浅倉透「時をかける透明な少女」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:37:54.81 ID:tf0OKV0C0

アイドルマスターシャイニーカラーズの二次創作SSです

よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1603525074
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:38:38.03 ID:tf0OKV0C0

──事務所──

ガチャ

透「あれ。プロデューサーだ」

P「透じゃないか。どうかしたのか?」

透「忘れ物しちゃって。充電器は……あった」

P「あ、それやっぱり透のだったのか。見覚えがあったから明日にでも渡しに行こうと思ってたんだ」

透「見覚え? ふーん……。何の変哲もない黒い充電器だけど」

P「え? あー、なんでかな。確かにみんな似たようなヤツだけど」

P「でも、ひと目見て分かったよ。透のだって」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:39:32.31 ID:tf0OKV0C0

透「……。…………」

P「透?」

透「ん? 何?」

P「いや、なんだか様子がおかしいぞ」

透「んー。そうかな、そうかも。……うん」

スッ

透「じゃ、帰るから。お疲れさまです」

P「あぁ。お疲れさま」

透「……ふふっ」ニコ

タタタ…

P「はは。よく分からないけど、ご機嫌なようで何よりだ」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:40:03.62 ID:tf0OKV0C0

円香「……」ジッ

P「ん?」

サッ

P「……気のせいかな」

P「今誰かに見られていた気がしたが」

──後日・レッスン室──

円香「はぁはぁ」

ガチャ

P「円香。お疲れさま」

円香「……何の用ですか。今日はあなたと顔を合わす予定は無いはずですけど」

P「予定が無くたって会うくらい良いじゃないか」

円香「……はぁ。そういうところが前時代的だと言っているんです。ミスター・オールドタイプ」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:40:31.73 ID:tf0OKV0C0

ゴクリ

円香「……差し入れ、ありがとうございます。ちょうど水を切らしてたところでした」

P「それくらいなんでもないよ。円香の頑張りに比べたらさ」

円香「……」

P「ところで話は変わるんだが……透が充電器を取りに事務所に来たことって知ってるか?」

円香「ん。あぁ、確かこの間そんなことを話してましたね。……それが何か?」

P「あのとき円香も一緒にいただろ」

円香「っ!? ご、ごほごほっ!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:41:08.97 ID:tf0OKV0C0

P「円香! 平気か!」

円香「よ、寄らないで。平気だから……ていうか、一緒にいたって?」

P「透が帰って扉が閉まる直前、誰かの視線を感じたんだ」

円香「……その誰かが、どうして私だってあなたは言うんです?」

P「どうしてって……んーと。直感、かな」

円香「……ミスター・ニュータイプ」

P「はい?」

円香「何でもありません。はぁ、最悪。まさか気付かれていたなんて」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:41:37.56 ID:tf0OKV0C0

P「気付いてたって言うか、直感だよ。確信はなかったからこうして確認してるわけで」

円香「ごほん……で? それが何でしょう。確かに私はあなたたち2人のやり取りを見ていました。それについて、何か問題でも?」

P「え、いや……」

円香「それとも何か問題になるようなやり取りでもあったんでしょうか? そう逆に聞いてしまいたいところですけど」

P「聞いてるじゃないか……別に、普通のやりとりだったよ。円香も知っての通りさ」

円香「……」

P「だからこそ、どうして何か言いたげに、無言で後ろから見ていたのかが気になって」

円香「……はぁ」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:42:30.06 ID:tf0OKV0C0

P「言いたいことがあったら何でも言ってくれていいんだぞ。もちろん、無理強いはしないけどさ」

円香「あなたのそういうところが嫌い」

P「は、はは。ごめん」

円香「……私は、単に気に食わないだけです」

P「え? な、何が?」

円香「あなたの偽善的な態度がです。もっと言えば、その態度が私の周囲を変えてしまっているという事実が」

P「は、はぁ」

円香「太陽を模した蛍光灯で向日葵を照らして、首を捻るがごとき行為といえば理解しやすいでしょうか」

P「えっと……ごめん。全然分からないぞ」

円香「! ナンパがしたいなら私たちを巻き込むなと、そう言ったんです!」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:43:22.48 ID:tf0OKV0C0

