【ミリマス】33分探偵ナンナン 黄昏島殺人事件

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1 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:21:01.36 ID:P4tsM+UMO
次回予告なんてなかったので初投稿です。

前作
【ミリマス】33分探偵ナンナン
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1598729368/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1601889661
2 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:22:03.02 ID:6YwRzWyB0
ーー目を覚ますと、そこには水と、砂と、空があった。
鼻腔をくすぐる潮の香り。どうやらここは海岸らしい。

「………ここ、どこ?」

声は出た。おそらく生きている。
しかし、この場所に見覚えがない。まさか記憶喪失?
ここはどこ?知らない。私は誰?私はカワイイカワイイ野々原茜ちゃん。
うん、記憶喪失ではない。単に知らない場所なだけだ。

記憶を手繰り寄せる。嵐。高波。転覆する船。離れていく親友の手。
つまるところ、これは……

「…遭難かぁ」

知らない場所なのも道理だ。生きていることが奇跡とさえ言える。
しかし、ここでただじっと甲羅干ししていても文字通り干からびてしまう。
水なら目の前にいくらでもあるが、飲みようがない。
一度濡れて生乾きになった制服と下着しかない今は蒸留装置なんて高尚なものも作れない。
まずは食糧と水分、それに日光や風雨を凌げる拠点が必要だ。
ここが人の住んでいる文化的な場所ならいいんだけど、そんな希望的観測は持たない方がいいだろう。
3 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:23:01.58 ID:6YwRzWyB0
とりあえず砂浜に大きくSOSを書いて、海の反対側すぐの森に分け入る。
正直このスカートで森はきつい。が陽射しが遮られるのは大きい。
熱中症対策に水分と塩分を補給しろ、とは言うが海水をガブガブ飲むわけにもいかない。
であれば、まずはその根源たる陽射し、熱を遮断することが重要だ。
幸い、頑丈な枯れ枝も拾えた。しばらくはこれで草を払って森の探索を続けよう。

「……ふぅ」

ため息が漏れてしまう。せめて荷物を持っていれば……
と思ったが、よくよく考えればサバイバルグッズなんて持っていなかった。

……ネー

余計なことを考えてしまった。それより周囲に意識を集中して……

…カネー

…人の声?虫か潮の音だと思っていたが、今確かに金、と…
……こんなところで金?とんだ金の亡者だ。

アカネー

!近い!そして金じゃない、私を呼ぶ声だ!
それに、あの声は間違いない、私の親友の…

「茜ちゃんは、ここだぁぁぁぁぁ!!!」
4 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:24:02.43 ID:6YwRzWyB0
「アカネー!やっぱり生きてたんだネ!!」

「エレナちゃん!」

私の親友、島原エレナが抱きついてくる。
汗だくで泥まみれでくさい。私も同じようなものなのでお互い様か。

「砂浜のSOS書いたのアカネでショ?アレ見て、きっとアカネは近くにいるって…」

別の人が書いたものだとは思わなかったのか。もっとも、それが彼女らしい。
底抜けに楽天家で、妙に勘が鋭い。実際、こうして見つけてもらったわけだ。

「って、それつまりアレ書いて動かないでいたらもっと早く会えたってことかぁ……」

「アハハ、会えたんだから気にしないノ♪」

「そりゃそーだ」

ごもっともである。今は再会を喜べばいい。

「後でカオリ先生とリツコ先生と合流するノ、一緒に行こ?」

「先生達も生きてたんだ!良かったぁ…」

三人寄れば文殊の知恵なんて言葉があるくらいだ。四人いればサバイバルも脱出も楽勝だ。
5 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:25:02.28 ID:6YwRzWyB0
「先生ー!」

見晴らしのいい高台に3人はいた。担任の桜守歌織先生と、教育実習の秋月律子先生だ。
2人ともかわいい服がボロボロだ。遭難しているんだから当たり前か。
でも海に放り出されたはずなのに律子センセはしっかりメガネはかけていた。すごいな。
……ん?3人?もう1人、あのメイド服?は誰だ?遭難者にしては汚れているように見えない。

「あ、島原さん……と、野々原、さん?」

「えっ!?野々原さん、無事だったのね!?」

「野々原茜、ただいま生還いたしました!」

なんて、敬礼しつつ言ってみたり。茜ちゃんってば生粋のムードメーカーだからね。

「まったくもう、何言ってるのよ…ふふっ」

「でも良かったわ…本当、良かった」

目尻に涙を浮かべてそう言われちゃ茜ちゃんも流石にいつもの調子でいられない。
まあ、そのもうひとつの理由として……
6 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:26:01.69 ID:6YwRzWyB0
「ところで先生、そのメイドさん?は誰なノ?」

