしろ逃避行する決断をさせてしまった事実について謝らねばならない、とお父様も述べている状態であること。
その言葉を聞いて驚きを隠せないライラ。エージェントは言葉を続けた。
ただ一方で、一族には一族の守らねばならないこともあるし、邁進しなければならない父の事情は父の事情として存在すること。父にも思いがあるし、責務もあるし、譲れない部分もあるということ。そのうえで、決してこのまま今生の別れとするわけにはいかないということ。
「そこで私がやってきた、ということになります」
エージェントは改めて己の使命を説明した。連れて帰れと言われているわけではなく、もう一度わかり合えるよう、よい関係にしていくよう策を案じよと言われているのだと。それは穏やかな言葉のようではあるが、しかし、具体的にどうするかとなると難しい。
「本音としては、お父様も、家族の皆様も帰国を望まれている、と思います」
それが偽らざる真意であろうと。しかしライラの意思を無視して連れて帰ることは決して望ましい形ではないだろうと。皆にとってよい結論を探していく必要がある。
「私は個人的に、ライラ様にも笑顔でいて頂きたいですし、母国の皆様にも納得できる何かをお届けしたい。そのためには時間をかけて双方に話を掛け合い、慎重に策を考えていきたいと思っています」
事を荒立てたりするつもりも、無下なことを述べるつもりもありません。ですので今後もなにとぞご協力、ご斟酌頂ければと思います。そう言ってエージェントは再び深く頭を垂れた。
「……」
どう反応していいものか、プロデューサーは少し戸惑っていた。こういう人たちが現れる日が来ることは可能性として十分にあったのだけど、準備ができていなかった。しかしそれ以上に、思った以上に柔和な対応で苛烈な提案もなかったことに少し安堵していて、同時にそれが少し怖くもあった。
プロデューサーがライラを見る。彼女もまた、この来訪に備えていなかったのだろうことが伺えた。少しだけ俯いたのち、おもむろに口を開いた。
《連れて帰れではなく、よい関係にしていく策を案じよと》
《はい》
《それは、お父様からの命ですか》
《もちろんです》
《それは》
《はい》
《……それは、その……》
続く言葉が紡げなかったライラ。それは父の体面を保つためのことでしょうか。その質問はさすがに失礼だと感じたから。目の前のエージェントにも、父にも。
沈黙があった。ライラは黙ってうなずいて見せた。
「重ねてになりますが、私はライラ様の、そして皆様の味方です。なにとぞ、ご協力を頂ければ幸いです」
またお伺いします。そう言って再度の丁寧な挨拶とともに、彼は事務所をあとにした。
出入り口の扉が閉まると共に、ようやく事務所の空気が緊張から開放された。
大きく息を吐くプロデューサーに、ライラがぺこりと頭を下げた。
「プロデューサー殿、すみませんです。ライラさんのことでまたご迷惑をお掛けしてしまって」
「そんなことはないよ、大丈夫だから」
「ですが」
言い続けようとするライラを静止するプロデューサー。自戒の言葉は必要ない。それははるか日本にやってきたこの子を、あの日出会ったライラという少女を、アイドルとして受け入れる時に始まった運命の一端にすぎない。その思いは変わらないのだから。
「大丈夫。でもあの人はまた来るだろうし、今後もこういう応対はあるということだから」
そのへんの心づもりはしておかなきゃね、と笑顔を返した。その表情にいくらか気分が落ち着いたのか、ライラもようやくゆっくりと息を吐いた。
そして、もう一つ、話せていなかったことを詫びた。
「じつは先日、アパートに手紙が届いておりました」
文言がどのようなものであったかも説明した。うまく自分の中で飲み込めずいたので話せなかったということも。プロデューサーは頷きながら話を聞いた。
「大変だったんだね。察してあげられなくてごめん」
「そんなことないです。そんなこと」
涙目になりそうなライラをそっと撫でて、少し落ち着くまで待つプロデューサー。
「いっしょに向き合っていこう。大丈夫。向こうも何かを急いているわけではないから」
頷き合う。そう言いつつも、彼の言葉をどこまで信じていいのかは、まだわからない。不安がないと言えば嘘になる。プロデューサーはそんな感覚に囚われていた。
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