シーン…

P「え……?」

円香「あ……。はぁ。今のは忘れて」

P(──そうか。もしかして円香は)

スタスタ

P「待ってくれ円香!」

円香「……水、ありがとうございました。今日はもう上がります」

P「円香、待ってくれ。もう少し話がしたい」

円香「話がしたい? どんな権利があってそんな妄言を吐いてるのでしょう?」

P「権利とかじゃない、俺の我儘だ。だから頭を下げてお願いする。もう少しだけ会話をさせてくれないか」

円香「……つくづく強引な人」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:44:19.64 ID:tf0OKV0C0

──公園──

P「ここなら誰にも話を聞かれないだろう」

円香「人払いが必要な話題なのですか?」

P「あぁ。おそらくその方が、円香にとっても都合がいいはずだから」

円香「……」

P「ナンパ、とさっき言ったな」

円香「……。……言いましたが?」

P「断言するよ」

P「俺はアイドルを恋愛対象として見ていない」

円香「──え?」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:44:59.90 ID:tf0OKV0C0

P「そうか。やっぱりそれを不安がっていたんだな」

P「年頃の女の子なんだから潔癖になって当然なのに。今まで気づいてやれなくてごめん」

円香「……」ポカーン

P「俺は事務所のみんなのことが大好きだ。けれどそれは色恋の感情ではなく、家族愛や尊敬に近い感情なんだよ」

P「側から見たときその気持ちを誤解されてしまうこともあるかも知れない」

P「けれど俺はどんな理由があれ、自分が担当するアイドルに手を出すなんてことは、プロデューサーとして最低の行為だと考えている」

円香「……。…………」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:45:42.43 ID:tf0OKV0C0

P「大人を信じられないという円香の気持ちも分かるし、それ自体を否定しようとは思わない。だけど。だけど……」

円香「……だけど?」

P「俺のことは信じて欲しい」

円香「! ……はぁ。そういう言動が他人を誤解させると言ってるんです。ミスター・たらし」

P「え? あ、すまん」

円香「……」

クル

円香「……でもまぁ、よかったです。あなたがまともな大人みたいで。まだ上っ面だけという可能性もありますが」

P「上っ面じゃない。本当に俺は」

円香「その先は野暮というものですよ」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:46:25.64 ID:tf0OKV0C0

円香「甘い言葉は信用なりません。信用を得たければ、行動で示してください。……プロデューサー」

P「はは、そうだな──って円香、今プロデューサーって」

円香「はぁ? 空耳でしょう? ……もう遅いので、私は帰ります」

P「そ、そうだな。でも1人で大丈夫か、よかったら送っていくけど」

円香「結構です。電車もまだある時間帯ですし」

P「そうだよな……」

円香「……ですが、駅まで歩くには今日は寒そう。送っていただいても?」

P「! も、勿論だ!」

円香「どうして送る側が喜ぶの。……本当、おかしな人」フフ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:47:30.54 ID:tf0OKV0C0

──

P(しかし本当におかしいのは俺でなくこの世界だったようで)

P(翌日、信じられないようなことが身に起こった)

P(正直言って、目の当たりにした今でさえ俺は現状を上手く飲み込めてはいない)

P(それほどの異常事態だ)

P(透が事務所にやってきたのだ)

P(未来から、やってきたのだ)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 16:48:18.31 ID:tf0OKV0C0

──事務所──

透「久しぶり。プロデューサー」

P「え? ええと、昨日も会ったと思うけど」

透「そうなの? 10年も前のことなんて忘れちゃった」

P「何が?」

透「だから10年前。この肉体は昔の私だけど、今、中にいるのは10年後の浅倉透なの。今日から入れ替わってる」

P「……」

透「コンビニってまだ潰れてなかったけ?」

P「え? あ、うん」

透「そう。じゃあ朝ご飯買ってくるね」
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