そう、先から一言も発していない謎のメイド。顔立ちは整っているしスタイルもいい。
歳の頃は茜ちゃんとさほど変わらないように見えるけど、眼帯で隠れてない片目はやけに鋭い。
そしてあのメイド服、被服の知識なんてないけどあれは素人目にも上物。秋葉原で客引きをしている人達とは訳が違う。いわゆる「本物」の圧力がある。

……逆に言えば。

原野とも言えるこの海と森の境界において。
その完璧すぎるとも言えるメイドの出で立ちは、異物でしかなかった。

「あ、そうそう、この方は…」

「………」

歌織センセが口を開くと、メイドは片手でそれを制し

「島原様、野々原様ですね。桜守様、秋月様よりお話は伺っております。
 私はこの島、黄昏島を所有する二階堂家に仕えるメイド、北沢志保と申します。
 当二階堂家はあなた方を心より歓迎いたします」

見た印象通りの凛とした声で、恭しく一礼した。
7 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:27:01.47 ID:6YwRzWyB0
「こちらが二階堂の屋敷となっております」

ここは本当に同じ国なのか?と疑う程度には、大きな屋敷だった。
まあ確かに、この国には櫻井だとか鷹城だとか、規格外の金持ちはいるし、こんな屋敷もテレビで何回か見た覚えはある。
しかしテレビで見るのと実際に目の当たりにするのでは、流石に話が違う。

「?どうなさいましたか?どうぞ、お入りください」

他の3人も同じく呆気に取られていたらしい。北沢さんに不審がられてしまった。

「すみません、今行きます!」

しかし、あのメイド服もそうだけど。
この異物感。どうにかならないものか。
8 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:28:01.93 ID:6YwRzWyB0
「まあまあまあ、ようこそいらっしゃいました」

そう言って出迎えてくれたのはえらい豪華な服に身を包んだ女性。あのマスクはなんだ。
歳の頃は歌織センセと同じくらいかな?落ち着いた雰囲気の美人さんだ。マスクが気になるけど。

「私、この屋敷の主の二階堂千鶴と申しますわ。
 志保から話は聞きました。昨日の嵐で難破してしまったそうで…
 どうぞ、ここが自分の家だと思っておくつろぎになってくださいましね」

原野の島に眼帯メイドと屋敷と謎のマスク。異物感が更に増した。特にマスク。
けど、そう言って微笑む姿は悪い人には見えない。変なマスクだけど。
9 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:29:01.75 ID:6YwRzWyB0
「桜守歌織です。この場を代表して、お礼を申し上げたく存じます。
 ですが、救援が来るまでとなると長く滞在してしまうかと思うのですが…よろしいのですか?」

「あぁ、その事でしたら…すぐにでも問題はなくなると思いますので、ご心配なく。ふふ…」

「ひょっとしてもう本土と連絡取ってくれたのかしら…?」

律子センセが何やらブツブツ言っている。でもこの島、外と通信できるようには見えないんだけど。

「まずはお身体を休められるとよろしいかと。志保」

「それでは皆様、お部屋にご案内いたします。後程、浴場とお着替の案内もさせていただきます」

「今宵は宴にいたしましょうか。それでは皆様、また後程」

そう言うと怪しいマスクの二階堂さんは姿を消した。

「宴だってさ……仮面舞踏会でもやるのかね」

「プフーッ」

神妙な顔をしてボケたらエレナちゃんが吹いた。と同時に律子センセに殴られた。いたい。
10 : ◆PkOg.tb5CI [sage saga]:2020/10/05(月) 18:30:01.53 ID:6YwRzWyB0
「アカネのサービスシーンがあると思った?ザンネン、ソレは残像だヨ!」

風呂上がりにこの子はいきなり何を言ってるんだ。
まあわけのわからないエレナちゃんは放っておくとして。

「いやぁ、いい湯だったねぇ…茜ちゃん溶けちゃうかと思ったよ」

「エ!アカネ、気付いてなかったの…?」

「えっ!?えっ、何が!?」

エレナちゃんが急に真顔になる。声もマジのヤツだ。え、恐い、何があったの?

「アカネ、溶けてたヨ…?もう身長も8cmくらい縮んで…」

「そんな!身長142cmで自称カワイイってどこかで聞いた設定…ってなんでやねーん!」

「テヘッ」

ボケか!びっくりしたよ本当に!急に真顔でボケられると心臓に悪い!
まあ茜ちゃんは縮んでも伸びてもカワイイけどね!

「まったく…しっかしこの服もいいヤツだよねこれ絶対」

「だよネー、肌触りが違うモン」

やはりこんな屋敷を建てるくらいだから相当な金持ちなんだろう。見た目に違わない。
でも二階堂なんて財閥聞いた覚えがないんだけど、ひょっとして裏世界の住人だったりして。

『ご歓談中失礼いたします、島原様、野々原様。お食事の支度が整いました、食堂までご案内いたします』

そんなアホなことを考えていると、扉の外から北沢さんの声がする。
今の茜ちゃんは、お腹がペコちゃんだ。
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